説明

バイオマス糖化装置及び方法

【課題】熱水流通式糖化技術を用いて従来よりも簡単かつ高い収率でバイオマスから多糖類を取得する。
【解決手段】反応槽4に収納された原料バイオマスに加圧熱水を通水させて加水分解する熱水流通式バイオマス糖化装置Aであって、反応槽4の一端に加圧熱水を供給する加圧熱水供給部8と、反応槽4の他端から加圧熱水と分解液とを処理液として回収すると共に分解液を分別して外部に排出する液回収部6と、反応槽4内の温度を計測する温度計測手段5A〜5Dと、該温度計測手段5A〜5Dの計測値に基づいて加圧熱水供給部8を制御して加圧熱水の反応槽4への供給量を調節させると共に、温度計測手段5A〜5Dの計測値に基づいて液回収部6を制御することにより加圧熱水の供給量に応じて得られる異なる性状の分解液を分別させる制御装置7とを具備する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオマス糖化装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1には、セルロース粉末の充填固定床に、270〜310℃の範囲内の温度に保持した加圧熱水を滞留時間が30秒以下になるような速度で通水して加水分解することによりグルコース単位6〜25個からなる非水溶性多糖類を製造する技術が開示されている。この技術は、セルロース粉末を原料として非水溶性多糖類を製造することを目的とするものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3128575号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1の技術をバイオマスに適用しようとした場合、得られる多糖類の収率の面で問題がある。すなわち、例えば木質系バイオマスは、セルロース、ヘミセルロース及びリグニンを主成分とするが、特許文献1の技術はセルロース粉末を原料とするものなので、ヘミセルロースの糖化に関して何ら考慮されていないので、ヘミセルロースを十分に糖化することができず、よって多糖類の収率が低い。
また、このようなセルロース及びヘミセルロースの糖化をも可能な熱水流通式糖化技術の実用化をも考慮すると、イニシャルコストやランニングコストの低減は必須の事項であり、より簡略化した糖化装置の構成が望まれる。
【0005】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、熱水流通式糖化技術を用いて従来よりも簡単かつ高い収率でバイオマスから多糖類を取得することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明では、バイオマス糖化装置に係る第1の解決手段として、反応槽に収納された原料バイオマスに加圧熱水を通水させて加水分解する熱水流通式のバイオマス糖化装置であって、反応槽の一端に加圧熱水を供給する加圧熱水供給部と、反応槽の他端から加圧熱水と分解液とを処理液として回収すると共に分解液を分別して外部に排出する液回収部と、反応槽内の温度を計測する温度計測手段と、該温度計測手段の計測値に基づいて加圧熱水供給部を制御して加圧熱水の反応槽への供給量を調節させると共に、温度計測手段の計測値に基づいて液回収部を制御することにより加圧熱水の供給量に応じて得られる異なる性状の分解液を分別させる制御装置とを具備する、という手段を採用する。
【0007】
バイオマス糖化装置に係る第2の解決手段として、上記第1の解決手段において、加圧熱水供給部は、原料バイオマスに含まれるヘミセルロース及びセルロースの分解温度以上の温度の加圧熱水を反応槽に供給し、制御装置は、温度計測手段の計測値がヘミセルロースの分解温度になるように加圧熱水供給部から反応槽に供給される加圧熱水の流量を制御すると共に、ヘミセルロース分解物が含まれる加圧熱水を第1の出力ポートに排出するように液回収部を制御する、という手段を採用する。
【0008】
バイオマス糖化装置に係る第3の解決手段として、上記第2の解決手段において、制御装置は、温度計測手段の計測値がヘミセルロースの分解温度になるように加圧熱水の流量を制御してヘミセルロース分解物を第1の出力ポートに排出させると、温度計測手段の計測値がセルロースの分解温度になるように加圧熱水供給部から反応槽に供給される加圧熱水の流量を制御すると共に、セルロース分解物が含まれる加圧熱水を第2の出力ポートに排出するように液回収部を制御する、という手段を採用する。
【0009】
バイオマス糖化装置に係る第4の解決手段として、上記第1〜第3のいずれかの解決手段において、原料バイオマスは木質系バイオマスである、という手段を採用する。
