説明

ハードキャンディ含有グミキャンディ及びその製造方法

【課題】活性化傾向にあるグミキャンディ市場において、カリカリした食感とシュワシュワとした発泡感とを持ったハードキャンディ含有グミキャンディ及び前記ハードキャンディ含有グミキャンディを効率よく製造する方法を提供すること。
【解決手段】マルチトール及び/又は還元パラチノースと発泡性成分とを含有するハードキャンディがグミキャンディ内に分散されているハードキャンディ含有グミキャンディであって、前記グミキャンディがグミキャンディの全重量に対して還元パラチノース10〜40重量%、ソルビトール30〜60重量%、澱粉1〜10重量%及びグリセリン1〜10重量%を含み、水分含量が15重量%以下であることを特徴とするハードキャンディ含有グミキャンディ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規な食感を有するハードキャンディ含有グミキャンディ及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
主としてゼラチン、砂糖、水飴などからなるグミキャンディは、菓子として幅広い人々に認知されており、弾力のある食感と味付けによって、これまで主に小中学生などの若年層を中心に親しまれてきた。しかしながら、近年は、果汁感の向上による風味の充実化や、有名タレントを起用したテレビコマーシャルなどの宣伝活動により、若年層のみならず幅広い世代に食されるようになってきている。
【0003】
また、グミキャンディの主成分のひとつであるゼラチンは、加熱によって変性したコラーゲンであり、その組成はほとんどコラーゲンと同じである。コラーゲンは真皮、靱帯、腱、骨及び軟骨などを構成する蛋白質のひとつで、人体を構成する全蛋白質の30%を占める重要な物質である。近年、コラーゲンの経口摂取による生体内での分解、吸収及び再合成に関する研究も広く行われており、グミキャンディの摂取による美容や骨形成、関節痛の緩和等の効能も期待されている。そのため、パッケージにコラーゲン表記をすることで、健康志向を訴求した製品が増えており、購買層の拡大に寄与している。
【0004】
本件出願人らが以前に提案した、ハードキャンディ含有グミキャンディ(特許文献1参照)では、マルチトール及び/又は還元パラチノースを含み、また、発泡成分を含有したハードキャンディをシェラックで被覆し、その上からマルチトール及び/又は還元パラチノースで被覆したハードキャンディとグミキャンディを組み合わせることによって、カリカリとした食感とシュワシュワした発泡感を持ったハードキャンディ含有グミキャンディが提案されており、全く新しい食感と発泡感を提供している。
上記の方法では、ハードキャンディの周りに2層の被覆を行うことで、ハードキャンディに含まれている発泡成分の炭酸ガス生成反応が抑制されているが、その2層の被覆を行っている分、キャンディに含まれる発泡成分のシュワシュワ感がダイレクトに伝わり難い傾向があり、より一層の発泡感を求める中で、更なる改良が待たれていた。
【0005】
また、地球温暖化が囁かれている昨今、年間を通して平均気温が上昇している中で、特に夏場の菓子流通現場においては、商品が30℃以上の高温にさらされることも珍しくなくなっている。そういった中で、特許文献1では、常温・常湿の雰囲気下においては、ハードキャンディのカリカリとした食感と、発泡性成分のシュワシュワ感が楽しめるものであるが、前記のような夏の菓子流通現場などにおける30℃以上の高温に長時間さらされると、キャンディに含まれる発泡性成分の炭酸ガス生成反応が進行してしまい、商品の外装袋が膨張したり、また、それに伴って喫食時にシュワシュワ感が感じ難くなったりなど、商品の価値を劣化してしまう問題が見出された。
【0006】
そこで、発泡成分を含有するハードキャンディの炭酸ガス生成反応の進行を抑制する方法として、それと組み合わせたいグミキャンディの水分含量を下げることが考えられるが、通常グミキャンディは水分含量12%以下の場合、非常に硬く弾力に乏しい食感となってしまう。低水分でも柔軟性と伸縮性を有しているものとして、ゼラチンをグリセリン存在下で膨潤させたゼラチンゼリーが提案されているが(特許文献2参照)、ここで提案されているゼラチンゼリーは、高い吊り下げ強度やゴム弾性を目的としており、ゼラチンを多く含むことによる獣臭やその硬すぎる食感のため嗜好性に乏しく、お菓子としての味や食感を楽しめるものではなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2009−278949号公報
