説明

バイオチップ基板の製造方法

【課題】被験液を流す微細な流路を確実に形成でき、その被験液を加圧して流しても破損せず、確実かつ精度良く所望の流路へ送り込むことができ、そのバイオ成分を正確かつ簡便に短期間で分析・反応できる簡易で小型のバイオチップ基板1を、歩留まり良く大量かつ均質に製造できる簡便な方法を提供する。
【解決手段】その製造方法は、被験液流路パターン34を被験液流路形成用樹脂基材30にマスキング剤で付す工程、ガス流路パターン24・44をガス流路形成用樹脂基材20・40にマスキング剤で被験液流路に沿って付す工程、ガス流路形成用樹脂基材20・40を被験液流路形成用樹脂基材30に重ね、カバー用樹脂基材10で覆い、それらの接触面同士を夫々、被験液流路パターン34領域外とガス流路パターン24・44領域外とで接着して被験液流路とガス流路とを形成する工程、外界から被験液流路とガス流路とへ夫々至る経路を設ける工程を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生体由来試料を被験液としてそのバイオ成分を微量分析する装置や、バイオ成分を化学的に微量合成したりするマイクロリアクターに用いられるバイオチップ基板を、製造する方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
血液や尿などの生体由来試料のような被験液を微量だけ用いて、酵素の特異的基質選択性を利用し、試料中の基質と作用する酵素反応量やその基質量を酵素又は基質で発色する試薬による着色度合いで定量したり、酵素含有膜を用い酵素反応量を電極で電気信号に変換して基質量を定量したりする分析や、DNA抽出・そのPCR増幅や、イオン濃度測定や、DNA又はタンパク質又はペプチドの微量合成などを行うのに、バイオチップ基板が用いられる。
【0003】
市販のバイオチップ基板は、各種反応をさせるための溝を樹脂プレート上にレーザー照射により掘り込んだり、ガラスプレート上の金属層や二酸化ケイ素層をエッチングして溝を形成させたりした後、その溝ごと別なプレートで覆って接着剤で貼り合せたものである。
【0004】
例えば、特許文献1に、シリコン基板上の二酸化シリコン膜をレジスト膜で被覆してから、パターン化したフォトマスクで被覆し、フッ酸でエッチングして、バイオセンサ収容領域と液状被検体の流路とになる溝を形成するリソグラフィーの後、再びリソグラフィーによりバイオセンサ用電極・配線を形成し、そこに生体触媒等を固定し、ガラス基板でカバーして、エポキシ系接着剤で固定したバイオセンサが、開示されている。
【0005】
このような市販のバイオセンサは、溝へ被験液を加圧して流す際に、接着されている基板と基板とが圧力に耐えられなくなり剥離してしまい、破損し易い。しかも、そのバイオセンサは、微細で分岐した複雑なパターン形状の溝に、物理的に高い圧力をかけて、被験液を送り込まなければならず、溝の終端まで確実に到達させ難い。
【0006】
【特許文献1】特公平08−20396号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は前記の課題を解決するためになされたもので、微量の生体由来試料のような貴重な被験液を流す微細な流路を確実に形成でき、その被験液を加圧して低温乃至高温で流しても破損せず、確実かつ精度良く所望の流路へ送り込むことができ、そのバイオ成分を正確かつ簡便に短期間で分析したり反応させたりできる簡易で小型のバイオチップ基板を、歩留まり良く大量かつ均質に製造できる簡便な方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の目的を達成するためになされた特許請求の範囲の請求項1に記載のバイオチップ基板の製造方法は、被験液流路のパターンを被験液流路形成用樹脂基材の表面側にマスキング剤で付す工程、
前記被験液流路内の被験液をガスの流入出により脈動させてその流路先方へ送り込ませるガス流路のパターンを、ガス流路形成用樹脂基材の表面側に、前記と同種又は異種のマスキング剤で、前記被験液流路に沿うように付す工程、
前記ガス流路形成用樹脂基材を前記被験液流路形成用樹脂基材の表裏面側の少なくとも何れかに重ね、カバー用樹脂基材で覆い、それらの接触面同士を夫々、前記被験液流路のパターン領域外と前記ガス流路のパターン領域外とで接着して、前記被験液流路と前記ガス流路とを形成する工程、
外界から前記被験液流路と前記ガス流路とへ夫々至る経路を設ける工程
を有することを特徴とする。
【0009】
請求項2に記載のバイオチップ基板の製造方法は、請求項1に記載されたもので、前記経路を設ける工程が、前記カバー用樹脂基材に、前記被験液流路への被験液注入口及び被験液排出口と前記ガス流路へのガス流入出口との各口部を開けておき、前記ガス流路形成用樹脂基材と前記被験液流路形成用樹脂基材とに、前記口部へ夫々重なり合うように、前記被験液流路へ至る被験液注入孔及び被験液排出孔とガス流路へ至るガス流入出孔とである前記経路を、開けておく工程であることを特徴とする。
【0010】
請求項3に記載のバイオチップ基板の製造方法は、請求項1に記載されたもので、前記マスキング剤が、フッ素化合物含有コーティング剤、離型剤、及び/又はハロゲン系溶媒、脂肪族系溶媒、芳香族系溶媒、変性シリコーン系溶媒であることを特徴とする。
【0011】
請求項4に記載のバイオチップ基板の製造方法は、請求項1に記載されたもので、前記マスキング剤を、塗布、噴霧、又は印刷により、付すことを特徴とする。
【0012】
請求項5に記載のバイオチップ基板の製造方法は、請求項1に記載されたもので、前記被験液流路のパターン領域外と前記ガス流路のパターン領域外とを、予めコロナ放電処理、プラズマ処理、又は紫外線処理することを特徴とする。
【0013】
請求項6に記載のバイオチップ基板の製造方法は、請求項1に記載されたもので、接着剤により、又は前記接触面から夫々露出している活性基を介する化学結合により、前記接着していることを特徴とする。
【0014】
請求項7に記載のバイオチップ基板の製造方法は、請求項6に記載されたもので、前記被験液流路形成用樹脂基材、前記ガス流路形成用樹脂基材、及び前記カバー用樹脂基材を、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、オレフィン樹脂、シクロオレフィン樹脂、及びポリスチレン樹脂から選ばれる同種又は異種の樹脂で形成することを特徴とする。
【0015】
請求項8に記載のバイオチップ基板の製造方法は、請求項7に記載されたもので、前記被験液流路形成用樹脂基材、前記ガス流路形成用樹脂基材、及び前記カバー用樹脂基材の何れかを、加硫シリコーン樹脂、縮合シリコーン樹脂、及び付加シリコーン樹脂から選ばれる前記シリコーン樹脂で形成することを特徴とする。
【0016】
請求項9に記載のバイオチップ基板の製造方法は、請求項7に記載されたもので、前記被験液流路形成用樹脂基材、前記ガス流路形成用樹脂基材、及び前記カバー用樹脂基材のうち、何れかの重なり合うもの同士を、ヒドロシリル基含有化合物とビニル基含有化合物とを含有する前記シリコーン樹脂で形成しており、それらを、前記ビニル基含有化合物のビニル基への前記ヒドロシリル基含有化合物のヒドロシリル基の付加反応により形成されたケイ素−炭素の結合を介して、前記接着することを特徴とする。
【0017】
請求項10に記載のバイオチップ基板の製造方法は、請求項7に記載されたもので、前記被験液流路形成用樹脂基材、前記ガス流路形成用樹脂基材、及び前記カバー用樹脂基材のうち、何れかの重なり合うもの同士の一方が、その表面に有する水酸基、またはそれの脱水素基にヒドロシリル含有シリル基、ビニル含有シリル基、アルコキシシリル含有シリル基、及び加水分解性基含有シリル基から選ばれる少なくとも1種類の活性シリル基をシリルエーテル結合された活性基を有しており、他方が、前記活性シリル基と反応するヒドロシリル、ビニルシリル、ヒドロキシシリル、アルキルオキシシリル、アルケニルオキシシリル、アシルオキシシリル、イミノオキシシリル、アルキルアミノシリルから選ばれる少なくとも1種類の反応基を含有する化合物を含み、又はその表面に前記水酸基と反応する水酸基を有しており、前記同士を、前記の反応により形成されたケイ素−炭素結合とケイ素−酸素結合とエーテル結合との何れかの結合を介して、前記接着することを特徴とする。
【0018】
請求項11に記載のバイオチップ基板の製造方法は、請求項1に記載されたもので、前記被験液のバイオ成分の検出試薬と、前記被験液のバイオ成分への反応試薬と、バイオセンサとの少なくとも何れかを、前記被験液流路の途中に配置し、及び/又は、前記検出試薬と、前記反応試薬と、合成試薬との少なくとも何れかを、前記液注入口から注入することを特徴とする。
【0019】
請求項12に記載のバイオチップ基板は、マスキング剤で付された被験液流路のパターンを表面側に有する被験液流路形成用樹脂基材と、前記被験液流路内の被験液をガスの流入出により脈動させてその流路先方へ送り込ませるガス流路のパターンを、前記と同種又は異種のマスキング剤で、前記被験液流路に沿って、表面側に付されているガス流路形成用樹脂基材と、前記被験液流路形成用樹脂基材の表裏面側の少なくとも何れかに重ねた前記ガス流路形成用樹脂基材を覆っているカバー用樹脂基材とが、それらの接触面同士で夫々、前記被験液流路のパターン領域外と前記ガス流路のパターン領域外とにより接着しており、それによって、前記被験液流路と前記ガス流路とが形成されており、外界から前記被験液流路と前記ガス流路とへ夫々至る経路を有していることを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明のバイオチップ基板の製造方法によれば、直線や曲線を組合わせた線状やその末端乃至途中で拡大したり集束又は分岐したりしており被験液が流れる複雑なパターン形状で0.5μm〜5mm幅の微細な流路を、確実に形成することができる。しかも、複数の重ね合わせた基材の間に形成される被験液流路内の被験液をその上下方向からのガスの脈動によってその流路先方へ送り込ませる緻密なパターン形状のガス流路を、同時に形成することができる。この製造方法は、簡便であり、高品質で均質なバイオチップ基板を歩留まり良く安価で大量に製造できるというものである。
【0021】
このようにして製造されたバイオチップ基板は、接着剤による物理的な接着や、分子間の化学的な共有結合のような強固な接着により、それら基材の接合面のパターン領域外で基材同士を確りと接着したものである。そのため、そのような微細な流路に常圧〜5気圧程度の圧力で被験液やガスを送り込んでも、また氷冷下〜80℃程度、好ましくは20℃〜80℃程度の低温乃至高温の温度範囲で加熱冷却を繰り返しながら被験液やガスを送り込んでも、バイオチップ基板は破損せず、その被験液のバイオ成分を正確かつ簡便に短期間で分析したり反応させたりすることができる。
【0022】
このバイオチップ基板は、数mm〜十数cm程度で極めて小型であり簡易な構造である。このようなバイオチップ基板は、ディスポーザブルで用いられる場合、別な被験液や試薬の混入による汚染の恐れが無く、信頼性のある結果を得ることができるものである。このバイオチップ基板は、小型で多機能にすることができるから、大掛かりな分析装置などを用いなくてもポータブルの分析装置を用いて、屋内のみならず屋外でも迅速に分析結果を得るのに使用される。しかも、バイオチップ基板に用いられる分析試薬や反応試薬は極微量で済むうえ、フラスコや試験管での分析や反応に比べて廃液量が格段に少なくなるので、環境保全にも資する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明を適用するバイオチップ基板の構造を示す概要図である。
【図2】本発明を適用するバイオチップ基板の製造方法を示す概要図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明のバイオチップ基板及びその製造方法を実施するための好ましい形態の例を詳細に説明するが、本発明の範囲はこれらの形態に限定されるものではない。
【0025】
本発明を適用する製造方法で得られるバイオチップ基板1の一例は、図1に示すように、カバー用樹脂基材10、上側のガス流路形成用樹脂基材20、被験液流路形成用樹脂基材30、下側のガス流路形成用樹脂基材40が、重ね合わされたものである。カバー用樹脂基材10と上側ガス流路形成用樹脂基材20との間に、ガス流路が形成され、上側ガス流路形成用樹脂基材20と被験液流路形成用樹脂基材30との間に、被験液流路が形成され、被験液流路形成用樹脂基材30と下側ガス流路形成用樹脂基材40との間に、もう一つのガス流路が形成されている。