ことを特徴とするバイオマス糖化装置。
【0010】
また、本発明では、バイオマス糖化方法に係る第1の解決手段として、反応槽に収納された原料バイオマスに加圧熱水を通水させて加水分解する熱水流通式のバイオマス糖化方法であって、反応槽内の温度に基づいて加圧熱水の反応槽への供給量を調節することにより、異なる性状の分解液を分別回収する、という手段を採用する。
【0011】
バイオマス糖化方法に係る第2の解決手段として、上記第1の解決手段において、反応槽内の温度がヘミセルロースの分解温度になるように加圧熱水の供給量を調節することにより、ヘミセルロース分解物が含まれる加圧熱水を回収する、という手段を採用する。
【0012】
バイオマス糖化方法に係る第3の解決手段として、上記第2の解決手段において、ヘミセルロース分解物が含まれる加圧熱水を回収すると、反応槽内の温度がセルロースの分解温度になるように加圧熱水の供給量を調節することにより、セルロース分解物が含まれる加圧熱水をヘミセルロース分解物とは個別に回収する、という手段を採用する。
【0013】
バイオマス糖化方法に係る第4の解決手段として、上記第1〜第3のいずれかの解決手段において、原料バイオマスは木質系バイオマスである、という手段を採用する。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、温度計の計測値に基づいて加圧熱水供給部を制御することにより反応槽に供給する加圧熱水の供給量を調節し、加圧熱水の供給量に応じて得られる異なる性状の分解液を分別回収するので、熱水流通式糖化技術を用いて従来よりも簡単かつ高い収率でバイオマスから多糖類を取得することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態に係る熱水流通式糖化装置Aの機能構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の一実施形態に係る熱水流通式糖化装置Aの動作を説明するための特性図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態について説明する。
本実施形態に係る熱水流通式糖化装置Aは、図1に示すように、ポンプ1、加熱器2、流量調節弁3、反応槽4、温度計5A〜5D(温度計測手段)、液回収部6及び制御装置7によって構成されている。また、これら各構成要素のうち、ポンプ1、加熱器2及び流量調節弁3は、加圧熱水供給部8を構成している。
【0017】
熱水流通式糖化装置Aは、反応槽4に収納された原料バイオマスに所定温度(例えば150〜300℃程度)かつ所定圧力以上(例えば飽和蒸気圧以上)の加圧熱水を所定時間通水させることにより、連続的ではなくバッチ的(間欠的)に原料バイオマスを加水分解する装置である。このような熱水流通式糖化装置Aは、バイオマス(化石資源を除く生物由来の資源)を分解して得られる単糖類からバイオエタノールを製造するプラントにおいて、バイオマスを重合度が比較的低い多糖類・オリゴ糖とする前段糖化装置として機能するものである。また、このようなバイオエタノール製造プラントにおいて、多糖類から単糖類を得る後段糖化装置として、例えば固体酸触媒を多糖類・オリゴ糖に作用させて単糖化する固体酸触媒糖化装置が考えられる。
【0018】
本出願人は、特願2009−219362(平成21年9月24日出願、発明の名称:バイオマス処理装置及び方法)において、加圧熱水反応装置(前段糖化装置)における熱水温度を調節することによりバイオマス(木質系バイオマス)に含まれる多糖類(炭水化物)からキシロオリゴ糖とセロオリゴ糖とを個別に取得し、キシロオリゴ糖を第1触媒反応装置(後段糖化装置)で処理することによりキシロース(C10:五炭糖)に単糖化すると共に、セロオリゴ糖を第2触媒反応装置(後段糖化装置)で処理することによりとグルコース(C12:六炭糖)に単糖化し、さらにキシロースを第1発酵装置で発酵処理すると共に、グルコースを第2発酵装置で発酵処理することによりバイオエタノール(CO)を製造するバイオマス処理装置及び方法を提案している。
【0019】
周知のように、木質系バイオマスは、ヘミセルロース(多糖類)、セルロース(多糖類)及びリグニン(木質素)を主成分とするが、セルロースとは、化学式(C10で表される多糖類であり、炭素原子6個を含むグルコースのみが重合した高分子化合物である。またヘミセルロースとは、上記グルコースだけではなく、キシロース(五炭糖)やガラクトース(六炭糖)などの単糖類が重合したセルロースを除く多糖類の高分子化合物である。また、リグニンは、高度に重合した三次元網目構造体を有し、上記セルロース及びヘミセルロースを取り囲むことで木質を形成する高分子化合物である。