【特許文献2】特公平5−16820号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、活性化傾向にあるグミキャンディ市場において、カリカリした食感とシュワシュワとした発泡感とを持ったハードキャンディ含有グミキャンディ及び前記ハードキャンディ含有グミキャンディを効率よく製造する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するため、本発明者らは鋭意研究を重ねた結果、グミキャンディを特定の組成に限定することで、前記特許文献1に記載のように発泡性成分を含有したハードキャンディをシェラックで被覆することなく、保管期間中の炭酸ガス発生を抑制し、且つ、喫食時にはさらなる発泡感を与えることを見出し、本発明に至った。
【0010】
即ち、本発明の要旨は、
(1)マルチトール及び/又は還元パラチノースと発泡性成分とを含有するハードキャンディがグミキャンディ内に分散されているハードキャンディ含有グミキャンディであって、
前記グミキャンディがグミキャンディの全重量に対して還元パラチノース10〜40重量%、ソルビトール30〜60重量%、澱粉1〜10重量%及びグリセリン1〜10重量%を含み、水分含量が15重量%以下であることを特徴とするハードキャンディ含有グミキャンディ、
(2)ハードキャンディの周囲がシェラックで被覆されていない前記(1)に記載のハードキャンディ含有グミキャンディ、
(3)グミキャンディ中に分散されているハードキャンディの粒子径が0.5〜10.0mmであり、ハードキャンディの含有量が5〜40重量%である前記(1)又は(2)に記載のハードキャンディ含有グミキャンディ、
(4)マルチトール及び/又は還元パラチノースと発泡性成分を含むハードキャンディを製造する工程、
ハードキャンディを、80℃以下、水分含量が15重量%以下に調整されたグミキャンディ液に分散させる工程、
得られたハードキャンディ含有グミキャンディ液を成形型に充填する工程、
次いで、乾燥工程を経ずにハードキャンディ含有グミキャンディを脱型する工程
を有することを特徴とする前記(1)〜(3)いずれかに記載のハードキャンディ含有グミキャンディの製造方法
に関する。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、喫食時にカリカリした食感とシュワシュワした発泡感を感じるハードキャンディ含有グミキャンディを得ることができる。また、本発明では発泡性成分含有ハードキャンディをシェラックで被覆していないため、前記特許文献1に記載のハードキャンディ含有グミキャンディに比べ、より一層の発泡感を感じられるものである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
本発明のハードキャンディ含有グミキャンディは、内部に発泡性成分を含有するハードキャンディがグミキャンディに分散されており、前記グミキャンディが全重量に対して還元パラチノース10〜40重量%、ソルビトール30〜60重量%、澱粉1〜10重量%、グリセリン1〜10重量%を含み、水分含量が15重量%以下であることを特徴とする。かかる特徴を有することで、喫食時にカリカリした食感とより一層のシュワシュワした発泡感を感じるという従来のグミキャンディにない全く新規な食感が得られる。
【0013】
(グミキャンディ)
本発明で使用するグミキャンディは、糖質として還元パラチノースとソルビトールを主成分とする。これらの糖質を主成分とすることで、グミキャンディの水分含量を15重量%以下とした場合にも、グミキャンディ生地の粘性は低く、ハードキャンディとの混合及び成形が容易になる。
【0014】
還元パラチノースとは、イソマルトースとも呼ばれる、6−O−α−D−グルコピラノシル−D−フルクトースである。
