説明

バイオチップ用フィルター、およびバイオチップ用フィルターの製造方法、ならびにバイオチップ用フィルターを用いたバイオチップ

【課題】フィルターを汚染したり、目詰まりの原因となることがなく、さらには、ダイシングによって表面に凹凸が生じて、フィルターとしての製品価値が低下してしまうこともなく、歩留まりが向上し、コストを低減することが可能なバイオチップ用フィルター、およびバイオチップ用フィルターの製造方法、ならびにバイオチップ用フィルターを用いたバイオチップを提供する。
【解決手段】基板部を構成するフィルター本体と、フィルター本体に設けられた凹部を形成するウェルと、ウェルの底面を構成し、複数の貫通した細孔が形成されたフィルターが設けられたバイオチップ用フィルターであって、フィルター本体の輪郭形状が、ウェルの配置形状に略合致した形状である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、核酸、タンパク質などのバイオプローブを担持した粒子と、被検体中の標的物質とを反応または相互作用させる工程と、粒子を洗浄する工程とを含む標的物質のB/F分離や、被検体中の標的物質とバイオプローブとの反応または相互作用の光学的手段等による検出・同定などを行うためのバイオチップに用いられるバイオチップ用フィルター、およびバイオチップ用フィルターの製造方法、ならびにバイオチップ用フィルターを用いたバイオチップに関する。
【背景技術】
【0002】
目的とする塩基配列を有する核酸を精度良く検出するための方法として、この核酸と相補的な配列を有する核酸をプローブとして粒子へ担持させて、このプローブ担持粒子を含む溶液中で、プローブ担持粒子と被検体中の標的物質とを反応させる方法が知られている(特許文献1〜5)。
【0003】
この方法は、プローブ担持粒子が溶液中に三次元的に分散していることと、プローブ担持粒子と被検体とが相互に移動できることから、反応性が非常に高いという利点がある。例えば、ラテックス粒子表面のプローブに被検体中の標的物質を特異的に反応させ、B/F(Bound form / Free form)分離によって、特異的にプローブに反応し結合した標的物質の内容を解析する検出・同定方法が知られている。
【0004】
バイオチップには、そのプローブとしてDNAフラグメントまたはオリゴヌクレオチドを固定したDNAチップの他、抗原および抗体等のタンパク、あるいはこれらのタンパクと特異的に反応もしくは相互作用する化学物質を固定したプロティンチップ等もあるが、各種の用途において、よりB/F分離効率が高く、高感度での検出・同定が可能なバイオチップが求められている。
【0005】
このようなバイオチップとして、本出願人らは、被検体、洗浄液などの液体を通過させると共にプローブ担持粒子を通過させないバイオチップ用フィルターを用いる技術を、特許文献6(特開2005−148048号公報)に開示している。
【0006】
すなわち、この特許文献6に開示されるバイオチップ用フィルターは、バイオチップ用フィルターの製造方法として、組成の異なる複数の材質からなるプレート、例えば、アルミ/アルミナ、金属シリコン/シリカ、あるいは金属チタン/チタニアなどについて、それぞれ両側からパターンエッチングを行うことにより、フィルターとウェルを形成する方法が開示されている。
【0007】
具体的には、例えば、アルミナ、シリカ、チタニアなどの金属酸化物層について、この金属酸化物層と金属層との境界までをエッチングしてフィルターを形成し、次いで、アルミ、金属シリコン、金属チタンなどの金属層について、この金属層と金属酸化物層との境界までエッチングすることにより、ウェルとフィルターとが接合したバイオチップ用フィルターを作製できることが開示されている。
【0008】
この特許文献6のバイオチップ用フィルターの製造方法を示せば、概略下記のような方法である。
すなわち、先ず、図18(A)に示したように、シリコン基板本体101の両面に、SiO2の熱酸化膜102、104が形成されたシリコン基板100を準備する。
【0009】
そして、図18(B)に示したように、このシリコン基板100のSiO2の熱酸化膜
102の上面に、レジスト膜106を形成して、フォトリソグラフィーによって、フィルターの細孔に対応する凹部108を有するレジストパターン106を形成する。
【0010】
次に、図18(C)に示したように、レジストパターン106をマスクにして、SiO2の熱酸化膜102を、例えば、異方性ドライエッチング法などを用いて、エッチング除
去することによって、SiO2の熱酸化膜102の部分に、フィルターの細孔に対応する
凹部110を形成する。そして、図18(D)に示したように、レジスト膜106を剥離する。
【0011】
そして、天地を逆にした状態で、図19(A)に示したように、シリコン基板本体101のSiO2の熱酸化膜104の上面に、レジスト膜112を形成して、フォトリソグラ
フィーによって、ウェルに対応する凹部114を有するレジストパターン112を形成する。
【0012】
次に、図19(B)に示したように、レジストパターン112をマスクにして、SiO2の熱酸化膜104を、例えば、異方性ドライエッチング法などにより、エッチング除去
することによって、SiO2の熱酸化膜104の部分に、フィルターの細孔に対応する凹
部116を形成する。そして、図19(C)に示したように、レジスト膜112を剥離する。
【0013】
そして、図20(A)に示したように、SiO2の熱酸化膜104の部分をマスクとし
て、露出したシリコン基板本体101の部分をエッチング除去することによって、ウェル124を形成する。
【0014】
次に、図21(A)に示したように、SiO2の熱酸化膜102の下面に、ダイシング
テープ128を貼着した後、図21(B)に示したように、ダイシングを行うことによって、個々のバイオチップ用フィルター130に分断する。
【0015】
そして、図22(A)(B)に示したように、ダイシングテープ128を剥離して、個々のバイオチップ用フィルター130に分離する。
これによって、図22(C)に示したように、基板部を構成するシリコン基板本体101からなるフィルター本体132と、フィルター本体132に設けられた複数の凹部を形成するウェル124と、ウェル124の底面を構成し、複数の貫通した細孔110が形成されたフィルター136が設けられたバイオチップ用フィルター130が得られる。
【0016】
なお、図18〜図22では、説明の便宜上、1つのウェル124を示しているが、実際には、複数のウェル124が一定間隔離間して形成されている。
【特許文献1】米国特許第5,736,330号公報
【特許文献2】特開昭62−81566号公報
【特許文献3】特公平7−54324号公報
【特許文献4】特開平11−243997号公報
【特許文献5】特開2000−346842号公報
【特許文献6】特開2005−148048号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
しかしながら、このような特許文献6に開示される従来のバイオチップ用フィルター130では、図21(C)に示したように、ダイシングを行うことによって、個々のバイオ
チップ用フィルター130に分断することが行われているが、図23に示したように、シリコン基板100は、円盤形状であって、これをダイシングカッターやレーザーなどによって、升目状に縦横に配置された切断線B、Cに沿って、矩形状に切断するものである。
【0018】
従って、図24(A)に示したように、個々に分離された一つのバイオチップ用フィルター130は、矩形状のフィルター本体132と、複数の凹部を形成するウェル124が、複数個円形状に配列されたウェル部分125とから構成されるものである。
【0019】
しかしながら、図24(B)の斜線で示したフィルター本体132の部分は、フィルターとして使用しない部分であり、バイオチップ用フィルター130の取り扱い、装置への装着性、装置の小型化などを考慮すれば、できるだけこの面積が小さい方が好ましいものである。
【0020】
また、図23に示したように、シリコン基板100は、円盤形状であって、これをダイシングカッターやレーザーなどによって、升目状に縦横に配置された切断線B、Cに沿って、ダイシングによって、矩形状に切断する場合には、一つのシリコン基板100で作製できるバイオチップ用フィルター130の数も限定されてしまうことになる。このため、一つのシリコン基板100から、より多くのバイオチップ用フィルター130を作製することにより、生産性、コストを低減することが求められている。
【0021】
さらに、ダイシングカッターやレーザーなどによるダイシングによって、個々のバイオチップ用フィルター130に分断する場合には、ダイシングによる切粉が発生し、フィルター面に切粉が付着したり、目詰まりの原因ともなり、さらには、ダイシングによって切断面に凹凸が生じてしまい、フィルターをキットと呼ばれる治具に組み込む際にチップが破損したりする問題があった。これによりフィルターとしての製品価値が低下してしまうことにもなる。
【0022】
本発明は、このような現状に鑑み、フィルターとして使用しない部分であるフィルター本体の部分の面積が小さく、バイオチップ用フィルターの取り扱い、装置への装着性、装置の小型化などが図れ、一つの材料基板から、より多くのバイオチップ用フィルターを作製することができ、生産性、コストを低減することが可能なバイオチップ用フィルター、およびバイオチップ用フィルターの製造方法、ならびにバイオチップ用フィルターを用いたバイオチップを提供することを目的とする。
【0023】