【0026】
被験液流路形成用樹脂基材30の表面側に、マスキング剤で付された被験液流路パターン34が、付されている。被験液流路パターン34は、被験液送液開始部位31aから延びた先で、二つに分岐し、被験液送液終了部位35に至るものである。そのパターン34の途中に、検出試薬、反応試薬、又は合成試薬の薬液反応部位31bを有している。被験液流路パターン34途中の被験液送液開始部位31aと、薬液反応部位31bと、被験液送液終了部位35とにも、マスキング剤が、付されている。
【0027】
被験液流路形成用樹脂基材30の表裏面側の両方の全面は、コロナ放電処理されて表面が活性化して水酸基のような活性基が露出しているが、表面側のパターン34が付されている部位は、マスキング剤で隠蔽されていることにより、活性基が露出していない。被験液流路形成用樹脂基材30の表面側に露出した活性基と、その被験液流路形成用樹脂基材30の表面側を覆っている上側ガス流路形成用樹脂基材20の裏面側でコロナ放電処理されて表面が活性化されて形成された水酸基である活性基とが、脱水のような化学反応によりエーテル結合して、両基材20・30が接着している。一方、被験液流路パターン34は、マスキング剤のために、接着しないから、被験液が流れ得る流路を形成する。
【0028】
上側ガス流路形成用樹脂基材20の表面側に、マスキング剤で付されたガス流路パターン24a・24bが、付されている。ガス流路パターン24a・24bは、被験液流路内の被験液をガスの流入出により脈動させてその流路先方へ送り込ませるガス流路を形成するためのもので、被験液流路パターン34に沿って、設けられている。
【0029】
上側ガス流路形成用樹脂基材20の表裏面側の両方の全面は、コロナ放電処理されて表面が活性化して水酸基のような活性基が露出しているが、表面側の流出先側が先細状で略V字のパターン24a・24bが付されている部位は、マスキング剤で隠蔽されていることにより、活性基が露出していない。上側ガス流路形成用樹脂基材20の表面側に露出した水酸基である活性基と、その上側ガス流路形成用樹脂基材20の表面側を覆っているカバー用樹脂基材20の裏面側でコロナ放電処理されて表面が活性化されて形成された水酸基である活性基とが、脱水のような化学反応によりエーテル結合して、両基材10・20が接着している。一方、ガス流路パターン24a・24bは、マスキング剤のために、接着しないから、ガスが流れ得る流路を形成する。
【0030】
下側ガス流路形成用樹脂基材40の表面側に、マスキング剤で付されたガス流路パターン44a・44bが、付されている。ガス流路パターン44a・44bは、被験液流路内の被験液をガスの流入出により脈動させてその流路先方へ送り込ませるガス流路を形成するためのもので、被験液流路パターン34に沿って、設けられている。
【0031】
下側ガス流路形成用樹脂基材40の表面側の全面は、コロナ放電処理されて表面が活性化して水酸基のような活性基が露出しているが、表面側のパターン44a・44bが付されている部位は、マスキング剤で隠蔽されていることにより、活性基が露出していない。下側ガス流路形成用樹脂基材40の表面側に露出した活性基と、その下側ガス流路形成用樹脂基材40の表面側を覆っている被験液流路形成用樹脂基材30の裏面側でコロナ放電処理されて表面が活性化されて形成された水酸基である活性基とが、脱水のような化学反応によりエーテル結合して、両基材30・40が接着している。一方、流出先側が先細状で略V字のガス流路パターン44a・44bは、マスキング剤のために、接着しないから、もう一つのガス流路を形成する。
【0032】
被験液流路形成用樹脂基材30の表裏面側の両方に設けられたガス流路は、相互にガス注入出が繰返されることにより、脈動して、被験液流路内の被験液を流路先方へ送り出せるようにするために、互いに重なり合わないようにずれて配置されている。
【0033】
カバー用樹脂基材10に、上側ガス流路形成用樹脂基材20上のガス流路パターン24aへ至るためのガス流入出口14が、開けられている。
【0034】
また、カバー用樹脂基材10に、被験液流路形成用樹脂基材30上の被験液流路パターン34の被験液送液開始部位31a、薬液反応部位31b、及び被験液送液終了部位35へ夫々至るために、被験液注入口11a、薬液注入口11b、及び被験液排出口15が開けられ、さらにそれに重なり合うように、上側ガス流路形成用樹脂基材20に、被験液注入孔21a、薬液注入孔21b、被験液排出孔25が開けられている。
【0035】
また、カバー用樹脂基材10に、下側ガス流路形成用樹脂基材40上のガス流路パターン44a・44bへ夫々至るために、ガス流入出口12a・12bが開けられ、さらにそれに重なり合うように、上側ガス流路形成用樹脂基材20と被験液流路形成用樹脂基材30とに、夫々ガス流入出孔22a・22b・32a・32bが開けられている。
【0036】
なお、ガス流路パターン24a・24b・44a・44bは、ガス流入出によって、被験液流路パターン34で形成される被験液流路内を流れる被験液を、扱き出して脈動させるものであれば、特に限定されない。また被験液流路パターン34は、直線状、曲線状、分岐線状など目的の試験に応じた任意の形状で、1μm〜10mm程度の適切な太さにすることができる。
【0037】
このバイオチップ基板1の製造方法の一例について、図1及び図2を参照して説明する。
【0038】
カバー用樹脂基材10となるフィルム16の裏面側に、放電管17によりコロナ放電処理を施し、打抜き刃19で、被験液注入口11a、薬液注入口11b、ガス流入出口12a・12b・14、被験液排出口15を、打抜いて開ける。
【0039】
上側ガス流路形成用樹脂基材20となるフィルム26の表裏面側の両方に、放電管27a・27bによりコロナ放電処理を施し、インクジェットプリンタ28により表面側にマスキング剤でガス流路パターン24a・24bを印刷して付し、次いで打抜き刃29で被験液注入孔21a、薬液注入孔21b、ガス流入出孔22a・22b、被験液排出孔25を、打抜いて開ける。
【0040】
被験液流路形成用樹脂基材30となるフィルム36の表裏面側の両方に、放電管37a・37bによりコロナ放電処理を施し、表面側にインクジェットプリンタ38によりマスキング剤で被験液流路パターン34を印刷して付し、次いで打抜き刃39でガス流入出孔32a・32bを、打抜いて開ける。
【0041】
また、下側ガス流路形成用樹脂基材40となるフィルム46の表面側に、放電管47によりコロナ放電処理を施し、インクジェットプリンタ48によりマスキング剤でガス流路パターン44a・44bを印刷して付す。
【0042】
最後に、被験液注入口11a・被験液注入孔21a・被験液送液開始部位31aが重なり合い、ガス流入出口12a・ガス流入出孔22a・32a・ガス流路パターン44aが重なり合い、ガス流入出口14・ガス流路パターン24aが重なり合い、薬液注入口11b・被験液注入孔21b・被験液送液開始部位31bが重なり合い、ガス流入出口12b・ガス流入出孔22b・32b・ガス流路パターン44bが重なり合い、被験液排出口15・被験液排出孔25・被験液送液終了部位35が重なり合うように、これらフィルム16・26・36・46を、重ね合わせ、ヒーター51で加熱しながら、加圧ローラー52a・52bで圧着し、カッター53で、所定の大きさに切断すると、バイオチップ基板1が得られる。
【0043】
このバイオチップ基板1は、生体試料の微量分析の例について、バイオチップ基板の構造を示す図1を参照して説明すると、以下のようにして使用される。
【0044】
バイオチップ基板1をポータブル型分析装置に装着する。生体試料である被験液を被験液注入口11aから注入する。この液は、被験液注入孔21aを経て、被験液流路の被験液送液開始部位31aに到達し、被験液流路パターン34に沿って、被験液流路を押し広げ、そこへ送り込まれる。
【0045】
ガス流出入口12aから、圧縮空気であるガスを流入させる。このガスは、ガス流入出孔22a・32aを経て、パターン44aの下側ガス流路に到達し、下側ガス流路を押し広げる結果、被験液流路の下側で、被験液をしごくようにして先方方向へ、送り出す。
【0046】
一方、予めガス流出入口14から圧縮空気のガスをパターン24の上側ガス流路へ流入させておき、パターン44aの下側ガス流路へのガスの流入に応じ、パターン24aの上側ガス流路からガスを流出させる。すると、上側ガス流路が萎む結果、被験液流路の上下側で、しごくように脈動して、被験液を更に先方方向へ、送り出す。必要に応じこの操作を繰返すと、被験液は、一層先方方向の分岐点へ送り出され、更に、等分ずつ分岐枝方向へ送り出される。
【0047】
同様に、ガス流出入口12bから流入させた圧縮空気ガスは、ガス流入出孔22b・32bを経て、パターン44bの下側ガス流路に到達し、下側ガス流路を押し広げる結果、被験液流路の下側で、被験液をしごくようにして先方方向へ、送り出す。
【0048】
薬液注入口11bから注入された薬液は、薬液注入孔21bを経て、薬液反応部位31bへ到達し、被験液と反応する。その際、前記同様にパターン44bの下側流路へのガスの流出入により、被験液は、しごかれて送り出され、終には被験液送液終了部位35へ至り、必要に応じ、被験液排出孔25を経て、被験液排出口15から、排出される。得られた被験液や生成物について比色定量などの所望の分析を行う。
【0049】
なお、図1のように、ガス流路が被験液流路の上下に設けられた例を示したが、ガス流路が被験液流路の上下何れかに設けられていてもよい。
【0050】
マスキング剤は、被験液やそれに用いられる薬剤に不活性なもので、フルオロプロパノール、パーフロロアルキシルシランのようなフッ素化合物含有コーティング剤、界面活性剤のような離型剤、塩化メチレンやクロロホルム、1ブロモプロパン、ハイドロフルオロエーテルのようなハロゲン系溶媒が挙げられる。これらのマスキング剤は、単独で用いられてもよく、複数混合して用いられてもよい。マスキング剤は、被験液や反応試薬等に不活性な染料や顔料で着色されていてもよい。マスキング剤がハロゲン系溶媒を含有していると、それを付した基材箇所が荒れて光散乱されるようになるので、目視し易くなる。
【0051】
マスキング剤は、インクジェットプリンタで印刷される例を示したが、オフセット印刷のような製版印刷で印刷されてもよく、必要なパターンが打抜かれたマスクでパターン領域外を覆って刷毛塗りや噴霧で付されてもよい。
【0052】
基材の表面を活性化するために、コロナ放電処理を施す例を示したが、プラズマ処理、紫外線処理を施してもよい。
【0053】
三次元化シリコーンゴム弾性基材や被接着基材の表面に予め施すコロナ放電処理は、例えば大気圧コロナ表面改質装置であるコロナマスター(信光電気計測株式会社製、商品名)を用いて、電源:AC100V、ギャップ長:1〜4mm、出力電圧:5〜40kV(表面電圧)、電力:5〜40W、発振周波数:0〜40kHzで0.1秒〜60秒、温度0〜60℃、移動速度:0.1〜10m/min、移動回数:1〜20回の条件で行われる。
【0054】
別なコロナ放電処理であるコロナ炎噴射方コロナ放電処理は、例えばコロナ表面改質装置であるコロナフィット(信光電気計測株式会社製、商品名)を用いて、電源:AC100V、ギャップ長:1〜10cm、出力電圧:5〜40kV(表面電圧)、電力:5〜40W、発振周波数:0〜40kHzで、0.1分〜60分、温度0〜60℃の条件で行われる。
【0055】
このようなコロナ放電処理は、一般に30〜90%相対湿度の空気(窒素:酸素=75.0:23.5(重量比))、100%窒素、100%酸素、空気混合アルゴン、空気混合二酸化炭素のような雰囲気下で、行われる。
【0056】
三次元化シリコーンゴム弾性基材や被接着基材の表面に予め施す大気圧プラズマ処理は、例えば、大気圧プラズマ発生装置であるAiplasuma(松下電工株式会社製、商品名)を用いて、プラズマ処理速度10〜100mm/s、電源:200又は220V AC(30A)、圧縮エア:0.5MPa(1NL/min)、10kHz/300W〜5GHz、電力:100W〜400W、照射時間:0.1秒〜60秒の条件で行われる。
【0057】
被接着基材の表面に、紫外線ランプで、紫外線照射処理を行ってもよい。
【0058】
外界から被験液流路とガス流路とへ夫々至る経路を設けるのに、変質し難いことからカバー用樹脂基材とガス流路形成用樹脂基材と被験液流路形成用樹脂基材とを打抜いた例を示したが、レーザーでくり抜いてもよい。その経路は、接触し合う基材間に設けられた間隙であってもよい。
【0059】
