説明

バイオマスから水素を生成するための方法及び装置

本明細書では、尿素を含む溶液をウレアーゼと接触させてアンモニアを生成するステップと、アンモニアを第1の触媒と接触させて、分子状水素を含む第1のガス状混合物を生成するステップとを含む、分子状水素を生成する方法が開示される。

【発明の詳細な説明】
【関連出願】
【0001】
[001]本願は、2007年9月27日出願のAneja等による「METHODS OF PRODUCING HYDROGEN FROM BIOMASS」という名称の米国特許仮出願第60/975,760号明細書、及び2007年10月18日出願のAneja等による「METHODS OF PRODUCING HYDROGEN FROM BIOMASS」という名称の米国特許出願第11/874,499号明細書に対する優先権を主張するものであり、あらゆる図面を含む両明細書の開示全体を参照によって本明細書に援用する。
【技術分野】
【0002】
[002]本発明は、代替クリーン燃料の分野、特に水素ガスを燃料として生成及び使用する分野のものである。さらに本発明は、酵素及び金属触媒を用いてバイオマスから水素を生成する分野のものである。
【背景技術】
【0003】
[003]分子状水素は、きわめて魅力的な環境に優しい燃料である。それは、比較的低い活性化障壁を有する高発熱反応によって酸素と反応する。この酸化反応の副生成物は水である。水素の使用によって、いわゆる温室効果ガスの副生成物は発生しない。水素は現在、スペースシャトルを軌道にのせるための燃料として用いられている。
【0004】
[004]水素を燃料源として使用することには多くの利点があるにもかかわらず、水素は主流の輸送用燃料としてその地位を得ていない。水素の使用の主な妨げになっているのは、それを燃料源として魅力的なものとしているのと同じ特性であると思われる。水素は、酸素との反応によって大量のエネルギーを放出する高可燃性のガスである。したがって、水素と酸素の反応は制御されないと必ず爆発性になる。タンクいっぱいの燃料による標準的な走行(約300マイル)に対応する動力を車両に供給するのに十分な量の水素が車両に蓄えられていると、車両が水素タンクの破裂を引き起こすような事故に遭遇した場合、車両の乗員を不安定で危険な状況に置く。この悲劇は、1986年にスペースシャトル、チャレンジャー号が大西洋上で爆発したときに目撃されている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
[005]前述の問題に対する解決策は、要求に応じて大量の水素を供給することができるが、それ自体で酸素と制御できない形で反応することがない供給源から、水素を現場で発生させることであると思われる。水素の供給源及び水素発生による副生成物は、容易に処理が可能であると共に環境に優しいものであるべきである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
[006]本明細書では、尿素を含む溶液をウレアーゼと接触させてアンモニアを生成するステップと、アンモニアを第1の触媒と接触させて、分子状水素を含む第1のガス状混合物を生成するステップとを含む、分子状水素を生成する方法を開示している。
【0007】
[007]また、尿素を含む溶液をウレアーゼと接触させてアンモニアを生成するステップと、アンモニアを第1の触媒と接触させて、分子状水素を含む第1のガス状混合物を生成するステップと、第1のガス状混合物を第2の触媒と接触させて、第1のガス状混合物より高い割合の水素の組成を有する第2のガス状混合物を生成するステップとを含む、分子状水素を生成する方法を開示している。
【0008】
[008]図面は必ずしも一定の縮尺ではなく、本発明の実施形態の様々な態様及び特徴を示すことに重点が置かれている。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】水素発生装置の実施形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[0010]特定の態様として、本明細書ではアンモニアから水素を発生させる方法を開示する。そしてアンモニアの供給原料は、ウレアーゼ酵素を尿素と反応させることによって生成することができる。ウレアーゼは、バクテリア、複数の種の酵母及びいくつかの高等植物に見出されるよく知られた種類の酵素である。主にウレアーゼは、尿素の加水分解を触媒して二酸化炭素とアンモニアを生成する。いくつかの実施形態では、結果として得られるアンモニアは、溶液中に水酸化アンモニウムとして存在する。水酸化アンモニウムは、溶液中に分子種として溶解させることができるアンモニアと平衡状態で存在する。そして溶解したアンモニアは、溶液の上の空間に存在するガス状のアンモニアと平衡状態になる。したがって、ウレアーゼと尿素の反応によって生成されたアンモニアは、最終的には反応混合物を含む溶液の上の空間にガスの形で存在することができる。
