説明

バイオマス原料の処理方法

【課題】
本発明は、このような従来の問題点に着目してなされたもので、その目的は、良好なバイオマスを提供することにある。
【解決手段】
すなわち、本発明のバイオマスの処理方法は、バイオマス中に含まれる、ヒ素、アンチモン、セレン、クロム、及び/又は銅を、希土類金属化合物を含有する吸着剤を用いて吸着し、除去することを特徴とする。前記ヒ素、アンチモン、及び/又はセレンを、選択的に吸着し、除去した後、さらに、前記クロム及び/又は銅を吸着し、除去することを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオマス原料の処理方法に関し、特に希土類金属化合物を含む吸着剤を用いたバイオマス原料の処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ガソリンなど石油資源の代替エネルギー源として、バイオマス(バイオエタノール)が世界的に注目されている。サトウキビやトウモロコシなどのデンプン系原料からバイオマスを製造する事業が活発であるが、これら原料の価格が高騰し、世界的な食料事情の悪化を招くことから、バイオマスの原料として、古紙や間伐材などのセルロース系原料を使用することが有望視されている。
【0003】
セルロース系原料からバイオマスを製造する際には、主に、(1)セルロースからグルコースへの糖化工程と、(2)グルコースからエタノールへの発酵工程、を経るのが一般的である(特許文献1、2)。
【0004】
一方、昭和40年代ごろから、木材の防腐や防蟻を目的として家屋の土台や電柱となる木材に、クロム、銅およびヒ素を含有する薬剤が使用されてきた。現在はこの薬剤はその毒性などから殆ど使用されないが、今後家屋の解体により、この薬剤によって処理された木材(CCA処理木材)が廃棄物として大量に排出されることが予想されている。現在、CCA処理木材の廃棄物は殆どが焼却・埋立処理されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2006−149343号公報
【特許文献2】特開2008−92883号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このようなCCA処理木材は、クロムとヒ素の毒性のため、バイオエタノールの原料に用いた場合には、上述のエタノールへの発酵工程における微生物発酵が阻害されるという問題点があった。これは、木質系バイオマス原料から、エタノールを生産するためには、廃木材を粉砕処理、熱化学的処理でセルロースとヘミセルロースに分離し、セルロースをセルラーゼでグルコースに糖化し、ヘミセルロースをキシラナーゼでキシロースに糖化し、酵母や好熱性細菌で糖(グルコースやキシロース)をエタノールに変換する。この際、セルラーゼ、キシラナーゼ、酵母等が、ヒ素、クロムの毒性で、酵素反応が阻害されると考えられるからである。
【0007】
また、CCA処理された廃木材からクロム、銅、ヒ素を分離した場合でも、毒性が高く、発ガン性を有する無機ヒ素とクロムの処理方法がないという問題点があった。
【0008】
そこで、本発明は、このような従来の問題点に着目してなされたもので、その目的は、バイオマス原料に含まれる有害物を安全かつ効果的に除去することにより、CCA処理木材のように、これまでバイオマス原料として用いることができなかった廃木材などを、バイオマス原料として使用することを可能にすることにある。さらに、本発明は、バイオマス原料から回収したヒ素等を安全に処理したり、希少金属を除去回収しつつ、エタノール精製等に有効なバイオマス原料の処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は上記目的を達成すべく、金属成分に対する吸着剤の効果について鋭意研究した結果、本発明のバイオマス原料の処理方法を見出すに至った。
【0010】
