説明

バイオコークス製造装置及びその制御方法、並びに製造方法

【課題】バイオコークスを効率的に大量生産することを可能としたバイオコークス製造装置及びその制御方法、並びに製造方法を提供する。
【解決手段】横置き筒状の反応容器10を備え、一端側にバイオマス粉砕物の供給部11が、他端側に排出部12が設けられ、供給部側には、反応容器内を長手方向に往復移動可能で且つ容器内のバイオマス粉砕物を加圧する押出ピストン6が設けられている。バイオマス粉砕物中のヘミセルロース、リグニンがの熱分解又は熱硬化反応を誘起する圧力範囲及び温度範囲が設定されており、反応容器10に、バイオマス粉砕物を前記温度範囲に加熱する加熱反応領域13と、冷却領域14とが形成され、押出しピストン6により、バイオマス粉砕物が各領域にて所定時間滞留されるように移送するとともに、容器内のバイオマス粉砕物が前記圧力範囲となるように加圧するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオマスを原料としたバイオコークスの製造技術に関し、特に石炭コークスの代替燃料として効果的に利用可能であるバイオコークスを工業的に大量生産することを可能としたバイオコークス製造装置及びその制御方法、並びに製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、地球温暖化の観点からCO排出の削減が推進されている。特に、ボイラ発電等の燃焼設備においては、燃料として石炭や重油等の化石燃料が用いられることが多いが、この化石燃料は、CO排出の問題から地球温暖化の原因となり、地球環境保全の見地からその使用が規制されつつある。また化石燃料の枯渇化の観点からもこれに代替するエネルギー資源の開発、実用化が求められている。
そこで、化石燃料の代替として、バイオマスを用いた燃料の利用促進が図られている。バイオマスとは、光合成に起因する有機物であって、木質類、草木類、農作物類、厨芥類等のバイオマスがある。このバイオマスを燃料化処理することにより、バイオマスをエネルギー源又は工業原料として有効に利用することができる。
【0003】
バイオマスを燃料化する方法としては、バイオマスを乾燥させて燃料化する方法、加圧して燃料ペレット化する方法、炭化、乾留させて燃料化する方法等が知られている。しかし、バイオマスを乾燥させるのみでは、空隙率が大きくみかけ比重が低くなるため、輸送や貯留が困難であり、長距離輸送や貯留して使用する燃料としては有効とはいえない。
一方、バイオマスを燃料ペレット化する方法は、特許文献1(特公昭61−27435号公報)に開示されている。この方法は、細断された有機繊維材料の含水量を16〜28%に調節し、これをダイス内で圧縮して乾燥し燃料ペレットを製造するようにしている。
また、バイオマスを乾留して燃料化する方法は、特許文献2(特開2003−206490号公報)等に開示されている。この方法は、酸素欠乏雰囲気中において、バイオマスを200〜500℃、好適には250〜400℃で加熱して、バイオマス半炭化圧密燃料前駆体を製造する方法となっている。
【0004】
【特許文献1】特公昭61−27435号公報
【特許文献2】特開2003−206490号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載される方法では、圧縮成形を行うことによりバイオマスを燃料化しているが、製造されたペレットには空隙が存在するため、ペレット内への空気(酸素)の拡散が生じ、燃焼時間が短く、粉体バイオマス間の結合が無いため、十分な硬度を有していない物である。
また、特許文献2等に記載されるように乾留によりバイオマスを燃料化する方法では、加工処理を施さないバイオマスに比べると燃料として価値が高いものとなっているが、やはり石炭コークスに比べてみかけ比重が低く、発熱量が低い。さらに、石炭コークスに比べて硬度が低いため、石炭コークスの代替として利用するには不十分である。
従って、本発明は上記従来技術の問題点に鑑み、バイオコークスを効率的に大量生産することを可能としたバイオコークス製造装置及びその制御方法、並びに製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
近年、石炭コークスの代替として、バイオコークスが研究されている。
