バイオマーカーとしてのEEF1Aの使用およびMetAP2阻害剤をスクリーニングするための方法
本発明は、MetAP2および/またはEEF1Aを発現可能な細胞系またはその試料を準備すること、その系の少なくとも一部分を、スクリーニングされる化合物と一緒にインキュベートすること、及びN末端メチオニン残基を有するEEF1A(MetEEFIA)を決定することによりMetAP2阻害を検出することによって、MetAP2活性を阻害する化合物をスクリーニングするための方法に関する。本発明の別の目的は、MetAP2活性によって引き起こされ、媒介され、かつ/または拡大される生理学的状態および/または病理学的状態をモニタリングするための方法であって、少なくとも1つの単一の化合物の有効量を、そのような治療を必要とする哺乳動物に投与すること、及びその哺乳動物から採取した生体試料においてMetEEFIAを決定することによってモニタリングする方法に関する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、MetAP2および/またはEEF1Aを発現可能な細胞系またはその試料を準備すること、その系の少なくとも一部分を、スクリーニングされる化合物と一緒にインキュベートすること、およびN末端メチオニン残基を有するEEF1A(MetEEF1A)を決定することによりMetAP2阻害を検出することによって、MetAP2活性を阻害する化合物をスクリーニングするための方法に関する。本発明の別の目的は、MetAP2活性によって引き起こされ、媒介され、かつ/または拡大される生理学的状態および/または病理学的状態をモニタリングするための方法であって、少なくとも1つの単一の化合物の有効量を、そのような治療を必要とする哺乳動物に投与すること、およびその哺乳動物から採取した生体試料においてMetEEF1Aを決定することによってモニタリングする方法に関する。本発明は、バイオマーカーとしてのEEF1Aの使用にも関する。
【背景技術】
【0002】
原核生物および真核生物のタンパク質合成は、N末端メチオニンを指定するAUGコドンで開始される。細胞タンパク質の大部分において、メチオニンは同時翻訳で除去され、この開始メチオニンの除去は、こうしたタンパク質の正常な機能、すなわち、活性、局在性および安定性のために必要である。N末端メチオニンのプロセシングは、2つの細胞内メタロプロテアーゼ:メチオニンアミノペプチダーゼ1およびメチオニンアミノペプチダーゼ2(MetAP1およびMetAP2)の作用によって行われる。MetAP1およびMetAP2は、いくつもの重要な点で異なる。これらの点として、基質特異性および発現調節が挙げられる。例えば、MetAP2は、MetAP1によって影響を受けない限られたタンパク質群をプロセシングすることができる。さらに、MetAP2の発現誘発は、細胞増殖に関連するのに対して、MetAP1は構成的に発現される。つい最近、MetAP1が細胞周期のG2/M期において役割を果たすことが示されたが、一方、MetAP2の阻害はG1期停止をもたらす。
【0003】
MetAP2の生物学的な役割はよくわかっていないが、しかし、この酵素は胚発生および血管形成において重要な役割を果たしており、酵素活性を阻害することは、癌の治療法のための魅力的な手法であると考えられている。天然物のフマギリンおよびその類似体TNP−470は、MetAP2活性を選択的に遮断し、内皮細胞の増殖を阻害する。抗血管形成化合物であるTNP470は、MetAP2を強力かつ不可逆的に阻害するが、重大な毒性があるため、その治療的使用は限られている。基質の相互作用についてのさらなる知見が、MetAP2阻害剤の抗血管形成作用および抗腫瘍作用を説明する一助となり得る。
【0004】
最近、薬物感受性細胞が、1型酵素によってはプロセシングすることができない特異的なMetAP2基質を有する可能性があると主張された。したがって、いくつかの手法を利用して、薬物で処理した細胞がメチオニンのプロセシングにおいて特異的な異常を有するかどうかを決定した。フマギリン、TNP−470およびA−832234を細胞ベースのアッセイに使用してMetAP2阻害を試験し、MetAP2阻害についての新規かつ強力なマーカータンパク質を同定した。
【0005】
約10年前、メチオニンプロセシングの選択的な阻害後に、ハウスキーピングタンパク質であるグリセルアルデヒド3−リン酸脱水素酵素(GAPDH)が検出された。活性な細胞MetAP2酵素についての初期アッセイは、TNP−470を用いて処理された細胞の酵素GAPDHの2Dゲル移動度シフトに基づくTurkら(1999)Chem & Biol 6:823−833により知られている。このアッセイは、不可逆的なMetAP2阻害剤に対してのみ使用することができる。Wangら(2008) PNAS 105(6):1838−1843は、1D等電点電気泳動(IEF)により、N末端メチオニンを有するGAPDH変異体とN末端メチオニンを有さないGAPDH変異体が分離される可能性があり、IEFに続く免疫ブロットにより、細胞MetAP2阻害のマーカーとしてのGAPDHについてのアッセイがもたらされる可能性があるという推測によって、成熟したプロセシングされたGAPDHから、N末端メチオニンがプロセシングされていないGAPDH変異体を区別するアッセイを確立するための取り組みを開始した。しかし、GAPDHは、処理されたHCT−116ヒト結腸癌細胞だけでなく、処理されていない、メチオニンが欠如したN末端配列を有するHCT−116ヒト結腸癌細胞でも同定された。今まで、この推定マーカーをモニタリングするための高信頼性かつ強力な検出系を確立することはできていない。
【0006】
先行技術はまた、MetAP2のバイオマーカーとしてのタンパク質14−3−3γの検出についても記載している(WO2002/39990A2)。14−3−3γアイソフォームは、MetAP阻害化合物が哺乳動物細胞に適用された際に誘発されることが報告された。14−3−3γアイソフォームは、14−3−3タンパク質ファミリーに属する。14−3−3γアイソフォームの特異的な検出は、関連アイソフォームがタンパク質の分析的な試験において非常に類似した性質を示し、さらにより具体的には、変化した14−3−3γアイソフォームが検出される必要があるという事実によって妨げられる。
【0007】
したがって、本発明の基礎を形成している技術的な課題は、MetAP2のタンパク質分解活性を有効に阻害する化合物をスクリーニングするための方法を提供することである。本発明の別の課題は、そのような化合物のMetAP2を阻害する性質をin vitroおよびin vivoで同定および特徴付けすることを可能にするバイオマーカーを提供することである。増殖依存性疾患を簡便かつ高速にモニタリングすることを可能にする、MetAP2の活性変化を検出するための物質を提供することもさらに別の課題である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】、異なる内皮細胞および癌細胞からの細胞抽出物の、IEF分離後の、MetAP2阻害剤を適用した後に観察された新規バンドを伴う処理に関連したパターンを示す図である。
【図2】図1のレーン2〜4を拡大した画像を示す図である。
【図3】MetAP2阻害後の、EEF1A1のN末端におけるMet1を確認するエドマン法の結果を示す図である。
【図4】バンド1およびバンド2(図2を参照されたい)をゲル内消化した後のタンパク質の同定および質量マップおよびデータベースアノテーションを示す図である。
【図5】N末端ペプチドを局在化するステップと、MSMSによって配列決定するステップと、N末端のプロセシングの特徴付けをするステップとを含む、N末端の決定を示す。
【図6】バンド1のトリプシン消化の親質量2.073,2DのMSMS分析を示す。
【図7】バンド2のトリプシン消化の親質量2.162,2DのMSMS分析を示す。
【図8】2つの細胞抽出物について、EEF1A1の同定の評価を示す。
【図9】TNP470を用いて処理したbEND3細胞抽出物におけるEEF1A1の移動度シフトを示す。
【図10】、活性なMetAP2阻害剤から明確に識別可能な陰性対照を用いたEEF1A1の移動度シフトを示す。
【図11】EEF1A1(P68104;配列番号1)およびEEF1A2(Q05639;配列番号2)の配列比較を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、メチオニンアミノペプチダーゼ2(MetAP2)の活性を阻害する化合物をスクリーニングするための方法であって、
(a)単一の細胞、細胞培養物、組織、器官および哺乳動物の群から選択される、MetAP2および/または真核生物翻訳伸長因子1アルファ(EEF1A)を発現可能な細胞系またはその試料を準備するステップと、
(b)その系の少なくとも一部分を、スクリーニングされる化合物と一緒にインキュベートするステップと、
(c)N末端メチオニン残基を有するEEF1A(MetEEF1A)を決定することによってMetAP2阻害を検出するステップと
を含む方法を提供することによってこの課題を解決する。
【0010】
驚いたことに、タンパク質EEF1Aは、MetAP2の基質であることが本発明者らによって実証されたが、MetAP1によってはプロセシングされないと思われる。したがって、前述のEEF1Aタンパク質は、MetAP2活性のレベルをモニタリングするのによく適している新規バイオマーカーとなる。MetAP2阻害剤を使用した細胞ベースの試験の後で、本発明の基礎をなすバイオマーカーEEF1Aが、予想外に、示差的にプロセシングされることがわかった。MetAP2が薬理学的に阻害された後、EEF1Aの開始メチオニンが切断されないので、このタンパク質はアセチル化されたグリシン残基ではなくN末端メチオニンを持っている。
【0011】
タンパク質EEF1Aは、配列および他の特徴に関してはすでに当技術分野の水準において記述されているが、しかし、MetAP2との関連については以前に特定されていない。真核生物翻訳伸長因子1アルファ(EEF1A)は、GTP結合性伸長因子ファミリー(EF−Tu/EF−1Aサブファミリー)に属する50kDの細胞質タンパク質である。この因子は、タンパク質の生合成に関与し、Exportin−5(XPO5)、EEF1A1、Ranおよびアミノアシル化されたtRNAで構成される核外輸送複合体において特に見出される。XPO5との相互作用により、リボソームのA部位へのアミノアシルtRNAのGTP依存性結合が促進される。前述のタンパク質EEF1Aは、eEF1A、EF1A、EF1α、EF1アルファ、EF1a、白血球受容体クラスターメンバー7(LENG7)および伸長因子Tu(EF−Tu)など、別の呼び方をすることができる。EF−Tuは、実際には構造および機能が別のタンパク質であると考えるものとする。
【0012】
EEF1Aは、EEF1A1、EEF1A2などの異なるタンパク質の群を含み、それらは保護範囲に包含される。明確に挙げたアイソフォームはどちらも、同一のN末端を有し、本発明の方法に特に適用可能である。EEF1Aによって表される群のタンパク質メンバーは互いに置き換えることができるので、特定のEEF1Aアイソフォームを参照することは、保護範囲を限定すると解釈されるものではない。EEF1A1などの特定のEEF1Aアイソフォームに関する本明細書の教示は、そこで適切であれば、EEF1A群の他のメンバーに制限なく有効かつ適用可能であるとみなされる。EEF1A群の一部のメンバー、またはさらに全メンバーに対する、特にN末端における高い相同性、ならびにMetAP2に対する強い基質親和性を示す別のEEF1Aアイソフォームをさらに特徴付けすることも除外されない。したがって、本発明の教示は、現在既知であるEEF1Aアイソフォームに制限されず、それらに対する相同性が高く、かつMetAP2に対する基質親和性が強いそれぞれのEEF1Aアイソフォームを包含するものとする。EEF1Aのアイソフォームは、例えばGenbank、SwissProtなどの多数のデータベースに一般に受諾され確定された受託番号(例えば、P68104、Q05639)によって容易に特定することができる。
【0013】
第1のステップ(a)において、細胞系を準備する。細胞系は、細胞を含むという条件で、任意の対象であると定義される。したがって、細胞系は、単一の細胞、細胞培養物、組織、器官および哺乳動物の群から選択することができる。細胞系の範囲は、そのような生物学的実体の一部、すなわち組織試料、器官試料および哺乳動物試料も含む。当然のことながら、前述の順の各細胞系は、それぞれの後続の系の試料を表す。
【0014】
