説明

バイオガスの製造法

有機基質からのバイオガス醗酵製造用の容器(1)であって、軸方向攪拌機(9)、容器(1)を充填するための1個または数個の入口装置(2)、容器(1)を空にし、醗酵残渣を回収するための1個または数個の出口装置(3、4)、醗酵混合物表面(14)に噴霧するための数個の出口(8)を備える閉鎖循環用パイプライン(7)に醗酵混合物を供給するための外部導管(5)(噴霧する醗酵混合物は任意に容器(1)の下半分から搬送される)、生成するバイオガスを回収するための装置(11)、および醗酵混合物の温度を制御するための装置(10)を含んでなる容器;有機基質からのバイオガスの醗酵製造法、バイオガスの醗酵生産に際しての泡の形成を抑制する方法、およびバイオガスの醗酵生産に際して油脂を有機基質に改良変換する方法であって、これらの方法は容器(1)にて実施し得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はバイオガスの製造法および製造用醗酵槽に関する。
【背景技術】
【0002】
バイオガスは、農業、生活共同体および工業に由来する有機基質の嫌気性醗酵により入手することができる。バイオガス(メタンおよび二酸化炭素など)に変換される有機部分は、嫌気性技術分野において分解性CSB(化学的酸素要求量)と呼称される。
【0003】
種々様々な有機材料が嫌気性反応器において処理可能である。処理を実施するに際しては、使用する材料の組成によって、異なる物理化学的性質が醗酵過程中に生じる。一方、重力層の形成が使用する基質中の重い固体から起こり得るが、他方、懸濁物質並びに油含有物質は、表面でこれらの物質を蓄積させ得る。このような性質のため、嫌気性分解に関与する細菌株と当該有機材料との接触がしばしば困難となる。
【0004】
さらに、高い有機体積負荷がしばしば醗酵槽において泡を形成させ、それにより有機体積負荷が有意に制限され得る。
【0005】
嫌気性醗酵においては、微生物に対して3段階の温度最適条件が規定される:好冷性(4〜15℃)、中温性(20〜40℃)および好熱性(45〜70℃)。温度最適条件は嫌気性醗酵に関与する微生物の相対増殖速度とは実質的に異なる。
【0006】
嫌気性技術においては、一般に、中温性方式の操作が好熱性のものよりもより頻繁に行われる。その理由は、その方法のより低いエネルギーコストと、より高い安定性にある。好熱性方式操作に関する多くの研究においては、より高い生化学反応速度、より高い微生物の増殖速度、およびより短い水力学的保持時間が測定された。しかしながら、対照的に、有機酸、アンモニアおよび硫化水素などの阻害剤に対しては、より高い感受性がより高温度で存在し、さらに、高温を維持するために大量のエネルギーが必要である。
【0007】
低CSB濃度(<25gO/L新鮮物質(fresh substance))をもつ基質の場合、例えば、UASB(Upflow Anaerobic Sludge Blanket;上向流嫌気性スラッジブランケット)、EGSB(Expanded Granular Sludge Blanket;膨張粒状スラッジブランケット)、IC(Internal Circulation;内部循環)などの反応器システムが開発されているが、これらはCSBが高度に濃縮され、高粒子含量と高油脂含有部分をもつ基質の流れに対しては不適切である。
【0008】
高粒子含量、高CSB濃度および高乾燥基質含量を示す材料の場合、“完全攪拌タンク式反応器”(CSTR)またはプラグフロータンク反応器(PFTR乾燥醗酵システム)も使用し得るが、この場合、複雑な組成の基質について最適な嫌気性分解を確実にし得るためには、上記の醗酵槽システムの場合に比べて、より低い体積負荷で操作しなければならない。しかし、可能な有機体積負荷が低いことと基質が高濃度であるために、この方法の手技では、これらのシステムの大きさが、生物工学的に、また機械的に制限される。
【0009】
特許文献1には、攪拌機を備えた醗酵タンクが記載されている。
【0010】
