説明

バイオオイル製造装置、バイオオイル製造システムおよびバイオオイル製造方法

本発明は、バイオオイル製造装置、バイオオイル製造システム、およびバイオオイル製造方法に関する。反応器の傾斜部にバイオマスを供給し、前記傾斜部に供給された前記バイオマスの上面に高温の流動砂を供給し、加熱器が前記傾斜部を加熱する。したがって、バイオマスの急速熱分解性能を向上させ、バイオオイルの収率も増大させることができる。また、加熱器の燃焼ガスを反応器の内部に供給し、反応器の内部を容易に非酸化性雰囲気とすることができ、このようなバイオオイル製造装置を極めて簡単な構造で製作することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオオイル製造装置、バイオオイル製造システムおよびバイオオイル製造方法に関し、より詳細には、急速熱分解方法を利用してバイオマスからバイオオイルを効果的に生産することができるバイオオイル製造装置、バイオオイル製造システムおよびバイオオイル製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般的に、化石燃料は、環境汚染を誘発させる上に埋蔵量にも限界があるものとして知られている。したがって、各国では、化石燃料を代替する新材生エネルギー(renewable energy)の開発に多くの努力を注いでいる。
【0003】
新材生エネルギーは、水素、燃料電池、石炭ガス化のような新エネルギーと、太陽エネルギー、風力、水力、廃棄物、海洋、バイオマスおよび地熱のような再生エネルギーとに区分することができる。最近では、リグノセルロース系バイオマスを利用してバイオオイルを生産する技術が活発に進められている。
【0004】
バイオオイルは、リグノセルロース系バイオマスを急速熱分解または高温高圧加水分解などの方法を適用して生産した重油と類似した液体燃料である。特に、急速熱分解方法は、バイオオイルの収率を最も高めることができる熱分解技術である。しかし、急速熱分解方法は、反応時間を極めて短く維持させる正確性を必要とする技術であり、反応温度幅も比較的狭い方である。
【0005】
具体的に説明すれば、急速熱分解を利用したバイオオイルの製造方法は、バイオオイルの収率を高めるために反応界面において高い熱伝達率が必要となるため、材料のサイズを小さくしなければならず、反応温度を500℃および蒸気状態の温度を400℃〜450℃程度で精密に制御しなければならない。さらに、生成物が蒸気状態で存在する時間が約2秒以内となるように制御し、蒸気は短時間内に冷却させなければならない。これだけでなく、チャー(char:炭化物質)は蒸気状態の生成物を分解する触媒機能を行うため、迅速に分離除去することが必要となる。
【0006】
しかし、このような条件をすべて満たす急速熱分解技術は実用化されておらず、バイオオイルを高い収率で製造することができる急速熱分解タイプの製造システムを開発する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、バイオマスを急速熱分解させてバイオオイルを高い収率と効率で製造することができるバイオオイル製造装置、バイオオイル製造システム、およびバイオオイル製造方法を提供することを目的とする。
【0008】
また、本発明は、バイオマスを急速熱分解させる構造が極めて容易に構成されるだけでなく、低廉な費用で簡単に製作することができるバイオオイル製造装置、バイオオイル製造システム、およびバイオオイル製造方法を提供することを他の目的とする。
【0009】
さらに、本発明は、バイオオイルの製造時の費用とエネルギーの節減、および品質の向上を図ることができるバイオオイル製造装置、バイオオイル製造システム、およびバイオオイル製造方法を提供することをさらに他の目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の一実施形態によれば、少なくともいずれか一側面部に傾いて形成された傾斜部が備えられた反応器、前記反応器の上部の一側に備えられ、前記傾斜部にバイオマスを供給するバイオマス供給機、前記傾斜部に沿って移動する前記バイオマスの移動方向を基準として前記バイオマス供給機よりも前方に配置されるように前記反応器の上部の他側に備えられ、前記傾斜部との間に前記バイオマスが配置されるように前記バイオマスの上面に高温の流動砂(高温砂)を供給する流動砂供給機、および前記傾斜部を加熱させ、前記傾斜部に沿って下側に移動する前記バイオマスを急速熱分解させる加熱器を含むバイオオイル製造装置を提供する。
【0011】
すなわち、前記バイオマスは、前記加熱器によって加熱された傾斜部および前記高温の流動砂の間で急速熱分解されてもよい。また、前記バイオマスは、前記流動砂によって覆われた状態で前記傾斜部に沿って下側にスライディング移動しながら急速熱分解されてもよい。したがって、前記反応器は、前記傾斜部に沿って重力によって移動する前記バイオマスを連続的に急速熱分解させることができ、前記バイオマスと前記流動砂を移送させるための別途の移送手段が必要ない。
【0012】
前記傾斜部は、地面から20度〜80度の角度で傾いて形成されてもよい。したがって、前記反応器は、設計条件に応じて前記傾斜部の角度を適切に選択してもよい。これだけでなく、前記反応器は、運転条件に応じて前記傾斜部の角度を調節する構造に形成されてもよい。
【0013】
前記反応器の上部には、前記バイオマスの急速熱分解過程で生成されたガスを排出させる少なくとも1つのガス排出口が形成されてもよい。前記ガスには、前記バイオマスの急速熱分解過程で発生したバイオオイルが気体状態で含まれてもよい。
【0014】
前記反応器には、前記バイオマスの急速熱分解過程を観察するための透明窓が備えられてもよい。前記透明窓は、前記傾斜部と対向するように配置された側面部に互いに複数が離隔するように配置されてもよい。また、前記反応器には、前記バイオマスの急速熱分解過程時に内部温度を感知するための温度感知センサが備えられてもよい。前記温度感知センサは、前記傾斜部と対向するように配置された側面部に互いに複数が離隔するように配置されてもよい。
【0015】
すなわち、前記透明窓または前記温度感知センサは、前記傾斜部と対向する前記反応器の側面部に配置されるため、前記傾斜部に沿って下側に移動する前記バイオマスと前記流動砂に接触しない。これだけでなく、前記透明窓または前記温度感知センサは、前記反応器の側面部に上下方向に離隔するように配置されるため、前記バイオマスの急速熱分解過程を順に確認することができる。
【0016】
前記反応器の傾斜部には、前記加熱器が提供する熱が供給されて前記傾斜部に均一に伝達する熱伝達部が備えられてもよい。すなわち、前記熱伝達部は、前記加熱器から提供される熱を前記傾斜部の全面積に均等に伝達するため、前記バイオマスの急速熱分解性能は前記傾斜部の位置と関係なく均一になる。
【0017】
ここで、前記加熱器は、前記熱伝達部に高温の熱風を提供してもよく、前記熱伝達部は、前記熱風が通過する通路形状に形成されてもよい。すなわち、前記加熱器で発生した熱は、燃焼ガスと共に熱風形態で前記熱伝達部に伝達されるようになり、前記熱風が前記熱伝達部を通過する過程において前記傾斜部が前記熱風によって加熱されるようになる。
【0018】
前記熱伝達部の下部には前記熱風が吸入される熱風吸入口が形成されてもよく、前記熱伝達部の上部には前記傾斜部を加熱した熱風が排出される熱風排出口が形成されてもよい。したがって、前記熱風吸入口を通じて吸入された熱風は、前記熱伝達部に沿って上側に流動し、この流動過程において前記熱風の熱が前記傾斜部に伝達される。
【0019】
また、前記反応器の傾斜部または前記熱伝達部のうちの少なくとも1つには、前記熱風との熱伝達性能を高めるための熱伝達構造物が形成されてもよい。例えば、熱伝達構造物としては、フィンまたはブレードなどがある。フィンまたはブレードは、バイオオイル製造装置の設計条件に応じて多様なパターンと形状に形成されてもよい。
【0020】
前記反応器の傾斜部には、前記傾斜部を加熱して前記バイオマスの反応温度を調節する補助加熱器が備えられてもよい。すなわち、前記バイオマスの反応温度は、前記反応器の作動初期に前記加熱器の非正常な作動または前記流動砂と前記バイオマスの温度変化などにより、急速熱分解のための設定温度よりも低くなることがある。前記バイオマスの反応温度が低下すれば前記補助加熱器が作動し、前記バイオマスの反応温度が第1設定温度に維持されるようになる。
【0021】