詳細には、細胞試料は、試験される哺乳動物からin vivoまたはin situで取り出す。細胞試料の採取は適正な医療のための原則に従う。生体試料は、任意の生物学的種から取り出すことができるが、試料は特に実験動物またはヒト、より好ましくはラット、マウスまたはヒト、最も好ましくはヒトから取り出される。
【0015】
本発明において、細胞系は生体液も含んでよく、体液試料は血液、血清、血漿、唾液または尿からなることが好ましい。生検による、特に病気の部位の近くで取り出された組織試料を集めることも好ましい。生体試料は、例えば子宮、脳下垂体、肝臓、脳、結腸、乳房、脂肪組織などの任意の組織に由来するものであってよい。試料は、精製して水素結合形成の阻害剤などの妨害物質を除去することができる。
【0016】
細胞試料は、MetAP2および/またはEEF1A、好ましくはMetAP2およびEEF1Aの発現が可能であるという条件で、単離された状態、培養物中、または細胞系としてのいずれかの、任意の種類の初代細胞または遺伝子操作された細胞を指す。細胞がMetAP2を発現可能であることが特に好ましいが、MetAP2欠損細胞を使用することができ、酵素MetAP2を人工的に細胞系に加えることも排除されないものとする。細胞がEEF1Aを発現可能であることも特に好ましいが、EEF1A欠損細胞を使用することができ、EEF1Aを人工的に細胞系に加えることも排除されないものとする。本発明のアッセイは、in vitroにおいてさらに完全に実行することができる、すなわち、本発明によるステップ(a)の細胞系を放棄することができる。したがって、ステップ(a)は、単離されたMetAP2の量が、粗製物が精製された形態で提供されるように改変される。
【0017】
さらに当然のことながら、同じ機能を有するMetAP2の変異体、突然変異体、部分または相同なタンパク質配列は、定義ならびに保護の範囲に包含される。元の配列とその誘導体の間の変化の程度は、必然的に、基質認識およびメチオニン切断の必要条件によって限定される。好ましくは、相同性は、少なくとも85%、より好ましくは少なくとも95%、最も好ましくは少なくとも98%に達する。起こり得る変化は、少なくとも1つのアミノ酸の欠失、挿入、置換、修飾および付加、または別のタンパク質酸(protein acid)との融合を含む。操作された細胞は、対応する遺伝子またはその部分を有する適切なベクターを用いたトランスフェクションによって、MetAP2タンパク質を発現することができる。組換え細胞は、真核生物由来であることが好ましい。
【0018】
MetAP2の変化に関する先の教示は、適切であれば、EEF1Aの変化に制限なく有効かつ適用可能であるとみなされる。当業者には明らかであるように、本発明は、配列番号1および2(図11を参照されたい)の全長タンパク質EEF1Aに限定されると解釈されるものではない。EEF1Aの生理学的断片または人工断片、EEF1Aの二次修飾、種依存性の変化ならびにEEF1Aの対立遺伝子変異体も本発明に包含される。この点において、「対立遺伝子変異体」は、単一遺伝子座に存在し得る遺伝子またはDNA配列の2種以上の異なる型のうち1つの遺伝子産物を示すと理解される。人工断片は、配列番号1または2に開示した配列に由来する少なくともN末端の20個の連続したアミノ酸、好ましくは少なくともN末端の40個の連続したアミノ酸、より好ましくは少なくともN末端の60個の連続したアミノ酸、非常に好ましくは少なくともN末端の82個の連続したアミノ酸からなる診断対象のN末端を少なくとも含む、合成的にまたは組換え技術によって作製されたペプチドを包含することが好ましい。N末端の長さがN末端断片に従って定義されるそのようなN末端断片または全長タンパク質のN末端は、少しでも基質認識を確実にするために、配列番号1および2に記載のタンパク質の対応するN末端と完全な同一性を示すことが特に好ましい。そのような断片は、免疫測定法において標準物質として有利に使用することができる。本発明による方法において、全長EEF1Aまたはこのマーカーの生理学的変異体が検出されることが好ましい。
【0019】
本発明のより好ましい実施形態において、スクリーニング法のステップ(a)において細胞系を準備する。本発明の最も好ましい細胞系は、マウス脳内皮腫細胞(bEND.3)、ヒト結腸癌細胞(HCT116)、ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)および/またはヒト線維肉腫細胞(HT1080)である。
【0020】
細胞試料は保存、例えば凍結などして、一定期間培養するか、または即座にステップ(b)に供する。スクリーニングされる化合物と一緒にインキュベートする前に、細胞試料を複数の部分に分ける。少なくとも2つの部分を準備し、一方はスクリーニング用に使用し、他方は対照としての役割を果たす。スクリーニング用部分の数は、対照用部分の数を超えることが好ましい。通常、きわめて多数の部分をハイスループットスクリーニングに供する。
【0021】
本明細書で使用する「MetAP2阻害活性を有する化合物」とは、MetAP2の生物学的作用の少なくとも一部を遮断する作用物質であり、起源が内因性であろうと外因性であろうと、MetAP2と結合および相互作用し、それによってMetAP2の特定の生物学的作用を停止させることができる任意の因子、作用物質、化合物を指す。当業者には、例えば、MetAP2の生物学的作用の1つが細胞増殖の促進であることは既知であろう。
【0022】
化合物は、標的分子と相互作用することができる生物学的かつ/または化学的な構造で構成される。ここで、MetAP2シグナル伝達の任意の構成要素が「標的分子」とみなされるものとし、標的分子はMetAP2タンパク質標的に限定されず、コード遺伝子もしくはその遺伝子産物、または調節タンパク質、または前記遺伝子もしくはその遺伝子産物を含むシグナル伝達経路の構成要素も含んでよい。したがって、化合物の特異的相互作用は、細胞機能の変化を単に標的にするだけのことまたは誘発することのいずれかを含み得る、またはさらにはどちらの作用も同時に含み得る。
【0023】
本発明の方法でスクリーニングされる化合物はどのようにも制限されない。具体的には、化合物は、核酸、ペプチド、炭水化物、ポリマー、50〜1,000Daの分子量を有する小分子およびタンパク質の群から選択される。それらの化合物は、多くの場合ライブラリーにおいて入手可能である。細胞試料の別個の部分内で単一の化合物をインキュベートすることが好ましい。しかし、1つの部分内で少なくとも2種の化合物をインキュベートすることによって化合物の協同作用を調査することも可能である。別の細胞部分を化合物の非存在下で同時にインキュベートする。
【0024】
「インキュベート」という用語は、化合物と細胞を、化合物および/または標的の種類に応じて異なる期間接触させることを指す。インキュベートのプロセスは、種々の他のパラメータ、例えば細胞の種類および検出感度にも左右され、その最適化は当業者に既知の常法通りの手順に従う。インキュベーションの手順は、化学変換せずに実現することができる、または生化学反応を伴ってよい。化学溶液を加えることおよび/または物理的な手順、例えば熱の影響を適用することにより、試料内の標的構造の接近容易性を改善することができる。インキュベートの結果として特定のインキュベート産物が形成される。
【0025】
ステップ(c)において、本発明の目的の有効化合物の特定を、N末端メチオニンを有するEEF1Aの存在を決定することによって間接的に行う。決定は、特定の時点で行い、実験の開始時のシグナル強度および陽性対照/陰性対照と相関させる。対照系は、化合物と一緒にインキュベートしない(陰性対照)、または対照系はMetAP2阻害活性を有さない標準化合物(陰性対照)もしくはMetAP2阻害活性を有する標準化合物(陽性対照)と一緒にインキュベートする、のいずれかである。活性は、タンパク質のプロセシングにおける変化、すなわち潜在的阻害化合物を用いて処理した後に開始メチオニンが切断されないことによって明らかになる。各処理間で対比較を行う。対比較には、所与の処理条件下での所与のバイオマーカーEEF1Aについての、第2の処理条件下でのこのタンパク質のタンパク質プロセシングのデータと比較した、タンパク質プロセシングのデータが必要である。比較は、既知の市販プログラムを活用して適切な統計的技法を使用して行う。
【0026】
インタクトな細胞を、選択した検出方法に適用することによって検出を行うことができる。しかし、細胞抽出物を最初に準備することが好ましい。浸透圧衝撃を引き起こし、細胞膜を穿孔することができる適切な周知の溶解緩衝液中で細胞溶解を行うことができる。細胞構造の安定性も、例えばボールミル、フレンチプレス、超音波などの機械的な力によって、細胞壁および細胞膜それぞれの酵素的分解によって、ならびに/または界面活性剤の作用によって破壊することができる。バイオマーカーを、さらに精製して妨害物質を除去することができ、またはバイオマーカーEEF1Aを試料中に濃縮することができる。下流のプロセシングおよび/または濃縮は、沈降法、透析法、ゲル濾過法、ゲル溶出法、または、HPLCもしくはイオン交換クロマトグラフィーなどのクロマトグラフィー法によって行うことが好ましい。より良好な収率のためにいくつかの方法を組み合わせることが推奨される。
【0027】
MetAP2阻害を検出する適切な試験は、当業者に既知である、または当業者はそれを常法に従って容易に設計することができる。多くの異なる種類のアッセイが既知であり、その例を下記に示す。本発明によるアッセイは、遺伝子の発現を検出および/または定量化するために適した任意のアッセイであってよいが、MetEEF1Aは、MetEEF1Aと特異的に相互作用する物質を用いて決定することが好ましい。
【0028】
本明細書で使用する「特異的な物質」という用語は、信頼性の高い結合性を確実にするためにMetEEF1Aに対して高い親和性を有する分子を含む。物質は、タンパク質の部分に対して特異的であることが好ましい。そのようなタンパク質の部分とは、特定の機能を発現させるために十分な領域についての制限、すなわち、認識のための構造的決定因子の規定を表す。全ての切断は、特有の認識を保存する必要条件により必然的に限定される。しかし、遺伝子産物の部分は非常に小さくてもよい。物質は、選択された単一の標的との排他的かつ定方向の相互作用を保証するために、単一特異的であることが好ましい。特異的な物質は、EEF1A(例えばN末端にアセチル化されたグリシン残基を有するタンパク質)とMetEEF1A(すなわち、N末端にメチオニン残基を有するタンパク質)を識別できることが特に必要とされる。
【0029】
本発明によるタンパク質またはそのN末端部の認識は、アミノ酸配列の一次構造レベル、二次構造レベルおよび/または三次構造レベルにおける、物質との特異的な相互作用によって実現することができる。N末端における単一のアミノ酸修飾は、一次構造の認識に都合がよい。本発明に照らして、「認識」という用語は、それに限定されることなく、特異的な物質と標的の間の任意の種類の相互作用、具体的には、例えば共有結合、疎水性/親水性相互作用、ファンデルワールス力、イオン対、水素結合、リガンド−受容体相互作用、エピトープと抗体結合部位の間の相互作用、ヌクレオチド塩基対合などの共有または非共有の結合または会合に関する。そのような会合には、ペプチド、タンパク質または他のヌクレオチド配列などの他の分子の存在も包含してよい。
【0030】
特異的な物質は、認識、結合および相互作用を可能とするように、標的分子と相互作用することができる生物学的および/または化学的な構造で構成される。具体的には、物質は、核酸、ペプチド、炭水化物、ポリマー、50〜1,000Daの分子量を有する小分子およびタンパク質、好ましくは核酸およびタンパク質の群から選択される。特異的な物質は、信頼性の高い検出を確実にするために十分な感受性および特異性を表す。特異的な物質は、その対応する標的分子に対して少なくとも10-7Mの親和性を有する。特異的な物質は、その標的分子に対して好ましくは10-8Mまたは、なおさらに好ましくは10-9Mの親和性を有する。当業者には理解されるように、特異的という用語は、試料中に存在する他の生体分子がMetEEF1Aに特異的な物質と有意に結合しないことを示すために使用される。標的分子以外の生体分子との結合レベルは、標的分子の結合親和性のわずか10%の親和性、より好ましくはわずか5%未満の結合親和性になることが好ましい。最も好ましい特異的な物質は、親和性ならびに特異性に関する上記の最小限の基準の両方を満たす。
【0031】