バイオコークスは、バイオマス原料を加圧、加熱した状態で一定時間保持した後、冷却することにより製造される。加圧、加熱条件は、バイオマス粉砕物中のヘミセルロース、リグニンが熱分解又は熱硬化反応を誘起する圧力範囲及び温度範囲に設定する。これにより以下の反応機構が成立し、高硬度で高発熱量を有するバイオコークスが製造できる。
その反応機構は、上記した条件で反応を行うことにより、バイオマス粉砕物の繊維成分であるヘミセルロースが熱分解し接着効果を発現させ、バイオマス粉砕物から発生する過熱水蒸気によりリグニンがその骨格を維持したまま低温で反応し、圧密効果と相乗的に作用することによって、高硬度で高発熱量のバイオコークスが製造できるものである。熱硬化反応は、リグニン等に含まれるフェノール性の高分子間で反応活性点が誘発することにより進行する。
【0007】
図5に、バイオコークスの物性値を他の燃料と比較した表を示す。尚、この表は実験的に得られた数値を記載しているのみであり、本発明はこの数値に限定されるものではない。
この表に示されるように、バイオコークスは、みかけ比重1.2〜1.38、最高圧縮強度60〜200MPa、発熱量18〜23MJ/kgの物性値を示す硬度、燃焼性ともに優れた性能を有しており、未加工の木質バイオマスが、みかけ比重約0.4〜0.6、発熱量約17MJ/kg、最高圧縮強度約30MPaであるのと比べると、発熱量及び硬度の点において格段に優れていることが判る。また、石炭コークスの物性値である、みかけ比重約1.85、最高圧縮強度約15MPa、発熱量約29MJ/kgに比しても、バイオコークスは燃焼性、硬度とも遜色ない性能を有する。
従って、バイオコークスは石炭コークスの代替として有効な燃料であるとともに、マテリアル素材としての利用価値も高い。
【0008】
しかし、このバイオコークスは未だ実験段階にとどまっており、反応容器にバイオマス粉砕物を人手で充填して一つの反応容器で少量ずつバッチ的に製造しているのが実状であった。
そこで本発明は、上記したバイオコークスを効率的に製造する装置を提案する。
【0009】
本発明は、所定の含水率に水分調整されたバイオマス粉砕物を加熱しながら加圧成形してバイオコークスを製造するバイオコークス製造装置であって、
横置き筒状の反応容器を備え、該反応容器の一端側にバイオマス粉砕物の供給部が、他端側にバイオコークスの排出部が設けられるとともに、前記供給部側には、前記反応容器内を長手方向に往復移動可能で且つ容器内のバイオマス粉砕物を前記排出部に向けて加圧する押出し手段が設けられており、
前記バイオマス粉砕物中のヘミセルロースが熱分解されるとともにリグニンが熱硬化反応を誘起する圧力範囲及び温度範囲が設定され、
前記反応容器には、前記供給部から前記排出部に向けて順に、バイオマス粉砕物を前記温度範囲に加熱する加熱反応領域と、該加熱されたバイオマス粉砕物を冷却する冷却領域とが形成され、前記押出し手段により、バイオマス粉砕物が各領域にて所定時間滞留されるように移送するとともに、容器内のバイオマス粉砕物が前記圧力範囲となるように加圧することを特徴とする。
【0010】
本発明によれば、石炭コークスの代替として利用可能なバイオコークスを効率的に製造可能である。即ち、反応容器内で押出し手段によりバイオマス粉砕物を押出しながら連続的に処理を行うことにより、バイオコークスを工業的に大量生産することができるようになる。
また、本実施例では長尺状のバイオコークスが製造できるため、バイオコークス製品の大きさを調整できる。さらに、各処理領域における滞留時間を自在に調整可能であるため、異なる種類のバイオマス粉砕物にも好適に適用できる。
【0011】
また、前記冷却領域の下流側に圧力調整領域を形成し、該圧力調整領域は、前記反応容器内のバイオマス粉砕物に対して外周方向から圧力を加える圧力調整装置を備え、
前記反応容器内にて、供給側から前記押出し手段によりバイオマス粉砕物を加圧し、この加圧力を前記圧力調整装置にて調整することにより前記バイオマス粉砕物を前記圧力範囲に維持するようにしたことを特徴とする。
これにより、容器内のバイオマス粉砕物を所定の圧力範囲に確実に維持することができる。
【0012】
さらに、前記押出し手段は、前記加熱反応領域と前記冷却領域にてバイオマス粉砕物を一旦保持するように構成されることを特徴とする。
本発明のごとく、バイオマス粉砕物を各処理領域にて一旦停止させ、一定時間保持させる構成とすることにより、反応容器の長さを短くすることができ、装置の小型化、省スペース化が可能となる。
