説明

バイオマス材料粉砕機及びそれを用いるバイオマス材料粉砕装置並びに粉砕方法

【課題】 簡単な設備で効率良くバイオマス材料を微粉体化することができるバイオマス材料粉砕機、及びそれを用いるバイオマス材料粉砕装置並びに粉砕方法を提供することを課題とする。
【解決手段】 粉砕すべきバイオマス材料を受け入れる粉砕容器と、前記粉砕容器内に回転可能に支持された回転羽根とを備え、前記回転羽根は、互いに間隔をあけて対向する2枚1対の集合板を少なくとも1対有しており、前記2枚1対の集合板は、回転羽根の回転方向前方に向かって互いの間隔が拡開している部分を有しているバイオマス材料粉砕機、及びそれを用いる粉砕装置並びに粉砕方法を提供することによって解決する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオマス材料粉砕機、および、それを用いるバイオマス材料の粉砕装置並びに粉砕方法に関する。
【背景技術】
【0002】
バイオマスは、エネルギー源や化学工業原料として使用することができる動植物性資源であり、例えば、間伐材や、建築廃材、製材廃材などの木質類、草本類、とうもろこし、さとうきびなどの栽培植物類、農産廃棄物や、食品加工の廃棄物などが挙げられる。
【0003】
これらバイオマスの有効利用を促進するには、工業的規模でのバイオマスの利用が不可欠である。しかし、バイオマスはその起源が多彩であり、その性状も様々であるので、その利用を容易にするには、バイオマス材料を微細なサイズに粉砕してその均一化を図り、バイオマス材料の違いによる相違を軽減することが必要である。
【0004】
本発明者は、従来からバイオマス材料の微粉体化技術の開発を行い、微粉体化したバイオマス材料の応用技術についても研究を重ねてきた。一般に、粉体化技術は、有機系材料の粉体化技術と無機系材料の粉体化技術の2つに大別されるが、バイオマス材料が属する有機系材料は、一般に、嵩密度が低く、低硬度の物質が多く、特に、含水の有機系材料は、粘性や弾性を有するのが特徴である。
【0005】
上記のような特性を備えたバイオマス材料を微粉体化する技術としては、従来から様々な提案がある。例えば、特許文献1においては、木質のバイオマス材料を、まず、ジョークラッシャーやウィリーミルなどの粉砕機を用いて粗粉砕した後、冷凍処理し、これをロールミルや高速回転ミルなどの微粉砕機を用いて微粉砕することが提案されている。しかし、この方法では、バイオマス材料を冷凍処理するためにドライアイスなどの冷媒を必要とする上に、冷凍に時間と労力を要するという欠点がある。
【0006】
また、特許文献2では、木質でチップ状のバイオマス材料を、衝撃式粉砕機であるハンマーミルとインパクトミルとによって3mmアンダーの目的粒度まで粉砕する方法が提案されている。しかし、バイオマス材料は上記のとおり有機系材料であり、一般に嵩密度が低く、水分を含み、弾性や粘性を備えているので、衝撃式の粉砕機でバイオマス材料を微粉化するには多大のエネルギーを要し、効率が悪いという欠点を有している。
【0007】
さらに、特許文献3では、回転する粉砕テーブルと、粉砕ローラ間にバイオマス材料を配置し、粉砕ローラと粉砕テーブル間の距離を制御しながらバイオマス材料を粉砕することによって、バイオマス材料同士の相互摩砕を促進せしめるようにした粉砕装置が提案されている。しかしながら、この粉砕装置においては、粉砕ローラと粉砕テーブル間でバイオマス材料が相互に擦れ合いながら移動し、粉砕されるので、粉砕時に大量の熱が発生し、この熱による発火を避けるために酸素量の低い燃焼排ガスを粉砕機内に循環させるなどの対策が必要であり、装置が大掛かりになるとともに、粉砕効率が低いという不都合がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2002−233400号公報
【特許文献2】特開2005−291536号公報
