説明

ハードコートフィルム

【課題】機械強度及び防汚性の両立が安定的に保たれたハードコートフィルムを提供する。
【解決手段】透明基材上の少なくとも一方の面にハードコート層を備え、且つ、ハードコート層が最表面に位置するハードコートフィルムであって、該ハードコート層がフッ素化合物および/またはケイ素系化合物を含んでなり、且つ、X線光電子分光分析装置で測定される前記ハードコート層表面のフッ素の存在率が20atomic%以上70atomic%以下の範囲内であり、且つ、ケイ素の存在率が0atomic%以上10atomic%以下の範囲内であり、且つ、表面接触角から算出される表面自由エネルギーが15mN/m以上20mN/m以下の範囲内であるハードコートフィルムを提供する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、防汚性を有するハードコート層及びそれを少なくとも該ハードコート層を備えてなるハードコートフィルムに関する。
【背景技術】
【0002】
液晶ディスプレイ(LCD)又は陰極管表示装置(CRT)等の画像表示装置における画像表示面は、外部光源から照射された光線を散乱させ画像表示面上に移りこまなくすること、もしくは光線の反射を低減させることが要求されている。これに対して、光透過性基材に、反射防止層を形成させた光学積層体(例えば、反射防止積層体)を利用することにより、画像表示装置の画像表示面の反射を低減させ視認性を向上させることが一般になされている。
【0003】
従来、光学積層体の最表面は、様々な使用環境に晒され、傷が付きやすく、また汚れが付着し易いことが指摘されている。これに対して、特許文献1では、画像表示面の耐擦傷性と汚染防止とを向上させるために、ハードコート層に防汚染剤を添加したハードコートフィルムが提案されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−104403号公報
【特許文献2】特開2007−264281号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は機械強度及び防汚性の両立が安定的に保たれたハードコートフィルムを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために請求項1に係る発明としては、透明基材上の少なくとも一方の面にハードコート層を備え、且つ、ハードコート層が最表面に位置するハードコートフィルムであって、該ハードコート層がフッ素化合物および/またはケイ素系化合物を含んでなり、且つ、X線光電子分光分析装置で測定される前記ハードコート層表面のフッ素の存在率が20atomic%以上70atomic%以下の範囲内であり、且つ、ケイ素の存在率が0atomic%以上10atomic%以下の範囲内であり、且つ、表面接触角から算出される表面自由エネルギーが15mN/m以上20mN/m以下の範囲内であることを特徴とするハードコートフィルムとした。
【0007】
また、請求項2に係る発明としては、前記ハードコート層の層厚が5μm以上20μm以下の範囲内であることを特徴とする請求項1記載のハードコートフィルムとした。
【発明の効果】
【0008】
本発明は機械強度及び防汚性の両立が安定的に保たれたハードコートフィルムを提供することができた。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】図1は本発明のハードコートフィルムの断面説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1に本発明のハードコートフィルムの断面説明図を示した。本発明のハードコートフィルムにあっては透明基材1上にハードコート層2を備える。そして、ハードコート層2がフッ素系化合物および/またはケイ素系化合物を含んでおり且つ、X線光電子分光分析装置で測定されるハードコート層2表面Aのフッ素の存在率が20atomic%以上70atomic%以下の範囲内であり、且つ、ケイ素の存在率が0atomic%以上10atomic%以下の範囲内であり、表面接触角から算出されるハードコート層2表面Aの表面自由エネルギーが15mN/m以上20mN/m以下の範囲内であることを特徴とする。
【0011】
本発明のハードコートフィルムにあっては、ハードコート層がフッ素系化合物および/またはケイ素系化合物を含む。フッ素系化合物およびシリコーン系化合物はハードコート層表面に防汚性を付与し、さらにはハードコート層表面の滑り製を向上させることによりハードコート層表面の耐擦傷性を向上させることができる。
【0012】
本発明のハードコートフィルムにあっては、X線光電子分光分析装置で測定されるハードコート層2表面Aのフッ素の存在率が20atomic%以上70atomic%以下の範囲内であり、且つ、ケイ素の存在率が0atomic%以上10atomic%以下の範囲内であることを特徴とする。
【0013】
