説明

バイオチップ検査装置

【課題】バイオチップの画像を高精度、かつ効率的に扱うことができるバイオチップ検査装置を提供する。
【解決手段】バイオチップ検査装置2は、光学検査装置1からの撮像信号に基づいてバイオチップの画像を取得する画像取得手段21と、画像取得手段21により取得された画像を対数スケール変換する画像変換手段22と、画像変換手段22により生成された画像をモニタ5に表示する表示手段23と、を備える。画像変換手段22により生成された画像は、記憶装置5に格納可能とされるとともに、記憶装置5に格納された画像は表示手段23によりモニタ5に表示可能とされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオチップの画像に基づいてバイオチップの検査を行うバイオチップ検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
生体高分子を検出する複数のサイトと、少なくとも1つのブランクサイトを持つバイオチップを用いた診断を行う場合、検査装置を用いてバイオチップの画像を取得し各サイトの発現量を解析する。この場合、ユーザは検査装置で得られた各サイトの発現量を対数スケール変換して解析するのが通例となっている。これは、発現量の変化を比ではなく差分で表した方が分散分析の際に都合がよいためである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−308504号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、発現量の解析に際して対数スケール変換を毎回行うことは煩雑な作業となる。また、ユーザが対数スケール変換を行う際に、ユーザごとに対数スケール変換後のゼロ点の取り方が異なるため、解析結果にばらつきを生じる。さらに、バイオチップ画像は、一般に高いビット画像(グレイスケールの多値画像)を扱うが、大量の高ビット画像を保存して管理するには、大容量の保存媒体が必要となる。ファイルサイズを抑制するためにビット数の低いグレイスケール画像に変換すると、本来、バイオチップ画像で注意深く解析したい低階調側の分解能が落ちてしまう。
【0005】
本発明の目的は、バイオチップの画像を高精度、かつ効率的に扱うことができるバイオチップ検査装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のバイオチップ検査装置は、バイオチップの画像に基づいて前記バイオチップの検査を行うバイオチップ検査装置において、バイオチップの画像を取得する画像取得手段と、前記画像取得手段により取得された前記バイオチップの画像の各サイトの階調の代表値、または前記各サイトを構成する各画素の階調値を対数スケール変換する画像変換手段を備えることを特徴とする。
このバイオチップ検査装置によれば、バイオチップの各サイトの階調の代表値、またはバイオチップを構成する各画素の階調値を対数スケール変換するので、バイオチップの画像を高精度、かつ効率的に扱うことができる。
【0007】
前記画像変換手段は前記バイオチップの各サイトの前記階調の前記代表値、または前記バイオチップを構成する各画素の前記階調値から前記バイオチップのブランクサイトの階調値を差引いた値を対数スケール変換してもよい。
【0008】
前記各サイトの前記階調の前記代表値は当該サイトを構成する画素の階調値の平均値または中央値であってもよい。
【0009】
前記画像変換手段は、前記バイオチップを構成する画素の前記階調値の平均値が、前記各サイトの前記階調の前記代表値に一致するような補正を、前記バイオチップを構成する画素の前記階調値に対して行ってもよい。
【0010】
前記画像変換手段により得られた画像を表示する表示手段を備えてもよい。
【0011】
前記表示手段は、各サイトの表示位置を、各サイトの実際の位置または予め規定された位置として、各サイトの画像を表示してもよい。
【発明の効果】
【0012】
本発明のバイオチップ検査装置によれば、バイオチップの各サイトの階調の代表値、またはバイオチップを構成する各画素の階調値を対数スケール変換するので、バイオチップの画像を高精度、かつ効率的に扱うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】実施例1のバイオチップ検査装置の構成を示すブロック図。
【図2】バイオチップ検査装置の動作手順を示すフローチャート。
【図3】元画像の階調値と変換後画像の階調値との関係を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明によるバイオチップ検査装置の実施形態について説明する。