前記流動砂供給機には、前記流動砂を加熱して前記流動砂の温度を調節する流動砂加熱器が備えられてもよい。すなわち、前記流動砂の温度が第2設定温度未満に低下するようになれば前記流動砂加熱器が作動し、前記流動砂の温度が第2設定温度に維持されるようになる。
【0022】
前記バイオマス供給機には、前記バイオマスの凝固を防ぐ凝固防止機構が備えられてもよい。したがって、前記凝固防止機構によって前記バイオマスの凝固状態が解消され、前記反応器の内部に前記バイオマスが円滑に供給されるようになる。
【0023】
例えば、前記凝固防止機構は、前記バイオマス供給機の内部に移動可能に配置され、前記バイオマス供給機の外側に一端が貫通するように配置された棒部、前記棒部に突出するように形成され、前記棒部の移動時に前記バイオマスの凝固状態を解消する複数の突起部、および前記棒部の一端に連結し、前記棒部を往復移動させる駆動部を含んでもよい。
【0024】
前記棒部は、前記反応器の上部と連結した部位に配置されてもよい。したがって、前記バイオマスは、前記反応器の内部に投入される直前に、前記凝固防止機構によって凝固状態が解消されるようになる。
【0025】
前記突起部は、前記棒部から前記反応器に向かって突出するように形成されてもよい。前記突起部の端部は、前記棒部と前記突起部の長さ方向に交差する方向に折り曲げられてもよい。
【0026】
前記バイオオイル製造装置は、前記反応器の上部に備えられ、前記流動砂供給機から供給される流動砂の上面に可燃性の高分子化合物質を供給する高分子化合物供給機をさらに含んでもよい。このように、反応器の内部に可燃性の高分子化合物質が供給されれば、前記バイオマスの急速熱分解時に生成されるバイオオイルの品質が画期的に改善されるだけでなく、バイオオイルの収率と量も増大するようになる。
【0027】
一方、本発明の他の側面によれば、少なくともいずれか一側面部に傾いて形成された傾斜部が備えられた反応器、前記反応器の上部の一側に備えられ、前記傾斜部にバイオマスを供給するバイオマス供給機、前記傾斜部に沿って移動する前記バイオマスの移動方向を基準として前記バイオマス供給機よりも前方に配置されるように前記反応器の上部の他側に備えられ、前記傾斜部との間に前記バイオマスが配置されるように前記バイオマスの上面に高温の流動砂を供給する流動砂供給機、前記傾斜部を加熱させ、前記傾斜部に沿って下側に移動する前記バイオマスを急速熱分解させる加熱器、前記反応器の内部で発生したガスの伝達を受け、前記ガスに含まれている固形物を除去するサイクロン機構、前記サイクロン機構で固形物が除去されたガスを凝縮させてバイオオイルを抽出する凝縮器、前記加熱器から排出される燃焼ガスを後処理し、前記燃焼ガス内の有害物質を除去する後処理機構、および前記後処理機構で後処理された前記燃焼ガスの成分を分析するガス分析器を含むバイオオイル製造システムを提供する。
【0028】
すなわち、前記バイオマスは、前記加熱器によって加熱された傾斜部および前記高温の流動砂の間で急速熱分解されるようになる。また、前記急速熱分解されたガスは、前記サイクロン機構で固形物を除去した後、前記凝縮器でバイオオイルを抽出するようになる。
【0029】
前記加熱器は、前記凝縮器で非凝縮のガスおよび前記反応器から排出されるチャーと流動砂を燃焼させてもよい。すなわち、前記非凝縮のガスと前記チャーは前記加熱器で燃焼されるようになり、前記流動砂は前記加熱器において高温で再生されるようになる。
【0030】
また、前記流動砂供給機は前記加熱器で加熱された流動砂が供給され、前記反応器は前記加熱器で発生した熱風が内部に供給されるようになる。したがって、前記流動砂を反復的に再使用するため、前記流動砂の費用を節減することができる。また、前記加熱器で発生した不活性の熱風によって前記反応器の内部が満たされるため、前記反応器の内部は大気圧以上の非酸化性雰囲気にすることができる。
【0031】
すなわち、従来では、反応器の内部に不活性ガスを高い圧力で注入して反応器の内部を非酸化性雰囲気にしたが、本発明の実施形態では、前記不活性ガスの代わりに前記加熱器で発生する熱風の一部を前記反応器の内部に供給する。したがって、前記バイオオイル製造装置は、高価の不活性ガスを用いずに費用を節減することができ、不活性ガスを高圧で供給する追加装置を省略して製品単価と運転費用を節減することができる。すなわち、従来の不活性ガス供給装置は、製品単価が高いだけでなく高圧でガスを供給するため、多量の流動化エネルギーを消耗する。
【0032】
前記バイオオイル製造システムは、前記反応器の下部と前記加熱器の間に備えられ、前記反応器から排出されるチャーと流動砂を前記加熱器に伝達するコンベア機構をさらに含んでもよい。したがって、前記反応器から連続的に排出されるチャーと流動砂は、前記加熱器に連続的に移送されるようになる。特に、前記チャーは前記バイオマスの急速熱分解反応を妨害するため、前記反応器の内部に前記チャーを長時間放置せず、リアルタイムで迅速に除去することは極めて重要である。
【0033】
前記反応器の傾斜部には、前記加熱器が提供する熱が供給されて前記傾斜部に均一に伝達する熱伝達部が備えられてもよい。すなわち、前記熱伝達部は、前記加熱器から提供される熱を前記傾斜部の全面積に均等に伝達するため、前記バイオマスの急速熱分解性能は前記傾斜部の位置と関係なく均一になる。
【0034】
一方、前記バイオオイル製造システムは、前記反応器または前記熱伝達部から排出される廃熱を利用して前記加熱器に供給される空気を予熱させる予熱器をさらに含んでもよい。したがって、前記バイオオイル製造システムは、前記予熱器を通じて前記反応器または前記熱伝達部から捨てられる廃熱のうちの一部を回収するため、システム全体のエネルギー効率を高めることができ、加熱器の負荷を減らして燃焼効率を高めることができる。
【0035】
前記サイクロン機構は、前記ガスの処理時にバイオオイルが凝縮しないように内部温度の低下を防ぐ保温構造が備えられてもよい。なぜなら、前記サイクロン機構の内部温度が低下すれば、前記サイクロン機構の内部で前記ガスに含まれているバイオオイルが凝縮し、前記バイオオイルの収率が大きく減少するためである。前記保温構造は、前記サイクロン機構の内部温度を前記バイオオイルが凝縮しない温度に維持する機能を有するすべての構造が用いられてもよい。例えば、前記保温構造としては、前記サイクロン機構を外部と断熱させる構造や、前記サイクロン機構の内部温度を調節する構造がある。
【0036】
前記凝縮器は、前記サイクロン機構で固形物が除去されたガスを中温で凝縮させる中温凝縮器、前記中温凝縮器で非凝縮のガスを電気集塵する電気集塵機、および前記電気集塵機で集塵されたガスを低温で凝縮させる低温凝縮器を備えてもよい。
【0037】
したがって、前記中温凝縮器と前記低温凝縮器が互いに異なる凝縮温度でバイオオイルを抽出するため、バイオオイルの収率を高めることができる。また、前記電気集塵機が前記中温凝縮器で非凝縮のガスに含まれている液滴状態のバイオオイルを電気集塵するため、バイオオイルの収率を高めることができる。
【0038】
前記反応器、前記バイオマス供給機、前記流動砂供給機、前記加熱器、前記サイクロン機構、または前記凝縮器のうちの少なくとも1つは、前記ガス分析器の分析値に応じて作動が調節されてもよい。したがって、前記バイオオイル製造システムは、ガス分析器の分析値に応じて正常作動の可否を簡単に感知できるだけでなく、非正常作動している機構を容易にチェックすることもできる。
【0039】
また、前記バイオオイル製造システムは、前記反応器の上部に備えられ、前記流動砂供給機から供給される流動砂の上面に可燃性の高分子化合物質を供給する高分子化合物供給機をさらに含んでもよい。このように、反応器の内部に可燃性の高分子化合物質が供給されれば、前記バイオオイルの収率と量が増大するようになり、前記バイオオイルの品質が向上するようになる。
【0040】
一方、本実施形態のさらに他の側面によれば、反応器の側面部に形成された傾斜部にバイオマスを供給するバイオマス供給段階、前記傾斜部に供給されたバイオマスの上面に高温の流動砂を供給する流動砂供給段階、前記傾斜部を加熱し、前記傾斜部に沿って下側に移動する前記バイオマスを急速熱分解させる急速熱分解段階、前記バイオマスの急速熱分解過程で発生するガスが伝達され、前記ガス内の固形物を除去するサイクロン段階、前記サイクロン段階で固形物が除去されたガスを凝縮させ、前記ガスからバイオオイルを抽出する凝縮段階、前記凝縮段階で非凝縮のガスおよび前記急速熱分解段階で生成されたチャーと流動砂を燃焼させる燃焼段階、前記燃焼段階で再生された高温の流動砂を前記流動砂供給段階に伝達する流動砂回収段階、前記燃焼段階で発生した熱風を前記反応器の内部に供給する熱風供給段階、前記燃焼段階で発生した燃焼ガスをろ過させ、前記燃焼ガスに含まれている有害物質を除去する後処理段階、前記後処理段階で後処理された前記燃焼ガスの成分を分析するガス分析段階、および前記ガス分析段階で分析された前記燃焼ガスの成分に応じてバイオマス供給段階、流動砂供給段階、急速熱分解段階、サイクロン段階、凝縮段階、熱風供給段階のうちの少なくとも1つの作動を調節する作動調節段階を含むバイオオイル製造方法を提供する。しかし、前記ガス分析段階では、前記後処理段階以外の他の段階で生成されたガスが分析されてもよい。
