説明

バイオクリーンルームの清浄度管理方法及びバイオクリーンルーム

【課題】交差汚染を確実に防止できるバイオクリーンルームの清浄度管理方法およびバイオクリーンルームを提供することを目的とする。
【解決手段】本発明のバイオクリーンルームの清浄度管理方法は、細胞を含有する目的試料12と、混入の指標となる指標物質を含有する陽性管理試料14と、前記指標物質を含有しない陰性管理試料16と、を並行して処理を行い、処理後の前記陰性管理試料16における前記指標物質を検査し、前記検査結果に基づいて試料相互間の交差汚染リスクを評価することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に患者の自家移植用細胞を培養するのに好適なバイオクリーンルームの清浄度管理方法及びバイオクリーンルームに関する。
【背景技術】
【0002】
細胞処理の一形態である細胞培養のための装置として、例えば非特許文献1が開示されている。また細胞培養装置における汚染を防止する技術として、例えば特許文献1に示す自動培養装置が開示されている。
特許文献1によれば、培養工程および培養環境の制御を自動化することにより、異なる細胞間の交叉汚染を防止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】WO2004−011593
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】ステイシー・L・スジマンスキー他、ジャーナル オブ ザ アソシエーション フォー ラボラトリー オートメーション、13巻3号、2008年、136−144ページ
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記従来技術には以下に示す課題が考えられる。
細胞処理施設において細胞処理工程を自動化した場合、操作者由来の雑菌などの混入を抑制する効果は期待できるとしても、複数の細胞試料の相互間における交叉汚染の防止には必ずしも直結せず、むしろ交叉汚染のリスクが増大する場合がある。
【0006】
例えば非特許文献1に開示されているSelecTという装置は、培地交換の際にフラスコを倒立することにより使用済みの培地を開口部から排出し、また新鮮培地の供給に際しては培地を固定ノズル経由でフラスコの開口部付近から注入する。この様な操作法は単一種類の細胞を培養する場合には問題とならない。しかし複数種類の細胞を培養する場合、液滴の飛散や開口部への付着や混入により、細胞試料に含まれる可能性のある微生物や、細胞そのものが異なる種類の試料の間で相互に混入する交叉汚染が起きるリスクがある。
【0007】
そこで特許文献1の自動培養装置は、上記交叉汚染対策のために装置内を複数の区画に区分し、区画ごとにガス滅菌機構を設け、ある区画にてある細胞の処理終了後、他の細胞の処理開始前にその区画を滅菌する装置が開示されている。
【0008】
しかし滅菌には手間や時間がかかるという課題がある。またオゾンガスなどの滅菌剤は微生物ばかりでなく培養目的の細胞に対しても毒性があるため、滅菌剤の残留除去が不十分な場合は目的細胞に対し悪影響を及ぼす可能性がある。またオゾンガスなどの滅菌剤は装置に対して悪影響も及ぼす可能性があり、装置の耐久性低下などの課題がある。さらにガス状の滅菌剤を用いた場合、ガスが浸透しにくいいわゆるデッドスペースが生じる場合があり、そのデッドスペースについては所定の滅菌が行われないため、デッドスペースに微生物が繁殖し、汚染源となる可能性がある。
【0009】
そこで本発明は上記従来技術の問題点を解決するため、細胞を培養する際に、交差汚染を確実に防止できるバイオクリーンルームの清浄度管理方法およびバイオクリーンルームを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を解決するため、本発明のバイオクリーンルームの清浄度管理方法は、細胞を含有する目的試料と、混入の指標となる指標物質を含有する陽性管理試料と、前記指標物質を含有しない陰性管理試料と、を並行して処理を行い、又は混入の指標となる指標物質を含有する目的試料と、前記陰性管理試料を並行して処理を行い、処理後の前記陰性管理試料における前記指標物質の混入の有無を検査し、検査結果に基づいて試料相互間の交差汚染リスクを評価することを特徴としている。
【0011】
この場合において、前記目的試料の細胞がヒト細胞であり、前記陽性管理試料がヒト以外の動物細胞であるとよい。
また前記指標物質がヒト以外の動物のDNAであり、前記ヒト以外の動物のDNAに特異的な配列に対するPCRにより前記指標物質を検出するとよい。
【0012】
本発明のバイオクリーンルームは、細胞を含有する目的試料と、混入の指標となる指標物質を含有する陽性管理試料と、前記指標物質を含有しない陰性管理試料と、を並行して処理を行う、又は混入の指標となる指標物質を含有する目的試料と、前記陰性管理試料を並行して処理を行う処理手段と、処理後の前記陰性管理試料における前記指標物質の混入の有無を検査する検査手段と、検査結果に基づいて試料相互間の交差汚染リスクを評価する制御手段と、を備えたことを特徴としている。
【0013】