被験液流路途中に、被験液のバイオ成分の検出試薬、被験液のバイオ成分への反応試薬、バイオセンサである電極が設けられていてもよい。
【0060】
被験液流路やガス流路の幅や長さは、その用途に応じて適宜目的とする寸法に設計すればよい。本発明のバイオチップ基板は、エッチングや溝を彫刻する従来の溝を形成するバイオチップ基板よりも機械的切削・化学的侵食のような削除をする必要がない分、簡易である。しかも、0.5μm〜5mm幅の非接着の被験液流路の形成が、可能である。バイオチップ基板の厚さは、それを装着する装置やマイクロリアクターの用途や量に応じ、適宜選択されるが、0.5〜10mmであることが好ましい。
【0061】
カバー用樹脂基材とガス流路形成用樹脂基材と被験液流路形成用樹脂基材との材質は、接着可能な樹脂であれば特に限定されないが、加硫シリコーン樹脂や付加シリコーン樹脂やシリコーンゴムのようなシリコーン樹脂、ポリエチレンテレフタレート(PET)のようなポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、オレフィン樹脂、シクロオレフィン樹脂、及びポリスチレン樹脂が好ましく、シリコーンゴムであるとなお一層好ましい。
【0062】
これら基材同士が、夫々の表面での水酸基のような活性基同士の化学反応によるエーテル結合により、接着している例を示したが、ケイ素−炭素結合、ケイ素−酸素結合により化学的に接着していてもよく、シアノアクリレート系接着剤、エポキシ系接着剤のような接着剤で物理的に接着していてもよい。中でも化学的に結合により接着していると、接着強度が極めて高く、基材同士が剥離しないので、特に好ましい。
【0063】
これら基材は、ヒドロシリル基含有化合物とビニル基含有化合物が含有されて、その表面からこれらの化合物分子の一部が露出しているものであってもよい。互いに接着しあう基材同士は、一方の基材の表面に露出しているヒドロシリル基含有化合物分子のヒドロシリル基(SiH基)と、他方の基材の表面に露出しているビニル基含有化合物分子のビニル基(CH=CH−基)とが反応して形成されたケイ素−炭素の共有結合により、接着していてもよい。
【0064】
これら基材のうち、重なり合うもの同士の一方が、その表面に有する水酸基、またはそれの脱水素基にヒドロシリル含有シリル基、ビニル含有シリル基、アルコキシシリル含有シリル基、及び加水分解性基含有シリル基から選ばれる少なくとも1種類の活性シリル基をシリルエーテル結合された活性基を有しており、他方が、前記活性シリル基と反応するヒドロシリル、ビニルシリル、ヒドロキシシリル、アルキルオキシシリル、アルケニルオキシシリル、アシルオキシシリル、イミノオキシシリル、アルキルアミノシリルから選ばれる少なくとも1種類の反応基を含有する化合物を含み、又はその表面に前記水酸基と反応する水酸基を有しており、前記同士を、前記の反応により形成されたケイ素−炭素結合とケイ素−酸素結合とエーテル結合との何れかの結合を介して、接着するものであってもよい。
【0065】
このような別なバイオチップ基板の製造方法における基材同士の接着の工程は、具体的には、以下の通りである。以下、二つの基材を接着する例について詳細に説明するが、図2のように四つの基材を接着する場合も、同様である。
【0066】
一方の基材表面にコロナ放電処理を施し、水酸基が露出し活性化したシリコーンゴム架橋反応性の基材表面とする。その水酸基に反応してシリルエーテルを形成させるHSi(CH3)2OSi(CH3)2CH2CH2CH2Si(OC2H5)3のような機能性アルコキシシリル化合物と溶媒との溶液を、水酸基が生成している基材表面に付し、乾燥させた後、加熱する。この機能性アルコキシシリル化合物のトリエトキシシリル基が、基材表面上の水酸基に反応し、前記活性シリル基となり、水酸基の脱水素残基とともに、化学的に強固なシリルエーテル結合を形成する。このアルコキシシリル化合物により、ヒドロシリル含有シリル基のようなシリル基がエーテル結合したシリルエーテルの単分子膜で被覆された基材が得られる。このような単分子膜は、最初に使用したシリル化合物の基本単位を超えない分子鎖からなる。
【0067】
この基材に、被験液流路パターンやガス流路パターンを付してから、シリコーンゴム成分を含む組成物を塗布し又はその組成物で形成した他方の基材を当接させて、硬化させると、シリコーンゴムが基材上のシリルエーテルの単分子膜に架橋して接着される。一方の基材の表面上のシリルエーテル分子と他方の基材のシリコーンゴムとは、シリルエーテル分子とシリコーンゴム成分とが化学反応し共有結合を形成して化学的に架橋したり、シリル基同士で引き付け合って相互作用して電気化学的に架橋したりして、強固に結合している。そのため、両基材は、パターン領域外で強い接着強度を有しつつ接着されており、剥がれ難くなっている。この両基材は、接合すべきカバー用樹脂基材とガス流路形成用樹脂基材と被験液流路形成用樹脂基材とであれば、何れの組み合わせであってもよい。
【0068】
ヒドロシリル含有シリル基のようなシリル基でシリルエーテル結合した基材の例を示したが、ビニルシリル含有シリル基で例示されるビニル含有シリル基、アルコキシシリル末端含有シリル基、加水分解性基含有シリル基のような活性シリル基でシリルエーテル結合したものであってもよい。
【0069】
このような活性シリル基は何れも、基材表面の水酸基に機能性アルコキシシリル化合物のアルコキシシリル基が反応することにより、形成されるものである。
【0070】
このようなヒドロシリル含有シリル基で基材(Sub.:Substrate)に形成されるシリルエーテル結合は、下記化学式[1]
Sub.−O−SiR20 ・・・[1]
で表わされる。ヒドロシリル含有シリル基−SiR20は、R20が末端に-SiH(R1)2又は-SiH2(R2)(R1及びR2は、炭素数1〜4のアルキル基)を有し、又はその主鎖の途中に-SiH-基を有しているというもので、ポリシロキシ基となっていてもよいというものである。
【0071】
−SiR20は、より具体的には、
-(C2H5O)2SiCH2CH2CH2Si(CH3)2H、
-(CH3O)2SiCH2CH2CH2Si(CH3)2H、
-(i-C3H7O)2SiCH2CH2CH2Si(CH3)H2
-(n-C3H7O)2SiCH2CH2CH2Si(CH3)2OSi(CH3)2CH2CH2Si(CH3)2Si(CH3)2H、
-(n-C4H9O)2SiCH2CH2CH2Si(CH3)2OSi(CH3)2H、
-(t-C4H9O)2SiCH2CH2CH2Si(CH3)2OSi(CH3)2H、
-(C2H5O)CH3SiCH2CH2CH2Si(CH3)2OSi(CH3)2H、
-(CH3O)CH3SiCH2CH2CH2Si(CH3)2OSi(CH3)2CH2CH2Si(CH3)2Si(CH3)2H、
-(CH3)2SiCH2CH2CH2Si(CH3)2OSi(CH3)2H、
-(C2H5O)2SiCH2CH2CH2Si(CH3)2OSi(CH3)2H、
-(n-C3H7)2SiCH2CH2CH2Si(CH3)2OSi(CH3)2H、
-(i-C3H7O)2SiCH2CH2CH2Si(CH3)2OSi(CH3)2H、
-(n-C4H9)2SiCH2CH2CH2Si(CH3)2OSi(CH3)2H、
-(t-C4H9O)2SiCH2CH2CH2Si(CH3)2OSi(CH3)2H、
-[(-O)(-)SiCH2CH2CH2Si(CH3)2OSi(CH3)2H]k1
-[(-O)(-)SiCH2CH2Si(CH3)2OSi(CH3)2H]k2
-[(-O)(-)SiCH2CH2CH2CH2Si(CH3)2OSi(CH3)2H]k3
-[(-O)(-)SiCH2CH2CH2CH2CH2CH2Si(CH3)2OSi(CH3)2H]k4
-[(-O)(-)SiCH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2Si(CH3)2OSi(CH3)2H]k5
-(CH3O)2SiCH2C6H4CH2CH2Si(CH3)2C6H4Si(CH3)2H、
-(CH3O)CH3SiCH2C6H4CH2CH2Si(CH3)2C6H4Si(CH3)2H、
-(CH3)2SiCH2C6H4CH2CH2Si(CH3)2C6H4Si(CH3)2H、
-[(-O)(-)SiCH2C6H4CH2CH2Si(CH3)2C6H4Si(CH3)2H]k6
-[(-O)(-)SiCH2CH2CH2Si(CH3)2C6H4OC6H4Si(CH3)2H]k7
-[(-O)(-)SiCH2CH2CH2Si(CH3)2C2H4Si(CH3)2H]k8
-(C2H5O)2SiCH2CH2CH2Si(CH3)2O[Si(CH3)2O]m1Si(CH3)2H、
-(C2H5)2SiCH2CH2CH2Si(CH3)2O[Si(CH3)2O]m2Si(C2H5)2H、
-(C2H5O)CH3SiCH2CH2CH2Si(CH3)2O[Si(CH3)2O]m3Si(CH3)2H、
(CH3)3SiO[-Si(CH3)]O[SiH(CH3)O]m4Si(CH3)3
(CH3)3SiO[(-Si(CH3)CH2CH2CH2)(-)SiCH3]O[SiH(CH3)O]m5Si(CH3)3
(CH3)3SiO[(-Si(OCH3)CH2CH2CH2)(-)SiCH3]O[SiH(CH3)O]m6Si(CH3)3
(CH3)3SiO[(-Si(CH3)CH2CH2CH2)(-)SiCH3]O[SiH(CH3)O]m7Si(CH3)3
(CH3)3SiO[(-Si(O-)CH2CH2CH2)SiCH3]O[SiH(CH3)O]m8Si(CH3)3
(CH3)3SiO[(-Si(CH3)O[SiH(CH3)O]m9[Si(CH3)2O]n1Si(CH3)3
(CH3)3SiO[(-Si(CH3)CH2CH2CH2CH2CH2CH2)(-)Si(CH3)O][SiH(CH3)O]m10[Si(CH3)2O]n2Si(CH3)3
(CH3)3SiO[(-Si(OCH3)CH2CH2CH2CH2CH2CH2)(-)Si(CH3)O][SiH(CH3)O]m11[Si(CH3)2O]n3Si(CH3)3
(CH3)3SiO[(-Si(O-)CH2CH2CH2CH2CH2CH2)Si(CH3)O][SiH(CH3)O]m12[Si(CH3)2O]n4Si(CH3)3
(CH3)3SiO[(-Si(OCH3)CH2CH2CH2CH2CH2CH2)(-)Si(CH3)O][SiH(CH3)O]m13[Si(CH3)2O]n5Si(CH3)3
(CH3)3SiO[-Si(C2H5)O][SiH(C2H5)O]m14Si(CH3)3
(CH3)3SiO[(-Si(O-)CH2CH2CH2CH2CH2CH2)Si(C2H5)]O[SiH(C2H5)O]m15Si(CH3)3
(CH3)3SiO[(-Si(CH3)CH2CH2CH2CH2CH2CH2)(-)Si(C2H5)]O[SiH(C2H5)O]m16Si(CH3)3
-Si(CH3)2CH2CH2CH2CH2CH2CH2(CH3)2SiO[HSi(CH3)2OSiC6H5O]m17Si(CH3)2H、
-Si(OCH3)2CH2CH2CH2CH2CH2CH2(CH3)2SiO[HSi(CH3)2OSiC6H5O]m18Si(CH3)2H、
-Si(O-)CH2CH2CH2CH2CH2CH2(CH3)2SiO[HSi(CH3)2OSiC6H5O]m19Si(CH3)2H、
H(CH3)2SiO[(-Si(CH3)2CH2CH2CH2)Si(CH3)O][HSiCH3O]m20Si(CH3)2H、
H(CH3)2SiO[(-Si(CH3)2CH2CH2CH2CH2)Si(CH3)O][HSiCH3O]m21Si(CH3)2H、
H(CH3)2SiO[(-Si(CH3)2CH2CH2CH2CH2CH2CH2)Si(CH3)O][HSiCH3O]m22Si(CH3)2H、
H(CH3)2SiO[(-Si(CH3)2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2)Si(CH3)O][HSiCH3O]m23Si(CH3)2H、
H(CH3)2SiO[(-Si(CH3)2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2)Si(CH3)O][HSiCH3O]m24Si(CH3)2H、
H(CH3)2SiO[(-Si(OCH3)2CH2CH2C6H4CH2CH2)Si(CH3)O][HSiCH3O]m25Si(CH3)2H、