【0041】
すなわち、前記バイオマス供給段階と前記流動砂供給段階でバイオマスと流動砂を供給すれば、前記急速熱分解段階でバイオマスと流動砂が前記傾斜部に沿って下側に移動しながらバイオマスの急速熱分解が連続的に実行されるようになる。したがって、前記急速熱分解段階では、バイオマスの急速熱分解過程が別途の動力なく、重力の作用だけで簡単に実施されるようになる。
【0042】
前記急速熱分解段階では、前記燃焼段階で発生した熱を利用して前記傾斜部を加熱してもよい。すなわち、前記燃焼段階でチャーと流動砂および非凝縮性ガスを燃焼させる熱を利用して前記急速熱分解段階でバイオマスの急速熱分解させるため、エネルギー効率を高めることができるだけでなく、燃料費を節減することができる。
【0043】
前記燃焼段階では、前記急速熱分解段階で捨てられる廃熱を利用して燃焼時に用いられる外部空気を予熱してもよい。したがって、前記燃焼段階で低温の外部空気による負荷を減少させることができ、燃焼効率を向上させることができる。
【0044】
前記凝縮段階は、前記サイクロン段階で固形物が除去されたガスを中温で凝縮させ、前記ガスから高分子量のバイオオイルを抽出する中温凝縮過程、前記中温凝縮過程で非凝縮のガスを電気集塵し、前記ガスに含まれている液滴状態の前記バイオオイルを捕集する電気集塵過程、および前記電気集塵過程で電気集塵されたガスを低温で凝縮させ、前記ガスから低分子量のバイオオイルを抽出する低温凝縮過程を備えてもよい。すなわち、中温凝縮過程と低温凝縮過程では、凝縮点が異なる高分子量のバイオオイルおよび低分子量のバイオオイルをそれぞれ抽出することができる。電気集塵過程では、液滴状態の高分子量のバイオオイルを回収することができる。
【0045】
また、前記バイオオイル製造方法は、前記流動砂供給段階で供給された前記流動砂の上面に可燃性の高分子化合物質を供給する高分子化合物供給段階をさらに含んでもよい。前記高分子化合物質の一例としては、細かく粉砕された廃プラスチックがある。
【0046】
前記反応器には、前記バイオマスの急速熱分解過程時に内部温度を感知する温度感知センサが備えられてもよい。前記反応器には、前記傾斜部を選択的に加熱する補助加熱器が備えられてもよい。また、前記急速熱分解段階では、前記温度感知センサの感知値が設定温度未満であれば、前記補助加熱器を作動させてもよい。
【0047】
すなわち、前記バイオマスの反応温度は、前記反応器の作動初期に前記加熱器の非正常な作動または前記流動砂と前記バイオマスの温度変化などにより、設定温度よりも低くなることがある。したがって、前記温度感知センサの感知温度が第1設定温度未満に低下すれば前記補助加熱器が作動し、前記バイオマスの反応温度を調節するようになる。
【発明の効果】
【0048】
本発明の一実施形態に係るバイオオイル製造装置、バイオオイル製造システム、およびバイオオイル製造方法は、加熱器によって加熱された反応器の傾斜部に沿って高温の流動砂に覆われたバイオマスを下側に移動させてバイオマスを急速熱分解させるため、バイオマスの急速熱分解性能を安定的に確保することができ、バイオオイルの収率を大きく向上させることができる。
【0049】
また、本発明の一実施形態に係るバイオオイル製造装置、バイオオイル製造システム、およびバイオオイル製造方法は、バイオマスを急速熱分解させる構成と工程が簡単に形成されるため製作と運転が容易になるだけでなく、製品単価と運転費用も節減することができる。
【0050】
また、本発明の一実施形態に係るバイオオイル製造装置は、反応器に透明窓または温度感知センサが備えられるため、透明窓を通じてバイオマスの急速熱分解過程をリアルタイムで確認することができ、温度感知センサを通じてバイオマスの反応温度をリアルタイムでチェックすることができる。
【0051】
また、本発明の一実施形態に係るバイオオイル製造装置、バイオオイル製造システム、およびバイオオイル製造方法は、反応器の傾斜部に補助加熱器が備えられるため、バイオマスの反応温度を設定温度に簡単に維持させることができ、バイオオイルの収率を向上させることができる。特に、反応器の作動初期には補助加熱器と加熱器が同時に作動し、バイオマスの反応温度を設定温度により迅速に到達させることができる。これだけでなく、加熱器の作動温度変化および流動砂の温度変化によってバイオマスの反応温度が低下した場合にも、補助加熱器が選択的に作動し、バイオマスの反応温度を設定温度に一定に維持することができる。
【0052】
また、本発明の一実施形態に係るバイオオイル製造装置は、バイオマス供給機に凝固防止機構が備えられるため、凝固防止機構によって反応器に投入されるバイオマスの凝固を防ぎ、バイオマス供給機の供給性能を向上させることができる。
【0053】
また、本発明の一実施形態に係るバイオオイル製造装置、バイオオイル製造システム、およびバイオオイル製造方法は、反応器の傾斜部に可燃性の高分子化合物質を供給する高分子化合物供給機が備えられ、バイオマスの急速熱分解時に高分子化合物質が共に分解されるため、バイオオイルの品質を良好に改善させることができ、バイオオイルの収率および獲得量を向上させることができる。
【0054】
また、本発明の一実施形態に係るバイオオイル製造装置、バイオオイル製造システム、およびバイオオイル製造方法は、加熱器に供給される外部空気を反応器または熱伝達部から排出される廃熱で予熱させるため、反応器または熱伝達部の廃熱を回収してシステム全体のエネルギー効率を高めることができ、加熱器の負荷を減らして燃焼効率を向上させることができる。
【0055】
また、本発明の一実施形態に係るバイオオイル製造装置、バイオオイル製造システム、およびバイオオイル製造方法は、バイオマスの急速熱分解に用いられた流動砂を加熱器で再生させてバイオマスの急速熱分解に再使用するため、流動砂を繰り返して使用することができ、維持管理費用を節減することができる。
【0056】
また、本発明の一実施形態に係るバイオオイル製造装置、バイオオイル製造システム、およびバイオオイル製造方法は、加熱器で発生する不活性の熱風を反応器の内部に供給するため、反応器の内部圧力を上昇させ、反応器の内部に外部空気が流入する現象を防ぐことができる。これにより、反応器の内部は熱風によって非酸化雰囲気が形成され、バイオマスの急速熱分解時にバイオマスの酸化を防ぎ、バイオオイル製造装置の収率と効率を向上することができる。
【0057】
これだけでなく、加熱器で発生した熱風が反応器の内部に提供されるため、反応器の内部に不活性ガスを高い圧力で注入する別途の装置を省略することができる。このように、不活性ガスを供給する装置が省略されれば、バイオオイル製造装置の製品単価を低めることができ、装置を運転するためのエネルギーを節減することができる。さらに、高価の不活性ガスが使用されなければ、バイオオイル製造装置の運転費用を大きく節減することができる。
【0058】
さらに、本発明の一実施形態に係るバイオオイル製造装置、バイオオイル製造システム、およびバイオオイル製造方法は、後処理機構を利用して最終的に排出されるガス内の有害物質を除去することができ、ガス分析器を利用して後処理機構によって後処理されたガスの成分を分析することができる。特に、バイオオイル製造工程は、ガス分析器の分析データに応じて適切に制御される。
【図面の簡単な説明】
【0059】
【図1】本発明の一実施形態に係るバイオオイル製造システムの概略図である。
【図2】図1に示されたバイオオイル製造システムのバイオオイル製造装置を示す斜視図である。
【図3】図2に示されたバイオオイル製造装置を示す左側面図である。
【図4】図3に示されたA−A線による断面を示す図である。
【図5】図4に示されたB−B線による断面を示す図である。
【図6】本発明の一実施形態に係るバイオオイル製造装置の作動状態を示す図である。
【図7】本発明の一実施形態に係るバイオオイル製造方法を示すフローチャートである。
【図8】本発明の他の実施形態に係るバイオオイル製造システムの概略図である。
【図9】本発明の他の実施形態に係るバイオオイル製造装置の作動状態を示す図である。
