説明

バイオマス資源処理製品評価方法

【課題】バイオマス資源処理製品の類似性やばらつき等の相同性を明示し、バイオマス資源処理製品の高次利用に便益を供する評価方法を提供すること。
【解決手段】
バイオマス資源処理製品のデータを入力する工程と、前記入力されたデータを格納してデータベース化する工程と、前記データベース化されたデータの中から、データを選択する工程と、前記選択されたデータに基づいてバイオマス資源処理製品の品質を算出評価する工程と前記算出評価結果を表示する工程を含む処理を行うことを特徴としている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイオマス資源処理製品の評価方法に関するものである。より詳しくは、バイオマス資源処理製品の類似性やばらつき等の相互性を明示し、バイオマス資源処理製品の高次利用に便益を供する評価方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、下水汚泥や尿汚泥は、多くの肥料成分を有することから、微生物の存在下で堆肥化処理、すなわちコンポスト化処理を施し、土壌に還元することによりリサイクルされている。これらの下水汚泥や尿汚泥を主体にした堆肥は、肥料取締法上、普通肥料に分類されているものである。普通肥料の品質評価方法として、窒素、リン酸、カリなどの肥料成分やヒ素、カドミウム、水銀等の有害物質の含有量を表示することが一般的となっている。その他の品質評価方法としては、炭素―窒素比(C/N比)、水分、水素イオン濃度指数(PH)、電気伝導度(EC)が挙げられる(例えば、非特許文献1)。
【0003】
コンポスト化処理の完了は、たとえば堆肥の腐熟度を評価することにより確認することができる。ここで、腐熟とは有機物が微生物によって分解、堆肥化されることを言い、腐敗とは区別されるものである。有機物の腐熟の進行度、腐熟度の評価方法としては、発芽試験、花粉管生長テスト、ミミズ評価法、腐敗試験、燃焼法などによる生物評価方法、炭素―窒素比(C/N比)や化学的酸素要求量(COD)などによる化学評価方法がある。また、これらの評価方法により得られた評価を点数化し、積算し、総合判定する評価方法がある(例えば、非特許文献2)。
【0004】
このように下水汚泥や尿汚泥を主成分とする「普通肥料」は、上記評価方法により、その品質および腐熟度が評価され、これら評価に基づいた品質基準、腐熟度基準となる公定規格が定められている。
【0005】
一方、家畜糞尿や食品加工残渣等の有機性廃棄物は、多くの肥料成分を有することから、コンポスト化の処理が施され、堆肥として農地に還元され、利用されている(例えば特許文献1および2)。これら家畜糞尿等は、いわゆる「特殊肥料」に分類されるものであるが、有機性廃棄物をコンポスト化した堆肥の腐熟度の評価法としては、たとえば、堆肥化物の近赤外スペクトルを測定し、測定された近赤外スペクトルに基づいて当該堆肥化物の腐熟度を判定する方法がある(例えば特許文献3)。また、コンポスト化処理中の処理物の一部を溶媒で抽出して得る液相の吸光度を測定することによってコンポスト処理物の腐熟度を判定する方法がある(例えば特許文献4)。
【0006】
さらに、最近では、いわゆる都市ごみと呼ばれる厨芥類、剪定枝などの様々な有機物の集合体、畜産廃棄物および農産廃棄物等の有機性廃棄物がリサイクル原料として検討されており、資源化技術としてもコンポスト化のみならず、メタン発酵、炭化などが普及しはじめている。これらの種々の有機物の微生物分解・発酵物の品質評価方法として、データ項目選定手段、相同性評価算出手段、発酵物評価手段を具備した微生物の活動を客観的に反映した発酵物の品質評価システムが開示されている(例えば特許文献5及び6)。
【0007】
【非特許文献1】原田靖生著:「家畜糞尿堆肥の品質基準およびその判定法と残された問題点」、総合農業叢書 vol.7、第142頁ないし第163頁、1985年
【非特許文献2】原田靖生・山口武則著:「家畜排泄物堆肥の品質の実態と問題点、環境保全と新しい畜産」、農林水産技術情報協会 第229頁ないし 第246頁、1997年