すなわち、本発明のバイオマスの処理方法は、バイオマス原料中に含まれる、ヒ素、アンチモン、セレン、クロム、及び/又は銅を、希土類金属化合物を含有する吸着剤を用いて吸着し、除去することを特徴とする。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、有害物を含有するバイオマス原料を用いても、微生物の発酵が阻害されることなく、良好なバイオマスを提供し得るという有利な効果を奏する。また、本発明により、ヒ素、クロムなどを分離することができるため、これらの金属の無害化処理を行ったり、精製して再利用することも可能であるという有利な効果をも奏する。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】図1は、廃材中のヒ素の無害化と、クロム及び銅のリサイクルの一例におけるスキームを示す。
【図2】図2は、クロムの水溶液の吸着試験の結果を示す。
【図3】図3は、ヒ素イオンの吸着試験の結果を示す。
【図4】図4は、銅イオンの吸着試験の結果を示す。
【図5】図5は、クロムイオンとヒ素イオンを含む水溶液の吸着試験の結果を示す。
【図6】図6は、銅イオンとヒ素イオンを含む水溶液の吸着試験の結果を示す。
【図7】図7は、クロムイオンと銅イオンを含む水溶液の吸着試験の結果を示す。
【図8】図8は、クロムイオンと銅イオンとヒ素を含む水溶液の吸着試験の結果を示す。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明のバイオマスの処理方法について説明する。
本発明は、バイオマス原料中に含まれる、ヒ素、アンチモン、セレン、クロム、及び/又は銅を、希土類金属化合物を含有する吸着剤を用いて吸着し、除去するものである。「バイオマス」とは、一般に、地球生物圏の物質循環系に組み込まれた生物体又は生物体から派生する有機物の集積をいい、デンプン系、セルロース系など存在するが、特に限定されるものではない。
【0014】
このバイオマスの原料としては、例えば、植物(樹木、作物など)、植物から生成されたもの(紙、木材、食品など)、古紙、食品廃棄物、建築発生木材、下水汚泥などの廃棄物、木材廃棄物などを挙げることができる。本発明においては、これらのバイオマス原料に、ヒ素、アンチモン、セレン、銅、又はクロムが含有されていても、エタノールを生産することが可能である。よって、従来殆ど焼却や埋立処理されていたCCA処理木材をバイオマス原料として用いることも可能となる。
【0015】
好ましい実施態様において、前記ヒ素、アンチモン、又はセレンを、選択的に吸着し、除去した後、さらに、前記クロム及び/又は銅を吸着し、除去する。クロム、銅等を完全に分離するためには、常法の分離処理を用いることができる。例えば、カチオン交換樹脂を用いるか、還元中和沈澱法などを用いてもよい。
【0016】
これによって、有害なヒ素等と希少金属であるクロム、銅等は、互いに分離されて、有害なヒ素等は、後述するように、無害化処理に施され、希少金属は産業界へ再び還元することができる。すなわち、本発明においては、最適なバイオマスを提供し得ると共に、ヒ素等の有害化合物は無害化することができ、希少金属は精製して産業界へ再び還元することができるという付随的な効果を奏する。廃材などの処理水と吸着剤とを接触させるための槽を複数用意して、まずヒ素等の吸着除去、ついで他の金属の吸着除去を行っても良い。最終的に、エタノール発酵に影響を及ぼす物質である、Cu等を除去できれば足りる。
【0017】
本発明において使用する吸着剤は、希土類金属化合物を含有する。この希土類金属化合物は、ヒ素、アンチモン、セレン、クロム、及び/又は銅を吸着できるものであれば、特に限定するものではないが、セリウム(Ce),サマリウム(Sm),ネオジム(Nd),ガドリニウム(Gd),ランタン(La),イットリウム(Y)からなる群から選択される少なくとも1種の酸化物,水和物又は水酸化物であることが好ましい。
【0018】
中でも、酸化セリウム水和物(CeO・1.6HO)、酸化サマリウム水和物(Sm・4.1HO)、酸化ネオジム水和物(Nd・4.7HO)、酸化ガドリニウム水和物(Gd・5.0HO)、酸化ランタン水和物(La・3.0HO)、酸化イットリウム水和物(Y・2.1HO)、水酸化セリウム(Ce(OH)またはCe(OH))は、酸化物、水和物又は水酸化物の形態で、かつ、細かい粉粒体の形態で使用することが可能であるため、好ましい。さらに、処理時間を短縮するという観点から、無機ヒ素との結合定数が大きいセリウム化合物が好ましく、特に、セリウムの含水酸化物、又は、セリウムの酸化物、水和物若しくは水酸化物であることが好ましい。
【0019】
