説明

ハンマグラブのクラウン

【課題】ハンマグラブのクラウンへの引き上げ衝突時に生じる騒音を低減できると共に、衝撃に十分対応可能なクラウンを提供する。
【解決手段】クレーンから吊持用索体2により所要高さに吊持されるスイングバー7と、スイングバー7に垂下連結されたクラウンヘッド8と、クラウンヘッド8に上下動可能に外嵌保持された筒状のカラー19と、クレーンにより昇降操作用索体5を介して昇降操作されるハンマグラブを係脱可能に保持するようにクラウンヘッド8とカラー19とにわたって設けられた係止機構10とからなるハンマグラブのクラウンにおいて、カラー19は、金属製の外筒部本体20と、ハンマグラブ4を引き上げてカラー19に衝当させる際に生じる外筒部本体20の金属音を吸収低減し得る材料によって形成された消音内筒部21とからなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、衝撃式掘削を行うハンマグラブを係脱可能に保持するクラウンの改良に関するものである。
【背景技術】
【0002】
例えば、建物を支持する基礎杭を地盤中に打ち込むにあたって、直径0.8〜3m程度の坑孔を掘削する場合には、図3に示されるようなハンマグラブ装置が使用されている。この装置は、例えばクローラクレーン1により吊持用索体2で所要高さ位置に保持されるクラウン3と、このクラウン3に係脱可能に保持されるハンマグラブ4とからなり、このハンマグラブ4は、クラウン3の中心部を縦貫する昇降操作用索体5を介して、クレーン1から昇降操作可能に吊持されている。
【0003】
従来のハンマグラブ装置において、クラウン3は、図4に示すように、クレーン1から吊持用索体2により掛止ワイヤー6を介して所要の高さに吊持されるスイングバー7と、このスイングバー7に垂下連結されたクラウンヘッド8と、このクラウンヘッド8に上下動可能に外嵌保持された筒状のカラー9と、前記クレーン1により昇降操作用索体5を介して昇降操作されるハンマグラブ4を係脱可能に保持するように前記クラウンヘッド8とカラー9とにわたって設けられた係止機構10とによって構成される。係止機構10は、クラウンヘッド8に枢着された複数のクラウンポール(係止爪)11からなり、各クラウンポール11は、その内端部11aがクラウンヘッド8の窓12からヘッド8内部に対し進退自在で、外端部11bがカラー9の係止孔13に係入している。上記カラー9は、これに取り付けたピン14をクラウンヘッド8のガイド孔15に係合させることによって、クラウンヘッド8に上下動可能に保持される。ハンマーグラブ4には、その中央部にばね座40bに保持されたばね40aに付勢され上下所定距離間スライド可能なスライドブロック40が設けられ、該ブロック40の上端部40cに係止爪40dが設けられ、一方、ハンマーグラブ本体4aの上部には係止片4bが軸4cによって枢支され、昇降操作用索体5の下部には水平方向に突出する被係止片5aが設けられ、索体5を上動させることによって掘削土を掴み取ってシェルSが閉鎖したとき、昇降操作用索体5に設けてある上記被係止片5aがハンマーグラブ本体4aに枢支してある係止片4bに係合して、スライドブロック40はハンマーグラブ4に対しそれ以上に上動しないようになっている。
【0004】
掘削作業を行うときには、昇降操作用索体5を巻き戻し、ハンマグラブ4をクラウン3から切り離して、ケーシングチューブT(図3)で囲まれた掘削すべき地盤へ向けて落下させる。そして、地盤上へ衝突させて掘削した後、昇降操作用索体5を巻き上げ操作することにより、シェルSを閉じて掘削土を掴み取った状態で、ハンマグラブ4を図4の仮想線図示のように引き上げて、ハンマーグラブ4内のスライドブロック40の上端部40cがクラウンヘッド8内に突出させると共に、二点鎖線で示すように、グラブ4の肩部4dはカラー9の下端部9aに強く衝当し、この衝当の際に大きな衝撃音を発することになる。この大きな衝撃音をともなった衝当によってカラー9がハンマーグラブ4によって押し上げられることによって、各クラウンポール11が内向きに揺動して水平になり、その内端部11aがハンマーグラブ4内のスライドブロック40の上端部40cの係止爪40dに係合し、スライドブロック40、即ち、前述のようにスライドブロック40の上動を阻止するハンマーグラブ4とクラウンポール11側のクラウン3とが連結される。