説明

バイオガス発生用発酵槽に備えられるバイオマス搬送装置、バイオマスからバイオガスを発生させるための大型発酵槽および大型発酵槽の運転方法

バイオガス発生用発酵槽(2)に備えられるバイオマス搬送装置(20)及びこれを備えた大型発酵槽が提供され、前記搬送装置または前記発酵槽において、搬送通路(18)を通ってバイオマスを搬送するのに十分な能力が確保される。これは、搬送装置の底面、側壁および/または上部すなわち天板に搬送クッションを備えることにより達成される。バイオマスは、搬送クッションへの流体の充填、排出が定期的に行われることにより引き起こされる蠕動運動によって搬送通路を移動される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、請求項1で請求されるバイオガス発生用発酵槽に備えられるバイオマス搬送装置、請求項7で請求されるバイオマスからバイオガスを発生させる大型発酵槽および請求項13で請求される大型発酵槽の運転方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、バイオガス技術は、主に地方自治体から得られる液体肥料およびバイオ廃棄物の「湿式発酵」に傾注している。湿式発酵によりバイオマスからバイオガスを発生させる設備および装置は、例えば、特許文献1乃至5から周知である。
【0003】
特許文献3から、人工的に発生された蠕動運動により、バイオマスがチューブを通って搬送される弾性チューブ状のダイジェスタが周知である。蠕動運動は、チューブにループを巻きつけきつく引っ張ること、チューブにスリーブを巻きつけ圧縮空気をかけること、または、チューブの全長にわたってプランジャを配し連続的にチューブを圧迫することによって引き起こされる。
【0004】
特許文献5から、円形サイロ状のダイジェスタが周知であり、実際のダイジェスタは円形サイロの中間に配置され、環状の中間領域に囲まれている。
【0005】
円形サイロ状のダイジェスタは特許文献4からも周知であり、前記ダイジェスタは円筒形外側壁および円筒形内側壁が備えられることにより、環状の搬送通路が形成される。液体バイオマスが投入されると、搬送通路を通って流れ、再び除去される。また、特許文献4から、円筒形内側壁と円筒形外側壁の間に円筒形中間壁が配置されることにより、内側搬送通路リングおよび外側搬送通路リングが形成されることが周知である。
【0006】
上記のような「液体」方式を利用する場合、乾燥物質(とうもろこし、草、全植物体サイレージなど)または固形肥料を多く含む植物性の再生可能原料は限られた範囲でしか混合されることができない。
【0007】
「乾式発酵」により、農業、バイオ廃棄物、地方自治区域から得られた流動性のあるバイオマスを液体物質に転換させることなく発酵させることが可能になる。バイオマスは、乾燥物質の含有率が50%までであれば発酵させることが可能である。この乾式発酵方式は、例えば特許文献6に記載される。
【0008】
乾式発酵では、発酵される材料は、バイオ廃棄物の湿式発酵のように、液体状になるまで攪拌されることはない。その代わりに、発酵槽に投入された発酵基材は、発酵槽底部から浸出し再度バイオマス上に噴霧される浸出液によって常時湿潤とされる。このように、バクテリアの生息に最適な条件が確保される。浸出液を循環させる際には、温度制御もなされ、プロセスを最適化するための添加剤を加えることも可能である。
【0009】
プレハブガレージ状のバイオリアクタまたは発酵槽は特許文献7から周知であり、前記バイオリアクタまたは発酵槽は、「バッチ処理」による乾式発酵方式で運転される。この場合、発酵原料を接種した後、車輪付きローダを使用して発酵槽に発酵基材が充填される。ガレージ状に構成された発酵コンテナは、気密式ドアで封止され、バイオマスは空気を遮断して発酵される。途中でさらに混合が行われたり、発酵原料が追加されることはない。発酵原料から浸出した浸出液は、排水管を介して排水され、タンクに一時的に貯蔵され、発酵基材に湿気を与えるために再び発酵基材に噴霧される。発酵プロセスは34〜37℃の中温域内で行われ、温度制御は床面加熱および壁面加熱によって行われる。