【特許文献3】特開2008−43926号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記従来の粉砕方法及び粉砕装置が有する不都合や欠点を解消するために為されたもので、簡単な設備で効率良くバイオマス材料を微粉体化することができるバイオマス材料粉砕機、及びそれを用いるバイオマス材料粉砕装置並びに粉砕方法を提供することを課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者は、従来提案されているバイオマス材料の粉砕装置や粉砕方法は、いずれも、本来、無機系材料用に開発されたものであり、それを有機系材料であるバイオマス材料にほぼそのまま適用した点に方法論的な問題があるとの認識の下に、有機系材料であるバイオマス材料の粉砕方法について鋭意研究を重ねた。その結果、本発明者は、ハンマーやローラなどによって衝撃を与えたり、摺り潰したりしてバイオマス材料を微粉体化するのではなく、バイオマス材料を空気中で繰り返し集合・分散させて、バイオマス材料同士を繰り返し衝突させることによって、バイオマス材料を効率的に微粉体化することができることを見出して、本発明を完成した。
【0011】
すなわち、本発明は、粉砕すべきバイオマス材料を受け入れる粉砕容器と、前記粉砕容器内に回転可能に支持された回転羽根とを備え、前記回転羽根は、互いに間隔をあけて対向する2枚1対の集合板を少なくとも1対有しており、前記2枚1対の集合板は、回転羽根の回転方向前方に向かって互いの間隔が拡開している部分を有しているバイオマス材料粉砕機を提供することによって、上記の課題を解決するものである。
【0012】
上記のような集合板を有する回転羽根を粉砕容器内で回転させると、その回転に伴って粉砕容器内には気流が発生し、この気流に乗ってバイオマス材料は舞い上がり、回転する2枚の集合板間の互いの間隔が拡開している部分を、前方から後方へと通過する。この拡開部の通過に際し、バイオマス材料は、2枚の集合板に沿って拡開部後方の間隔の狭い箇所へと集合し、次いで、2枚の集合板間を抜け出ると、より広い空間へと分散する。集合板を有する回転羽根は高速で回転するので、バイオマス材料は、2枚の集合板間の互いの間隔が拡開している部分を繰り返し通過し、集合と分散を繰り返すことによって、バイオマス材料同士が互いに衝突して、より小さなサイズへと粉砕されることになる。
【0013】
本発明のバイオマス粉砕機において、前記2枚1対の集合板における互いの間隔が拡開している部分は、前記回転羽根の回転方向前方に向かって左右又は上下に拡開しているのが望ましい。2枚の集合板が回転方向前方に向かって左右に拡開しているときには、バイオマス材料は、左右に広がる空間から中央の狭い空間へと集合し、その後、より広い空間へと分散して、粉砕される。また、2枚の集合板が回転方向前方に向かって上下に拡開しているときには、バイオマス材料は、上下に広がる空間から中央の狭い空間へと集合し、その後、より広い空間へと分散して、粉砕される。このように、2枚の集合板が回転方向前方に向かって左右又は上下と異なる方向に拡開している回転羽根を備えることによって、より均一で効率の良い微粉体化が容易となる。なお、2枚の集合板の拡開方向が異なる回転羽根は、一つの粉砕容器内に混在させても良いし、2台以上のバイオマス材料粉砕機を連続的に接続して使用する場合には、それぞれ異なる粉砕容器内に配置するようにしても良い。
【0014】
本発明は、また、上記のような本発明のバイオマス材料粉砕機を1台又は2台以上備え、各バイオマス材料粉砕機における粉砕容器が、その下部に粉砕すべきバイオマス材料の入口を有するとともに、その上部に粉砕されたバイオマス材料の出口を有し、最初のバイオマス材料粉砕機の前記入口が粉砕すべきバイオマス材料の供給源に接続されるとともに、最後のバイオマス材料粉砕機の前記出口が前記粉砕容器内部の空気を粉砕されたバイオマス材料とともに外部に吸引排出する吸引源と接続され、先のバイオマス材料粉砕機における前記出口が後続するバイオマス材料粉砕機の前記入口と接続されているバイオマス材料粉砕装置を提供することによって、上記の課題を解決するものである。
【0015】
このような本発明のバイオマス材料粉砕装置によれば、各粉砕機を作動させるとともに、吸引源を作動させて、各粉砕機の粉砕容器内を吸引することによって、バイオマス材料の粉砕を連続的に行うことが可能となる。すなわち、吸引源を作動させると、粉砕機の粉砕容器内にはその入口から出口へと向かう空気の流れが発生する。その空気の流れによって、粉砕容器の下部に設けられた入口からは、粉砕されるバイオマス材料が粉砕容器内に導入される。導入されたバイオマス材料は、その粉砕容器内で粉砕され、粒径がある程度小さくなると、上方に浮き上がり、粉砕容器の上部に設けられている出口から排出されることになる。粉砕機が2台以上連続して接続されている場合も同様であり、先行する粉砕機内で粉砕されたバイオマス材料は、その粉砕機の粉砕容器内の空気の流れによって、後続する粉砕機へと搬送され、そこで更に粉砕を受けて、より粒径の小さな微粉体へと粉砕されることになる。