タンパク質またはペプチドは、抗体、サイトカイン、リポカリン、受容体、レクチン、アビジン、リポタンパク質、糖タンパク質、オリゴペプチド、ペプチドリガンドおよびペプチドホルモンからなる群から選択されることが好ましい。抗体を特異的な物質として使用することがより好ましい。「抗体」とは、免疫グロブリン遺伝子またはその断片によって本質的にコードされるポリペプチドを指す。本発明によると、抗体は、インタクトな免疫グロブリンまたはいくつもの、よく特徴付けされた断片として存在する。断片は、Fab断片、Fc断片、一本鎖抗体(scFv)、可変領域、定常領域、H鎖(VH)、およびL鎖(VL)からなる群、より好ましくはFab断片およびscFvから選択されることが好ましい。Fab断片およびFc断片などの断片は、種々のペプチダーゼを使用した切断によって作製することができる。さらに、断片は、操作し、組換え発現させることができ、scFvが好ましい。
【0032】
「核酸」という用語は、DNAポリマーまたはRNAポリマーに組み込むことができる、合成ヌクレオチド、非天然ヌクレオチドまたは修飾ヌクレオチドを二者択一的に含む一本鎖または二本鎖のDNAまたはRNAの天然ポリマーまたは合成ポリマーを指す。各ヌクレオチドは、糖部分、リン酸部分、およびプリン残基またはピリミジン残基のいずれかからなる。核酸は、一本鎖または二本鎖のDNAまたはRNA、プライマー、アンチセンスオリゴヌクレオチド、リボザイム、DNA酵素、アプタマーおよび/またはsiRNA、またはそれらの部分であることが好ましい。核酸は、場合によってホスホロチオエートDNA、ロックド核酸(LNA)、ペプチド核酸(PNA)またはSpiegelmerのように修飾されてもよい。MetAP2に特異的な物質として使用するために特に好ましい核酸プローブはアプタマーである。
【0033】
DNAアプタマーおよびRNAアプタマーは、多種多様の標的分子に対して高い親和性を表すことがわかっている。標的の構造は、タンパク質、ペプチドおよび、例えば有機色素、ヌクレオチド、アミノ酸、ビタミン、アルカロイドなどの小分子を含み得る。RNA内で利用可能な2’−ヒドロキシル基により、いくつかの分子内接触および分子間接触が促進されるのでRNAアプタマーがより好ましく、ここで、分子間接触は、同じ配列の分子間、異なる配列の分子間、またはRNAとRNAで構成されていない任意の他の分子との間でなされる。それらの核酸リガンドは、効率的なin vitro選択手順、いわゆるSELEXプロセス(試験管内進化法:systematic evolution of ligands by exponential enrichment)によって同定することができる。RNAは、生体溶液中で非常に核酸分解しやすいので、RNAアプタマーは、例えば、ホスホロチオエート、ロックド核酸、またはSpiegelmerを使用して化学修飾するべきである。Spiegelmerと称されるL−RNAバージョンのアプタマーは、自然分解プロセスに対して本質的に影響を受けないので、特に寿命が長い。アプタマーは、広範囲の構造上の標的に対して親和性が高いため、抗体と非常に類似した働きをする。
【0034】
アプタマーは、標準のホスホラミダイト化学を使用して合成することができる。さらに、およそ30個を超えるヌクレオチドを有するRNAアプタマーは、in vitro転写によって、有利に大量に合成することができる。アプタマーの選択、合成、および精製については当業者に周知である。
【0035】
特異的な物質を標識することができ、その際に、標識は、特異的な物質の固有の特徴および適用される検出方法、すなわち、必要な感受性、コンジュゲートの容易さ、安定性要件、ならびに利用可能な器具類および廃棄設備に左右される。特異的なインキュベート産物を検出するために、適用される方法はモニタリングされる特異的なインキュベート産物に左右され、それは当業者に周知である。本発明による適切な検出方法の好ましい例は、発光、具体的には蛍光、さらにVIS着色および/または放射性発光である。
【0036】
発光は、化学発光、生物発光または光ルミネセンスの結果としての光の放射に関係する。化学発光は、化学反応の結果として可視光線の放射を伴うが、一方生物発光は、ルシフェラーゼの活性を必要とする。現在好ましい光ルミネセンスは、蛍光刺激としても既知であり、光子の吸収によって引き起こされ、照射によってもたらされることが好ましく、およそ10-8秒の期間内に波長が30〜50nm移行して光子として再度放出される。蛍光を検出するための機器としては、典型的な卓上蛍光光度計、蛍光マルチウェルプレートリーダー、光ファイバー蛍光光度計、蛍光顕微鏡および蛍光検出と連結したマイクロチップ/マイクロ流体系が挙げられるが、それらに限定されない。
【0037】
VIS着色とは、任意の無色の物質を肉眼で見えるように可視化することを指す。着色強度は光度計で測定することが好ましい。
【0038】
同位元素の放射能放射は、シンチレーションによって測定する。液体シンチレーションのプロセスは、有機溶媒とシンチレーションカクテルと称される溶質の系におけるベータ放射の獲得によって試料中のベータ崩壊を検出することを伴う。試料中の3H、14C、32P、33Pおよび35Sなどの放射性同位元素によって放射されるベータ崩壊電子は溶媒分子を励起させ、それにより今度はエネルギーが溶質に移動する。溶質のエネルギー放射(光量子)は、シンチレーションカウンター内の光電子増倍管によって電気信号に変換される。カクテルは、試料の均一な懸濁を保つ可溶化剤としても作用しなければならない。他の崩壊プロセス(崩壊系列)の結果としてガンマ線光子がしばしば生じ、新規に形成された核の過剰なエネルギーが取り除かれる。進路に沿って衝突することによってイオン化が誘導されてもそれらは質量を持たずほとんど生じない。ガンマ光子は、3つの機構:コンプトン効果、光電効果および対生成の1つまたは複数によって検出および定量化するために吸収される。本発明の有利なガンマ崩壊同位元素は125Iである。
【0039】
標識方法は、標識が容易に検出される限りは特に限定されない。「標識された特異的な物質」は、バイオマーカーと結合した標識の存在を検出することによってMetEEF1Aタンパク質の存在を検出することができるように、リンカーもしくは化学結合を通じて共有的に、またはイオン性、ファンデルワールス、静電気的、疎水性相互作用または水素結合を通じて非共有的に、のいずれかで標識に結合したものである。
【0040】
抗MetEEF1A抗体の酵素への共有結合は、グルタルアルデヒトとの結合などの種々の方法によって行うことができる。酵素および抗体の両方が遊離アミノ基を介してグルタルアルデヒトと連結し、網目状の酵素と抗体の副産物が取り出される。別の方法では、酵素がペルオキシダーゼなどの糖タンパク質である場合、糖残基を介して抗体と結合する。
【0041】
酵素は、過ヨウ素酸ナトリウムによって酸化され、抗体のアミノ基に直接連結される。炭水化物を含有する他の酵素もこのように抗体と結合させることができるが、時には酸化による活性の損失、例えばアルカリホスファターゼの活性の低減が観察される。酵素の結合は、抗体のアミノ基と、βガラクトシダーゼなどの酵素の遊離のチオール基を、スクシニミジル6−(N−マレイミド)ヘキサノエートなどのヘテロ二官能性リンカーを使用して連結させることによっても行うことができる。
【0042】
タンパク質に対する抗体の特異的な免疫学的結合性は、直接的または間接的に検出することができる。直接的な標識としては、抗体に付着させた蛍光性または発光性のタグ、金属、色素、放射性核種などが挙げられる。ヨウ素125(125I)で標識した抗体を使用することができる。タンパク質マーカーに特異的な化学発光抗体を使用した化学発光アッセイは、タンパク質レベルの、高感度で非放射性の検出に適している。蛍光色素で標識した抗体も適切である。蛍光色素の例としては、DAPI、フルオレセイン、Hoechst33258、R−フィコシアニン、B−フィコエリトリン、R−フィコエリトリン、ローダミン、Texas red、およびリサミンが挙げられるが、それらに限定されない。間接的な標識としては、例えば西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)、アルカリホスファターゼ(AP)、β−ガラクトシダーゼ、ウレアーゼなどの当技術分野で周知の種々の酵素が挙げられる。西洋ワサビペルオキシダーゼによる検出系は、例えば、過酸化水素の存在下で450nmにおいて検出可能な可溶性産物をもたらす発色性基質であるテトラメチルベンジジン(TMB)と一緒に使用することができる。アルカリホスファターゼによる検出系は、例えば、405nmにおいて容易に検出可能な可溶性産物をもたらす発色性基質であるp−ニトロフェニルリン酸と一緒に使用することができる。同様に、β−ガラクトシダーゼによる検出系は、410nmにおいて検出可能な可溶性産物をもたらす発色性基質であるo−ニトロフェニル−β−D−ガラクトピラノシド(galactopyranosxde)(ONPG)と一緒に使用することができる。ウレアーゼによる検出系は、尿素−ブロモクレゾールパープルなどの基質と一緒に使用することができる。
【0043】
本発明の好ましい実施形態において、抗体は検出可能部で標識され、その検出可能部としては、放射性核種、例えばフルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、Oregon Green(商標)、ローダミン、Texas red、テトラローダミン(tetrarhodimine)イソチオシアネート(TRITC)、Cy3、Cy5などの蛍光色素、例えば、緑色蛍光タンパク質(GFP)、フィコエリトリンなどの蛍光マーカー、腫瘍関連プロテアーゼによって活性化される自己消光蛍光化合物、例えばルシフェラーゼ、HRP、APなどの酵素、ナノ粒子、ビオチン、ジゴキシゲニンなどが挙げられるが、それらに限定されない。
【0044】
本発明の別の好ましい実施形態において、核酸は、全て当技術分野で周知であるジゴキシゲニン、ビオチン、化学発光物質、蛍光色素、磁気ビーズ、金属ビーズ、コロイド粒子、高電子密度試薬、酵素、または放射性同位元素を用いて標識される。本発明の範囲で核酸を標識するために好ましい同位元素は、3H、14C、32P、33P、35S、または125Iであり、32P、33P、または125Iがより好ましい。
【0045】
競合的な免疫測定法および非競合的な免疫測定法を含め、種々の免疫測定法技術を使用することができる。「免疫測定法」という用語は、酵素増倍免疫測定法(EMIT)、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)、IgM抗体捕捉ELISA(MAC ELISA)および微粒子酵素免疫測定法(MEIA)などの酵素免疫測定法(EIA)、さらにはキャピラリー電気泳動免疫測定法(CEIA)、放射免疫測定法(RIA);免疫放射線測定法(IRMA)、蛍光偏光免疫測定法(FPIA)および化学発光測定法(CL)を含むがそれらに限定されない技法を包含する。望ましければ、そのような免疫測定法は自動化することができる。免疫測定法は、レーザー誘起蛍光法と組み合わせて使用することもできる。フローインジェクションリポソーム免疫測定法およびリポソーム免疫センサーなどのリポソーム免疫測定法も、本発明における使用に適している。さらに、タンパク質/抗体複合体の形成によって光散乱が増加し、それがマーカー濃度の関数としてピーク速度シグナルに変換される比濁測定法は、本発明の方法における使用に適している。
【0046】
本発明のある実施形態において、抗体をMetEEF1Aに対して特異的な物質として使用し、抗体を標識することによって、好ましくはELISA、RIA、蛍光免疫測定法(FIA)、可溶性粒子免疫測定法(SPIA)またはウェスタンブロット法によって、インキュベート産物を検出する。
【0047】
本発明の好ましい実施形態において、インキュベート産物を検出するためにELISAを使用する。ELISAの構成要素は、免疫応答のパートナーの一方に結合させた酵素である。MetEEF1Aのトレーサー抗原(分析物誘導体)は、競合的なELISAにおいて単一の捕捉抗体(以下、一次と称する)を使用して標識することが好ましく、一方、この抗体は、一次抗体よりも別のMetEEF1Aのエピトープを対象とする第2の抗体(以下、二次と称する)による抗原−抗体複合体の沈殿を含むことが好ましい非競合的なELISAにおいて標識されることが好ましい。抗原と2つの抗体からなる複合体は、サンドイッチ複合体とも呼ばれる。検出は、その後に続く、産物、好ましくは視覚的な着色、生物発光、蛍光または電気信号(酵素電極)の測定によって認識される着色産物への基質の酵素的変換を含む。本発明において標識するために好ましい酵素は当業者に既知であり、例えばペルオキシダーゼ(例えばHRP)、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)、緑色蛍光タンパク質(GFP)、グルタチオンSトランスフェラーゼ(GST)、ルシフェラーゼ、β−ガラクトシダーゼおよびAPである。