【図10】本発明の他の実施形態に係るバイオオイル製造方法を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0060】
以下、本発明に係る実施形態について、添付の図面を参照しながら詳細に説明する。しかし、本発明が実施形態によって制限されたり限定されるものではない。各図面に提示された同一する参照符号は、同一する部材を示す。
【0061】
図1は、本発明の一実施形態に係るバイオオイル製造システムの概略図である。図2は、図1に示されたバイオオイル製造システムのバイオオイル製造装置を示す斜視図である。図3は、図2に示されたバイオオイル製造装置を示す左側面図である。図4は、図3に示されたA−A線による断面を示す図である。図5は、図4に示されたB−B線による断面を示す図である。図6は、本発明の一実施形態に係るバイオオイル製造装置の作動状態を示す図である。
【0062】
図1を参照すれば、本発明の一実施形態に係るバイオオイル製造システム100は、急速熱分解技術を利用してバイオマスMからバイオオイルを製造する装置である。一般的に、バイオマスMは、リグノセルロース、セルロース、水耕植物、有機性スラッジ、家畜糞尿、および食品廃棄物などを含んでもよい。以下、本実施形態では、説明の便宜のために、バイオオイル製造システム100がリグノセルロースバイオマスMからバイオオイルを生産するものとして説明するが、リグノセルロースバイオマスMに限定されるものではなく、セルロースまたは下水スラッジなどがすべて用いられてもよい。
【0063】
このようなバイオオイル製造システム、バイオマスMを急速熱分解させるバイオオイル製造装置は、反応器110、バイオマス供給機120、流動砂供給機130、および加熱器140を含んでもよい。
【0064】
図1〜図3を参照すれば、前記反応器110は、バイオマスMを急速熱分解させ、バイオマスMからバイオオイルを生成する装置である。反応器110は、バイオマスMを収容するために内部が中空形状に形成されてもよい。反応器110の上部には、バイオマスMと流動砂(温度砂)Sが流入する入口110aが形成されてもよい。反応器110の下部には、バイオマスMの急速熱分解時に生成されたチャーCおよび急速熱分解時に用いられた流動砂Sを排出する出口110bが形成されてもよい。
【0065】
また、反応器110は、少なくともいずれか一側面部に傾いて形成された傾斜部111が備えられてもよい。バイオマスMと流動砂Sは傾斜部111に積層された構造で配置されてもよく、重力によって傾斜部111に沿って下側にスライディング移動してもよい。すなわち、反応器110は、バイオマスMと流動砂Sを移動させるための別途の駆動手段および移動手段が省略されるようになる。したがって、反応器110の構造が極めて容易に形成され、反応器110の製造単価および運転費用が節減される。
【0066】
このような傾斜部111は、地面から20度〜80度の角度で傾いて形成されてもよい。傾斜部111の角度は、反応器110の設計条件に応じて多様に選択されてもよい。または、上述とは異なるように、傾斜部111の角度が反応器110の運転条件に応じて選択的に調節されてもよい。以下、本実施形態では、傾斜部111の角度が50度〜60度に形成されたものとして説明する。
【0067】
また、反応器110は、円形、楕円形、または多角形のうちのいずれか1つの形状の断面に形成されてもよい。以下、本実施形態では、反応器110が四角形の断面形状に形成されたものとして説明する。
【0068】
一方、図2と図3に示すように、傾斜部111は反応器110の後面部に形成され、反応器110は地面を基準として後方に向かって傾いたものとして説明する。すなわち、反応器110は、正面部、左側面部、右側面部、および後面部で定義される4つの側面部を有し、後面部全体が傾斜部111を形成する。
【0069】
また、反応器110の上部には、バイオマスMの急速熱分解過程で生成されたガスを排出させる少なくとも1つのガス排出口112が形成されてもよい。以下、ガス排出口112が、傾斜部111と対向するように配置された反応器110の正面上部に互いに複数が離隔するように配置されたものとして説明する。
【0070】
また、反応器110には、バイオマスMの急速熱分解過程を肉眼で観察することができるように透明窓113が備えられてもよい。反応器110には、バイオマスMの急速熱分解過程時に内部温度を感知することができるように温度感知センサ114が備えられてもよい。このような透明窓113と温度感知センサ114は、傾斜部111と対向するように配置された反応器110の正面に上下方向に複数の透明窓113と温度感知センサ114が互いに離隔するように配置されてもよい。すなわち、透明窓113と温度感知センサ114が反応器110の正面に配置されれば、傾斜部111に配置されたバイオマスMと接触しないようになる。また、透明窓113と温度感知センサ114が上下方向に離隔するように配置されれば、バイオマスMの急速熱分解過程によるバイオマスMの状態と反応温度を順にチェックすることができる。
【0071】
また、反応器110の傾斜部111には、傾斜部111を加熱してバイオマスMの反応温度を調節する補助加熱器115が備えられてもよい。補助加熱器115としては、電気ヒーターおよびガスバーナのように、バイオマスMの反応温度の制御が容易な多様な加熱手段が採用されてもよい。
【0072】
このような補助加熱器115は、傾斜部111に複数の補助加熱器115が上下方向に互いに離隔するように配置されてもよい。補助加熱器115は、加熱器140の作動可否とは関係なく別途に作動されてもよい。例えば、急速熱分解過程の初期には加熱器140と補助加熱器115が共に作動し、バイオマスMの反応温度が迅速に上昇するようになる。これだけでなく、加熱器140の非正常な作動またはバイオマスMと流動砂Sの温度低下が発生する場合には、補助加熱器115のうちのいずれか1つが選択的に作動し、バイオマスMの反応温度低下を防ぐことができる。
【0073】
図1〜図6を参照すれば、前記バイオマス供給機120は、反応器110の傾斜部111にバイオマスMを供給する装置である。前記バイオマス供給機120は、反応器110の上部に反応器110と連通するように連結されてもよい。バイオマス供給機120の上部にはバイオマスMを投入する投入口120bが形成されてもよく、バイオマス供給機120の下部には排出口120aが形成されてもよい。この場合、排出口120aは、そこからバイオマスMが排出されるように反応器110の入口110aと連通するように形成されている。バイオマス供給機120の排出口120aと反応器110の入口110aのうちの少なくとも1つは、開閉可能に形成されてもよい。
【0074】
バイオマス供給機120には、排出口110bに排出されるバイオマスMの凝固を防ぐ凝固防止機構122が備えられてもよい。すなわち、バイオマスMは細かく粉砕されたリグノセルロースバイオマスM、例えば鋸屑または木材チップであるため、バイオマス供給機120の内部で固まる可能性が極めて高い。しかし、バイオマスMがバイオマス供給機120の内部で固まるようになれば、バイオマス供給機120の排出口110bと反応器110の入口110aが開放するとき、バイオマスMが反応器110の内部に投入されなかったり、バイオマスが固まった状態で投入されるという問題が生じる。したがって、バイオマス供給機120にバイオマスMの凝固状態を解消することができる凝固防止機構122が備えられれば、バイオマス供給機120から反応器110の内部にバイオマスMが円滑に供給されるようになる。
【0075】
例えば、凝固防止機構122は、バイオマス供給機120の内部に移動可能に配置され、バイオマス供給機120の外側に一端が貫通するように配置された棒部123、棒部123に突出するように形成され、棒部123の移動時にバイオマスMの凝固状態を解消する複数の突起部124、および棒部123の一端に連結して棒部123を往復移動させる駆動部125を含んでもよい。
【0076】
棒部123は、バイオマスMの排出口110b上側に配置されてもよい。棒部123の一端はバイオマス供給機120の左側面と右側面のうちのいずれか一側面に貫通するように配置されてもよく、棒部123の他端はバイオマス供給機120の他の側面に移動可能に配置されてもよい。以下、棒部123の一端がバイオマス供給機120の左側面に貫通するように配置され、棒部123の他端がバイオマス供給機120の右側面に移動可能に配置されるものとして説明する。
【0077】