【0016】
上記のような本発明のバイオマス粉砕装置は、バイオマス材料粉砕機における前記出口から外部へと吸引排出される空気の流速を可変とする流速調節手段を備えているのが望ましい。本発明のバイオマス粉砕装置がこのような流速調節手段を備えている場合には、各粉砕機の粉砕容器内を流れる空気の流速を調節して、各粉砕容器内におけるバイオマス材料の滞留時間を調整し、粉砕されるバイオマス材料の粒径を制御することができる。すなわち、粉砕容器内を流れる空気の流速を小さくして粉砕容器内におけるバイオバス原料の滞留時間を長くすれば、出口から排出されるバイオマス材料の粒径は小さくなり、逆に、粉砕容器内を流れる空気の流速を大きくして滞留時間を短くすれば、出口から排出されるバイオマス材料の粒径を大きくなる。
【0017】
さらに、本発明は、上記のような本発明のバイオマス材料粉砕機を用いるバイオマス材料の粉砕方法であって、粉砕容器内で前記集合板を備えた回転羽根を回転させて、バイオマス材料を前記2枚の集合板間の互いの間隔が拡開している部分を前方から後方に向かって通過させることにより、バイオマス材料の集合と拡散を繰り返させ、バイオマス材料相互の衝突を促進してバイオマス材料を粉砕するバイオマス材料の粉砕方法を提供することによって、上記の課題を解決するものである。
【0018】
この本発明の粉砕方法においても、バイオマス材料粉砕機における出口から外部へと吸引排出される空気の流速を調節することにより、粉砕容器内でのバイオマス材料の滞留時間を調節して、粉砕されたバイオマス材料の粒径を制御することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明のバイオマス材料粉砕機によれば、粉砕容器内で2枚1対の集合板を少なくとも1対有する回転羽根を回転させるという簡単な構成の粉砕機によって、有機系材料であるバイオマス材料を効率良く微粉体化することができるという利点が得られる。また、本発明のバイオマス材料粉砕機を1台又は2台以上連続して接続した本発明のバイオマス材料粉砕装置によれば、バイオマス材料を連続的に効率良く微粉体化することができるという利点が得られる。さらに、本発明のバイオマス材料粉砕方法によれば、有機系材料であるバイオマス材料に適した粉砕方法によって、バイオマス材料を効率良く、簡単に微粉体化することができるという優れた利点が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明のバイオマス材料粉砕機の一例を示す部分切り欠き斜視図である。
【図2】回転羽根の側面図である。
【図3】図2のX−X’断面図である。
【図4】回転羽根が粉砕容器内で回転する様子を示す平面模式図である。
【図5】回転羽根の他の一例を示す側面図である。
【図6】図5の平面図である。
【図7】図5のY−Y’断面図である。
【図8】回転羽根が回転する様子を示す側面模式図である。
【図9】本発明のバイオマス材料粉砕装置の一例を示すレイアウト図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を用いて本発明を詳細に説明するが、本発明が図示のものに限られないことは勿論である。
【0022】
図1は、本発明のバイオマス材料粉砕機の一例を示す部分切り欠き斜視図である。図1において、1は本発明のバイオマス材料粉砕機、2は粉砕容器であり、粉砕容器2は、その内部が見えるように、便宜上、その一部を切り欠いて示してある。3a、3bは粉砕容器2の内部に配置された回転羽根、4は回転羽根3a、3bの回転軸であり、粉砕容器2に回転自在に支持されている。回転羽根3a、3bはこの回転軸4に取り付けられており、回転軸4とともに図中矢印で示す方向に回転可能である。粉砕容器2は、通常、円筒形であるのが望ましく、また、回転軸4は、その円筒形の中心に垂直に支持されるのが望ましい。
【0023】
なお、図示の例では、回転羽根3a、3bの数は2本であるが、2本に限られず、バイオマス材料の粉砕を効率良く行うことができる限り、1本であっても良いし、3本以上であっても良い。ただし、回転羽根の構造や大きさにも依るが、その回転に伴って粉砕容器2の内部に適度な強さの気流を発生させるには、回転羽根の数は2本程度が良い。
【0024】