【0020】
このようなヘミセルロース、セルロース及びリグニンを主成分とする木質系バイオマスに加圧熱水を作用させることにより、セルロースやヘミセルロースをさらに重合度の低い多糖類(キシロオリゴ糖、セロオリゴ糖及びこれらより多少重合度が高い各種オリゴ糖)に分解することができる。本熱水流通式糖化装置Aは、上述した加圧熱水反応装置(前段糖化装置)と同等の基本機能を奏するものであり、外部から粒状の原料バイオマスを受け入れ、当該原料バイオマスに含まれるヘミセルロースやセルロースをキシロオリゴ糖やセロオリゴ糖に分解する。
【0021】
このような熱水流通式糖化装置Aにおいて、ポンプ1は、外部供給される水を加圧して加熱器2に送出する。加熱器2は、制御装置7から入力される温度制御信号に基づいて、ポンプ1から流入する加圧水を所定温度まで加熱し、加圧熱水として流量調節弁3に送出する。この加熱器2から流量調節弁3に送出される加圧熱水の温度は、上記温度制御信号に基づいて常に所定の一定値に維持される。流量調節弁3は、制御装置7から入力される流量制御信号に基づいて開口度が調節される制御弁であり、加熱器2から流入する一定温度の加圧熱水を流量調整して反応槽4に送出する。このようなポンプ1、加熱器2及び流量調節弁3からなる加圧熱水供給部8は、反応槽4の一端に所定温度・圧力かつ所定流量の加圧熱水を供給するものである。
【0022】
反応槽4は、外部から別途供給される原料バイオマス(例えば木質系バイオマス)を収容すると共に流量調節弁3から流入した加圧熱水を原料バイオマスに流通させて分解処理する管状の槽であって、原料バイオマスの分解物と加圧熱水とを処理液として後段の液回収部6に排出する。この反応槽4の一端(左端)には、加圧熱水供給部8から加圧熱水が順次供給され、また反応槽4の他端(右端)からは処理液が液回収部6に向けて順次排出されるので、反応槽4内に収容された原料バイオマスには加圧熱水が順次流通する。その結果、反応槽4では、原料バイオマスに含まれるヘミセルロースやセルロースがキシロオリゴ糖やセロオリゴ糖に順次分解される。
【0023】
ここで、詳細は後述するが、本熱水流通式糖化装置Aでは、反応槽4に供給される加圧熱水の流量が流量調節弁3によって調節されるので、反応槽4から液回収部6に排出される処理液の性状は時間的に異なったものとなる。すなわち、反応槽4から最初に排出される処理液は、ヘミセルロースが分解されたオリゴ糖を主成分とするヘミセルロース分解物を含む加圧熱水であり、この後にセルロースが分解されたセロオリゴ糖を主成分とするセルロース分解物を含む加圧熱水が処理液として排出される。
【0024】
温度計5A〜5Dは、図示するように、反応槽4において加圧熱水の流通方向(左から右の方向)にかけて複数設けられており、加圧熱水の流通方向における反応槽4内の温度分布(加圧熱水と粒状の原料バイオマスとが混合された混合液の温度分布)を計測して制御装置7に出力する熱電対である。液回収部6は、制御装置7から入力される分岐制御信号に応じて、反応槽4から流入する処理液を第1のポート(出力ポート)あるいは第2のポート(出力ポート)のいずれか一方に択一的に出力する。なお、本実施形態では、ヘミセルロース分解物を含む処理液が排出される出力ポートを第1のポートとし、セルロース分解物を含む処理液が排出される出力ポートを第2のポートとしている。
【0025】
制御装置7は、上記温度計5A〜5Dの計測値に基づいて流量調節弁3及び液回収部6を制御すると共に、上記加熱器2を流量調節弁3及び液回収部6とは個別に制御する。すなわち、制御装置7は、加熱器2に温度制御信号を出力することにより、加熱器2から流量調節弁3に送出される加圧熱水の温度を常に所定の一定値に維持させる。
【0026】
また、制御装置7は、各温度計5A〜5Dの計測値に基づいて流量制御信号を生成することにより、反応槽4内の温度が原料バイオマスに含まれるセルロースが分解することなくヘミセルロースが主に分解する温度(ヘミセルロース分解温度T1:例えば150〜230℃)、あるいはセルロースが主に分解する温度(セルロース分解温度T2:例えば230〜270℃)となるように加圧熱水の流量をフィードバック制御する。
【0027】
さらに、制御装置7は、温度計5A〜5Dの計測値に基づいて分岐制御信号を生成することにより、温度計5A〜5Dの計測値がヘミセルロース分解温度T1の場合はヘミセルロース分解物を含む処理液を第1のポートに出力させ、一方、温度計5A〜5Dの計測値がセルロース分解温度T2の場合にはセルロース分解物を含む処理液を第2のポートに出力させる。