【0011】
[0011]水素と窒素からアンモニアを発生させるハーバー法は、第1次世界大戦の時代から知られている。ハーバー法の反応は平衡反応である。触媒の使用及び反応媒体からのアンモニアの除去によって、平衡反応を順方向に押し進め、引き続きアンモニアを発生させることができる。
【0012】
[0012]ハーバー法の逆反応、すなわち以下に示す反応も起こり得る。
【化1】


すなわち、適切な触媒及び最適化された反応条件を選択することによって、アンモニアを分子状水素と分子状窒素に変えることができる。本発明者等は、ある特定の遷移金属触媒が、ハーバー法の逆反応を効率的に触媒するのに特に適していることを発見した。特にいくつかの実施形態では、ガスの形のアンモニアがニッケルを含む触媒の上又は中を通過して、アンモニアを水素と窒素に変えることができる。
【0013】
[0013]ハーバー法の逆反応の化学量論が示すように、アンモニア2モルごとに3モルの水素と1モルの窒素が生成される。したがって、この工程によって生成されたガスは、理論的には水素が75%、窒素が25%である。実際には、ガス状混合物中に尿素−ウレアーゼ溶液からの水蒸気、及びアンモニアを発生させるステップからの二酸化炭素も存在するため、それらの割合はもっと小さくなる。また反応によって生成されたガス状混合物中には、溶液中に存在する十分に低い蒸気圧を伴う他の不純物が存在する可能性もある。
【0014】
[0014]いくつかの実施形態では、サンプル中に存在する水素の割合を高めることが望ましい。ガス状混合物から二酸化炭素及び水を除去することができる、ある種のスクラブが市販されている。例えば分子ふるいを用いて、ガス状混合物から水を除去することができる。水酸化リチウム一水和物を用いて、混合物から二酸化炭素を除去することができる。水酸化リチウム(LiOH)は、水と反応して水酸化リチウム一水和物(LiOH−HO)を与え、それがさらに二酸化炭素(CO)と反応して炭酸リチウム(LiCO)及び3当量の水を与える。結果として得られる水は、分子ふるいを用いて除去することができる。
【0015】
[0015]残りの除去すべき主な不純物は窒素である。本発明者等は、リチウムを含む金属触媒を用いて窒素を除去することが可能であることを発見した。リチウムは、窒素と反応して窒化リチウムLiNを形成する。実際のところ、リチウム金属は、そうした反応を受けるただ1つのI族金属であると考えられる。いくつかの実施形態では、SBA15などのメソ多孔性の酸化物材料を用いて窒素を除去することができる。こうした材料は大きい表面積を有し、窒素を十分に吸収する。
【0016】
[0016]本明細書に開示される方法によって生成された水素を用いて、貯蔵及び販売すること、又は水素を用いる任意の場所で使用することが可能な純粋な元素状水素を生成することができる。或いは、水素を燃料として用いて、燃料電池又は燃焼機関に動力を供給することができる。
【0017】
[0017]したがって一態様として、本明細書では、尿素を含む溶液をウレアーゼと接触させてアンモニアを生成するステップと、アンモニアを第1の触媒と接触させて、分子状水素を含む第1のガス状混合物を生成するステップとを含む、分子状水素を生成する方法が開示される。
【0018】
[0018]尿素を含む溶液は、尿素がウレアーゼと反応することができるように、尿素を溶解する又はその懸濁液を作ることが可能な溶媒を含む。特定の実施形態では、使用される溶媒は有機溶媒である。いくつかの実施形態では、尿素を含む溶液は水溶液である。特定の実施形態では、尿素を含む溶液は動物の排泄物を含み、それは任意選択で動物の尿とすることができる。本明細書に記載される方法に対する供給原料として、尿素を含む任意の動物の排泄物を用いることができる。特定の実施形態では、動物は、マウス、ラット、ウサギ、モルモット、イヌ、ネコ、ヒツジ、ヤギ、ウシ、サル、チンパンジー、エイプ及びヒトからなる群から選択することが可能な哺乳類である。
【0019】