この場合において、前記指標物質が磁気微粒子であり、前記処理手段は、指標物質保持機構を備え、前記目的試料と、前記陽性管理試料と、前記陰性管理試料を並行して処理を行い、前記指標物質保持機構は、前記陰性管理試料を処理する際に、前記指標物質保持機構で指標物質を保持するとよい。
また、前記磁気微粒子が蛍光標識を有し、前記検査手段が蛍光励起微粒子解析装置であるとよい。
【0014】
本発明のバイオクリーンルームは、混入の指標となる指標物質を室内の雰囲気中に供給する指標物質供給機構と、細胞を含有する目的試料と、前記指標物質を含有しない陰性管理試料と、を並行して処理を行う処理手段と、処理後の前記陰性管理試料における前記指標物質の混入の有無を検査する検査手段と、検査結果に基づいて試料相互間の交差汚染リスクを評価する制御手段と、を備えたことを特徴としている。
この場合において、前記検査手段が超伝導SQUIDセンサーであるとよい。
【発明の効果】
【0015】
上記構成による本発明のバイオクリーンルームの清浄度管理方法及びバイオクリーンルームによれば、処理目的である目的細胞を含有する試料以外に、処理目的でない管理試料を採用し、目的試料と管理試料のそれぞれに対して並行して処理を施し、処理の結果得られた産物について交差汚染を検査し、この検査結果に応じて、交差汚染のリスクを評価しているので、交差汚染のリスクを高精度かつ高感度に評価することができる。
従って、本発明によるバイオクリーンルームや細胞処理施設は、清浄度を高度に管理することができ、高純度かつ安全な細胞を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】バイオクリーンルームの実施例1の構成概略図である。
【図2】バイオクリーンルームの清浄度管理方法の工程図である。
【図3】バイオクリーンルームの変形例1の構成概略図である。
【図4】バイオクリーンルームの変形例2の構成概略図である。
【図5】バイオクリーンルームの実施例2の構成概略図である。
【図6】バイオクリーンルームの実施例3の構成概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明のバイオクリーンルームの清浄度管理方法及びバイオクリーンルームの実施形態を添付の図面を参照しながら以下詳細に説明する。
図1は、本発明のバイオクリーンルームの実施例1の構成概略図である。
【0018】
バイオクリーンルーム10は、所定の清浄度に維持されている。本発明では、バイオクリーンルーム10の一例として、セルプロセッシングセンター、細胞培養装置、細胞培養システム、細胞培養プラント、細胞バンク、細胞輸送装置などの細胞処理施設を挙げることができる。
【0019】
本発明のバイオクリーンルーム10に供給する試料は、目的試料12、管理試料である。
目的試料12は、動物細胞、ヒト細胞、ヒト幹細胞、患者幹細胞のうちいずれかの細胞を含有する試料である。
【0020】
管理試料は、陽性管理試料14と陰性管理試料16とからなる。
陽性管理試料14は、混入の指標となる指標物質を含有する試料である。指標物質としては、目的細胞と類似であるが目的細胞と識別が可能な細胞、蛍光標識などの標識を有する粒子、外部磁場による保持や磁気分離が可能な磁性粒子などを用いることができる。
【0021】
陰性管理試料16は、指標物質を含有しない試料である。陰性管理試料16としては、目的細胞を含有しない試料、あるいは、目的細胞と種類が同じまたは種類が類似である細胞(以下陰性管理細胞)を含有する試料を用いている。
【0022】
バイオクリーンルーム10内には、処理手段20、交差汚染検査手段30、倉庫40、搬送手段、制御手段を設けている。
本発明の処理手段20は、培養、増殖、分化、保存、解凍、輸送などの処理を対象としている。図1に模式的に示したとおりバイオクリーンルーム10は複数の目的試料12を並行して処理することができる。
【0023】
処理手段20の後段には交差汚染検査手段30及び倉庫40を設けている。交差汚染検査手段30は、陽性管理試料14と陰性管理試料16に対して処理を施した結果得られた産物(以下陽性管理試料産物24と陰性管理試料産物26という)に対して実施し、この検査結果に応じて交差汚染リスクを評価している。処理や環境における交差汚染のリスクに応じて、陽性管理試料14中の指標物質が陰性管理試料16に混入、汚染する。陰性管理試料16の処理は基本的に目的試料12と同一条件下で並行して実施し、また陽性管理試料14に含まれる指標物質は交差汚染の原因物質と類似の性質を有するものを選択して使用できる。従って、陰性管理試料16に対する指標物質の混入、汚染の程度は、目的試料12における交差汚染のリスクを忠実に反映する。陰性管理試料16に混入した指標物質は、DNAの配列特異的PCR増幅や、蛍光などの標識を利用して高感度に検出することができるため、交差汚染リスクを高感度に評価できる。
【0024】
倉庫40は、目的試料産物22を一時保管することができる。またバイオクリーンルーム10内には搬送手段(不図示)を設けてあり、室内への試料の入出、処理手段20、検査手段30、倉庫40の間において各種試料を自動搬送することができる。
【0025】