また、吸着剤に吸水性物質を混合しても良い。吸水性物質としては、特に限定されるものではないが、酸化珪素(SiO)を主成分とする珪藻土をはじめとして、活性炭、シラスバルーン、泥炭、軽石などが使用可能であり、これらは粉粒体の形態で使用されることが好ましい。これら吸水性物質の中では、吸水性と透水性に優れ、かつ、比較的安価な珪藻土が特に好ましい。
【0020】
水酸化セリウム(含水酸化セリウム)を含め、希土類金属化合物に何故ヒ素、セレン、アンチモン等が吸着するかは明確化されていないが、セリウム化合物などの希土類金属化合物の表面に金属と水酸基を介して結合すると推定され、本発明者らは、その特異な結合様式を利用し、本発明のバイオマスの処理方法を見出した。
【0021】
本発明においては、具体的な吸着の方法・形態についても特に限定されるものではない。本発明において、ヒ素などの有害化合物を含む被処理物を、吸着剤に接触させるだけでよい。吸着剤と被処理物を接触させる際、攪拌および/又は加熱および/又は溶媒希釈することは、反応系を均一にする効果のほかに、被処理物中の無機化合物をむき出しにして吸着反応をおこし易くする効果があると考えられるため、好ましい。この場合、水や油などの溶媒と前記被処理物を混合した溶液中に吸着剤を分散させることが好ましく、あるいは前記吸着剤を充填した吸着塔に前記被処理物の溶液を通過させることが好ましい。
【0022】
その他、バッチ式の吸着槽内で攪拌して接触させる方法の他、固定床又は流動床で接触させることもできる。また、回転式吸着塔や固定式吸着塔等の従来公知の吸着装置に充填あるいは装着することにより、接触させることもできる。或いは、柱上トランスなどの容器内に、吸着剤をネット等の多孔質材料に入れたものを直接投入し、接触させてもよい。
【0023】
吸着剤と有害化合物を含む液体の接触時間、接触温度は特に限定されず、攪拌下および/または加熱下で接触させてもよい。接触時間は有害化合物の初期濃度や溶媒(油又は水)の種類、接触温度、吸着剤の種類などに応じて、選択することができる。処理時間については、液量、吸着剤の量、形態等により必要な時間が定まるが、工業的には一週間以内、一日以内が好ましい。接触時間が短かすぎると吸着不十分となり、長すぎると飽和吸着量に達するため無意味となる。接触温度については、温度は液体としての処理が可能であれば特に制限されない。作業の取扱いからは低温が望ましい。必要に応じて有害化合物を含む液体を加熱することもでき、加熱手段は特に限定されないが、例えばヒーターのような外部からの加熱や、投げ込み式ヒーターのような内部からの加熱、マイクロ波や超音波による加熱などが挙げられる。また、pH範囲については、特に限定されるものではないが、pHは1〜10、好ましくは3〜9の範囲であるとヒ素が吸着しやすい傾向がある。
【0024】
また、攪拌下で接触させる場合において、攪拌条件は特に限定はなく、直接又は間接に有害化合物を含む液体に対流を与えることのできる方法であれば良い。例えば、(1)攪拌羽根やマグネチックスターラー等の攪拌装置を用いて有機塩素化合物を含む液体を攪拌する方法、(2)有害化合物を含む液体を充填した容器(例えば柱上トランス部材など)を、振動式攪拌機、振動台、振とう機等を用いて加振する方法(例えば、垂直および/または水平方向へ平行振動させる方法、回旋振動させる方法など)、(3)超音波や磁石等を用いて、前記容器内に充填された液体に振動を与える方法などを挙げることができる。
【0025】
このように、本発明において、本発明の吸着剤と被処理物とを接触させる方法は特に限定されない。従来からあるクロマト分離による方法を適用して、本発明の吸着剤を利用し分離しても良い。また、上述の吸着剤を単独で用いても構わないし、希土類金属化合物以外の吸着剤を組み合わせて使用しても構わない。
【0026】
また、本発明では、吸着剤として希土類金属化合物を用いるため、安価に大量に処理できるというだけでなく、吸着されたヒ素、アンチモン、セレンの回収が容易であるという有利な効果を有する。例えば、ヒ素等を吸着した吸着剤を、pH7〜11程度に調整した過酸化水素を含む処理液へ投入して混合することで、ヒ素等を処理液中へ脱離させることができる。
【0027】