【特許文献1】特開平11−188341号公報
【特許文献2】特開2002−192135号公報
【特許文献3】特開2000−109386号公報
【特許文献4】特開平9−127003号公報
【特許文献5】特開2004−208533号公報
【特許文献6】特開2004−25073号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記品質評価システムは、微生物の活動のみを客観的に反映したものであり、普通肥料の評価方法として使用されている種々の評価指標を統合したものではなく、製品の総合的な評価ができないという問題点があった。このため、堆肥等のバイオマス処理製品の類似性や製品のばらつき等の相互性を明示することができず、その処理製品の品質を客観的に評価、統一表示することができないという問題点があった。
【0009】
また、バイオマス資源処理製品である堆肥等を農地に施用して作物を栽培する場合に、その施用量や堆肥等の組み合わせによって、作物の収穫量や農地等の環境負荷に大きな影響を与える。したがって、使用者の目的に応じて堆肥等のバイオマス資源処理製品の利用を促進するためには、これらの処理製品の品質を評価し、従来から使用されてきた評価指標を統合した総合的な数値によって、堆肥等の処理製品の類似性やばらつき等の相互性を明示したバイオマス資源処理製品の評価システムが望まれている。
【0010】
以上のような状況に鑑み、本発明の課題は、新たなバイオマス資源処理製品の類似性やばらつき等の相互性を明示し、バイオマス資源処理製品の高次利用に便益を供する評価方法を提供することにある。
【発明の効果】
【0011】
以上、詳述したように、本発明によれば、原料、副資材、資源化方法が異なるバイオマス資源処理製品について、項目毎の評価だけでなく、総合的な評価が可能となる。これによって、バイオマス資源処理製品の類似性やばらつき等の相互性を数量化して明示することができ、さらにマップ化することにより視覚的な理解が可能となる。このことから、製品製造者及び販売者は資源化方法の改善や販売戦略を構築することができ、一方、製品使用者は、製品の理解が進み、農作物等の栽培に適する複数の製品の組み合わせ及び製品の使用量の調節が容易となる。環境面からは、製品の無駄な使用が減少し、圃場から環境への流出を低減することができる。
【0012】
また、本発明においては、算出評価結果を文章のみならず、二次元又は三次元マップ化をして表示することによって、バイオマス処理製品の品質を視覚的に理解することが可能となる。このように、バイオマス資源処理製品の品質を視覚的に理解することが可能となるので、2種類以上のバイオマス処理製品を選択し、その配合量等を圃場、作物収量、環境負荷を考慮して、容易に決定することも可能となる。
【課題を解決するための手段】
【0013】
すなわち、本発明は、以下の事項に関する。まず、請求項1に記載の発明は、バイオマス資源処理製品のデータを入力する工程と、前記入力されたデータを格納してデータベース化する工程と、前記データベース化されたデータの中から、データを選択する工程と、前記選択されたデータに基づいてバイオマス資源処理製品の品質を算出評価する工程と前記算出評価結果を外部に表示する工程を含む処理を行うことを特徴とするバイオマス資源処理製品評価方法に関するものである。
【0014】
次に請求項2に記載の発明は、前記算出評価する工程が前記選択されたデータを二次元又は三次元のデータに変換して算出評価することを特徴とする請求項1に記載のバイオマス資源処理製品評価方法に関するものである。
【0015】
請求項3に記載の発明は、前記算出評価結果を表示する工程が二次元又は三次元の図形として表示することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のバイオマス資源処理製品評価方法に関するものである。
【0016】