また、本発明は、従来のように、ダイシングカッターやレーザーなどによるダイシングによって、個々のバイオチップ用フィルターに分断する必要がなく、ダイシングによる切粉が発生し、フィルターに付着したり、目詰まりの原因となることがなく、さらには、ダイシングによってチップ側面に凹凸が生じて、フィルターとしての製品価値が低下してしまうこともなく、組み立ての歩留まりが向上し、コストを低減することが可能なバイオチップ用フィルター、およびバイオチップ用フィルターの製造方法、ならびにバイオチップ用フィルターを用いたバイオチップを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0024】
本発明は、前述したような従来技術における課題及び目的を達成するために発明されたものであって、本発明のバイオチップ用フィルターは、
基板部を構成するフィルター本体と、
前記フィルター本体に設けられた凹部を形成するウェルと、
前記ウェルの底面を構成し、複数の貫通した細孔が形成されたフィルターが設けられたバイオチップ用フィルターであって、
前記フィルター本体の輪郭形状が、ウェルの配置形状に略合致した形状であることを特
徴とする。
【0025】
このようにフィルター本体の輪郭形状が、ウェルの配置形状に略合致した形状であれば、従来のように、フィルター本体の輪郭形状が矩形状であるバイオチップ用フィルターに比較して、フィルターとして使用しない部分であるフィルター本体の部分の面積が小さく、バイオチップ用フィルターの取り扱い、装置への装着性、装置の小型化などが図れ、一つの材料基板から、より多くのバイオチップ用フィルターを作製することができ、生産性、コストを低減することが可能である。
【0026】
また、本発明のバイオチップ用フィルターは、
前記フィルター本体が、金属基板から構成されているとともに、
前記フィルターが、金属から構成されていることを特徴とする。
【0027】
また、本発明のバイオチップ用フィルターは、
前記フィルター本体を構成する金属基板が、シリコンから構成されているとともに、
前記フィルターを構成する金属が、シリコンから構成されていることを特徴とする。
【0028】
このように構成することによって、フィルターが、例えば、シリコンなどの金属から形成されているので、例えば、約1〜10μmの厚さであり極めて薄いフィルターの強度、耐久性が、例えば、アルミナ、シリカ、チタニアなどの金属酸化物層で構成された従来のフィルターを有するバイオチップ用フィルターに比較して格段に向上することになる。
【0029】
従って、本発明のバイオチップ用フィルターを、例えば、核酸、タンパク質などのバイオプローブを担持した粒子と、被検体中の標的物質とを反応または相互作用させる工程と、粒子を洗浄する工程とを含む標的物質のB/F分離や、被検体中の標的物質とバイオプローブとの反応または相互作用の光学的手段等による検出・同定などを行うためのバイオチップに用いられるバイオチップ用フィルターに適用した場合に、これらのB/F分離や、被検体中の標的物質とバイオプローブとの反応または相互作用の光学的手段等による検出・同定を確実に行うことができる。
【0030】
また、バイオチップ用フィルターを製造する際にも、フィルターの強度が大きいので、フィルター部分が破損損傷することなく、歩留まりが向上し、コストを低減することができる。
【0031】
また、本発明のバイオチップ用フィルターは、
前記フィルター本体が、金属基板から構成されているとともに、
前記フィルターが、金属酸化物から構成されていることを特徴とする。
【0032】
また、本発明のバイオチップ用フィルターは、
前記フィルター本体を構成する金属基板が、シリコンから構成されているとともに、
前記フィルターを構成する金属酸化物が、SiO2から構成されていることを特徴とす
る。
【0033】
このようにフィルターが、例えば、SiO2などの金属酸化物から形成されているので
、フィルターの強度、耐久性が向上する。
また、本発明のバイオチップ用フィルターは、前記フィルター本体の輪郭形状が、平面視で、矩形以外の多角形形状であることを特徴とする。
【0034】
このようにフィルター本体の輪郭形状が、平面視で、矩形以外の多角形形状であれば、例えば、円形状に配列されたウェル部分とほぼ同じ形状であるので、従来のように、フィ
ルター本体の輪郭形状が矩形状であるバイオチップ用フィルターに比較して、フィルターとして使用しない部分であるフィルター本体の部分の面積が、極めて小さくなり、バイオチップ用フィルターの取り扱い、装置への装着性、装置の小型化などが図れ、一つの材料基板から、さらに多くのバイオチップ用フィルターを作製することができ、生産性、コストをさらに低減することが可能である。
【0035】
また、本発明のバイオチップ用フィルターは、前記フィルター本体の輪郭形状が、平面視で、少なくとも部分的に曲線部分を有する形状であることを特徴とする。
このようにフィルター本体の輪郭形状が、平面視で、少なくとも部分的に曲線部分を有する形状でであれば、例えば、円形状に配列されたウェル部分に、この少なくとも部分的に形成された曲線部分によって、ほぼ同じ形状とすることができるので、従来のように、フィルター本体の輪郭形状が矩形状であるバイオチップ用フィルターに比較して、フィルターとして使用しない部分であるフィルター本体の部分の面積が、極めて小さくなり、バイオチップ用フィルターの取り扱い、装置への装着性、装置の小型化などが図れ、一つの材料基板から、さらに多くのバイオチップ用フィルターを作製することができ、生産性、コストをさらに低減することが可能である。
【0036】
また、本発明のバイオチップ用フィルターは、前記フィルター本体の輪郭形状が、平面視で略円形形状であることを特徴とする。
このようにフィルター本体の輪郭形状が、平面視で略円形形状であれば、円形状に配列されたウェル部分とほぼ同じ形状であるので、従来のように、フィルター本体の輪郭形状が矩形状であるバイオチップ用フィルターに比較して、フィルターとして使用しない部分であるフィルター本体の部分の面積が、極めて小さくなり、バイオチップ用フィルターの取り扱い、装置への装着性、装置の小型化などが図れ、一つの材料基板から、さらに多くのバイオチップ用フィルターを作製することができ、生産性、コストをさらに低減することが可能である。
【0037】
また、本発明のバイオチップ用フィルターは、前記フィルター本体の輪郭形状が、一対の平行部分を有する形状であることを特徴とする。
このようにフィルター本体の輪郭形状が、一対の平行部分を有する形状であれば、この一対の平行部分を、例えば、バイオチップ用フィルターをハンドリングするハンドリング装置の把持部分として使用することができ、操作性が向上することになる。
【0038】
また、本発明のバイオチップ用フィルターは、前記フィルター本体の輪郭形状が、位置決め部を有する形状であることを特徴とする。
このようにフィルター本体の輪郭形状が、位置決め部を有する形状であれば、例えば、切欠部、位置決め孔からなる位置決め部を位置決めとして、装置に組み込む際に、正確に位置決めでき、操作性が向上するとともに、正確な検出・同定を確実に行うことができる。
【0039】
また、本発明のバイオチップ用フィルターの製造方法は、前述に記載のバイオチップ用フィルターを製造する方法であって、
金属基板と、金属基板の上面に形成した金属酸化物層と、金属酸化物層の上面に形成した金属薄膜層とからなるウェーハを用いて、
前記金属酸化物層を介して、上下面から金属薄膜層と金属基板をそれぞれエッチング除去することによって、
前記ウェルと、ウェルの底面を構成し、複数の貫通した細孔が形成され、金属から形成されたフィルターとを形成するとともに、
前記フィルター本体の輪郭形状に対応した切断分離貫通孔を形成する、
ことを特徴とする。
【0040】
このように構成することによって、金属酸化物層を介して、上下面から金属薄膜層と金属基板をそれぞれエッチング除去することによって、ウェルと、ウェルの底面を構成し、複数の貫通した細孔が形成され、金属から形成されたフィルターとが形成できる。
【0041】
しかも、このエッチング処理において、同時にフィルター本体の輪郭形状に対応した切断分離貫通孔を形成することができ、この切断分離貫通孔を介して、フィルター本体を切断分離することができる。
【0042】
従って、複雑な工程となることなく、簡単に、金属から形成されたフィルターを備え、フィルター本体の輪郭形状が、ウェルの配置形状に略合致した形状、例えば、平面視で、矩形以外の多角形形状、または、少なくとも部分的に曲線部分を有する形状であるバイオチップ用フィルターを製造することができ、しかも、製造工程においても、フィルターの破損損傷がなく歩留まりが向上し、コストを低減することが可能である。
【0043】
さらに、エッチング処理において、同時にフィルター本体の輪郭形状に対応した切断分離貫通孔を形成することができ、この切断分離貫通孔を介して、フィルター本体を切断分離することができるので、従来のように、ダイシングカッターやレーザーなどによるダイシングによって、個々のバイオチップ用フィルターに分断する必要がない。
【0044】
従って、従来のように、ダイシングによる切粉が発生し、フィルターを汚染したり、目詰まりの原因となることがなく、さらには、ダイシングによって表面に凹凸が生じて、フィルターとしての製品価値が低下してしまうこともなく、歩留まりが向上し、コストを低減することが可能である。
【0045】
また、本発明のバイオチップ用フィルターの製造方法は、前述に記載のバイオチップ用フィルターを製造する方法であって、
金属基板と、金属基板の上面に形成した金属酸化物層と、金属酸化物層の上面に形成した金属薄膜層とからなるウェーハを用いて、
前記ウェーハの金属薄膜層をエッチング除去することによって、前記フィルターの細孔を形成すべき細孔用凹部と、切断分離貫通孔を形成すべき分離貫通用凹部とを形成する凹部形成工程と、