このようにして回収されたヒ素、アンチモン、セレンは、別途メチル化して、アルキル化又はアリール化ヒ素、アルキル化又はアリール化アンチモン、アルキル化又はアリール化セレンを合成する工程によって、毒性の低いものへと変化させることができる。また、ヒ素等を脱離した後の吸着剤も再利用が可能である。
【0028】
回収されたヒ素等のメチル化処理としては、例えば、ヒ素等と有機ハロゲン化合物等を反応させてヒ素をメチル化して、ジメチル化合物、トリメチル化合物を得ることによりメチル化処理を行うことができる。また、回収されたヒ素等を植物プランクトン等に取り込ませて、アルキル化又はアリール化することによってヒ素のメチル化処理を行うことができる。これは植物プランクトン内部での生理反応を利用して有害な無機ヒ素等をより無害なメチル化ヒ素等の有機ヒ素化合物等へ転換し、無害化を図るものである。特に、ヒ素をメチル化等することによって、アルセノコリン又はアルセノベタインなどまでアルキル化されると、これらの物質は、通常の環境下では脱メチル化反応や分解が生じにくい安定な物質であることなどの観点から、最終的に、アルセノコリン又はアルセノベタインまで無害化することが好ましい。
【0029】
図1は、廃材中のヒ素の無害化と、クロム及び銅のリサイクルの一例におけるスキームを示す。
【0030】
CCA廃材を適当なミルを使用して粉砕する。廃材の粉砕方法は常法による。次に、粉砕された廃材を前処理する。前処理は、上述したような本発明の吸着、分離工程であり、前記吸着剤を用いて処理可能である。前処理によりクロム等が分離された廃材は、常法に従って、糖化、発酵を経て、エタノールを得ることができる。糖化と発酵については特に限定されないが、適当量のセルラーゼ及び酵母などを用いて、行うことが可能である。セルラーゼは、セルロースを分解してグルコース等の糖を得るために、酵母はセルラーゼによって生じたグルコース等を資化してアルコール発酵を行い、エタノールを生成するために添加される。
【0031】
一方、前処理によって分離されたクロム、銅、ヒ素は、本発明において説明した吸着剤を使用して、又は本発明において説明した吸着剤と常法の除去方法との併用により、吸着、除去することができる。
【0032】
クロムは0、2、3、6価として存在し、このうち0価の金属クロムは生物学的には不活性であり、毒性を示さない。3価クロムは動物の微量必須元素であり,欠乏すると耐糖能の低下、血中脂質の増加,アテローム性動脈硬化症などを引き起こすことで知られている。毒性が高い6価のクロム等の処理を含め、クロムの処理には、通常、還元中和沈でん法などが利用される。この処理法は、pH2以下の強酸性下で6価クロムを3価クロムに還元し、その後アルカリを添加し水酸化クロムとして沈でん除去するものである。本発明において説明した吸着剤を用いる以外に、又は吸着剤と併用して常法のクロム処理方法を用いて、クロムを処理してもよい。
【0033】
銅についても、本発明で用いた吸着剤、その他の市販の吸着剤を用いて吸着除去可能である。これらの銅の除去方法についても常法による。
【0034】
図1を参照しながら、まとめると、本発明によれば、CCA処理廃材からヒ素、銅、クロムを分離し、ヒ素、クロムは、無毒化することが可能である。ヒ素は無毒のヒ素として隔離保存することができ、クロムは、六価から三価に減毒化して、レアメタル(希少金属)なので国家備蓄することが可能である。クロムの減毒化は常法により、特に限定されない。また、銅は、産業のベースメタルなので産業界に還元することが可能である。最終的に、CCAフリーの廃材は、バイオマスとしてバイオエタノール生産に供することができる。なお、スキーム中、粉砕、糖化、発酵等の工程は、常法により特に限定されない。
【実施例】
【0035】
以下、本発明の実施例を説明するが、下記の実施例は本発明の範囲を何ら限定するものではない。
【0036】
実施例1
容量1.5mLのエッペンドルフチューブに、超純水1mL、表1に示す所定量のクロム、ヒ素、銅を含む水溶液(原子吸光用標準液、1000mg/L)を入れ、100mg/Lとなるように調整した。この溶液に、乳鉢ですりつぶした重金属吸着剤(日本板硝子社製アドセラ;珪藻土と希土類金属化合物を混合して焼成造粒したもの)を0.1g入れた。これを30℃の恒温槽中で攪拌して、1時間、15時間後にそれぞれ30μLをサンプリングして、超純水で総量3mLになるように希釈して、金属濃度をICP−MS法により分析した。初期濃度を表1に示し、吸着試験中の金属イオン濃度の経時変化を表2に示す。