また、請求項4に記載の発明は、バイオマス資源処理製品のデータを入力する手段と、前記入力されたデータを格納してデータベース化する手段と、前記データベース化されたデータの中から、データを選択する手段と、前記選択されたデータに基づいてバイオマス資源処理製品の品質を算出評価する手段と、前記算出評価結果を表示する手段を含むことを特徴とするバイオマス資源処理製品評価装置に関するものである。
【0017】
さらに、請求項5に記載の発明は、バイオマス資源処理製品評価プログラムであって、コンピューターに、バイオマス資源処理製品のデータを入力する工程と、前記入力されたデータを格納してデータベース化する工程と、前記データベース化されたデータの中から、データを選択する工程と、前記選択されたデータに基づいてバイオマス資源処理製品の品質を算出評価する工程と前記算出評価結果を表示する工程を含む処理を実行させることを特徴とするバイオマス資源処理製品評価プログラムに関するものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明についての詳細について説明する。まず、本発明のバイオマス資源処理製品評価装置Dは、図1に示すように、制御部10、記憶部12、データベース14、入力部16、出力部18及びバス20から基本的に構成されるものであり、制御部10、記憶部12、データベース14、入力部16、出力部18は、バス20を介して相互にデータ伝達が可能となるように接続される。
【0019】
制御部10は、入力部16からのコマンドを受け、記憶部12に格納されている製品評価プログラムを実行し、対象となるバイオマス資源処理製品の品質を算出評価する。具体的には、入力部16から入力されるバイオマス資源処理製品の各種試験結果等のデータの中からユーザが希望する評価項目に基づいて選択したデータを受けて対象となる製品の品質を算出し評価を行う。その算出評価結果は出力部18に出力される。制御部10として使用できる装置は、特に制限されるものでないが、一般的なコンピューターのCPUなどが挙げられる。
【0020】
記憶部12は、ソフトウェアの動作の基板となるOS、制御部10で実行される製品評価プログラムを格納する。記憶部12に格納された評価プログラムは、バス20を介して制御部10及び出力部18から必要に応じて参照される。記憶部12としては、特に制限されるものではないが、例えば、半導体メモリー、ハードディスク、光磁気ディスク等の一般的な記憶装置を採用することができる。
【0021】
データベース14は、バイオマス資源処理製品の原料であるバイオマス資源の種類、その処理方法、評価項目及び各種試験結果データから構成されており、これらデータによりバイオマス資源処理製品の品質を算出評価する。また、データ処理により得られたバイオマス資源処理製品の算出評価結果は、新たなデータとしてデータベース14に格納、保持される。
【0022】
入力部16は、バイオマス資源処理製品の品質を算出し、評価するために必要なデータを取得するために用いられる。すなわち、評価対象となっている製品の評価項目に関するデータを評価パラメータとして取得する。入力部16は、特に制限されるものではないが、キーボードやタッチパネル又はマウス等のポインティングデバイス等の一般的入力装置を挙げることができる。
【0023】
出力部18は、制御部10からのデータ処理結果を受けて、その処理結果をユーザのニーズに応じて視覚的に確認可能な態様で表示する。具体的には、バイオマス資源の処理方法ごとの品質評価結果や各種評価項目毎の品質評価結果を二次元又は三次元的にマップ化することにより表示する。出力部18は、特に制限されるものではなく、例えばディスプレイ、タッチパネル又はプリンター等の一般的な表示装置を挙げることができる。
【0024】
以下、本発明の実施形態にかかるバイオマス資源処理製品評価方法を説明するとともに、本発明のバイオマス資源処理製品評価装置Dを構成するデータベース14に格納されたデータの内容、及びバイオマス資源評価プログラムの算出評価機能を説明する。
【0025】
図2は、本発明の実施形態にかかるバイオマス資源処理製品の評価方法のフローチャートである。本製品評価方法は、バイオマス資源処理製品の試験結果等のデータを入力する工程(S10)と、前記入力されたデータを格納してデータベース化する工程(S20)と、前記データベース化されたデータの中から、データを選択する工程(S30)と、前記選択されたデータに基づいてバイオマス資源処理製品の品質を算出評価する工程(S40)と前記算出評価結果を表示する工程(S50)を含む。