多くの嫌気性反応器においては、部分的に混合されていない帯域、醗酵槽中に死角となる流れ空間(dead flow spaces)、短絡流および浮動層が生じる。結果は、存在する醗酵槽体積が、多くの場合充分には利用されなくなり、また、醗酵していない基質が、殆ど分解されずに醗酵槽中に残存することとなる。さらに、浮動層および堆積層は多くの場合、甚大な努力によってのみ分解することができる。
【0011】
反応器システムはまた、その内部で気体または液体をも醗酵槽のさまざまな部位から引き出し、それを良好に混合させるために反応器の他の部分、例えば、反応器の頂部に移動させることも知られている。しかしながら、特に高い体積負荷(>6kg CSB/m*d)である場合、構成成分(例えば、タンパク質、脂肪)が、かさ高い泡を形成させることがあり、その結果、それらのシステムもまた望ましくない泡の形成制御を確実なものとすることはできない。
【0012】
特許文献2または特許文献3によると、醗酵液はトリクルベッド(trickle bed)上に、またはトリクルベッド上の醗酵液上に噴霧され、引き続き、トリクルベッド全体に導かれることが予想される。
【0013】
特許文献4によると、例えば、醗酵液は外部から直接醗酵槽の醗酵液中にポンプで送られるか、または側面からその表面に噴霧される;また、特許文献5には、醗酵液を循環させながら醗酵タンクに噴霧することが記載されている。
【0014】
表面に泡が形成されるのを防止するためには、表面の小さな醗酵槽、例えば、卵型醗酵槽(嫌気性廃水処理から生じる下水汚泥の嫌気性処理に特に使用されている)などもまた使用される。農業用嫌気性技術においては、ホイル(foil)で覆われた醗酵槽システムが多数使用されている。非常に難しいのは、直径が大きいために、攪拌ユニットを最適な位置に設置することである。さらに、この醗酵槽は機械的混合装置で起こり得るメンテナンスまたは修理のために空にしなければならず、結果として、この工程のさらなる操作を不能とする;そのため、かかるシステムは、残留物を連続的に蓄積する工業的適用には使用することができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】欧州特許EP 1 065 268号明細書
【特許文献2】英国特許GB 521,036号明細書
【特許文献3】欧州特許EP 0 057 152号明細書
【特許文献4】ドイツ特許DE 103 18 298号明細書
【特許文献5】中国特許CN 1 600 749号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0016】
この度のバイオガスの製造法は、驚くべきことに、固体に富む有機基質が、高濃度で、また高い有機体積負荷で連続的に変換され得る場合に、本方法が少量および大量の操作体積で適用できること、その場合、泡の形成が抑制され得ること、また本方法が特に油脂に富む有機基質に成功裏に適用し得ることが見出された。
【0017】
一態様において、本発明は、
− 有機基質からのバイオガスの醗酵製造法;
− バイオガスの醗酵製造に際しての泡形成の抑制方法;または
− バイオガスの醗酵製造に際して、有機基質中の油脂の改良変換方法;
を提供するが、これらの方法においては、水、有機基質および微生物を含有してなる醗酵混合物を、例えば、容器に軸方向に取り付けられた攪拌機付き容器中で、連続的に、または不連続に攪拌すること、また醗酵混合物を、例えば、容器の下方3分の1などの半分以下から外部導管経由で、数個のスプレーノズルをもつ閉鎖循環パイプラインに搬送し、そして容器中で醗酵混合物表面全体に、例えば、連続的に、または不連続的に噴霧することを特徴とする。
【0018】
表面の全体にスプレーする醗酵混合物は、好ましくは、醗酵を実施する容器からのものであるが、異なる醗酵槽から加えてもよい。好ましくは、醗酵混合物は醗酵槽の下半分から、特に好ましくは、下方3分の1からのものであり、例えば、醗酵を実施する容器に由来するものである。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】図1に、醗酵槽(1)を模式図として示すが、該醗酵槽は、入口(2a)と入口パイプ(2b)を備える入口装置(2)、出口(3a、4a)と出口パイプ(3b、4b)を備える出口装置(3、4)、外部に迂回させたパイプライン(5)、ポンプ(6)、出口(8)を備える閉鎖循環パイプライン(7)、軸方向攪拌機(9)、醗酵混合物の温度を制御する装置(10)、およびガス回収用装置(11)からなる。