【0037】
【表1】

【0038】
【表2】

【0039】
図2は、クロムの水溶液の吸着試験の結果を示す。図3は、ヒ素イオンの吸着試験の結果を示す。図4は、銅イオンの吸着試験の結果を示す。図5は、クロムイオンとヒ素イオンを含む水溶液の吸着試験の結果を示す。図6は、銅イオンとヒ素イオンを含む水溶液の吸着試験の結果を示す。図7は、クロムイオンと銅イオンを含む水溶液の吸着試験の結果を示す。図8は、クロムイオンと銅イオンを含む水溶液の吸着試験の結果を示す。また、インジウム、ガリウム、ヒ素を含む水溶液から、ヒ素が選択的に吸着されることがわかった。(図8)。これによって、吸着剤を複数段階、例えば、2段階に設置して、まず、ヒ素を吸着除去し、次いで、ヒ素以外の金属を吸着除去可能である事が判明した。
【0040】
実施例2
次に、メチルコバラミンを用いてヒ素をメチル化することによる有機金属化合物の合成(無害化)について説明する。[化1]にメチルコバラミンの構造と、ヒ素無害化の反応過程を示す。
【0041】
【化1】

【0042】
0.2mLのエッペンドルフチューブにグルタチオン還元型(GSH)を60mg(0.195mmoL)、メチルコバラミン10mg(7.44μmoL)、Tris−HCl緩衝液(pH8、50μL)を入れた。これにヒ素標準液(原子吸光用、ヒ素として100ppm)を2μL加え、125℃に加熱したアルミブロックヒータ上に設置し、所定時間反応させた。反応生成物を10%過酸化水素水で10倍に希釈して、HPLC−ICP−MSにより分析した。反応混合物中のヒ素化合物は、トリメチルアルシンオキシド(TMAO)が99.2%、テトラメチルアルソニウム(TeMA)が0.8%であった。
【0043】
さらに、トリメチルアルシンオキシド(TMAO)(0.267μM)とグルタチオン還元型(GSH)(5mM)を100mMりん酸−クエン酸緩衝液(pH5)中、37℃で100時間反応させ、HPLC−ICP−MSでTMAOとアルセノベタイン(AB)生成量を評価した。反応混合物中のヒ素化合物の相対比率は、TMAOが0.5%、ABが99.5%であった。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明により、廃木材などに含まれるヒ素、銅、クロムなどの有害化合物及び希少金属を選択的に吸着することが可能であり、より安全に金属を回収することが可能である。エタノール生産における優れたCCA処理技術として広く導入することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バイオマス原料中に含まれる、ヒ素、アンチモン、セレン、クロム、及び/又は銅を、希土類金属化合物を含有する吸着剤を用いて吸着し、除去することを特徴とするバイオマス原料の処理方法。
【請求項2】
前記ヒ素、アンチモン、及び/又はセレンを、選択的に吸着し、除去した後、さらに、前記クロム及び/又は銅を吸着し、除去することを特徴とする請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記希土類金属化合物が、セリウム,サマリウム,ネオジム,ガドリニウム,ランタン,イットリウムからなる群から選択される少なくとも1種の酸化物,水和物又は水酸化物である請求項1又は2項に記載の方法。
【請求項4】
前記バイオマス原料は、クロム、銅およびヒ素を含有する薬剤で処理された廃木材である請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記吸着されたヒ素、アンチモン、又はセレンを、アルキル化又はアリール化ヒ素、アルキル化又はアリール化アンチモン、アルキル化又はアリール化セレンとすることにより無害化する工程を含む請求項1又は2項に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2010−188230(P2010−188230A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−32899(P2009−32899)
【出願日】平成21年2月16日(2009.2.16)
【出願人】(000004008)日本板硝子株式会社 (853)
【Fターム(参考)】