こうしてハンマーグラブ4をクラウン3に連結させたまま、クレーン1を旋回させ、掘削土を廃棄させる。そして、ハンマーグラブ4がクラウン3に連結された状態から、昇降操作用索体5を引き上げ、スライドブロック40の先端部40cが一点鎖線で示すようにクラウン8の内壁部に衝当するまで上動されることによって、係止爪11の内端部11aが上記先端部40cの下面である係止爪40dから解放されるため、図示のようにクラウンポール11はその外端部11bが下向きに傾動する。これによってカラーが自重によりクラウンヘッド8に対し下動し、且つスライドブロック40はばね40bに付勢されて下動し、クラウン3、正確にはカラー9と、ハンマーグラブ4、正確にはスライドブロック40との係合状態が解放され、ハンマーグラブ4はクラウン3から離脱して下方に降ろされる共に、シェルSが開口し、次の掘削作業に備えられることになる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、ハンマグラブ4を引き上げてクラウン3に係止保持させる際に、これら金属どうしが衝突して生じる騒音が非常に大きな問題となっていた。この問題を解決するために、クラウンのカラー部分を強化プラスチックにより形成したものが実開平4−112983号公報に記載されている。ところが、強化プラスチック製のカラーは、衝撃に弱いためヒビや割れを生じ易く、比較的短期のうちに交換を要することになる。また、この強化プラスチック製カラーの場合には、ヒビや割れを少なくし、また所定の重量を確保するために、カラーの肉厚が厚くなり、カラーの径がどうしても大きくなって、嵩張る上に非常に高価になると云う問題があった。
【0006】
そこで本発明は、ハンマグラブのクラウンへの引き上げ衝当時に生じる騒音を低減できると共に、衝撃に十分対応可能なクラウンを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するための手段を、後述する実施形態の参照符号を付して説明すると、請求項1に係る発明は、クレーン1から吊持用索体2により所要高さに吊持されるスイングバー7と、スイングバー7に垂下連結されたクラウンヘッド8と、クラウンヘッド8に上下動可能に外嵌保持された筒状のカラー19と、クレーン1により昇降操作用索体5を介して昇降操作されるハンマグラブ4を係脱可能に保持するようにクラウンヘッド8とカラー19とにわたって設けられた係止機構10とからなるハンマグラブのクラウン3において、前記カラー19は、金属製の外筒部本体20と、ハンマグラブ4を引き上げてカラー19に衝当させる際に生じる外筒部本体20の金属音を吸収低減し得る材料によって形成された消音内筒部21と、からなることを特徴とする。
【0008】
請求項2は、請求項1に記載のハンマグラブのクラウンにおいて、前記消音内筒部21は高分子材料からなることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
上記解決手段による発明の効果を、後述する実施形態の参照符号を付して説明すると、請求項1に係る発明によれば、カラー19が金属製の外筒部本体20と消音内筒部21とからなるもので、内筒部21が、ハンマグラブ引き上げ時のカラー19との衝当の際に生じる金属製外筒部本体20の金属音を吸収低減し得る材料によって形成されているため、その衝撃音は内筒部21により吸収されて低減される。また、従来のクラウンのようにカラーが強化プラスチック製のものであれば、ハンマグラブ4の衝突時にそのカラーにヒビや割れを生じ易いが、本発明のカラー19は外筒部本体20が金属製であるため、ハンマグラブ4の衝当によって破損したり変形することがなく、またヒビや割れを生じることもなく、したがって長期にわたって有効に使用できる。また、このカラー19は、従来の強化プラスチック製カラーに比較して厚みを薄くできるため、嵩張りのないコンパクトな構造にすることができる。
【0010】
請求項2に係る発明によれば、消音内筒部21が高分子材料からなるものにあっては、金属音を有効に吸収低減することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