突起部124は、棒部123から反応器110に向かって下側に突出するように形成されてもよい。突起部124の端部は、棒部123と突起部124の長さ方向に交差する方向に折り曲げられてもよい。以下、本実施形態では、突起部124の端部が棒部123と突起部124の長さ方向にすべて直交する方向に折り曲げられたものとして説明する。したがって、突起部124は「L」形状に形成される。
【0078】
このような突起部124は、棒部123の長さ方向に複数が同じ間隔で互いに離隔するように配置されてもよい。また、突起部124の端部は、隣接する突起部124の端部と折り曲げられる方向が反対に形成されるように、突起部124が棒部123の長さ方向に沿って互いに交差するように配置されてもよい。
【0079】
駆動部125は、棒部123の駆動力を発生する駆動モータ125a、駆動モータ125aによって回転する回転体125b、および棒部123の一端と回転体125bに両端が回転可能に連結し、回転体125bの回転運動を棒部123の直線往復運動とする動力伝達リンク125cを含んでもよい。しかし、駆動部125は、棒部123を直線往復運動させることができる多様な構造で形成されてもよい。
【0080】
図1〜図3を参照すれば、前記流動砂供給機130は、反応器110の傾斜部111に供給されたバイオマスMの上面に高温の流動砂Sを供給する装置である。流動砂Sは、バイオマスMの上面に覆われ、バイオマスMの急速熱分解過程を促進させる物質である。流動砂Sは、急速熱分解過程時に溶融しない小さい粒子の物質、一例として砂または金属球が用いられてもよい。以下、本実施形態では、流動砂Sとして砂が用いられるものとして説明する。
【0081】
ここで、流動砂供給機130の上部には流動砂Sを投入する投入口130bが形成されてもよく、流動砂供給機130の下部には反応器110の入口110aと連通するように形成され、流動砂Sを排出させる排出口130aが形成されてもよい。流動砂供給機130の排出口130aと反応器110の入口110aのうちの少なくとも1つは、開閉可能に形成されてもよい。
【0082】
また、流動砂供給機130には、流動砂Sを加熱して流動砂Sの温度を調節する流動砂加熱器140が備えられてもよい。流動砂加熱器140としては、電気ヒーターおよびガスバーナのように、流動砂Sの温度の制御が容易な多様な加熱手段が採用されてもよい。すなわち、流動砂加熱器140は、バイオマスMの急速熱分解に最も適した温度で流動砂Sの温度を一定に維持させるようになる。
【0083】
図1〜図3を参照すれば、前記加熱器140は、反応器110の傾斜部111に熱風Hを提供して傾斜部111を加熱する装置である。したがって、バイオマスMは、傾斜部111に沿って下側に移動することにより、加熱器140の熱風Hおよび流動砂Sの熱によって急速熱分解されるようになる。このような加熱器140としては、電気ヒーター、ガスバーナ、燃焼炉、および流動層(fluidize bed)燃焼器などが用いられてもよいが、本実施形態では燃焼炉が用いられるものとして説明する。
【0084】
このような加熱器140は、傾斜部111に高温の熱風H形態で熱を伝達するが、熱風Hには燃焼時に発生する燃焼ガスが含まれる。したがって、加熱器140は、反応器110よりも相対的に低い位置に配置されることが好ましい。これにより、加熱器140で発生する熱風Hが自然に反応器110に伝達されるようになる。この反面、加熱器140の位置が反応器110よりも相対的に高く配置されれば、加熱器140で発生した熱風Hを反応器110に円滑に供給するために、別途の送風機を追加するようになる。
【0085】
また、反応器110の出口110bと加熱器140の間には、反応器110の出口110bから排出されるチャーCと流動砂Sを加熱器140に伝達するコンベア機構142が配置されてもよい。コンベア機構142としては、スクリューコンベア、ベルトコンベア、バケットコンベアなどが多様に採用されてもよい。
【0086】
このように、加熱器140は、反応器110の出口110bに排出されるチャーCと流動砂S、および後述する凝縮器160で非凝縮のガスG4を燃焼させてもよい。したがって、非凝縮のガスG4とチャーCは加熱器140で燃焼されて除去され、流動砂Sは加熱器140で燃焼されて高温の流動砂Sとして再生されるようになる。以後、加熱器140で再生された流動砂Sは、流動砂供給機130に回収されてもよい。
【0087】
加熱器140は、燃焼時に発生する熱風Hの一部を反応器110の内部に供給してもよい。これにより、バイオマスMの急速熱分解時に反応器110の内部圧力が適当な圧力に増加して外気の流入が遮断され、反応器110の内部を非酸化性雰囲気にしてバイオマスMの燃焼を妨げるようになる。したがって、バイオマスMの燃焼を妨げることにより、バイオマスMがすべて急速熱分解されてバイオオイルの収率が向上することとなる。
【0088】
また、反応器110の傾斜部111には、加熱器140の熱風Hを傾斜部111の全体に均一に伝達するために熱伝達部146が形成されてもよい。したがって、補助加熱器115は、熱伝達部146と独立的に傾斜部111に熱を直接提供するように傾斜部111に備えられたり、または熱伝達部146の内部に熱を提供するように熱伝達部146に備えられてもよい。以下、補助加熱器115が熱伝達部146に備えられたものとして説明する。
【0089】
熱伝達部146は、傾斜部111の背面に形成された通路形状のキャビティであってもよい。すなわち、加熱器140から伝達された熱風Hが熱伝達部146の内部に所定の時間停滞し、傾斜部111の全体面積に熱風Hの熱が均等に伝達されるようになる。熱伝達部146の下部には熱風Hが吸入される熱風吸入口が形成されてもよく、熱伝達部146の上部には傾斜部111の加熱に用いられた熱風H’が排出される熱風排出口が形成されてもよい。したがって、熱風吸入口を通じて吸入された熱風Hが熱伝達部146に沿って上側に流動し、この流動過程において熱風Hの熱が傾斜部111に伝達される。
【0090】
一方、熱伝達部146の内部には、熱風Hとの熱伝達性能を高めるための熱伝達構造物148が形成されてもよい。すなわち、熱伝達構造物148は、傾斜部111または熱伝達部146のうちの少なくとも1つに形成されてもよい。例えば、熱伝達構造物148は、熱風Hとの接触面積を増加させるようにフィンまたはブレード形状に形成されてもよく、設計条件に応じて多様なパターンと形状に形成されてもよい。以下、本実施形態では、熱伝達構造物148を傾斜部111に上下方向に離隔するように形成された複数のフィンとして説明するが、これに限定されるものではない。
【0091】
また、加熱器140には、熱伝達部146または反応器110から外気に排出される廃熱H’を利用して加熱器140に供給される空気を予熱させる予熱器144をさらに含んでもよい。ここで、廃熱H’は、熱伝達部146または反応器110に供給された熱風HがバイオマスMの急速熱分解に用いられた後、外気に排気される熱風H’に該当する。
【0092】
このように、加熱器140に余熱された空気が供給されれば、加熱器140の負荷が実質的に減少し、加熱器140の燃焼効率を向上することができる。また、予熱器144は、熱伝達タイプの熱交換器、空冷タイプの熱交換器などで構成されてもよい。予熱器144は、加熱器140の内部に外部空気を案内する経路上に配置されるだけでなく、熱伝達部146または反応器110から排出される廃熱H’の経路上に配置されてもよい。
【0093】
図1を参照すれば、本発明の一実施形態に係るバイオオイル製造システム100は、サイクロン機構150および凝縮器160をさらに含んでもよい。
【0094】
前記サイクロン機構150は、反応器110のガス排出口112を通じて排出されるガスGを受け取り、ガスGに含まれている固形物をサイクロン現象によって除去する装置である。サイクロン機構150が除去する固形物としては、バイオオイルの製造過程に悪影響を与えるチャーCが代表的である。このようなサイクロン機構150は、必要に応じて1回または数回のサイクロン過程によってガスG内の固形物を除去してもよい。以下、本実施形態では、数回のサイクロン過程を有する多段サイクロン機構150を用いるものとして説明する。
【0095】
また、多段サイクロン機構150には、内部温度の低下を防ぐために保温構造が備えられてもよい。例えば、前記保温構造は、断熱材のような保温用素材を利用して多段サイクロン機構150から放出される熱を遮断する構造、またはヒーターのような発熱素材を利用して多段サイクロン機構150の内部温度を能動的に調節する構造などがある。
【0096】
このように、多段サイクロン機構150の温度低下を防ぐ理由は、ガスGに含まれているバイオオイルが多段サイクロン機構150の内部で非正常に凝縮することがあるためである。すなわち、多段サイクロン機構150内に凝縮したバイオオイルは固形物と共に外部に排出するため、凝縮器160で凝縮可能なバイオオイルの含有量が減少し、バイオオイルの収率が大きく低下するようになる。