【実施例1】
【0015】
以下、図1〜図3を参照して、本発明によるバイオチップ検査装置の実施例1について説明する。
【0016】
図1は、実施例1のバイオチップ検査装置の構成を示すブロック図である。
【0017】
図1に示すように、バイオチップ検査装置2は、バイオチップ3からの蛍光を読取る光学検査装置1からの撮像信号を受け、検査結果を出力する。このバイオチップ3の表面には、所定の基準ピッチに準じた間隔で円形状のサイトが2次元的に(マトリクス状に)配列している。
【0018】
光学検査装置1は、光源11と、光源11を屈折させるダイクロイックミラー12と、対物レンズ14と、蛍光を選択的に透過するフィルタ15と、レンズ16と、カメラ17と、を備える。
【0019】
また、バイオチップ検査装置2は、光学検査装置1からの撮像信号に基づいてバイオチップの画像を取得する画像取得手段21と、画像取得手段21により取得された画像を対数スケール変換する画像変換手段22と、画像変換手段22により生成された画像をモニタ5に表示する表示手段23と、を備える。
【0020】
図1に示すように、画像変換手段22により生成された画像は、記憶装置5に格納可能とされるとともに、記憶装置5に格納された画像は表示手段23によりモニタ5に表示可能とされる。
【0021】
次に、光学検査装置1およびバイオチップ検査装置2の動作について説明する。
【0022】
光学検査装置1の光源11からの励起光は、ダイクロイックミラー12および対物レンズ14を経て、バイオチップ3に照射される。バイオチップ3上の各サイトにおいて励起光により励起された蛍光は、対物レンズ14、ダイクロイックミラー12、フィルタ15およびレンズ16を経て、カメラ17に入射する。カメラ17の撮像面には、バイオチップ3の光学像が結像する。
【0023】
カメラ17から出力された撮像信号は、バイオチップ検査装置2に与えられる。
【0024】
図2のステップS1〜ステップS7は、バイオチップ検査装置2の動作手順を示すフローチャートである。
【0025】
図2のステップS1では、画像取得手段21によりバイオチップ3の画像(以下、「元画像」という。)を取得する。次に、ステップS2では、画像取得手段21において、バイオチップ3の元画像に対し光学読取装置1等に由来するノイズの補正を行う。
【0026】
次に、ステップS3では、画像変換手段22において、バイオチップ3の元画像に基づく像画像処理を行うことにより、バイオチップ3上の各サイトの位置を検出し、各サイトを構成する画素群の代表階調値(平均階調値または中央階調値)を算出する。
【0027】
次に、ステップS4では、ステップS3による算出結果に基づいて、画像変換手段22において、バイオチップ3上の複数のブランクサイトにおける上記代表階調値の平均(以下、「ゼロ点補正値」という。)を算出する。
【0028】
次に、ステップS5では、画像変換手段22において、通常サイト(上記ブランクサイト以外のサイト)の代表階調値から、上記ゼロ点補正値を差引いた階調値(以下、「シグナル階調値」という。)を算出する。
【0029】
次に、ステップS6では、画像変換手段22において、以下の式(1)によって、シグナル階調値を変換後の画像フォーマットに合わせて対数スケール変換する。
【0030】
【数1】

【0031】
例えば、元画像フォーマットおよび変換後画像フォーマットの最大値が16ビットグレイスケール画像フォーマットならば65535階調、8ビットグレイスケール画像ならば255階調となる。図3は、元画像の階調値と変換後画像の階調値との関係を示している。
【0032】
次に、ステップS7では、ステップS6での算出結果に基づいて、表示手段23により擬似的なバイオチップ画像を作成してモニタ5に表示し、処理を終了する。
【0033】
擬似的なバイオチップ画像とは、各サイトに対応する対数スケール変換後のシグナル階調値の表示パターンを並べた画像である。各表示パターン内の階調値は均一な値(シグナル階調値)である。
【0034】
各表示パターンは、実際のバイオチップ3のサイトと同一位置において、実際のバイオチップ3のサイトと同一形状とすることができる。また、表示パターンの表示位置を予め定め、あるいは表示パターンの大きさや形状を予め定めてもよい。この場合、表示パターンの表示位置、大きさあるいは形状は、実際のバイオチップ3上のサイトとは異なっていてもよい。表示パターンの並び順を、実際のサイトとは異なる並び順に設定してもよい。解析の目的等のユーザの都合に応じて並び替えることもできる。
【0035】
以上のように、本実施例のバイオチップ検査装置によれば、対数スケールに変換した画像を出力するので、解析時にユーザが改めて対数スケール変換する作業が不要となる。