5は、例えば電動機などの駆動源であり、その駆動力は、図示しないベルトなどの汎用の動力伝達機構を介して回転軸4に伝達され、回転軸4を回転させ、それと共に回転羽根3a、3bを回転させる。6は、粉砕すべきバイオマス材料の入口であり、粉砕容器2の下部側面に開口している。7は、粉砕されたバイオマス材料の出口であり、粉砕容器2の上面に開口している。後述するとおり、本発明のバイオマス材料粉砕機1を連続モードで作動させる場合には、出口7の側から内部の空気を吸引するので、粉砕容器2内には入口6から出口7に向かう空気の流れが発生する。粉砕されてサイズが小さくなったバイオマス材料は、回転羽根3a、3bの回転によって発生する気流と、上記入口6から出口7へと向かう空気の流れとによって、粉砕容器2内を上昇するので、粉砕すべきバイオマス材料の入口は粉砕容器2の下部に、また、粉砕されたバイオマス材料の出口7は、粉砕容器2の上部に設けるのが好ましい。
【0025】
図2は、回転羽根3aだけを取り出して示した側面図である。なお、図1に示すバイオマス材料粉砕機1において、回転羽根3bの構造は回転羽根3aと同じである。図2に示すとおり、回転羽根3aは、中心に回転軸4を挿通する孔を有するコア31と、コア31に固定された上下各2枚の支持板32a、32b、32c、32dを有している。支持板32aと32bとの間、及び、支持板32cと32dとの間には、それぞれ、2枚1対の集合板33a、33bと、集合板33c、33dとが固定されている。図2に示すとおり、支持板32a、32bと、支持板32c、32dは、回転羽根3aが回転する円周方向に互いに180度間隔をあけた位置でコア31に固定されており、集合板33a、33bと、集合板33c、33dも、回転羽根3aが回転する円周方向に互いに180度間隔をあけた位置にある。
【0026】
図3は、図2のX−X’断面図である。図に示すとおり、2枚1対の集合板33aと33bとは、互いに間隔をあけて対向しており、その間隔は、図中矢印で示す回転羽根3aの回転方向に沿った前方の方が後方よりも左右に広くなっており、2枚1対の集合板33aと33bは、回転羽根3aの回転方向前方に向かって左右方向に互いの間隔が拡開するように支持板32a、32b間に固定されている。
【0027】
集合板33c、33dも同様であって、集合板33cと33dとは、互いに間隔をあけて対向して配置されており、その間隔は、図中矢印で示す回転羽根3aの回転方向に沿った前方の方が後方よりも左右に広くなっている。つまり、2枚1対の集合板33cと33dも、回転羽根3aの回転方向前方に向かって左右方向に互いの間隔が拡開するように支持板32c、32d間に固定されている。
【0028】
なお、図示の例においては、集合板33a、33b、及び集合板33c、33dは、その全体が回転羽根3aの回転方向前方に向かって互いの間隔が拡開しているが、必ずしも、集合板33a、33b、及び集合板33c、33dの全体が左右方向に拡開している必要はなく、回転羽根3aの回転方向前方に向かって互いの間隔が拡開している部分を有していれば良い。例えば、図3において、集合板33a、33b、又は集合板33c、33dの回転方向前方の先端部、又は、回転方向後方の末端部、若しくは、回転方向に沿った中間部に、互いの間隔が拡開せずに平行である部分があっても良い。
【0029】
また、図示の例においては、2枚1対の集合板33a、33b、及び集合板33c、33dは、支持板32a、32b、及び支持板32c、32dに対し、各1対ずつ固定されているが、2枚1対の集合板は、支持板32a、32b、及び支持板32c、32dに対し、各2対以上ずつ固定されていても良い。ただし、動作時には、回転羽根3aは、例えば1700rpm程度の高速で回転するので、回転羽根3aは釣り合いがとれたものであることが好ましく、支持板32a、32b間、及び支持板32c、32d間には、同形、同大、同質量の集合板を対称的に配置するのが好ましい。
【0030】
さらに、図示の例においては、2枚1対の集合板33a、33b、及び集合板33c、33dは、それらの支持板32a〜32dとともに、コア31に関して、回転羽根3aが回転する円周方向に互いに180度間隔をあけた位置に各1対ずつ、計2対配置されているが、回転羽根3aは、2枚1対の集合板を1対だけ有していても良く、また、互いに120度間隔又は90度間隔で、3対若しくは4対の集合板を有していても良い。ただし、上述したとおり、回転羽根3aは高速で回転するので、回転羽根3aに対し、2枚1対の集合板は2対以上、円周方向に等間隔で配置されるのが好ましい。
