説明

バイオマス低糖化装置、エタノール製造装置及びバイオマス低糖化方法

【課題】リグニンを除去して単糖の収率を向上させると共に固体酸触媒を劣化させることなくバイオマスを単糖化する。
【解決手段】アンモニアを用いてセルロース系バイオマスに含まれるリグニンを分解すると共に、加圧熱水を用いてセルロース系バイオマスに含まれる多糖類を低糖化する第1分解装置1と、該第1分解装置1にアンモニアを供給するアンモニア供給手段3と、第1分解装置1に加圧熱水を供給する加圧熱水供給装置2と、第1分解装置1からアンモニア及びリグニン分解物を回収する回収装置3と、アンモニア及びリグニン分解物が除去された第1分解装置1の低糖化物のpHを7以下に調整するpH調整手段4,6と、該pH調整手段4,6の処理物を、固体酸触媒を用いて単糖化する第2分解装置5とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオマス低糖化装置、エタノール製造装置及びバイオマス低糖化方法に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、バイオマスを加圧熱水処理した後に固体酸触媒で単糖化するバイオマスの糖化方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−279255号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、木質系のバイオマスは、成果物の原料となるセルロースやヘミセルロースの他にリグニンを主成分として含んでいる。このリグニンは、三次元網目構造を形成した高分子化合物であり、セルロースやヘミセルロースの周囲を覆っているために、セルロースやヘミセルロースを分解して低糖化する上で阻害物である。このようなリグニンを分解除去するためには一般にアルカリ溶液中で加熱する方法が採られるが、上記従来技術においてアルカリ溶液を使用してリグニンを分解した場合に、アルカリ成分が後段の固体酸触媒を劣化させる虞がある。
【0005】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、リグニンを除去して単糖の収率を向上させると共に固体酸触媒を劣化させることなくバイオマスを単糖化することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明では、バイオマス低糖化装置に係る第1の解決手段として、アンモニアを用いてセルロース系バイオマスに含まれるリグニンを分解すると共に、加圧熱水を用いてセルロース系バイオマスに含まれる多糖類を分解する第1分解装置と、該第1分解装置にアンモニアを供給するアンモニア供給手段と、第1分解装置に加圧熱水を供給する加圧熱水供給装置と、第1分解装置からアンモニア及びリグニン分解物を回収する回収装置と、アンモニア及びリグニン分解物が除去された第1分解装置の分解物のpHを7以下に調整するpH調整手段と、該pH調整手段の処理物を、固体酸触媒を用いて単糖類に分解する第2分解装置とを具備する、という手段を採用する。
【0007】
バイオマス低糖化装置に係る第2の解決手段として、アンモニアを用いてセルロース系バイオマスに含まれるリグニンを分解するリグニン分解装置と、該リグニン分解装置にアンモニアを供給するアンモニア供給手段と、リグニン分解装置からアンモニア及びリグニン分解物を回収する回収装置と、リグニン分解装置の残渣を、加圧熱水を用いて分解する第1分解装置と、リグニン分解装置及び第1分解装置に加圧熱水を供給する加圧熱水供給装置と、アンモニア及びリグニン分解物が除去された第1分解装置の分解物あるいはリグニン分解装置の残渣のpHを7以下に調整するpH調整手段と、該pH調整手段の処理物を、固体酸触媒を用いて単糖類に分解する第2分解装置とを具備する、という手段を採用する。
【0008】
バイオマス低糖化装置に係る第3の解決手段として、上記第1または第2の解決手段において、pH調整手段は、第1糖化装置の分解物のpHを7以下に調整する、という手段を採用する。
【0009】
また、本発明では、エタノール製造装置に係る第1の解決手段として、上記第1〜第3のいずれかの解決手段に係るバイオマス低糖化装置と、該バイオマス糖化装置から得られる単糖類をアルコール発酵処理するアルコール発酵装置と、該アルコール発酵装置の処理液を蒸留処理してエタノールを分離する蒸留装置とを具備する、という手段を採用する。
【0010】
エタノール製造装置に係る第2の解決手段として、上記第1の解決手段において、上記第3の解決手段に係るバイオマス低糖化装置を用いる場合、アルコール発酵装置で発生する二酸化炭素を用いて第1分解装置の分解物をpH調整する、という手段を採用する。