以下に本発明の好適な一実施形態を図面に基づいて説明すると、図1は本発明に係るクラウン3の全体構造を示し、図2はクラウン3のカラー19を拡大して示すものであり、また図3はクラウン3及びハンマグラブ4を含むハンマグラブ装置の全体を概略的に示している。尚、図1及び図2に示す本発明のクラウン3は、カラー19以外は、図4で示した従来のクラウン3とほとんど同じ構成であり、従ってカラー19以外の構成部材は、前述した従来のクラウン3の構成部材と同一符号で示す。また、このカラー19も、外観上は従来のクラウン3のカラー9とほとんど変わらないものである。
【0012】
図1に示す本発明のクラウン3は、クレーンから吊持用索体2によって所要高さに吊持されるスイングバー7と、このスイングバー7にボルト16で連結されたクラウンヘッド8と、このクラウンヘッド8に下方より外嵌されてクラウンヘッド8に対し上下動可能に保持された筒状のカラー19と、前記ハンマグラブ4を係脱可能に保持するようにクラウンヘッド8とカラー19とにわたって設けられた係止機構10とから構成される。そして、係止機構10は、クラウンヘッド8にピン17で枢着された複数のクラウンポール(係止爪)11からなるもので、各クラウンポール11は、その内端部11aがクラウンヘッド8の窓12からヘッド8内部に対して進退自在で、外端部11bがカラー19の係止孔13に係入しており、またカラー19は、これに取り付けたボルト14(ピン)をクラウンヘッド8のガイド孔15にスライド自在に係合させることによって、クラウンヘッド8に対し上下動可能に保持される。
【0013】
クラウン3の筒状カラー19は、金属製の外筒部本体20と、ハンマグラブ4を引き上げてカラー19に衝当させる際に生じる外筒部本体20の金属音を吸収低減し得る材料によって形成された消音内筒部21と、から構成される。
【0014】
外筒部本体20は、図2から分かるように、厚さ6〜9mmの鉄板をプレス加工して円筒状に形成された円筒部20aと、同じ厚さの鉄板によって形成され、円筒部20aの下端に溶接により接合されて内向きに突出する内向きフランジ部20bとからなる。
【0015】
消音内筒部21は、外筒部本体20の内周面に密着するように外筒部本体20内に嵌合されたもので、外筒部本体20の円筒部20aに対応する円筒部21aと、外筒部本体20の内向きフランジ部20bに対応する内向きフランジ部21bとからなり、この消音内筒部21の円筒部21a及び内向きフランジ部21bは、厚さが外筒部本体20の厚さの例えば3倍程度の20〜30mm程度に形成されている。
【0016】
この消音内筒部21は、高分子材料で形成されるのが望ましく、高分子材料としては、例えば、ナイロンが好ましい。これは、金属音を有効に吸収低減し得るのみならず、機械的強度、耐熱性、耐摩耗性及び耐薬品性に優れている。また高分子材料としては、各種プラスチック、硬質ゴム等を使用することができる。もちろん、消音内筒部21を形成する材料として、高分子材料以外のものを使用することができるが、高分子材料の方が、金属音を有効に吸収低減することができる。
【0017】
また図2に示すように、外筒部本体20の円筒部20aと消音内筒部21の円筒部21aとにわたって、前記クラウンポール11の外端部が係入される複数の係止孔13が周方向等間隔に、例えば等間隔3カ所に形成されると共に、前記ボルト14を螺合する複数のボルト螺合部22が形成されている。図2において、22aはボルト14の頭部が納まる凹部を示す。
【0018】
上記のように外筒部本体20と消音内筒部21とからなるカラー19を有するクラウン3の使用態様を、図4に示す従来の装置をも参照して説明すると、クラウン3に保持されている状態のハンマグラブ4をクラウン3から切り離し、図3に示すようにケーシングチューブTで囲まれた掘削すべき地盤に向けて落下させる。そして、地盤上に衝突させて掘削した後、ハンマグラブ4を閉じて掘削土を掴み取った状態で、このハンマグラブ4をクレーン1により引き上げると、ハンマグラブ4の肩部4dはカラー19の下端部19aに衝突する。
【0019】