[0019]ウレアーゼは、広い温度範囲を通して活性である。しかしそれは、最適化された温度の範囲内で触媒として最も効率的になる。したがって、尿素及びウレアーゼを含む溶液の温度を、最適化された温度の範囲に保つことが望ましい。いくつかの実施形態では、溶液をウレアーゼと接触させる前に温度を変化させる。別の実施形態では、溶液をウレアーゼと接触させた後に温度を変化させる。いくつかの実施形態では、尿素を含む溶液は所望の温度より高い。こうした実施形態では、溶液を所望の温度まで冷却する。他の実施形態では、溶液は周囲温度より低い。こうした実施形態では、溶液を所望の温度まで加熱する。
【0020】
[0020]いくつかの実施形態では、尿素を含む溶液の温度を変化させて25℃超にする。いくつかの実施形態では、尿素を含む溶液の温度を変化させて30℃超にする。いくつかの実施形態では、尿素を含む溶液の温度を変化させて40℃超にする。いくつかの実施形態では、尿素を含む溶液の温度を変化させて50℃超にする。いくつかの実施形態では、尿素を含む溶液の温度を変化させて60℃超にする。いくつかの実施形態では、尿素を含む溶液の温度を変化させて70℃超にする。いくつかの実施形態では、尿素を含む溶液の温度を変化させて80℃超にする。いくつかの実施形態では、尿素を含む溶液の温度を変化させて69℃にする。
【0021】
[0021]いくつかの実施形態では、尿素を含む溶液の温度をある温度範囲内にする。いくつかの実施形態では、温度は25〜90℃の間である。他の実施形態では、温度は30〜80℃の間である。他の実施形態では、温度は40〜75℃の間である。いくつかの実施形態では、温度は50〜70℃の間である。いくつかの実施形態では、温度は60〜70℃の間である。
【0022】
[0022]いくつかの実施形態では、第1の触媒は金属を含み、金属はその元素形態とすることができる。或いは、金属は酸化された状態又は還元された状態など、ゼロ以外の酸化状態にすることができる。いくつかの実施形態では、金属触媒は主族金属であるが、他の実施形態では、金属触媒は遷移金属である。特定の実施形態では、遷移金属はニッケルである。他の実施形態では、遷移金属はルビジウムである。
【0023】
[0023]いくつかの実施形態では、金属は金属の細片として存在する。他の実施形態では、金属は塩又は化合物の形であり、結晶形などの固体マトリックスの中に存在する。いくつかの実施形態では、(元素状であれ他の形であれ)金属は、セラミック、粘土、又はガス状のアンモニアが金属と接触することができるように十分に多孔性である他の固体状態のマトリックスの中に存在する。他の実施形態では、(元素状であれ他の形であれ)金属は、ポリマー又はゲルの中に存在する。いくつかの実施形態では、ニッケルは、ニッケル原子を保持すると共に窒素に対して通気性がある、SBA15などのメソ多孔性の酸化物材料の中に存在する。
【0024】
[0024]他の実施形態では、金属は、ガスがより効率的に金属上を通過することを可能にする一連の半多孔性の同心リングの形である。同心リングは、金属とガスの間の反応をより効率的にするようなより大きい表面積を示す。さらに、リングはガスの流れをある程度遮るため、リングから上流の空間と下流の空間との間に圧力障壁を生じさせ、以下にさらに詳しく説明するように、それが金属触媒を通るガスの流れを助ける。
【0025】
[0025]他の実施形態では、金属は、効率的な反応が行われるような大きい表面積を示す、粉末又は小さいペレットの形である。以下に説明するように、粉末を用いてプラグフロー反応を生じさせることができる。
【0026】
[0026]いくつかの実施形態では、本明細書に記載される方法はさらに、第1のガス状混合物を第2の触媒と接触させて、第1のガス状混合物より高い割合の水素の組成を有する第2のガス状混合物を生成するステップを含む。
【0027】
[0027]いくつかの実施形態では、第2の触媒は金属を含み、金属はその元素形態とすることができる。或いは、金属は酸化された状態又は還元された状態など、ゼロ以外の酸化状態にすることができる。いくつかの実施形態では、金属触媒は主族金属であるが、他の実施形態では、金属触媒は遷移金属である。特定の実施形態では、主族金属はリチウムである。いくつかの実施形態では、金属は塩の形で存在する。そうした塩の例はLiOHである。
【0028】
[0028]いくつかの実施形態では、本明細書に記載される方法はさらに、第1のガス状混合物を生成した後、尿素を含む溶液からウレアーゼを除去するステップを含む。