ハードコート層2表面Aのフッ素の存在率が20atomic%に満たない場合にあっては、十分な防汚性及び耐擦傷性を備えるハードコート層とすることができない。また、ハードコート層表面のフッ素の存在率が高いほど防汚性が高く耐擦傷性に優れたハードコートフィルムとすることができるが、ハードコート層2表面Aのフッ素の存在率が70atomic%を超えるハードコート層を形成することは困難である。
【0014】
また、ハードコート層2表面Aのケイ素の存在率が10%を超える場合にあっては、十分な防汚性及び耐擦傷性を備えるハードコート層とすることができない。本発明者は、フッ素系化合物および/またはケイ素系化合物を含むハードコート層において、ハードコート層表面のフッ素の存在率をできるだけ大きくし、ハードコート層表面のケイ素の存在率をできるだけ小さくすることにより、防汚性と耐擦傷性に優れたハードコートフィルムとすることができることを見い出し本発明にいたった。
【0015】
本発明のハードコートフィルムにあっては、防汚性を付与するために添加するフッ素系化合物および/またはケイ素系化合物がハードコート層2の表面A近傍に偏在し、ハードコート層表面は防汚性を発現している。
【0016】
本発明にあって、ハードコート層表面のフッ素の存在率(atomic%)、ケイ素の存在率(atomic%)はX線光電子分光分析装置(日本電子製 JPS−9010MX)を用いて求めた。このとき、X線源としてはMgのKαを用い、加速電圧10kV、エミッション電流10mAとして求めた。
【0017】
また、本発明のハードコートフィルムにあっては、表面接触から算出されるハードコート層2表面Aの表面自由エネルギーが15mN/m以上20mN/m以下の範囲内であることを特徴とする。表面自由エネルギーは表面接触角から拡張Fowkesの式で求めることができ、この値が小さいほうが防汚特性が良好である。本発明のハードコートフィルムにあっては、表面自由エネルギーが20mN/m以下であるため、高い防汚性と耐擦傷性を備えるハードコートフィルムとすることができる。表面自由エネルギーが20mN/mを超える場合には十分な防汚性及び耐擦傷性を備えるハードコート層とすることができない。一方、15mN/mを下回るハードコート層を形成することは困難である。
【0018】
また、本発明のハードコートフィルムにあってはハードコート層の層厚が5μm以上20μm以下の範囲内であることが好ましい。5μmを下回る場合にあっては十分な鉛筆硬度を備えるハードコートフィルムとすることができない場合がある。一方、20μmを超える場合にあっては、形成されるハードコートフィルムのカールの度合いが大きくなってしまうことがある。
【0019】
本発明のハードコートフィルムにあっては、透明基材上に、ハードコート層形成用塗液を塗布し、乾燥及び電離放射線照射をおこなうことによりハードコート層を形成し、得ることができる。ハードコート層形成用塗液は、少なくとも電離放射線硬化型材料と防汚剤であるフッ素系化合物および/またはケイ素系化合物と溶媒を含む。
【0020】
本発明の反射防止フィルムにおける透明基材としては、種々の有機高分子からなるフィルムまたはシートを用いることができる。例えば、ディスプレイ等の光学部材に通常使用される基材が挙げられ、透明性や光の屈折率等の光学特性、さらには耐衝撃性、耐熱性、耐久性などの諸物性を考慮して、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系、トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース、セロファン等のセルロース系、6−ナイロン、6,6−ナイロン等のポリアミド系、ポリメチルメタクリレート等のアクリル系、ポリスチレン、ポリ塩化ビニル、ポリイミド、ポリビニルアルコール、ポリカーボネート、エチレンビニルアルコール等の有機高分子からなるものが用いられる。特に、ポリエチレンテレフタレート、トリアセチルセルロース、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレートが好ましい。中でも、トリアセチルセルロースにあっては、複屈折率が小さく、透明性が良好であることから液晶ディスプレイに対し好適に用いることができる。
【0021】
なお、透明基材の厚みは25μm以上200μm以下の範囲内にあることが好ましく、さらには、40μm以上80μm以下の範囲内にあることが好ましい
電離放射線硬化型材料としては、アクリル系材料を用いることができる。アクリル系材料としては、多価アルコールのアクリル酸またはメタクリル酸エステルのような多官能または多官能の(メタ)アクリレート化合物、ジイソシアネートと多価アルコール及びアクリル酸またはメタクリル酸のヒドロキシエステル等から合成されるような多官能のウレタン(メタ)アクリレート化合物を使用することができる。またこれらの他にも、電離放射線型材料として、アクリレート系の官能基を有するポリエーテル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、アルキッド樹脂、スピロアセタール樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリチオールポリエン樹脂等を使用することができる。