制御手段は、アルゴリズムを内蔵させ、バイオクリーンルーム10の各構成要素である、処理手段20、交差汚染監査手段30、搬送手段、倉庫40を自動制御することができる。各構成要素を制御する機能を制御手段に持たせることにより、同様の運用を少なくとも部分的に(好ましくは完全に)自動的に行うことができる。より具体的には制御手段は、処理手段20、交差汚染検査手段30に実行や検査を指示し、実行結果や検査データ等を収集し、アルゴリズムに基づいてデータ処理を行い、交差汚染リスクや混入の有無などの判断を下し、そして搬送手段により試料の受入、搬送、倉庫40への格納、倉庫40からの出荷などの動作を指示し、実行させている。
【0026】
なお制御手段は、バイオクリーンルーム10での運用を少なくとも部分的に自動化するように構成してもよい。またバイオクリーンルーム10の運用、即ち受入、搬送、培養、保管、検査、判断、指示、出荷などは一部/全体を人為的に操作するように構成することもできる。
【0027】
次に上記構成による実施例1のバイオクリーンルームの清浄度管理方法について以下説明する。
図2は、バイオクリーンルームの清浄度管理方法の工程図である。図2では、目的試料12として自家移植を前提とした細胞治療用のヒト間葉系幹細胞(hMSC)を用いた培養処理について説明する。即ち、患者自身の骨髄や脂肪組織などから採取したhMSCを含有する、複数の異なる試料を原料とし、それぞれ個別に培養し、それぞれに対する目的試料産物22や、目的試料製品32を得た。
【0028】
本実施例1の管理試料のうち陽性管理試料14は、目的細胞と同じ種類の細胞であるhMSCを用いている。ただし、陽性管理試料14として用いたhMSCは、患者から採取したhMSCではなく、市販のhMSC(Lonza社PT−2501)を用いた点が目的試料12と異なる。この陽性管理試料14に含まれる市販hMSCからゲノムDNAを抽出し、疾病リスクや個人情報に関連しない、ハウスキーピング遺伝子としても知られるbeta actinのAccession Number NM_001101の配列に対し、市販の試薬キット(ABI社4326315、Pre−Developed TaqMan(R)Assay Reagents、Human ACTB)を用いて定法により定量PCR増幅が可能であることを予め確認した。本実施例1ではこのbeta actin配列を有するヒトゲノムDNAを指標物質として採用している。
【0029】
また管理試料のうち陰性管理試料16は、細胞を含有しない試料、即ち培地のみのブランクを用いている。また培養操作における培地などとしてヒトDNAを含有する材料を用いなかった。即ち、陽性管理試料14は指標物質を含み、陰性管理試料16は指標物質を含まず、また培養工程において試料相互間の混入リスクが無い場合は、陰性管理試料16中に指標物質が混入することはない。
【0030】
バイオクリーンルーム10に上記の目的試料12、陽性管理試料14、陰性管理試料16などの試料を受け入れる(ステップ101)。
目的試料12、陽性管理試料14、陰性管理試料16を処理手段20となる培養装置に搬送する。培養装置では前記各種試料に対して並行して培養操作を行い、これら各種試料の培養産物である目的試料産物22、陽性管理試料産物24、陰性管理試料産物26を生産する(ステップ102)。
【0031】
本実施例1における培養工程(ステップ102)では、培養装置が各種試料に対して培養操作を行う際、目的試料12、陽性管理試料14、陰性管理試料16の順に培養工程の各単位操作を順次行い、結果的に並行して培養を行っている。交差汚染の原因としては培養装置における分注系統を介する汚染が過半であるため、陽性管理試料14中に含まれる市販hMSC中の指標物質は、分注系統を経由して、次の操作対象である陰性管理試料16へと交差汚染する確率が最も高く、以前の操作対象である目的試料12へと交差汚染する確率は低い。
【0032】
そして目的試料産物22に関しては、目的試料産物22を倉庫40に保管する(ステップ111)。
一方、目的試料産物の保管工程111と並行して、管理試料産物(即ち陽性管理試料産物24と陰性管理試料産物26)に関しては、交差汚染検査手段30を用いて管理試料産物の交差汚染検査を行う(ステップ112)。
【0033】
本実施例1における管理試料産物の交差汚染検査工程112では、交差汚染検査の目的のために、核酸抽出と定量PCR法を採用した。具体的には、陽性管理試料14(市販hMSC)から核酸を抽出し、指標物質であるゲノムDNAを得た。これを鋳型としてbeta actin配列に対する上記プライマーを用いて定法により定量PCR増幅を行った。PCRの増幅効率は百万倍以上であるため、数細胞程度と極微量の陽性管理試料14(hMSC)から出発した場合でも、定法により容易に検出可能である。
【0034】
一方、同様の操作を陰性管理試料16に対して実施した場合、hMSCなどのヒト細胞が含まれないため、上記核酸抽出とPCRを行っても増幅産物は全く得られず、検出もされない。
従って本法を適用することにより指標物質を超高感度に検出可能であり、また選択性も極めて高い。上記方法を採用することにより、指標物質を高感度に識別して検出することが可能である。もちろん、指標物質としてはbeta actin配列以外にも、陽性管理試料14であるhMSCに含まれる各種の核酸塩基配列を有する核酸も使用可能である。
【0035】