【0031】
また、支持板32a〜32dは、回転羽根3aが高速で回転したときに、遠心力に抗して集合板33a〜33dを安全に固定しておくことができる限り、その形状に特段の制限はなく、必ずしも図示したような板状に限られない。例えば、支持板に代えて、2本若しくは3本以上の棒状部材で集合板を固定、支持するようにしても良い。
【0032】
図4は、回転羽根3aが粉砕容器2内で回転する様子を示す平面模式図であり、回転羽根3aは断面図として示してある。図4に示すとおり、粉砕容器2内で回転羽根3aが、図中実線の矢印で示す方向に回転すると、粉砕容器2内のバイオマス材料は、図中破線の矢印で示すように、各1対の集合板33a、33b間、及び、集合板33c、33d間を、拡開している間隔の広い方から、後方の間隔の狭い方へと通過する。この通過に際し、バイオマス材料は、各1対の集合板33a、33b及び集合板33c、33dに沿って左右方向から集められ、その拡開部後方の間隔の狭い箇所へと一旦集合し、その後、その箇所を抜けると、広い空間へと分散する。この集合・分散の過程で、バイオマス材料同士は激しく衝突を繰り返し、より細かなサイズへと粉砕されていくことになる。なお、回転羽根3bについても同様である。
【0033】
図5は回転羽根の他の例を示す側面図であり、本例においては、2枚1対の集合板における互いの間隔が拡開している部分が、回転羽根の回転方向前方に向かって左右方向ではなく、上下方向に拡開している点で、先に示した回転羽根とは異なっている。図5において、3c、3dは、それぞれ回転羽根を示し、回転羽根3cには集合板33eと33gとが、また、回転羽根3dには集合板33fと33hとが、それぞれ、回転羽根の回転の円周方向に180度の間隔をあけて固定されている。集合板33e、33f、33g、33hは、それぞれ、水平部分He、Hf、Hg、Hhと、傾斜部分Le、Lf、Lg、Lhとからなっており、上下に対応する集合板33eと33f、及び集合板33gと33hとが、それぞれ、互いに間隔をあけて対向する2枚1対の集合板を構成している。そして、2枚1対の集合板33eと33fにおいては、それぞれの傾斜部分LeとLfが、また、2枚1対の集合板33gと33hにおいては、それぞれの傾斜部分LgとLhが、回転羽根3c、3dの回転方向前方に向かって互いの間隔が拡開している部分を構成している。
【0034】
図6は図5の平面図、図7は図5のY−Y’断面図である。図7に示すとおり、2枚1対の集合板33eと33fとは、互いに間隔をあけて対向しており、その傾斜部分LeとLfの間隔は、図中矢印で示す回転羽根3c、3dの回転方向に沿った前方の方が後方よりも上下に広くなっている。つまり、2枚1対の集合板33eと33fは、回転羽根3c、3dの回転方向前方に向かって上下方向に互いの間隔が拡開している部分を有している。図5のZ−Z’断面図も図7と同様に表れ、2枚1対の集合板33gと33hとは、互いに間隔をあけて対向しており、その傾斜部分LgとLhの間隔は、回転羽根3c、3dの回転方向に沿った前方の方が後方よりも上下に広くなっている。つまり、2枚1対の集合板33gと33hとは、集合板33eと33fと同様に、回転羽根3c、3dの回転方向前方に向かって上下方向に互いの間隔が拡開している部分を有している。
【0035】
なお、上記の例においては、集合板33e、33gと、集合板33f、33hとは、それぞれ異なるコア31に固定され、異なる回転羽根3c、3dに属しているが、上下のコア31、31を一体化して、回転羽根3cと3dを1個の回転羽根にしても良い。因みに、回転羽根3cと3dとが図5〜図7に示すように別体であっても、両者は共に回転軸4に固定されているので、回転軸4の回転とともに、同速、同位相で回転し、両者の位置関係がずれることはない。
【0036】
図8は、回転羽根3c、3dが回転する様子を示す側面模式図であり、集合板33eと33fとは断面図として示してある。図8に示すとおり、図示しない粉砕容器2内で回転羽根3c、3dが、図中実線の矢印で示す方向に回転すると、粉砕容器2内のバイオマス材料は、図中破線の矢印で示すように、各1対の集合板33e、33fの水平部分He、Hf間を通過した後、傾斜部分Le、Lfで形成される上下に広がる拡開部分の間隔の広い前方から、間隔の狭い後方へと通過する。この通過に際し、バイオマス材料は、各1対の集合板33e、33fにおける傾斜部分Le、Lfに沿って上下方向から集められ、その拡開部後方の間隔の狭い箇所へと一旦集合し、その後、その箇所を抜けると、広い空間へと分散する。この集合・分散の過程で、バイオマス材料同士は激しく衝突を繰り返し、より細かなサイズへと粉砕されていくことになる。なお、バイオマス材料が集合板33g、33hの間を通過する場合も同様である。