【0048】
そのうえ好ましいのは、合成中に免疫試薬、好ましくはトレーサーMetEEF1Aに組み込まれるか、またはアッセイの免疫試薬、好ましくは抗体に引き続いて結合する放射性同位元素を利用した放射性免疫測定法である。本発明の方法において好ましい放射性同位元素は3H、14C、32P、33P、35S、および125Iであり、14C、35S、および125Iがより好ましい。都合のよい方法は、結合性の競合原理に従う。一定量の放射性MetEEF1Aと、様々な量の分析される試料のMetEEF1Aマーカーは、過剰に存在している規定量の抗体について競合する。トレーサーの置換は、較正曲線によって評価することができるマーカー濃度と直接比例する。
【0049】
フルオロフォアで都合よく標識した抗原または抗体を、それぞれFIAにおいて使用する。
【0050】
SPIAは、凝集の結果として銀粒子の色が変化することを利用する。これは二次抗体も指示薬の反応も必要とせず、本発明の範囲内で特に有用になる。同様に都合がよいのは、着色されたラテックス粒子に結合した抗体を使用するラテックス凝集である。しかし、これには、結合していない抗原および/または非特異的に結合している抗原を事前の洗浄ステップで除去するためにMetEEF1Aを強く固定することが必要である。
【0051】
一般に、検出するための方法は全て、結合していない抗原および/または非特異的に結合している抗原をMetEEF1A/抗体複合体から分離するための集中的な洗浄ステップを含む。さらに、任意の検出方法の実験手順は、当業者に周知である。
【0052】
本発明の特異的なインキュベート産物を検出するための別の都合のよい方法は、ウェスタンブロット法である。まず、ゲルを混合し流し込み、予め調製した試料をゲルにローディングし、電気泳動によって分画する。ポリアクリルアミドゲル中に存在するタンパク質を、対象である特異的なタンパク質MetEEF1Aを検出するために抗体が適用されてもよいニトロセルロース膜にブロットする。ブロットのプロセスの効率は100%ではないため、ゲル中に残ったMetEEF1Aを、クーマシーブルーを使用して非選択的に染色することができる。ウェスタンブロット法は、簡便に実行され、濃度を正確に決定する必要がない場合に有利である。
【0053】
既存のEEF1Aに対して様々な特異的な抗体が存在する。抗体は、通常哺乳生物において、その生物体にとって未知である抗原によって免疫応答が引き起こされた際に産生され、3,000g/molを超える分子量を有する。具体的には、ヒトEEF1A1抗原を対象とするポリクローナル抗体が既知である。抗体を産生させるために都合のよい宿主種には、ヤギ、ウサギ、およびマウスが含まれる。別のポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体を、異なる種から生じたEEF1Aおよびその断片に対して選択することができる。ハイブリドーマ技術などの一般的な技法が当業者に周知である。EEF1Aを対象とする抗体は、本発明の方法において特異的な物質として適用される。
【0054】
直接的な標識または間接的な標識からのシグナルは、例えば、発色性基質から着色を検出するための分光光度計を使用して、125Iを検出するためのガンマ線計測器などの、放射線を検出するための放射線計測器を使用して、または特定の波長の光線の存在下で蛍光を検出するための蛍光光度計を使用して分析することができる。酵素に結合した抗体を検出するために、EMAXマイクロプレートリーダー(Molecular Devices;Menlo Park,CA)などの分光光度計を製造者の説明書に従って使用して定量分析を行うことができる。望ましければ、本発明のアッセイは自動化すること、またはロボットによって行うことができ、多数の試料からのシグナルを同時に検出することができる。
【0055】
抗体は、例えば磁気マトリックス粒子またはクロマトグラフのマトリックス粒子、アッセイプレートの表面(例えばマイクロタイターのウェル)、固体基質材料または膜(例えば、プラスチック、ナイロン、紙)などの種々の固体支持体上に固定化することができる。アッセイ用条片は、抗体または固体支持体上のアレイ内の複数の抗体を被覆することによって調製することができる。この条片は、次いで試験試料に浸し、素早く洗浄ステップおよび検出ステップを通して処理して着色されたスポットなどの測定可能なシグナルを発生させることができる。
【0056】
有用な物理フォーマットは、複数の異なるバイオマーカーを検出するための、複数の別々の、アドレス指定可能な(addressable)位置を有する表面を含む。そのようなフォーマットとしては、タンパク質マイクロアレイまたはタンパク質チップが挙げられる。それらの実施形態において、個々の表面位置には、それぞれの位置に、検出のための1つまたは複数のタンパク質マーカーを固定化する抗体を含むことが出来る。あるいは、表面には、表面の別々の位置で固定化された1つまたは複数の別々の粒子(例えば、微少粒子またはナノ粒子)を含んでよく、微小粒子は、1つまたは複数の検出用タンパク質マーカーを固定化するための抗体を含む。
【0057】
分析は、種々の物理フォーマットにおいて行うことができる。例えば、マイクロタイタープレートの使用または自動化を用いて、大量の試験試料を処理することを容易にすることができる。あるいは、適時に診断または予後決定することを容易にするために単一の試料フォーマットを開発することができる。
【0058】
カメラまたは他の記録装置(例えば、光ダイオードおよびデータ記憶装置)によって表示され、場合によって記録された光学画像は、場合によって、本明細書の任意の実施形態において、例えば画像をデジタル化しその画像をコンピュータ上で保管し分析することによってさらに処理する。デジタル化、保管、およびデジタル化映像またはデジタル化光学画像の分析のために、種々の市販の周辺機器およびソフトウェアが利用可能である。従来のシステムの1つは、検体の視野から当技術分野において一般的に使用される冷却した電荷結合素子(CCD)カメラに光線を伝える。CCDカメラは画素(ピクセル)のアレイを含む。検体からの光線はCCD上で画像化される。検体の領域に対応する特定のピクセルをサンプリングして各位置に関する光強度を得る。多数のピクセルを並行して処理して速度を増加させる。本発明の装置および方法は、任意の試料を表示するために、例えば、蛍光視野または暗視野の顕微鏡法によって容易に使用される。
【0059】
本発明の別の実施形態において、バイオマーカーの分析を、例えば、高速液体クロマトグラフィー(high pressure liquid chromatography)(HPLC)および/または、例えばマトリックス支援レーザー脱離イオン化質量分析(MALDI−MS)、マトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間型質量分析(MALDI−TOF/MS)、タンデムMSなどの質量分析によって、好ましくは質量分析、より好ましくはMALDI−TOF/MSまたはタンデムMSによって、実現することができる。バイオマーカーの分析は、完全なタンパク質の質量を決定することおよび/またはタンパク質断片を決定することを含む。少なくとも完全なタンパク質の質量を決定し、場合によって続いて断片の質量を決定することが好ましい。MALDI−TOFを考慮すると、バイオマーカーは、励起状態のレーザーの波長において高い吸収を示す、適切なマトリックスに吸収され、それによって断片イオンの発生が防がれる。穏やかなイオンの発生によって安定のままであるバイオマーカーは、他の細胞構成要素から分離することができる。飛行時間型質量分析の検出は、高真空における質量分離の原理に基づいている。考慮すべきは、一定の均一な静電場によって加速される、同じ位置から同時に開始されるイオン化された種である。そのイオン化された種の速度は、その質量対電荷比に明確に関連付けられ、検出器への到着時間が直接その質量を示す。
【0060】
配列決定または電気泳動によってバイオマーカーの決定を行うことは本発明のさらに別の実施形態である。配列分析の非限定的な例としては、エドマン法、キャピラリーアレイ配列決定法、熱サイクル配列決定法、固相配列決定法、MALDI−TOF/MSなどの質量分析を用いた配列決定法、およびハイブリダイゼーションによる配列決定法が挙げられ、エドマン法が好ましい。電気泳動分析の非限定的な例としては、アガロースゲル電気泳動法またはポリアクリルアミドゲル電気泳動法などの平板ゲル電気泳動法、キャピラリー電気泳動法、変性剤濃度勾配ゲル電気泳動法および等電点電気泳動法(IEF)などが挙げられ、1D IEFが好ましい。IEF分析は、特にクーマシーブルーまたは銀によって染色される。
【0061】
電気化学的なプロセスおよびプローブも、よく確立されており、例えば、参照により本明細書に組み込まれているWO2003/060464A2に記載されている。
【0062】
本発明の好ましい実施形態において、MetEEF1Aの誘発および蓄積は、1次元に沿ったIEFによって、続いて、ウェスタンブロット、質量分析およびN末端の配列決定の群から選択される少なくとも1種の方法によって検出される。メチオニン末端残基を有するMetEEF1Aは、構成的にアセチル化されたEEF1Aアイソフォームと比較して、中性のpHにおいて正に荷電しており、そのことにより2つのアイソフォームをpIによって分離することができる。したがって、ウェスタンブロット用の抗体はMetEEF1Aに対して単一特異的である必要がないが、一般にEEF1Aに対して特異的な任意の抗体、すなわち、EEF1Aの全てのアイソフォームに対して反応性である、またはアセチル化されたグリシン(acGlyEEF1A)もしくはメチオニン(MetEEF1A)のいずれかで開始されるEEF1Aの2つのアイソフォームに特異的な抗体を適用することができる。検出方法の単一の適用に関する先の教示は、その組み合わせに制限なく有効かつ利用可能である。
【0063】
スクリーニング方法の別の実施形態において、MetAP2阻害の検出をステップ(c)においてさらに精密にすることができる。この目的のために、ステップ(c)は、さらに、
(c’)シグナルの量またはシグナルの変化を系内のMetEEF1A濃度と相関させるサブステップと、
(c’’)このMetEEF1A濃度を、化合物と一緒にインキュベートしていない細胞系内および/またはMetAP2阻害活性を有する標準化合物と一緒にインキュベートした細胞系内の別のMetEEF1A濃度と比較することによってMetAP2阻害レベルを検出するサブステップと
を含む。
【0064】
本発明の細胞系を、種々の濃度の同定されたMetAP2阻害剤と一緒にインキュベートする。阻害剤の存在下で観察されるシグナルの放出量またはシグナルの変化は、その化合物に起こる活性の変化を示す。シグナルの変化は、シグナル強度および/またはシグナル寿命の変化である。シグナルの変化によってシグナルが減少または増加するかどうかは問題ではない。シグナルが失われることさえも、シグナルの変化とみなす。次に、シグナルの量またはシグナルの変化を、それぞれ、試料中の阻害剤の濃度と関連付けることができる、すなわち、較正曲線によって対応する濃度を計測することが可能になる。較正曲線は、UV/VIS着色または発光を使用したランベルトベールの方程式に基づくことが好ましい。引き続いて、存在する場合、産物の複合体内のMetEEF1Aのモル部を考慮することによってバイオマーカーの濃度を算出する。例えば、抗体/MetEEF1A複合体内に存在する特異的な物質とMetEEF1Aのモル比は1:1であり、したがってインキュベート産物のモル濃度がMetEEF1Aのモル濃度に相当することが好ましい。
【0065】
試料中のMetEEF1Aの濃度を、処理されていない細胞および/または処理された細胞のいずれかの、既知のMetEEF1Aの濃度レベルと比較することによって化合物の有効性を診断する。当然のことながら、既知濃度は統計的に証明され、したがって、それぞれ、特定のレベルまたは範囲を表している。処理されていない細胞のMetEEF1A濃度レベルと異なる測定濃度はどれも、試験した細胞試料の異常性を示し、一方、処理されていない細胞の濃度レベルに匹敵するMetEEF1A濃度では、化合物を阻害剤として分類することができない。MetAP2阻害の検出について、処理されていない細胞の遺伝子産物の濃度レベルを超える濃度が測定されることが好ましい。この方法を使用して、出願人らは、感受性を、マイクロモル以下またはさらにはナノモルの濃度で実証した。較正プロットにより、この方法を数桁に及ぶダイナミック範囲で適用することができることが明らかになる。