【0028】
次に、このように構成された本熱水流通式糖化装置Aを用いたバイオマス糖化方法について、図2をも参照して詳しく説明する。
【0029】
原料バイオマスのうち、特に木質系バイオマスは、上述したようにヘミセルロース(多糖類)、セルロース(多糖類)及びリグニン(木質素)を主成分とするが、これらヘミセルロース、セルロース及びリグニンのうち、ヘミセルロースとセルロースとは、図2に示すように分解して可溶化する温度及び熱水流通時間が異なる。すなわち、ヘミセルロースは比較的低温の150〜230℃かつ比較的短い処理時間で分解するが、セルロースは、この温度域では殆ど分解されず、比較的高温の230〜270℃の温度域かつ比較的長い処理時間で主に分解する。したがって、反応槽4内の温度(反応温度)を比較的低温な150〜230℃に維持した場合は、反応槽4内ではヘミセルロースが専ら分解・可溶化する。
【0030】
制御装置7は、温度計5A〜5Dの計測値に基づいて上記150〜230℃という反応温度を実現するように流量制御信号を生成する。すなわち、制御装置7は、温度計5A〜5Dの計測値が上記150〜230℃内の例えば中心温度である190℃(反応温度)となるように流量調節弁3の開口度(つまり加圧熱水の流量)を設定する流量制御信号を生成する。そして、制御装置7は、このような目標温度の持続時間(加圧熱水流通時間)が例えばt2分となるように流量制御信号を生成する。
【0031】
この結果、反応槽4内の原料バイオマスは、反応温度が190℃かつ加圧熱水流通時間がt2分で加水分解処理されるので、反応槽4から液回収部6に排出される処理液は、ヘミセルロースが分解・可溶化して得られたヘミセルロース分解物(主にキシロオリゴ糖)を含む加圧熱水となる。制御装置7は、上記制御信号を流量調節弁3に出力する間、液回収部6に第1のポートを選択させる分岐制御信号を出力する。この結果、液回収部6は、ヘミセルロース分解物(主にキシロオリゴ糖)を含む加圧熱水を第1のポートに出力する。
【0032】
ここで、管状の反応槽4には、一端(左端)に加圧熱水供給部8から加圧熱水が供給され、他端(右端)から処理液が排水されるので、反応槽4内には、加圧熱水の流通方向(左から右の方向)に、徐々に温度が低下する温度勾配が発生し得る。このような温度勾配に対して、本熱水流通式糖化装置Aでは、反応槽4には加圧熱水の流通方向(左から右の方向)にかけて複数の温度計5A〜5Dが設けられているので、反応槽4内全体を上記150〜230℃内の温度に設定することができる。すなわち、上記190℃(処理温度)は、加圧熱水の流通方向において最上流(最高温)に位置する温度計5Aの計測値が230℃以下であり、かつ、最下流(最低温)に位置する温度計5Dの計測値が150℃以上となる条件を満足する値として設定される。
【0033】
このようなヘミセルロースの分解・可溶化処理が終了すると、制御装置7は、温度計5A〜5Dの計測値に基づいて、反応温度がセルロースの分解温度である230〜270℃となるように流量制御信号を生成する。例えば、制御装置7は、温度計5A〜5Dの計測値が上記230〜270℃内の中心温度である250℃(反応温度)となるように流量調節弁3の開口度(つまり加圧熱水の流量)を設定する流量制御信号を生成する。そして、制御装置7は、このような目標温度の持続時間(加圧熱水流通時間)が上記t2分以上を満足するt4分となるように流量制御信号を生成する。
【0034】
この結果、反応槽4内の原料バイオマスは、反応温度が250℃かつ加圧熱水流通時間がt4分で加水分解処理されるので、反応槽4から液回収部6に排出される処理液は、セルロースが分解・可溶化して得られたセルロース分解物(主にセロオリゴ糖)を含む加圧熱水となる。制御装置7は、上記制御信号を流量調節弁3に出力する間、液回収部6に第2のポートを選択させる分岐制御信号を出力する。この結果、液回収部6は、セルロース分解物(主にセロオリゴ糖)を含む加圧熱水を第2のポートに出力する。
【0035】
このような本実施形態によれば、温度計5A〜5Dの計測値に基づいて反応槽4に供給する加圧熱水の供給量を流量調節弁3の開口度を制御することにより、反応槽4内の反応温度をヘミセルロースが分解・可溶化する温度とセルロースが分解・可溶化する温度とに設定し、以てキシロオリゴ糖を主成分とするヘミセルロース分解物とセロオリゴ糖を主成分とするセルロース分解物とを個別に回収するので、従来よりも高い収率で原料バイオマスから多糖類を取得することができる。
反応終了後、反応槽4内に残ったバイオマス残渣を抜出し、再度バイオマスを充填することで反応を繰り返す。