前記ウェーハの金属基板をエッチング除去することによって、前記金属酸化物層を介して、前記細孔用凹部に対峙するようにウェルを形成するとともに、分離貫通用凹部に対峙するように分離貫通切断用凹部を形成するウェル形成工程と、
前記金属酸化物層をエッチング除去して、前記フィルターの細孔を形成すべき細孔用凹部と、ウェルを連通させて、複数の貫通した細孔を形成するとともに、分離貫通用凹部と分離貫通切断用凹部を連通させて、切断分離貫通孔を形成するフィルター形成工程と、
を備えることを特徴とする。
【0046】
このように構成することによって、凹部形成工程において、ウェーハの金属薄膜層をエッチング除去することによって、フィルターの細孔を形成すべき細孔用凹部と、切断分離貫通孔を形成すべき分離貫通用凹部とを形成して、ウェル形成工程において、ウェーハの金属基板をエッチング除去することによって、金属酸化物層を介して、細孔用凹部に対峙するようにウェルを形成するとともに、分離貫通用凹部に対峙するように分離貫通切断用凹部を形成し、その後、フィルター形成工程において、金属酸化物層をエッチング除去して、フィルターの細孔を形成すべき細孔用凹部と、ウェルを連通させて、複数の貫通した細孔が形成するとともに、分離貫通用凹部と分離貫通切断用凹部を連通させて、切断分離貫通孔を形成することができる。
【0047】
従って、これらの凹部形成工程、ウェル形成工程、およびフィルター形成工程を実施することで、複雑な工程となることなく、簡単に、金属から形成されたフィルターを備え、フィルター本体の輪郭形状が、ウェルの配置形状に略合致した形状、例えば、平面視で、矩形以外の多角形形状、または、少なくとも部分的に曲線部分を有する形状であるバイオチップ用フィルターを製造することができ、しかも、製造工程においても、フィルターの破損損傷がなく歩留まりが向上し、コストを低減することが可能である。
【0048】
また、本発明のバイオチップ用フィルターの製造方法は、前述に記載のバイオチップ用フィルターを製造する方法であって、
シリコン基板と、シリコン基板の上面に形成したSiO2層と、SiO2層の上面に形成したシリコン薄膜層とからなるSOIウェーハ(Silicon On Insulator)を用いて、
前記SiO2層を介して、上下面からシリコン薄膜層とシリコン基板をそれぞれエッチ
ング除去することによって、
前記ウェルと、ウェルの底面を構成し、複数の貫通した細孔が形成され、シリコンから形成されたフィルターとを形成するするとともに、
前記フィルター本体の輪郭形状に対応した切断分離貫通孔を形成する、
ことを特徴とする。
【0049】
このように構成することによって、SiO2層を介して、上下面からシリコン薄膜層と
シリコン基板をそれぞれエッチング除去することによって、ウェルと、ウェルの底面を構成し、複数の貫通した細孔が形成され、シリコンから形成されたフィルターと、フィルター本体の輪郭形状に対応した切断分離貫通孔とが形成できる。
【0050】
従って、複雑な工程となることなく、簡単に、シリコンから形成されたフィルターを備え、フィルター本体の輪郭形状が、ウェルの配置形状に略合致した形状、例えば、平面視で、矩形以外の多角形形状、または、少なくとも部分的に曲線部分を有する形状であるバイオチップ用フィルターを製造することができ、しかも、製造工程においても、フィルターの破損損傷がなく歩留まりが向上し、コストを低減することが可能である。
【0051】
また、本発明のバイオチップ用フィルターの製造方法は、前述に記載のバイオチップ用フィルターを製造する方法であって、
シリコン基板と、シリコン基板の上面に形成したSiO2層と、SiO2層の上面に形成したシリコン薄膜層とからなるSOIウェーハ(Silicon On Insulator)を用いて、
前記SOIウェーハのシリコン薄膜層をエッチング除去することによって、前記フィルターの細孔用凹部と、切断分離貫通孔を形成すべき分離貫通用凹部とを形成する凹部形成工程と、
前記SOIウェーハのシリコン基板をエッチング除去することによって、前記SiO2
層を介して、前記細孔用凹部に対峙するようにウェルを形成するとともに、分離貫通用凹部に対峙するように分離貫通切断用凹部を形成するウェル形成工程と、
前記SiO2層をエッチング除去して、前記フィルターの細孔を形成すべき細孔用凹部
と、ウェルを連通させて、複数の貫通した細孔を形成するとともに、分離貫通用凹部と分離貫通切断用凹部を連通させて、切断分離貫通孔を形成するフィルター形成工程と、
を備えることを特徴とする。
【0052】
このように構成することによって、凹部形成工程において、SOIウェーハのシリコン薄膜層をエッチング除去することによって、フィルターの細孔を形成すべき細孔用凹部と、切断分離貫通孔を形成すべき分離貫通用凹部を形成して、ウェル形成工程において、SOIウェーハのシリコン基板をエッチング除去することによって、SiO2層を介して、
細孔用凹部に対峙するようにウェルを形成するとともに、分離貫通用凹部に対峙するように分離貫通切断用凹部を形成し、その後、フィルター形成工程にて、SiO2層をエッチ
ング除去して、フィルターの細孔を形成すべき細孔用凹部と、ウェルを連通させて、複数の貫通した細孔が形成するとともに、分離貫通用凹部と分離貫通切断用凹部を連通させて、切断分離貫通孔を形成することができる。
【0053】
従って、これらの凹部形成工程、ウェル形成工程、およびフィルター形成工程を実施することで、複雑な工程となることなく、簡単に、シリコンから形成されたフィルターを備え、フィルター本体の輪郭形状が、ウェルの配置形状に略合致した形状、例えば、平面視で、矩形以外の多角形形状、または、少なくとも部分的に曲線部分を有する形状であるバイオチップ用フィルターを製造することができ、しかも、製造工程においても、フィルターの破損損傷がなく歩留まりが向上し、コストを低減することが可能である。
【0054】
また、本発明のバイオチップ用フィルターの製造方法は、前述に記載のバイオチップ用フィルターを製造する方法であって、
金属基板と、金属基板の上下面に形成した金属酸化物層ととからなるウェーハを用いて、
前記一方の金属酸化物層を介して、上下面から他方の金属酸化物層と金属基板をそれぞれエッチング除去することによって、
前記ウェルと、ウェルの底面を構成し、複数の貫通した細孔が形成され、金属酸化物から形成されたフィルターとを形成するとともに、
前記フィルター本体の輪郭形状に対応した切断分離貫通孔を形成する、
ことを特徴とする。
【0055】
このように構成することによって、金属酸化物層を介して、上下面から金属酸化物層と金属基板をそれぞれエッチング除去することによって、ウェルと、ウェルの底面を構成し、複数の貫通した細孔が形成され、金属酸化物から形成されたフィルターとが形成できる。
【0056】
しかも、このエッチング処理において、同時にフィルター本体の輪郭形状に対応した切断分離貫通孔を形成することができ、この切断分離貫通孔を介して、フィルター本体を切断分離することができる。
【0057】
従って、複雑な工程となることなく、簡単に、金属酸化物から形成されたフィルターを備え、フィルター本体の輪郭形状が、ウェルの配置形状に略合致した形状、例えば、平面視で、矩形以外の多角形形状、または、少なくとも部分的に曲線部分を有する形状であるバイオチップ用フィルターを製造することができ、しかも、製造工程においても、フィルターの破損損傷がなく歩留まりが向上し、コストを低減することが可能である。
【0058】
さらに、エッチング処理において、同時にフィルター本体の輪郭形状に対応した切断分離貫通孔を形成することができ、この切断分離貫通孔を介して、フィルター本体を切断分離することができるので、従来のように、ダイシングカッターやレーザーなどによるダイシングによって、個々のバイオチップ用フィルターに分断する必要がない。
【0059】
従って、従来のように、ダイシングによる切粉が発生し、フィルターを汚染したり、目詰まりの原因となることがなく、さらには、ダイシングによって表面に凹凸が生じて、フィルターとしての製品価値が低下してしまうこともなく、歩留まりが向上し、コストを低減することが可能である。
【0060】
また、本発明のバイオチップ用フィルターの製造方法は、前述に記載のバイオチップ用フィルターを製造する方法であって、
金属基板と、金属基板の上下面に形成した金属酸化物層とからなるウェーハを用いて、
前記ウェーハの一方の金属酸化物層をエッチング除去することによって、前記フィルターの細孔を形成すべき細孔用凹部と、切断分離貫通孔を形成すべき分離貫通用凹部とを形成する凹部形成工程と、
前記ウェーハの金属基板をエッチング除去することによって、前記金属酸化物層を介して、前記細孔用凹部に連通するようにウェルを形成するとともに、分離貫通用凹部に連通するように切断分離貫通孔を形成するウェル形成工程と、
を備えることを特徴とする。
【0061】
このように構成することによって、凹部形成工程において、ウェーハの一方の金属酸化物層をエッチング除去することによって、フィルターの細孔を形成すべき細孔用凹部と、切断分離貫通孔を形成すべき分離貫通用凹部とを形成して、ウェル形成工程において、ウェーハの金属基板をエッチング除去することによって、金属酸化物層を介して、前記細孔用凹部に連通するようにウェルを形成するとともに、分離貫通用凹部に連通するように切断分離貫通孔を形成することができる。
【0062】
従って、これらの凹部形成工程、ウェル形成工程を実施することで、複雑な工程となることなく、簡単に、金属酸化物から形成されたフィルターを備え、フィルター本体の輪郭形状が、ウェルの配置形状に略合致した形状、例えば、平面視で、矩形以外の多角形形状、または、少なくとも部分的に曲線部分を有する形状であるバイオチップ用フィルターを製造することができ、しかも、製造工程においても、フィルターの破損損傷がなく歩留まりが向上し、コストを低減することが可能である。
【0063】