H(CH3)2SiO[(-Si(OCH3)2CH2C6H4CH2CH2CH2)Si(CH3)O][HSiCH3O]m26Si(CH3)2H、
H(CH3)2SiO[(-Si(OCH3)2CH2C6H4CH2CH2)Si(CH3)O][HSiCH3O]m27Si(CH3)2H、
H(CH3)2SiO[(-Si(OCH3)2C6H4CH2CH2)Si(CH3)O][HSiCH3O]m28Si(CH3)2H、
H(CH3)2SiO[(-Si(OCH3)2CH2CH2CH2)Si(CH3)O][HSiCH3O]m29Si(CH3)2H、
H(CH3)2SiO[(-Si(OCH3)2CH2CH2CH2CH2)Si(CH3)O][HSiCH3O]m30Si(CH3)2H、
H(CH3)2SiO[(-Si(OCH3)2CH2CH2CH2CH2CH2CH2)Si(CH3)O][HSiCH3O]m31Si(CH3)2H、
H(CH3)2SiO[(-Si(OCH3)2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2)Si(CH3)O][HSiCH3O]m32Si(CH3)2H、
H(CH3)2SiO[(-Si(OCH3)2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2)Si(CH3)O][HSiCH3O]m33Si(CH3)2H、
H(CH3)2SiO[(-Si(OCH3)2CH2CH2C6H4CH2CH2)Si(CH3)O][HSiCH3O]m34Si(CH3)2H、
H(CH3)2SiO[(-Si(OCH3)2CH2C6H4CH2CH2CH2)Si(CH3)O][HSiCH3O]m35Si(CH3)2H、
H(CH3)2SiO[(-Si(OCH3)2CH2C6H4CH2CH2)Si(CH3)O][HSiCH3O]m36Si(CH3)2H、
H(CH3)2SiO[(-Si(OCH3)2C6H4CH2CH2)Si(CH3)O][HSiCH3O]m37Si(CH3)2H、
H(CH3)2SiO[(-Si(O-)CH2CH2C6H4CH2CH2)Si(CH3)O][HSiCH3O]m38Si(CH3)2H、
H(CH3)2SiO[(-Si(O-)CH2C6H4CH2CH2CH2)Si(CH3)O][HSiCH3O]m39Si(CH3)2H、
H(CH3)2SiO[(-Si(O-)CH2C6H4CH2CH2)Si(CH3)O][HSiCH3O]m40Si(CH3)2H、
H(CH3)2SiO[(-Si(O-)C6H4CH2CH2)Si(CH3)O][HSiCH3O]m41Si(CH3)2H、
H(CH3)2SiO[(-Si(O-)CH2CH2CH2)Si(CH3)O][HSiCH3O]m42Si(CH3)2H、
H(CH3)2SiO[(-Si(O-)CH2CH2CH2CH2)Si(CH3)O][HSiCH3O]m43Si(CH3)2H、
H(CH3)2SiO[(-Si(O-)CH2CH2CH2CH2CH2CH2)Si(CH3)O][HSiCH3O]m44Si(CH3)2H、
H(CH3)2SiO[(-Si(O-)CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2)Si(CH3)O][HSiCH3O]m45Si(CH3)2H、
H(CH3)2SiO[(-Si(O-)CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2)Si(CH3)O][HSiCH3O]m46Si(CH3)2H、
H(CH3)2SiO[(-Si(O-)CH2CH2C6H4CH2CH2)Si(CH3)O][HSiCH3O]m47Si(CH3)2H、
H(CH3)2SiO[(-Si(O-)CH2C6H4CH2CH2CH2)Si(CH3)O][HSiCH3O]m48Si(CH3)2H、
H(CH3)2SiO[(-Si(O-)CH2C6H4CH2CH2)Si(CH3)O][HSiCH3O]m49Si(CH3)2H、
H(CH3)2SiO[(-Si(O-)C6H4CH2CH2)Si(CH3)O][HSiCH3O]m50Si(CH3)2H、
H(CH3)2SiO[(-)Si(CH3)CH2CH2CH2CH2CH2CH2Si(CH3)2OSiC6H5O]m51[HSi(CH3)2OSiC6H5O]n6Si(CH3)2H、
H(CH3)2SiO[(-)Si(OCH3)CH2CH2CH2CH2CH2CH2Si(CH3)2OSiC6H5O]m52[HSi(CH3)2OSiC6H5O]n7Si(CH3)2H、
H(CH3)2SiO[(-)Si(O-)CH2CH2CH2CH2CH2CH2Si(CH3)2OSiC6H5O]m53[HSi(CH3)2OSiC6H5O]n8Si(CH3)2H、
-(CH3)2SiO[SiH(CH3)O]m54[SiCH3(C6H5)O]n9Si(CH3)2H、
-Si(OC2H5)2CH2CH2CH2CH2CH2CH2(CH3)2SiO[SiH(CH3)O]m55[SiCH3(C6H5)O]n10Si(CH3)2H、
-Si(O-)CH2CH2CH2CH2CH2CH2(CH3)2SiO[SiH(CH3)O]m56[SiCH3(C6H5)O]n11Si(CH3)2H、
-Si(CH3)2CH2CH2CH2CH2CH2CH2(CH3)2SiO[SiH(CH3)O]m57[SiCH3(C6H5)O]n12Si(CH3)2H、
H(CH3)2SiO(-)Si(CH3)O[SiH(CH3)O]m58[SiCH3(C6H5)O]n13Si(CH3)2H、
H(CH3)2SiO[(-)Si(OC2H5)2CH2CH2CH2Si(CH3)]O[SiH(CH3)O]m59[SiCH3(C6H5)O]n14Si(CH3)2H、
H(CH3)2SiO[(-)Si(O-)CH2CH2CH2Si(CH3)]O[SiH(CH3)O]m60[SiCH3(C6H5)O]n15Si(CH3)2H、
H(CH3)2SiO[(-)Si(CH3)2CH2CH2CH2Si(CH3)]O[SiH(CH3)O]m61[SiCH3(C6H5)O]n16Si(CH3)2H
が挙げられる。これらの基中、k1〜k8、m1〜m61及びn1〜n16は1〜100までの数である。一つの基に、ヒドロシリル基(SiH基)を、1〜99個有していることが好ましい。
【0072】
このようなヒドロシリル含有シリル基を形成する機能性アルコキシシリル化合物は、前記のヒドロシリル含有化合物、例えば、
(CH3O)3SiCH2CH2CH2Si(CH3)2OSi(CH3)2H、
(C2H5O)3SiCH2CH2CH2Si(CH3)2OSi(CH3)2H、
(CH3O)3SiCH2CH2CH2Si(OCH3)2OSi(OCH3)3
(C2H5O)3SiCH2CH2CH2Si(OCH3)2OSi(OCH3)3
(C2H5O)3SiCH2CH2CH2Si(CH3)2H、
(CH3O)3SiCH2CH2CH2Si(CH3)2H、
(i-C3H7O)3SiCH2CH2CH2Si(CH3)H
(n-C3H7O)3SiCH2CH2CH2Si(CH3)2OSi(CH3)2CH2CH2Si(CH3)2Si(CH3)2H、
(n-C4H9O)3SiCH2CH2CH2Si(CH3)2OSi(CH3)2H、
(t-C4H9O)3SiCH2CH2CH2Si(CH3)2OSi(CH3)2H、
(C2H5O)2CH3SiCH2CH2CH2Si(CH3)2OSi(CH3)2H、
(CH3O)2CH3SiCH2CH2CH2Si(CH3)2OSi(CH3)2CH2CH2Si(CH3)2Si(CH3)2H、
CH3O(CH3)2SiCH2CH2CH2Si(CH3)2OSi(CH3)2H、
(C2H5O)3SiCH2CH2CH2Si(CH3)2OSi(CH3)2H、
(n-C3H7)3SiCH2CH2CH2Si(CH3)2OSi(CH3)2H、
(i-C3H7O)3SiCH2CH2CH2Si(CH3)2OSi(CH3)2H、
(n-C4H9)3SiCH2CH2CH2Si(CH3)2OSi(CH3)2H、
(t-C4H9O)3SiCH2CH2CH2Si(CH3)2OSi(CH3)2H、
(C2H5O)3SiCH2CH2Si(CH3)2OSi(CH3)2H、
(C2H5O)3SiCH2CH2CH2CH2Si(CH3)2OSi(CH3)2H、
(C2H5O)3SiCH2CH2CH2CH2CH2CH2Si(CH3)2OSi(CH3)2H、
(C2H5O)3SiCH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2Si(CH3)2OSi(CH3)2H、
(CH3O)3SiCH2C6H4CH2CH2Si(CH3)2C6H4Si(CH3)2H、
(CH3O)2CH3SiCH2C6H4CH2CH2Si(CH3)2C6H4Si(CH3)2H、
CH3O(CH3)2SiCH2C6H4CH2CH2Si(CH3)2C6H4Si(CH3)2H、
(C2H5O)3SiCH2C6H4CH2CH2Si(CH3)2C6H4Si(CH3)2H、
(C2H5O)3SiCH2CH2CH2Si(CH3)2C6H4OC6H4Si(CH3)2H、
(C2H5O)3SiCH2CH2CH2Si(CH3)2C2H4Si(CH3)2H、
(C2H5O)3SiCH2CH2CH2Si(CH3)2O[Si(CH3)2O]p1Si(CH3)2H、
C2H5O(CH3)2SiCH2CH2CH2Si(CH3)2O[Si(CH3)2O]p2Si(C2H5)2H、
(C2H5O)2CH3SiCH2CH2CH2Si(CH3)2O[Si(CH3)2O]p3Si(CH3)2H、
(CH3)3SiOSiH(CH3)O[SiH(CH3)O]p4Si(CH3)3
(CH3)3SiO[(C2H5OSi(CH3)CH2CH2CH2)SiCH3]O[SiH(CH3)O]p5Si(CH3)3
(CH3)3SiO[(C2H5OSiOCH3CH2CH2CH2)SiCH3]O[SiH(CH3)O]p6Si(CH3)3
(CH3)3SiO[(C2H5OSi(CH3)CH2CH2CH2)SiCH3]O[SiH(CH3)O]p7Si(CH3)3
(CH3)3SiO[(Si(OC2H5)2CH2CH2CH2)SiCH3]O[SiH(CH3)O]p8Si(CH3)3
(CH3)3SiOSi(OC2H5)2O[SiH(CH3)O]p9[Si(CH3)2O]q1Si(CH3)3
(CH3)3SiO[(C2H5Osi(CH3)CH2CH2CH2CH2CH2CH2)Si(CH3)O][SiH(CH3)O]p10[Si(CH3)2O]q2Si(CH3)3
(CH3)3SiO[(Si(OCH3)3CH2CH2CH2CH2CH2CH2)Si(CH3)O][SiH(CH3)O]p11[Si(CH3)2O]q3Si(CH3)3
(CH3)3SiOSi(OC2H5)2O[SiH(C2H5)O]p12Si(CH3)3
(CH3)3SiO[(Si(OC2H5)2CH2CH2CH2CH2CH2CH2)Si(C2H5)]O[SiH(C2H5)O]p13Si(CH3)3
(CH3)3SiO[(C2H5OSi(CH3)CH2CH2CH2CH2CH2CH2)Si(C2H5)]O[SiH(C2H5)O]p14Si(CH3)3
C2H5OSi(CH3)2CH2CH2CH2CH2CH2CH2(CH3)2SiO[HSi(CH3)2OSiC6H5O]p15Si(CH3)2H、
Si(OCH3)3CH2CH2CH2CH2CH2CH2(CH3)2SiO[HSi(CH3)2OSiC6H5O]p16Si(CH3)2H、
H(CH3)2SiO[(C2H5OSi(CH3)2CH2CH2CH2)Si(CH3)O][HSiCH3O]p17Si(CH3)2H、
H(CH3)2SiO[(C2H5OSi(CH3)2CH2CH2CH2CH2)Si(CH3)O][HSiCH3O]p18Si(CH3)2H、
H(CH3)2SiO[(C2H5OSi(CH3)2CH2CH2CH2CH2CH2CH2)Si(CH3)O][HSiCH3O]p19Si(CH3)2H、
H(CH3)2SiO[(C2H5OSi(CH3)2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2)Si(CH3)O][HSiCH3O]p20Si(CH3)2H、
H(CH3)2SiO[(C2H5OSi(CH3)2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2)Si(CH3)O][HSiCH3O]p21Si(CH3)2H、
H(CH3)2SiO[(Si(OCH3)3CH2CH2C6H4CH2CH2)Si(CH3)O][HSiCH3O]p22Si(CH3)2H、