【0029】
[0029]他の態様として、本明細書では、尿素を含む溶液をウレアーゼと接触させてアンモニアを生成するステップと、アンモニアを第1の触媒と接触させて、分子状水素を含む第1のガス状混合物を生成するステップと、第1のガス状混合物を第2の触媒と接触させて、第1のガス状混合物より高い割合の水素の組成を有する第2のガス状混合物を生成するステップとを含む、分子状水素を生成する方法が開示される。
【0030】
[0030]他の態様として、本明細書では、水素を生成するための装置が開示される。図1は、水素発生装置100の実施形態の概略図である。水素発生装置100は、尿素を含む溶液及びウレアーゼを混合してアンモニアを生成する反応容器102を含む。
【0031】
[0031]いくつかの実施形態では、反応容器102は温度制御ユニット(図示せず)を備える。温度制御ユニットは、反応容器102の内容物の温度を上昇又は下降させること、或いは温度をあらかじめ設定した値に維持することが可能である。温度制御ユニットは、反応容器102のまわりのジャケットを含むことができ、それによって、管腔内空間の温度をある所定のレベルに維持するために、冷却又は加熱された流体がジャケットを通過するようにする。或いは、温度制御ユニットは、反応容器102の中に配置され、その内容物を加熱することが可能な加熱要素とすることができる。
【0032】
[0032]或いは、反応容器102は温度制御ユニットを有していない。こうした実施形態では、尿素を含む溶液を反応容器102の中に導入する前に、溶液の温度を所定の値まで変化させる。
【0033】
[0033]いくつかの実施形態では、ウレアーゼ酵素が、固体の形で又は溶液の一部として反応容器102に加えられる。他の実施形態では、反応容器102はウレアーゼの層104を備える。図1では、ウレアーゼの層104は反応容器102の底部に配置されたように示してあるが、ウレアーゼの層104を、例えば壁の1つに取り付ける、容器102の中央に配置する、又は容器102の中に浮かべるなど、反応容器102の中の任意の場所に配置することが可能であることが理解される。
【0034】
[0034]いくつかの実施形態では、ウレアーゼは、層104の中に小さい束として保持され、反応溶液中にゆっくりと放出される。他の実施形態では、層104は、例えば所望の速度で溶解するポリマーのマトリックスにウレアーゼを埋め込むことによる、ウレアーゼの放出制御製剤を含む。
【0035】
[0035]いくつかの実施形態では、反応容器102はさらにミキサ(図示せず)を備える。ミキサは、機械的なミキサ、スタティックミキサ、又は回転ブレードなどの機械的な撹拌器とすることができる。或いはミキサは、溶液を反応容器102の中で方々に移動させるポンプとすることができる。いくつかの実施形態では、反応容器102はミキサを備えていない。こうした実施形態の一部では、反応及びガス状のアンモニアの発生によって引き起こされる溶液の攪拌は、溶液を満足のいくレベルまで混合するのに十分なものである。
【0036】
[0036]好ましくは、反応容器102は、尿素を含む溶液をそれを通して容器102の中に導入する開口部106を備える。いくつかの実施形態では、パイプ108が開口部106に通じており、その場合、尿素を含む溶液がパイプ108を通って移動し、開口部106を通って容器102に入る。いくつかの実施形態では、パイプ108は、尿素を含む溶液を反応容器102の中に導入する前に、溶液の温度を上昇又は下降させることが可能な温度制御ユニット(図示せず)を備える。温度制御ユニットは、パイプ108のまわりのジャケットを含むことができ、それによって、管腔内空間の温度をある所定のレベルに維持するために、冷却又は加熱された流体がジャケットを通過するようにする。他の実施形態では、温度制御ユニットは、パイプ108の管腔内に配置され、パイプ108を通過する液体を所望の温度まで加熱することが可能な電気コイル又は加熱ユニットである。
【0037】
[0037]いくつかの実施形態では、反応容器102は、使用済みの反応混合物がそれを通って反応容器102を出る開口部110を備える。いくつかの実施形態では、開口部108から離れたところにパイプ112が通じている。パイプ112は、使用済みの反応混合物を処理する処理タンク、処理設備又は下水管に通じるようにすることができる。
【0038】