また、本発明のバイオチップ用フィルターの製造方法は、前述に記載のバイオチップ用フィルターを製造する方法であって、
シリコン基板と、シリコン基板の上下面に形成したSiO2層とからなるウェーハを用
いて、
前記一方のSiO2層を介して、上下面からSiO2層とシリコン基板をそれぞれエッチング除去することによって、
前記ウェルと、ウェルの底面を構成し、複数の貫通した細孔が形成され、SiO2から
形成されたフィルターとを形成するするとともに、
前記フィルター本体の輪郭形状に対応した切断分離貫通孔を形成する、
ことを特徴とする。
【0064】
このように構成することによって、SiO2層を介して、上下面からSiO2層とシリコン基板をそれぞれエッチング除去することによって、ウェルと、ウェルの底面を構成し、複数の貫通した細孔が形成され、SiO2から形成されたフィルターと、フィルター本体
の輪郭形状に対応した切断分離貫通孔を形成することができる。
【0065】
従って、複雑な工程となることなく、簡単に、シリコンから形成されたフィルターを備え、フィルター本体の輪郭形状が、ウェルの配置形状に略合致した形状、例えば、平面視で、矩形以外の多角形形状、または、少なくとも部分的に曲線部分を有する形状であるバイオチップ用フィルターを製造することができ、しかも、製造工程においても、フィルターの破損損傷がなく歩留まりが向上し、コストを低減することが可能である。
【0066】
また、本発明のバイオチップ用フィルターの製造方法は、前述に記載のバイオチップ用フィルターを製造する方法であって、
シリコン基板と、シリコン基板の上下面に形成したSiO2層とからなるウェーハを用
いて、
前記一方のSiO2層をエッチング除去することによって、前記フィルターの細孔用凹
部と、切断分離貫通孔を形成すべき分離貫通用凹部とを形成する凹部形成工程と、
前記ウェーハの他方のSiO2層とシリコン基板をエッチング除去することによって、
前記一方のSiO2層を介して、連通するようにウェルを形成するとともに、分離貫通用
凹部に連通するように切断分離貫通孔を形成するウェル形成工程と、
を備えることを特徴とする。
【0067】
このように構成することによって、凹部形成工程において、一方のSiO2層をエッチ
ング除去することによって、フィルターの細孔用凹部と、切断分離貫通孔を形成すべき分離貫通用凹部を形成して、ウェル形成工程において、ウェーハの他方のSiO2層とシリ
コン基板をエッチング除去することによって、一方のSiO2層を介して、連通するよう
にウェルを形成するとともに、分離貫通用凹部に連通するように切断分離貫通孔を形成することができる。
【0068】
従って、これらの凹部形成工程、ウェル形成工程を実施することで、複雑な工程となることなく、簡単に、SiO2から形成されたフィルターを備え、フィルター本体の輪郭形
状が、ウェルの配置形状に略合致した形状、例えば、平面視で、矩形以外の多角形形状、または、少なくとも部分的に曲線部分を有する形状であるバイオチップ用フィルターを製造することができ、しかも、製造工程においても、フィルターの破損損傷がなく歩留まりが向上し、コストを低減することが可能である。
【0069】
また、本発明のバイオチップは、前述のいずれかに記載のバイオチップ用フィルターを備えることを特徴とする。
また、本発明のバイオチップは、前述のいずれかに記載のバイオチップ用フィルターの製造方法で得られたバイオチップ用フィルターを備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0070】
本発明によれば、フィルター本体の輪郭形状が、ウェルの配置形状に略合致した形状であるので、従来のように、フィルター本体の輪郭形状が矩形状であるバイオチップ用フィルターに比較して、フィルターとして使用しない部分であるフィルター本体の部分の面積が小さく、バイオチップ用フィルターの取り扱い、装置への装着性、装置の小型化などが図れ、一つの材料基板から、より多くのバイオチップ用フィルターを作製することができ、生産性、コストを低減することが可能である。
【0071】
また、本発明によれば、金属酸化物層を介して、上下面からエッチング除去することによって、ウェルと、ウェルの底面を構成し、複数の貫通した細孔が形成され、金属から形成されたフィルターとが形成できる。
【0072】
しかも、このエッチング処理において、同時にフィルター本体の輪郭形状に対応した切断分離貫通孔を形成することができ、この切断分離貫通孔を介して、フィルター本体を切断分離することができる。
【0073】
従って、複雑な工程となることなく、簡単に、フィルターを備え、フィルター本体の輪郭形状が、ウェルの配置形状に略合致した形状、例えば、平面視で、矩形以外の多角形形状、または、少なくとも部分的に曲線部分を有する形状であるバイオチップ用フィルターを製造することができ、しかも、製造工程においても、フィルターの破損損傷がなく歩留まりが向上し、コストを低減することが可能である。
【0074】
さらに、エッチング処理において、同時にフィルター本体の輪郭形状に対応した切断分離貫通孔を形成することができ、この切断分離貫通孔を介して、フィルター本体を切断分離することができるので、従来のように、ダイシングカッターやレーザーなどによるダイシングによって、個々のバイオチップ用フィルターに分断する必要がない。
【0075】
従って、従来のように、ダイシングによる切粉が発生し、フィルターを汚染したり、目詰まりの原因となることがなく、さらには、ダイシングによって表面に凹凸が生じて、フィルターとしての製品価値が低下してしまうこともなく、歩留まりが向上し、コストを低減することが可能である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0076】
以下、本発明の実施の形態(実施例)を図面に基づいてより詳細に説明する。
図1は、本発明のバイオチップ用フィルターの上面図、図2は、図1のA−A線での断面図、図3は、ひとつのウェルの拡大平面図、図4は、ひとつのウェルの部分拡大断面図である。
【0077】
図1〜図2において、符号10は、全体で本発明のバイオチップ用フィルターを示している。
本発明のバイオチップ用フィルター10は、例えば、核酸、タンパク質などのバイオプローブを担持した粒子と、被検体中の標的物質とを反応または相互作用させる工程と、粒子を洗浄する工程とを含む標的物質のB/F分離や、被検体中の標的物質とバイオプローブとの反応または相互作用の光学的手段等による検出・同定などを行うためのバイオチップに用いられるフィルターである。
【0078】
本発明のバイオチップ用フィルター10は、図1および図2に示したように、平面視で略円形の円板形状であって、基板部を構成するフィルター本体12を備えている。
また、図3および図4に示したように、この1つのウェル14には、ウェル14の底面を構成し、複数の貫通した細孔16が形成されたフィルター18が設けられている。
【0079】
このフィルター18は、被検体あるいは被検体を溶解もしくは分散した媒体などの液体を通過させるとともに、ウェル14内に収納された、例えば、被検体と相互作用するプローブ担持粒子が外側へ排出しないように構成されている。
【0080】
この場合、図3および図4の実施例では、細孔16は、均一な間隔で一定の配列パターンとなるように形成されている。また、細孔16は、均一な孔径を有するストレートな円筒形状の細孔となるように形成されている。
【0081】
この場合、「均一な孔径」とは、孔径の誤差がCV(Coefficient of Variation)値で、20%以下、好ましくは、10%以下であることを意味する。孔径誤差がCV値で20%以下であるような細孔は、後述する方法によって作製可能であり、ウェル14内に収納されるプローブ担持粒子と孔径との寸法差を僅少とすることができる。
【0082】
このように均一な孔径を有するフィルターにおいて、その細孔の孔径は、特に限定されないが、通常は、0.1μm〜100μm、好ましくは、1μm〜50μm、より好ましくは、2μm〜15μmである。
【0083】
また「均一な孔間隔」とは、孔間隔の誤差が、CV(Coefficient of Variation)値で15%以下であることを意味する。孔間隔には特に限定はないが、孔間隔があまりに狭いとフィルターの強度が弱くなり、また孔間隔があまりに広いと開口率が下がることから、通常は孔径の2倍以下であり、且つ1μm〜10μmであることが好ましい。なお、「孔間隔」とは隣接する各孔の間における孔が空いていない部分の最短距離のことである。
【0084】
また、「ストレート」な細孔とは、細孔が途中で分岐することなく形成されていることを意味する。
また、このような垂線が実質的にずれていない細孔であり、且つフィルター18の一次側(上面側)の孔径が二次側(下面側)の孔径と多少異なっているものであってもよい。
【0085】
また、細孔16の形状としては、特に限定されるものではなく、例えば、円柱、四角錐、多角錐などの形状の貫通孔のようにいずれの形状であってもよいが、メニスカスを最小限にする点から、細孔の貫通方向と垂直な細孔断面の形状は、鈍角形状あるいは円形であることが望ましい。
【0086】
但し、ウェル14の容積が所定量以上、例えば、0.1マイクロリッター以上の場合には、メニスカスはそれほど問題とならず、四角柱や四角錐などの形状の貫通孔であっても問題ない。
【0087】
このようにストレートな細孔16とすることにより、フィルター18を形成する細孔長さが最小となるため、細孔壁との接触面積が減少し、濾過に伴う圧送抵抗を最小限とすることができる。
【0088】
また、プローブ担持粒子がフィルター18の一次側に堆積して目詰まりを起こした場合であっても、粒子がフィルター18の内部に入り込まずにフィルター18の表面に留まることになる(いわゆる完全閉塞モデルとなる)。従って、フィルター18二次側からのフラッシングによって粒子をフィルター18表面から一次側へ容易に分散させることができる。