【0022】
なお、本発明において「(メタ)アクリレート」とは「アクリレート」と「メタクリレート」の両方を示している。たとえば、「ウレタン(メタ)アクリレート」は「ウレタンアクリレート」と「ウレタンメタアクリレート」の両方を示している。
【0023】
単官能の(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、アクリロイルモルフォリン、N−ビニルピロリドン、テトラヒドロフルフリールアクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、セチル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2−エトキシエチル(メタ)アクリレート、3−メトキシブチル(メタ)アクリレート、エチルカルビトール(メタ)アクリレート、リン酸(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性リン酸(メタ)アクリレート、フェノキシ(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性フェノキシ(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性フェノキシ(メタ)アクリレート、ノニルフェノール(メタ)アクリレート、エチレンオキサイド変性ノニルフェノール(メタ)アクリレート、プロピレンオキサイド変性ノニルフェノール(メタ)アクリレート、メトキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシプロピレングリコール(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチル−2−ヒドロキシプロピルフタレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルハイドロゲンフタレート、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルハイドロゲンフタレート、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルヘキサヒドロハイドロゲンフタレート、2−(メタ)アクリロイルオキシプロピルテトラヒドロハイドロゲンフタレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、ヘキサフルオロプロピル(メタ)アクリレート、オクタフルオロプロピル(メタ)アクリレート、オクタフルオロプロピル(メタ)アクリレート、2−アダマンタンおよびアダマンタンジオールから誘導される1価のモノ(メタ)アクリレートを有するアダマンチルアクリレートなどのアダマンタン誘導体モノ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0024】
前記2官能の(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、プロポキシ化ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、エトキシ化ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレートなどのジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0025】
前記3官能以上の(メタ)アクリレート化合物としては、例えば、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エトキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロポキシ化トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリス2−ヒドロキシエチルイソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート等のトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等の3官能の(メタ)アクリレート化合物や、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンヘキサ(メタ)アクリレート等の3官能以上の多官能(メタ)アクリレート化合物や、これら(メタ)アクリレートの一部をアルキル基やε−カプロラクトンで置換した多官能(メタ)アクリレート化合物等が挙げられる。