【発明を実施するための形態】
【0020】
別の態様において、本発明は有機基質からバイオガスを醗酵生産する容器(1)を提供する;当該容器は、軸方向攪拌機(9)、例えば、駆動装置(9a)、例えば、モーターを含む攪拌機、容器(1)を充填するための1個または数個の入口装置(2)(本装置は、好ましくは、容器(1)の底部(12)直上に装着する)、容器(1)を空にし、醗酵残渣を回収するための1個または数個の出口装置(3、4)(例えば、出口装置(3)は容器(1)の底部(12)直上に装着し、さらに出口装置(4)は容器(1)の上部3分の1に装着する)、外部導管(5)(数個の出口(8)を備える閉鎖循環用パイプライン(7)に醗酵混合物を供給するための導管であり、外部導管(5)への入口(5a)は、好ましくは、容器(1)の下半分に据え付けられており、該出口(8)は、例えば、醗酵混合物表面(14)に噴霧するためのスプレーノズルと選択肢としての出入制御(baffle)装置(13)を装備する)、生成するバイオガスを回収するための装置(11)、および醗酵混合物の温度を制御するための装置(10)を含む。
【0021】
本発明による方法においては、有機基質の性質は重要ではない。例えば、有機基質は、選択肢として、例えば、廃棄物回収に由来する圧縮有機廃棄物、食品加工業からの残留物および/または他の工業的有機残留物を含んでもよい。
【0022】
本発明によると、有機基質の分解は醗酵様式において、すなわち、微生物の存在下、例えば、有機材料をメタンまたはCOなどのバイオガスに分解することができる細菌の存在下で起こる。かかる細菌は、好ましくは、中温性細菌または好熱性細菌またはその混合物である。本発明による方法は、好ましくは、嫌気性の方法である。
【0023】
本発明による方法での容器は、醗酵槽(反応器)、好ましくは、容器(1)である。
【0024】
閉鎖循環パイプライン(7)は、容器に容れた醗酵混合物の表面上に取り付けた導管を含み、その様式は、可能であれば、容器(1)中の醗酵混合物の全表面(14)を出口(8)のスプレーノズルによって、より多くの醗酵混合物で噴霧し得るようにする様式である。閉鎖循環パイプライン(7)は、好ましくは、醗酵混合物の表面(14)に本質的に並行に設置されている。閉鎖循環パイプライン(7)の形状は重要ではないが、閉鎖循環パイプライン(7)は、醗酵混合物の処理能力を阻害しない形状、例えば、丸い形状、例えば、円形もしくは卵形、または角のある形状、例えば、6ヶ所以上の角をもつ形状を有するべきである。出口(8)は閉鎖循環パイプライン(7)に、適当な間隔で、例えば、一定の間隔で設置する。スプレーノズルは出口(8)に取り付ける。“スプレーノズル”とは、本明細書にて使用する場合、出口に窄まりをもつ導管、すなわち、ノズルであるが、出口に窄まりをもたない単純な導管でもよく、そこから醗酵混合物を加圧下に、例えば、ポンプ(6)により押し出す。“数個のスプレーノズル”とは、少なくとも2個のスプレーノズル、より好ましくは、2個を超えるスプレーノズル、特に好ましくは、可能であれば、醗酵混合物の全表面(14)が均一に噴霧され得る多数のスプレーノズルから構成される。例えば、六方閉鎖循環パイプラインに6個のスプレーノズルを装着した約3000mの容積を有する醗酵槽により、優れた結果を達成し得ることが明らかとなった。
【0025】
好ましくは、噴射物は、出口(8)のスプレーノズルから出入制御装置(13)、例えば、出入制御プレートまたは出入制御ディスクに導かれる;例えば、液状肥料の散布に農業で使用する出入制御プレートまたは出入制御ディスクでは、そこから醗酵混合物が醗酵混合物の表面(14)全体に渡り噴霧される。出入制御装置(13)により、醗酵混合物は、容器(1)中の醗酵混合物全表面(14)全体に噴霧され、取分け良好な配分が達成される。好ましくは、醗酵混合物は醗酵混合物表面(14)に、攪拌装置(9)の回転方向に噴霧される。好ましくは、出口(8)のスプレーノズルおよび/または出入制御装置(13)は、噴霧した醗酵混合物が醗酵混合物の表面(14)に斜め方向からぶつかるように調節する。出口(8)のスプレーノズルは、閉鎖循環パイプライン(7)に調節可能なように、例えば、全方向に、または固定方式で調節可能なように取り付け得る。本発明の一実施態様では、出口(8)のスプレーノズルを固定して取り付け、別の実施態様では、調節可能なように取り付ける。