H(CH3)2SiO[(Si(OCH3)3CH2C6H4CH2CH2CH2)Si(CH3)O][HSiCH3O]p23Si(CH3)2H、
H(CH3)2SiO[(Si(OCH3)3CH2C6H4CH2CH2)Si(CH3)O][HSiCH3O]p24Si(CH3)2H、
H(CH3)2SiO[(Si(OCH3)3C6H4CH2CH2)Si(CH3)O][HSiCH3O]p25Si(CH3)2H、
H(CH3)2SiO[(Si(OCH3)3CH2CH2CH2)Si(CH3)O][HSiCH3O]p26Si(CH3)2H、
H(CH3)2SiO[(Si(OCH3)3CH2CH2CH2CH2)Si(CH3)O][HSiCH3O]p27Si(CH3)2H、
H(CH3)2SiO[(Si(OCH3)3CH2CH2CH2CH2CH2CH2)Si(CH3)O][HSiCH3O]p28Si(CH3)2H、
H(CH3)2SiO[(Si(OCH3)3CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2)Si(CH3)O][HSiCH3O]p29Si(CH3)2H、
H(CH3)2SiO[(Si(OCH3)3CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2CH2)Si(CH3)O][HSiCH3O]p30Si(CH3)2H、
H(CH3)2SiO[(Si(OCH3)3CH2CH2C6H4CH2CH2)Si(CH3)O][HSiCH3O]p31Si(CH3)2H、
H(CH3)2SiO[(Si(OCH3)3CH2C6H4CH2CH2CH2)Si(CH3)O][HSiCH3O]p32Si(CH3)2H、
H(CH3)2SiO[(Si(OCH3)3CH2C6H4CH2CH2)Si(CH3)O][HSiCH3O]p33Si(CH3)2H、
H(CH3)2SiO[(Si(OCH3)3C6H4CH2CH2)Si(CH3)O][HSiCH3O]p34Si(CH3)2H、
H(CH3)2SiO[(Si(OCH3)3CH2CH2C6H4CH2CH2)Si(CH3)O][HSiCH3O]p35Si(CH3)2H、
H(CH3)2SiO[(CH3O)Si(CH3)CH2CH2CH2CH2CH2CH2Si(CH3)2OSiC6H5O]p36[HSi(CH3)2OSiC6H5O]q4Si(CH3)2H、
H(CH3)2SiO[Si(OCH3)2CH2CH2CH2CH2CH2CH2Si(CH3)2OSiC6H5O]p37[HSi(CH3)2OSiC6H5O]q5Si(CH3)2H、
C2H5O(CH3)2SiO[SiH(CH3)O]p38[SiCH3(C6H5)O]q6Si(CH3)2H、
Si(OC2H5)3CH2CH2CH2CH2CH2CH2(CH3)2SiO[SiH(CH3)O]p39[SiCH3(C6H5)O]q7Si(CH3)2H、
C2H5OSi(CH3)2CH2CH2CH2CH2CH2CH2(CH3)2SiO[SiH(CH3)O]p40[SiCH3(C6H5)O]q8Si(CH3)2H、
H(CH3)2SiO(C2H5O)Si(CH3)O[SiH(CH3)O]p41[SiCH3(C6H5)O]q9Si(CH3)2H、
H(CH3)2SiO[Si(OC2H5)3CH2CH2CH2Si(CH3)]O[SiH(CH3)O]p42[SiCH3(C6H5)O]q10Si(CH3)2H
が挙げられる。これらの基中、p1〜p42及びq1〜q10は1〜100までの数である。一つの分子に、ヒドロシリル基を、1〜99個有していることが好ましい。
【0073】
またビニルシリル含有シリル基で基材(Sub.)に形成されるシリルエーテル結合は、下記化学式[2]
Sub.−O−SiR21 ・・・[2]
で表わされる。ビニルシリル含有シリル基−SiR21は、R21が-Si-R3基(R3はビニル含有基)を有し、又は該基の主鎖の途中に-Si(R4)-基(R4はビニル含有基)を有しているというものである。
【0074】
−SiR21は、より具体的には、
-(C2H5O)2SiCH2-CH=CH2
-(C2H5O)2SiCH2CH2-CH=CH2
-(C2H5O)2SiCH2CH2CH2CH2-CH=CH2
-(C2H5O)2SiCH2CH2CH2CH2CH2CH2-CH=CH2
-C2H5OSi(CH=CH2)OSi(OC2H5)-CH=CH2
-(CH3O)2SiCH2CH2C6H4-CH=CH2
-(CH3O)Si(CH=CH2)O[SiOCH3(CH=CH2)O]r1Si(OCH3)2-CH=CH2
-(C2H5O)Si(CH=CH2)O[SiOC2H5(CH=CH2)O]r2Si(OC2H5)2-CH=CH2
-(C2H5O)2SiCH2CH2CH2Si(CH3)2OSi(CH3)2CH2CH2[Si(CH3)2O]r3-CH=CH2
-(CH3O)2SiCH2CH2CH2Si(CH3)2OSi(CH3)2CH2CH2[Si(CH3)2O]r4-CH=CH2
-(CH3)2SiCH2CH2CH2Si(CH3)2OSi(CH3)2CH2CH2[Si(CH3)2O]r5-CH=CH2
-(C2H5O)CH3SiCH2CH2CH2Si(CH3)2OSi(CH3)2CH2CH2[Si(CH3)2O]r6-CH=CH2
-(-O)SiCH2CH2CH2Si(CH3)2OSi(CH3)2CH2CH2[Si(CH3)2O]r7-CH=CH2
-(C2H5O)2SiCH2CH2CH2Si(CH3)2OSi(CH3)2CH2CH2(Si(CH3)3O)Si(CH3)O[SiCH3(-)O]s1Si(CH3)3
-(C2H5O)2SiCH2CH2CH2Si(CH3)2OSi(CH3)2CH2CH2(Si(CH3)3O)Si(CH3)O[SiCH3(-)O]s2[Si(CH3)2O]r8Si(CH3)3
-C2H5OSi(CH=CH2)O[SiCH3(-)O]s3Si(OC2H5)2CH=CH2
-C2H5OSi(CH=CH2)O[SiCH3(-)O]s4Si(CH=CH2)OC2H5-CH=CH2
-(-O)Si(CH=CH2)O[SiCH3(-)O]s5Si(OC2H5)2CH=CH2
-(-O)Si(CH=CH2)O[SiCH3(-)O]s6Si(CH=CH2)(O-)-CH=CH2
-(-O)Si(CH=CH2)O[SiCH3(-)(O-)]s7Si(CH=CH2)(O-)-CH=CH2
-Si(CH=CH2)O[Si(-)OC2H5]s8[Si(O-)CH=CH2]2
-Si(CH=CH2)O[Si(O-)]r9[Si(-)OC2H5]s9[Si(OC2H5)2CH=CH2]2
-Si(CH=CH2)O[Si(-)(O-)]s10[Si(O-)CH=CH2]2
が挙げられる。これらの基中、r1〜r9及びs1〜s10は、1〜30の数である。一つの基に、ビニル基(CH=CH2基)を、1〜30個有していることが好ましい。
【0075】
ビニルシリル含有シリル基を形成する機能性アルコキシシリル化合物は、前記ビニルシリル含有化合物、例えば、
(C2H5O)3SiCH2CH=CH2
(CH3O)3SiCH2CH2CH=CH2
(C2H5O)3SiCH2CH2CH=CH2
(CH3O)3SiCH2CH2CH2CH2CH=CH2
(C2H5O)3SiCH2CH2CH2CH2CH=CH2
(C2H5O)3SiCH2CH2CH2CH2CH2CH2CH=CH2
(CH3O)3SiCH2(CH2)7CH=CH2
(C2H5O)2Si(CH=CH2)OSi(OC2H5)CH=CH2
(CH3O)3SiCH2CH2C6H4CH=CH2
(CH3O)2Si(CH=CH2)O[SiOCH3(CH=CH2)O]t1Si(OCH3)2CH=CH2
(C2H5O)2Si(CH=CH2)O[SiOC2H5(CH=CH2)O]t2Si(OC2H5)3
(C2H5O)3SiCH2CH2CH2Si(CH3)2OSi(CH3)2CH2CH2[Si(CH3)2O]t3CH=CH2
(CH3O)3SiCH2CH2CH2Si(CH3)2OSi(CH3)2CH2CH2[Si(CH3)2O]t4CH=CH2
CH3O(CH3)2SiCH2CH2CH2Si(CH3)2OSi(CH3)2CH2CH2[Si(CH3)2O]t5CH=CH2
(C2H5O)2CH3SiCH2CH2CH2Si(CH3)2OSi(CH3)2CH2CH2[Si(CH3)2O]t6CH=CH、
(C2H5O)3SiCH2CH2CH2Si(CH3)2OSi(CH3)2CH2CH2[Si(CH3)2O]t7CH=CH、
(C2H5O)3SiCH2CH2CH2Si(CH3)2OSi(CH3)2CH2CH2(Si(CH3)3O)Si(CH3)O[SiCH3(-)O]u1Si(CH3)3CH=CH2
(C2H5O)3SiCH2CH2CH2Si(CH3)2OSi(CH3)2CH2CH2(Si(CH3)3O)Si(CH3)O[SiCH3(-)O]u2[Si(CH3)2O]t8Si(CH3)3CH=CH2
(C2H5O)2Si(CH=CH2)O[SiCH3(OC2H5)O]u3Si(OC2H5)2CH=CH2
(C2H5O)2Si(CH=CH2)O[Si(OC2H5)2O]u4Si(OC2H5)2CH=CH2
(C2H5O)2Si(CH=CH2)O[Si(OC2H5)2O]u5Si(OC2H5)2CH=CH2
が挙げられる。これらの基中、t1〜t8及びu1〜u5は1〜30までの数である。一つの分子に、ビニル基を、1〜30個有していることが好ましい。
【0076】
また、アルコキシシリル末端含有シリル基で基材(Sub.)に形成されるシリルエーテル結合は、下記化学式[3]
Sub.−O−SiR22 ・・・[3]
で表わされる。アルコキシシリル末端含有シリル基−SiR22は、R22が-Si(OR5)2R6基(R5及びR6は炭素数1〜4のアルキル基)、又は-Si(OR7)3基(R7は炭素数1〜4のアルキル基)を有しているものである。−SiR22は、より具体的には、
-(C2H5O)2SiCH2CH2Si(OC2H5)3
-(C2H5O)CH3SiCH2CH2Si(OC2H5)3
-(C2H5O)2SiCH=CHSi(OC2H5)3、
-(CH3O)2SiCH2CH2Si(OCH3)3、
-(CH3O)2SiCH2CH2C6H4CH2CH2Si(OCH3)3
-(CH3O)2Si[CH2CH2]3Si(OCH3)3
-(CH3O)2Si[CH2CH2]4Si(OCH3)3、
-(CH3O)CH3SiCH2CH2Si(OCH3)2CH3
-(C2H5O)CH3SiOSi(OC2H5)2CH3
-(C2H5O)Si(OC2H5)2
が挙げられる。
【0077】
アルコキシシリル末端含有シリル基を形成する機能性アルコキシシリル化合物の例として、
(C2H5O)3SiCH2CH2Si(OC2H5)3
(C2H5O)2CH3SiCH2CH2Si(OC2H5)3
(C2H5O)3SiCH=CHSi(OC2H5)3
(CH3O)3SiCH2CH2Si(OCH3)3(CH3O)3SiCH2CH2C6H4CH2CH2Si(OCH3)3
(CH3O)3Si[CH2CH2]3Si(OCH3)3
(CH3O)2Si[CH2CH2]4Si(OCH3)3
(C2H5O)2Si(OC2H5)2
(CH3O)2CH3SiCH2CH2Si(OCH3)2CH3
(C2H5O)2CH3SiOSi(OC2H5)2CH3
(CH3O)3SiO[Si(OCH3)2O]v1Si(OCH3)3
(C2H5O)3SiO[Si(OC2H5)2O]v2Si(OC2H5)3
(C3H7O)3SiO[Si(OC3H7)2O]v3Si(OC3H7)3
が挙げられる。これらの基中、v1〜v3は0〜30までの数である。
【0078】
また、加水分解性基含有シリル基で基材(Sub.)に形成されるシリルエーテル結合は、下記化学式[4]
Sub.−O−Si(R8)a(R9)3-a ・・・[4]
(R8は、水素原子;ハロゲン原子;炭素数1〜12のアルキル基、アルケニル基、アルキルオキシ基、フッ素置換アルキル基;アラルキル基;アリール基であり、R9は、炭素数1〜12のアシルオキシ基、アルケニルオキシ基、アルカンイミノオキシ基、アルキルオキシ基、アルキルアミノ基、ジアルキルアミノ基;含窒素複素環基、及びアリールアミノ基であり、aは0〜3の数)で表わされる。より具体的には、加水分解性基含有シリル基−Si(R8)a(R9)3-a中、R8は、H-、F-、CH3-、C2H5-、CH2=CH-、n-C3H7-、i-C3H7-、CH2=CHCH2-、C4H9-、C6H13-、C8H17-、C6H5-、CH3C6H4-、C6H5CH2-、CF3CF2CH2CH2-、CF3CF2CF2CH2CH2-、CF3CF2CF2CF2CF2CF2CF2CH2CH2-、CH3O-、C2H5O-が挙げられ、R9は、CH3COO-、CH2=C(CH3)O-、C2H5(CH3)C=NO-、CH3O-、(CH3)2N-、(C2H5)2N-、(i-C3H7)2N-、O(CH2CH2)2N-、(CH3)3CNH-、C6H10NH-、C6H5NH-が挙げられる。