前記グミキャンディ中の還元パラチノースの含有量は、10〜40重量%である。還元パラチノースの含有量が10重量%未満の場合、グミキャンディの弾力性が非常に弱く、グミキャンディの食感として満足出来ないものになり、また、40重量%より多い場合、グミキャンディ生地の粘性が非常に高くなり、ハードキャンディの混合及び成形が困難になってしまう。
【0015】
ソルビトールは、糖アルコールの一種であり、甘味料として知られる。
前記グミキャンディ中のソルビトールの含有量は、30〜60重量%である。ソルビトールの含有量が30重量%未満の場合、グミキャンディの弾力が失われ、60重量%より多い場合、グミキャンディがべとついたヌガーの様な食感となってしまう。
【0016】
還元パラチノースやソルビトールの他にも、これらの添加量に影響を与えない範囲において、一般的にグミキャンディに使用される砂糖、水飴などの糖質も使用出来る。ただし、これらの糖質を多く含んだ場合、グミキャンディ生地の粘性が著しく上昇し、ハードキャンディとの混合及び成形が困難になったり、メイラード反応によって、褐変やコゲなどが発生してしまったりするなどの問題が生じる場合がある。
【0017】
本発明に用いる澱粉は、従来のグミキャンディの製造に使用されている澱粉類であれば特に制限されず、小麦粉、コーンスターチ、馬鈴薯澱粉、タピオカ澱粉、甘薯澱粉、デキストリン、米粉の他、各種澱粉から得られる架橋澱粉、エステル化澱粉,エーテル化澱粉、α化澱粉、湿熱処理澱粉などの化工澱粉を用いても良い。前記グミキャンディ中の澱粉の含有量は1〜10重量%である。澱粉の含有量が1重量%未満の場合、グミキャンディがゴリゴリとしたゴムのような食感となってしまい、また10重量%より多い場合、グミキャンディの弾力性が低下し、サクい食感となってしまう。
【0018】
本発明に用いるグリセリンは、グリセロール、もしくは1,2,3−プロパントリオールとも呼ばれる、無色透明の粘性液体である。前記グミキャンディ中のグリセリンの含有量は1〜10重量%である。グリセリンの含有量が1重量%未満では、グミキャンディ生地の粘性が高くなり、ハードキャンディとの混合や成形が困難になってしまい、また、10重量%よりも多いと、グミキャンディが適度な弾力を失った食感となったり、べとついたりするものになってしまう。
【0019】
その他にグミキャンディの食感形成に必要なものとして、ゼラチンが挙げられる。ゼラチンの原料としては、牛骨ゼラチン、豚皮ゼラチン、魚ゼラチン等を使用することができる。また、それぞれ酸処理、アルカリ処理といった処理の仕方によって食感に変化を与えることができ、これらいずれのゼラチンを用いても構わない。
前記グミキャンディ中のゼラチンの含有量は、5〜10重量%が好ましい。
【0020】
また、ゼラチン以外にも、ペクチン、アラビアガム、カラギーナン、寒天、グアーガム、ローカストビーンガム、キサンタンガム、プルラン、ジェランガム等のゲル化剤を添加することもできる。
ただし、前記ゲル化剤を添加するとグミキャンディ生地の粘性が上昇する傾向が強いため、ハードキャンディとの混合及び成形を妨げない範囲での添加量にする必要がある。
【0021】
その他にも所望により香料、酸味料、高甘味度甘味料、着色料、油脂、乳化剤、食物繊維、ビタミン類、ミネラル類、アミノ酸、乳製品、果汁等を添加することも可能であり、これらを必要に応じて添加することで、グミキャンディの嗜好性の幅を広げることが出来る。
【0022】
本発明においてグミキャンディの水分含量は15重量%以下であり、8〜12重量%とすることが好ましい。本発明の大きな特徴として、グミキャンディの水分含量が15重量%以下という低い状態にも関らず、硬すぎない心地よい弾力と作業性の良さを持ち合わせていることが挙げられる。さらに、本発明では、グミキャンディの水分含量を下げることで、グミキャンディ中に分散させた発泡成分含有ハードキャンディに含まれている発泡成分の炭酸ガス生成反応の進行を防いでいる。従って、グミキャンディの水分含量が15重量%よりも高い場合、グミキャンディからグミキャンディ中に分散させた発泡性成分含有ハードキャンディへの水分移行が激しく、グミキャンディが所謂「なく」と呼ばれる状態となり、かつグミキャンディ内に分散されたハードキャンディ中で発泡成分の炭酸ガス生成反応が進行し、商品価値を著しく低下させる。