【0011】
また、本発明では、バイオマス低糖化方法に係る解決手段として、アンモニアを用いてセルロース系バイオマスに含まれるリグニンを分解すると共に、加圧熱水を用いてセルロース系バイオマスに含まれる多糖類を分解する第1分解工程と、第1分解工程の分解物からアンモニア及びリグニン分解物を分離して回収する回収工程と、該回収工程を経ることによりアンモニア及びリグニン分解物が除去された第1分解工程の分解物のpHを7以下に調整するpH調整工程と、該pH調整工程の処理物を、固体酸触媒を用いて単糖類に分解する第2分解工程とを有する、という手段を採用する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、セルロース系バイオマスに含まれるリグニンをアンモニアを用いて分解すると共にリグニン分解物を回収したものを第2分解装置(工程)で単糖化するので、単糖の収率を向上させることができると共に固体酸触媒を劣化させることなくバイオマスを単糖化することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の第1実施形態に係るエタノール製造プラントAの構成を示すシステム構成図である。
【図2】本発明の第2実施形態に係るエタノール製造プラントBの構成を示すシステム構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
〔第1実施形態〕
最初に、第1実施形態について説明する。本実施形態に係るエタノール製造プラントAは、図1に示すように、熱水処理装置1、加圧熱水供給装置2、回収装置3、タンク4、固体酸触媒糖化装置5、アルコール発酵装置6及び蒸留装置7によって構成されている。これら構成要件のうち、熱水処理装置1、加圧熱水供給装置2、回収装置3、タンク4及び固体酸触媒糖化装置5は、バイオマス低糖化装置を構成している。
【0015】
エタノール製造プラントAは、バイオマス(化石資源を除く生物由来の資源)の一種である木材チップ(セルロース系バイオマス)を原料X1としてエタノール(バイオエタノール)を製造する化学プラントである。
【0016】
周知のように、セルロース系バイオマスは、セルロース、ヘミセルロース及びリグニンを主成分とする。セルロースは単糖類であるグルコース(C12:六炭糖)が重合した多糖類であり、一方、ヘミセルロースは、上記グルコース以外の単糖類のみもしくは複数の単糖類が重合した多糖類である。また、リグニンは、3種類のモノマーが高度に重合することにより三次元網目構造を形成する巨大な生体高分子である。
【0017】
セルロース系バイオマスは、セルロース及びヘミセルロースを細胞壁を構成する多糖類として含むと共に、これらセルロース及びヘミセルロースを三次元網目構造を有するリグニンが取り囲むことにより木質を形成するものである。このようなセルロース系バイオマスは、エタノール(バイオエタノール)の製造原料として近年注目されている。
【0018】
熱水処理装置1は、内部に収納された上記原料X1にアンモニア水X2と加圧熱水X3とを作用させることによりリグニンを選択的に加水分解すると共に、当該リグニン分解後の残渣に加圧熱水X3を作用させることによりセルロース及びヘミセルロースを加水分解する装置である。熱水処理装置1におけるリグニンの分解条件は、例えばアンモニア濃度:10%、温度:100〜150℃、気圧:1.5MPa程度である。また、セルロース及びヘミセルロースの分解条件は、例えば温度:150〜300℃、圧力:飽和蒸気圧以上である。
【0019】
このような熱水処理装置1は、アンモニア水X2及び加圧熱水X3を用いてリグニンを分解すると共に、加圧熱水X3を用いてセルロース及びヘミセルロース(多糖類)を重合度がさらに低い多糖類(オリゴ糖等の分解物)に低糖化する第1分解装置として機能するものであり、アンモニア水X2及び当該加水分解によって得られたリグニン分解物の混合水X4を回収装置3に排出すると共に、セルロース及びヘミセルロースの分解によって得られた多糖水X5をタンク4に供給する。
【0020】
加圧熱水供給装置2は、このような熱水処理装置1に所定量の上記加圧熱水X3を供給する装置である。回収装置3は、上記熱水処理装置1に所定量のアンモニア水X2を供給すると共に、当該アンモニア水X2の供給から一定時間が経過したタイミングで上記混合水X4を回収する装置である。この回収装置3は、熱水処理装置1にアンモニアを供給するアンモニア供給手段と、熱水処理装置1からアンモニア及び該アンモニアによって生成されたリグニン分解物を回収する回収手段として機能する。