【0097】
前記凝縮器160は、多段サイクロン機構150で固形物が除去されたガスG1を凝縮させてバイオオイルを抽出する装置である。このような凝縮器160は、多段サイクロン機構150で固形物が除去されたガスG1を中温で凝縮させる中温凝縮器162、中温凝縮器162で非凝縮のガスG2を電気集塵する電気集塵機164、および電気集塵機164で集塵されたガスG3を低温で凝縮させる低温凝縮器166を備えてもよい。
【0098】
ここで、中温凝縮器162はガスG1を中温で凝縮させて比較的に高分子量のバイオオイルを抽出することができ、低温凝縮器166はガスG3を低温で凝縮させて低分子量のバイオオイルを抽出することができる。中温凝縮器162の凝縮温度の中温は通常は常温であり、低温凝縮器166の凝縮温度の低温は通常は零下付近の温度である。
【0099】
また、電気集塵機164は、中温凝縮器162で非凝縮のガスG2に含まれている液滴状態のバイオオイルを電気集塵させ、高分子量のバイオオイルを完全に抽出することができる。
【0100】
図1を参照すれば、本発明の一実施形態に係るバイオオイル製造システム100は、後処理機構170およびガス分析器180をさらに含んでもよい。
【0101】
前記後処理機構170は、予熱器144で熱交換された熱風H’を後処理して熱風H’内の有害物質を除去する装置である。後処理機構170は、大気中に排気される熱風H’の成分に応じて多様な構成のフィルタで構成されてもよい。例えば、後処理機構170は、活性炭粒子、白金触媒、パラジウム触媒などを含むスポンジ構造のフィルタを備えてもよい。このように、後処理機構170は、大気中に排気される熱風H’を浄化させて環境汚染を予防する役割を行う。
【0102】
ガス分析器180は、後処理機構170で後処理された熱風H’の成分を分析する装置である。このようなガス分析器180によって分析された熱風H’の分析データを利用すれば、バイオオイル製造システム100の作動が正常であるか非正常であるかを把握することができる。例えば、反応器110、流動砂供給機130、加熱器140、多段サイクロン機構150、または凝縮器160のうちの少なくとも1つは、ガス分析器180を通じて分析された熱風H’の成分に応じて作動が制御されるようになる。
【0103】
このように構成された本発明の一実施形態に係るバイオオイル製造システム100のバイオオイル製造方法を詳察すれば次のとおりである。図7は、本発明の一実施形態に係るバイオオイル製造方法を示すフローチャートである。
【0104】
図7を参照すれば、本発明の一実施形態に係るバイオオイル製造方法は、バイオマス供給段階1、流動砂供給段階2、急速熱分解段階3、サイクロン段階4、凝縮段階5、6、7、燃焼段階11、流動砂回収段階12、および熱風供給段階13を含む。
【0105】
前記バイオマス供給段階1では、バイオマス供給機120が反応器110の傾斜部111にバイオマスMを供給してもよい。このとき、バイオマス供給機120は、細かく粉砕されたリグノセルロース系バイオマスMを連続的に傾斜部111の上部に供給する。したがって、バイオマスMは、重力によって傾斜部111に沿って下側にスライディング移動するようになる。
【0106】
また、バイオマス供給段階1では、バイオマスMの供給時に凝固防止機構122を作動させてバイオマスMの凝固を防いでもよい。すなわち、凝固防止機構122の駆動部125が作動すれば、駆動部125が棒部123を左右方向に直線往復運動させ、棒部123と共に突起部124も左右方向に直線往復運動する。これにより、突起部124がバイオマス供給機120の排出口110bに位置したバイオマスMを破砕させ、バイオマスMの供給性能を向上させることができる。
【0107】
前記流動砂供給段階2では、流動砂供給機130が傾斜部111に配置されたバイオマスMの上面に高温の流動砂Sを供給してもよい。このとき、流動砂供給機130は、傾斜部111の上部に供給されたバイオマスMの上面に流動砂Sを連続的に供給するため、流動砂SはバイオマスMと共に重力によって傾斜部111に沿って下側にスライディング移動するようになる。
【0108】
また、流動砂供給機130に備えられた流動砂加熱器140は、流動砂Sを第2設定温度に一定に維持してもよい。第2設定温度は、バイオマスMの急速熱分解を最も活発に促進させる流動砂Sの温度である。したがって、バイオマスMの急速熱分解過程において、流動砂SがバイオマスMに作用する熱が一定であるため、バイオマスMの急速熱分解が安定的に実施されるようになる。
【0109】
前記急速熱分解段階3では、加熱器140が傾斜部111に熱風Hを提供して傾斜部111を第1設定温度に加熱する。このとき、加熱器140の熱風Hは、反応器110に備えられた熱伝達部146に供給される。熱伝達部146に供給された熱風Hは、熱伝達部146に沿って上側に流動しながら、傾斜部111の全体に熱を均等に伝達することができる。したがって、加熱器140の熱風Hおよび流動砂Sの熱は、傾斜部111に沿って下側に移動するバイオマスMを急速熱分解させる。
【0110】
このような急速熱分解段階3では、バイオマスMをガスGで急速に熱分解させてもよい。急速熱分解段階3で生成されるガスGはバイオオイル成分を含んでおり、ガス排出口112を通じて反応器110の外部に排出する。この反面、急速熱分解段階3で副産物として生成されるチャーCは、反応器110の出口110bを通じて流動砂S’と共にコンベア機構142に排出される。
【0111】
一方、バイオマスMの急速熱分解過程は、反応器110の透明窓113を通じて肉眼で確認することができ、バイオマスMの急速熱分解時の反応器110内の反応温度は温度感知センサ114を通じて確認することができる。もし、反応器110内の反応温度が急速熱分解に必要な第1設定温度よりも低ければ、加熱器140と共に補助加熱器115を作動させ、反応器110内の反応温度を高めることができる。
【0112】
前記サイクロン段階4では、多段サイクロン機構150がバイオマスMの急速熱分解過程で発生するガスGを反応器110から受け取り、ガスG内の固形物を除去する。このような多段サイクロン機構150は、多段階のサイクロン現象を利用してガスGに含まれている粒子状態の固形物を除去する。
【0113】
サイクロン段階4で除去する固形物としては、ガスGに含まれている微細粒子状態のチャーCが代表的である。なぜなら、微細粒子状態のチャーCはバイオオイルの製造過程に悪影響を与え、バイオオイルの収率を低下させる主要原因であるためである。
【0114】
前記凝縮段階5,6,7では、凝縮器160がサイクロン段階4で固形物が除去されたガスG1を多段サイクロン機構150から受け取り、ガスG1を凝縮させる。すなわち、凝縮器160がガスG1を凝縮させれば、ガスG1からバイオオイルが抽出される。このような凝縮段階5,6,7をより詳しく説明すれば、凝縮段階5,6,7は、中温凝縮過程5、電気集塵過程6、および低温凝縮過程7からなる。
【0115】
すなわち、中温凝縮過程5では、中温凝縮器162がサイクロン段階4で固形物が除去されたガスG1を多段サイクロン機構150から受け取り、ガスG1を中温で凝縮させる。中温凝縮器162がガスG1を中温凝縮すれば、ガスG1からバイオオイルが1次抽出される。このとき、中温凝縮過程5の凝縮温度は常温であり、中温凝縮過程5で抽出されるバイオオイルは高分子物質で構成される。
【0116】
また、電気集塵過程6では、電気集塵機164が中温凝縮過程5で非凝縮のガスG2を中温凝縮器162から受け取り、ガスG2を電気集塵する。電気集塵機164がガスG2を電気集塵すれば、ガスG2に含まれている液滴状態のバイオオイルが捕集される。したがって、電気集塵過程6では、中温凝縮過程5で完全に回収することができない液滴状態のバイオオイルを回収するため、バイオオイルの収率を高めることができる。
【0117】
また、低温凝縮過程7では、低温凝縮器166が電気集塵過程6で電気集塵されたガスG3を電気集塵機164から受け取り、低温で凝縮させる。低温凝縮器166がガスG3を低温凝縮させれば、ガスG3からバイオオイルが2次抽出される。このとき、低温凝縮過程7の凝縮温度は零下付近の温度であり、低温凝縮過程7で抽出されるバイオオイルは低分子物質で構成される。
【0118】