ところで、培養などの処理工程において試料が互いに混入するいわゆる交差汚染のリスクが存在すると、そのリスクに応じて、陽性管理試料14が陰性管理試料16に混入する。従って、処理の結果得られる陰性管理試料産物26に対して上記方法による交差汚染検査を実施することにより、処理工程における交差汚染のリスクの有無ならびにその程度を忠実に反映した検査結果が得られる。この検査結果を評価することにより、交差汚染のリスクを高精度に評価できる。このように本実施例1は培養操作における交差汚染リスクを極めて高感度かつ高精度に評価できる。
【0036】
なお前述の通り本実施例1では陽性管理試料14が陰性管理試料16に混入する確率は陽性管理試料14が目的試料12に混入する確率と比較して極めて高い。従って後者が起きる以前に確実に前者が交差汚染リスクとして顕在化するため、後者即ち陽性管理試料14が目的試料12に混入する事象を見逃す恐れはない。
【0037】
次に上記交差汚染検査工程112の結果に基づき、交差汚染リスクの評価・判断を行う(ステップ121)。
交差汚染リスクが無いという評価・判断結果の場合は、倉庫40に保管してあった目的試料産物22を目的試料製品32として出荷する(ステップ122)。
【0038】
一方、交差汚染リスクが有るという評価・判断結果の場合は、倉庫40に保管してあった目的試料産物22について、詳細な混入検査を行う(ステップ123)。またバイオクリーンルーム10の管理者に対し交差汚染リスクの可能性があることを報告する。
【0039】
詳細検査工程(ステップ123)の結果に基づき、混入の可能性の有無について評価、判断を行う(ステップ131)。
混入の可能性が無いという評価・判断結果の場合は、倉庫40に保管してあった目的試料産物22を目的試料製品31として出荷する(ステップ132)。
【0040】
一方、混入の可能性が有るという評価・判断結果の場合は、倉庫40に保管してあった目的試料産物22について出荷を停止し、また細胞処理施設の管理者に対し培養が失敗したことを報告する(ステップ133)。
【0041】
目的試料製品の出荷工程132、あるいは目的試料産物の出荷停止ならびに培養失敗報告の工程133の後、バイオクリーンルーム10を構成する処理手段20、倉庫40などにおける混入防止対策を実施するとともに、交差汚染検査手段30などの検査精度の確認を行い、バイオクリーンルーム10における清浄度管理の質を向上する(ステップ141)。
【0042】
本発明の清浄度管理方法では、詳細検査の要否を評価・判断し、また要と評価・判断した場合、詳細検査の内容を決定する。詳細検査の内容の例としては、分析対象や分析項目、分析感度などがある。また詳細検査の結果に基づいて交差汚染リスクの原因を究明し、混入防止対策を行い、交差汚染リスクを低減することができる。対応策の別の例としては、製品の出荷停止の要否を判断し、要と判断した場合の出荷停止の内容を決定する方法がある。出荷停止の内容の例としては、対象製品の範囲や出荷停止期間、などがある。
【0043】
本実施例1では陽性管理試料14として市販のhMSC,陰性管理試料16として細胞を含有しない培地のみのブランクを用いて説明した。しかし本実施例1に適用可能な管理試料の組み合わせは上記に限定されず、一般に陽性管理試料14に含まれる指標物質が陰性管理試料16に含まれず、指標物質を高感度かつ高精度に検出可能であれば同様に適用可能である。
【0044】
管理試料の好適な組み合わせとしては、例えば陽性管理試料14を用いず、陰性管理試料16として細胞を含有しない培地のみのブランクを用いる方法もある。図3はバイオクリーンルームの変形例1の構成概略を示す図である。変形例1の場合、目的細胞を陽性管理試料14の代わりに用い、目的細胞に含まれるhMSCのゲノムDNAを目的細胞由来の指標物質として用いることにより、上記と類似の構成と手順により、類似の結果を得ることができる。この場合、目的細胞そのものによる陰性管理試料16への混入リスクを直接評価できるという特有の効果がある。
【0045】
また管理試料の好適な組み合わせとしては、例えば陽性管理試料14として他種の動物のMSC,陰性管理試料16として市販hMSCを用いることができる。この場合は、当該動物種特有の配列を有するゲノムDNAを指標物質として使用し、この配列に対して選択的な(かつヒト配列に対する偽陽性増幅が無い)プライマーを用いたPCR法などにより、高感度かつ高精度な検出ができる。この場合、陰性管理試料16の性状を目的試料12により近づけられる。特に人手で作業する場合において外観だけでは目的試料12、陽性管理試料14、陰性管理試料16を互いに見分けることが困難となり、試料処理の順番を入れ替えた盲見試験を実施でき、作業者の先入観の影響を排除できる、という特有の効果がある。図4はバイオクリーンルームの変形例2の構成概略を示す図である。順番を入れ替えて盲見試験を実施する場合、図4に示すように陽性管理試料14と陰性管理試料16を一組にして(間に他の試料を挟まず)、目的試料12の間に挿入することが好ましい。盲見試験を実施する場合は、目的試料産物22ばかりでなく、陽性管理試料産物24と陰性管理試料産物26についても倉庫40にいったん保管した後、両管理試料産物についてのみ交差汚染検査を行うことにより、試料の取り扱いがより統一的となり、作業者の先入観の影響をより効果的に排除できるという特有の効果がある。この方法は、例えば創薬スクリーニング向けの細胞を生産する目的に使用する場合などにおいて特に有効である。
【0046】
次に本発明の実施例2のバイオクリーンルームについて以下説明する。