【0026】
容器(1)中、醗酵混合物の表面(14)に対する醗酵混合物の噴霧は、連続的に、または非連続的に実施する;例えば、泡の形成が始まるや否や中断するか、または、例えば、強力かつ連続的な泡の形成が起こっている場合、および/もしくは有機基質が容器(1)中の醗酵混合物の表面(14)に浮遊する油脂含有物質である場合、連続的に実施する。後者の場合、より良好な、より迅速な基質の変換が噴霧により達成され得る;その理由は、噴霧した醗酵混合物が表面(14)で油脂含有物質と連続的に接触するに至り、その結果として、その分解を促進し、かつ、加速させ得るからである。
【0027】
容器(1)は、醗酵混合物の温度を制御し得る装置(10)を含む。醗酵は好ましくは、中温性および好熱性醗酵帯域の温度範囲、例えば、40℃ないし50℃など、30℃ないし60℃の温度範囲で実施する。
【0028】
本発明による特に好適な実施態様において、バイオガスの製造法は以下のように実施する。その参照図を図1に示す:
【0029】
水性有機基質の供給は、容器(1)中に、主として容器断面全体に均一となるように基質を導入するために、底部に近接して位置する配分システム(2)を経て下方から行う。要すれば、醗酵混合物は、容器(1)の下方3分の1から、外部に迂回させたパイプライン(5)を経由して、ポンプ(6)により、醗酵混合物表面(14)の上に設置された閉鎖循環パイプライン(7)に導入され、出口のスプレーノズル(好ましくは、出口に窄まりをもたない単純な導管を構成する)を通って、好ましくは出入制御装置(13)を経て、容器(1)内の醗酵混合物表面(14)全体に噴霧される。噴霧は軸方向攪拌機(9)の回転方向で行う。出口(8)のスプレーノズルおよび/または出入制御装置(13)は、もし可能であれば、反応器中の全液体表面をカバーするため、噴霧した醗酵混合物が容器(1)中の醗酵混合物表面(14)に斜め方向からぶつかるように調節する。要すれば、容器(1)中の醗酵混合物は、さらに、例えば、有機基質が泡を形成する強い傾向のある場合、または高油脂含量である場合、軸方向攪拌機(9)により攪拌する。軸方向攪拌機(9)で攪拌することにより、バイオマス(部分的に分解した有機基質)に付着し得る気体の泡を細菌からより容易に分離することができ、またそれによってより容易に液体表面に移動させることができる。
【0030】
基質(砂、乾燥物質)によっては、消化されたスラッジ(醗酵残渣)のより大きな部分が容器(1)の上部3分の1並びに底部領域に取り付けた出口装置(3)および(4)から回収される。スラッジ(醗酵が活発に進行する活性スラッジ、醗酵混合物および微生物)は、通常、容器(1)の下部3分の1に高濃度で存在する。容器(1)の上部での基質分解は、取分け、外部に迂回させたパイプライン(6)を経由し、閉鎖循環パイプライン(7)を経て、容器(1)中の醗酵混合物に導入される濃縮スラッジが、沈降過程において活性スラッジの濃度の上昇、およびそれにより容器(1)の上部でのより早い基質分解をもたらすという事実により高められる。
【0031】
容器(1)中の醗酵混合物表面(14)上にスラッジを噴霧することにより、場合によって生成する可能性のある泡の機械的破壊をさらに惹き起こすが、その効果は出口(8)のスプレーノズルによって増大する;そのスプレーノズルは、好ましくは、攪拌方向に対して傾斜した様式で、任意に出入制御装置(13)と連結して取り付ける;そうすることによって、容器(1)中の醗酵混合物の全表面(14)に対して噴霧した醗酵混合物を、取分け良好に分布させ得る。効果のさらなる増大は、噴霧したスラッジが容器(1)の下方3分の1における加水分解工程により調節される低pH値を有するという事実から、またその低pH値が活性バイオマスによる泡の破壊と浮遊物の分解を促進するという事実からもたらされる。