【0013】
さらにまた、上記したバイオコークス製造装置の制御方法であって、
前記バイオマス粉砕物を前記供給部に供給する供給手段と、該供給手段を駆動制御する供給駆動手段と、前記押出し手段を駆動制御する押出し駆動手段と、を備え、
前記供給駆動手段はバイオマス粉砕物の供給時のみ運転するようにし、
前記押出し駆動手段は、各処理領域へバイオマス粉砕物を移送する際に運転し、該当する処理領域に到達したら該押出し駆動手段を停止してバイオマス粉砕物を保持するようにしたことを特徴とする。
これにより、バイオマス粉砕物の供給と、加圧及び移送を効率的に行うことができる。
【0014】
また、所定の含水率に水分調整されたバイオマス粉砕物を、反応容器内にて加熱しながら加圧成形してバイオコークスを製造するバイオコークス製造方法であって、
前記バイオマス粉砕物中のヘミセルロースが熱分解されるとともにリグニンが熱硬化反応を誘起する圧力範囲及び温度範囲が予め設定されており、
横置き筒状の反応容器を備え、該反応容器の一端側から供給されたバイオマス粉砕物を押出し手段により移送し、
前記反応容器内にて、前記押出し手段により前記圧力範囲に加圧されたバイオマス粉砕物を前記温度範囲に加熱する加熱工程と、該加熱されたバイオマス粉砕物を冷却する冷却工程とを行うようにし、夫々の工程にて所定の滞留時間が確保されるように前記押出し手段によりバイオマス粉砕物の移送を制御することを特徴とする。
【0015】
さらに、前記反応容器の前記冷却工程より後段側に、容器外周側からバイオマス粉砕物に向けて圧力を加える圧力調整工程を備え、
前記反応容器内にて、供給側から前記押出し手段によりバイオマス粉砕物を加圧するとともに、この加圧力を前記圧力調整工程にて調整することにより前記バイオマス粉砕物を前記圧力範囲に維持するようにしたことを特徴とする。
さらにまた、前記バイオマス粉砕物を前記加熱反応工程と前記冷却工程の夫々において一定時間保持した後、次工程に移送するようにしたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0016】
以上記載のごとく本発明によれば、反応容器内で押出し手段によりバイオマス粉砕物を反応容器内にて押出しながら連続的に処理を行うことにより、石炭コークスの代替として利用可能な高硬度で高発熱量を有するバイオコークスを、効率的に大量生産することが可能となる。
また、本実施例では長尺状のバイオコークスが製造でき、バイオコークス製品の大きさを調整できる。さらに、各処理領域(工程)における滞留時間を自在に調整可能であるため、異なる種類のバイオマス粉砕物にも好適に適用できる。
さらに、バイオマス粉砕物を各処理領域(工程)にて一旦停止させ、一定時間保持させることにより、反応容器の長さを短くすることができ、装置の小型化、省スペース化が可能となる。
さらにまた、押出し駆動手段と供給駆動手段を時間差を持って運転することにより、バイオマス粉砕物の供給と、加圧及び移送とを効率的に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、図面を参照して本発明の好適な実施例を例示的に詳しく説明する。但しこの実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は特に特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例に過ぎない。
図1は本実施例のバイオコークス製造装置の全体構成図、図2は本実施例の加熱反応領域と冷却領域の一例を示す概略図、図3は本実施例の圧力調整領域の横断面を示す図、図4は各モータの動作タイミングを示す図である。
本実施例において、バイオコークスの原料となるバイオマスは、光合成に起因する有機物であって、木質類、草木類、農作物類、厨芥類等のバイオマスであり、例えば、廃木材、間伐材、剪定枝、植物、農業廃棄物、コーヒー粕や茶粕等の厨芥廃棄物等が挙げられる。
【実施例】
【0018】
本実施例では、バイオマスを予め所定の含水率になるように水分調整するとともに、所定粒径以下まで粉砕する前処理を行ったバイオマス粉砕物を原料としている。