【0066】
化合物の有効性を評価するための別の実施形態によると、本スクリーニング方法は、さらに、ステップ(c)においてアセチル化されたN末端グリシン残基を有するEEF1A(acGlyEEF1A)を決定し、ステップ(c’)においてシグナルの量またはシグナルの変化を系内のacGlyEEF1A濃度と相関させ、場合によってMetEEF1A対acGlyEEF1Aの比を決定し、ステップ(c’’)において、acGlyEEF1A濃度および/またはMetEEF1A対acGlyEEF1Aの比を、化合物と一緒にインキュベートしていない細胞系内および/またはMetAP2阻害活性を有する標準化合物と一緒にインキュベートした細胞系内の、別のacGlyEEF1A濃度および/または別のMetEEF1A対acGlyEEF1Aの比と比較するように行う。MetEEF1Aを考慮した決定、相関、および検出に関する先の教示は、好都合であれば、acGlyEEF1Aを検出することに制限なく有効かつ適用可能である。
【0067】
MetAP2活性を低下させることが明らかになっている化合物のうち、それぞれの、またはいくつかの代表的なものをさらなる分析のために選択する。本発明の好ましい実施形態において、スクリーニング方法は、化合物と、metAP2遺伝子もしくはその遺伝子産物、または調節タンパク質、または前記遺伝子もしくはその遺伝子産物を含むシグナル伝達経路の構成要素との特異的な相互作用を検出することを含む別のステップ(d)を含む。ただし、前述の相互作用により、MetAP2活性は減少、またはさらには阻害される。化合物のMetAP2タンパク質標的への特異的な結合を検出することが好ましい。対照に対して最大の相違を示す化合物を選出することが好ましい。その化合物を、本発明のmetAP2タンパク質標的またはその関連分子への結合によって開始されない別のシグナル伝達を排除するための特異性について分析し、そのうえ、別の標的構造への同時ドッキングが起こる場合、結合した経路による不都合な反応または他の影響を防ぐために、そのような交差反応性について試験する。特異的かつ/または単一特異的な結合性を検出するためのいくつかの方法、例えば、ゲルシフト実験、Biacore測定、X線構造解析、競合的結合研究などが当技術分野で既知である。スクリーニング方法の好ましい実施形態において、本発明の標的構造への物質の単一特異的な結合が検出される。
【0068】
明確な活性の上方制御または下方制御のいずれかを認識することができるように、本発明のバイオマーカーの示差的なタンパク質プロセシング分析によってMetEEF1Aの発現の方向および強度も算定することができ、それが化合物の選択の基礎を形成する。MetAP2活性を阻害する化合物のスクリーニングは本発明の範囲において好ましいが、この方法は、MetAP2活性化因子のスクリーニングにも取り組むことができる。より一般的には、本発明は、MetAP2活性を変化させる化合物をスクリーニングするための方法であって、
(a)単一の細胞、細胞培養物、組織、器官および哺乳動物の群から選択される、MetAP2を発現可能な細胞系またはその試料を準備するステップと、
(b)その系の少なくとも一部分を、スクリーニングされる化合物と一緒にインキュベートするステップと、
(c)MetEEF1Aを決定するステップと、
(c’)シグナルの量またはシグナルの変化を系内のMetEEF1A濃度と相関させるステップと、
(c’’)このMetEEF1Aの濃度を、化合物と一緒にインキュベートしていない細胞系内および/またはMetAP2活性化活性またはMetAP2阻害活性を有する標準化合物と一緒にインキュベートした細胞系内の別のMetEEF1Aの濃度と比較することによってMetAP2活性を検出するステップと、場合によって
(d)MetAP2活性を変化させる化合物と、metAP2遺伝子、またはその調節タンパク質もしくは遺伝子産物、または前記遺伝子もしくはその遺伝子産物を含むシグナル伝達経路の構成要素との特異的な相互作用を検出するステップと
を含む方法にも関する。
【0069】
MetAP2活性化とは、対照系と比較して、MetEEF1Aの発現レベルの任意の観察可能な、または測定可能な減少を指す。それに対して、MetAP2阻害とは、対照系と比較して、MetEEF1Aの発現レベルの任意の観察可能なまたは測定可能な増加を指す。発現レベルの測定は、生体試料におけるタンパク質バイオマーカーの能力がある任意の技法を使用して行うことができる。それらの技法の例は、上記した。EEF1Aのプロセシングの調節について、MetEEF1A濃度が、対照系内のMetEEF1A濃度を少なくとも2倍、好ましくは少なくとも10倍、より好ましくは少なくとも25倍、最も好ましくは少なくとも40倍下回るか、または上回るかのいずれかであることも、本発明の別の実施形態である。本発明の非常に好ましい実施形態において、MetAP2の活性化によって、MetEEF1AがacGlyEEF1Aに完全に変換され(すなわち、MetEEF1Aの欠如)、一方MetAP2阻害によっては、MetEEF1Aが完全に保存される(すなわち、MetEEF1Aの独占的な出現)。
【0070】
MetAP2阻害剤をスクリーニングするための方法に関する本明細書の先の教示は、好都合であれば、MetAP2モジュレーターをスクリーニングするための方法に制限なく有効かつ適用可能であるとみなされる。特に、MetAP2阻害剤に関する先の教示および進行中の教示は、好都合であれば、MetAP2活性化因子に制限なく有効かつ適用可能であり、その際、当業者には当然のことながら、活性化する化合物と阻害する化合物の特定の効果は本質的に正反対である。
【0071】
本発明の方法は、抗増殖活性をもたらす化合物をスクリーニングするために適用されることが好ましい。本明細書において、具体的には、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、骨肉腫、ヒト乳癌または接触阻止されたマウス線維芽細胞などの増殖性細胞培養物を適用する。したがって、血管新生活性および/または抗腫瘍活性がある化合物をスクリーニングすることが特に好ましい。そのような活性は、MetAP2活性によって引き起こされ、媒介され、かつ/または拡大される生理学的状態および/または病理学的状態に関連する。MetAP2阻害剤は、増殖性疾患、好ましくは腫瘍および転移を含めた癌を治療するための細胞障害性薬として非常に有用である。MetAP2阻害剤は、種々のリンパ腫、肉腫、細胞腫および骨髄腫の成長を阻害するために特に適している。さらに、MetAP2阻害剤は、血管新生依存性疾患、例えば種々の眼の血管新生疾患を治療するために適している。
【0072】
本発明は、抗増殖性徴候に対する治療用化合物をスクリーニングするための方法の実施形態であって、ステップ(a)において哺乳動物を準備し、ステップ(b)において、スクリーニングされる化合物を哺乳動物に投与し、ステップ(c)において、哺乳動物から採取した生体試料中のMetEEF1Aを決定することによって治療効果を検出する実施形態も教示している。当然のことながら、「抗増殖性徴候に対する治療用化合物」という表現は、過剰で、制御されず、かつ加速的な細胞の成長、分裂および増殖を特徴とする臨床像の治療において適切な化合物を使用すること、したがって、その化合物が抗増殖性の適用において治療効果があることを指す。
【0073】
ステップ(a)の哺乳動物は、ヒトでない生物体であることが好ましく、実験動物であることがより好ましく、遺伝子改変することができるマウスまたはラットなどの種であることが最も好ましい。哺乳動物は、MetEEF1Aレベルが低いこと、またはさらにはMetEEF1Aレベルを欠くことに関連付けられる任意の増殖性臨床像に罹患している。このバイオマーカーMetEEF1Aのタンパク質ベースでの発現レベルを、前記哺乳動物患者の腫瘍組織または血漿の組織試料などの生検試料において測定し、ベースラインとして設定する。
【0074】
ステップ(b)において、例えば、マウスまたはラットを、注射、注入、経口摂取または直腸摂取によって候補化合物と接触させることができる。ヒトでない生物体の別個の部分内で単一の化合物をインキュベートすることが好ましい。ステップb)は、哺乳動物患者の腫瘍または血漿の組織試料などの試料を前記抗MetAP2薬物にex vivoで暴露させることによってin vitroで行うこともできる。ステップ(b)をin vitroで行う場合、ヒト患者が好ましい。
【0075】
ステップ(c)において、MetEEF1Aの発現レベルを、ステップa)と同じようにして再度測定し、ステップa)およびc)において測定された発現レベルにおける差異を算出する。いかなる差異も、最初のベースラインに対する変化に本質的に基づき、それによって、所定のスクリーニング化合物とMetAP2の相互作用が確認される。望ましいMetEEF1Aの発現レベルの増加により、MetAP2が首尾よく阻害されたことが示され、これを治療効果と相関させる。そのような関連性は、治療された哺乳動物のみを使用することにより、単回用量または多回用量の所定のスクリーニング化合物に対する効果の時系列をモニタリングすることによって確立することができる。効果は、定性的パラメータ、例えば症状の重症度の減少、または定量的パラメータ、例えば細胞成長速度の低下、腫瘍サイズの縮小などのいずれかを用いることによって決定する。ステップ(c)で得られたバイオマーカーMetEEF1Aの発現レベルがステップ(a)と比較して高いことが、前記哺乳動物が前記スクリーニング化合物を用いた治療に対して治療上有利に応答する可能性が高いことを示す。この増加は、比較を、下方制御されたMetAP2活性を本質的に示す健康な対照の哺乳動物(すなわち、いかなる増殖性異常もない)と行うという条件で、閾値に近づく可能性がある。したがって、ステップ(c)の決定は、非増殖性効果および/または増殖性効果を示す別の哺乳動物と比較することにおいて都合よく行う。比較用哺乳動物は、スクリーニングされる化合物には暴露させないが、同じように処理してMetEEF1Aレベルを測定する。ステップ(c)は、
(c’)シグナルの量またはシグナルの変化を系内のMetEEF1A濃度と相関させるサブステップと、
(c’’)MetEEF1A濃度を、非増殖性細胞および/または増殖性細胞の系内の別のMetEEF1A濃度と比較することによって、抗増殖性活性のレベルを検出するサブステップと
をさらに含むことが好ましい。本実施形態の範囲内で、増殖性障害に罹患しているヒトでない生物体の対象の少なくとも2体を試料として準備し、それらの部分集合に化合物を投与し、タンパク質プロセシングのパターンを、化合物を投与した対象および化合物を投与しなかった対象における障害の症状と相関させることがさらに好ましい。一般的なスクリーニング方法の基本的な原理が、好都合であれば、下記のいかなる特別な実施形態にも制限なく有効かつ適用可能であることは言うまでもない。
【0076】
治療効果と一緒に、定性的なレベルをステップ(c)に組み込む。「治療的に関連する効果」により、疾患の1つまたは複数の症状がある程度軽減する、または、疾患または病的状態に関連する、またはその原因である1つまたは複数の生理学的パラメータまたは生化学的パラメータが、部分的にまたは完全に正常に戻る。さらに、「治療有効量」という表現は、この量を受けていない対応する対象と比較した、以下の結果:疾患、症候群、状態、病気、障害もしくは副作用の治療の改善、治癒、予防もしくは解消、または同様に、疾患、病気もしくは障害の進行の低下を有する量を指す。「治療有効量」という表現は、正常な生理機能を増加させるために有効な量も包含する。いくつかの化合物を試験することにより、哺乳動物の対象を治療するために最適な可能性のある化合物が選択される。選出された化合物のin vivo用量率は、そのin vitroのデータに関して、特異的な細胞の増殖に有利に予め調整する。したがって、治療の有効性は著しく増大する。
【0077】
スクリーニング方法によって同定された化合物は、本発明の別の目的である。スクリーニング方法に関する本明細書の先の教示は、好都合であれば、化合物自体に制限なく有効かつ適用可能である。
【0078】