【0010】
固体の割合が高い有機物質の嫌気性処理方法およびその装置においてもバイオガスは生成されるが、この方法および装置は特許文献8から周知である。この場合、導管内のバイオマスは、回転運動、蠕動運動を受けることによってダイジェスタ内を搬送される。蠕動運動は、導管の端部が互いに平行に上下動をすることによりなされる。同時に、上下動をする際には、回転運動を引き起こすようにポケットが下方より導管へ押し込まれる。
【0011】
発生されたバイオガスは、熱電併給設備やコージェネレーションシステムで電気や熱を発生させるために利用される。十分なバイオガスが常に熱電併給設備で利用できるように、乾式発酵設備では複数の発酵コンテナが千鳥間隔で動作される。発酵基材の滞留時間が終了する頃には、発酵槽内の空間は完全に空にされ、その後再び充填される。発酵された基材は、その後のコンポスト処理に利用され、従来のコンポスト化により得られるような有機肥料がもたらされる。そのような設備は、数年にわたってミュンヘンで成功している。
【0012】
一般的に、周知の大型発酵槽はバッチ処理により稼動する。すなわち、発酵槽によるバイオガスの生成は、バイオマスの充填および除去の際に中断されなければならず、バイオガスが充填された発酵槽は空気で満たさなければならない。したがって、乾式発酵方式で稼動し、生バイオマスが継続的に充填され使用済バイオマスがバイオガスの生成を中断させることなく継続的に排出される大型発酵槽が望ましい。この目的を達成するために、大型発酵槽に搬送装置を備え、搬送装置を利用して充填領域から除去領域へバイオマスを搬送する必要がある。
【0013】
特許文献9は、密閉式コンポスト化装置を開示している。前記密閉式コンポスト化装置では、コンテナ内のバイオマスを混合し、コンテナ内において充填領域から除去領域にバイオマスを搬送するために、コンテナ底部に圧縮空気が供される。漏れが発生するという問題(爆発の危険性)が伴うため、この搬送方法は、空気を排除した状態でバイオガスを発生させる際には適さない。
【0014】
発酵槽に備えられたバイオマスの搬送装置は、特許文献10から周知であり、前記搬送装置は、搬送クッションが発酵槽の底部および側壁に配置され、前記搬送クッションは連続的に流体の作用を受けることにより、発酵槽内でバイオマスを移動させるための波動運動を引き起こす。このような搬送クッションの搬送能力は、発酵槽の特定の運転条件に基づき規制される。
【0015】
【特許文献1】オーストリア国特許第408230号明細書
【特許文献2】国際公開第96/12789号パンフレット
【特許文献3】独国特許出願公開第3228391号明細書
【特許文献4】オーストリア国特許第361885号明細書
【特許文献5】独国特許出願公開第19746636号明細書
【特許文献6】欧州特許第0934998号明細書
【特許文献7】国際公開第02/06439号パンフレット
【特許文献8】独国特許出願公開第3341691号明細書
【特許文献9】国際公開第93/17091号パンフレット
【特許文献10】国際公開第05/085411号パンフレット
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
本発明の目的は、特許文献10から周知の搬送装置に基づいた、バイオガス発生用発酵槽に備えられるバイオマスの搬送能力が向上した搬送装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
この目的は、請求項1および7に記載の特徴により達成される。
【0018】
特許文献10から周知の大型発酵槽の場合、特定の運転状態において多くの浸出液が発生するため、バイオマスが浮動することがわかっている。したがって、底部に固定されている搬送クッションがバイオマスには作用せず、主に浸出液内で攪拌が行われる。また、バイオマスは、バイオガス発生により容積が拡大し、搬送通路の上面もしくは天板に接することにより、さらに搬送されたり浮動したりすることが妨げられる。搬送能力は、搬送通路の上面もしくは天板および/または搬送通路の側壁に搬送クッションを備えることにより向上する。バイオマスが底部に蓄積された浸出液上を浮動すること、または、バイオマスが天板にぶつかることによって十分な搬送能力を得ることができる。本発明に係る搬送装置は、複数の搬送クッションを備え、前記搬送クッションは、搬送方向に並べて配置され、液体の充填と排出が連続的に行われる。