【0026】
ユーザが入力部16から品質評価処理のコマンドを入力することによって、その開始コマンドを受けた制御部10は、記憶部12に格納された品質評価プログラムを開始実行する。その結果、データ処理は直ちにステップS10に移行する。
【0027】
ステップS10では、評価対象の製品の評価パラメータを取得する。すなわち、バイオマス資源処理製品の種類、その処理方法、各種試験結果データ等が取得される。取得されたデータは、評価パラメータとしてデータベース14に格納及び保持される。
【0028】
上記評価パラメータとしては、特に限定されるものではないが、たとえば、バイオマス資源処理製品の原料となるバイオマス資源の種類、その処理方法、評価項目及び各種試験結果データによる製品の評価結果等を挙げることができる。
【0029】
バイオマス資源の種類としては、たとえば、有機汚泥類、食品加工残渣、林産・植物残渣、生活ごみ、畜産廃棄物などをいうが、有機汚泥類としては、たとえば下水汚泥、し尿汚泥、食品産業排水汚泥、アオコ・底泥などが挙げられる。
【0030】
食品加工残渣としては、たとえばビール・焼酎等の酒類残渣、おから、コーヒー、麦かす、果汁残渣等の食品産業で製品を製造する際に生じる残渣などが挙げられる。
【0031】
林産・植物残渣としては、たとえば製紙工場の製紙製造過程で排出するパルプ廃液や木材関連工業から生じるチップダストや剪定枝やオガクズ、バーク、籾殻、わら類等が挙げられる。
【0032】
生活ごみとしては、たとえば家庭から排出される厨芥類(生ごみ)、ホテルや飲食店から排出される事業系厨芥類、可燃・危険物、紙類などを含む都市収集可燃ごみ等が挙げられる。
【0033】
畜産廃棄物としては、牛ふん(乳用及び肉用)、豚ふん、鶏ふん(採卵鶏およびブロイラー)等が挙げられる。これらのバイオマス資源の中で、牛ふん、豚ふん、鶏ふんの家畜ふん尿と、し尿及び下水汚泥、都市可燃ごみ、家庭系・事業系の厨芥類をいわゆるウェット・バイオマス(wet-biomass)という。なお、上記ウェット・バイオマスは、低発熱量のバイオマスである。
【0034】
処理方法としては、特に制限されるものではないが、未処理、コンポスト(堆肥化)、混合コンポスト、焼却、乾燥汚泥、スラリー処理などを挙げることができる。
【0035】
製品の評価項目は、特に制限されるものではないが、必要に応じて、たとえば、農業生産と環境という視点から大きく分け、さらにこれら両方の属性を持つものを農業及び環境として設定することができる。
【0036】
農業生産の評価項目としては、たとえば物理性、堆肥としての価値の判断対象となり得る化学性、堆肥の熟成状態を示す腐熟度、及び作業面での取り扱い性を把握するためのワーカビリティーなどが挙げられる。
【0037】
農業及び環境の評価項目としては、たとえば土壌等への影響を把握するために、有機物中の易分解性、肥料取締法で基準値の設定がある重金属を含む安定性などが挙げられる。
【0038】
環境の評価項目としては、たとえば堆肥等の製品を土壌等に施用した後の環境(大気・土壌・水)や人体への影響を把握するための揮発性、臭気等が挙げられる。
【0039】
ステップS20では、ステップS10で取得したデータに基づいてマトリックス表の作成方法に従ってデータベースを作成する。具体的には、バイオマス資源の種類ごとに表を分け、処理方法で括り、行は、資料文献とし、列は、農業利用性及び環境環境の評価項目としてデータベースを作成した。なお、本データベースに入力されるデータは、土壌、水処理、廃棄物、農業を扱う専門誌及び国の研究機関の論文であり、かつ、1999年から2004年までに公知となった刊行物を資料として使用した。評価項目の詳細について表1に示した。
【0040】
【表1】

【0041】