【0036】
また、対数スケール変換する際の対数スケール変換後のゼロ点は、システムにおいて決定するため、ユーザによるばらつき等が発生しない。
【0037】
また、等分にスケール変換する場合と比較して、ファイルサイズを小さくしても、低階調側の分解能を維持できるため、解析に必要な情報を保ったままファイルのサイズを縮小できる。したがって、記憶装置5の記憶容量をいたずらに消費することを防止できる。
【0038】
元画像の画像フォーマットおよび変換後の画像フォーマットは、16ビットまたは8ビットグレイスケール画像に限らず任意のビット数とすることができる。例えば、6ビット、12ビット、14ビット、32ビットなどでもよい。また、ファイルサイズは大きくなるものの、変換後画像のビット数を元画像よりも大きくしてもよい。
【0039】
さらに、撮影感度(レンジ)を変えて複数回撮影することで、広いレンジで取得された元画像(特開2005−308504号公報参照)に対し、対数スケール変換を実行してもよい。
【実施例2】
【0040】
以下、実施例2のバイオチップ検査装置について説明する。
【0041】
本実施例のバイオチップ検査装置では、各サイトの表示パターン内の階調を均一階調とせず、元画像における画素ごとの階調を反映させる例を示す。以下、実施例1との相違点を中心に説明する。
【0042】
図2のステップS11〜ステップS17は、バイオチップ検査装置2の動作手順を示すフローチャートである。
【0043】
図2のステップS11では、画像取得手段21によりバイオチップ3の画像(以下、「元画像」という。)を取得する。次に、ステップS12では、画像取得手段21において、バイオチップ3の元画像に対し光学読取装置1等に由来するノイズの補正を行う。
【0044】
次に、ステップS13では、画像変換手段22において、バイオチップ3の元画像に基づく像画像処理を行うことにより、バイオチップ3上の各サイトの位置を検出し、各サイトを構成する画素群の代表階調値(平均階調値または中央階調値)を算出する。
【0045】
次に、ステップS14では、ステップS13による算出結果に基づいて、画像変換手段22において、バイオチップ3上の複数のブランクサイトにおける上記代表階調値の平均(以下、「ゼロ点補正値」という。)を算出する。
【0046】
次に、ステップS15では、画像変換手段22において、以下の式(2)に従い、通常サイト(上記ブランクサイト以外のサイト)を構成する各画素の階調値から、それぞれ上記ゼロ点補正値を差引いた階調値(以下、「ゼロ点補正後の階調値」という。)を算出する。ただし、減算結果がマイナスの場合は、この値(ゼロ点補正後の階調値)をゼロとする。
【0047】
ゼロ点補正後の階調値
=(各サイトを構成する各画素の元の階調値)−(ゼロ点補正値)・・・式(2)
【0048】
次に、ステップS16では、画像変換手段22において、以下の式(3)によって、画像ごとにゼロ点補正後の階調値を変換後の画像フォーマットに合わせて対数スケール変換し、新たな階調値によって置換したバイオチップ画像(以下、「変換画像」という。)を作成する。
【0049】
【数2】

【0050】
次に、ステップS17では、ステップS16で作成された変換画像を表示手段23によりモニタ5に表示し、処理を終了する。
このように、本実施例では、元画像を対数スケール変換して得たバイオチップ画像(変換画像)が生成され、記憶手段4に記憶されるとともにモニタ5に表示される。
【実施例3】
【0051】
以下、実施例3のバイオチップ検査装置について説明する。
【0052】
本実施例のバイオチップ検査装置では、各サイトの表示パターンに対し、元画像における画素ごとの階調を反映させつつ、その階調平均値をシグナル階調値(実施例1)と同様となるように補正する例を示す。以下、実施例2との相違点について説明する。
【0053】
図2のステップS21〜ステップS29は、バイオチップ検査装置2の動作手順を示すフローチャートである。
【0054】
図2のステップS21では、画像取得手段21によりバイオチップ3の画像(以下、「元画像」という。)を取得する。次に、ステップS22では、画像取得手段21において、バイオチップ3の元画像に対し光学読取装置1等に由来するノイズの補正を行う。
【0055】
次に、ステップS23では、画像変換手段22において、バイオチップ3の元画像に基づく像画像処理を行うことにより、バイオチップ3上の各サイトの位置を検出し、各サイトを構成する画素群の代表階調値(平均階調値または中央階調値)を算出する。
【0056】