[0038]場合によっては、ウレアーゼと尿素の間の反応は完了しない。換言すれば、反応がもはや大した量のアンモニアが生成されない時点まで進行した後でも、反応混合物中には依然としてかなりの量の尿素が残っている。使用済みの反応混合物(すなわち、アンモニアを発生させる反応が行われた後の反応混合物)を別の経路で運び、反応容器102の中に戻し、その中に含まれる残りの尿素をウレアーゼにさらに曝すことができる。それに応じて、いくつかの実施形態では、使用済みの反応混合物をループ化して反応容器102の中に戻すことが可能なフィードバックループ用のパイプ114が設けられる。いくつかの実施形態では、出口の開口部116(使用済みの反応混合物がそれを通って反応容器102を出てパイプ114に入る開口部)には、使用済みの反応混合物からウレアーゼを除去し、次の反応のためにウレアーゼを反応容器102の中に保持することが可能なフィルタが取り付けられる。いくつかの実施形態では、フィルタは半浸透性の膜であり、ウレアーゼに関しては不浸透性であるが、水及び尿素などのより小さい分子に関しては浸透性である。いくつかの実施形態では、パイプ114を通る液体の流れを制御することが可能なポンプ(図示せず)が設けられる。
【0039】
[0039]生成されたガス状のアンモニアがそれを通って反応容器102を出る、開口部118が設けられる。好ましくは、パイプ120は生成されたガスを下流に運ぶ。
【0040】
[0040]いくつかの実施形態では、一連の触媒がパイプ120の中に埋め込まれる。第1の触媒122は、先に論じたハーバー法の逆反応によってアンモニアを水素と窒素に変える。いくつかの実施形態では、触媒122はニッケルを含む。いくつかの実施形態では、触媒122は、プラグとして存在する粉末又は同心リングの形であり、そのどちらも、アンモニアが触媒122を通過するようにパイプ120の中に断面の形に配置される。他の実施形態では、触媒122がパイプ120の管腔の内側を覆い、その結果、アンモニアがパイプ120を通過するとき、アンモニアは触媒122の上を通過し、それと接触するようになる。
【0041】
[0041](尿素の加水分解の間に生成される)二酸化炭素、及び(ハーバー法の逆反応の間に生成される)窒素など、水素以外のガスの一部を除去することが可能な第2の触媒124が設けられる。触媒124の目的は、装置の生成物中の水素の割合を高めることである。いくつかの実施形態では、触媒124はリチウムを含む。いくつかの実施形態では、触媒124は、プラグとして存在する粉末又は同心リングの形であり、そのどちらも、アンモニアが触媒124を通過するようにパイプ120の中に断面の形に配置される。他の実施形態では、触媒124がパイプ120の管腔の内側を覆い、その結果、アンモニアがパイプ120を通過するとき、アンモニアは触媒124の上を通過し、それと接触するようになる。
【0042】
[0042]最終的には、パイプ120は装置の生成物を使用する地点まで運ぶ。使用する地点は、貯蔵場所、装置の生成物中の不純物及び外来のガスのすべて又は一部を除去する、さらに精製を行うためのステーション、或いは水素を燃焼させる燃焼機関などとすることができる。
【0043】
[0043]いくつかの実施形態では、反応容器102で生成されたガスを、ポンプ(図示せず)を用いてパイプ120の中に吸引する又は押し込むことができる。他の実施形態では、ポンプは存在しない。反応が進むにつれて、より多くのアンモニアが生成され、それが反応容器102の中の圧力を高める。圧力が高まることにより、ガスがパイプ120を通って流出する。また反応容器102に尿素を含む溶液をさらに加えると、容器102の上部空間の体積がさらに減少し、それによって上部空間内の圧力が高まり、上部空間内のガスを開口部118及びパイプ120を通して流出させる。さらに、触媒122又は124が粉末のプラグ又は同心円としてパイプ120の中に断面の形に配置されると、それらがパイプ120を通るガスの流れを減速させ、それによって触媒122又は124を横断する圧力勾配が形成され、触媒122又は124から上流の圧力が触媒122又は124から下流の圧力より大きくなる。この圧力勾配によって、反応容器102内のガスの圧力が高まる。触媒122又は124から上流のガスの圧力が高まると、ガスがパイプ120を通って移動し、容器102から離れることが可能になり、機械的なポンピングを追加する必要はない。
【0044】