【0021】
タンク4は、上記熱水処理装置1から多糖水X5を受け入れると共に、アルコール発酵装置6から二酸化炭素(CO)を受け入れ、また外部から空気を受け入れる所定容量の貯留槽である。このタンク4は、所定時間に亘って上記多糖水X5に外部から受け入れた空気を曝気することによって、多糖水X5に含まれるアンモニアを除去すると共に多糖水X5のpHを中性付近に低下させる。また、このタンク4は、アルコール発酵装置6から受け入れた二酸化炭素(CO)を曝気することによって、多糖水X5のpHを7以下にpH調整するものであり、当該pH調整によって得られた調整多糖水X6を固体酸触媒糖化装置5に供給する。このようなタンク4と当該タンク4に二酸化炭素(CO)を供給するアルコール発酵装置6とは、熱水処理装置1の多糖水X5を二酸化炭素(CO)を用いてpH調整するpH調整手段を構成している。
【0022】
固体酸触媒糖化装置5は、粒状の固体酸触媒X7が内部に充填されており、当該固体酸触媒X7を上記タンク4から供給された調整多糖水X6に作用させることにより低糖化する装置である。この固体酸触媒糖化装置5は、タンク4から供給された調整多糖水X6を固体酸触媒2aの触媒作用によって単糖類(五炭糖や六炭糖)に加水分解する第2分解装置として機能するものであり、上記単糖類の水溶液(単糖水X8)をアルコール発酵装置6に供給する。
【0023】
上記固体酸触媒X7は、例えば植物から得られる炭を原料そして合成された固体の触媒であり、従来の硫酸触媒(液体触媒)に匹敵する高性能触媒である。なお、固体酸触媒糖化装置5における分解温度は、固体酸触媒X7の活性が最も高まる温度、例えば90〜100℃程度であり、上記熱水処理装置1におけるセルロース及びヘミセルロースの分解温度よりも低い温度である。
【0024】
アルコール発酵装置6は、上記単糖水X8に含まれる単糖類を酵母を用いて発酵処理することによりエタノールと二酸化炭素とを生成する。このアルコール発酵装置6は、液相であるエタノール及び水の混合水X9を蒸留装置7に供給する一方、気相である二酸化炭素(CO)をタンク4に供給する。蒸留装置7は、アルコール発酵装置6から供給された混合水X9を蒸留処理することによりエタノールと水とを分離し、製品としてのエタノール(バイオエタノール)を外部に供給する。
【0025】
次に、このように構成されたエタノール製造プラントAの動作について、さらに詳しく説明する。
【0026】
本エタノール製造プラントAでは、熱水処理装置1内に所定量の原料X1(セルロース系バイオマス)が収容される。そして、熱水処理装置1において2段階の分解工程が行われる。すなわち、第1の分解工程として、回収装置3から所定量のアンモニア水X2が熱水処理装置1内に供給されると共に加圧熱水供給装置2から所定量の加圧熱水X3が熱水処理装置1内に供給されることにより、原料X1(セルロース系バイオマス)に含まれるリグニンが選択的(優先的)に分解される。そして、このような第1の分解工程に続く第2の分解工程として、熱水処理装置1内に加圧熱水供給装置2から所定量の加圧熱水X3が供給されることにより、原料X1(セルロース系バイオマス)に含まれるセルロース及びヘミセルロースが分解される。
【0027】
上記第1の分解工程では、アンモニア水X2と加圧熱水X3とは熱水処理装置1内に連続的に供給されるが、例えば両者の流量が調整されることにより熱水処理装置1内の雰囲気が上述したリグニンの分解条件(例えばアンモニア濃度:10%、温度:100〜150℃、気圧:1.5MPa程度)を満足する状態に設定される。そして、アンモニア水X2及び加圧熱水X3の連続供給と並行して、熱水処理装置1内からアンモニア水X2及び当該加水分解によって得られたリグニン分解物の混合水X4が回収装置3に連続的に回収される。
【0028】
第1の分解工程では、このようなアンモニア水X2及び加圧熱水X3の連続供給と混合水X4の連続回収とを一定時間に亘って行うことにより、熱水処理装置1内では原料X1(セルロース系バイオマス)に含まれるリグニンがアンモニア水X2のアルカリ作用及び加圧熱水X3の温度・圧力作用によって選択的(優先的)に分解され、混合水X4として、回収装置3に排出される。
【0029】
そして、第2の分解工程では、加圧熱水X3が熱水処理装置1内に連続的に供給されることにより熱水処理装置1内の雰囲気が上述したセルロース及びヘミセルロースの分解条件(例えば温度:150〜300℃、圧力:飽和蒸気圧以上)を満足する状態に設定される。そして、加圧熱水X3の連続供給と並行して、熱水処理装置1内からセルロース及びヘミセルロースの分解によって得られた多糖水X5がタンク4に連続的に供給される。