前記燃焼段階11では、加熱器140が凝縮段階5、6、7で非凝縮のガスG4および急速熱分解段階3で生成されたチャーCと流動砂S’を受け取り、ガスG4とチャーCおよび流動砂S’を高温で燃焼させる。すなわち、ガスG4は凝縮器160から加熱器140の内部に供給され、チャーCと流動砂S’はコンベア機構142によって加熱器140の内部に供給される。したがって、燃焼段階11では、ガスG4とチャーCを完全に燃焼させて無くすだけでなく、流動砂S’を高温で再生させることができる。
【0119】
一方、燃焼段階11では、加熱器140で発生した熱を熱風Hの形態で急速熱分解段階3に伝達する。また、加熱器140は、反応器110または熱伝達部146から外部に排出される廃熱H’を利用して外部から供給される空気を予熱させる。したがって、加熱器140の燃焼効率を向上させるだけでなく、運転費用も節減することができる。
【0120】
前記流動砂回収段階12では、流動砂供給機130が燃焼段階11で再生された高温の流動砂Sを加熱器140から受け取る。流動砂供給機130に回収された流動砂Sは、流動砂供給段階2で再使用される。したがって、流動砂Sが消耗されずに継続して再活用されるため、費用を極めて大きく節減することができ、一定の品質の流動砂Sを持続的に用いることができる。
【0121】
前記熱風供給段階13では、燃焼段階11で発生した熱風Hの一部を加熱器140から反応器110の内部に供給する。このような熱風Hは、高温の熱気と共に不活性燃焼ガスを含むようになる。したがって、反応器110の内部温度は熱風Hによって上昇するようになり、反応器110の内部圧力は熱風Hによって大気圧以上の圧力で形成されるようになる。これだけでなく、反応器110の内部は、熱風Hによって非酸化雰囲気が形成されるようになる。
【0122】
ここで、反応器110の内部圧力が大気圧よりも高ければ、反応器110の内部に外部空気が流入することができない。したがって、外部空気とバイオマスMが反応器110の内部で反応する現象を防ぐことができる。これにより、反応器110の内部に別途の不活性ガス、例えば窒素ガスを注入する必要性が減少するようになる。すなわち、不活性ガス供給装置の省略が可能となり、バイオオイル製造システム100の製品単価および運転エネルギーを節約することができ、高価の不活性ガスを用いずにバイオオイル製造システム100の運転費用を抑えることができる。
【0123】
また、反応器110の内部が熱風Hによって非酸化性雰囲気にできれば、バイオマスMの急速熱分解過程においてバイオマスMの不必要な酸化を防ぐことができる。したがって、反応器110に投入されたバイオマスMが急速熱分解過程にすべて用いられるため、バイオオイルの収率を向上することができる。
【0124】
図7を参照すれば、本発明の一実施形態に係るバイオオイル製造方法は、後処理段階8、ガス分析段階9、および作動調節段階10をさらに含んでもよい。
【0125】
前記後処理段階8では、後処理機構170が、急速熱分解段階3において外部に排出された熱風H’を、予熱器144を通過した後に受け取り、熱風H’を後処理させる。すなわち、後処理機構170が熱風H’に含まれている有害物質を除去する。このように、後処理機構170によって有害物質が除去された熱風H’は、外部に排気されるようになる。
【0126】
前記ガス分析段階9では、後処理機構170によって後処理された熱風H’の成分をガス分析器180が分析する。もちろん、ガス分析段階9では、必要に応じてバイオオイルを製造するすべての段階で発生するそれぞれのガスG,G1,G2,G3,G4を分析することも可能である。
【0127】
前記作動調節段階10では、ガス分析段階9において分析された熱風H’の成分に応じ、バイオマス供給段階1、流動砂供給段階2、急速熱分解段階3、サイクロン段階4、凝縮段階5、6、7、熱風供給段階13のうちの少なくとも1つの作動を調節する。
【0128】
すなわち、ガス分析器180が分析したガスG4の成分に変化が認められれば、バイオオイル製造過程が非正常に進められていると判断し、バイオオイルを製造する段階の作動を適切に制御する。
【0129】
図8は、本発明の他の実施形態に係るバイオオイル製造システムの概略図である。図9は、本発明の他の実施形態に係るバイオオイル製造装置の作動状態を示す図である。図10は、本発明の他の実施形態に係るバイオオイル製造方法を示すフローチャートである。
【0130】
図8〜図10において、図1〜図7に示す参照符号と同一または類似する参照符号は、同一部材または同一作動段階を示す。以下、図1〜図7に示すバイオオイル製造システム100と異なる点を中心に詳述するようにする。
【0131】
図8および図9に示すバイオオイル製造システム200が図1〜図7に示すバイオオイル製造システム100と異なる点は、反応器110の上部に高分子化合物供給機210がさらに備えられるという点である。
【0132】
すなわち、反応器110の上部には、バイオマス供給機120および流動砂供給機130と共に高分子化合物供給機210が備えられてもよい。高分子化合物供給機210は、反応器110の傾斜部111に供給されたバイオマスMと流動砂Sに高分子化合物質Pを供給する装置である。このような高分子化合物質Pとしては、細かく粉砕された廃プラスチックが用いられてもよい。
【0133】
高分子化合物供給機210の上部には流動砂Sを投入する投入口210bが形成されてもよく、高分子化合物供給機210の下部には排出口210aが形成されてもよい。この場合、排出口210aは高分子化合物質Pを排出させるため、反応器110の入口110aと連通するように形成される。高分子化合物供給機210の排出口210aと反応器110の入口110aのうちの少なくとも1つは、開閉可能に形成されてもよい。
【0134】
図10を参照すれば、バイオオイル製造システム200のバイオオイル製造方法は、図7に示すバイオオイル製造システム100のバイオオイル製造方法と比較すれば、流動砂供給段階2と急速熱分解段階3の間に高分子化合物供給段階14が備えられるという点が異なる。
【0135】
すなわち、高分子化合物供給段階14は、バイオマス供給段階1と流動砂供給段階2以後に進められ、反応器110の傾斜部111に供給されたバイオマスMと流動砂Sに高分子化合物質Pが供給される。このように、反応器110の内部に高分子化合物質Pが供給されれば、バイオマスMの急速熱分解時に高分子化合物質Pが共に熱分解され、バイオオイルの収率および品質を向上させることができる。
【0136】
以上のように、本発明の一実施形態では、具体的な構成要素などの事項と限定された実施形態および図面によって説明されたが、これは本発明のより全般的な理解を助けるために提供されたものに過ぎず、本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明が属する分野において通常の知識を有する者であれば、このような記載から多様な修正および変形が可能である。したがって、本発明の思想は、説明された実施形態に限定されて定められてはならず、添付の特許請求の範囲だけではなく、この特許請求の範囲と均等であるか等価的変形があるすべてのものは、本発明の思想の範疇に属するといえる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともいずれか一側面部に傾いて形成された傾斜部が備えられた反応器と、
前記反応器の上部の一側に備えられ、前記傾斜部にバイオマスを供給するバイオマス供給機と、
前記傾斜部に沿って移動する前記バイオマスの移動方向を基準として前記バイオマス供給機よりも前方に配置されるように前記反応器の上部の他側に備えられ、前記傾斜部との間に前記バイオマスが配置されるように前記バイオマスの上面に高温の流動砂を供給する流動砂供給機と、
前記傾斜部を加熱させ、前記傾斜部に沿って下側に移動する前記バイオマスを急速熱分解させる加熱器と、を含むバイオオイル製造装置。
【請求項2】
前記反応器の上部には、前記バイオマスの急速熱分解過程で生成したガスを排出させる少なくとも1つのガス排出口が形成される請求項1に記載のバイオオイル製造装置。
【請求項3】
前記反応器には、前記バイオマスの急速熱分解過程を観察するための透明窓が備えられる、請求項1に記載のバイオオイル製造装置。
【請求項4】
前記透明窓は、前記傾斜部と対向するように配置された側面部に互いに複数が離隔するように配置される請求項3に記載のバイオオイル製造装置。
【請求項5】
前記反応器には、前記バイオマスの急速熱分解過程時に内部温度を感知するための温度感知センサが備えられる請求項1に記載のバイオオイル製造装置。
【請求項6】
前記温度感知センサは、前記傾斜部と対向するように配置された側面部に互いに複数が離隔するように配置される、請求項5に記載のバイオオイル製造装置。
【請求項7】