本実施例のバイオコークス装置は、このバイオマス粉砕物を所定の圧力、温度条件にて加圧、加熱して一定時間保持した後、冷却することによりバイオコークスを製造するものである。上記した圧力、温度条件は、バイオマス粉砕物中のヘミセルロース、リグニンが熱分解又は熱硬化反応を誘起する圧力範囲及び温度範囲とする。即ち、前記バイオマス粉砕物中のヘミセルロースが熱分解されるとともにリグニンが熱硬化反応を誘起する圧力範囲及び温度範囲である。
【0019】
まず、図1を参照して、本実施例のバイオコークス製造装置の全体構成を説明する。
バイオコークス製造装置の主要構成は、所定量のバイオマス粉砕物を供給するバイオマス粉砕物供給装置と、該バイオマス粉砕物が供給され上記した反応を行ってバイオコークスを製造する反応容器10とから構成される。
尚、図示されないが本実施例では、バイオマス粉砕物供給装置より上流側に、バイオマス原料を所定の含水率に水分調整するとともに所定粒径以下まで粉砕する前処理装置と、製造された大径のバイオコークスを所望の大きさまで破砕する破砕装置と、を備えることが好ましい。
【0020】
前記バイオマス粉砕物供給装置は、バイオマス粉砕物が投入される粉砕物ホッパ1と、該粉砕物ホッパ1から所定量のバイオマス粉砕物を供給するスクリューフィーダ2と、該スクリューフィーダ3の供給量を制御する供給モータM1と、スクリューフィーダ2から供給されたバイオマス粉砕物を反応容器10内に押し込むスクリューフィーダ4と、該スクリューフィーダ4の押し込み量を制御する押し込みモータM2と、を備える。
前記スクリューフィーダ2、4は、円筒ケーシング内で螺旋翼を回転させることで材料を移送する周知のスクリューフィーダであり、その回転軸に接続された供給モータM1、押込モータM2により螺旋翼の回転数を制御してバイオマス粉砕物の移送量を調整するようになっている。
【0021】
前記反応容器10は、横置き円筒状となっており、その一端側にバイオマス粉砕物の供給部11が設けられ、該供給部11に上記したバイオマス粉砕物供給装置に接続されている。他端側には、反応容器10内で生成したバイオコークスを排出する排出部12が設けられている。
また、供給部11側には、反応容器10の中空部を長手方向に往復移動可能で、容器内のバイオマス粉砕物に対して排出部12側に向けて押圧し、該バイオマス粉砕物の移送と加圧を行う押出ピストン6が設けられる。押出ピストン6には、油圧シリンダ7と押出モータM3とからなるピストン駆動装置が連結されている。該押出モータM3は、容器内のバイオマス粉砕物の移送速度に基づいてトルク制御される。
さらに、押出モータM3の背面には、押出ピストン6がバイオマス粉砕物から受ける反力を検出するロードセル9が設けられる。
【0022】
前記反応容器10は、バイオマス粉砕物の移送方向に対して上流側から順に、加熱反応領域13と、冷却領域14と、圧力調整領域15とが設けられている。
加熱反応領域13には、容器内のバイオマス粉砕物を上記した温度範囲に加熱する加熱手段が設けられる。該加熱手段としては、熱媒による加熱、蒸気による加熱、高圧加熱水による加熱、誘導加熱機による加熱等が挙げられる。図1に示した加熱手段は、誘導加熱機21により加熱する構成である。これは、加熱反応領域13の温度を温度センサ23により検出し、該温度に基づいて誘導加熱機21へ供給する電流量を制御し、加熱温度を調整する構成となっている。
冷却領域14には、加熱されたバイオマス粉砕物を冷却する冷却手段が設けられる。該冷却手段としては、冷媒による冷却、空冷、水冷等が挙げられ、容器内の処理物を80℃以下、好適には40℃以下まで冷却する能力を有することが好ましい。図1に示した冷却手段は、空冷手段25である。
【0023】
一例として、図2に加熱反応領域13と冷却領域14にて熱媒及び冷媒を用いて加熱冷却を行う場合を示す。
加熱反応領域13の外周をジャケットで囲繞し、該ジャケット内部に熱媒通路131を設けている。熱媒通路131の出口と入口は、熱媒加熱ライン135に接続される。該熱媒加熱ライン135上には熱媒を所定温度まで加熱する加熱手段が設けられている。この加熱手段は特に限定されないが、例えば図に示されるように、熱媒タンク136と、該熱媒タンク136に設けられた誘導加熱機137などがある。この場合、熱媒タンク136内の温度を温度センサにて検出して、誘導加熱機137の電流を制御して熱媒温度を調整する。
同様に、冷却領域14の外周をジャケットで囲繞し、該ジャケット内部に冷媒通路141を設ける。該冷媒通路141は冷媒冷却ライン145に接続される。冷媒冷却ライン145には、熱交換器146等の冷却手段が設けられている。