【0030】
ここで、アルカリとして作用するアンモニア水X2の存在下において、リグニンは、セルロース及びヘミセルロースよりも低い分解温度、つまり100〜150℃程度で加水分解するが、アルカリが存在しない環境下では分解温度がこれよりも高く、つまりセルロース及びヘミセルロースの分解温度に近づく。アンモニア水X2及び加圧熱水X3によって設定されるリグニンの分解条件は、ヘミセルロースの分解を極力避けつつリグニンをより効果的に分解するものとすべきである。
【0031】
そして、上記多糖水X5は、タンク4に供給され、外部から受け入れた空気が曝気されることによってアンモニアが除去されると共にpHが中性付近に低下する。さらに、このようにしてpHが中性付近に低下した多糖水X5には、二酸化炭素(CO)が曝気されることによって、pHが7以下に調整され、調整多糖水X6として固体酸触媒糖化装置5に供給される。上記調整多糖水X6は、固体酸触媒糖化装置5に供給され、固体酸触媒x7の触媒作用によって加水分解され単糖化し、グルコース等の単糖類を豊富に含む単糖水X8としてアルコール発酵装置6に供給される。
【0032】
そして、単糖水X8中の単糖類は、アルコール発酵装置6によってアルコール発酵処理されることによりエタノールX10と二酸化炭素(CO)とに分解される。そして、エタノールX10と水とは蒸留装置7に送られてエタノールX10が製品として分離される。また、アルコール発酵装置6で発生した二酸化炭素(CO)は、上記pH調整剤としてタンク4に供給される。
【0033】
このような第1実施形態によれば、セルロース系バイオマスに含まれるリグニンをアルカリとして作用すると共に分離が比較的容易なアンモニア水X2を用いて熱水処理装置1で分解すると共に、当該アンモニア水X2及びリグニン分解物を熱水処理装置1から回収装置3に回収するので、リグニンを分解除去することによって固体酸触媒糖化装置5における単糖類の収率を向上させることができると共に、アルカリとして作用するアンモニア水X2が固体酸触媒糖化装置5に供給されないので固体酸触媒X7の劣化を防止することができる。
【0034】
〔第2実施形態〕
続いて、第2実施形態について説明する。本実施形態に係るエタノール製造プラントBは、図2に示すように、上述した第1実施形態に係るエタノール製造プラントAにアンモニア処理装置8を追加したものである。なお、図2では、エタノール製造プラントAと同一な構成要素には同一符号を付しておいる。
【0035】
アンモニア処理装置8は、内部に収納された上記原料X1(セルロース系バイオマス)にアンモニア水X2を作用させると共に加熱・加圧することにより、原料X1に含まれるリグニンを選択的に加水分解するリグニン分解装置である。すなわち、このアンモニア処理装置8は、第1実施形態における第1の分解工程を行う装置であり、この結果得られた残渣X1aを熱水処理装置1に供給する。
【0036】
このようなアンモニア処理装置8の追加に伴って、本エタノール製造プラントBにおける熱水処理装置1は、上記残渣X1aに対して第2の分解工程を行うものとなる。また、本エタノール製造プラントBにおける回収装置3は、アンモニア処理装置8に対してアンモニア水X2を供給すると共に、当該アンモニア水X2とリグニン分解物との混合物X4を回収する。
【0037】
このような第2実施形態によれば、上述した第1実施形態と同様の効果を得ることができる。すなわち、第2実施形態によれば、セルロース系バイオマスに含まれるリグニンをアルカリとして作用すると共に分離が比較的容易なアンモニア水X2を用いてアンモニア処理装置8で分解すると共に、当該アンモニア水X2及びリグニン分解物をアンモニア処理装置8から回収装置3に回収するので、リグニンを分解除去することによって固体酸触媒糖化装置5における単糖類の収率を向上させることができると共に、アルカリとして作用するアンモニア水X2による固体酸触媒X7の劣化を防止することができる。
【0038】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、例えば以下のような変形例が考えられる。
(1)上記実施形態では、バイオマス低糖化装置をエタノール製造プラントA,Bの構成要素としたが、本発明はこれに限定されない。バイオマス低糖化装置は、エタノール製造プラントA,B以外にも様々な用途が考えられる。
【0039】