【0089】
このため、フィルター18の目詰まりを再度解消して再生させることができ、フィルター18の寿命を延ばすことができる。
以上のように、フィルター18に均一な孔径を有するストレートな細孔を、均一な孔間隔で形成することによって、プローブ担持粒子は一次側の開口上に配列され、必要に応じて、被検体などの液体を二次側からフラッシングして、粒子を一次側へ分散させることも可能であり、被検体とプローブ担持粒子との反応や検出を容易に行うことができる。
【0090】
さらに、プローブ担持粒子がフィルター18の二次側に排出されることが許されず、粒子を100%捕捉する必要がある場合には、フィルター18の孔径を、粒子の最小径よりも小さくするように、フィルター18の孔径や粒子サイズなどを考慮することで、透過係数と濾過効率を低下させることなく100%の粒子捕捉が可能である。
【0091】
また、フィルター18の厚さは、好ましくは、1〜10μm、より好ましくは、2〜7μmである。フィルター18の厚さが、10μmよりも大きい場合、液体の濾過時に濾過抵抗が大きくなり、フィルター18の厚さが1μm未満である場合、フィルター18の機械的な強度が不足する。
【0092】
さらに、フィルター18の開口率は、好ましくは、15〜60%、より好ましくは、20〜50%である。開口率が15%未満である場合、濾過効率が低下し、開口率が60%よりも大きい場合、フィルター18の機械的な強度が不足する。
【0093】
一方、ウェル14周辺部には、図3および図4に示したように、フィルター本体12において、細孔16が形成されていない部分があり、フィルター18と連結されていることが、機械的な強度の面では好ましい。
【0094】
また、この実施例では、ウェル14の径と高さには、特に限定はなく、必要な粒子の個数と反応容積にしたがって、任意に設定可能である。
ただし、ウェル14の高さは、ウェル14の穴をエッチング形成する場合の加工性を考
慮すれば、径/高さの比が0.1から3程度が望ましい。
【0095】
さらに、ウェル14の形状も特に限定されるものではなく、例えば、円柱、四角錐、多角錐などの形状の凹部のいずれの形状であってもよいが、メニスカスを最小限にするためにウェル14の貫通方向と垂直な細孔断面の形状は、鈍角形状あるいは円形であることが望ましい。
【0096】
また、この実施例では、複数のウェル14を有するバイオチップ用フィルター10としたが、単一のウェル14を有するバイオチップ用フィルター10とすることももちろん可能であって、ウェル14の数、配置形状は特に限定されるものではない。
【0097】
また、複数のウェル14を有するバイオチップ用フィルター10では、これらのウェル14の径は、必ずしも同一である必要はなく、収納する粒子の数や反応容積を考慮して、異なる径のウェル14を設けることも可能である。
【0098】
さらに、フィルター本体12には、その中央部分に、一定間隔離間して、複数の凹部を形成する円柱形状の凹部を形成するウェル14が形成されている。そして、これらの複数のウェル14は、図1に示したように、平面視で略円形状に配置されている。
【0099】
そして、上記したように、フィルター本体12は、このウェル14の配置形状に合わせて、略円形状に構成されている。
すなわち、フィルター本体12の輪郭形状が、ウェル14の配置形状に略合致した形状となるように構成されている。
【0100】
従って、フィルター本体12の輪郭形状が、平面視で略円形形状であれば、円形状に配列されたウェル部分とほぼ同じ形状であるので、従来のように、フィルター本体の輪郭形状が矩形状であるバイオチップ用フィルターに比較して、フィルターとして使用しない部分である、フィルター本体12のウェル14の配置部分の外周側から、フィルター本体12の外周部分の面積が小さくなる。
【0101】
従って、バイオチップ用フィルターの取り扱い、装置への装着性、装置の小型化などが図れ、一つの材料基板から、より多くのバイオチップ用フィルターを作製することができ、生産性、コストを低減することが可能である。
【0102】
すなわち、図5(A)に示したように、従来のように、円形状に配列した複数のウェル124を有し、矩形状のフィルター本体132を備えたバイオチップ用フィルター130を、一つの材料基板から切断分離する場合に比較して、図5(B)に示したように、本発明のバイオチップ用フィルター10のように、ウェル14の配置形状に略合致した形状のフィルター本体12を有する場合には、より小型のチップ面積を有するバイオチップ用フィルター10を切断分離することができる。
【0103】
なお、上記実施例では、フィルター本体12の形状を、略円形状に構成したが、「ウェルの配置形状に略合致した形状」とは、フィルター本体12の形状が、必ずしも、ウェル14の配置形状に同一の形状に限らず、細孔16が存在しないフィルターの外周部分の面積が小さくなるような形状であれば、特に限定されるものではない。
【0104】
従って、フィルター本体12の輪郭形状が、平面視で、矩形以外の多角形形状であっても良く、例えば、図6(A)に示したように、五角形状のフィルター本体12、図6(B)に示したように、六角形のフィルター本体12、図6(C)に示したように、八角形のフィルター本体12などとすることができる。
【0105】
また、フィルター本体12の輪郭形状が、平面視で、少なくとも部分的に曲線部分を有する形状であってもよく、例えば、図7(A)に示したように、矩形の隅角部12dを曲線とした形状、図7(B)に示したように、六角形のフィルター本体12の隅角部12dを曲線としたような形状とすることもできる。
【0106】
さらには、図7(C)に示したように、フィルター本体12の輪郭形状が、一対の平行部分12eを有する形状であっても良い。
このようにフィルター本体12の輪郭形状が、一対の平行部分12eを有する形状であれば、この一対の平行部分12eを、例えば、バイオチップ用フィルターをハンドリングするハンドリング装置の把持部分として使用することができ、操作性が向上することになる。
【0107】
また、図8(A)に示したように、フィルター本体12の輪郭形状が、切欠部12fからなる位置決め部を有する形状であってもよい。このようにフィルター本体12の輪郭形状が、切欠部12fを有する形状であれば、この切欠部12fを位置決めとして、装置に組み込む際に、正確に位置決めでき、操作性が向上するとともに、正確な検出・同定を確実に行うことができる。
【0108】
なお、切欠部12fの位置、形状、数などは、特に限定されるものではなく、適宜変更可能である。また、位置決め部は、このような切欠部12fに限定されるものではなく、例えば、図8(B)に示したように、位置決め孔12gを有するものであってもよい。
【0109】
さらに、この実施例では、ウェル14の配置形状を円形状に配置したが、その他の配置形状であれば、その配置形状に合わせて、上記のようにフィルター本体12の輪郭形状を、ウェル14の配置形状に略合致した形状にするようにすれば良い。
【0110】
本発明のバイオチップ用フィルター10のフィルター18は、金属から形成することができる。この場合、金属としては、シリコン、クロム、タングステンなどを使用することができる。
【0111】
この場合、フィルター18を金属から構成するには、第一の金属基板と、第一の金属基板の上面に形成した金属酸化物層と金属酸化物層の上面に形成した、第二の金属薄膜層とからなるウェーハを用いればよい。第一と第二の金属は同じものでも異なる種類のものでも良い。
【0112】
そして、金属酸化物層を介して、上下面から第二の金属薄膜層と第一の金属基板をそれぞれエッチング除去することによって、ウェル14と、ウェル14の底面を構成し、複数の貫通した細孔16が形成され、第二の金属から形成されたフィルター18とを形成するとともに、フィルター本体12の輪郭形状に対応した切断分離貫通孔42を形成すればよい。
【0113】
このように構成することによって、金属酸化物層を介して、上下面から金属薄膜層と金属基板をそれぞれエッチング除去することによって、ウェルと14、ウェル14の底面を構成し、複数の貫通した細孔16が形成され、金属から形成されたフィルター18とが形成できる。
【0114】
しかも、このエッチング処理において、同時にフィルター本体12の輪郭形状に対応した切断分離貫通孔42を形成することができ、この切断分離貫通孔42を介して、フィルター本体12を切断分離することができる。
【0115】
従って、複雑な工程となることなく、簡単に、金属から形成されたフィルター18を備え、フィルター本体12の輪郭形状が、平面視で、矩形以外の多角形形状、または、少なくとも部分的に曲線部分を有する形状であるバイオチップ用フィルター10を製造することができ、しかも、製造工程においても、機械的な強度の大きな第二の金属を使用できるため、フィルターの破損損傷がなく歩留まりが向上し、コストを低減することが可能である。
【0116】
さらに、エッチング処理において、同時にフィルター本体12の輪郭形状に対応した切断分離貫通孔42を形成することができ、この切断分離貫通孔42を介して、フィルター本体12を切断分離することができるので、従来のように、ダイシングカッターやレーザーなどによるダイシングによって、個々のバイオチップ用フィルター10に分断する必要がない。
【0117】
従って、従来のように、ダイシングによる切粉が発生し、フィルターを汚染したり、目詰まりの原因となることがなく、さらには、ダイシングによってチップ切断面の表面に凹凸が生じて、組み立て時にチップが割れたり、フィルターとしての製品価値が低下してしまうこともなく、歩留まりが向上し、コストを低減することが可能である。
【0118】