【0019】
本発明の一実施形態によれば、搬送クッションは、ダイジェスタの底板に配置され固定されるものがある。バイオマスを搬送する波動運動は、搬送クッションの上下動により、搬送通路の全幅にわたって引き起こされる。
【0020】
搬送通路の底部に配置される搬送クッションは、液体、特に熱湯で動作されるのが好ましい。一方、搬送通路の天板に配置される搬送クッションは、バイオガスと混合されても爆発性混合物を形成しない気体で動作されるのが好ましい。
【0021】
搬送クッションカバーを備えることにより、バイオマスが搬送クッション間に沈殿し残留することが防止される。
【0022】
また、搬送クッションは対にして配置されてもよく、側壁に互いに対向するように配置されてもよい。このようにしても、バイオマスが搬送通路を通過する際の蠕動運動が起こされる、または加勢される。
【0023】
本発明に係る搬送装置は、例えば特許文献7または特許文献10から周知である従来のバイオリアクタまたは発酵槽に備え付けることが可能である。これにより、請求項7で請求される大型発酵槽が提供される。請求項7で請求される大型発酵槽では、充填領域にある生バイオマスは、移送ロックを介して、常時バイオガスを生成する大型発酵槽へ投入される。前記大型発酵槽では、前記搬送装置によりバイオマスが充填領域から除去領域に搬送される。バイオマスの搬送中に、バイオガスが発生されバイオマスが「使用済」となる。除去領域では、前記「使用済」のバイオマスが移送ロックを介して除去される。このように、固体発酵方式によりバイオガスの発生中も動作を継続することが可能である。
【0024】
特にバイオマスからバイオガスを発生させる大型発酵槽では、漏れの問題が発生することが多く、とりわけ、コンテナの角部や端部、充填用の開口、除去用の開口からの漏れが多い。液化されたバイオマスがダイジェスタへ投入されたりダイジェスタから排出されたりする湿式発酵の分野から、漏れの問題が起こる角部や端部が少ない丸型コンテナが周知である。大型発酵槽での固体発酵の際には、バッチ処理における充填および除去中に発生する問題により、これら円形コンテナは使用されない。本発明に係る搬送装置および前記搬送装置で可能な継続的な動作によれば、乾式発酵の際に円形コンテナも好適に使用することが可能である(請求項9)。
【0025】
大型発酵槽が円形に構成されることにより、外側壁、内側壁がそれぞれ圧縮状態、伸張状態でのみ充填が行われるため、密閉の問題はかなり軽減される。一方で、角部や端部で起こる通常の漏れの問題は回避できる。円環状の内側壁および円環状の外側壁を有し、内側壁を取り囲む設計であることにより、環状の搬送通路を有する環状の発酵コンテナがもたらされる。この円環状シリンダは、隔壁により分割される。バイオマスは、隔壁の一方の側にある充填領域に継続的に充填され、搬送通路の終端にあって隔壁のもう一方の側にある除去領域から継続的に除去される。充填領域に生バイオマスを充填することと除去領域から使用済バイオマスを除去することは移送ロックを介して行われ、例えば、サイホン管のような液体用バスを通して行われる。
【0026】
本発明の好ましい構成例によれば、底部、上部および/または側部の搬送クッションに加えて、充填装置の領域に押出クッションが備えられ、この押出クッションは搬送方向に膨張することが可能であり、これによって、さらにバイオマスを搬送方向に押しやる(請求項8および11)。
【0027】
本発明に係る大型発酵槽の運転方法を特定することも本発明の目的である。
【0028】
この目的は請求項13に記載の特徴により達成される。
【0029】