次に、ステップS24では、ステップS23による算出結果に基づいて、画像変換手段22において、バイオチップ3上の複数のブランクサイトにおける上記平均階調値の平均(以下、「ゼロ点補正値」という。)を算出する。
【0057】
次に、ステップS25では、画像変換手段22において、式(2)に従い、通常サイト(上記ブランクサイト以外のサイト)を構成する各画素の階調値から、それぞれ上記ゼロ点補正値を差引いた階調値(以下、「ゼロ点補正後の階調値」という。)を算出する。ただし、減算結果がマイナスの場合は、この値(ゼロ点補正後の階調値)をゼロとする。
【0058】
次に、ステップS26では、画像変換手段22において、式(3)によって、画像ごとにゼロ点補正後の階調値を変換後の画像フォーマットに合わせて対数スケール変換し、新たな階調値によって置換したバイオチップ画像(以下、「変換画像」という。)を生成する。
【0059】
次に、ステップS27では、各サイトについて、実施例1のステップS6で対数スケール変換されるシグナル階調値と、対数スケール変換後におけるゼロ点補正後の階調値の代表階調値(平均階調値または中央階調値)との比(以下、「補正係数」という。)を式(4)に従って求める。
【0060】
補正係数
=シグナル階調値/ゼロ点補正後の階調値の代表階調値・・・式(4)
【0061】
次に、ステップS28では、バイオチップ画像の各サイトを構成する各画素に対して各サイトの補正係数をそれぞれ掛けて、新たなバイオチップ画像を作成する。
【0062】
次に、ステップS29では、表示手段23により、ステップS28において作成されたバイオチップ画像をモニタ5に表示し、処理を終了する。
【0063】
このように、本実施例では、各サイトの代表階調値がシグナル階調値に一致するような補正をしたバイオチップ画像を作成、表示している。
【0064】
以上説明したように、本発明のバイオチップ検査装置によれば、バイオチップの各サイトの階調の代表値、またはバイオチップを構成する各画素の階調値を対数スケール変換するので、バイオチップの画像を高精度、かつ効率的に扱うことができる。
【0065】
本発明の適用範囲は上記実施形態に限定されることはない。本発明は、バイオチップの画像に基づいてバイオチップの検査を行うバイオチップ検査装置に対し、広く適用することができる。
【符号の説明】
【0066】
21 画像取得手段
22 画像変換手段
23 表示手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バイオチップの画像に基づいて前記バイオチップの検査を行うバイオチップ検査装置において、
バイオチップの画像を取得する画像取得手段と、
前記画像取得手段により取得された前記バイオチップの画像の各サイトの階調の代表値、または前記各サイトを構成する各画素の階調値を対数スケール変換する画像変換手段を備えることを特徴とするバイオチップ検査装置。
【請求項2】
前記画像変換手段は前記バイオチップの各サイトの前記階調の前記代表値、または前記バイオチップを構成する各画素の前記階調値から前記バイオチップのブランクサイトの階調値を差引いた値を対数スケール変換することを特徴とする請求項1に記載のバイオチップ検査装置。
【請求項3】
前記各サイトの前記階調の前記代表値は当該サイトを構成する画素の階調値の平均値または中央値であることを特徴とする請求項1または2に記載のバイオチップ検査装置。
【請求項4】
前記画像変換手段は、前記バイオチップを構成する画素の前記階調値の平均値が、前記各サイトの前記階調の前記代表値に一致するような補正を、前記バイオチップを構成する画素の前記階調値に対して行うことを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載のバイオチップ検査装置。
【請求項5】
前記画像変換手段により得られた画像を表示する表示手段を備えることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載のバイオチップ検査装置。
【請求項6】
前記表示手段は、各サイトの表示位置を、各サイトの実際の位置または予め規定された位置として、各サイトの画像を表示することを特徴とする請求項5に記載のバイオチップ検査装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−217087(P2010−217087A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−66133(P2009−66133)
【出願日】平成21年3月18日(2009.3.18)
【出願人】(000006507)横河電機株式会社 (4,443)
【Fターム(参考)】