前記反応器の傾斜部には、前記加熱器が提供する熱の供給を受けて前記傾斜部に均一に伝達する熱伝達部が備えられる請求項1に記載のバイオオイル製造装置。
【請求項8】
前記加熱器は前記熱伝達部に高温の熱風を提供し、前記熱伝達部は前記熱風が通過する通路形状に形成され、
前記熱伝達部の下部には前記熱風が吸入する熱風吸入口が形成され、前記熱伝達部の上部には前記傾斜部を加熱した熱風が排出される熱風排出口が形成される請求項7に記載のバイオオイル製造装置。
【請求項9】
前記反応器の傾斜部または前記熱伝達部のうちの少なくとも1つには、前記熱風との熱伝達性能を高めるための熱伝達構造物が形成される請求項8に記載のバイオオイル製造装置。
【請求項10】
前記反応器の傾斜部には、前記傾斜部を加熱して前記バイオマスの反応温度を調節する補助加熱器が備えられる請求項1に記載のバイオオイル製造装置。
【請求項11】
前記流動砂供給機には、前記流動砂を加熱して前記流動砂の温度を調節する流動砂加熱器が備えられる請求項1に記載のバイオオイル製造装置。
【請求項12】
前記バイオマス供給機には、前記バイオマスの凝固を防ぐ凝固防止機構が備えられる請求項1に記載のバイオオイル製造装置。
【請求項13】
前記凝固防止機構は、
前記バイオマス供給機の内部に移動可能に配置され、前記バイオマス供給機の外側に一端が貫通するように配置された棒部と、
前記棒部に突出するように形成され、前記棒部の移動時に前記バイオマスの凝固状態を解消する複数の突起部と、
前記棒部の一端に連結し、前記棒部を往復移動させる駆動部と、を含む、請求項12に記載のバイオオイル製造装置。
【請求項14】
前記棒部は、前記反応器の上部と連結した部位に配置される請求項13に記載のバイオオイル製造装置。
【請求項15】
前記突起部は、前記棒部から前記反応器に向かって突出するように形成され、
前記突起部の端部は、前記棒部と前記突起部の長さ方向に交差する方向に折り曲げられる請求項13に記載のバイオオイル製造装置。
【請求項16】
前記反応器の上部に備えられ、前記流動砂供給機から供給される流動砂の上面に可燃性の高分子化合物質を供給する高分子化合物供給機をさらに含む、請求項1に記載のバイオオイル製造装置。
【請求項17】
少なくともいずれか一側面部に傾いて形成された傾斜部が備えられた反応器と、
前記反応器の上部の一側に備えられ、前記傾斜部にバイオマスを供給するバイオマス供給機と、
前記傾斜部に沿って移動する前記バイオマスの移動方向を基準として前記バイオマス供給機よりも前方に配置されるように前記反応器の上部の他側に備えられ、前記傾斜部との間に前記バイオマスが配置されるように前記バイオマスの上面に高温の流動砂を供給する流動砂供給機と、
前記傾斜部を加熱させ、前記傾斜部に沿って下側に移動する前記バイオマスを急速熱分解させる加熱器と、
前記反応器の内部で発生したガスを受け取り、前記ガスに含まれている固形物を除去するサイクロン機構と、
前記サイクロン機構で固形物が除去されたガスを凝縮させてバイオオイルを抽出する凝縮器と、
前記加熱器から排出される燃焼ガスを後処理し、前記燃焼ガス内の有害物質を除去する後処理機構と、
前記後処理機構で後処理された前記燃焼ガスの成分を分析するガス分析器と、を含むバイオオイル製造システム。
【請求項18】
前記加熱器は、前記凝縮器で非凝縮のガスおよび前記反応器から排出したチャーと流動砂を燃焼させ、
前記流動砂供給機は、前記加熱器で加熱された流動砂の供給を受け、
前記反応器は、前記加熱器で発生した熱風の供給を内部に受ける請求項17に記載のバイオオイル製造システム。
【請求項19】
前記反応器の下部と前記加熱器の間に備えられ、前記反応器から排出するチャーと流動砂を前記加熱器に伝達するコンベア機構をさらに含む請求項17に記載のバイオオイル製造システム。
【請求項20】
前記反応器の傾斜部には、前記加熱器が提供する熱の供給を受けて前記傾斜部に均一に伝達する熱伝達部が備えられる請求項17に記載のバイオオイル製造システム。
【請求項21】
前記反応器または前記熱伝達部から排出する廃熱を利用して前記加熱器に供給される空気を予熱させる予熱器をさらに含む請求項20に記載のバイオオイル製造システム。
【請求項22】
前記サイクロン機構は、前記ガスの処理時にバイオオイルが凝縮しないように内部温度の低下を防ぐ保温構造が備えられる請求項17に記載のバイオオイル製造システム。
【請求項23】
前記凝縮器は、
前記サイクロン機構で固形物が除去されたガスを中温で凝縮させる中温凝縮器と、
前記中温凝縮器で非凝縮のガスを電気集塵する電気集塵機と、
前記電気集塵機で集塵されたガスを低温で凝縮させる低温凝縮器と、を備える請求項17に記載のバイオオイル製造システム。
【請求項24】
前記反応器、前記バイオマス供給機、前記流動砂供給機、前記加熱器、前記サイクロン機構または前記凝縮器のうちの少なくとも1つは、前記ガス分析器の分析値に応じて作動が調節される請求項17に記載のバイオオイル製造システム。
【請求項25】
前記反応器の上部に備えられ、前記流動砂供給機から供給される流動砂の上面に可燃性の高分子化合物質を供給する高分子化合物供給機をさらに含む請求項17に記載のバイオオイル製造システム。
【請求項26】
反応器の側面部に形成された傾斜部にバイオマスを供給するバイオマス供給段階と、
前記傾斜部に供給されたバイオマスの上面に高温の流動砂を供給する流動砂供給段階と、
前記傾斜部を加熱し、前記傾斜部に沿って下側に移動する前記バイオマスを急速熱分解させる急速熱分解段階と、
前記バイオマスの急速熱分解過程で発生するガスを受け取り、前記ガス内の固形物を除去するサイクロン段階と、
前記サイクロン段階で固形物が除去されたガスを凝縮させ、前記ガスからバイオオイルを抽出する凝縮段階と、
前記凝縮段階で非凝縮のガスおよび前記急速熱分解段階で生成したチャーと流動砂を燃焼させる燃焼段階と、
前記燃焼段階で再生された高温の流動砂を前記流動砂供給段階に移す流動砂回収段階と、
前記燃焼段階で発生した熱風を前記反応器の内部に供給する熱風供給段階と、
前記燃焼段階で発生した燃焼ガスをろ過させ、前記燃焼ガスに含まれている有害物質を除去する後処理段階と、
前記後処理段階で後処理された前記燃焼ガスの成分を分析するガス分析段階と、
前記ガス分析段階で分析された前記燃焼ガスの成分に応じ、前記バイオマス供給段階、前記流動砂供給段階、前記急速熱分解段階、前記サイクロン段階、前記凝縮段階、前記熱風供給段階のうちの少なくとも1つの作動を調節する作動調節段階と、を含むバイオオイル製造方法。
【請求項27】
前記急速熱分解段階では、前記燃焼段階で発生した熱を利用して前記傾斜部を加熱する請求項26に記載のバイオオイル製造方法。
【請求項28】
前記燃焼段階では、前記急速熱分解段階で捨てられる廃熱を利用して燃焼時に用いられる外部空気を予熱する請求項26に記載のバイオオイル製造方法。
【請求項29】
前記凝縮段階は、
前記サイクロン段階で固形物が除去されたガスを中温で凝縮させ、前記ガスから高分子量のバイオオイルを抽出する中温凝縮過程と、
前記中温凝縮過程で非凝縮のガスを電気集塵し、前記ガスに含まれている液滴状態の前記バイオオイルを捕集する電気集塵過程と、
前記電気集塵過程で電気集塵されたガスを低温で凝縮させ、前記ガスから低分子量のバイオオイルを抽出する低温凝縮過程と、を備える請求項26に記載のバイオオイル製造方法。
【請求項30】
前記流動砂供給段階で供給された前記流動砂の上面に可燃性の高分子化合物質を供給する高分子化合物供給段階をさらに含む請求項26に記載のバイオオイル製造方法。
【請求項31】
前記反応器には、前記バイオマスの急速熱分解過程時に内部温度を感知する温度感知センサが備えられ、前記傾斜部を選択的に加熱する補助加熱器が備えられ、
前記急速熱分解段階では、前記温度感知センサの感知値が設定温度未満であれば、前記補助加熱器を作動させる請求項26に記載のバイオオイル製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2012−528226(P2012−528226A)
【公表日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−512964(P2012−512964)
【出願日】平成22年5月26日(2010.5.26)
【国際出願番号】PCT/KR2010/003308
【国際公開番号】WO2010/137858
【国際公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【出願人】(304059937)コリア・インスティテュート・オブ・マシナリー・アンド・マテリアルズ (27)
【Fターム(参考)】