特に、再生可能な植物性原料をバイオマスとして利用する場合、バイオマスに液体が多く含まれていると、ダイジェスタでバイオマスが過度に液状化される可能性がある。これにより、搬送クッションを有する搬送装置の搬送効果がかなり低下する可能性がある。一発酵処理後に半発酵バイオマスのみがダイジェスタから除去され、脱水されて、再度発酵処理するためにダイジェスタに充填されることにより、過度に液状化することが回避される。
【0030】
本発明の一実施形態によれば、半発酵バイオマスから得られた浸出液はろ過され、生成されたろ過液は濃縮微生物と共に再びダイジェスタに投入される。これにより、バイオガスの生成が向上される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
図1は、矩形の底板4と、上部壁5と、右側壁6と、左側壁7と、端壁8と、後方壁とを備える細長い平行六面体の大型発酵槽2の概略図である。大型発酵槽2は、一方の端部に端壁8を貫通する充填装置12(矢印で表示)を有する充填領域10を備え、もう一方の端部に後方壁9を貫通する除去装置16(同様に矢印で表示)を有する除去領域14を備える。2つの側壁6および7により形成される搬送通路18は、充填領域10と除去領域14の間に形成される。搬送通路18は搬送装置20を備える。生バイオマス22は、充填装置12を利用して充填領域10に継続的に供給される。バイオマス22は、搬送装置20により、大型発酵槽2のもう一方の端部にある除去領域14に運ばれ、除去装置16を利用して除去領域14から除去される。生バイオマスの供給と発酵されたバイオマスの排出は、上部壁5または側壁6および7を通して行われてもよい。
【0032】
搬送装置20は、底板4上の搬送通路18に互いに直に接して配置された複数の搬送クッション24−iからなる。図1からわかるように、各搬送クッション24−iは、大型発酵槽2の全幅にわたって延設され、楕円形の底部領域を有する円柱を高さ方向に二等分した形状となっている。すなわち、搬送クッションの上面はアーチ状になっており、図1から図6で示されるほど直線的ではない。各搬送クッション24−iは、流体制御装置26を使用して流体を供給したり除去したりすることにより、その上方への膨張を一定間隔で増加したり減少したりすることが可能である。互いに直に接する搬送クッション24−iへ流体を供給したり搬送クッション24−iから流体を除去したりすることにより波動運動が引き起こされ、その波動運動により、バイオマス22が充填領域12から除去領域14に運ばれる。
【0033】
図2は、図1に示す大型発酵槽の搬送通路18の前面部の平面図である。充填領域10では、押出クッション25が端壁8に配置されており、押出クッション25は、流体が繰り返し供給されることによりバイオマスを搬送方向へ押しやる。端壁8または搬送通路18の高さによっては、複数の押出クッション25を上下に配置してもよい。
【0034】
図3a、3bおよび3cは、バイオマス22が充填された大型発酵槽2において、搬送クッション24−iによりバイオマス22を継続的に搬送する際の概略図である。搬送を引き起こす波動運動を説明するために、図3a、3bおよび3cではそれぞれ、搬送通路18全体にわたって10個の搬送クッション24−1から24−10が備えられる場合が示される。除去領域14には、搬送クッションは備えられない。
まず、図3aに示すように、最後の搬送クッション24−10上に保持されているバイオマス22の重量に対抗するように流体が除去領域14の上流にある最後の搬送クッション24−10に投入され、最後の搬送クッション24−10上に保持されているバイオマス22は持ち上げられ、その一部が空き空間となっている除去領域14に落下する。その後流体は、最後の搬送クッション24−10から除去または排出される。図3bに示すように、流体が最後から2番目の搬送クッション24−9に同時に投入される。搬送クッション24−8が膨張されると同時に、搬送クッション24−9が空にされる(図3c参照)。最終的には、1番目の搬送クッション24−1が膨張され、再び空にされる(図示せず)。その後、このプロセスは最後の搬送クッション24−10から再開される。これにより、波動運動が生じ、この波動運動によりバイオマス22が充填領域10から除去領域14に継続的に運ばれる。各搬送クッション24−iをこのように動作させることにより、搬送方向とは反対方向に波動運動が流れる。この動作方法は、バイオマス22にかなり高い割合で乾燥物質が含まれている場合に特に適している。