図5は本発明のバイオクリーンルームの実施例2の一例の構成概略図である。本実施例2の特有の構成要素として、指標物質保持機構70が挙げられる。本実施例2の構成は、基本的に前記実施例1と同様であるが、陽性管理試料14として、指標物質を培地に分散させたものを用いた点、並びに処理手段20となる培養装置の構成要素として指標物質保持機構70を有するものを用いた点が実施例1と相違する。実施例2のその他の構成は実施例1と同様であり、その詳細な説明を省略する。
【0047】
具体的に本実施例2では指標物質として磁気微粒子となる蛍光標識された磁性ビーズを用いている。この磁性ビーズは原料ビーズに対し、蛍光標識を導入することにより作成した。一例としてインビトロジェン社製Dynabeads MyOne Silane(インビトロジェン社370−02D)を原料ビーズとして用いた。この原料ビーズに対し、3−アミノプロピルトリメトキシシランを反応させることにより、ビーズ表面にアミノ基を導入した。さらにFluorescein Labeling Kit−NH2(同仁化学研究所社製LK01)を用いて、ビーズ表面のアミノ基を介した共有結合により有機蛍光体であるフルオレセインを標識として導入した。反応産物の精製(未反応の原料などの除去)の際は、磁気分離に基づく固液分離法を用いた。最後に、得られた蛍光標識された磁性ビーズに対し、ガンマ線を照射することにより滅菌した。このようにして得た蛍光標識磁気ビーズを、培地に分散することにより、陽性管理試料14を調整した。
【0048】
また本実施例2では指標物質保持機構70として、磁石を主要構成要素とする保持機構を、培養装置に備えた。磁石としては永久磁石あるいは電磁石を用いることができる。磁石として永久磁石を用いる場合、指標物質保持機構70は永久磁石とその空間位置を移動させる装置とから好適に構成される。この指標物質保持機構70を試料容器の近傍に設置することにより、試料容器に外部から永久磁石を接近させて磁力を作用させた励磁状態、あるいは試料容器から永久磁石を離して磁力を作用させない脱励磁状態、のいずれかの状態を任意に選択可能である。磁石として電磁石を用いる場合、指標物質保持機構70は電磁石とその電気的駆動装置とから好適に構成される。この指標物質保持機構70を試料容器の近傍に設置することにより、電磁石を電気的に駆動して試料容器に外部から磁力を作用させた励磁状態、あるいは電磁石を駆動せず磁力を作用させない脱励磁状態、のいずれかの状態を任意に選択可能である。
【0049】
培養装置において試料容器を保持する機構(以下試料容器保持機構という)の近傍に上記指標物質保持機構70を備えることにより、この試料容器保持機構を用いて試料容器を保持して執り行う要素工程において、励磁状態、脱励磁状態のいずれかを選択することができる。あるいは、試料容器保持機構とは独立に試料容器に対して直接永久磁石を着脱可能に結合する構成を採用することもできる。この場合、指標物質保持機構70が必要に応じてこの着脱を行うことにより、試料容器保持機構の有無にかかわらず、必要な要素工程毎に、励磁状態、脱励磁状態のいずれかを選択することができる。
【0050】
励磁状態においては、試料容器の外部から磁場を作用させることにより試料容器内の溶液中の指標物質が試料容器内に保持される(以下保持モードという)。脱励磁状態においては、試料容器内の溶液中の指標物質が試料容器内に保持されない(以下非保持モードという)。
【0051】
さらに、特に培地や上清などの溶液を排出するなどの溶液操作を試料容器に対して行う工程において、工程の途中まで非保持モードとし、工程の途中で溶液操作をいったん中断し、その後保持モードとして集磁完了後、残りの溶液操作を引き続いて行うなどの方法により、両状態の時間配分を選択することも可能である。この場合、試料容器内の溶液中の指標物質は任意の割合で試料容器内に保持され、残りは保持されずに排出される(以下部分保持モードという)。なお部分保持モードは、工程中の時間配分だけではなく、励磁と脱励磁の間の中間的な所定の磁力を及ぼす様に磁石を制御することによっても実現可能である。
【0052】
なお、目的試料12としてhMSCを用い、また陰性管理試料16としては市販のhMSCを用い、目的試料12や陰性管理試料16はいずれも(少なくとも最初は)指標物質を含有しない点など、指標物質に関連する部分以外の構成は基本的に前記実施例1と同じである。
【0053】
上記構成による本実施例2の培養工程102を以下の通り実施した。培養装置において各種試料に対して培養操作を行う際、目的試料12を収納する試料容器に対して操作を行う場合には非保持モードを採用した。陽性管理試料14に対しては、培地や上清などの溶液を排出する工程において溶液中の指標物質のうち95%を試料容器内に保持する部分保持モードを採用し、それ以外の工程においては基本的に非保持モードを採用した。陰性管理試料16に対しては、溶液中の指標物質を試料容器内に保持する保持モードを常に採用した。
【0054】
本実施例2における培養工程102においても、培養装置が各種試料に対して培養操作を行う際、目的試料12、陽性管理試料14、陰性管理試料16の順に培養操作を行った。