【0023】
(ハードキャンディ)
本発明に用いるハードキャンディを構成する糖類としては、マルチトール(還元麦芽糖)、還元パラチノースを用いることができ、それぞれを単独で用いてもよいし、両者を併用してもよい。本発明ではハードキャンディを構成する糖類としてマルチトール(還元麦芽糖)、還元パラチノースを使用している点に一つの大きな特徴があり、これ以外の糖類、糖アルコール類などを使用した場合では、経時的なグミキャンディからの水分移行によりキャンディ中の発泡性成分が反応しやすく、保存中に炭酸ガスが発生し、かつ、キャンディのカリカリした食感が十分に維持されない。また本発明にいうハードキャンディは、含気させて引き飴のごとくしてもよい。
前記ハードキャンディ中のマルチトール及び還元パラチノースの含有量は、70重量%以上が好ましい。
【0024】
本件出願人が以前に提案した特許文献1では、まず発泡成分を含有したハードキャンディを作製し、次に得られたハードキャンディをシェラックで被覆した後、さらにマルチトール及び/又は還元パラチノースでさらに被覆するとういう3段階の工程を経ていたが、本発明に於いてこの工程は必要ではない。何故ならば、本発明にかかるグミキャンディは、水分含有量が低く、さらに還元パラチノース、ソルビトールを多く含むため、一般的なグミキャンディに比べて、グミキャンディからハードキャンディへの水分移行や、発泡成分の炭酸ガス生成反応が起こりにくくなっているからである。さらに、ハードキャンディに2層の被覆を行わないことで、発泡成分のシュワシュワ感をダイレクトに感じられるため、以前のものよりも、より一層の発泡感を感じられるようになった。
【0025】
前記ハードキャンディに用いられる発泡性成分としては、有機酸と炭酸塩及び/又は炭酸水素塩との組み合わせが好ましい。ここで有機酸としては、クエン酸、酒石酸、アスコルビン酸、リンゴ酸、フマル酸、コハク酸等が挙げられる。炭酸塩又は炭酸水素塩としては炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸水素カリウム、炭酸アンモニウム等が挙げられ、このうち炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸カリウムが好ましい。
【0026】
有機酸と炭酸塩又は炭酸水素塩との混合比には、特に制限はないが、喫食時の発泡性及び酸味の付与の観点から、重量比で1:1〜2:1が好ましい。また、ハードキャンディ中の発泡性成分の総含有量は、十分な発泡性を備えたハードキャンディを製造する際の作業性の観点から、好ましくは5〜30重量%、より好ましくは10〜20重量%とする。
【0027】
前記ハードキャンディには、前記マルチトール及び/又は還元パラチノース、発泡性成分以外に、所望により香料、高甘味度甘味料、着色料、油脂、乳化剤、食物繊維、ビタミン類、ミネラル類、アミノ酸、乳製品、果汁等を添加することも可能であり、これらを必要に応じて添加することで、ハードキャンディの嗜好性の幅を広げることが出来る。
【0028】
グミキャンディ中に分散させるハードキャンディの粒子径は、好ましくは0.5〜10.0mm、より好ましくは3.0〜7.0mmである。10.0mmより大きい場合、ハードキャンディが硬すぎて、グミキャンディの食感との調和が取れない。また、0.5mmより小さい場合、グミキャンディからハードキャンディへの水分移行による炭酸ガス生成反応が起こりやすくなる。目的の粒子径のハードキャンディを得る方法は、大きな塊の発泡性成分含有ハードキャンディを作り、これを粉砕後、篩等によって目的の大きさのハードキャンディを選別したり、シート状に成型した発泡性成分含有ハードキャンディからスタンピング方式で成型してもよいが、特に制限はない。
なお、前記グミキャンディの大きさとしては、前記のような粒子径のハードキャンディをその内部に分散させることができればよく、特に限定はない。
【0029】