ステップS30では、データベース化されたデータの中から、ユーザの希望する評価対象となる製品の評価項目に応じたデータを選択する。ここで、所定の評価項目の評価に必要なデータの選択は、ユーザのニーズに応じて主観的に行われる。すなわち、入力部16からユーザが必要とする評価項目を入力し、当該入力項目に基づいてデータベース14に格納されたデータを選択することによって取得することができる。
【0042】
ステップS40では、評価対象となる製品について、選択されたデータに基づいてデータの処理を実行する。データ処理は、記憶部12に格納されている製品評価プログラムにより実行する。製品評価プログラムは、
多次元データの品質評価結果を二次元又は三次元のデータに変換することができればよく、特に制限されるものではないが、たとえば自己組織化マップ(Self-Organization and Associated Memory、以下、SOMと略す。)などを挙げることができる。
【0043】
SOMの概念は、いわゆるニューラルネットワーク(ANN)アルゴリズムの一つであり、多次元のデータを二次元のマップ上に表すことができる解析法である。ANNとは、もとは人間の脳内で行われている情報処理の仕組みを認知心理学的に、生理学及び解剖学を基礎とした脳神経学的に、さらには数理科学的に脳の仕組みを解明することにより得られたものである。
【0044】
SOMには、自己学習を行う仕組み(アルゴリズム)が組み込まれており、入力したデータに対して何度もデータ処理を行うことにより、多次元データを多くの類似性(クラスタ化)図形として視覚化可能な二次元のマップに置き換えることができる。すなわち、多次元のデータをSOMで処理することによりマップ化して、マップ上の位置関係やその距離により、データの特性を理解することができる。
【0045】
SOMでデータ解析を行うためには、入力データとファイルを行列で組織する必要があり、各行はデータレコードであり、各列は変数又は成分として認識される。したがって、入力されたデータをSOMが取り込めるように行列にのみ変換させることが必要となる。また、SOMでは、一つ一つのデータ及びデータ間の依存性がデータ解析に影響を与えるため、極端にデータの少ない評価項目は省略し、データの演算処理の前に要約を行う。
【0046】
次に、図3に基づいて一般的な二次元平面のSOMの自己組織化過程について説明する。まずシステム内には、二次元平面上に規則的に配置されているノードが存在する。SOMにデータが入力されるデータがあるとき、そのデータは多次元のベクトルデータとして存在する。ノード自身も多次元のベクトルデータを有しており、入力データがSOMに入力されると、ノードの持つベクトル値と入力データの値を比較し、入力データに最も近い値を持つノードがベストマッチモードとして選択される。
【0047】
このベストマッチからある範囲に存在するノードのベクトルデータが入力値に近づくように、それぞれのノードが持つベクトルデータを更新する。この作業を繰り返し実行することで、ノードの持つベクトルの値が入力データの持つ特徴を表すようになる。
【0048】
SOMにおいては、自己組織化マップは、二次元で6角形のグリッドに置かれたノードにより実現され、学習されたSOMに含まれているデータ表現は、視覚化技術のスペクトルでの使用のために体系的に変換され、ベクトル成分間の依存性の評価、データ分布の幾何的な特性の調査、クラスタの検索を行うことができ、数値的な情報がいつでも検索できるため、視覚的な面だけでなく、洞察的なプロセスが可能である。
【0049】
ステップS50では、算出評価結果を出力する。具体的には、制御部10からの処理結果を受けて出力部18においてユーザが視覚的に認識可能な態様でかつ、ユーザの必要とする項目ごとの品質評価が表示される。ユーザが視覚的に認識可能な態様とは、特に限定されるものではないが二次元又は三次元的にマップ化する態様をいう。また、必要に応じて、普通肥料に定義されるEC値、C/N比及び重金属の含有量が基準値以上の場合にこれを着色表示することができる。このような視覚的に認識可能な表示態様により、製品の品質の視覚的理解が容易となる。
【0050】