所与の障害または状態に関連するMetAP2活性を変化させる、好ましくはMetAP2活性を阻害する化合物を同定することは、そのような疾患または状態を予防、治療または制御するために治療的に有効な用量で患者に投与することができる医薬の開発を導くことができる。したがって、本発明はさらに、少なくとも1つの本発明による化合物、および場合によって賦形剤および/またはアジュバントを含む薬剤に関する。本発明の目的において、「アジュバント」とは、同時に、同時期に、または逐次的に投与された場合に、本発明の活性成分に対して特異的な応答を増強または改変することが可能なあらゆる物質を指す。注射液用の既知のアジュバントは、例えば、水酸化アルミニウムもしくはリン酸アルミニウムなどのアルミニウム組成物、QS21などのサポニン、ムラミルジペプチドもしくはムラミルトリペプチド、ガンマインターフェロンもしくはTNFなどのタンパク質、M59、スクアレンまたはポリオールである。したがって、本発明は、活性成分として、有効量の本発明によってスクリーニングされた化合物の少なくとも1つ、および/または生理学的に許容されるその塩を、薬学的に容認されるアジュバントと一緒に含む医薬組成物にも関する。
【0079】
本発明の目的における「薬剤」、「薬物」、「医薬組成物」または「医薬製剤」とは、1つまたは複数の本発明のMetAP2阻害剤またはその調製物を含み、MetAP2のシグナリングに関連する疾患に罹患している患者を、その全体的な状態またはその生物体の特定領域の状態の病原的な改変を少なくとも一時的に確立することができるように、予防、治療、経過観察またはアフターケアに使用することができる、医薬分野の任意の作用物質である。
【0080】
さらに、活性成分は、単独でまたは他の治療と組み合わせて投与することができる。相乗効果は、医薬組成物中に2つ以上の化合物を使用することによって実現することができる、すなわち、本発明のMetAP2阻害剤に、少なくとももう1つの作用物質を活性成分として組み合わせる。活性成分は、同時に、または逐次的に、のいずれかで使用することができる。
【0081】
医薬製剤は、任意の望ましい適切な方法、例えば経口的な(頬側または舌下を含む)、直腸への、経鼻的な、局所的な(頬側、舌下または経皮を含む)、膣内への方法または非経口的な方法(皮下、筋肉内、静脈内、皮内を含む)による投与に適合させることができる。そのような製剤は、薬学分野で既知の全てのプロセスを使用して、例えば、活性成分と(1つまたは複数の)賦形剤または(1つまたは複数の)アジュバントを組み合わせることによって調製することができる。
【0082】
本発明の医薬組成物は、一般的な、固体または液体の、担体、希釈剤および/または添加剤ならびに製薬用の通常のアジュバントを使用した既知の手段で、適切な用量で作製される。単一剤形を作製するために活性成分と組み合わせる賦形剤材料の量は、治療される宿主および投与の詳細な様式に応じて変化する。適切な賦形剤としては、経腸的(例えば経口的)、非経口的または局所的適用などの異なる投与経路に適していて、本発明の化合物またはその塩と反応しない、有機物質または無機物質が挙げられる。適切な賦形剤の例は、水、植物油、ベンジルアルコール、アルキレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセロールトリアセテート、ゼラチン、乳糖またはデンプンなどの炭水化物、ステアリン酸マグネシウム、タルク、および石油ゼリーである。
【0083】
経口投与に適合させた医薬製剤は、例えば、カプセルもしくは錠剤;粉末もしくは顆粒;水性溶液もしくは水性懸濁液もしくは非水性の液体;食用泡もしくは泡状食品;または液体水中油エマルションもしくは液体油中水エマルションなどの分割した単位で投与することができる。
【0084】
したがって、例えば、錠剤またはカプセルの形で経口投与する場合、活性成分構成要素は、例えば、エタノール、グリセロール、水などの経口用で、無毒性かつ薬学的に許容される不活性の賦形剤と組み合わせることができる。粉末は、化合物を適切な微細サイズに微粉砕し、それを、同様に微粉砕した、例えば、デンプンまたはマンニトールなどの食用炭水化物などの薬学的な賦形剤と混合することによって調製する。フレーバー、保存料、分散剤および色素も同様に存在してよい。
【0085】
カプセルは、上記の通り粉末混合物を調製し、それを成形ゼラチン殻に充填することによって作製する。流動促進剤および潤滑剤、例えば、高度に分散したケイ酸、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウムまたは固形のポリエチレングリコールを、充填操作の前に粉末混合物に添加することができる。カプセルが摂取された後の医薬品の利用されやすさを改善するために、寒天、炭酸カルシウムまたは炭酸ナトリウムなどの崩壊剤または可溶化剤も同様に添加してよい。
【0086】
さらに、望ましければ、または必要であれば、適切な結合剤、潤滑剤および崩壊剤ならびに色素も同様に、混合物に組み込むことができる。適切な結合剤としては、デンプン、ゼラチン、天然糖、例えばブドウ糖もしくはベータ乳糖など、トウモロコシで作られた甘味料、天然ゴムおよび合成ゴム、例えばアラビアゴム、トラガカントゴムもしくはアルギン酸ナトリウムなど、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレングリコール、ワックスなどが挙げられる。これらの剤形に使用される潤滑剤としては、オレイン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウムなどが挙げられる。崩壊剤としては、デンプン、メチルセルロース、寒天、ベントナイト、キサンタンガムなどが挙げられるがそれらに制限されない。錠剤は、例えば、粉末混合物を調製し、その混合物を顆粒化または乾式プレスし、潤滑剤および崩壊剤を添加し、混合物全体をプレスして錠剤を生じさせることによって製剤する。粉末混合物は、粉砕した化合物を、適切な様式で、上記の通り希釈剤または基剤と、および場合によって、例えば、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸塩、ゼラチンもしくはポリビニルピロリドンなどの結合剤、例えばパラフィンなどの溶解遅延剤、例えば第四級塩などの吸収促進剤、および/または例えばベントナイト、カオリンもしくは第二リン酸カルシウムなどの吸収剤と混合することによって調製する。粉末混合物は、例えば、シロップ、デンプンペースト、アラビアゴム粘液(acadia mucilage)またはセルロース溶液またはポリマー材料などの結合剤で湿らせ、それを、ふるいを通してプレスすることによって顆粒化することができる。顆粒化の代替として、粉末混合物を打錠機に通し、不均一な形状の塊を生じさせ、それを砕いて顆粒を形成することができる。錠剤が鋳型に固着するのを防ぐために、ステアリン酸、ステアリン酸塩、タルクまたは鉱油を添加することによって顆粒を潤滑にすることができる。次いで、潤滑にされた混合物をプレスして錠剤を生じさせる。本発明による化合物は、易流動性の不活性賦形剤と組み合わせ、次いで直接プレスして顆粒化または乾式プレスのステップを行わずに錠剤を生じさせることもできる。シェラック密封層、糖またはポリマー材料の層およびワックスの光沢層からなる透明または不透明な保護層が存在してもよい。異なる用量単位間を区別できるようにするために、それらの被覆に色素を加えることができる。
【0087】
例えば、溶液、シロップおよびエリキシル剤などの経口用液体は、所与量が予め規定された量の化合物を含むように、用量単位の形態に調製することができる。シロップは、化合物を、適切なフレーバーと一緒に水溶液に溶解させることによって調製することができ、一方エリキシル剤は、無毒性のアルコールビヒクルを使用して調製する。懸濁液は、化合物を無毒性ビヒクルに分散させることによって製剤することができる。可溶化剤および乳化剤、例えば、エトキシ化イソステアリルアルコールおよびポリオキシエチレンソルビトールエーテルなど、保存料、フレーバー添加剤、例えば、ペパーミント油または天然甘味料またはサッカリン、または他の人工甘味料なども同様に添加することができる。
【0088】
経口投与するための用量単位製剤は、望ましければ、マイクロカプセル中に被包することができる。この製剤は、放出が延長または遅延されるように、例えば、粒子材料をポリマー、ワックスなどで被覆または包埋することによって調製することもできる。
【0089】
本発明による化合物およびその塩、溶媒和物および生理機能のある誘導体は、小型単層ベシクル、大型単層ベシクルおよび多層ベシクルなどのリポソーム送達系の形で投与することができる。リポソームは、コレステロール、ステアリルアミンまたはホスファチジルコリンなどの種々のリン脂質から形成することができる。
【0090】
本発明による活性成分は、標的細胞内の目的地へ向けた輸送、標的細胞内への組み込み、および/または分布を促進する別の分子と融合または複合体化することもできる。
【0091】
本発明による化合物およびその塩、溶媒和物および生理機能のある誘導体は、化合物分子が結合している個々の担体としてモノクローナル抗体を使用して送達することもできる。化合物は、標的医薬品担体として可溶性ポリマーに結合させることもできる。そのようなポリマーは、パルミトイルラジカルで置換されたポリビニルピロリドン、ピラン共重合物、ポリヒドロキシプロピルメタアクリルアミドフェノール、ポリヒドロキシエチルアスパルトアミドフェノールまたはポリエチレンオキシドポリリジンを包含する。化合物は、薬剤の制御放出を実現するために適した生分解性ポリマー、例えば、ポリ乳酸、ポリ−イプシロン−カプロラクトン、ポリヒドロキシ酪酸、ポリオルトエステル、ポリアセタール、ポリジヒドロキシピラン、ポリシアノアクリル酸および架橋した、または両親媒性のヒドロゲルのブロック共重合体の類にさらに結合させることができる。
【0092】
経皮投与に適合させた医薬製剤は、レシピエントの表皮に広範に、密接に接触させるための独立した硬膏として投与することができる。したがって、例えば、活性成分は、Pharmaceutical Research,3(6),318(1986)において一般的な用語で説明されているように、イオントフォレシスによって硬膏から送達することができる。
【0093】
局所投与に適合させた医薬化合物は、軟膏剤、クリーム、懸濁液、ローション、粉末、溶液、ペースト、ゲル、噴霧剤、エアロゾルまたは油として製剤することができる。眼または他の外側の組織、例えば口および皮膚を治療するために、製剤は、局所用の軟膏剤またはクリームとして適用されることが好ましい。軟膏剤を生じさせる製剤の場合、活性成分は、パラフィン基剤または水混和性クリーム基剤のいずれかと一緒に使用することができる。あるいは、活性成分は、水中油クリーム基剤または油中水基剤を用いてクリームを生じるように製剤することができる。眼に局所的に適用するために適合させた医薬製剤は、活性成分を適切な担体、特に水性溶媒に溶解または懸濁させた点眼剤を含む。口内に局所的に適用するために適合させた医薬製剤は、ロゼンジ、香錠および口内洗浄剤を包含する。
【0094】
直腸投与に適合させた医薬製剤は、座剤または浣腸剤の形で投与することができる。
【0095】
経鼻投与に適合させた、担体が固体物質である医薬製剤は、例えば、20〜500ミクロンの範囲の粒子サイズを有する粗い粉末を含み、嗅剤が取り込まれるように投与される、すなわち、鼻の近くに保持した、粉末を含有する容器から、鼻腔を経由して急速に吸入することによって投与する。担体物質として液体を含む鼻用噴霧剤または点鼻剤として投与するための適切な製剤は、活性成分の水溶液または油溶液を包含する。
【0096】
吸入による投与に適合させた医薬製剤は、各種の加圧エアロゾルディスペンサー、噴霧器または吸入器によって発生させることができる微細粒子状の塵またはミストを包含する。
【0097】
膣内投与に適合させた医薬製剤は、膣座薬、タンポン、クリーム、ゲル、ペースト、泡または噴霧剤の製剤として投与することができる。
【0098】
非経口投与に適合させた医薬製剤としては、治療されるレシピエントの血液との等張性を製剤に与える、抗酸化剤、緩衝液、静菌剤および溶質を含む水性滅菌注射溶液および非水性滅菌注射溶液;および懸濁媒および増粘剤を含んでよい水性滅菌懸濁液および非水性滅菌懸濁液が挙げられる。製剤は、単回用量または多回用量の容器、例えば密封したアンプルおよびバイアルに投入し、フリーズドライ(凍結乾燥)した状態で貯蔵することができ、したがって、注射するためには、使用する直前に、滅菌した担体となる液体、例えば水を加えればよい。処方に従った注射液および注射懸濁液は、滅菌粉末、滅菌顆粒および滅菌錠剤から調製することができる。
【0099】