ハンマグラブ4をカラー19の下端部19aに衝当させる際に、従来のクラウンのようにカラー3全体が金属製のものであれば、激しい金属の衝撃音が発生するが、本発明のクラウン3のカラー19は、金属製の外筒部本体20と内筒部21とからなるもので、内筒部21が、ハンマグラブ引き上げ時のカラー19との衝当の際に生じる金属製外筒部本体20の金属音を吸収低減し得る材料によって形成されているため、その衝撃音は内筒部21により吸収されて著しく低減される。
【0020】
さらに、従来のクラウンのようにカラーが強化プラスチック製のものであれば、ハンマグラブ4の衝突時にそのカラーにヒビや割れを生じ易いが、このカラー19は外筒部本体20が金属製であるため、ハンマグラブ4の衝当により破損したり変形することがなく、またヒビや割れを生じることもなく、したがって長期にわたって有効に使用できる。また、本発明のカラー19は、従来の強化プラスチック製カラーに比較して厚みを薄くできるため、嵩張りのないコンパクトな構造にすることができる。
【0021】
そして上述のように従来に比べて著しく低減された衝撃音しか発しないハンマーグラブ4のカラー19に対する衝突によって該カラー19が押し上げられることによって、図4に示すように、各クラウンポール11が内向きに揺動して水平になり、その内端部11aがハンマーグラブ4内のスライドブロック40の上端部40cの係止爪40dに係合し、スライドブロック40、即ち、前述のようにスライドブロック40の上動を阻止するハンマーグラブ4とクラウンポール11側のクラウン3とが連結される。こうしてハンマーグラブ4をクラウン3に連結させたまま、クレーン1を旋回させ、掘削土を廃棄させる。そして、ハンマーグラブ4がクラウン3に連結された状態から、昇降操作用索体5を引き上げ、スライドブロック40の先端部40cが一点鎖線で示すようにクラウン8の内壁部8aに衝当するまで上動されることによって、係止爪11の内端部11aが上記先端部40cの下面である係止爪40dから解放されるため、図示のようにクラウンポール11はその外端部11bが下向きに傾動する。これによってカラーが自重によりクラウンヘッド8に対し下動し、且つスライドブロック40はばね40bに付勢されて下動し、クラウン3、正確にはカラー19と、ハンマーグラブ4、正確にはスライドブロック40との係合状態が解放され、ハンマーグラブ4はクラウン3から離脱して下方に降ろされる共に、シェルSが開口し、次の掘削作業に備えられることになる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明に係るクラウン3の全体構造を示す縦断面図である。
【図2】クラウンのカラーを拡大して示す縦断面図である。
【図3】クラウン及びハンマグラブを含むハンマグラブ装置の全体を概略的に示す説明図である。
【図4】従来のクラウンとこれに係合されるハンマグラブを示す縦断面図である。
【符号の説明】
【0023】
1 クレーン
2 吊持用索体
3 クラウン
4 ハンマグラブ
5 昇降操作用索体
7 スイングバー
8 クラウンヘッド
9 カラー(従来のもの)
10 係止機構
11 クラウンボール
19 カラー(本発明のもの)
20 金属製の外筒部本体
21 消音内筒部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
クレーンから吊持用索体により所要高さに吊持されるスイングバーと、スイングバーに垂下連結されたクラウンヘッドと、クラウンヘッドに上下動可能に外嵌保持された筒状のカラーと、クレーンにより昇降操作用索体を介して昇降操作されるハンマグラブを係脱可能に保持するようにクラウンヘッドとカラーとにわたって設けられた係止機構とからなるハンマグラブのクラウンにおいて、前記カラーは、金属製の外筒部本体と、ハンマグラブを引き上げてカラーに衝当させる際に生じる外筒部本体の金属音を吸収低減し得る材料によって形成された消音内筒部と、からなるハンマグラブのクラウン。
【請求項2】
前記消音内筒部は高分子材料からなる請求項1に記載のハンマグラブのクラウン。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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