陽性管理試料14について培地や上清などの溶液を排出する排出工程において上記部分保持モードを採用したため、陽性管理試料14中の指標物質は、95%は保持されるが5%保持されず、分注機構や廃液機構等などの分注系統に移動する。培養操作における交差汚染リスクの過半は、これら培養装置における分注系統を経由した試料や溶液、飛沫による交差汚染である。これら交差汚染リスクが存在する場合、指標物質は分注機構や廃液機構等を経由して、次の操作対象である陰性管理試料16へ混入する。なお本実施例2においては、指標物質は、目的試料12である細胞だけでなく、溶液や上清に含まれる微生物や病原体など、細胞以外の成分が交差汚染するリスクをも代表している。
【0055】
陰性管理試料16は保持モードで処理されるため、陰性管理試料16に一度混入した指標物質は途中の洗浄工程などを経てもそのまま保持され、指標物質が入った陰性管理試料産物26が得られる。
【0056】
培養工程中に排出工程が複数ある場合、陽性管理試料14を95%部分保持モードで処理することにより、初回は95%、二回目は90%、三回目は86%と、直前に残留していた指標物質のうち95%が常に陽性管理試料14中に保持され、かつ、直前に残留していた指標物質の5%が分注系統に移動する。従ってすべての排出工程において指標物質を分注系統に供給できる。つまり分注系統における交差汚染リスクが常時顕在化しておらず突発的に生じる場合、換言すると複数の排出工程のうち一部にのみ交差汚染リスクがある場合であっても、指標物質はそのリスクの程度に応じて陰性管理試料16へ混入する。
【0057】
一方、目的試料12は陽性管理試料14より前に操作されるため、陽性管理試料14中の指標物質は元来目的試料12への混入のリスクは低く、またたとえ混入したとしても目的試料12は非保持モードで処理されるため、培養工程中の洗浄工程において指標物質は洗い流され、目的試料産物22には残留しない。
【0058】
本実施例2における交差汚染検査手段30は、交差汚染リスクがある場合に陽性管理試料14から陰性管理試料産物24にごくわずかに混入する可能性のある指標物質を高感度に検出する機能を持つ。本実施例2では指標物質として蛍光標識された磁性ビーズを用いたため、交差汚染検査手段30として、レーザ光源と蛍光検出器を有する、フローサイトメトリの原理に基づく装置、具体的にはベックマンコールター社のEpicsAltra型を採用した。本装置は光源レーザとして(FITCの励起に最適な)波長488nmのアルゴンイオンレーザを備え、またFITCの蛍光波長に最適化された蛍光検出系(FL1チャンネル)を有し、適切な測定条件を設定することにより、FITCで標識された粒径1μm以上の微粒子を1個ずつ確実に検出できる。従って、本実施例2に必要とされる超高感度な指標物質の検出の目的に極めて好適に適用可能である。
【0059】
次に本実施例2における管理試料産物の交差汚染検査の方法として以下の方法を採用した。管理試料産物の交差汚染検査工程112において、まず陰性管理試料産物26についてカオトロピック塩(塩化グアニジウム水溶液など)を加えて細胞の溶解操作を行った。保持モードで混入した可能性のある指標物質を保持したまま溶解液を排出した。次に以下の洗浄の操作を繰り返した。即ち、容器に洗浄液即ちリン酸塩緩衝液(PBS)を導入し、非保持モードで攪拌混合し、保持モードとし、洗液を排出することにより洗浄した。少量のPBSを用いて非保持モードで試料を回収し、上記交差汚染検査手段30を用いて、指標物質の有無ならびに数を高感度に検出した。
【0060】
なお本実施例2では指標物質として蛍光標識された磁性ビーズを用い、交差汚染検査手段30として蛍光検出器を備えたフローサイトメトリに基づく装置を用いたが、本実施例2に用いることのできる指標物質と検出装置の組み合わせは上記に限定されない。即ち例えば、標識としては蛍光物質以外に放射性同位体、酵素やその基質、抗体やその抗原、ビオチンやストレプトアビジン、核酸オリゴマー、など微量計測の対象となる各種物質や、それらの物質にさらに別の標識を結合した物質などが標識として利用可能である。また対応する検出装置としてはそれぞれの標識を高感度に検出可能な各種装置、例えばオートラジオグラフ、酵素と基質の反応に基づく発光や発色を計測する発光計測装置あるいは吸光光度計、抗原抗体反応に基づく各種免疫計測装置、標識ストレプトアビジンあるいは標識ビオチンとの特異的結合反応と固液分離法を組み合わせた各種検出装置、相補鎖オリゴマーとのハイブリダイゼーションやパイロシーケンス法に基づく各種検出装置、などが好適に利用可能である。
本実施例2によると、目的試料である細胞だけでなく、培地に含まれる微生物や病原体などの各種成分の交差汚染リスクについても高感度に評価可能である、という特有の効果がある。
【0061】
次に本発明の実施例3のバイオクリーンルームについて以下説明する。
図6は本発明のバイオクリーンルームの実施例3の一例の構成概略図である。本実施例3の特有の構成要素として、指標物質供給機構80や指標エアロゾル214が挙げられる。
【0062】
本実施例3と実施例2との構成上の相違は、実施例2の陽性管理試料14の代わりに、指標物質を空気中に分散させたエアロゾル(以下指標エアロゾル214という)を用いた点である。本実施例3では目的試料12としてhMSCを用い、また陰性管理試料16としては細胞を含有しない培地だけの試料を少なくとも1つ用いた。それ以外の構成は基本的に実施例2と同様の構成であり、その詳細な構成の説明を省略する。
【0063】