例えば、シリコンの場合には、後述するように、シリコン基板と、シリコン基板の上面に形成したSiO2層と、SiO2層の上面に形成したシリコン薄膜層とからなるSOIウェーハ(Silicon On Insulator)を用いればよい。そして、SiO2層を介して、上下面
からシリコン薄膜層とシリコン基板をそれぞれエッチング除去することによって、ウェル14と、ウェル14の底面を構成し、複数の貫通した細孔16が形成され、シリコンから形成されたフィルター18と、切断分離貫通孔42とを形成すればよい。
【0119】
この場合、SOI(Silicon On Insulator)ウェーハは、2枚の単結晶シリコン基板の
表面にシリコン酸化膜を形成して張り合わせた後、所望の厚みになるように片方のシリコン基板を薄膜化して、シリコン結晶薄膜を形成したウェーハである。
【0120】
一方、フィルター本体12は、このようにウェル14と、フィルター18とを作製する場合に、後述するように、同時に形成されるものであるので、フィルター18と同一の材料より構成されるものである。しかしながら、フィルター本体12は、フィルター18と同一の材料より構成されるものに限定されるものではない。
【0121】
このように構成することによって、フィルター18が、例えば、シリコンなどの金属から形成されているので、例えば、約1〜10μmの厚さであり極めて薄いフィルターの機械的な強度、耐久性が、例えば、アルミナ、シリカ、チタニアなどのガラス成分である金属酸化物層で構成された従来のフィルターを有するバイオチップ用フィルターに比較して格段に向上することになる。
【0122】
また、本発明のバイオチップ用フィルター10のフィルター18は、金属酸化物から形成することができる。この場合、金属酸化物としては、SiO2、Al23、Ta25
どを使用することができる。
【0123】
この場合、フィルター18を金属酸化物から構成するには、第一の金属基板として、例えば、シリコンを用いたもの、金属基板の上面に形成した金属酸化物層として、シリコン酸化物を介して、第二の金属薄膜として、クロム膜やタングステン膜、Ti膜などを成膜したウェーハを用いればよい。
【0124】
そして、金属酸化物層をストッパー層として、上下面から他方の金属薄膜層と金属基板をそれぞれエッチング除去することによって、ウェル14と、ウェル14の底面を構成し、複数の貫通した細孔16が形成され、金属酸化物から形成されたフィルター18とを形成するとともに、フィルター本体12の輪郭形状に対応した切断分離貫通孔42を形成すればよい。
【0125】
このように構成することによって、金属酸化物層を介して、上下面から第二の金属薄膜層と第一の金属基板をそれぞれエッチング除去することによって、ウェル14と、ウェル14の底面を構成し、複数の貫通した細孔16が形成され、金属酸化物から形成されたフィルター18とが形成できる。
【0126】
しかも、このエッチング処理において、同時にフィルター本体12の輪郭形状に対応した切断分離貫通孔42を形成することができ、この切断分離貫通孔42を介して、フィルター本体12を切断分離することができる。
【0127】
従って、複雑な工程となることなく、簡単に、金属薄膜から形成されたフィルター18を備え、フィルター本体12の輪郭形状が、平面視で、矩形以外の多角形形状、または、少なくとも部分的に曲線部分を有する形状であるバイオチップ用フィルター10を製造することができ、しかも、製造工程においても、フィルター18の破損損傷がなく歩留まりが向上し、コストを低減することが可能である。
【0128】
さらに、エッチング処理において、同時にフィルター本体12の輪郭形状に対応した切断分離貫通孔42を形成することができ、この切断分離貫通孔42を介して、フィルター本体12を切断分離することができるので、従来のように、ダイシングカッターやレーザーなどによるダイシングによって、個々のバイオチップ用フィルターに分断する必要がない。
【0129】
従って、従来のように、ダイシングによる切粉が発生し、フィルター18を汚染したり、目詰まりの原因となることがなく、さらには、ダイシングによって表面に凹凸が生じて、フィルターとしての製品価値が低下してしまうこともなく、歩留まりが向上し、コストを低減することが可能である。
【0130】
例えば、シリコンの場合には、後述するように、シリコン基板と、シリコン基板の上下面に形成したSiO2層とからなるウェーハを用いればよい。そして、一方のSiO2層を介して、上下面からSiO2層とシリコン基板をそれぞれエッチング除去することによっ
て、ウェル14と、ウェル14の底面を構成し、複数の貫通した細孔16が形成され、シリコンから形成されたフィルター18と、切断分離貫通孔42とを形成すればよい。
【0131】
従って、本発明のバイオチップ用フィルター10を、例えば、核酸、タンパク質などのバイオプローブを担持した粒子と、被検体中の標的物質とを反応または相互作用させる工程と、粒子を洗浄する工程とを含む標的物質のB/F分離や、被検体中の標的物質とバイオプローブとの反応または相互作用の光学的手段等による検出・同定などを行うためのバイオチップに用いられるバイオチップ用フィルターに適用した場合に、これらのB/F分離や、被検体中の標的物質とバイオプローブとの反応または相互作用の光学的手段等による検出・同定を確実に行うことができる。
【0132】
また、バイオチップ用フィルター10を製造する際にも、フィルター18の強度が大きいので、フィルター分が破損損傷することなく、歩留まりが向上し、コストを低減することができる。
【0133】
以下に、このように構成される本発明のバイオチップ用フィルター10の製造方法について、図面に基づいて詳細に説明する。
(1)第1の実施例のバイオチップ用フィルターの製造方法
以下に、第1の実施例のバイオチップ用フィルターの製造方法について、第二の金属薄膜であるフィルター18が、シリコンである場合を例として説明する。
【0134】
先ず、図9(A)に示したように、シリコン基板20と、シリコン基板20の上面に形成したSiO2層21と、このSiO2層21の上面に形成したシリコン薄膜層22とからなるSOIウェーハ(Silicon On Insulator)23を準備する。
【0135】
なお、この場合、SOI(Silicon On Insulator)ウェーハは、2枚の単結晶シリコン基板の表面にシリコン酸化膜を形成して張り合わせた後、所望の厚みになるように片方のシリコン基板を薄膜化して、シリコン結晶薄膜を形成したウェーハを用いればよい。
【0136】
この場合、第一の金属であるシリコン基板の厚さは、ウェル14の深さの大部分を構成するものであり、例えば、100μm〜500μm程度であるのが望ましい。また、第二の金属薄膜であるシリコン薄膜層22は、フィルター18を構成するものであるので、好ましくは、1〜10μm、より好ましくは、2〜7μmであるのが望ましい。さらに、SiO2層21は、製造工程の際に保護膜として機能するものであり、その厚さは、好まし
くは、0.5μm〜10μm、より好ましくは、1μm程度であるのが望ましい。
【0137】
そして、図9(B)に示したように、このSOIシリコンウェーハ23のシリコン薄膜層22の上面に、レジスト膜を用いて、フォトリソグラフィーによって、フィルター18の細孔に対応する凹部25と、切断分離貫通孔42に対応する分離貫通用凹部36を有するレジストパターン24を形成する。
【0138】
なお、レジスト膜24としては、通常のiライン用フォトレジストなどを用い、通常の露光、現像工程を用いてレジストパターン24を形成する。
次に、図9(C)に示したように、レジストパターン24をマスクにして、反応性ドライエッチング(Reactive Dry Etching)法を用いて、この凹部25、分離貫通用凹部36を介して、シリコン薄膜層22をエッチング除去することによって、シリコン薄膜層22の部分に、フィルター18の細孔16に対応する凹部26と、切断分離貫通孔42に対応する分離貫通用凹部37を形成する。
【0139】
この際には、SiO2層21が、ドライエッチングによってエッチングされないような
エッチング条件を選び、ストップ膜として機能して、シリコン薄膜層22の膜厚に対応した所定の深さの凹部26が形成されることになる。
【0140】
そして、図9(D)に示したように、レジスト膜24を酸素アッシャー処理などによりアッシング除去する。
その後、図10(A)に示したように、凹部26、分離貫通用凹部37が形成されたシリコン薄膜層22の部分、ならびに、シリコン酸化膜21の上に、例えば、10000Åの膜厚のTi膜などの保持膜27を形成する。
【0141】
そして、天地を逆にした状態で、図10(B)に示したように、SOIシリコンウェーハ23のシリコン基板20の上面に、レジスト膜を用いて、フォトリソグラフィーによって、ウェル14に対応する凹部29と、切断分離貫通孔42に対応する分離貫通用凹部領域40を有するレジストパターン28を形成する。
【0142】
このとき、分離貫通用凹部領域40の幅は、フィルター側の分離貫通用凹部領域36の
幅より狭い様に設定する。この方が位置あわせズレに対応できる。
そして、図10(C)に示したように、レジスト膜28の部分をマスクとして、ウェル14に対応する凹部29、分離貫通用凹部領域40を介して、シリコン基板20の部分をエッチング除去することによって、ウェル14を形成するとともに、分離貫通用凹部40に対峙するように分離貫通切断用凹部41を形成する(ウェル形成工程)。
【0143】
この場合、反応性ドライエッチング方法によって、シリコン基板20をエッチングするように用いればよい。この際には、SiO2層21が、ドライエッチングによってエッチ
ングされないようなエッチング条件を選び、ストップ膜として機能して、シリコン基板20の膜厚に相当する所定の深さのウェル14と、分離貫通切断用凹部41が形成されることになる。