【0036】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、例えば以下のような変形例が考えられる。
(1)上記実施形態では、流量調節弁3の開口度を制御することにより反応槽4に供給される加圧熱水の流量を調節したが、本発明はこれに限定されない。例えば、流量調節弁3の開口度を制御することにより代えて、ポンプ1の回転数を変えることにより加圧熱水の流量を調節するようにしても良い。この場合には、流量調節弁3が不要となるので、当該流量調節弁3を省略することができる。
【0037】
(2)上記実施形態では、反応槽4における加圧熱水の流通方向にかけて4つの温度計5A〜5Dを設けたが、本発明はこれに限定されない。例えば流通方向において反応槽4の中央に1つの温度計を設け、当該温度計の計測値に基づいて加圧熱水の流量を調節しても良い。
【符号の説明】
【0038】
A…熱水流通式糖化装置、1…ポンプ、2…加熱器、3…流量調節弁、4…反応槽、5A〜5D…温度計(温度計測手段)、6…液回収部、7…制御装置、8…加圧熱水供給部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
反応槽に収納された原料バイオマスに加圧熱水を通水させて加水分解する熱水流通式のバイオマス糖化装置であって、
反応槽の一端に加圧熱水を供給する加圧熱水供給部と、
反応槽の他端から加圧熱水と分解液とを処理液として回収すると共に分解液を分別して外部に排出する液回収部と、
反応槽内の温度を計測する温度計測手段と、
該温度計測手段の計測値に基づいて加圧熱水供給部を制御して加圧熱水の反応槽への供給量を調節させると共に、温度計測手段の計測値に基づいて液回収部を制御することにより加圧熱水の供給量に応じて得られる異なる性状の分解液を分別させる制御装置と
を具備することを特徴とするバイオマス糖化装置。
【請求項2】
加圧熱水供給部は、原料バイオマスに含まれるヘミセルロース及びセルロースの分解温度以上の温度の加圧熱水を反応槽に供給し、
制御装置は、温度計測手段の計測値がヘミセルロースの分解温度になるように加圧熱水供給部から反応槽に供給される加圧熱水の流量を制御すると共に、ヘミセルロース分解物が含まれる加圧熱水を第1の出力ポートに排出するように液回収部を制御する
ことを特徴とする請求項1記載のバイオマス糖化装置。
【請求項3】
制御装置は、温度計測手段の計測値がヘミセルロースの分解温度になるように加圧熱水の流量を制御してヘミセルロース分解物を第1の出力ポートに排出させると、温度計測手段の計測値がセルロースの分解温度になるように加圧熱水供給部から反応槽に供給される加圧熱水の流量を制御すると共に、セルロース分解物が含まれる加圧熱水を第2の出力ポートに排出するように液回収部を制御することを特徴とする請求項2記載のバイオマス糖化装置。
【請求項4】
原料バイオマスは、木質系バイオマスであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のバイオマス糖化装置。
【請求項5】
反応槽に収納された原料バイオマスに加圧熱水を通水させて加水分解する熱水流通式のバイオマス糖化方法であって、
反応槽内の温度に基づいて加圧熱水の反応槽への供給量を調節することにより、加圧熱水の供給量に応じて得られる異なる性状の分解液を分別回収することを特徴とするバイオマス糖化方法。
【請求項6】
反応槽内の温度がヘミセルロースの分解温度になるように加圧熱水の供給量を調節することにより、ヘミセルロース分解物が含まれる加圧熱水を回収することを特徴とする請求項5記載のバイオマス糖化方法。
【請求項7】
ヘミセルロース分解物が含まれる加圧熱水を回収すると、反応槽内の温度がセルロースの分解温度になるように加圧熱水の供給量を調節することにより、セルロース分解物が含まれる加圧熱水をヘミセルロース分解物とは個別に回収することを特徴とする請求項6記載のバイオマス糖化方法。
【請求項8】
原料バイオマスは、木質系バイオマスであることを特徴とする請求項5〜7のいずれか一項に記載のバイオマス糖化方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−144337(P2011−144337A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−8556(P2010−8556)
【出願日】平成22年1月18日(2010.1.18)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】