(2)上記実施形態では、熱水処理装置1(第1分解装置)の多糖水X5をpH調整するためにタンク4を設けたが、必要に応じてタンク4を削除してもよい。例えば、アンモニア水X2の濃度を比較的低い値とし、これに代えて第1の分解工程の処理時間を長くすることにより、リグニンの分解性能を確保しつつリグニン分解物が除去された残渣の残留アンモニア濃度を低下させることが可能である。この場合にはタンク4を用いたpH調整は不要となる。
また、pH調整用の空気及び二酸化炭素(CO)を熱水処理装置1あるいは/及びアンモニア処理装置8に供給して第1の分解工程後の多糖水X5のpHを7以下にpH調整することにより、タンク4を削除してもよい。
【0040】
(3)また、第1の分解工程後に熱水処理装置1に加圧熱水X3のみを供給することによってリグニン分解物が除去された残渣を洗浄し、残留アンモニアの濃度を大幅に低減することが可能である。この場合にはタンク4を用いたpH調整は不要となる。
【0041】
(4)上記実施形態では、植物から得られる炭を原料そして合成された固体酸触媒2aを用いるが、本発明はこれに限定されない。
【符号の説明】
【0042】
A,B…エタノール製造プラント、1…熱水処理装置(第1分解装置)、2…加圧熱水供給装置、3…回収装置、4…タンク、5…固体酸触媒糖化装置(第2分解装置)、6…アルコール発酵装置、7…蒸留装置、8…アンモニア処理装置(リグニン分解装置)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
アンモニアを用いてセルロース系バイオマスに含まれるリグニンを分解すると共に、加圧熱水を用いてセルロース系バイオマスに含まれる多糖類を分解する第1分解装置と、
該第1分解装置にアンモニアを供給するアンモニア供給手段と、
第1分解装置に加圧熱水を供給する加圧熱水供給装置と、
第1分解装置からアンモニア及びリグニン分解物を回収する回収装置と、
アンモニア及びリグニン分解物が除去された第1分解装置の分解物のpHを7以下に調整するpH調整手段と、
該pH調整手段の処理物を、固体酸触媒を用いて単糖類に分解する第2分解装置と
を具備することを特徴とするバイオマス低糖化装置。
【請求項2】
アンモニアを用いてセルロース系バイオマスに含まれるリグニンを分解するリグニン分解装置と、
該リグニン分解装置にアンモニアを供給するアンモニア供給手段と、
リグニン分解装置からアンモニア及びリグニン分解物を回収する回収装置と、
リグニン分解装置の残渣を、加圧熱水を用いて分解する第1分解装置と、
リグニン分解装置及び第1分解装置に加圧熱水を供給する加圧熱水供給装置と、
アンモニア及びリグニン分解物が除去された第1分解装置の分解物あるいはリグニン分解装置の残渣のpHを7以下に調整するpH調整手段と、
該pH調整手段の処理物を、固体酸触媒を用いて単糖類に分解する第2分解装置と
を具備することを特徴とする請求項1記載のバイオマス低糖化装置。
【請求項3】
pH調整手段は、第1分解装置の分解物のpHを7以下に調整することを特徴とする請求項1または2記載のバイオマス低糖化装置。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載のバイオマス低糖化装置と、
該バイオマス糖化装置から得られる単糖類をアルコール発酵処理するアルコール発酵装置と、
該アルコール発酵装置の処理液を蒸留処理してエタノールを分離する蒸留装置と
を具備することを特徴とするエタノール製造装置。
【請求項5】
請求項3記載のバイオマス低糖化装置を用いる場合、アルコール発酵装置で発生する二酸化炭素を用いて第1分解装置の分解物をpH調整することを特徴とする請求項4記載のエタノール製造装置。
【請求項6】
アンモニアを用いてセルロース系バイオマスに含まれるリグニンを分解すると共に、加圧熱水を用いてセルロース系バイオマスに含まれる多糖類を分解する第1分解工程と、
第1分解工程の分解物からアンモニア及びリグニン分解物を分離して回収する回収工程と、
該回収工程を経ることによりアンモニア及びリグニン分解物が除去された第1分解工程の分解物のpHを7以下に調整するpH調整工程と、
該pH調整工程の処理物を、固体酸触媒を用いて単糖類に分解する第2分解工程と
を有することを特徴とするバイオマス低糖化方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2013−9606(P2013−9606A)
【公開日】平成25年1月17日(2013.1.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−142847(P2011−142847)
【出願日】平成23年6月28日(2011.6.28)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】