グミキャンディ中に分散させるハードキャンディの割合は、ハードキャンディ含有グミキャンディ全体に対して5〜40重量%が好ましく、10〜20重量%がより好ましい。40重量%よりもハードキャンディの割合が多い場合、グミキャンディとハードキャンディを混合したときの粘度が高くなり、混合後の作業性、グミキャンディの成形性が著しく悪くなる。また、5重量%よりも少ない場合、喫食時のハードキャンディのカリカリした食感や発泡感があまり感じられない。
また、ハードキャンディ含有グミキャンディにおいて、前記グミキャンディの割合は、ハードキャンディの残部であればよく、60〜95重量%が好ましい。
【0030】
(製造方法)
グミキャンディ中にハードキャンディを分散させる方法は、グミキャンディ液中にハードキャンディを混合・攪拌してもよく、またグミキャンディ液を流し込む容器にハードキャンディを予め散りばめておき、そこにグミキャンディ液を流し込んでハードキャンディを分散させてもよく、いかなる方法をとっても構わない。
【0031】
本発明のハードキャンディ含有グミキャンディは上記の各原料を用い、例えば次のようにして製造される。即ち、常法に従い、発泡性成分とマルチトール及び/又は還元パラチノースとを含有するハードキャンディを製造する。キャンディ芯材としてマルチトール及び/又は還元パラチノースを水や果汁等の水性媒体に溶解し、開放型の釜又は真空釜で、水分1重量%程度になるまで加熱して濃縮する。得られた濃縮液を110℃以下まで冷却し、上記発泡性成分を混合し、常温まで冷却した後、ハンマー等で粉砕する。得られた粉砕物を篩で選別して0.5mm〜10mmのサイズの発泡性成分含有ハードキャンディを調製する。
【0032】
つづいて、グミキャンディ液を準備する。還元パラチノースとソルビトールと澱粉とを混合後、加熱濃縮を行う。
次いで、60〜80℃まで冷却した濃縮物に、グリセリン、ゼラチン、必要であれば他のゲル化剤、果汁、酸味料、香料などの任意成分を混合して、水分含量を15重量%以下に調整したグミキャンディ液を調製する。
【0033】
次いで、上記のようにして得られた発泡性成分含有ハードキャンディをグミキャンディ液と混合攪拌した生地をトレイ等の型に流し込み、常温で一昼夜静置させることにより、ハードキャンディ含有グミキャンディを得る。
【0034】
通常、スターチモールド等で成形するグミキャンディは、その作業性を考慮して、水分含量を20〜30重量%に調節したグミキャンディ生地をスターチモールドに充填成形した後、適宜乾燥工程を経る事によって水分含量を15〜20重量%とした後に製品となるが、60〜80℃であれば本発明におけるグミキャンディ生地は10重量%前後といった、低い水分含量に於いてもグミキャンディ生地は液状で粘性が低く、作業性も良いため、型への充填がし易く、製品の生産性が向上する点、また、生地の水分含量が15重量%と初めから低いため成形後の乾燥工程の必要が無い点が大きな利点である。
【0035】
こうして得られたハードキャンディ含有グミキャンディは、ハードキャンディの周囲がシェラックで被覆されていないにも関わらず、グミキャンディから発泡性成分含有ハードキャンディへの水分移行が起こらず、また、シェラックで被覆したグミキャンディに比べて発泡感を感じることができ、さらにグミキャンディ中では発泡せずに喫食時に初めてシュワシュワとした発泡感を得ることが出来る上に、グミキャンディだけでなく、ハードキャンディのカリカリした食感が得られるものである。
【実施例】
【0036】
以下に本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれらによって制限されるものではない。
【0037】
(実施例1)
ハードキャンディは、還元パラチノース100gを釜で水分1.5重量%になるまで炊き上げ、110℃以下に冷却したのち、発泡性成分として、有機酸として酒石酸を10.6g、炭酸塩として炭酸水素ナトリウムを6.6g、香料としてソーダフレーバーを0.1g添加、混合した。得られた生地を常温まで冷却したのち、ハンマーで粉砕し、篩を使って選別し、粒子径が1.0〜5.0mmの発泡性成分含有ハードキャンディを得た。
次にグミキャンディは、還元パラチノース25.0g、ソルビトール45.0g、澱粉5.0gをBrix98.0°になるまで炊き上げた後、80℃以下まで冷却し、グリセリン5.0gと水で膨潤したゼラチン溶液(ゼラチン:水=1.0:1.2、溶解温度60℃以下)13.2gと混合した後、酸味料としてクエン酸3.0g、香料としてレモン香料1.0mlを添加し、水分含量が約10重量%のグミキャンディ液を得た。
