説明

バイオディーゼル燃料の製造方法及び製造システム

【課題】バイオディーゼル燃料を効率よく安価に製造する方法を提供する。
【解決手段】流動床燃焼複合方式の発電設備で生成する石炭灰を固体触媒として流用し、発電設備で使用される蒸気の廃熱によって油脂と低級アルコールとをエステル交換反応させ、生成する副生成物を発電設備の発電燃料として消費させることで粗バイオディーゼル燃料(粗BDF21)を製造する。粗BDF21とドライアイス22とを、二酸化炭素の臨界温度以上の温度条件下で反応させることにより粗BDF21を精製する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオディーゼル燃料の製造方法及び製造システムに関し、特にバイオディーゼル燃料を効率よく製造する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、バイオディーゼル燃料(以下、BDFとも称する。)の製造方法として、酸化カルシウム等の固体反応触媒の存在下で油脂と低級アルコールとをエステル交換反応させることが開示されている。
【0003】
上記エステル交換反応により製造されるBDFは、カルシウム等の固体触媒の金属成分を含んでおり、これを内燃機関の燃料として使用すると、燃料噴射ポンプ内の目詰まり等が発生する可能性がある。このため上記エステル交換反応によるBDFの製造に際しては、事前にそのような金属成分を除去しておく必要がある。
【0004】
化石燃料である原油に含まれるカルシウム等を除去する方法に関し、例えば特許文献2には、40℃〜200℃の温度及び自生圧で原油を二酸化炭素と接触させることにより、カルシウム等を除去する方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2001−271090号公報
【特許文献2】特願平10−516963号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
BDFの精製手段として、イオン交換樹脂を用いる方法、及び水洗浄による方法等がある。このうちイオン交換樹脂を用いる方法では、使用済みのイオン交換樹脂を薬品等で再生する必要があるのでメンテナンスコストがかかる。また水洗浄による方法では、BDF中のカルシウム成分等が脂肪酸と結合して除去されBDFが目減りするため収率を確保することが難しい。
【0007】
本発明はこのような背景技術に基づいてなされたもので、バイオディーゼル燃料を効率よく製造することが可能なバイオディーゼル燃料の製造方法及び製造システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するための、本発明の主たる発明の一つは、バイオディーゼル燃料の製造方法であって、粗バイオディーゼル燃料とドライアイスとを、二酸化炭素の臨界温度以上の温度条件下で反応させることによりバイオディーゼル燃料を精製する、というものである。
【0009】
このように、本発明では粗バイオディーゼル燃料をドライアイスと反応させることによって精製するので、イオン交換樹脂を用いる場合のような再生処理は不要であり、効率よく安価に高純度のBDFを製造することができる。また上記反応では金属成分のみが炭酸塩として粗BDFから選択的に除去されるので精製により収率が低下することもない。また反応温度を二酸化炭素の臨界温度以上としたので粗バイオディーゼル燃料は気体の二酸化炭素と反応し、これにより効率よくバイオディーゼル燃料を製造することができる。
【0010】
本発明の他の一つは、流動床燃焼複合方式の発電設備で生成する石炭灰(例えばBM灰)を固体触媒として流用し、前記発電設備で使用される蒸気の廃熱によって油脂と低級アルコールとをエステル交換反応させ、前記エステル交換反応によって生成する副生成物を、前記発電設備の発電燃料として消費させることにより粗バイオディーゼル燃料を製造し、当該粗バイオディーゼル燃料とドライアイスとを、二酸化炭素の臨界温度以上の温度条件下で反応させることにより、バイオディーゼル燃料を精製する、というものである。
【0011】
これによれば、流動床燃焼複合方式の発電設備で生成される石炭灰を固体触媒として流用するバイオディーゼル燃料の製造に際し、材料調達過程における固体触媒(石炭灰)の流用、エステル交換反応過程における発電設備からの廃熱利用に加えて、バイオディーゼル燃料の精製の効率の向上が図られる。
【0012】
その他、本願が開示する課題、及びその解決方法は、発明を実施するための形態の欄、及び図面により明らかにされる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、バイオディーゼル燃料を効率よく製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】BDF製造システム4を示す図である。
【図2】BDF精製系10に用いるBDF精製装置1の概略を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、実施の形態について図面を参照しつつ説明する。図1に実施形態として説明するバイオディーゼル燃料(以下、BDF23と称する。)の製造システム4を示している。同図に示すように、この製造システム4は、BDF反応系2と流動床燃焼複合方式(例えば加圧流動床燃焼複合発電方式(PFBC(Pressurized Fluidized Bed Combustion)))の発電設備を用いた発電系3とを含む。またBDF反応系2は、BDF精製系10を含む。以下、製造システム4の製造工程(サイクル)について説明する。
【0016】
<BDF反応系>
BDF反応系2の第一反応容器207では、低級アルコール206と発電系3の流動床燃焼複合方式発電設備で得られる石炭灰201とを反応させる。これにより低級アルコール206と石炭灰201との反応中間体が生成される。
【0017】
第一反応容器207に生じた上記反応中間体は、第一反応容器207から第二反応容器209に導かれ、ここで上記反応中間体と油脂208とをエステル交換反応させる。尚、このエステル交換反応に要する熱源には発電系3を構成している流動床燃焼複合方式発電設備内の蒸気ボイラーの廃熱204を利用する。