本実施例3では指標物質として約250nm径のマグネタイト含有ナノビーズ(micromod社13−00−252、nanomag−silica)を滅菌して用いている。このビーズはマグネタイトに基づく磁性を有し、実施例2と同様、磁気ビーズとして取り扱うことが可能である。指標物質の懸濁液を超音波ネブライザにより噴霧してエアロゾルを形成した。さらに送風機構によりエアロゾルを任意の割合で希釈することにより、所定濃度の指標物質をエアロゾルとして含む気流を得た。この所定濃度の指標物質のエアロゾル気流を発生するための手段を以下指標物質供給機構80と称す。
【0064】
指標物質供給機構80には「供給モード」と「非供給モード」の2種の動作モードを備える。
供給モードにおいて、指標物質供給機構は、培養装置などのシステムを構成する要素装置そのものへ指標物質を供給する。あるいは指標物質が設置されている環境、即ちクリーンルーム内の大気環境へ指標物質を供給することもできる。
【0065】
一方、非供給モードにおいて、指標物質供給機構80は発生したエアロゾルを磁石やフィルター等により吸着除去し、また要素装置やクリーンルームへの指標物質の供給を遮断した。各要素装置やクリーンルームはHEPAフィルターなどに基づく空気清浄機構を備え、その内部の空気中の微粒子は通常は所定値に維持されている。本実施例においては磁気ビーズからなる指標エアロゾル214を強制的に各要素装置やクリーンルームに供給する場合があるため、本実施例による各要素装置やクリーンルームは、空気清浄機構において磁石を用いたプレフィルターをHEPAフィルターの前段に備え、HEPAフィルターの能力低下を防止した。
【0066】
上記構成による本実施例3の培養工程102を以下の通り実施した。
処理手段20となる培養装置において各種試料に対して培養操作を行う際、目的試料12を収納する試料容器に対して操作を行う場合には、指標物質供給機構80は非供給モードを採用し、培養装置やクリーンルームへ指標物質を供給しなかった。また、指標物質保持機構70の非保持モードを採用した。陰性管理試料16に対して操作を行う場合は、指標物質供給機構80の供給モードを採用し、培養装置やクリーンルームへ指標物質を供給した。また、指標物質保持機構70の保持モードを採用した。
【0067】
本実施例における培養工程102においても、培養装置が各種試料に対して培養操作を行う際、目的試料12、陰性管理試料16の順に培養操作を行った。
培養操作における汚染リスクの一部は、培養装置内やそれを設置したクリーンルーム内などの大気環境中に存在する可能性のある微生物や病原体などの微粒子が、培養中に培養容器の蓋を解放した際などにおいて、培養容器内へ混入することによる汚染である。培養装置等やクリーンルームの空気清浄機構が所定の機能を発揮していればこの混入リスクは極めて小さいが、空気清浄機構の機能が低下したり、HEPAフィルターのメンテナンスが不十分な場合などにおいて、この混入リスクが顕在化する危険が生じる。この汚染リスクが存在する場合、供給モードにおいて指標物質は陰性管理試料16へ混入する。なお本実施例において、指標物質は、環境空気中に含まれる微生物や病原体などが汚染するリスクを代表している。
【0068】
陰性管理試料16は保持モードで処理されるため、上記により陰性管理試料16に混入した指標物質は途中の洗浄工程などを経てもそのまま保持され、指標物質が入った陰性管理試料産物26が得られる。
【0069】
一方、目的試料12は非供給モードで操作され、また(供給モードが適用される)陰性管理試料16より前に操作されるため、指標物質供給機構80から供給される指標物質が目的試料12へ混入するリスクは低く、またたとえ混入したとしても目的試料12は非保持モードで処理されるため、培養工程中の洗浄工程において指標物質は洗い流され、目的試料産物には残留しない。
【0070】
本実施例3における交差汚染検査手段30は、培養装置内やそれを設置したクリーンルーム内などの環境大気中から陰性管理試料産物26にごくわずかに混入するリスクのある指標物質を高感度に検出する機能を持つ。本実施例では交差汚染検査手段30として、(円福 敬二、磁気ナノマーカーを用いた超高感度免疫診断システム、臨床検査50巻12号、2006年、P.1509−1518)に開示されているものと同等の超高感度磁性体検出装置を採用することにより、指標物質である磁気ナノビーズの高感度な検出を行うことができる。
【0071】
本装置は磁気ナノビーズのセンサーとして高感度な超伝導SQUIDセンサーを備え、微量の磁気ナノビーズを確実に検出できる。従って、指標物質の超高感度な検出の目的に極めて好適に適用可能である。
【0072】
本実施例における管理試料産物の交差汚染検査の方法として以下の方法を採用した。管理試料産物の交差汚染検査工程112において、まず陰性管理試料産物26について保持モードで混入した可能性のある指標物質を保持したまま培地を排出した。次に前述の洗浄操作を繰り返した。少量のPBSを用いて非保持モードで試料を回収し、上記交差汚染検査手段30を用いて、指標物質の量を検出した。
【0073】