このグミキャンディ液に先の発泡性成分含有ハードキャンディを重量比8:2の割合で混ぜ、得られた生地を80℃で深さ30mmのトレイに流し込み、常温常湿度で1日静置し、翌日トレイから凝固したハードキャンディ含有グミキャンディを剥離し、15mm×20mmサイズに包丁でカットした。
【0038】
(実施例2及び比較例1〜4)
実施例2、比較例1及び2は、ハードキャンディに用いた糖質の条件を変えた以外は実施例1と同様に試作を行った。
比較例3は実施例1で得られた発泡成分含有ハードキャンディ85gをコーティングパンに入れ、シェラックを1g投入して、第一層とし、常温の風を約20分間送風し、アルコールを十分に飛ばした後で、還元パラチノース粉末を0.5g投入し、第二層とした。
比較例4はハードキャンディ芯材にマルチトールを用い、第二層にマルチトール粉末を用いた点以外は比較例3と同様に試作を行った。
試作した発泡性成分含有ハードキャンディ含有グミキャンディの温度37℃、湿度85%での保存試験結果を表1に示す。
【0039】
実施例1、2で得られたハードキャンディ含有グミキャンディ及び比較例1〜4で得られたキャンディをアルミ蒸着パウチに入れた後、温度37℃、湿度85%の雰囲気下にて保管し、1ヵ月後の品質を目視及び官能評価により測定した。その結果を表1に示す。なお保存試験結果については、それぞれ下記の評価基準に従って評価した。

(容器の膨張評価基準)
○:膨張無し
△:わずかに膨張が見られる
×:完全に容器が膨張している

(喫食時の発泡感評価基準)
◎:シュワシュワとした強い発泡感がある
○:シュワシュワとした十分な発泡感がある
△:わずかにシュワシュワとした発泡感がある
×:発泡感がほとんどない

(ハードキャンディの食感評価基準)
○:カリカリした食感が十分に残っている
△:カリカリした食感がわずかに残っている
×:カリカリした食感がほとんど残っていない
【0040】
【表1】

【0041】
表1の結果より、実施例1、2で得られたハードキャンディ含有グミキャンディは、グミキャンディからの水分移行によるハードキャンディ中の発泡性成分の反応による炭酸ガスの発生が抑制されており、かつ喫食時にはシュワシュワしたとした発泡感が強く感じられ、さらにはハードキャンディを噛んだときに感じるカリカリした食感にも、大きな変化は見られなかった。これらの実施例1、2の結果は、特許文献1に記載の発明に準じてシェラックによる被覆を用いている比較例3、4のキャンディと比べても、遜色がないことから、シェラックによる被覆を用いなくとも所望の効果が得られていることがわかる。
また、比較例3、4ではハードキャンディをシェラックで被覆するための工程を必要としているのに対して、これらのシェラックで被覆せずに同様の効果を奏するハードキャンディ含有グミキャンディを製造できる点で、実施例1、2に記載の製造方法は、目的のハードキャンディ含有グミキャンディを効率的に製造できる方法であるといえる。
なお、比較例3、4ではハードキャンディをシェラックで被覆していることで、実
施例1、2のものと比べてシュワシュワとした発泡感が弱くなっていることがわかる。
また、ハードキャンディの糖質として還元パラチノース又はマルチトールを用いていない比較例1、2で得られたキャンディは、いずれの評価も「×」であった。
【0042】
(実施例3、4及び比較例5)
グミキャンディの水分含量を8.0、15.0、30.0重量%に変えた以外は、実施例1と同様に発泡性成分含有ハードキャンディ含有グミキャンディを試作し、温度37℃、湿度85%での保存試験結果を表2に示す。
表2の結果より、グミキャンディの水分含量が15重量%以下の場合に、炭酸ガス生成による容器の膨張、発泡感、カリカリとした食感が奏されることがわかる。
【0043】
【表2】

【0044】
(実施例5〜7及び参考例1、2)
ハードキャンディの粒子径を0.5mm未満、0.5mm以上3.0mm以下、3.0以上7.0mm以下、7.0mm以上10.0mm以下及び10.0mmを越える大きさに変えた以外は実施例1と同様にして、ハードキャンディ含有グミキャンディを試作し、評価した品質を表3に示す。