【0079】
加水分解性基含有シリル基を形成する機能性アルコキシシリル化合物の例として、
CH3Si(OCOCH3)3、(CH3)2Si(OCOCH3)2、n-C3H7Si(OCOCH3)3、CH2=CHCH2Si(OCOCH3)3、C6H5Si(OCOCH3)3、CF3CF2CH2CH2Si(OCOCH3)3、CH2=CHCH2Si(OCOCH3)3、CH3OSi(OCOCH3)3、C2H5OSi(OCOCH3)3、CH3Si(OCOC3H7)3、CH3Si[OC(CH3)=CH2]3、(CH3)2Si[OC(CH3)=CH2]3、n-C3H7Si[OC(CH3)=CH2]3、CH2=CHCH2Si[OC(CH3)=CH2]3、C6H5Si[OC(CH3)=CH2]3、CF3CF2CH2CH2Si[OC(CH3)=CH2]3、CH2=CHCH2Si[OC(CH3)=CH2]3、CH3OSi[OC(CH3)=CH2]3、C2H5OSi[OC(CH3)=CH2]3、CH3Si[ON=C(CH3)C2H5]3、(CH32Si[ON=C(CH3)C2H5]2、n-C3H7Si[ON=C(CH3)C2H5]3、CH2=CHCH2Si[ON=C(CH3)C2H5]3、C6H5Si[ON=C(CH3)C2H5]3、CF3CF2CH2CH2Si[ON=C(CH3)C2H5]3、CH2=CHCH2Si[ON=C(CH3)C2H5]3、CH3OSi[ON=C(CH3)C2H5]3、C2H5OSi[ON=C(CH3)C2H5]]3、CH3Si[ON=C(CH3)C2H5]3、CH3Si[N(CH3)]3、(CH3)2Si[N(CH3)]2、n-C3H7Si[N(CH3)]3、CH2=CHCH2Si[N(CH3)]3、C6H5Si[N(CH3)]3、CF3CF2CH2CH2Si[N(CH3)]3、CH2=CHCH2Si[N(CH3)]3、CH3OSi[N(CH3)]3、C2H5OSi[N(CH3)]3、CH3Si[N(CH3)]3などの昜加水分解性オルガノシランが挙げられる。
【0080】
これらの機能性アルコキシシリル化合物は、水、メタノール、エタノール、イソプロパノール、エチレングリコールなどのアルコール類;アセトン、メチルエチルケトンなどのケトン類;酢酸エチルなどのエステル類;塩化メチレンなどのハロゲン化物、ブタン、ヘキサンなどのオレフィン類;テトラヒドロフラン、ブチルエーテルなどのエーテル類、ベンゼン、トルエンなどの芳香族類;ジメチルホルムアミド、メチルピロリドンなどのアミド類;及びこれらの混合溶媒などに溶解して使用される。
【0081】
機能性アルコキシシリル化合物の添加量は、概ね上記の溶剤100gに対して、0.001〜5gの範囲が適当である。0.001g以下では接着効果が十分ではなく、5g以上では条件を制御しても多層薄膜が生成するので好ましくない。
【0082】
シリコーン樹脂製の基材の好ましい例を示したが、シリコーンはシリコーンゴムが好ましい。その他、高分子樹脂製の基材でもよい。これらの材質は透明材質が好ましく、バイオチップ基板を用い被験液を蛍光発光・染色するときに蛍光波長の透過を阻害しないものであることが好ましい。
【0083】
高分子樹脂として、例えばセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、デンプン、二酢酸セルロースのようなセルロース誘導体、表面ケン化酢酸ビニル樹脂、低密度ポリエチレン、高密度ポリエチレン、i−ポリプロピレン、石油樹脂、ポリスチレン、s‐ポリスチレン、クロマン・インデン樹脂、テルペン樹脂、スチレン−ジビニルベンゼン共重合体、アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン樹脂(ABS樹脂)、ポリアクリル酸メチル、ポリアクリル酸エチル、ポリアクリルニトリル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、ポリシアノアクリレート、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリビニルホルマール、ポリビニルアセタール、ポリ塩化ビニル、塩化ビニル・酢酸ビニル共重合体、塩化ビニル・エチレン共重合体、ポリフッ化ビニリデン、フッ化ビニリデン・エチレン共重合体、フッ化ビニリデン・プロピレン共重合体、1,4‐トランスポリブタジエン、ポリオキシメチレン、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、フェノール・ホルマリン樹脂、クレゾール・フォルマリン樹脂、レゾルシン樹脂、メラミン樹脂、キシレン樹脂、トルエン樹脂、グリプタル樹脂、変性グリプタル樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブテレンテレフタレート、不飽和ポリエステル樹脂、アリルエステル樹脂、ポリカーボネート、6−ナイロン(ナイロンは登録商標)、6,6−ナイロン、6,10−ナイロン、ポリイミド、ポリアミド、ポリベンズイミダゾール、ポリアミドイミド、ケイ素樹脂、シリコーンゴム、シリコーン樹脂、フラン樹脂、ポリウレタン樹脂、エポキシ樹脂、ポリフェニレンオキサイド、ポリジメチルフェニレンオキサイド、ポリキシレン、ポリフェニレンスルファイド(PPS)、ポリスルホン(PSF)、ポリエーテルスルホン(PES)、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、ポリイミド(PPI、カプトン)、液晶樹脂、ケブラー繊維、炭素繊維とこれら複数材料のブレンド物、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)のような高分子材料、又は天然ゴム、1,4‐シスブタジエンゴム、イソプレンゴム、ポリクロロプレン、スチレン・ブタジエン共重合ゴム、水素添加スチレン・ブタジエン共重合ゴム、アクリルニトリル・ブタジエン共重合ゴム、水素添加アクリルニトリル・ブタジエン共重合ゴム、ポリブテン、ポリイソブチレン、エチレン・プロピレンゴム、エチレン・プロピレン・ターポリマー、塩素化ポリエチレン、クロルスルフォン化ポリエチレン、アルキル化クロルスルフォン化ポリエチレン、クロロプレンゴム、塩素化アクリルゴム、臭素化アクリルゴム、フッ素ゴム、エピクロルヒドリンとその共重合ゴム、塩素化エチレンプロピレンゴム、塩素化ブチルゴム、臭素化ブチルゴムなどのゴム材料が挙げられる。これらの混合物又はこれらの架橋物であってもよい。
【0084】
重ね合わせるべき基材は、これらの材料から適宜選択でき、二種類の異なる基材が重ね合わされてもよい。また、重ね合わせるべき基材は、一方はゴム弾性があり、他方はゴム弾性がなく樹脂性の高い材料であり、これらが接着されていてもよい。
【0085】
基材は、例えば、ゴム状の弾性を有するものである場合、デューロメータA硬さを30〜80の範囲、特に約50とするものであることが好ましい。またこのようなゴム状の弾性を有する一方の基材と、デューロメータD硬さを20〜90とする通常の樹脂で成形された他方の基材とを、適宜組み合わせて用いてもよい。
【0086】
基材にコロナ放電を施した例を示したが、大気圧プラズマ処理又は紫外線照射を施してもよい。
【0087】
コロナ放電は、「コロナ処理」、日本接着学会誌、Vol.36,No.3,126(2000)に記載の方法に準じて、大気圧プラズマ処理は、「プラズマ処理」、日本接着学会誌、Vol.41,No.1,4(2005)に準じて、紫外線照射は、紫外線に暴露させて、夫々処理するというものである。これらの処理によって、L.J.Gerenser:J.Adhesion Sci.Technol.7,1019(1997)に記載のように、基材表面に、水酸基、カルボキシル基、カルボニル基などが生成したり、表面に出現したりする。
【0088】
前記の高分子樹脂は、元々水酸基を有するものと有しないものとがあるが、高分子樹脂製の基材表面に水酸基を有しなくともコロナ放電、大気圧プラズマ処理又は紫外線照射の処理を施すことにより、そこに水酸基が効率よく生成される。
【0089】
それらの最適処理条件は、基材表面の材質の種類や履歴によって異なるが、その表面に55kJ/m以上の表面張力が得られるまで処理し続けることが重要である。これにより、十分な接着強度が得られる。
【0090】
具体的には、基材表面のコロナ放電処理は、コロナ表面改質装置(例えば、信光電気計測(株)製コロナマスター)を用いて、例えば、電源:AC100V、出力電圧:0〜20kV、発振周波数:0〜40kHzで0.1秒〜60秒、温度0〜60℃の条件で行われる。
【0091】
また、基材表面の大気圧プラズマ処理は、大気圧プラズマ発生装置(例えば、松下電工(株)製:商品名Aiplasuma)を用いて、例えば、プラズマ処理速度10〜100mm/s,電源:200 or 220V AC(30A)、圧縮エア:0.5MPa(1NL/min)、10kHz/300W〜5GHz、電力:100W〜400W、照射時間:0.1秒〜60秒の条件で行われる。
【0092】
また、基材の表面の紫外線照射は、紫外線−発光ダイオード(UV−LED)照射装置(例えば、(株)オムロン製のUV−LED照射装置:商品名ZUV−C30H)を用いて、例えば、波長:200〜400nm、電源:100V AC、光源ピーク照度:400〜3000mW/cm、照射時間:1〜60秒の条件で行われる。
【0093】
コロナ放電などの前処理後、基材表面を、分子接着剤である機能性アルコキシシリル化合物の溶液に浸漬又は噴霧によって接触させてもよい。浸漬及び噴霧の時間に制限はなく、基材表面が一様に湿潤していることが重要である。
【0094】
機能性アルコキシシリル化合物を付した基材を、オーブンに入れたり、ドライヤーで温風を送風したり、高周波を照射したりすることにより、加熱しながら乾燥する。加熱・乾燥は、50℃〜250℃の温度範囲で、1〜60分間行われる。50℃以下では、基材表面に生成した水酸基と機能性アルコキシシリル化合物との反応時間が長くかかりすぎて、生産性が低下し、コストの高騰を招く。また、250℃以上では、加熱乾燥時間が短くても基材表面が変形したり、分解したりしてしまう。1分間以下の加熱乾燥では熱の伝達が不十分であるため、基材表面の水酸基と機能性アルコキシシリル化合物との結合が不十分となる。また、60分以上では生産性が低下する。
【0095】
基材表面の水酸基と機能性アルコキシシリル化合物との反応が不十分な場合には、上記の浸漬と乾燥とを1〜5回程度繰り返してもよい。それにより1回当たりの浸漬及び乾燥時間を短縮し、反応回数を増やす方が反応を十分に進行させることができる。
【0096】
さらに、前記の機能性アルコキシシリル化合物とシラン化合物とを組み合わせて用いることにより、シリコーンゴム架橋反応性を有するシリルエーテルを、基材表面に形成させることができる。
【0097】
たとえば、上記の機能性アルコキシシリル化合物で基材表面の水酸基とを反応させた後、シラン化合物、例えば
HSi(CH3)2C6H4Si(CH3)2H、
HSi(CH3)2C6H4OC6H4Si(CH3)2H、
CH3Si(H)2C2H4Si(H)2CH3
HSi(CH3)2C2H4Si(CH3)2H、
HSi(CH3)2OSi(CH3)2H、
HSi(CH3)2O[Si(CH3)2O]x1Si(CH3)2H(但しx1=1〜840)、
(CH3)3SiO[SiH(R17)O]x2[Si(CH3)2O]y1Si(CH3)3(但しR17=CH3-、C2H5-、C6H5-;y1=1〜50;x2=0〜50)、
HSi(CH3)2O[SiC6H5(OSi(CH3)2H)]x3Si(CH3)2H(x3=1〜5)、
HSi(CH3)2O[SiCH3(H)O]x4[SiCH3(C6H5)O]y2Si(CH3)2H(x4=1〜10、y2=1〜10)
が挙げられるようなこれらのシラン化合物の0.01〜5%アルコール溶液に浸漬して、0〜200℃に1〜60分間加熱することによって、基材が得られる。0.01%以下では反応時間がかかりすぎ、5%以上では洗浄・回収のコストがかかってしまう。0℃以下では反応性が低く、200℃以上では生産性が劣る。1分間以下では反応が完結せず、60分間以上では生産性が劣る。