[0044]尿素の加水分解が起こると、尿素がCOとNHに変えられ、その両方がガスとして溶液から逃げる。このため、使用済みの溶液の密度が新しい(すなわち未反応の)尿素を含む溶液の密度より小さくなる。次いで、使用済みの溶液は全体的に、反応容器102内の液体混合物の上部近くに存在するようになり、一方、依然としてかなりの量の尿素を有する溶液の一部は底部に向かう傾向がある。したがって、いくつかの実施形態では、図1に示すように開口部110を液体の上部近くに配置し、使用済みの溶液が開口部110を通って容器102を出て、未反応の溶液を容器102内に残すことができるようにする。こうした実施形態の一部(図示せず)では、開口部106が容器102の底部の方にあり、したがって、未反応の溶液が底部から容器102に入り、使用済みの溶液を開口部110に向かって押し上げるようになる。
【0045】
[0045]図1に示す実施形態では、水素発生装置100は、反応を持続するように、尿素を含む溶液の供給を保つための保持容器126を備えている。尿素を含む溶液は、パイプ108を通って容器126を出て、開口部106を通って反応容器102に入る。
【実施例】
【0046】
[0046]以下の実施例は非限定的であり、本明細書に開示される本発明の実施形態の一部を例示するものにすぎない。
【0047】
実施例1:アンモニアの生成
[0047]以下の手順を用いてアンモニアを生成した:
【0048】
[0048]純粋な尿をビーカーに入れた。尿の温度を所望の温度(表1参照)に調整した。所望の温度を達成した後、加熱した尿にウレアーゼを入れた。ウレアーゼは、Canavalia ensiformis(タチナタマメ)由来(CAS番号9002−13−5、Sigma−Aldrichより入手、目録#Fluka94281)の〜8ユニット/mg(1ユニットは、pH8.0及び25℃で1分あたり1μmolの尿素を加水分解する酵素の量に相当する)のものであった。
【0049】
[0049]ネスラー溶液に浸した1枚の紙を、速やかにビーカーの上に置いた。白色から褐色への色の変化(白色/黄色/淡褐色/褐色/暗褐色の尺度)を記録した。紙の暗度は生成されたアンモニアの量に関係する。結果を表1に要約する。
【表1】

【0050】
実施例2:水素の生成
[0043]アンモニアを生成した後、触媒を通過させて水素と窒素を発生させた。3種類の異なる触媒、すなわちニッケル、白金及びルビジウムについて試験を行った。結果を表2に示す。
【0051】
[0044]アンモニアガスは触媒を通過させた後及び通過させる前に、パイプを通過させた。触媒を通過する前にCOを捕捉するために、パイプの内側をリチウムで覆った。触媒の後、ガスをやはり内側をリチウムで覆った第2のパイプを通過させた。リチウムへの2度目の暴露は、アンモニアの解離によってその元素状成分の中に生じたNを捕捉するように設計した。
【0052】
[0045]パイプの端部にバルーンを配置して、流出ガスを捕捉した。バルーンは、ガスの発生が完了した直後に結び付けた。バルーンの直径をインチ単位で測定した。次いでバルーンに点火し、結果として生じる爆発の強さを記録した。爆発の強さは、水素発生の有無、存在する場合にはその量に対する定性的な測定手法として用いた。結果を表2に示す。
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
尿素を含む溶液をウレアーゼと接触させてアンモニアを生成するステップと、
前記アンモニアを第1の触媒と接触させて、分子状水素を含む第1のガス状混合物を生成するステップと
を含む分子状水素を生成する方法。
【請求項2】
前記尿素を含む溶液が水溶液である請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記尿素を含む溶液が、哺乳類である動物の尿を含む請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記尿素を含む溶液が、ウレアーゼと接触させる前に周囲温度より高く加熱される請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記尿素を含む溶液が、25℃超、30℃超、40℃超、50℃超、60℃超、70℃超及び80℃超からなる群から選択される温度まで加熱される請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記尿素を含む溶液が約70℃まで加熱される請求項7に記載の方法。
【請求項7】
前記第1の触媒が金属を含む請求項1に記載の方法。
【請求項8】