【0035】
図4a、図4bおよび図4cは、搬送通路18においてバイオマス22を充填領域10から除去領域14に搬送するための各搬送クッション24−iの別の動作方法を示す図である。特に、乾燥物質の割合が低く、乾燥物質が浮動する液面が搬送クッションよりも上にあるバイオマスの場合は、搬送方向の波動運動が適している。このことが図4a、図4bおよび図4cに概略的に示されている。
【0036】
まず、図4aに示すように、1番目の搬送クッション24−1上に保持されているバイオマス22の重量に対抗するように、充填領域10にある1番目の搬送クッション24−1に液体が投入され、1番目の搬送クッション24−1の上方にある液体は排出される。次に、2番目の搬送クッション24−2が液体により膨張される(図4a参照)。そして、図4bに示すように、液体が1番目の搬送クッション24−1から排出され、同時に3番目の搬送クッション24−3が膨張されるが、2番目の搬送クッション24−2は膨張されたままとされる。次に、図4cに示すように、流体が2番目の搬送クッション24−2から排出され、4番目の搬送クッション24−4が膨張されるが、3番目の搬送クッション24−3は膨張されたままとされる。このように、「搬送波」が搬送方向に生じ、この「搬送波」によってバイオマス22が充填領域10から除去領域14に運ばれる。この場合、除去領域14からバイオマスがなくなることはない。
【0037】
搬送通路の長さに応じて、搬送通路を移動し、液体を充填された搬送クッション24−iの形状をした複数の「波状の隆起」が形成されてもよい。波動運動の方向を逆にして、図3aから図3cに示す動作方法と同様にしてもよい。
【0038】
図5は、搬送クッションの別の構成を示す概略図であり、搬送クッション24−iは膨張した状態においてその表面が搬送方向に傾斜する。この構成により、搬送効果が高められる。
【0039】
図6は、本発明に係る搬送装置の別の構成を示す図であり、バイオマス22が搬送クッション24−i上に直接載っているのではなく、搬送クッション24−i上に被せられたフィルム状の搬送クッションカバー28上に載っているという点で上記で説明した実施形態と異なる。これにより、隣り合う搬送クッション24−iと24−i+1との間にバイオマスが恒久的に沈殿することが防がれる。
【0040】
図7は、円筒形ダイジェスタ42を有する円形の大型発酵槽40を示す図である。大型発酵槽40は、平面状の底板44を備える。円筒形外側壁46は、底板44から鉛直方向に延設される。円筒形外側壁46は、円筒形外側壁46よりも小さい直径の円筒形内側壁48を取り囲んでいる。円筒形外側壁46と円筒形内側壁48との間の空間は、天板により閉鎖される(図示せず)。底板44、円筒形外側壁46、円筒形内側壁48および天板は互いに気密式に接続され、ダイジェスタ42を形成する。
【0041】
ダイジェスタ42は、隔壁52によりその内部が分割される。隔壁52の一方の側には、円筒形外側壁46を貫通する充填装置56を有する充填領域54が備えられる。隔壁52のもう一方の側には、円筒形外側壁46を貫通する除去装置60を有する除去領域58が備えられる。
【0042】
充填領域54と除去領域58との間に、円筒形内側壁48および円筒形外側壁46により形成される環状の搬送通路62が形成される。図2から図5までを参照して説明された種類の搬送装置64が搬送通路62に備えられ、前記搬送装置64は、底板44上に互いに直に接するように配置される複数の搬送クッション66−iを備える。図8からわかるように、搬送クッション66−iは、カットされたケーキの先端を切り落としたような形状を有している。すなわち、円筒形内側壁48の領域よりも円柱外側壁46の領域の方が幅が広くなっている。
【0043】