【0026】
アクリル系材料の中でも、所望する分子量、分子構造を設計でき、形成されるハードコート層の物性のバランスを容易にとることが可能であるといった理由から、多官能ウレタンアクリレートを好適に用いることができる。ウレタンアクリレートは、多価アルコール、多価イソシアネート及び水酸基含有アクリレートを反応させることによって得られる。
具体的には、共栄社化学社製、UA−306H、UA−306T、UA−306l等、日本合成化学社製、UV−1700B、UV−6300B、UV−7600B、UV−7605B、UV−7640B、UV−7650B等、新中村化学社製、U−4HA、U−6HA、UA−100H、U−6LPA、U−15HA、UA−32P、U−324A等、ダイセルユーシービー社製、Ebecryl−1290、Ebecryl−1290K、Ebecryl−5129等、根上工業社製、UN−3220HA、UN−3220HB、UN−3220HC、UN−3220HS等を挙げることができるがこの限りではない。
【0027】
またこれらの他にも、電離放射線型材料として、アクリレート系の官能基を有するポリエーテル樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、アルキッド樹脂、スピロアセタール樹脂、ポリブタジエン樹脂、ポリチオールポリエン樹脂等を使用することができる。
【0028】
防汚剤としては、ケイ素系化合物、フッ素系化合物、またはこれらの混合化合物が挙げられる。防汚剤は、ハードコートフィルムの最表面の汚れ防止を主目的とし、さらにハードコートフィルム表面の耐擦傷性を付与することが可能となる。防汚剤の具体例としては、フッ素系化合物、ケイ素系化合物、またはこれらの混合化合物が挙げられる。また、防汚剤はそれ自体が反応基を有するか否かは問わない。
【0029】
防汚剤は市販品として入手可能であり、好ましくはそれが利用される。防汚剤(滑り性付与剤)の具体例としては、大日本インキ社製のメガファックシリーズ、例えば、MCF350−5、F445、F455、F178、F470、F475、F479、F477、TF1025、F478、F178K等が挙げられ;東芝シリコーン社製のTSFシリーズ等が挙げられ;信越化学社製のX22シリーズ、KFシリーズ等が挙げられ;チッソ社製のサイラプレーンシリーズ等が挙げられる。
【0030】
また、防汚剤は反応性基を含んでいてもよい。反応性基を含む防汚剤の具体例としては、SUA1900L10(重量平均分子量4200;新中村化学社製)、SUA1900L6(重量平均分子量2470;新中村化学社製)、Ebecryl1360(ダイセルユーシービー社製)、UT3971(日本合成社製)、デイフェンサTF3001(大日本インキ社製)、デイフェンサTF3000(大日本インキ社製)、デイフェンサTF3028(大日本インキ社製)、KRM7039(ダイセルユーシービー社製)、ライトプロコートAFC3000(共栄社化学社製)、KNS5300(信越シリコーン社製)、UVHC1105(GE東芝シリコーン社製)、UVHC8550(GE東芝シリコーン社製)、Ebecryl350(ダイセルユーシービー社製)、ACS−1122(日本ペイント社製)が挙げられる。
【0031】
また、防汚剤としては、ポリオルガノシロキサン基含有グラフトポリマー、ポリオルガノシロキサン含有ブロックポリマー、フッ素化アルキル基などを含有する2官能以上の多官能アクリレートを用いることもできる。
【0032】
防汚剤である、ケイ素系化合物、フッ素系化合物としてはその数平均分子量は500以上10万以下であることが好ましい。さらに好ましくは下限が750以上であり、より好ましくは1000以上であり、好ましくは上限が7万以下であり、より好ましくは5万以下である。
【0033】
防汚剤の添加量は、適宜定めることができるが、ハードコート層を形成用塗液の全重量100重量部に対して0.001重量部以上10重量部以下であり、好ましくは下限が0.01重量部以上であり、より好ましくは0.1重量部以上であり、好ましくは上限が70重量部以下であり、より好ましくは50重量部以下である。防汚染剤及び/又は滑り性付与剤の添加量が、上記範囲内にあることにより、十分な防汚染機能が発揮され、かつ、ハードコート層の硬度をも有するので好ましい。
【0034】
ハードコート層形成用塗液に含まれる溶媒としては公知のものを用いることができるが、透明基材を溶解または膨潤させる溶媒を含むことが好ましい。透明基材を溶解または膨潤させる溶媒を用いることにより、透明基材とハードコート層の密着性を向上させることができ、また、ハードコート層と透明基材の屈折率差による光学干渉を消失することができる。
【0035】