また、本発明のバイオマス資源処理製品の評価方法の各工程は、コンピューターで実行可能な品質評価プログラムとしてコーディングすることができる品質評価プログラムとすることができる。
【0051】
以下に具体的な算出例を述べる。
【0052】
バイオマス資源の性質の比較
バイオマス資源である牛ふん(乳用及び肉用)、豚ふん、鶏ふん、下水汚泥、都市収集ごみ、事業系の厨芥類、家庭系厨芥類について、処理方法をデータとして入力した。全データ数は112とした。
【0053】
表2には、化学成分等の評価項目及びその表示記号及びデータの前処理の設定であるデータの範囲を示した。なお、上記データの範囲は、普通肥料の肥料取締法の成分基準値と同様に設定した。
【0054】
【表2】

【0055】
さらに、SOMマップ内でのバイオマス資源及びその処理方法についての表示記号は表3のように設定した。処理製品のIDを設定し、バイオマス資源の種類による分類をsecond IDとし、さらにバイオマス資源の処理方法による分類をthird IDとして設定した。
【0056】
【表3】

【0057】
112のデータのラベル付けは、データのIDに加え、バイオマス資源の種類別、その処理方法別にそれぞれsecond ID、third IDを用いた。詳細を表4及び表5に示す。
【0058】
【表4】

【0059】
【表5】

【0060】
上記これらのデータに基づいて、SOM解析によるデータ処理を行った。
データ処理の算出評価結果を二次元のマップとして表示したマップを図4及び図5に示す。
【0061】
図4では、バイオマス処理製品のIDを用いてデータ処理を行い、図5では、そのsecond IDを用いて処理した。図4、図5において同じ位置にあるIDとsecond IDが同一のバイオマス資源処理製品のデータに対応している。また、評価項目中の特定成分について抜粋した算出評価結果を図6に示す。
【0062】
バイオマス資源処理方法の違いによる性質の比較
次に、バイオマス資源の処理方法の相違が、農業生産及び環境にどのような影響を与えるかについて検討すべく、データ処理を行った。
【0063】
処理方法による成分の相違が明確となるように、データ処理は処理方法別にラベル付けを行い、その表示記号は表3に示したthird IDを用い、IDの対応を表4に示した。データ処理の結果を図7に示す。
【0064】
バイオマス資源の処理方法別にみると、クラスタC6は未処理が8データ中6データを占めていたことが判明した。すなわち、牛ふん(乳用及び肉用)、豚ふん、鶏ふん(採卵鶏およびブロイラー)、下水汚泥と異なるバイオマス資源の種類であっても、未処理の場合は、製品の品質として類似した特性を有することが分かる。クラスタC7は下水汚泥、都市ごみ、豚ふんを含み、すべて焼却のデータであった。
【0065】
また、図7から、未処理のバイオマス資源の特性は、水分(water content)
及び全炭素量(T−C)が高く、全窒素(T−N)は低めで、C/N 比
及びPHは低いことが判明した、焼却処理は、水分の高さ及び重金属の含有量の高さが特徴といえる。
【0066】
バイオマス資源処理製品の施用による土壌への影響
未処理及び処理後のバイオマス資源処理製品を土壌に施用後、土壌にどのような効果を与えるかについてデータ処理を行った。具体的には、化学肥料を施用した場合の作物の収量を100に設定して、バイオマス資源処理製品を施用した場合の作物の収量を指数によって表示した。
【0067】
作物の収量指数をSOM解析で資料番号のIDと処理方法及びバイオマス資源の種類を表示したsecond IDを用いてラベル付けをした。入力したデータの詳細を表6及び表7に示す。
【0068】
【表6】

【0069】
【表7】

【0070】
SOMによる解析データの結果を図8及び図9に示す。図8では、IDを用いてデータ処理を行い、図9では、second IDを用いてデータ処理を行った。なお、最適値のクラスタ化は3であった。
【0071】
本発明においては、上記の算出評価結果を文章のみならず、二次元又は三次元マップ化をして表示することによって、バイオマス処理製品の品質を視覚的に理解することが可能となる。このように、バイオマス資源処理製品の品質を視覚的に理解することが可能となるので、2種類以上のバイオマス処理製品を選択して、その配合量等を圃場、作物、環境負荷を考慮し、容易に決定することも可能となる。