【0024】
加圧調整領域15は、反応容器10の外周側から容器内処理物に対して圧力をかける加圧調整装置27を備えた加圧機構を有する。この加圧機構としては、図3に示すように反応容器10を半円筒形状の上側容器16aと下側容器16bとから構成し、これらの容器が互いに摺動可能に嵌合されて径を自在に調整できるようにする。少なくとも何れか一方の容器を、ヒンジ17を介して可動可能に支持し、可動する側の容器に油圧駆動装置等の加圧調整装置27を連結する。そして、該加圧調整装置27により可動側容器を対向する容器側に向けて可動させ、容器内のバイオマス粉砕物を加圧するようになっている。勿論、両方の容器16a、16bが可動するように構成してもよい。
【0025】
この加圧調整領域15により、反応容器10内のバイオマス粉砕物の圧力が調整される。即ち、反応容器10内の圧力は、供給側にて押出ピストン6から加えられる圧力と、排出側にてこれを受ける圧力調整装置27により決定する。従って、押出ピストン6がバイオマス粉砕物から受ける反力を前記ロードセル9により検出し、該検出した圧力に基づいて圧力調整装置27を制御し、容器内圧力を調整する。このとき、ロードセル9にて検出される圧力とバイオマス粉砕物にかかる圧力の関係から、バイオマス粉砕物が上記した圧力範囲となるようなロードセル側の圧力を予め設定しておき、この圧力となるように圧力調整装置26を制御して排出側の圧力を調整することが好ましい。
排出部12は、反応容器10内にて生成したバイオコークスが排出される。該排出部12の後段には、排出されるバイオコークスを切断する切断手段29を設けることが好ましい。
【0026】
図4に、バイオマス粉砕物供給装置における各モータの動作タイミングを示す。図4(a)は反応容器における操作を示すタイムチャートで、(b)は供給モータM1、押込モータM2の動作を示すタイムチャートで、(c)は押出モータM3の動作を示すタイムチャートである。
同図に示されるように、バイオマス粉砕物の供給時には、供給モータM1を運転してスクリューフィーダ2によりバイオマス粉砕物を移送するとともに、押込モータM2を運転してスクリューフィーダ4により反応容器10内にバイオマス粉砕物を供給する。このとき、押出モータM3は停止し、押出ピストン6を停止しておく。
【0027】
反応容器10内に所定量のバイオマス粉砕物が供給されたら、供給モータM1と押込モータM2を停止し、押出モータM3を運転する。そして押出モータM3に連結した押出ピストン6によりバイオマス粉砕物を加熱反応領域13まで移送させた後、押出モータM3を停止する。このとき、供給モータM1、押込モータM2は停止しておく。加熱反応領域13にてバイオマス粉砕物を所定圧力範囲に維持しながら、加熱手段により所定温度範囲に加熱して一定時間保持したら、押出モータM3を運転して元の位置(供給部11より上流側)まで戻す。
さらに、供給モータM1、押込モータM2を運転してバイオマス粉砕物を反応容器10内に供給した後、押出モータM3を運転してバイオマス粉砕物を加熱反応領域13まで移送し圧縮、保持の工程を繰り返し行う。このとき、前回供給されたバイオマス粉砕物は、冷却領域14に移動する。
【0028】
上記した構成を有するバイオコークス製造装置の作用につき、操作方法を含めて説明する。尚、ここで記載する温度、圧力、含水率、大きさ等の数値範囲は、本装置における好適な一例であるが、これに限定されるものではない。
まず、原料となるバイオマス粉砕物の前処理として、バイオマスの含水率を5〜10%に乾燥させる水分調整を行い、該乾燥したバイオマスを粒子径3mm以下、好ましくは0.1mm以下に粉砕する。また、バイオマスの種類によっては乾燥・粉砕後に調湿する物もある。これにより、バイオマスを反応容器10に充填する際、嵩密度が向上し均質な充填が可能となり、加熱成形においてバイオマス間の接触が高まり、成形後の硬度も向上する。
粉砕したバイオマスを粉砕物ホッパ1に投入する。粉砕物ホッパ1に貯留されたバイオマス粉砕物を、スクリューフィーダ2、4により反応容器10内に適宜供給する。
【0029】