【0032】
当該工程におけるさらなるパラメータは工程温度であり、該温度は醗酵混合物(10)の温度を制御する装置により、特に好ましくは、40℃〜50℃に調節する。
【0033】
容器(1)において、または本発明が提供する方法においては、中温性細菌および好熱性細菌の最適な性質(増殖速度、炭水化物、タンパク質および脂肪の分解)を使用する。そうすることによって、また機械的装置との組合せによって、反応器のシステムを15[kgCSB/m*d]までの有機体積負荷で操作することができる。
【0034】
容器(1)は、好ましくは、図1に相当する容器である。
【0035】
本発明により、バイオガスの醗酵生産に際して泡の形成を抑制する方法において、または油脂を有機基質に改良変換する方法においては、好ましくは、本発明によってバイオガスの醗酵生産に提供される方法を使用する;その場合、好ましくは、容器(1)を使用する。
【0036】
本発明によるバイオガスの製造法の利点は、これを工業的に採用し得ることである。さらなる利点は、該方法が小規模および大規模醗酵混合物体積、例えば、1mないし7000mの体積範囲で使用し得ることである。さらなる利点は、泡の形成を減少させ得るか、または防止し得ることである。さらなる利点は、該方法が高窒素濃度下で操作し得ることである。理解し得たことは、例えば、本発明によるバイオガスの製造法が、有機基質中のTKN(Total Kjeldahl Nitrogen)(総ケルダール窒素/新鮮基質1L)9gまでの総窒素濃度で何の問題もなしに操作し得ることである。
【実施例】
【0037】
廃棄回収物に由来する圧縮有機廃棄混合物、食品加工処理工業由来の残留物と工業有機残留物、および水からなる一日あたり150mの有機基質を、図1に従って設計し、水性醗酵溶液中有機基質嫌気性分解用細菌を容れた操作体積2850mを有する3000mの醗酵槽に連続的に導入する。該基質は乾燥物質含量17%およびCSB濃度260g O/kgを有し、有機体積負荷14[kgCSB/m3*d]となる。
【0038】
有機基質を醗酵槽底部から約1メートル上に、底部に設けた分配システムを介して導入する。醗酵槽底部のバイオマス濃度はより高く(スラッジベッド)、それにより新たに供給された基質は高濃度の活性バイオマスと接触する。
【0039】
より高い乾燥物質含量を有する当該スラッジの一定量を、反応器の下部3分の1から連続的に回収し(V=90m)、外部導管経由で醗酵槽の頂部に搬送し、スプレーノズルを用いて醗酵槽の上部(気体領域)の閉鎖循環パイプラインを経て、醗酵混合物上に、軸状攪拌機の回転方向に噴霧する。醗酵の間に形成される泡(タンパク質−脂肪複合体)をそれによって消し、浮遊物質(例えば、油脂、繊維性物質)を反応器低部からの活性バイオマスと接触させる。機械的攪拌のために軸方向攪拌機を用いる。攪拌機の回転速度は、0ないし60U/分である。断続的に操作するこの攪拌機は、下部スラッジ層において微生物により形成されるガス(メタン、二酸化炭素)の放出改善に、また制御方式で操作する全反応器システム中の乾燥物質の濃縮に役割を果たす。
【0040】
ガス回収用の装置(9)は醗酵槽の最も高い位置に設置する。
【0041】
醗酵残渣(醗酵槽内容物)の回収は、醗酵槽の出口および出口パイプ(3)により上部3分の1において、また出口および出口パイプ(2)により下部3分の1において、達成される。
【0042】
バイオガスの生産性は5.8mバイオガス/m醗酵槽体積*dに達し、バイオガスのメタン含有率は60%ないし65%の範囲である。本方法は40〜50℃の温度で操作する。
【0043】
本方法はそれぞれ3000mの醗酵槽システムにより連続的に操作し、非常にすぐれた結果を与える。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機基質からのバイオガスの醗酵製造法であって、水、有機基質および微生物を含む醗酵混合物を容器中で該容器に軸方向に取り付けた攪拌機により攪拌すること、および醗酵混合物を外部導管経由で数個のスプレーノズルを有する閉鎖循環パイプラインに搬送し、該容器中の醗酵混合物表面全体に噴霧することを特徴とする方法。