図7の両矢印50は、充填領域54と除去領域58との間に配置され、円筒形外側壁46を貫通する除去/充填装置50を示す。除去/充填装置50によって、半発酵バイオマス22がダイジェスタ42から除去され、脱水され、再びダイジェスタ42に投入される。脱水は、たとえば、セパレータを利用して行われる。セパレータに蓄積された浸出液はろ過され、生成されたろ過液は再びダイジェスタへ投入される。ろ過液に含まれる微生物により、バイオマス22の変換率が増加し、バイオガスの生成が向上される。
【0044】
図8は、搬送クッション66−iを有する搬送装置64の上面図である。搬送を引き起こす波動運動が、図1に示す実施形態と同様に発生される。
【0045】
図9は、図1に示す搬送通路18、図7に示す搬送通路62の断面図である。図9からわかるように、上面搬送クッション67−iが天板5に配置される。上面搬送クッション67−iは、底面搬送クッション24−i、66−iと対称をなして、天板5に配置される。また、側面搬送クッション68−iが側壁6および7、または円筒形外側壁46および円筒形内側壁48に配置されてもよい。ここで、互いに対向する搬送クッション68−iは、いずれの実施形態の場合も対にして配置され、同期して動作される。また、上面搬送クッション67−iと底面搬送クッション24−i、66−iもまた、対にして同期して動作させることが可能である。あるいは、搬送クッション67−iおよび68−iは、搬送クッション24−iまたは66−iが動作されるのと同様に動作される。同一平面上にある上面、底面および側面の搬送クッションは同期して動作されることが可能であり、そのため、腸のような蠕動運動が得られる。
【0046】
図10は、図8に示した搬送装置の別の実施形態である搬送装置70を示す図である。搬送装置70は同様に、複数の底面搬送クッション72−iを備え、底面搬送クッション72−iは、内側搬送通路リング74および外側搬送通路リング76に配置される。内側搬送通路リング74および外側搬送通路リング76は、円筒形内側壁48および円筒形外側壁46と同心円状に配置される中間壁78により互いに分離される。この場合、外側搬送通路リング76に配置される搬送クッション72−iの数は、内側搬送通路リング74に配置される搬送クッション72−iの数より多い。図10に示される実施形態では、外側搬送通路リング76に配置される搬送クッション72−iの数は、内側搬送通路リング74に配置される搬送クッション72−iの数の2倍である。これは、外側搬送通路リング76の搬送路は内側搬送通路リング74の搬送路よりも長いということを踏まえてのことである。搬送を引き起こす波動運動が、図1および図7に係る実施形態と同様に発生される。上記で説明した実施形態のように、側面搬送クッションおよび上面搬送クッションが備えられてもよい。
【0047】
図6に示す搬送カバーが搬送装置64および70に備えられてもよい。また、図5に示す搬送クッションの上面側の構成を有してもよい。同様に、図7および図10に示す実施形態、つまり、搬送装置64および70において、隔壁52からバイオマスを搬送しやすくするために、充填領域54に図2に係る押出クッション25を1つ以上備えてもよい。
【0048】
継続的な動作を目的とした本発明に係る大型発酵槽は、再生可能な原料から得られたバイオマスに特に適している。なぜなら、そのようなバイオマスは、その均一性ゆえに、本発明に係る搬送装置によって容易に運ぶことが可能であるからである。
【0049】
上記で説明した図面は原寸に比例しておらず、概略図である。
【図面の簡単な説明】
【0050】
【図1】底面が搬送クッションで覆われている細長状の大型発酵槽を示す概略図である。
【図2】押出クッションを有する図1に示す実施形態の搬送通路の平面図である。
【図3】(a)、(b)および(c)は、本発明の一実施形態に係る動作方法により搬送クッションを動作させることにより引き起こされる波動運動を説明する断面図である。
【図4】(a)、(b)および(c)は、本発明の別の実施形態に係る動作方法により搬送クッションを動作させることにより引き起こされる波動運動を説明する断面図である。