【0098】
同様に、以下の不飽和アルコキシシラン化合物、例えば
CH2=CHCH2Si(OC2H5)3
CH2=CHCH2CH2Si(OC2H5)3
CH2=CHCH2CH2CH2CH2Si(OC2H5)3
CH2=CHCH2CH2CH2CH2CH2CH2Si(OCH3)3
CH2=CHSi(OC2H5)2OSi(OC2H5)2CH=CH2
CH2=CHC6H4CH2CH2Si(OCH3)3
CH2=CHSi(OCH3)2O[SiOCH3(CH=CH2)O]x5Si(OCH3)2CH=CH2 (但し、x5=1〜30)、
CH2=CHSi(CH3)2O[Si(CH3)2O]y3[Si(R18)2O]x6Si(CH3)2CH=CH2(但し、R18=CH3−,C2H5−,C6H5−,又はCF3CH2CH3−、x6=0〜2100、y3=0〜2100)、
(CH3)3SiO[Si(CH3)2O]y4[SiCH3(CH=CH2)O]x7Si(CH3)3(但し、x7=0〜2100、y4=0〜2100)、
(CH3)3SiO[Si(CH3)2O]y5[SiCH3(CH=CH2)O]x8[SiCH3(R19)O]z1Si(CH3)3(R19=CH3−,C2H5−,C6H5−,又はCF3CH2CH3−、x8=0〜2100、y5=0〜2100、z1=0〜2100)
が挙げられるようなこれらの不飽和アルコキシシラン化合物で基材表面の水酸基と反応させた後、前記のシラン化合物の0.01〜5%と、白金触媒の10〜1000ppmとの混合物の懸濁液に、0〜200℃、1〜60分間浸漬しても基材が得られる。
【0099】
このときシラン化合物濃度が0.01%以下では反応時間がかかりすぎ、5%以上では洗浄・回収のコストがかかってしまう。白金触媒濃度が10ppmでは反応速度が遅すぎ、1000ppm以上ではコストが問題となってしまう。0℃以下では反応性が低いので生産性が低く、また200℃以上ではSiH基が酸化されて性能が低下する。1分間以下では反応が完結しない場合もあり、60分間以上では生産性が劣る。
【0100】
また、機能性ポリアルコキシシランで基材の水酸基と反応させた後、HOSi(CH3)2O[Si(CH3)2O]2Si(CH3)2OHのようなシラノール末端シロキサンの0.01〜5%のメタノール溶液に0〜200℃、1〜60分間浸漬すると、シラノール基を表面に含有した基材が得られる。
【0101】
このシラノール末端シロキサン濃度が0.01%以下では反応時間がかかりすぎ、5%以上では洗浄・回収のコストがかかってしまう。0℃以下では反応性が低いので生産性が劣り、また200℃以上では多分子膜になる場合もあるので好ましくない。1分間以下では反応が完結しない場合もあり、60分間以上では生産性が劣る。
【0102】
前記のようにして得られたヒドロシリル(SiH)基、不飽和基、及びシラノール(SiOH)基などの架橋反応性基が導入された基材は、次のようなシリコーンゴム成分組成物やそれで形成された別な基材と接触させて、放置又は加熱することにより架橋接着を起こす。
【0103】
得られた一方の基材と、シリコーンゴム成分組成物やそれで形成された別な基材と接触させて、0〜200℃で1〜240分間、大気圧から100kg/cmの圧力下で処理すると、バイオチップ基板が得られる。
【0104】
このとき0℃以下では架橋速度が遅くて生産性に劣るが、200℃以上では使用する高分子樹脂に熱安定性の限界があり好ましくない。1分以下では架橋反応が十分でなく接着しない場合が多く、240分以上では生産性が劣り好ましくない。通常発泡体を製造する以外は大気圧以下ではバイオチップ基板の接着強度が低くなり、100kg/cm以上にしても特段益がないので好ましくない。
【0105】
基材を構成するシリコーンゴム成分は、下記化学式[5]
H(CH3)2SiO[SiH(CH3)O]c[Si(R11)R12O]dSi(CH3)2H ・・・[5]
(式中、R11及びR12は、より具体的にはCH3−,C2H5−,CH2CH=CH2−,n-C3H7−,i-C3H7−,n-C6H13−,n-C8H17−,C6H5−,C6H5CH2−,C6H5CH2CH2−,C10H7−,CF3CH2CH2−,CF3CF2CH2CH2−,CF3CF2CF2CH2CH2−,CF3CF2CF2CF2CF2CH2CH2−,CF3CF2CF2CF2CF2CF2CH2CH2−,CF3CF2CF2CF2CF2CF2CF2CF2CH2CH2−,CF3CF2CF2CF2CF2CF2CF2CF2CF2CF2CH2CH2−,HSi(CH3)2O−で例示される基、cは1〜80の数、またdは0〜80の数)から選ばれたポリHシロキサン、
下記化学式[6]
CH2=CH(CH3)2SiO[SiCH=CH2(CH3)O]e[Si(R13)R14O]fSi(CH3)2CH=CH2 ・・・[6]
(式中、R13及びR14は、より具体的には、CH3−,C2H5−,CH2=CH−,CH2=CHCH2−,n-C3H7−,i-C3H7−,n-C6H13−,n-C8H17−,C6H5−,CH2=CHC6H4−,CH2=CHC6H4CH2−,C6H5CH2CH2−,C10H7−,CF3CH2CH2−,CF3CF2CH2CH2−,CF3CF2CF2CH2CH2−,CF3CF2CF2CF2CF2CH2CH2−,CF3CF2CF2CF2CF2CF2CH2CH2−,CF3CF2CF2CF2CF2CF2CF2CF2CH2CH2−,CF3CF2CF2CF2CF2CF2CF2CF2CF2CF2CH2CH2−,HSi(CH3)2O−で例示される基、eは1〜80の数、fは0〜80の数)
から選ばれたビニルシリコーン類、
又は下記化学式[7]
A-(CH3)2SiO[Si(CH3)2O]g[Si(R15)R16O]hSi(CH3)2-A ・・・[7]
(式中、R15及びR16はCH3−,C2H5−,CH2=CH−,CH2=CHCH2−,n-C3H7−,i-C3H7−,n-C6H13−,n-C8H17−,C6H5−,CH2=CHC6H4−,CH2=CHC6H4CH2−,C6H5CH2CH2−,C10H7−,CF3CH2CH2−,CF3CF2CH2CH2−,CF3CF2CF2CH2CH2−,CF3CF2CF2CF2CF2CH2CH2−,CF3CF2CF2CF2CF2CF2CH2CH2−,CF3CF2CF2CF2CF2CF2CF2CF2CH2CH2−,CF3CF2CF2CF2CF2CF2CF2CF2CF2CF2CH2CH2−で例示される基、AはHO−、CH3O−,C2H5O−,n-C3H7O−,i-C3H7O−,C6H5O−,CH3COO−、CH2=C(CH3)O−、C2H5(CH3)C=NO−、(CH3)2N−,(C2H5)2N−で例示される基、gは1〜80の数、hは0〜80の数)から選ばれたシラノールシリコーン類誘導体が挙げられる。
【0106】
シリコーンゴム成分組成物は、これらのシリコーンゴム成分の少なくとも一種類を含んでいる。化学式[5]と化学式[6]の混合物からなる付加型シリコーンゴム組成、化学式[6]のみからなるパーオキサイド型シリコーンゴム組成、及び化学式[7]又は化学式[5]と化学式[7]の混合物からなる縮合型シリコーンゴム組成であってもよい。
【0107】
シリコーンゴム成分組成物は上記シリコーンゴム成分の他に、充填剤、架橋剤、触媒が加えられていてもよい。
【0108】
充填剤は、湿式シリカ、乾式シリカ、タルク、ニプシル、カーボンブラック、金属酸化物が挙げられ、10〜100質量部の範囲内で添加される。10質量部以下では補強効果が十分でなく、また100質量部以上では充填が困難になってしまう。
【0109】
シリコーンゴムは、パーオキサイド架橋系、付加型架橋系及び縮合型架橋系などの架橋系で形成される。これにより、架橋して接着したバイオチップ基板が得られる。
【0110】
パーオキサイド型シリコーンゴム組成には、ベンゾイルぺルオキシド、t−ブチルパーベンゾエイト、ジクミルペルオキシド、ジt−ブチルペルオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキサン、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキシン−3、ジ(t−ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼンなどパーオキサイドが0.5〜5質量部添加される。0.5質量部以下では架橋が不十分であり、また5質量部以上では成型加工中に架橋が起こる恐れがある。
【0111】
一方の基材と、パーオキサイド型シリコーンゴム組成物やそれで形成された他方の基材とを当接させて、80〜200℃の温度範囲で1〜60分間加熱すると、それらが架橋したバイオチップ基板が、得られる。80℃以下では架橋したバイオチップ基板が得られ難く、また200℃以上ではシリコーンゴムが黄変する場合がある。1分以下では架橋が不十分であり、また60分以上では生産性が低くコスト高となる。
【0112】
付加型シリコーンゴム組成には、付加型架橋に使用される触媒として、塩化白金酸、白金カルボニルシクロビニルメチルシロキサン錯体、白金ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体、白金シクロビニルメチルシロキサン錯体、白金オクタナル/オクタノール錯体、トリス(ジブチルスルフィド)ロジュウムトリクロリドなどを1〜100ppmの範囲内で添加して使用される。これが1ppm以下では架橋が不十分であり、また100ppm以上ではコスト高となるので好ましくない。
【0113】
上記の触媒は、付加型シリコーンゴム組成の化学式[5]のシリコーンゴム、化学式[6]のシリコーンゴム及びこれら混合物のいずれかのシリコーンゴム成分組成物に添加して使用される。
【0114】
シリコーンゴム成分組成物やそれで形成された基材同士を、0〜150℃の温度範囲で、1〜240分の架橋時間で、加熱処理すると、架橋して、バイオチップ基板を得ることができる。0℃以下では十分に架橋して接着したバイオチップ基板が得られ難く、また150℃以上でも特段問題はない。1分以下では架橋が不十分であり、また240分以上では生産性が低くコスト高となる。基材の厚さが10mmを超えると、熱伝導率が悪くなり、内部の架橋が遅くなってしまうので、金型温度を低温にして、長時間架橋することもある。その場合、段階的に架橋温度を変えることも可能である。比較的薄いゴムの基材の場合、常温で例えば一昼夜かけて架橋させてもよい。その場合は、架橋温度での熱膨張と常温で使用した時の収縮が起こらず、非常に寸法精度の良い基材の成形が可能となる。
【0115】
化学式[5]のシリコーンゴム、化学式[6]のシリコーンゴムの混合比は両者のSiH基/CH=CH2比が1を目途(化学量論)とするが、一般的には1.3/1〜4.5/1である。1.3/1以下では目的より硬度が低く、また4.5/1以上でも同様の結果となる場合が多い。最適なSiH基/CH=CH2比は充填剤などの添加剤の影響を受けるので、適宜選択する。
【0116】
特に、基材表面の架橋反応性基SiH基濃度が高い場合には、SiH基/CH=CH2比が高くても接着強度は高くなる。しかし、SiH基濃度が低い場合には、SiH基/CH=CH2比が高いと接着強度は低くなる。また、基材表面の架橋反応性基CH=CH2基濃度が高い場合には、SiH基/CH=CH2比が高くしないと接着強度が高くならない。
【0117】
縮合型シリコーンゴム組成物には、縮合型架橋剤として、CH3Si(OCOCH3)3、C2H5OSi(OCOCH3)3、CH3Si[OC(CH3)=CH2]3、CH3Si[ON=C(CH3)C2H5]]3、CH3OSi[ON=C(CH3)C2H5]]3、CH3Si[N(CH3)]3などが0.5〜10質量部、及び触媒としてビス(エチルヘキシル)スズ、ビス(ネオデカネート)スズ、ジブチルラアウリルスズなどの有機スズ化合物、オクチル酸亜鉛、オクチル酸鉄などの金属塩や、チタン酸エステル、チタンキレート化合物、アミン類などが0.5〜10質量部添加される。
【0118】
縮合型シリコーンゴム組成物中、縮合型架橋剤は化学式[7]のシラノールシリコーン類ゴムに添加され、また触媒は化学式[5]のHシリコーンポリマー又は化学式[7]のシラノールシリコーン類ゴムのどちらか、又はこれらの混合物に添加して使用される。
【0119】
バイオチップ基板の製造方法は、以下のような別な態様であってもよい。
【0120】