なお、品質については、それぞれ下記の評価基準に従って評価した。
◎:ハードキャンディの食感が十分に味わえる。
○:ハードキャンディの食感が味わえる。
△:ハードキャンディの食感が味わえるが違和感がある。
×:ハードキャンディの食感が味わえない。
【0045】
【表3】

【0046】
表3の結果より、ハードキャンディの粒子径を0.5〜10.0mmに調整することで、食感(中でもカリカリした食感)がより向上することがわかる。
【0047】
(実施例8〜12及び参考例3〜5)
ハードキャンディ含有グミキャンディ中のハードキャンディの含有量を3.0、5.0、10.0、20.0、30.0、40.0、50.0、60.0重量%とした以外は、実施例1と同様に試作を行った。このハードキャンディ含有グミキャンディの品質の評価を表4に、作業性の評価を表5に示す。
表4、5の結果より、実施例8〜12のように、ハードキャンディ含有グミキャンディ中のハードキャンディの含有量を5.0〜40.0重量%に調整することで、カリカリした食感と発泡感の感じ方がより顕著になり、しかも作業性・成形性にも優れることがわかる。
【0048】
【表4】

【0049】
【表5】

【0050】
なお、実施例1と同じ原料を用いて、還元パラチノース、ソルビトール、澱粉、グリセリンの含有量をそれぞれ変化させたグミキャンディ液を調製して、ハードキャンディを混合してハードキャンディ含有グミキャンディを作製したところ、還元パラチノースの含有量が10〜40重量%、ソルビトールの含有量が30〜60重量%、澱粉の含有量が1〜10重量%、グリセリンの含有量が1〜10重量%の範囲内であれば、容器の膨張がなく、喫食時にシュワシュワとした十分な発泡感があり、カリカリしたハードキャンディの食感が十分に残っているものであることがわかった。
【0051】
(比較例6〜比較例13)
グミキャンディを表6に示す配合に調製した以外は、実施例1と同様に試作を行った。試作した比較例6〜13のハードキャンディ含有グミキャンディの品質の評価を表6に示す。また、表7に配合割合を示す。
表6の結果より、本発明で提示している範囲以外の組成ではグミキャンディの美味しさが損なわれたり、そうでなくとも、作業性が著しく低下するということが分かる。
【0052】
【表6】

【0053】
【表7】

【産業上の利用可能性】
【0054】
本発明によれば、グミキャンディ中に発泡性成分を含有したハードキャンディを含有せしめることで、喫食時にシュワシュワとした発泡感とハードキャンディのカリカリとした食感が味わえるハードキャンディ含有グミキャンディを提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マルチトール及び/又は還元パラチノースと発泡性成分とを含有するハードキャンディがグミキャンディ内に分散されているハードキャンディ含有グミキャンディであって、
前記グミキャンディがグミキャンディの全重量に対して還元パラチノース10〜40重量%、ソルビトール30〜60重量%、澱粉1〜10重量%及びグリセリン1〜10重量%を含み、水分含量が15重量%以下であることを特徴とするハードキャンディ含有グミキャンディ。
【請求項2】
ハードキャンディの周囲がシェラックで被覆されていない請求項1に記載のハードキャンディ含有グミキャンディ。
【請求項3】
グミキャンディ中に分散されているハードキャンディの粒子径が0.5〜10.0mmであり、ハードキャンディの含有量が5〜40重量%である請求項1又は2に記載のハードキャンディ含有グミキャンディ。
【請求項4】
マルチトール及び/又は還元パラチノースと発泡性成分を含むハードキャンディを製造する工程、
ハードキャンディを、80℃以下、水分含量が15重量%以下に調整されたグミキャンディ液に分散させる工程、
得られたハードキャンディ含有グミキャンディ液を成形型に充填する工程、
次いで、乾燥工程を経ずにハードキャンディ含有グミキャンディを脱型する工程
を有することを特徴とする請求項1〜3いずれかに記載のハードキャンディ含有グミキャンディの製造方法。