【0037】
図5〜図7に示すような回転羽根3c、3dは、粉砕容器2内に1セットだけ設けられても良いし、2セット、若しくは3セット以上設けるようにしても良い。また、各回転羽根3c、3dには、集合板33e、33g、及び集合板33f、33hが、互いに180度の間隔をあけて2つずつ配置されているが、120度又は90度の間隔をあけて3つずつ若しくは4つずつ配置するようにしても良い。ただし、先の回転羽根3a、3bと同様に、回転羽根3c、3dも、粉砕機の作動時には高速で回転するので、回転羽根3c、3dに取り付けられる集合板は、同形、同大、同質量で、等間隔に配置されるのが好ましい。
【0038】
図9は、本発明のバイオマス材料粉砕機1を用いるバイオマス材料粉砕装置の一例を示すレイアウト図である。図9において、1aは第1粉砕機、1bは第2粉砕機であり、第1粉砕機1a及び第2粉砕機1bとしては、上述したような本発明のバイオマス材料粉砕機が用いられる。2a、2b;5a、5b;6a、6b;7a、7bは、それぞれ第1粉砕機1a又は第2粉砕機1bの粉砕容器、駆動源、入口、及び出口である。また、3a、3bは第1粉砕機1aの回転羽根、3c、3dは第2粉砕機1bの回転羽根である。
【0039】
8はバイオマス材料の原料フィーダー、9はベルトコンベア、10は粗粉砕機、11はサイクロン分離器、12は粉砕されたバイオマス材料を回収する回収容器、13はフィルター、14はブロアー、15は配管、16a、16bは二次空気取入管、17a、17bは開閉弁である。
【0040】
図9に示す本発明のバイオマス材料粉砕装置は以下のように動作する。まず、必要な場合には予め乾燥するなどして、含水率を40質量%以下、好ましくは20質量%以下にしたバイオマス材料を原料フィーダー8に投入する。投入されるバイオマス材料としては、例えば、一般的な針葉樹や広葉樹の間伐材、廃材、又は草、或いは、バガスや稲藁などの農業系残渣、さらには紙などが挙げられる。ただし、本発明のバイオマス材料粉砕装置によって粉砕することができる材料は上記のものに限られず、例えば高分子などの有機系材料も粉砕することが可能である。
【0041】
原料フィーダー8に投入されたバイオマス材料は、ベルトコンベア9によって粗粉砕機10に投入される。粗粉砕されたバイオマス材料は、粗粉砕機10内に設置されているスクリーンを通過し、粒径が数ミリメートル以下の粗砕片となって粗粉砕機10の下部に貯留される。
【0042】
この状態で第1粉砕機1a及び第2粉砕機1bの回転羽根3a〜3dの回転を開始するとともに、ブロアー14を作動させると、配管15を介して直列に接続されている各構成装置内の空気はブロアー14によって図中左側から右側へと吸引され、粗粉砕機10と第1粉砕機1aとの間にも、粗粉砕機10から粉砕容器2aに向かう空気の流れが生じる。この空気の流れに乗って粗粉砕機10の下部に貯留されているバイオマス材料の粗砕片は入口6aから第1粉砕機1aの粉砕容器2a内へと導入される。
【0043】
粉砕容器2a内に導入されたバイオマス材料の粗砕片は、回転羽根3a、3bの高速回転によって生じる空気の流れと、ブロアー14によって吸引される空気の流れに乗って、粉砕容器2a内を回転しながら上昇し、その途中で、回転羽根3a、3bに取り付けられている2枚1対の集合板間を通過し、集合と分散とを繰り返しつつ、互いに激しく衝突し、より細かなサイズへと粉砕される。粉砕されたバイオマス材料は、回転羽根3a、3bの回転領域を通過して、更に粉砕容器2a内を上昇し、出口7aから配管15へと吸引排出され、続いて、第2粉砕機1bの入口6bから粉砕容器2b内へと導入される。
【0044】
第2粉砕機1b内では、回転羽根3c、3dが高速で回転しており、粉砕容器2b内に導入されたバイオマス材料の粉砕片は、回転羽根3c、3dの高速回転によって生じる空気の流れと、ブロアー14によって吸引される空気の流れに乗って、粉砕容器2b内を回転しながら上昇し、その途中で、回転羽根3c、3dに取り付けられている2枚1対の集合板間を通過し、集合と分散とを繰り返しつつ、互いに激しく衝突を繰り返し、さらに細かなサイズの微粉へと粉砕される。粉砕されたバイオマス材料の微粉は、回転羽根3c、3dの回転領域を通過して、更に粉砕容器2b内を上昇し、出口7bから配管15へと吸引排出される。