前記金属が元素形態として存在する、又は前記金属が、ゼロ以外の酸化状態である請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記金属が主族金属又は遷移金属である請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記遷移金属がニッケルである請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記第1のガス状混合物が、分子状水素及び分子状窒素を含む請求項1に記載の方法。
【請求項12】
前記第1のガス状混合物を第2の触媒と接触させて、前記第1のガス状混合物より高い割合の水素の組成を有する第2のガス状混合物を生成するステップをさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項13】
前記第2の触媒が金属を含む請求項26に記載の方法。
【請求項14】
前記金属が元素形態として存在する、又は前記金属が、ゼロ以外の酸化状態である請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記金属が主族金属又は遷移金属である請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記主族金属がリチウムである請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記第1のガス状混合物を生成した後、前記尿素を含む溶液から前記ウレアーゼを除去するステップをさらに含む請求項1に記載の方法。
【請求項18】
尿素を含む溶液をウレアーゼと接触させてアンモニアを生成するステップと、
前記アンモニアを第1の触媒と接触させて、分子状水素を含む第1のガス状混合物を生成するステップと
前記第1のガス状混合物を第2の触媒と接触させて、前記第1のガス状混合物より高い割合の水素の組成を有する第2のガス状混合物を生成するステップと
を含む分子状水素を生成する方法。
【請求項19】
尿素を含む溶液をウレアーゼと接触させてアンモニアを生成するステップと、
前記アンモニアをニッケル触媒と接触させて、分子状水素を含む第1のガス状混合物を生成するステップと
前記第1のガス状混合物をリチウム触媒と接触させて、前記第1のガス状混合物より高い割合の水素の組成を有する第2のガス状混合物を生成するステップと
を含む分子状水素を生成する方法。
【請求項20】
反応容器と、
反応物を前記反応容器の中に導入するための前記反応容器上の第1の開口部と、
前記反応容器からガスを取り出すための前記反応容器上の第2の開口部と、
前記容器から使用済みの反応物を取り出すための前記反応容器上の第3の開口部と、
前記第2の開口部に接続された第1のパイプと、
アンモニアを水素と窒素に変えるための第1の触媒と
を備える水素を生成するための装置。
【請求項21】
第2のパイプをさらに備え、前記第1の開口部が前記第2のパイプと流体的に連通する請求項20に記載の装置。
【請求項22】
前記第2のパイプと流体的に連通する保持容器をさらに備える請求項21に記載の装置。
【請求項23】
前記第3の開口部と流体的に連通する第3のパイプをさらに備える請求項20に記載の装置。
【請求項24】
前記第1の触媒が、前記第1のパイプの管腔内空間に配置される請求項20に記載の装置。
【請求項25】
窒素を除去するための第2の触媒をさらに備える請求項20に記載の装置。
【請求項26】
前記第2の触媒が二酸化炭素をさらに除去する請求項25に記載の装置。
【請求項27】
前記第2の触媒が、前記第1のパイプの管腔内空間に配置される請求項25に記載の装置。
【請求項28】
温度制御ユニットをさらに備える請求項20に記載の装置。

【図1】
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【公表番号】特表2010−540391(P2010−540391A)
【公表日】平成22年12月24日(2010.12.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−527127(P2010−527127)
【出願日】平成20年9月25日(2008.9.25)
【国際出願番号】PCT/US2008/077618
【国際公開番号】WO2009/042745
【国際公開日】平成21年4月2日(2009.4.2)
【出願人】(510247571)シドカー グリーン テクノロジーズ エルエルピー (1)
【Fターム(参考)】