【請求項2】
噴霧する醗酵混合物が、容器の下部3分の1から搬送されることを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
醗酵混合物を、容器中の醗酵混合物表面上に攪拌機の回転方向に噴霧することを特徴とする、請求項1または2のいずれかに記載の方法。
【請求項4】
噴霧する醗酵混合物を、出入制御装置経由で醗酵混合物表面に噴霧することを特徴とする、請求項1ないし3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
スプレーノズルおよび/または出入制御装置を、噴霧した醗酵混合物が容器中の醗酵混合物の表面に斜め方向からぶつかるように調節することを特徴とする、請求項1ないし4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
中温性および好熱性細菌醗酵帯域にある温度範囲で醗酵を実施することを特徴とする、請求項1ないし5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
30℃ないし60℃の温度範囲にて醗酵を実施することを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
40℃ないし50℃の温度範囲にて醗酵を実施することを特徴とする、請求項6または7のいずれかに記載の方法。
【請求項9】
有機基質からのバイオガス醗酵製造用の容器(1)であって、軸方向攪拌機(9)、容器(1)を充填するための1個または数個の入口装置(2)、容器(1)を空にし、醗酵残渣を回収するための1個または数個の出口装置(3、4)、醗酵混合物表面(14)に噴霧する数個の出口(8)を備える閉鎖循環用パイプライン(7)に醗酵混合物を供給するための外部導管(5)、生成するバイオガスを回収するための装置(11)、および醗酵混合物の温度を制御するための装置(10)を含んでなる容器。
【請求項10】
出口(8)がスプレーノズルおよび任意に出入制御装置(13)を備えることを特徴とする、請求項9に記載の容器。
【請求項11】
出口(8)のスプレーノズルまたは任意の出入制御装置(13)を、噴霧した醗酵混合物が醗酵混合物表面(14)に斜め方向からぶつかるように調節することを特徴とする、請求項10に記載の容器。
【請求項12】
噴霧した醗酵混合物が軸方向攪拌機(9)の回転方向で醗酵混合物表面(14)にぶつかることを特徴とする、請求項10または11のいずれかに記載の容器。
【請求項13】
外部導管(5)への入口(5a)が容器(1)の下半分に設置してあることを特徴とする、請求項10ないし12のいずれか一項に記載の容器。
【請求項14】
バイオガスの醗酵生産に際して泡の形成を抑制する方法または油脂を有機基質に改良変換する方法であって、水、有機基質および微生物を含む醗酵混合物を容器中で該容器に軸方向に取り付けた攪拌機により攪拌すること、および醗酵混合物を外部導管経由で数個のスプレーノズルを有する閉鎖循環パイプラインに送達し、該容器中の醗酵混合物表面全体に噴霧することを特徴とする方法。

【図1】
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【公表番号】特表2011−515212(P2011−515212A)
【公表日】平成23年5月19日(2011.5.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−501058(P2011−501058)
【出願日】平成21年3月26日(2009.3.26)
【国際出願番号】PCT/AT2009/000121
【国際公開番号】WO2009/117754
【国際公開日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【出願人】(510239875)エンバシス ゲーエムベーハー (1)
【Fターム(参考)】