【図5】搬送クッションの別の構成を示す図である。
【図6】搬送クッションに天板が設けられる別の構成を示す図であり、該天板は、天板上にあるバイオマスに波動運動を伝える。
【図7】本発明に係る円形の大型発酵槽の概略図である。
【図8】対応する形状の搬送クッションが備えられた、図7に示す円形の大型発酵槽の底面を示す平面図である。
【図9】図1または図7に係る実施形態の搬送通路の断面図である。
【図10】円形の大型発酵槽の別の構成を示す図である。
【符号の説明】
【0051】
2 大型発酵槽
4 底板
5 天板
6 右側壁
7 左側壁
8 端壁
9 後方壁
10 充填領域
12 充填装置
14 除去領域
16 除去装置
18 搬送通路
20 搬送装置
22 バイオマス
24−i 底面搬送クッション
25 押出クッション
26 流体制御装置
28 搬送クッションカバー
40 大型発酵槽
42 ダイジェスタ
44 底板
46 円筒形外側壁
48 円筒形内側壁
50 除去/充填装置
52 隔壁
54 充填領域
56 充填装置
58 除去領域
60 除去装置
62 搬送通路
64 搬送装置
66−i 底面搬送クッション
67−i 上面搬送クッション
68−i 側面搬送クッション
70 搬送装置
72−i 底面搬送クッション
74 内側搬送通路リング
76 外側搬送通路リング
78 中間壁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バイオガス発生用発酵槽(2;40)に備えられる、特に植物性の再生可能原料からなるバイオマス(22)用の搬送装置であって、
互いに対向し底板(4)および天板(5)を介して互いに接続される側壁(6、7;46、48)を有する搬送通路(18;62)と、
前記搬送通路(18;62)に配置され、流体を充填可能であり、搬送される前記バイオマス22に接触する複数の搬送クッション(24−i;66−i;72−i)と、
搬送クッション(24−i;25、66−i、67−i;68−i;72−i)に対して順番に流体の充填、排出を連続的に行い、その結果、バイオマスが搬送通路を移動される波動運動を引き起こすことが可能な流体制御装置(26)と、を備え、
前記搬送クッション(67−i;68−i)は、前記天板(5)および/または2つの側壁(6、7;46、48;78)のうちの少なくとも1つに固定されていることを特徴とする搬送装置。
【請求項2】
底面搬送クッション(24−i;66−i;72−i)は、底板(4;44)に固定されていることを特徴とする請求項1に記載の搬送装置。
【請求項3】
底面搬送クッション(24−i;66−i;72−i)は、液体、特には水を充填可能であることを特徴とする請求項1又は2に記載の搬送装置。
【請求項4】
前記天板(5)に固定された前記搬送クッション(67−i)は、バイオガスと混合されても爆発性混合物を形成しない気体を充填可能であることを特徴とする請求項1から3のいずれかに記載の搬送装置。
【請求項5】
前記搬送クッション(24−i;66−i;72−i)の上に搬送クッションカバー(28)が備えられ、前記搬送クッションカバー(28)は、前記バイオマス(22)に、前記搬送クッション(24−i;66−i;72−i)により引き起こすことが可能な波動運動を伝達することを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の搬送装置。
【請求項6】
前記側壁(6、7;46、48;78)に固定された前記搬送クッション(68−i)は、対になっており、互いに対向するように配置されることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載の搬送装置。
【請求項7】
固体発酵方式によりバイオマスからバイオガスを発生させるための大型発酵槽であって、
底板(4;44)を有する気密式ダイジェスタ(42)と、
前記気密式ダイジェスタ(42)を貫通しており、前記ダイジェスタ(42)に生バイオマス(22)を継続的に供給することを目的とした充填装置(12;56)を有する充填領域(10;54)と、