【0144】
そして、図10(C)に示したように、SiO2層21を、エッチング除去する。
この場合、SiO2層21を、エッチング除去する方法としては、反応性ドライエッチ
ング法を用いて行えばよい。
【0145】
次に、図11(A)に示したように、レジスト膜28を酸素アッシャー処理を行うことによりレジスト膜28を剥離する。
その後、図11(B)に示したように上下を逆さまにする。
【0146】
次に、図12(A)に示したように、シリコン基板20の下面に、保護テープ34を貼着した後、図12(B)に示したように、エッチングにより、保持膜27を除去することによって、分離貫通切断用凹部領域41を連通させて、フィルター本体12の輪郭形状に対応した切断分離貫通孔42を形成することによって、個々のバイオチップ用フィルター10に分断する(フィルター形成工程)。
【0147】
そして、図12(C)に示したように、保護テープ34から各チップを剥離して、個々のバイオチップ用フィルター10に分離する。
そして、図12(D)に示したように、チップ表面の洗浄処理する。
【0148】
これによって、図12(E)に示したように、基板部を構成するシリコン基板20からなるフィルター本体12と、フィルター本体12に設けられた複数の凹部を形成するウェル14と、ウェル14の底面を構成し、複数の貫通した細孔16が形成されたシリコンからなるフィルター18が設けられたバイオチップ用フィルター10が得られる(図17の写真参照)。
【0149】
なお、図9〜図12では、説明の便宜上、1つのウェル14を示しているが、実際には、複数のウェル14が一定間隔離間して形成されている。

(2)第2の実施例のバイオチップ用フィルターの製造方法
以下に、第2の実施例のバイオチップ用フィルターの製造方法について、フィルター18が、SiO2である場合を例として説明する。
【0150】
先ず、図13(A)に示したように、シリコン基板20の両面に、SiO2層21a、
22aが形成されたシリコンウェーハ23を準備する。
この場合、シリコン基板の厚さは、ウェル14の深さの大部分を構成するものであり、例えば、200μm〜700μmであるのが望ましい。また、SiO2層22aは、フィ
ルター18を構成するものであるので、好ましくは、1〜10μm、より好ましくは、2μm〜3μmであるのが望ましい。
【0151】
そして、図13(B)に示したように、このシリコンウェーハ23のSiO2層22a
の上面に、フォトリソグラフィー法によって、フィルター18の細孔に対応する凹部25と、切断分離貫通孔42に対応する分離貫通用凹部36を有するレジスト膜パターン24を形成する(凹部形成工程)。
【0152】
次に、図13(C)に示したように、レジスト膜パターン24をマスクにして、SiO2層22aをエッチング除去することによって、SiO2層22aの部分に、フィルター18の細孔16に対応する凹部26と、切断分離貫通孔42に対応する分離貫通用凹部領域37を形成する。
【0153】
そして、図13(D)に示したように、レジスト膜24を酸素アッシャー処理などにより、レジスト膜24を剥離する。
その後、図14(A)に示したように、凹部26、分離貫通用凹部37が形成されたSiO2層22aの上部に、保持膜27として、例えば、10000Åの膜厚のTi膜など
を形成する。
【0154】
なお、保持膜27の厚さとしては、分離されるチップの保持が目的であるので、好ましくは、0.5μm〜2μm、より好ましくは、0.8μm〜1.0μmであるのが望ましい。
【0155】
そして、天地を逆にした状態で、図14(B)に示したように、シリコンウェーハ23のシリコン基板20の上面に、フォトリソグラフィー法によって、ウェル14に対応する凹部29と、切断分離貫通孔42に対応する分離貫通用凹部40を有するレジスト膜パターン28を形成する。
【0156】
このとき、分離貫通用凹部40の幅は分離貫通用凹部37の幅よりも小さくなるようにしておく。
そして、図14(C)に示したように、レジスト膜28の部分をマスクとして、ウェル14に対応する凹部29、分離貫通用凹部40をエッチング除去することによって、ウェル14を形成するとともに、分離貫通用凹部40に対峙するように分離貫通切断用凹部41を形成する(ウェル形成工程)。
【0157】
この際には、SiO2層21が、反応性ドライエッチング法によってエッチングされな
いので、ストップ膜として機能して、シリコン基板20に対応した所定の深さのウェル14と、分離貫通切断用凹部41が形成されることになる。
【0158】
次に、図15(A)に示したように、酸素アッシャー処理などによりレジスト膜28を剥離する。
その後、図15(B)に示したように上下を逆さまにする。
【0159】
次に、図16(A)に示したように、シリコン基板20の下面に、保護テープ34を貼着した後、図16(B)に示したように、ウェットエッチング法などにより、保持膜27を除去することによって、分離貫通切断用凹部41を連通させて、フィルター本体12の輪郭形状に対応した切断分離貫通孔42を形成することによって、個々のバイオチップ用フィルター10に分断する(フィルター形成工程)。
【0160】
この場合、保護膜27を除去するエッチング液としては、希釈HFを用いることができる。
そして、図16(C)に示したように、保護テープ34から個々のバイオチップ用フィルター10に分離する。
【0161】
そして、図16(D)に示したように、テープ残渣などを取り除く洗浄処理を行う。
これによって、図16(E)に示したように、基板部を構成するシリコン基板20からなるフィルター本体12と、フィルター本体12に設けられた複数の凹部を形成するウェル14と、ウェル14の底面を構成し、複数の貫通した細孔16が形成されたシリコンからなるフィルター18が設けられたバイオチップ用フィルター10が得られる(図17の写真参照)。
【0162】
なお、図13〜図16では、説明の便宜上、1つのウェル14を示しているが、実際には、複数のウェル14が一定間隔離間して形成されている。
以上、本発明の好ましい実施の態様を説明してきたが、本発明はこれに限定されることはなく、例えば、上記実施例では、SOI(Silicon On Insulator)ウェーハを用いた例について説明したが、第二の金属薄膜としてシリコン以外のクロムやタングステンなどをシリコン基板、シリコン酸化物の上に形成した構造のウェーハも使用可能であるなど本発明の目的を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0163】
【図1】図1は、本発明のバイオチップ用フィルターの上面図である。
【図2】図2は、図1のA−A線での断面図である。
【図3】図3は、ひとつのウェルの拡大平面図である。
【図4】図4は、ひとつのウェルの部分拡大断面図である。
【図5】図5(A)は、従来のバイオチップ用フィルターの切断分離状態を説明する概略図、図5(B)は、本発明のバイオチップ用フィルターの切断分離状態を説明する概略図である。
【図6】図6は、本発明のバイオチップ用フィルターの別の実施例の上面図である。
【図7】図7は、本発明のバイオチップ用フィルターの別の実施例の上面図である。
【図8】図8は、本発明のバイオチップ用フィルターの別の実施例の上面図である。
【図9】図9は、本発明のバイオチップ用フィルターの製造方法を示す工程概略図である。
【図10】図10は、本発明のバイオチップ用フィルターの製造方法を示す工程概略図である。
【図11】図11は、本発明のバイオチップ用フィルターの製造方法を示す工程概略図である。
【図12】図12は、本発明のバイオチップ用フィルターの製造方法を示す工程概略図である。
【図13】図13は、本発明のバイオチップ用フィルターの製造方法を示す工程概略図である。
【図14】図14は、本発明のバイオチップ用フィルターの製造方法を示す工程概略図である。
【図15】図15は、本発明のバイオチップ用フィルターの製造方法を示す工程概略図である。
【図16】図16は、本発明のバイオチップ用フィルターの製造方法を示す工程概略図である。
【図17】図17(A)は、本発明のバイオチップ用フィルターの平面写真、図17(B)は、本発明のバイオチップ用フィルターのウェルを示部分拡大写真である。
【図18】図18は、従来のバイオチップ用フィルターの製造方法を示す工程概略図である。
【図19】図19は、従来のバイオチップ用フィルターの製造方法を示す工程概略図である。
【図20】図20は、従来のバイオチップ用フィルターの製造方法を示す工程概略図である。
【図21】図21は、従来のバイオチップ用フィルターの製造方法を示す工程概略図である。
【図22】図22は、従来のバイオチップ用フィルターの製造方法を示す工程概略図である。
【図23】図23は、従来のバイオチップ用フィルターの製造方法を示す工程概略図である。
【図24】図24は、従来のバイオチップ用フィルターを示す上面図である。
【符号の説明】
【0164】
10 バイオチップ用フィルター
12 フィルター本体
12d 隅角部
12e 平行部分
12f 切欠部
12g 位置決め孔
14 ウェル
16 細孔
18 フィルター
18a 表面
18b 他方の表面
20 シリコン基板
21 SiO2
22 シリコン薄膜層
21a、22a SiO2
23 シリコンウェーハ
24 レジスト膜
25 凹部
26 凹部
27 保持膜
28 レジスト膜
29 凹部
35 切断分離貫通孔
36 分離貫通用凹部
37 分離貫通用凹部
40 分離貫通用凹部
41 分離貫通切断用凹部
42 切断分離貫通孔
100 シリコン基板
101 シリコン基板本体
102 熱酸化膜
104 熱酸化膜
106 レジスト膜
108 凹部
110 細孔(凹部)
112 レジスト膜
114 凹部
116 凹部