【0045】
バイオマス材料の微粉は、続いてサイクロン分離器11に導入され、そこで空気と分離されて、サイクロン分離器11の下部の排出口から排出され、下方に設置されている回収容器12内に回収される。一方、サイクロン分離器11で分離された空気は、そこに含まれている水蒸気とともに、フィルター13を通過し、ブロアー14から外部へと排出される。
【0046】
回収容器12に回収されるバイオマス材料の微粉のサイズは、例えば、二次空気取入管16a、16bに設けられている開閉弁17a、17bを操作して調整することができる。すなわち、開閉弁17aを開にして二次空気取入管16aから大気を二次空気として管路15内に取り入れると、ブロアー14の吸引力が一定である場合には、取り入れられた二次空気の分だけ、二次空気取入管16aよりも上流側を流れる空気の量が減り、第1粉砕機1a及び第2粉砕機1bの粉砕容器2a、2b内におけるバイオマス材料の滞留時間が長くなり、その結果、バイオマス材料はより細かく粉砕されることになる。なお、二次空気取入管16aから管路15内に取り入れる二次空気の量は、開閉弁17aの開度を調節することによって調節することができる。
【0047】
同様に、開閉弁17bを開にして二次空気取入管16bから大気を二次空気として管路15内に取り入れると、二次空気取入管16bよりも上流側を流れる空気の量が減り、その結果、第1粉砕機1a及び第2粉砕機1bの粉砕容器2a、2b内におけるバイオマス材料の滞留時間が長くなり、バイオマス材料はより細かく粉砕されることになる。なお、二次空気取入管16bから管路15内に取り入れる二次空気の量も、開閉弁17bの開度を調節することによって調節することができる。
【0048】
上記のような二次空気の取り入れは、粉砕するバイオマス材料の含水率が高く、第1粉砕機1a及び第2粉砕機1bから出口7a、7bを介して管路15に排出される空気中に大量の水蒸気が含まれている場合にも有効である。すなわち、管路15を流れる空気中に大量の水蒸気が含まれている場合には、二次空気取入管16a又は16bから二次空気を取り入れて、その二次空気とともに水蒸気を搬送し、フィルター13及びブロアー14を通過させて外部へと排出することができる。
【0049】
二次空気取入管16a、16bの設置位置は図9に示す位置に限られない。例えば、第1粉砕機1aと第1粉砕機1bとを接続する管路15に二次空気取入管と開閉弁とを設けても良く、その場合には、第2粉砕機1bにおける滞留時間とは別に、第1粉砕機1aにおけるバイオマス材料の滞留時間を調節することが可能となる。
【0050】
また、第1粉砕機1a及び第2粉砕機1b内を流れる空気の流速を調節する手段は、上述した二次空気取入管と開閉弁に限られない。例えば、第1粉砕機1aよりも下流側、或いは第2粉砕機1bよりも下流側の管路15に絞り弁を設け、その開閉度を調節することによって、第1粉砕機1a及び第2粉砕機1b内を流れる空気の流速を調節し、粉砕して得られるバイオマス材料の粒径サイズを調節するようにしても良い。
【0051】
なお、本発明のバイオマス材料粉砕装置においては、粉砕機の数は2台に限られず、1台であっても良く、3台以上であっても良い。粉砕機が1台の場合には、第1粉砕機1aの出口7aがサイクロン分離器11と接続される管路15に直接連結されるか、第2粉砕機1bの入口6bが粗粉砕機10と管路15を介して直接連結されることになる。また、粉砕機の数が増すと、それぞれの粉砕機で同時に粉砕が行われるので、全体として粉砕に要する時間が短縮され、微粉体化されたバイオマス材料の生産量が増加するという利点が得られる。
【0052】
因みに、第1粉砕機1aと第2粉砕機1bの2台の粉砕機を用いる場合には、上流側に位置する第1粉砕機1aとしては、図2〜図3に示す、2枚1対の集合板における互いの間隔が拡開している部分が、回転羽根の回転方向前方に向かって左右に拡開している回転羽根を備えたタイプの粉砕機を用い、下流側に位置する第2粉砕機1bとしては、図5〜図7に示す、2枚1対の集合板における互いの間隔が拡開している部分が、回転羽根の回転方向前方に向かって上下に拡開している回転羽根を備えたタイプの粉砕機を用いるのが好ましい。これは、2枚1対の集合板における互いの間隔が拡開している部分が、回転羽根の回転方向前方に向かって上下に拡開している回転羽根の方が、左右に拡開している回転羽根よりも、より微粉砕に適していると考えられるからである。