特に上記した構成成分に加え、製剤は、製剤の詳細な種類に対して当技術分野で一般的な他の作用物質も含んでよいことは言うまでもなく、したがって、例えば、経口投与に適した製剤はフレーバーを含んでよい。
【0100】
本発明の好ましい実施形態において、医薬組成物は経口的または非経口的に投与され、経口的に投与されることがより好ましい。具体的には、活性成分は、酸付加塩および塩基付加塩の両方を含めることを意図した、薬学的に許容される塩などの水溶性の形で提供される。さらに、本発明の化合物およびその塩は、凍結乾燥し、生じた凍結乾燥物を使用して、例えば注射用調製物を作製することができる。示した調製物は、滅菌されてよく、かつ/または担体タンパク質(例えば血清アルブミン)などの助剤、潤滑剤、保存料、安定化剤、充填剤、キレート化剤、抗酸化剤、溶媒、結合剤、懸濁化剤、湿潤剤、乳化剤、塩(浸透圧に影響を及ぼすための)、緩衝物質、着色料、フレーバリング、および1つまたは複数の別の活性物質、例えば1つまたは複数のビタミンを含んでよい。添加剤は当技術分野で周知であり、種々の製剤に使用される。
【0101】
医薬製剤は、用量単位ごとに所定量の活性成分を含む用量単位の形で投与することができる。製剤中の予防的または治療的な活性成分の濃度は、約0.1〜100wt%で変動し得る。式(I)の化合物または薬学的に許容されるその塩は、用量単位当たり、好ましくはおよそ0.5〜1000mg、より好ましくは1〜700mg、最も好ましくは5〜100mgの用量で投与される。一般に、そのような用量範囲は、一日当たりの取り込みの総量に適している。言い換えれば、一日当たりの用量は、およそ0.02〜100mg/体重kgであることが好ましい。しかし、各患者に対する特定の用量は、多種多様の因子に左右される(例えば、治療される状態、投与方法ならびに患者の年齢、体重および状態に左右される)。好ましい用量単位製剤は、上記の通り、活性成分の一日当たりの用量または部分用量、または相当するその画分を含むものである。さらに、この種類の医薬製剤は、薬学分野で既知のプロセスを使用して調製することができる。
【0102】
本発明は、MetAP2活性によって引き起こされ、媒介され、かつ/または拡大される生理学的状態および/または病理学的状態をモニタリングするための方法であって、少なくとも1つの単一の化合物または生理学的に許容されるその塩の有効量を、そのような治療を必要とする哺乳動物に投与し、MetEEF1Aがその哺乳動物から採取した生体試料において決定される方法にも関する。モニタリング期間にわたって前記バイオマーカーの発現レベルが高いことは、MetAP2活性が減少したことを示し、このことは、前記化合物を用いた治療に対して前記哺乳動物が応答する可能性が高いことに関連付けられる。化合物は、上記の通り本発明のスクリーニング方法によって得ることが好ましい。したがって、スクリーニング方法に関する本明細書の先の教示は、好都合であれば、モニタリング方法に制限なく有効かつ適用可能である。
【0103】
上記のEEF1Aの同定により、状況、状態または治療の進行を評価するための有力なツールが提供される。本発明は、各患者それぞれに対するMetAP2阻害化合物の有効性をモニタリングするための臨床マーカーとして使用することができる。具体的には、閉経、手術、治療レジメンの開始、または治療レジメンの完了などの事象に先立って、患者においてEEF1Aを同定してベースラインの結果を準備することができる。次いで、そのような事象の間か後のいずれかにおいて同定方法を使用し、このベースラインを、得られた結果と比較することができる。この情報を診断目的および予後決定目的の両方のために使用することができる。臨床マーカーに関する情報は、加えて、対象の生体試料におけるMetEEF1Aの誘発および蓄積をモニタリングすることによって、活性化合物の用量およびレジメンを最適化するために使用することができる。さらに、本発明の方法は、治療的に有効な化合物および/または選択された化合物についての治療有効量または治療有効レジメンを見出し、それによって、患者に対してそれぞれ治療法を選択し、最適化するために使用することができる。
【0104】
したがって、本発明のモニタリング方法は、ヒト医学および獣医学において利用することができる。哺乳動物は実験動物および/またはヒトでない生物体であることが好ましい。本明細書において、化合物は、治療法として機能し、疾患の発症前または発症後に、1回または数回投与することができる。「有効量」または「有効用量」または「用量」という用語は、本明細書では互換的に使用し、疾患または病理学的状態に対して予防的または治療的に明らかな効果を有する医薬化合物の量、すなわち、組織、系、動物またはヒトにおいて、例えば、研究者または医師が求めるまたは望む生物学的応答または医学的応答を引き起こす医薬化合物の量を指す。
【0105】
上記の本発明の使用の医薬産物は、特に治療的治療のために使用する。モニタリングを治療の1種とみなし、例えば、応答を高め、MetAP2に関連する疾患の病原性および/または症状を完全に根絶するために、化合物を明確な間隔で投与することが好ましい。同一の化合物または異なる化合物のいずれかを適用することができる。薬剤は、疾患が発生する可能性を低下させるため、またはさらにはMetAP2活性に関連する疾患が発症するのを事前に防ぐため、または、現れ、継続している症状を治療するために使用することもできる。本発明の目的において、予防的な治療は、対象が、家族性素因、遺伝子異常または以前経験した疾患などの、上記の生理学的状態または病理学的状態についての任意の前提条件を有する場合に得策である。
【0106】
本発明が関する疾患は癌性疾患であり、耳鼻咽喉領域、肺、縦隔、胃腸管、泌尿生殖器系、婦人科系、乳房、内分泌系、皮膚および骨の癌性疾患、さらには軟部組織の肉腫、中皮腫、黒色腫、中枢神経系の新生物、乳児期の癌性疾患、リンパ腫、白血病、腫瘍随伴性症候群、原発腫瘍不明の転移(CUP症候群)、腹膜癌腫症(peritoneal carcinomatoses)、免疫抑制に関連する悪性腫瘍および/または腫瘍転移の群から選択される。より具体的には、腫瘍は以下の種類の癌と指定することができる:乳腺腺癌、前立腺腺癌および結腸腺癌;気管支から生じる肺癌の全ての型;骨髄の癌、黒色腫、肝癌、神経芽細胞腫、乳頭腫;アプドーマ、分離腫、鰓腫、悪性カルチノイド症候群、カルチノイド心疾患、癌腫(例えば、ウォーカー癌腫、基底細胞癌、基底扁平細胞癌(squamobasal carcinoma)、ブラウン・ピアース癌、腺管癌、エールリッヒ癌、上皮内癌、2型癌(cancer-2 carcinoma)、メルケル細胞癌、粘膜癌、非小細胞性気管支癌、燕麦細胞癌、乳頭癌、硬性癌、気管支肺胞上皮癌、気管支癌、扁平上皮癌および移行上皮癌)、組織球性機能障害(histiocytic functional disorder)、白血病(例えば、B細胞白血病、混合細胞型白血病、ヌル細胞白血病、T細胞白血病、慢性T細胞白血病、HTLV−II関連白血病、急性リンパ性白血病、慢性リンパ性白血病、マスト細胞白血病、および骨髄性白血病に関連する)、悪性組織球症、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、孤立性形質細胞腫;細網内皮症、軟骨芽細胞腫;軟骨腫、軟骨肉腫;線維腫;線維肉腫;巨細胞腫、組織球腫、脂肪腫、脂肪肉腫、白血肉腫、中皮腫、粘液腫、粘液肉腫、骨腫、骨肉腫、ユーイング肉腫、滑膜腫、腺線維腫、腺リンパ腫、癌肉腫、脊索腫、頭蓋咽頭腫、未分化胚細胞腫、過誤腫、間葉腫、中腎腫、筋肉腫、エナメル上皮腫、セメント質腫、歯牙腫、奇形種;胸腺腫、絨毛芽腫、腺癌、腺腫、胆管癌、真珠腫、円柱腫、嚢胞腺癌、嚢胞腺腫、顆粒膜細胞腫、雌雄細胞芽腫(gynadroblastoma)、汗腺腫、島細胞腫瘍、ライジッヒ細胞腫、乳頭腫、セルトリ細胞腫、莢膜細胞腫、平滑筋腫、平滑筋肉腫、筋芽細胞腫、筋腫、筋肉腫、横紋筋腫、横紋筋肉腫、上衣腫、神経節腫、神経膠腫、髄芽細胞腫、髄膜腫、神経鞘腫、神経芽細胞腫、神経上皮腫、神経線維腫、神経腫、傍神経節腫、非クロム親和性傍神経節腫、角化血管腫、好酸球増加症を伴う血管リンパ様過形成、硬化性血管腫、血管腫症、グロムス血管腫、血管内皮腫、血管腫、血管外皮腫、血管肉腫、リンパ管腫、リンパ管筋腫、リンパ管肉腫、松果体腫、葉状嚢肉腫、血管肉腫、リンパ管肉腫、粘液肉腫、卵巣癌、肉腫(例えばユーイング肉腫、実験的に、カポジ肉腫およびマスト細胞肉腫)、新生物(例えば、骨新生物、乳房新生物、消化器系の新生物、直腸結腸新生物、肝臓新生物、膵臓新生物、脳下垂体新生物、精巣新生物、眼窩新生物、頭頸部、中枢神経系の新生物、聴覚器官、骨盤、気道および尿生殖路の新生物)、神経線維腫症ならびに子宮頸部扁平上皮異形成。
【0107】
腫瘍は、扁平上皮、膀胱、胃、腎臓、頭部、頸部、食道、子宮頸部、甲状腺、腸、肝臓、脳、前立腺、尿生殖路、リンパ系、胃、喉頭および/または肺の腫瘍群から選択されることが好ましい。
【0108】
腫瘍は、肺腺癌、小細胞肺癌、膵癌、神経膠芽腫、結腸癌および乳癌の群から選択されることがさらに好ましい。さらに、血液および免疫系の腫瘍を治療および/またはモニタリングすること、より好ましくは、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、急性リンパ性白血病および/または慢性リンパ性白血病の群から選択される腫瘍を治療および/またはモニタリングすることが優先される。そのような腫瘍も、本発明の目的の癌として指定することができる。
【0109】
本発明の別の実施形態において、口腔舌扁平上皮癌、頭部扁平上皮癌、頸部扁平上皮癌、膵癌および乳癌は、モニタリング方法によって探求される対象から外される。
【0110】
本発明の前記化合物は、その最終的な塩でない形で使用することができる。一方、本発明は、それらの化合物を薬学的に許容されるその塩の形で使用することも包含し、その塩は、当技術分野で既知の手順によって種々の有機酸および無機酸および有機塩基および無機塩基から得ることができる。「薬学的に許容される塩」および「生理学的に許容される塩」という表現は、本明細書では互換的に使用し、この関連では、本発明による化合物をその塩の1つの形で含む活性成分、特に、この塩の形が、遊離型の活性成分またはこれまで使用されている他の塩の形の活性成分と比較して改善された薬物動態特性を活性成分に与える場合を意味するものとみなす。活性成分の薬学的に許容できる塩の形により、初めて、以前は有さなかった望ましい薬物動態特性を持ち、さらには体内での治療的有効性に関してこの活性成分の薬力学に好ましい影響を及ぼすことができる活性成分ももたらされ得る。
【0111】
本発明は、MetAP2活性を決定するための方法であって、
(a)単一の細胞、細胞培養物、組織、器官および哺乳動物の群から選択される、MetAP2を発現可能な細胞系またはその試料を準備するステップと、
(b)その系の少なくとも一部分を、スクリーニングされる化合物と一緒にインキュベートするステップと、
(c)MetEEF1Aを決定し、シグナルの量またはシグナルの変化を系内のMetEEF1A濃度と相関させることによってMetAP2活性を決定するステップであって、MetAP2活性とMetEEF1A濃度が逆比例するステップと
を含む方法にも関する。
【0112】
本発明の方法を用いて、完全な阻害または最大活性の間の任意の部分活性を設定することができ、またはさらには上記の閾値を得ることができる。逆比例は、線形関数または非線形関数のいずれかに従い得る。さらに、化合物をスクリーニングするための方法ならびに生理学的状態および/または病理学的状態をモニタリングする方法に関する先の教示は、MetAP2活性を決定する方法に制限なく有効かつ適用可能である。
【0113】
さらに、本発明は、抗MetAP2薬物を用いた治療の候補である、腫瘍に罹患している患者が、前記薬物を用いた治療に対して応答する可能性を予測するためのin vitroの方法であって、前記患者から得た組織試料において、予後遺伝子発現産物であるMetEEF1Aの発現レベルを決定するステップを含み、遺伝子産物の発現が参照値と比較して高いことが、その患者が前記治療に応答する見込みがあることを示す方法に関する。前記抗MetAP2薬物を用いた治療は、最初に行う単独治療法とすることができ、選択された遺伝子発現産物は発現されたタンパク質MetEEF1Aである。あるいは、前記抗MetAP2薬物を用いた治療は、患者が化学療法抵抗性の腫瘍を発症した後に、化学療法薬剤と組み合わせた治療法であり、選択された遺伝子発現産物は、発現されたタンパク質MetEEF1Aである。参照値は、参照患者または参照患者群から得た1つまたは複数の、特定の機能的もしくは臨床的な特性、および/または特定の、遺伝子発現プロファイルまたはタンパク質発現プロファイルによって定義する。前記参照患者または参照患者群は、遺伝子産物を発現していない、または候補患者と比較して遺伝子産物の発現が少ない。参照値は、決定される特定の臨床的応答パラメータによって、または特定の前治療の状態もしくは治療の状態によって、個々に構築または定義する発現の閾値である。適切な臨床的応答パラメータは、無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)、部分応答(PR)、安定応答(SR)、進行性疾患(PD)またはその組み合わせである。組織試料は、前記抗MetAP2薬物を用いて治療する前、さらには前記抗MetAP2薬物を用いて治療中に患者から取り出す。治療中に得た遺伝子発現産物の発現レベルを、前記患者の治療を開始する前に得た値と比較する。患者の試料は、例えば、腫瘍組織または血漿に由来する。