透明基材としてトリアセチルセルロースフィルムを用いた際の透明基材を溶解または膨潤させる溶媒としては、ジブチルエーテル、ジメトキシメタン、ジメトキシエタン、ジエトキシエタン、プロピレンオキシド、ジオキサン、ジオキソラン、トリオキサン、テトラヒドロフラン、アニソールおよびフェネトール等のエーテル類、またアセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、ジプロピルケトン、ジイソブチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、およびメチルシクロヘキサノン等の一部のケトン類、また蟻酸エチル、蟻酸プロピル、蟻酸n−ペンチル、酢酸メチル、酢酸エチル、プロピオン酸メチル、プロピオン醸エチル、酢酸n−ペンチル、およびγ−プチロラクトン等のエステル類、さらには、メチルセロソルブ、セロソルブ、ブチルセロソルブ、セロソルブアセテート等のセロソルブ類が挙げられる。これらは1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0036】
トリアセチルセルロースフィルムを溶解または膨潤させない溶媒としては、トルエン、キシレン、シクロヘキサン、シクロヘキシルベンゼンなどの芳香族炭化水素類、n−ヘキサンなどの炭化水素類、メチルイソブチルケトン、メチルブチルケトンなどの一部のケトン類などが挙げられる。これらは1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0037】
透明基材を溶解または膨潤させる溶媒の添加量は、適宜定めることができるが、例えば、ハードコート層形成用塗液100重量部に対して、0.01重量部以上50重量部以下であり、好ましくは下限が0.1重量部(より好ましくは1重量部)以上であり、上限が25重量部(より好ましくは15重量部)以下である。
【0038】
また、ハードコート層形成用塗液としては、溶剤乾燥型樹脂を含有させることもできる。溶剤乾燥型樹脂としては、主として熱可塑性樹脂が挙げられる。熱可塑性樹脂は一般的に例示されるものが利用される。溶剤乾燥型樹脂の添加により、塗布面の塗膜欠陥を有効に防止することができる。本発明の好ましい態様によれば、透明基材の材料がTAC等のセルロース系樹脂の場合、熱可塑性樹脂の好ましい具体例として、セルロース系樹脂、例えばニトロセルロース、アセチルセルロース、セルロースアセテートプロピオネート、エチルヒドロキシエチルセルロース等が挙げられる。
【0039】
ハードコート層形成用塗液にあっては、電離放射線として紫外線を用いる場合には開始剤を含む。開始剤は、任意のものを使用できるが、好ましくは、365nm以上の長波長での吸光係数100(ml/g・cm)以下の重合開始剤と、365nm以上の長波長での吸光係数100(ml/g・cm)より大きい重合開始剤との両方からなるものを使用するのが好ましい。365nm以上の長波長での吸光係数100(ml/g・cm)以下の重合開始剤の具体例としては、市販品として、Irgacure184、Irgacure250、Irgacure651、IRGACURE754、Irgacure907、Irgacure2959、Darocure1173、DarocureEDB、DarocureEHA(チバケミカル社製)等が挙げられる。365nm以上の長波長での吸光係数100(ml/g・cm)より大きい重合開始剤の具体例としては、市販品として、IrgacureOXE01、IRGACURE369、Irgacure784、Irgacure819、Irgacure907、Irgacure1300、IRGACURE1800、Darocure1173、DarocureTPO、Darocure4265、CGI242(チバケミカル社製)等が挙げられる。
【0040】
また、ハードコート層形成用塗液には添加剤として、表面調整剤、屈折率調整剤、密着性向上剤、硬化剤等を加えることもできる。
【0041】
ハードコート層形成用塗液は透明基材上に塗布され、塗膜を形成する。帯電防止ハードコート層形成用塗液を透明基材上に塗布するための塗工方法としては、ロールコーター、リバースロールコーター、グラビアコーター、マイクログラビアコーター、ナイフコーター、バーコーター、ワイヤーバーコーター、ダイコーター、ディップコーターを用いた塗布方法を用いることができる。
【0042】
次に、透明基材上に形成された塗膜は乾燥することにより、塗膜中の溶媒は除去される。このとき乾燥手段としては、加熱、送風、熱風等を用いることができる。
【0043】
ハードコート層形成用塗液を透明基材上に塗布することにより得られる塗膜に対し、電離放射線を照射することにより、ハードコート層が形成される。電離放射線としては、紫外線、電子線を用いることができる。紫外線硬化の場合は、高圧水銀灯、低圧水銀灯、超高圧水銀灯、メタルハライドランプ、カーボンアーク、キセノンアーク等の光源が利用できる。また、電子線硬化の場合はコックロフトワルト型、バンデグラフ型、共振変圧型、絶縁コア変圧器型、直線型、ダイナミトロン型、高周波型等の各種電子線加速器から放出される電子線が利用できる。電子線は、50〜1000KeVのエネルギーを有するのが好ましい。100〜300KeVのエネルギーを有する電子線がより好ましい。