なお上記説明では陰性管理試料16を1つ用いる場合について説明したが、複数の陰性管理試料16を用いることも可能である。前者の場合は、すべての工程の汚染リスクを1つの陰性管理試料16を用いて検出するため、汚染リスクが全工程のうちどの部分工程に存在したのかを切り分けて評価することはできない。後者の場合、各陰性管理試料16に対する各部分工程において、指標物質供給機構80の供給モード/非供給モードを任意に設定することにより、特定の部分工程における汚染のリスクを特定の陰性管理試料16に対応づけることが可能となる。例えば、1回目の培地交換において1番目の陰性管理試料16に対してのみ供給モードを設定し、他の陰性管理試料16に対しては非供給モードを設定し、1回目の継代においては2番目の陰性管理試料16に対してのみ供給モードを設定し、他の陰性管理試料16に対しては非供給モードを設定したとする。結果的に得られる1番目、2番目の陰性管理試料産物26について管理試料産物の交差汚染検査を行った結果、1番目ではなく2番目の陰性管理試料産物26についてのみ指標物質による汚染が検出された場合、1回目の培地交換の際は汚染リスクはなく、1回目の継代の際にのみ汚染リスクが存在した、と判断される。即ち、複数の陰性管理試料16を用いることにより、部分工程毎にリスクを切り分けて評価できるという特有の効果がある。
【0074】
本実施例3によると、培養装置やクリーンルーム内の大気など、装置やシステムの設置環境に含まれる微生物や病原体などの外部環境に由来する成分による汚染のリスクについても高感度に評価可能である、という特有の効果がある。
【産業上の利用可能性】
【0075】
本発明を適用することにより、バイオクリーンルームにおける交差汚染のリスクを高感度かつ高精度に評価することが可能であり、リスク評価の結果に基づいて最適な対応策を講じることができるため、バイオクリーンルームや細胞処理施設の清浄度を高度に維持管理することができる。従って、本発明によるバイオクリーンルームや細胞処理施設は高純度かつ安全な細胞を供給できる。
【符号の説明】
【0076】
10………バイオクリーンルーム、12………目的試料、14………陽性管理試料、16………陰性管理試料、20………処理手段、22………目的試料産物、24………陽性管理試料産物、26………陰性管理試料産物、30………交差汚染検査手段、32………目的試料製品、40………倉庫、70………指標物質保持機構、80………指標物質供給機構、214………指標エアロゾル。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
細胞を含有する目的試料と、混入の指標となる指標物質を含有する陽性管理試料と、前記指標物質を含有しない陰性管理試料と、を並行して処理を行い、又は混入の指標となる指標物質を含有する目的試料と、前記陰性管理試料を並行して処理を行い、
処理後の前記陰性管理試料における前記指標物質の混入の有無を検査し、
検査結果に基づいて試料相互間の交差汚染リスクを評価することを特徴とするバイオクリーンルームの清浄度管理方法。
【請求項2】
前記目的試料の細胞がヒト細胞であり、前記陽性管理試料がヒト以外の動物細胞であることを特徴とする請求項1記載のバイオクリーンルームの清浄度管理方法。
【請求項3】
前記指標物質がヒト以外の動物のDNAであり、前記ヒト以外の動物のDNAに特異的な配列に対するPCRにより前記指標物質を検出することを特徴とする請求項1記載のバイオクリーンルームの清浄度管理方法。
【請求項4】
細胞を含有する目的試料と、混入の指標となる指標物質を含有する陽性管理試料と、前記指標物質を含有しない陰性管理試料と、を並行して処理を行う、又は混入の指標となる指標物質を含有する目的試料と、前記陰性管理試料を並行して処理を行う処理手段と、
処理後の前記陰性管理試料における前記指標物質の混入の有無を検査する検査手段と、
検査結果に基づいて試料相互間の交差汚染リスクを評価する制御手段と、
を備えたことを特徴とするバイオクリーンルーム。
【請求項5】
前記指標物質が磁気微粒子であり、
前記処理手段は、指標物質保持機構を備え、前記目的試料と、前記陽性管理試料と、前記陰性管理試料を並行して処理を行い、
前記指標物質保持機構は、前記陰性管理試料を処理する際に、前記指標物質を保持することを特徴とする請求項4に記載のバイオクリーンルーム。
【請求項6】
前記磁気微粒子が蛍光標識を有し、前記検査手段が蛍光励起微粒子解析装置であることを特徴とする請求項5に記載のバイオクリーンルーム。
【請求項7】
混入の指標となる指標物質を室内の雰囲気中に供給する指標物質供給機構と、
細胞を含有する目的試料と、前記指標物質を含有しない陰性管理試料と、を並行して処理を行う処理手段と、
処理後の前記陰性管理試料における前記指標物質の混入の有無を検査する検査手段と、
検査結果に基づいて試料相互間の交差汚染リスクを評価する制御手段と、
を備えたことを特徴とするバイオクリーンルーム。
【請求項8】
前記検査手段が超伝導SQUIDセンサーであることを特徴とする請求項7に記載のバイオクリーンルーム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2010−200711(P2010−200711A)
【公開日】平成22年9月16日(2010.9.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−51931(P2009−51931)
【出願日】平成21年3月5日(2009.3.5)
【出願人】(000005452)株式会社日立プラントテクノロジー (1,767)
【Fターム(参考)】