【0018】
第二反応容器209には、上記エステル交換反応により主生成物として粗BDF21が生成され、副生成物205としてグリセリンや夾雑物等が生成され、さらに第二反応容器209内には石炭灰201が残留する。このうち主生成物である粗BDF21は、BDF反応系2のBDF精製系10に導かれて精製される。また副生成物205については、発電燃料として用いるため、発電系3の流動床燃焼複合方式発電設備に送られる。また残留した石炭灰201については、低級アルコール206との反応に再利用するため第一反応容器207に戻される。
【0019】
<BDF精製系>
図2にBDF精製系10に用いられるBDF精製装置1の概略的な構成を示している。同図に示すように、BDF精製装置1は、温水12が満たされた温浴槽11と、当該温浴槽11内に収容される密閉可能な耐圧反応容器20とを備える。
【0020】
BDF反応系2において、第二反応容器209に主生成物として生成された粗BDF21は、これと反応させる二酸化炭素を供給するドライアイス22とともに上記耐圧反応容器20に導入される。
【0021】
耐圧反応容器20内の温度は、温浴槽11に満たされた温水12から供給される熱により少なくとも二酸化炭素を気化させる温度(気化温度)以上に維持される。これにより耐圧反応容器20に導入されたドライアイス22は気化する。
【0022】
気化したドライアイス22(二酸化炭素)は、耐圧反応容器20内に導入されている粗BDF21と反応し、粗BDF21中に含まれている金属成分等の除去対象成分が炭酸塩となって沈殿する(分離される)。
【0023】
沈殿する除去対象成分は、例えばアルカリ土類金属等(例えばMg、Ca、Sr、Ba)のように二酸化炭素と反応して炭酸塩を生成する成分であり、例えば除去対象成分がCaであれば次式のように炭酸塩(CaCO)が沈殿する。
Ca(OH)+CO=CaCO↓+H
【0024】
このように、BDF精製系10では、粗BDF21を気体の二酸化炭素と反応させるのでBDF23を効率よく精製することができる。尚、耐圧反応容器20内の温度を臨界温度(約31.1℃)以上とすれば、二酸化炭素はより液体との間の親和性の高い超臨界状態となり、BDF23の収率をさらに向上させることができる。
【0025】
このように、本実施形態では、粗BDF21をドライアイス22と反応させることにより精製するので、イオン交換樹脂を用いる場合のような再生処理は不要であり、効率よく安価に高純度のBDF23を製造することができる。また上記反応では金属成分のみが炭酸塩として粗BDF21から選択的に除去されるので、精製に際し収率が低下することもない。また反応温度を二酸化炭素の臨界温度以上としたので、粗BDF21は気体の二酸化炭素と反応し、これにより効率よくBDF23を製造することができる。
【0026】
また流動床燃焼複合方式の発電設備を用いた発電系3で生成される石炭灰を固体触媒として流用するBDF23の製造に際し、材料調達過程における固体触媒(石炭灰)の流用、エステル交換反応過程における発電設備からの廃熱利用に加えて、BDF23の精製効率の向上が図られる。
【0027】
以上、本発明の実施に係る製造方法について説明したが、上記発明の実施の形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定するものではない。本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更、改良され得ると共に、本発明にはその等価物が含まれることは勿論である。
【符号の説明】
【0028】
1 BDF精製装置
2 BDF反応系
3 発電系
4 BDF製造システム
10 BDF精製系
11 温浴槽
12 温水
20 反応容器
21 粗BDF
22 ドライアイス
23 BDF
201 石炭灰
204 蒸気の廃熱
205 グリセリン等の副生成物
206 低級アルコール
207 第一反応容器
208 油脂
209 第二反応容器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粗バイオディーゼル燃料とドライアイスとを、二酸化炭素の臨界温度以上の温度条件下で反応させることにより、バイオディーゼル燃料を精製すること
を特徴とするバイオディーゼル燃料の製造方法。
【請求項2】
請求項1に記載のバイオディーゼル燃料の製造方法であって、
前記粗バイオディーゼル燃料は、カルシウム又はマグネシウムの少なくともいずれかを含むこと
を特徴とするバイオディーゼル燃料の製造方法。
【請求項3】
流動床燃焼複合方式の発電設備で生成する石炭灰を固体触媒とし、
前記発電設備で使用される蒸気の廃熱によって油脂と低級アルコールとをエステル交換反応させ、
前記エステル交換反応において生成する副生成物を、前記発電設備の発電燃料として消費させて粗バイオディーゼル燃料を製造し、
製造した前記粗バイオディーゼル燃料とドライアイスとを、二酸化炭素の臨界温度以上の温度条件下で反応させることにより、バイオディーゼル燃料を精製すること
を特徴とするバイオディーゼル燃料の製造方法。
【請求項4】
請求項3に記載のバイオディーゼル燃料の製造方法であって、
前記石炭灰がBM灰であること
を特徴とするバイオディーゼル燃料の製造方法。
【請求項5】
粗バイオディーゼル燃料とドライアイスとが導入される密閉型の反応容器と、
前記反応容器の内部の温度を二酸化炭素の臨界温度以上に保持する熱を供給する温浴槽とを備えること
を特徴とするバイオディーゼル燃料の製造システム。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−195728(P2011−195728A)
【公開日】平成23年10月6日(2011.10.6)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−64799(P2010−64799)
【出願日】平成22年3月19日(2010.3.19)
【出願人】(000211307)中国電力株式会社 (6,505)
【Fターム(参考)】