【0044】
電離放射線照射工程にあっては、酸素濃度2.0%以下の雰囲気下でおこなうことが好ましい。酸素濃度2.0%以下の雰囲気下で紫外線、電子線等の電離放射線おこなうことにより、十分な表面硬度を備える防眩フィルムとすることができる。具体的には、窒素等の不活性ガスでパージした中で電離放射線照射をおこなうとよい。酸素濃度2.0%を超える場合にあっては、酸素阻害により防眩層表面の表面硬度が低下してしまい十分な表面硬度を得ることができなくなってしまう。
【実施例1】
【0045】
ハードコート層用組成物の調製
下記組成の成分を混合機において十分混合した後、ハードコート層用組成物を調製した。
【0046】
組成1
ウレタンアクリレート(UV1700B;日本合成製) 9.0重量部
フッ素系防汚染剤(デイフェンサTF3001;大日本インキ社製)
1.0重量部
重合開始剤(Irgacure184:チバスペシャルティーケミカルズ)
0.4重量部
メチルエチルケトン 10重量部
組成2
ウレタンアクリレート(UV1700B;日本合成製) 9.0重量部
フッ素系防汚染剤(デイフェンサTF3001;大日本インキ社製)
0.0001重量部
重合開始剤(Irgacure184:チバスペシャルティーケミカルズ)
0.4重量部
メチルエチルケトン 10重量部
ハードコートフィルムの作成
実験例1
ハードコート層の形成
セルローストリアセテートフィルム(厚み80μm)の片面に、組成1のハードコート層用組成物を湿潤重量20g/m(乾燥重量10g/m)で塗布した。50℃にて30秒乾燥し、紫外線100mJ/cmを照射して(高屈折率)ハードコート層を形成した。
【0047】
比較例1
組成2を用いて実施例2と同様にハードコートを作成した。
【0048】
評価試験
実験例及び比較例の光学積層体について、下記評価基準に基づいて評価し、その結果を下記表に記載した。
【0049】
なお、実験例及び比較例のハードコート層表面のケイ素、及びフッ素の存在量は、XPS(X線光電子分光測定)装置を使用して測定した。また、接触角計(協和界面(株)会社製FACE接触角計CA−X型)を用いてセ一緒区画測定を行い、表面自由エネルギーを測定した。さらに鉛筆硬度試験機を用いて硬度の評価をおこなった。また、ハードコート層表面に油性マジックで線を引き、そのハジキ具合を目視評価することにより防汚性の評価をおこなった。
【0050】
評価1:XPS測定
・フッ素の存在量
○:20atomic%以上70atomic%以下
△:10atomic%以上20atomic%未満
×:10atomic%未満
・ケイ素の存在量
○:10atomic%以下
×:10atomic%より大きい
評価2:表面自由エネルギー
○:15mN/m以上20mN/m以下
×:20mN/mより大きい
評価3:鉛筆硬度試験
○:3Hまたは4H
×:3H未満
評価4:防汚性評価
○:防汚性良好
×:防汚性不十分
表1は以下の通り。
【0051】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0052】
本発明のハードコートフィルムは、陰極管表示装置(CRT)、液晶表示装置(LCD)、プラズマディスプレイパネル(PDP)、フィールドエミッションディスプレイ(FED)などのディスプレイの表面や家電製品などのタッチパネル、ガラス等の表面保護フィルムに好適である。
【符号の説明】
【0053】
1:基材トリアセチルセルロース
2:ハードコート層
3:添加剤が偏在している層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
透明基材上の少なくとも一方の面にハードコート層を備え、且つ、ハードコート層が最表面に位置するハードコートフィルムであって、
該ハードコート層がフッ素化合物および/またはケイ素系化合物を含んでなり、且つ、X線光電子分光分析装置で測定される前記ハードコート層表面のフッ素の存在率が20atomic%以上70atomic%以下の範囲内であり、且つ、ケイ素の存在率が0atomic%以上10atomic%以下の範囲内であり、且つ、
表面接触角から算出される表面自由エネルギーが15mN/m以上20mN/m以下の範囲内である
ことを特徴とするハードコートフィルム。
【請求項2】
前記ハードコート層の層厚が5μm以上20μm以下の範囲内であることを特徴とする請求項1記載のハードコートフィルム。

【図1】
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【公開番号】特開2010−243700(P2010−243700A)
【公開日】平成22年10月28日(2010.10.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−90966(P2009−90966)
【出願日】平成21年4月3日(2009.4.3)
【出願人】(000003193)凸版印刷株式会社 (10,630)
【Fターム(参考)】