【0053】
また、上述した本発明のバイオマス材料粉砕装置においては、バイオマス材料の粉砕は、空気の流れによってバイオマス材料を搬送することによって、連続的に行われているが、バッチ式で行うようにしても良いことは勿論である。
【0054】
上述したような本発明のバイオマス材料粉砕装置によれば、従来提案されているバイオマス材料の粉砕装置に比べて、より少ないエネルギーで、効率良く微粉体化されたバイオマス材料を製造することができる。
【産業上の利用可能性】
【0055】
本発明によれば、簡便な構造の粉砕機や粉砕装置を用いて、バイオマス材料を効率良く微粉体化することができるので、起源や性状が異なる様々なバイオマス材料を均一化された微粉体として提供することができ、燃料としてはもとより、各種化学工業原料としても、バイオマス材料の工業的規模での有効利用に大きな道を拓くものであり、その産業上の利用可能性には多大なるものがある。
【符号の説明】
【0056】
1 バイオマス材料粉砕機
2 粉砕容器
3a〜3d 回転羽根
4 回転軸
5 駆動源
6 入口
7 出口
8 原料フィーダー
9 ベルトコンベア
10 粗粉砕機
11 サイクロン分離器
12 回収容器
13 フィルター
14 ブロアー
15 配管
16a、16b 二次空気取入管
17a、17b 開閉弁
31 コア
32a〜32d 支持板
33a〜33h 集合板
He〜Hh 水平部分
Le〜Lh 傾斜部分

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉砕すべきバイオマス材料を受け入れる粉砕容器と、前記粉砕容器内に回転可能に支持された回転羽根とを備え、前記回転羽根は、互いに間隔をあけて対向する2枚1対の集合板を少なくとも1対有しており、前記2枚1対の集合板は、回転羽根の回転方向前方に向かって互いの間隔が拡開している部分を有しているバイオマス材料粉砕機。
【請求項2】
前記2枚1対の集合板における互いの間隔が拡開している部分が、前記回転羽根の回転方向前方に向かって左右又は上下に拡開している請求項1記載のバイオマス材料粉砕機。
【請求項3】
前記回転羽根が、その回転の円周方向に180度の間隔をあけて前記2枚1対の集合板を2対備えている請求項1又は2記載のバイオマス材料粉砕機。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれかに記載のバイオマス材料粉砕機を1台又は2台以上備え、各バイオマス材料粉砕機における粉砕容器が、その下部に粉砕すべきバイオマス材料の入口を有するとともに、その上部に粉砕されたバイオマス材料の出口を有し、最初のバイオマス材料粉砕機の前記入口が粉砕すべきバイオマス材料の供給源に接続されるとともに、最後のバイオマス材料粉砕機の前記出口が前記粉砕容器内部の空気を粉砕されたバイオマス材料とともに外部に吸引排出する吸引源と接続され、先のバイオマス材料粉砕機における前記出口が後続するバイオマス材料粉砕機の前記入口と接続されているバイオマス材料粉砕装置。
【請求項5】
バイオマス材料粉砕機における前記出口から外部へと吸引排出される空気の流速を可変とする流速調節手段を備えている請求項4記載のバイオマス材料粉砕装置。
【請求項6】
請求項1〜3のいずれかに記載のバイオマス材料粉砕機を用いるバイオマス材料の粉砕方法であって、粉砕容器内で前記集合板を備えた回転羽根を回転させて、バイオマス材料を前記2枚の集合板間の互いの間隔が拡開している部分を前方から後方に向かって通過させることにより、バイオマス材料の集合と拡散を繰り返させ、バイオマス材料相互の衝突を促進してバイオマス材料を粉砕するバイオマス材料の粉砕方法。
【請求項7】
前記粉砕容器内でのバイオマス材料の滞留時間を調節することにより、粉砕されたバイオマス材料の粒径を制御する請求項6記載のバイオマス材料の粉砕方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−61376(P2012−61376A)
【公開日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−205148(P2010−205148)
【出願日】平成22年9月14日(2010.9.14)
【出願人】(510248442)
【出願人】(510247423)
【Fターム(参考)】