124 ウェル
125 ウェル部分
128 保護テープ
130 バイオチップ用フィルター
132 フィルター本体
136 フィルター

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板部を構成するフィルター本体と、
前記フィルター本体に設けられた凹部を形成するウェルと、
前記ウェルの底面を構成し、複数の貫通した細孔が形成されたフィルターが設けられたバイオチップ用フィルターであって、
前記フィルター本体の輪郭形状が、ウェルの配置形状に略合致した形状であることを特徴とするバイオチップ用フィルター。
【請求項2】
前記フィルター本体が、金属基板から構成されているとともに、
前記フィルターが、金属から構成されていることを特徴とする請求項1に記載のバイオチップ用フィルター。
【請求項3】
前記フィルター本体を構成する金属基板が、シリコンから構成されているとともに、
前記フィルターを構成する金属が、シリコンから構成されていることを特徴とする請求項2に記載のバイオチップ用フィルター。
【請求項4】
前記フィルター本体が、金属基板から構成されているとともに、
前記フィルターが、金属酸化物から構成されていることを特徴とする請求項1に記載のバイオチップ用フィルター。
【請求項5】
前記フィルター本体を構成する金属基板が、シリコンから構成されているとともに、
前記フィルターを構成する金属酸化物が、SiO2から構成されていることを特徴とす
る請求項4に記載のバイオチップ用フィルター。
【請求項6】
前記フィルター本体の輪郭形状が、平面視で、矩形以外の多角形形状であることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載のバイオチップ用フィルター。
【請求項7】
前記フィルター本体の輪郭形状が、平面視で、少なくとも部分的に曲線部分を有する形状であることを特徴とする請求項1から5のいずれかに記載のバイオチップ用フィルター。
【請求項8】
前記フィルター本体の輪郭形状が、平面視で略円形形状であることを特徴とする請求項7に記載のバイオチップ用フィルター。
【請求項9】
前記フィルター本体の輪郭形状が、一対の平行部分を有する形状であることを特徴とする請求項1から8のいずれかに記載のバイオチップ用フィルター。
【請求項10】
前記フィルター本体の輪郭形状が、位置決め部を有する形状であることを特徴とする請求項1から9のいずれかに記載のバイオチップ用フィルター。
【請求項11】
請求項1から2のいずれかに記載のバイオチップ用フィルターを製造する方法であって、
金属基板と、金属基板の上面に形成した金属酸化物層と、金属酸化物層の上面に形成した金属薄膜層とからなるウェーハを用いて、
前記金属酸化物層を介して、上下面から金属薄膜層と金属基板をそれぞれエッチング除去することによって、
前記ウェルと、ウェルの底面を構成し、複数の貫通した細孔が形成され、金属から形成されたフィルターとを形成するとともに、
前記フィルター本体の輪郭形状に対応した切断分離貫通孔を形成する、
ことを特徴とするバイオチップ用フィルターの製造方法。
【請求項12】
請求項1から2のいずれかに記載のバイオチップ用フィルターを製造する方法であって、
金属基板と、金属基板の上面に形成した金属酸化物層と、金属酸化物層の上面に形成した金属薄膜層とからなるウェーハを用いて、
前記ウェーハの金属薄膜層をエッチング除去することによって、前記フィルターの細孔を形成すべき細孔用凹部と、切断分離貫通孔を形成すべき分離貫通用凹部とを形成する凹部形成工程と、
前記ウェーハの金属基板をエッチング除去することによって、前記金属酸化物層を介して、前記細孔用凹部に対峙するようにウェルを形成するとともに、分離貫通用凹部に対峙するように分離貫通切断用凹部を形成するウェル形成工程と、
前記金属酸化物層をエッチング除去して、前記フィルターの細孔を形成すべき細孔用凹部と、ウェルを連通させて、複数の貫通した細孔を形成するとともに、分離貫通用凹部と分離貫通切断用凹部を連通させて、切断分離貫通孔を形成するフィルター形成工程と、
を備えることを特徴とする請求項11に記載のバイオチップ用フィルターの製造方法。
【請求項13】
請求項3に記載のバイオチップ用フィルターを製造する方法であって、
シリコン基板と、シリコン基板の上面に形成したSiO2層と、SiO2層の上面に形成したシリコン薄膜層とからなるSOIウェーハ(Silicon On Insulator)を用いて、
前記SiO2層を介して、上下面からシリコン薄膜層とシリコン基板をそれぞれエッチ
ング除去することによって、
前記ウェルと、ウェルの底面を構成し、複数の貫通した細孔が形成され、シリコンから形成されたフィルターとを形成するするとともに、
前記フィルター本体の輪郭形状に対応した切断分離貫通孔を形成する、
ことを特徴とするバイオチップ用フィルターの製造方法。
【請求項14】
請求項3に記載のバイオチップ用フィルターを製造する方法であって、
シリコン基板と、シリコン基板の上面に形成したSiO2層と、SiO2層の上面に形成したシリコン薄膜層とからなるSOIウェーハ(Silicon On Insulator)を用いて、
前記SOIウェーハのシリコン薄膜層をエッチング除去することによって、前記フィルターの細孔用凹部と、切断分離貫通孔を形成すべき分離貫通用凹部とを形成する凹部形成工程と、
前記SOIウェーハのシリコン基板をエッチング除去することによって、前記SiO2
層を介して、前記細孔用凹部に対峙するようにウェルを形成するとともに、分離貫通用凹部に対峙するように分離貫通切断用凹部を形成するウェル形成工程と、
前記SiO2層をエッチング除去して、前記フィルターの細孔を形成すべき細孔用凹部
と、ウェルを連通させて、複数の貫通した細孔を形成するとともに、分離貫通用凹部と分離貫通切断用凹部を連通させて、切断分離貫通孔を形成するフィルター形成工程と、
を備えることを特徴とする請求項13に記載のバイオチップ用フィルターの製造方法。
【請求項15】
請求項1、4のいずれかに記載のバイオチップ用フィルターを製造する方法であって、
金属基板と、金属基板の上下面に形成した金属酸化物層ととからなるウェーハを用いて、
前記一方の金属酸化物層を介して、上下面から他方の金属酸化物層と金属基板をそれぞれエッチング除去することによって、
前記ウェルと、ウェルの底面を構成し、複数の貫通した細孔が形成され、金属酸化物から形成されたフィルターとを形成するとともに、
前記フィルター本体の輪郭形状に対応した切断分離貫通孔を形成する、
ことを特徴とするバイオチップ用フィルターの製造方法。
【請求項16】
請求項1、4のいずれかに記載のバイオチップ用フィルターを製造する方法であって、
金属基板と、金属基板の上下面に形成した金属酸化物層とからなるウェーハを用いて、
前記ウェーハの一方の金属酸化物層をエッチング除去することによって、前記フィルターの細孔を形成すべき細孔用凹部と、切断分離貫通孔を形成すべき分離貫通用凹部とを形成する凹部形成工程と、
前記ウェーハの金属基板をエッチング除去することによって、前記金属酸化物層を介して、前記細孔用凹部に連通するようにウェルを形成するとともに、分離貫通用凹部に連通するように切断分離貫通孔を形成するウェル形成工程と、
を備えることを特徴とする請求項15に記載のバイオチップ用フィルターの製造方法。
【請求項17】
請求項5に記載のバイオチップ用フィルターを製造する方法であって、
シリコン基板と、シリコン基板の上下面に形成したSiO2層とからなるウェーハを用
いて、
前記一方のSiO2層を介して、上下面からSiO2層とシリコン基板をそれぞれエッチング除去することによって、
前記ウェルと、ウェルの底面を構成し、複数の貫通した細孔が形成され、SiO2から
形成されたフィルターとを形成するするとともに、
前記フィルター本体の輪郭形状に対応した切断分離貫通孔を形成する、
ことを特徴とするバイオチップ用フィルターの製造方法。
【請求項18】
請求項5に記載のバイオチップ用フィルターを製造する方法であって、
シリコン基板と、シリコン基板の上下面に形成したSiO2層とからなるウェーハを用
いて、
前記一方のSiO2層をエッチング除去することによって、前記フィルターの細孔用凹
部と、切断分離貫通孔を形成すべき分離貫通用凹部とを形成する凹部形成工程と、
前記ウェーハの他方のSiO2層とシリコン基板をエッチング除去することによって、
前記一方のSiO2層を介して、連通するようにウェルを形成するとともに、分離貫通用
凹部に連通するように切断分離貫通孔を形成するウェル形成工程と、
を備えることを特徴とする請求項17に記載のバイオチップ用フィルターの製造方法。
【請求項19】
請求項1から10のいずれかに記載のバイオチップ用フィルターを備えることを特徴とするバイオチップ。
【請求項20】
請求項11から18のいずれかに記載のバイオチップ用フィルターの製造方法で得られたバイオチップ用フィルターを備えることを特徴とするバイオチップ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図17】
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【公開番号】特開2008−32657(P2008−32657A)
【公開日】平成20年2月14日(2008.2.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−209242(P2006−209242)
【出願日】平成18年7月31日(2006.7.31)
【出願人】(000219967)東京エレクトロン株式会社 (5,184)
【出願人】(502128800)株式会社オクテック (83)
【出願人】(000004178)JSR株式会社 (3,320)
【Fターム(参考)】