基板に、コロナ放電処理のような表面処理を施し、基板上に水酸基を生成させ、(CH2=CH-)(CH3O-)2Si-O-[(CH2=CH-)(CH3O-)Si-O]b1-Si(-OCH3)2(-CH=CH2)のようなビニル含有シリル化合物の溶液に浸漬させて熱処理すると、基板上の水酸基にビニル含有シリル化合物が反応する。それを、白金含有触媒、例えば白金−テトラメチルジビニルジシロキサン錯体のような白金錯体のヘキサン液に浸漬させ、乾燥させると、基板上に白金含有触媒が付されている基材が得られる。その化学的構造は必ずしも明らかではないが、基材の表面で生成した複数のビニル含有シリル基に、白金錯体の白金原子が配位しているものと推察される。
【0121】
この基材に、ヒドロシリル基含有ポリシロキサン、又はさらにビニル基含有ポリシロキサンや必要に応じて白金含有触媒を含む組成物やそれで形成された他方の基材を当接させ、硬化させる。すると、ヒドロシリル基含有ポリシロキサンのヒドロシリル基が、ビニル含有シリル基同士の架橋重合よりも優先的に、そのビニル含有シリル基の二重結合へヒドロシリル化反応して、高分子量化し、基材表面の上に、ポリシロキサン類で形成されるシリコーンゴム製の他方の基材が被覆されて接着されたバイオチップ基板が、得られる。
【0122】
白金含有触媒として、例えば白金−テトラメチルジビニルジシロキサン錯体のヘキサン溶液、1.85〜2.1%の白金カルボニルシクロビニルメチルシロキサン錯体のビニルメチル環状シロキサン溶液であるSIP6829.2(Gelest社製の商品名)、3〜3.5%の白金−ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体の両末端ビニルポリジメチルシロキサン溶液であるSIP6830.3(Gelest社製の商品名)、2.1〜2.4%の白金−ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体のキシレン溶液であるSIP6831.2(Gelest社製の商品名)、2.1〜2.4%の白金−ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体のキシレン溶液の低着色タイプであるSIP6831.2LC(Gelest社製の商品名)、2〜2.5%の白金−シクロビニルメチルシロキサン錯体の環状メチルビニルシロキサン溶液であるSIP6832.2(Gelest社製の商品名)、2〜2.5%の白金−オクタナル/オクタノール錯体のオクタノール溶液であるSIP6833.2(Gelest社製の商品名)のような白金錯体が挙げられる。白金含有触媒にかえて、ロジウム含有触媒、例えば、3〜3.5%のトリス(ジブチルスルフィド)ロジウムトリクロライドのトルエン溶液であるINRH078(Gelest社製の商品名)のようなロジウム錯体であってもよい。
【実施例】
【0123】
以下、本発明を適用するバイオチップ基板の製造方法の具体的な実施例について説明する。
【0124】
まずカバー用樹脂基材10となるシリコーン製フィルム16の裏面側に、大気圧コロナ表面改質装置(信光電気計測株式会社製、商品名:コロナマスター)を用いて、電源:AC100V、ギャップ長:3mm、出力電圧:9kV(表面電圧)、電力:18W、発振周波数:20kHzで温度20℃、移動速度:2m/min、移動回数:3回の条件で、コロナ放電処理を行った。打抜き刃19で、被験液注入口11a、薬液注入口11b、ガス流入出口12a・12b・14、被験液排出口15を、打抜いて開けた。
【0125】
上側ガス流路形成用樹脂基材20となるフィルム26の表裏面側の両方に、放電管27a・27bにより同様にしてコロナ放電処理を施した。マスキング剤として、2質量%のポリテトラフルオロエチレンと、3質量%のトリデカフルオロ−1,1,2,2−テトラヒドロオクチル)トリエトキシシラン(アヅマックス製SIT8175.0)と、95質量の塩化メチレンとの溶液を調製した。インクジェットプリンタ28のディスペンサーにより、このマスキング剤で、ガス流路パターン24a・24bを印刷して描き、次いで打抜き刃29で被験液注入孔21a、薬液注入孔21b、ガス流入出孔22a・22b、被験液排出孔25を、打抜いて開けた。
【0126】
同様に、被験液流路形成用樹脂基材30となるフィルム36の表裏面と、下側ガス流路形成用樹脂基材40となるフィルム46の表面とを処理した。フィルム16・26・36・46を、重ね合わせ、ヒーター51で100℃で5分間加熱しながら、加圧ローラー52a・52bで圧着し、カッター53で四角く切断して、バイオチップ基板1を得た。
【0127】
別な実施の態様として、フィルム16・26・36・46を重ね合わせる前に、カッター53で四角く切断し、その後に重ね合わせても同様にバイオチップ基板1を得ることができた。
【産業上の利用可能性】
【0128】
本発明のバイオチップ基板は、迅速に分析結果を知る必要がある救急医療現場での患者の生体成分の分析、犯罪現場で微量な血痕・体液・毛髪・生体組織細胞等の遺留品からDNAを抽出し、そのDNAを増やすPCR増幅し、電気泳動でDNAを特定するDNA解析、新規医薬品探索のための各種医薬候補品の物性・薬効評価、オーダーメード医療のための診断、ペプチドやDNAや機能性低分子の微量合成などに、用いられる。
【0129】
このバイオチップ基板は、それらの分析装置やマイクロリアクターに装着して、遺伝子診察・治療を行う医療分野や、生体試料を用いた犯罪捜査分野における各種分析、海洋や湖沼等の遠隔地での水中ロボットを用いた微生物探索、医薬品開発における各種合成に用いることができる。
【符号の説明】
【0130】
1はバイオチップ基板、10はカバー用樹脂基材、11aは被験液注入口、11bは薬液注入口、12a・12b・14はガス流入出口、15は被験液排出口、16はフィルム、17は放電管、19は打抜き刃、20はガス流路形成用樹脂基材、21aは被験液注入孔、21bは薬液注入孔、22a・22bはガス流入出孔、24a・24bはガス流路パターン、25は被験液排出孔、26はフィルム、27a・27bは放電管、28はインクジェットプリンタ、29は打抜き刃、30は被験液流路形成用樹脂基材、31aは被験液送液開始部位、31bは薬液反応部位、32a・32bはガス流入出孔、34は被験液流路パターン、35は被験液送液終了部位、36はフィルム、37a・37bは放電管、38はインクジェットプリンタ、39は打抜き刃、40はガス流路形成用樹脂基材、44a・44bはガス流路パターン、46はフィルム、47は放電管、48はインクジェットプリンタ、51はヒーター、52a・52bは加圧ローラー、53はカッターである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被験液流路のパターンを被験液流路形成用樹脂基材の表面側にマスキング剤で付す工程、
前記被験液流路内の被験液をガスの流入出により脈動させてその流路先方へ送り込ませるガス流路のパターンを、ガス流路形成用樹脂基材の表面側に、前記と同種又は異種のマスキング剤で、前記被験液流路に沿うように付す工程、
前記ガス流路形成用樹脂基材を前記被験液流路形成用樹脂基材の表裏面側の少なくとも何れかに重ね、カバー用樹脂基材で覆い、それらの接触面同士を夫々、前記被験液流路のパターン領域外と前記ガス流路のパターン領域外とで接着して、前記被験液流路と前記ガス流路とを形成する工程、
外界から前記被験液流路と前記ガス流路とへ夫々至る経路を設ける工程
を有することを特徴とするバイオチップ基板の製造方法。
【請求項2】
前記経路を設ける工程が、前記カバー用樹脂基材に、前記被験液流路への被験液注入口及び被験液排出口と前記ガス流路へのガス流入出口との各口部を開けておき、前記ガス流路形成用樹脂基材と前記被験液流路形成用樹脂基材とに、前記口部へ夫々重なり合うように、前記被験液流路へ至る被験液注入孔及び被験液排出孔とガス流路へ至るガス流入出孔とである前記経路を、開けておく工程であることを特徴とするバイオチップ基板の製造方法。
【請求項3】
前記マスキング剤が、フッ素化合物含有コーティング剤、離型剤、及び/又はハロゲン系溶媒、脂肪族系溶媒、芳香族系溶媒、変性シリコーン系溶媒であることを特徴とする請求項1に記載のバイオチップ基板の製造方法。
【請求項4】
前記マスキング剤を、塗布、噴霧、又は印刷により、付すことを特徴とする請求項1に記載のバイオチップ基板の製造方法。
【請求項5】
前記被験液流路のパターン領域外と前記ガス流路のパターン領域外とを、予めコロナ放電処理、プラズマ処理、又は紫外線処理することを特徴とする請求項1に記載のバイオチップ基板の製造方法。
【請求項6】
接着剤により、又は前記接触面から夫々露出している活性基を介する化学結合により、前記接着していることを特徴とする請求項1に記載のバイオチップ基板の製造方法。
【請求項7】
前記被験液流路形成用樹脂基材、前記ガス流路形成用樹脂基材、及び前記カバー用樹脂基材を、シリコーン樹脂、ポリエステル樹脂、ポリカーボネート樹脂、アクリル樹脂、オレフィン樹脂、シクロオレフィン樹脂、及びポリスチレン樹脂から選ばれる同種又は異種の樹脂で形成することを特徴とする請求項6に記載のバイオチップ基板の製造方法。
【請求項8】
前記被験液流路形成用樹脂基材、前記ガス流路形成用樹脂基材、及び前記カバー用樹脂基材の何れかを、加硫シリコーン樹脂、縮合シリコーン樹脂、及び付加シリコーン樹脂から選ばれる前記シリコーン樹脂で形成することを特徴とする請求項7に記載のバイオチップ基板の製造方法。
【請求項9】
前記被験液流路形成用樹脂基材、前記ガス流路形成用樹脂基材、及び前記カバー用樹脂基材のうち、何れかの重なり合うもの同士を、ヒドロシリル基含有化合物とビニル基含有化合物とを含有する前記シリコーン樹脂で形成しており、それらを、前記ビニル基含有化合物のビニル基への前記ヒドロシリル基含有化合物のヒドロシリル基の付加反応により形成されたケイ素−炭素の結合を介して、前記接着することを特徴とする請求項7に記載のバイオチップ基板の製造方法。
【請求項10】
前記被験液流路形成用樹脂基材、前記ガス流路形成用樹脂基材、及び前記カバー用樹脂基材のうち、何れかの重なり合うもの同士の一方が、その表面に有する水酸基、またはそれの脱水素基にヒドロシリル含有シリル基、ビニル含有シリル基、アルコキシシリル含有シリル基、及び加水分解性基含有シリル基から選ばれる少なくとも1種類の活性シリル基をシリルエーテル結合された活性基を有しており、他方が、前記活性シリル基と反応するヒドロシリル、ビニルシリル、ヒドロキシシリル、アルキルオキシシリル、アルケニルオキシシリル、アシルオキシシリル、イミノオキシシリル、アルキルアミノシリルから選ばれる少なくとも1種類の反応基を含有する化合物を含み、又はその表面に前記水酸基と反応する水酸基を有しており、前記同士を、前記の反応により形成されたケイ素−炭素結合とケイ素−酸素結合とエーテル結合との何れかの結合を介して、前記接着することを特徴とする請求項7に記載のバイオチップ基板の製造方法。
【請求項11】
前記被験液のバイオ成分の検出試薬と、前記被験液のバイオ成分への反応試薬と、バイオセンサとの少なくとも何れかを、前記被験液流路の途中に配置し、及び/又は、前記検出試薬と、前記反応試薬と、合成試薬との少なくとも何れかを、前記液注入口から注入することを特徴とする請求項1に記載のバイオチップ基板の製造方法。
【請求項12】
マスキング剤で付された被験液流路のパターンを表面側に有する被験液流路形成用樹脂基材と、
前記被験液流路内の被験液をガスの流入出により脈動させてその流路先方へ送り込ませるガス流路のパターンを、前記と同種又は異種のマスキング剤で、前記被験液流路に沿って、表面側に付されているガス流路形成用樹脂基材と、
前記被験液流路形成用樹脂基材の表裏面側の少なくとも何れかに重ねた前記ガス流路形成用樹脂基材を覆っているカバー用樹脂基材とが、
それらの接触面同士で夫々、前記被験液流路のパターン領域外と前記ガス流路のパターン領域外とにより接着しており、それによって、前記被験液流路と前記ガス流路とが形成されており、外界から前記被験液流路と前記ガス流路とへ夫々至る経路を有していることを特徴とするバイオチップ基板。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−133402(P2011−133402A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−294282(P2009−294282)
【出願日】平成21年12月25日(2009.12.25)
【出願人】(597096161)株式会社朝日ラバー (74)
【Fターム(参考)】