前記気密式ダイジェスタ(42)を貫通しており、前記ダイジェスタ(42)から使用済バイオマス(22)を継続的に除去することを目的とした除去装置(16;60)を有する除去領域(14;58)と、
前記充填領域(10;54)から前記除去領域(14;58)に前記バイオマス(22)を搬送するための請求項1から6のいずれかに記載の搬送装置(20;64;70)と、
バイオガス除去連結部と、を備えることを特徴とする大型発酵槽。
【請求項8】
バイオマスの搬送方向に膨張可能であり流体を充填可能な少なくとも1つの押出クッション(25)が前記充填装置(12;56)の領域に備えられることを特徴とする請求項7に記載の大型発酵槽。
【請求項9】
前記ダイジェスタ(42)は、
前記底板(44)から鉛直方向に延設される気密性のある円柱形特には円筒形の外側壁(46)と、
前記底板(44)から鉛直方向に延設される気密性のある円柱形特には円筒形の内側壁(48)と、
前記外側壁(46)および前記内側壁(48)に接続される気密性のある天板と、を備え、
その結果、前記ダイジェスタ(42)は、前記外側壁(46)と、前記内側壁(48)と、前記天板とにより環状に形成され、バイオマス(22)を収容するようになっており、さらに、
前記底板(44)、前記外側壁(46)および前記内側壁(48)から鉛直方向に延設される隔壁(52)を備え、
前記隔壁(52)の一方の側に、前記外側壁(46)を貫通する前記充填装置(56)と、
前記隔壁(52)のもう一方の側に、前記外側壁(46)を貫通する前記除去装置(60)と、が備えられることを特徴とする請求項7または8に記載の大型発酵槽。
【請求項10】
中間壁(78)は、前記内側壁(48)と前記外側壁(46)の間にあって前記底板(44)から鉛直方向に延設され、その結果として、前記内側壁(48)と前記中間壁(78)の間に内側搬送通路リング(74)が形成され、前記外側壁(46)と前記中間壁(78)の間に外側搬送通路リング(76)が形成されることを特徴とする請求項7または8に記載の大型発酵槽。
【請求項11】
前記少なくとも1つの押出クッション(25)は、前記隔壁(52)に配置されることを特徴とする請求項7から10のいずれかに記載の大型発酵槽。
【請求項12】
前記内側壁(48)内に配置される浸出液貯蔵タンクを有する浸出液循環装置をさらに備えることを特徴とする請求項7から11のいずれかに記載の大型発酵槽。
【請求項13】
請求項7から11のいずれかに記載の大型発酵槽の運転方法であって、
前記充填装置(12)によって生バイオマスを供給する工程と、
前記除去装置(16;60;50)によって半発酵バイオマスを除去する工程と、
前記半発酵バイオマスから浸出液を分離する工程と、
前記充填装置(12;56、50)によって前記半発酵バイオマスを再度供給する工程と、
前記除去装置(16;60;50)によって完全発酵バイオマスを除去する工程と、を備えることを特徴とする運転方法。
【請求項14】
前記半発酵バイオマス(22)から除去された浸出液をろ過する工程と、
浸出液から得られたろ過液を前記大型発酵槽に戻す工程と、をさらに備えることを特徴とする請求項13に記載の運転方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2009−518172(P2009−518172A)
【公表日】平成21年5月7日(2009.5.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−543735(P2008−543735)
【出願日】平成18年12月7日(2006.12.7)
【国際出願番号】PCT/EP2006/011778
【国際公開番号】WO2007/065688
【国際公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【出願人】(508071272)ベーコン・エナジー・テクノロジーズ・ジーエムビーエイチ・アンド・シーオー.ケージー (8)
【Fターム(参考)】