【0072】
図4ないし図9のデータ解析結果から、家畜糞処理製品の成分の安定性、家庭系及び業務系厨芥類処理製品の類似性、下水汚泥処理製品の成分の不安定性が示されている。また、作物収量への影響については、下水汚泥と化学肥料の混合コンポストの肥効性が高く、未処理牛ふんの肥効性が低いことが明らかとなった。
【産業上の利用可能性】
【0073】
圃場の性質や圃場に適する農産物あるいは製品の組み合わせ等、多様な評価が必要とされるバイオマス資源処理製品について、本発明の製品評価方法の利用が可能であると考えられる。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明の実施形態におけるバイオマス資源処理製品の評価装置Dの構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の実施の形態におけるバイオマス資源処理製品の評価方法のフローチャートを示す図である。
【図3】データ演算処理のフローチャートを示す。
【図4】処理別マップを示す。
【図5】バイオマス資源の種類別の解析マップを示す。
【図6】評価項目別の解析マップを示す。
【図7】処理方法別の解析マップを示す。
【図8】収量指数の解析マップを示す。
【図9】処理方法別収量指数の解析マップを示す。
【符号の説明】
【0075】
D バイオマス資源処理製品評価装置
10 制御部
12 記憶部
14 データベース
16 入力部
18 出力部
20 バス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バイオマス資源処理製品のデータを入力する工程と、前記入力されたデータを格納してデータベース化する工程と、前記データベース化されたデータの中から、データを選択する工程と、前記選択されたデータに基づいてバイオマス資源処理製品の品質を算出評価する工程と前記算出評価結果を表示する工程を含む処理を行うことを特徴とするバイオマス資源処理製品評価方法。
【請求項2】
前記算出評価する工程が前記選択されたデータを二次元又は三次元のデータに変換して算出評価することを特徴とする請求項1に記載のバイオマス資源処理製品評価方法。
【請求項3】
前記算出評価結果を表示する工程が二次元又は三次元の図形として表示することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のバイオマス資源処理製品評価方法。
【請求項4】
バイオマス資源処理製品のデータを入力する手段と、前記入力されたデータを格納してデータベース化する手段と、前記データベース化されたデータの中から、データを選択する手段と、前記選択されたデータに基づいてバイオマス資源処理製品の品質を算出評価する手段と、前記算出評価結果を表示する手段を含むことを特徴とするバイオマス資源処理製品評価装置。
【請求項5】
バイオマス資源処理製品評価プログラムであって、コンピュータに、バイオマス資源処理製品のデータを入力する工程と、前記入力されたデータを格納してデータベース化する工程と、前記データベース化されたデータの中から、データを選択する工程と、前記選択されたデータに基づいてバイオマス資源処理製品の品質を算出評価する工程と前記算出評価結果を表示する工程を含む処理を実行させることを特徴とするバイオマス資源処理製品評価プログラム。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2006−150218(P2006−150218A)
【公開日】平成18年6月15日(2006.6.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−343944(P2004−343944)
【出願日】平成16年11月29日(2004.11.29)
【出願人】(504132881)国立大学法人東京農工大学 (595)
【Fターム(参考)】