反応容器10内に供給されたバイオマス粉砕物は、押出ピストン6により加熱反応領域13に押出し移送される。該加熱反応領域13におけるバイオマス粉砕物の圧力は、圧力調整装置27により調整され、8〜25MPaに維持される。該加熱反応領域13では、加圧しながら加熱手段を作動してバイオマス粉砕物が115〜230℃になるように加熱し、一定時間保持する。保持時間は、反応容器の径によって設定されるが、例えば容器径が50mmの場合、保持時間は10〜20分間で、150mmの場合は30〜60分間とする。
上記した条件で反応を行うことにより、バイオマス粉砕物の成分であるヘミセルロースが熱分解し接着効果を発現させ、反応シリンダ内に発生する過熱水蒸気によりリグニンがその骨格を維持したまま低温で反応し、圧密効果と相乗的に作用することによって、高硬度で高発熱量のバイオコークスが製造できる。熱硬化反応は、リグニン等に含まれるフェノール性の高分子間で反応活性点が誘発することにより進行する。
【0030】
その後、容器内の処理物を加熱反応領域13から冷却領域14に移動させ、該冷却領域14にて冷却手段により80℃以下、好適には40℃以下になるまで冷却する。尚、この温度より高い温度でバイオコークスを取り出すと、ヘミセルロースによる接着効果が低下するため、冷却した後に排出するようにする。
冷却後、生成したバイオコークスは加圧調整領域15を経て排出部12より排出される。該排出部12から排出されたバイオコークスは、カッター(切断手段)29により所定長さに切断されてバイオコークス製品として搬出される。
【0031】
尚、本実施例では、押出ピストン6により常時移送しながら各処理工程を行う方法と、それぞれの反応工程にて一旦停止して処理を行った後、再度移送してこれを繰り返す方法の2通りある。
移送しながら処理を行う場合は、各工程において上記した保持時間が確保されるような容器長さとする。
一方、各工程毎に一旦停止して処理を行う場合は、容器内のバイオマス粉砕物の位置を検出し、該検出した位置において停止させて一定時間保持した後、さらに移動させるようにするとよい。このとき、位置の検出は、押出ピストンのストローク長から処理物の位置を検出する方法、位置センサを設けて処理物の位置を検出する方法などがある。
【0032】
本実施例のバイオコークス製造装置及び方法を用いることにより、石炭コークスの代替として利用可能な高硬度で高発熱量のバイオコークスを効率的に製造することが可能となる。また、本実施例にて製造されたバイオコークスは、鋳物製造或いは製鉄において、キュポラ、高炉における熱源・還元剤等として利用可能であり、また発電用ボイラー燃料、消石灰等の焼成燃料等の燃料需要にも利用可能であり、更に高い圧縮強度等の特性を活かして、マテリアル素材としての使用も可能である。
【0033】
即ち、本実施例によれば、反応容器10内で、押出ピストン6によりバイオマス粉砕物を押出しながら連続的に処理を行うことにより、バイオコークスを工業的に大量生産することができるようになる。
また、本実施例では長尺状のバイオコークスが製造でき、バイオコークス製品の大きさを調整できる。また、加熱反応領域13と冷却領域14を異なる位置で行うようにしたため、単独の加熱手段、或いは冷却手段を具備すればよく、装置構成が簡単化する。さらに、各処理領域における滞留時間を自在に調整可能であるため、異なる種類のバイオマス粉砕物にも好適に適用できる。
また、バイオマス粉砕物を各処理領域毎に一旦停止させ、一定時間保持させる構成とした場合、反応容器10の長さを短くすることができ、装置の小型化、省スペース化が可能となる。
さらに、バイオマス粉砕物を常時移送しながら処理を行う構成とした場合、バイオコークスの製造量を増大することができる。
【産業上の利用可能性】
【0034】
本実施例に係るバイオコークス製造装置を用いることにより、石炭コークスの代替として利用可能な高硬度で高発熱量のバイオコークスを効率的に製造することが可能となる。また、本実施例にて製造されたバイオコークスは、鋳物製造或いは製鉄において、キュポラ、高炉における熱源・還元剤等として利用可能であり、また発電用ボイラー燃料、消石灰等の焼成燃料等の燃料需要にも利用可能であり、更に高い圧縮強度等の特性を活かして、マテリアル素材としての使用も可能である。
【図面の簡単な説明】
【0035】
【図1】本実施例のバイオコークス製造装置の全体構成図である。
【図2】本実施例の加熱反応領域と冷却領域の一例を示す概略図である。
【図3】本実施例の圧力調整領域の横断面を示す図である。
【図4】各モータの動作タイミングを示す図である。
【図5】バイオコークスの物性値を比較する表である。
【符号の説明】
【0036】
1 粉砕物ホッパ
2、4 スクリューフィーダ
6 押出ピストン
7 油圧ピストン
9 ロードセル
10 反応容器
13 加熱反応領域
14 冷却領域
15 圧力調整領域
27 油圧シリンダ
29 切断手段
M1 供給モータ
M2 押込モータ
M3 押出モータ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の含水率に水分調整されたバイオマス粉砕物を加熱しながら加圧成形してバイオコークスを製造するバイオコークス製造装置であって、
横置き筒状の反応容器を備え、該反応容器の一端側にバイオマス粉砕物の供給部が、他端側にバイオコークスの排出部が設けられるとともに、前記供給部側には、前記反応容器内を長手方向に往復移動可能で且つ容器内のバイオマス粉砕物を前記排出部に向けて加圧する押出し手段が設けられており、
前記バイオマス粉砕物中のヘミセルロースが熱分解されるとともにリグニンが熱硬化反応を誘起する圧力範囲及び温度範囲が設定され、
前記反応容器には、前記供給部から前記排出部に向けて順に、バイオマス粉砕物を前記温度範囲に加熱する加熱反応領域と、該加熱されたバイオマス粉砕物を冷却する冷却領域とが形成され、前記押出し手段により、バイオマス粉砕物が各領域にて所定時間滞留されるように移送するとともに、容器内のバイオマス粉砕物が前記圧力範囲となるように加圧することを特徴とするバイオコークス製造装置。
【請求項2】
前記冷却領域の下流側に圧力調整領域を形成し、該圧力調整領域は、前記反応容器内のバイオマス粉砕物に対して外周方向から圧力を加える圧力調整装置を備え、
前記反応容器内にて、供給側から前記押出し手段によりバイオマス粉砕物を加圧し、この加圧力を前記圧力調整装置にて調整することにより前記バイオマス粉砕物を前記圧力範囲に維持するようにしたことを特徴とする請求項1記載のバイオコークス製造装置。
【請求項3】
前記押出し手段は、前記加熱反応領域と前記冷却領域にてバイオマス粉砕物を一旦保持するように構成されることを特徴とする請求項1若しくは2記載のバイオコークス製造装置。
【請求項4】
請求項1に記載されるバイオコークス製造装置の制御方法であって、
前記バイオマス粉砕物を前記供給部に供給する供給手段と、該供給手段を駆動制御する供給駆動手段と、前記押出し手段を駆動制御する押出し駆動手段と、を備え、
前記供給駆動手段はバイオマス粉砕物の供給時のみ運転するようにし、
前記押出し駆動手段は、各処理領域へバイオマス粉砕物を移送する際に運転し、該当する処理領域に到達したら該押出し駆動手段を停止してバイオマス粉砕物を加圧状態で保持するようにしたことを特徴とするバイオコークス製造装置の制御方法。
【請求項5】
所定の含水率に水分調整されたバイオマス粉砕物を、反応容器内にて加熱しながら加圧成形してバイオコークスを製造するバイオコークス製造方法であって、
前記バイオマス粉砕物中のヘミセルロースが熱分解されるとともにリグニンが熱硬化反応を誘起する圧力範囲及び温度範囲が予め設定されており、
横置き筒状の反応容器を備え、該反応容器の一端側から供給されたバイオマス粉砕物を押出し手段により移送し、
前記反応容器内にて、前記押出し手段により前記圧力範囲に加圧されたバイオマス粉砕物を前記温度範囲に加熱する加熱工程と、該加熱されたバイオマス粉砕物を冷却する冷却工程とを行うようにし、夫々の工程にて所定の滞留時間が確保されるように前記押出し手段によりバイオマス粉砕物の移送を制御することを特徴とするバイオコークス製造方法。
【請求項6】
前記反応容器の前記冷却工程より後段側に、容器外周側からバイオマス粉砕物に向けて圧力を加える圧力調整工程を備え、
前記反応容器内にて、供給側から前記押出し手段によりバイオマス粉砕物を加圧するとともに、この加圧力を前記圧力調整工程にて調整することにより前記バイオマス粉砕物を前記圧力範囲に維持するようにしたことを特徴とする請求項5記載のバイオコークス製造方法。
【請求項7】
前記バイオマス粉砕物を前記加熱反応工程と前記冷却工程の夫々において一定時間保持した後、次工程に移送するようにしたことを特徴とする請求項5若しくは6記載のバイオコークス製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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