【0114】
増殖性によって引き起こされた障害または状態、具体的には癌に罹患している患者が、抗MetAP2薬物を用いた治療に対して治療上有利に応答する可能性を予測するためのin vitroにおける別の方法は、(a)前記患者の腫瘍組織または血漿の生検組織試料においてMetEEF1Aバイオマーカーの発現レベルをタンパク質ベースで測定するステップと、(b)前記患者の腫瘍または血漿の組織試料を前記抗MetAP2薬物にex vivoで暴露させるステップと、(c)ステップ(b)の前記暴露させた組織試料において、ステップ(a)で特定した前記バイオマーカーの発現レベルを測定するとともにステップ(b)および(c)で測定された発現レベルの差異を算出するステップとを含み、このステップ(c)で得られた前記バイオマーカーの発現レベルがステップ(a)と比較して高いことが、前記患者が前記抗MetAP2薬物を用いた治療に対して治療上有利に応答する可能性が高いことを示す。
【0115】
MetAP2活性の低下についてのバイオマーカーとしての、配列番号1のアミノ酸配列を含むEEF1A1および/または配列番号2のアミノ酸配列を含むEEF1A2(図11を参照されたい)、または同じ機能を有する、変異体、突然変異体、アミノ酸配列の部分または少なくとも85%相同な配列、またはEEF1A1をコードする核酸および/またはEEF1A2をコードする核酸配列の使用も本発明の目的である。本発明の別の目的は、口腔舌扁平上皮癌、頭部扁平上皮癌、頸部扁平上皮癌、膵癌および乳癌を除外した条件下で、細胞の増殖についてのバイオマーカーとしてのEEF1Aの使用に関する。乳癌を除外した条件下で、腫瘍の発生および/または進行性腫瘍の成長の可能性の低下についてのバイオマーカーとしてのEEF1Aの使用も、本発明のさらに別の目的である。好ましい使用は、血管新生の阻害および/または腫瘍の阻害についてのバイオマーカーとしてのEEF1Aの適用に関する。
【0116】
バイオマーカーは、MetAP2活性の低下、細胞増殖の状況および/または腫瘍が発生する可能性の低下および/または進行性腫瘍の成長をモニタリング、決定、および/または予測するために使用することができる。別の使用は、「評価する」という一般用語に包含することができる。データは一定期間にわたってモニタリングし、一方データは特定の時間において決定することは言うまでもない。期間と時間はどちらも、行う実験に応じて当業者が容易に設計することができる。さらに、EEF1Aは、癌に罹患している哺乳動物と、癌の治療において投与されることになっている、かつ/または投与されているMetAP2阻害薬について、薬学的な効果および/または臨床的応答をin vitroで予測するためのバイオマーカーとして使用することができる。基礎をなす治療は、特に最初に行う治療であり、哺乳動物患者を治療するのに用いる阻害薬を単独治療法で投与する。基礎をなす治療の代替の実施形態において、前記薬物は化学療法薬剤と組み合わせ、前記患者は化学療法抵抗性の癌を発症している。
【0117】
別の好ましい使用は、バイオマーカーとしてのMetEEF1A1および/またはMetEEF1A2の使用に関する。スクリーニング方法に関する本明細書の先の教示は、好都合であれば、任意の前記使用に制限なく有効かつ適用可能である。
【0118】
さらに、本発明は、特に、MetAP2活性を検出および/または特徴付けするための本発明の方法を行うために、EEF1A、好ましくはMetEEF1Aと特異的に相互作用する物質を含むキットとして実施することができる。本発明のキットは、本発明の方法の実施の仕方についての書面による説明書を含む、または使用者を書面による説明書に向かわせる物品を含んでよい。ある実施形態において、キットは、レポーター部分またはレポーター装置をさらに含む。さらに、キットは、バイオマーカーを単離するための抽出試薬を含んでよい。スクリーニング方法に関する本明細書の先の教示は、好都合であれば、キットに制限なく有効かつ適用可能であるとみなされる。
【0119】
本発明の範囲において、特有のバイオマーカーEEF1Aを適用することによってMetAP2阻害剤またはモジュレーターをスクリーニングする方法が初めて提供される。本発明は、酵素的なMetAP2活性が妨害されている細胞におけるMetEEF1Aの誘発および蓄積について教示している。MetAP2阻害剤についてのバイオマーカーとしてのEEF1Aはいくつかの利点を有する。EEF1Aは豊富な細胞タンパク質であるので腫瘍試料において容易に検出することができる。EEF1AのN末端の状況は、一定期間にわたってMetAP2の酵素活性を反映し、したがって、MetAP2阻害の結果を真に表し、試験化合物の有効性と良好に相関する。さらに、MetEEF1Aの読み取り情報はMetAP2自体ではなくMetAP2に特異的な基質についてであるので、MetAP2阻害剤の全ての種類に対して使用することができる。基質はMetAP2によってプロセシングされるが、MetAP1によってはプロセシングされず、そのことにより、抗血管新生活性および抗増殖活性が、MetAP2のタンパク質分解活性が阻害されることに特異的に起因することを証明することが可能になる。
【0120】
MetAP2によりメチオニンのプロセシングを阻害することにより、in vitroにおける腫瘍細胞の成長が遮断される。MetAP2阻害剤は、その抗増殖活性について観察されたのと同様に、用量依存的にMetEEF1Aを誘発しさえする。強力なマーカーによって、MetAP2阻害剤を用いて治療した細胞だけでなく動物対象およびヒト対象においてもMetAP2阻害をモニタリングできる可能性がある。MetEEF1Aの誘発は、in vivoにおける抗血管新生活性および抗腫瘍活性とも相関する。EEF1AのN末端の状況は、in vitroおよびin vivoにおける細胞のMetAP2阻害についての優れたバイオマーカーである。EEF1Aのプロセシングは、前臨床試験および臨床試験においてMetAP2阻害をモニタリングするのに役立つ。
【0121】
示差的にプロセシングされたEEF1Aアイソフォームを分析することは、大規模スクリーニング試験に非常に適している。新規マーカーにより、新規MetAP2阻害剤を同定することが可能になる。化合物は、作用の特定の細胞機構を用いて同定および評価することができ、さらに、それが抗血管新生作用および/または抗増殖作用を発揮する可能性を都合よく証明することができる。EEF1A、特にMetEEF1Aの特徴付けは、結果としてMetAP2活性によって引き起こされ、媒介され、かつ/または拡大される状態を診断し、予防的もしくは治療的に治療し、かつ/またはモニタリングするための医薬組成物が提供される、MetAP2による基質の認識に決定的に関与する。その使用により、MetAP2依存性疾患に明らかに関係する症状を直接かつ迅速に低下させる広範囲の治療法に対する新規手法が保証される。その化合物は、哺乳動物における抗癌薬として特に有用である。
【0122】
したがって、そのような生理学的状態または病理学的状態をin vitroにおいてスクリーニングおよびモニタリングすることにおいて、EEF1Aを、MetAP2活性を検出し特徴付けするためのバイオマーカーとみなす。検出方法ならびに本発明から生じたモニタリング方法は、簡便かつ高速な様式で行うことができる。さらに、適切なキットは、費用効率よく作製される。EEF1Aのアイソフォームのターゲティングは、MetAP2活性およびそれによって引き起こされた医学的障害に非常に特異的である。検出された物質は全て、親和性、特異性および安定性が高いこと;製造費用が低く扱いが簡単であることを特徴とする。それらの特徴は、交差反応がないことを含めて再現性のある作用、およびそれらの適合する標的構造との信頼でき、かつ安全な相互作用の基礎を形成する。
【0123】
本明細書で引用した全ての参照文献は、これによって、参照により本発明の開示に組み込まれる。
【0124】
当然のことながら、本発明は、本明細書に記載の特定の方法、特定の物質、使用およびキットに限定されず、そのような事項は当然変動し得る。これも当然のことながら、本明細書で使用した用語は、特定の実施形態を説明するためだけのものであり、本発明の範囲を限定するものではなく、本発明の範囲は添付の特許請求の範囲によってのみ定義される。添付の特許請求の範囲を含めた本明細書で使用した、「a(1つの)」、「an(1つの)」および「the(その)」などの単数形の単語は、文脈から明らかにそうでないことが示されていなければ、対応するその複数の指示対象を含む。したがって、例えば、「(1つの)物質」に言及することは、単一の物質またはいくつかの異なる物質を含み、「(1つの)方法」に言及することは、当業者に既知の同等のステップおよび方法に言及することを含む、などである。他に定義していなければ、本明細書で使用した技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されているのと同じ意味を有する。
【実施例】
【0125】
本発明の実施または試験において、本明細書に記載のものと同様または同等の方法および材料を使用することができるが、適切な例を下記で説明する。以下の例は、限定する目的ではなく、例証する目的で提供する。例の中では、夾雑活性がない(実施するときは必ず(whenever practical))標準試薬および標準緩衝液を使用する。例は、明確に実証された特徴の組み合わせに限定されないように特に解釈されるべきであり、例証された特徴は、本発明の技術的問題が解決すれば、再び制限なく組み合わせることができる。
【0126】
細胞培養およびMetAP2阻害剤を用いた処理
マウス脳内皮腫細胞(bEND3、ECACC番号9609129)を、10%(v/v)熱不活性化ウシ胎児血清(Pan Biotech、#3302)、1mMのピルビン酸ナトリウム(Invitrogen、#11360)および1×非必須アミノ酸溶液(Sigma、M7145)を補充したD−MEM(Invitrogen、#41965)中、10%CO2、37℃で培養した。ヒト結腸癌細胞(HCT116、ATCC CCL225)を、10%(v/v)熱不活性化ウシ胎児血清(Pan Biotech、#3302)、2mMのグルタミン(Invitrogen、#25030)および1mMのピルビン酸ナトリウム(Invitrogen、#11360)を補充したMEMアルファ(Invitrogen、#22571)中、10%CO2、37℃で培養した。ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC、PromoCell、C−12200)を、サプリメントミックス(supplement mix)(PromoCell、C−39215)を含んだ内皮細胞成長培地(PromoCell、C−22020)中、5%CO2、37℃で培養した。ヒト線維肉腫細胞(HT1080、ATCC CCL−121)を、10%(v/v)熱不活性化ウシ胎児血清(Pan Biotech、#3302)を補充したD−MEM(Invitrogen、#41965)中、10%CO2、37℃で培養した。
【0127】
細胞を、トリプシン/EDTA(Invitrogen、#15400)を用いて細胞培養フラスコから脱離させ、Thomaチャンバー(VWR、#631−1117)を使用して計数し、組織培養シャーレ(VWR、#391−2002、#391−2003)中の新鮮な培地に播種した(細胞密度:HT1080、bEND3:15cmのシャーレ当たり、培地30ml中、細胞0.5〜1×106個、HCT116:10cmのシャーレ当たり培地10ml中、細胞1×106個)。細胞を一晩培養し、ビヒクル対照(0.5%DMSO;Merck、#1.02931)または特異的なメチオニンアミノペプチダーゼ2阻害剤(フマギリン:Sigma、F−6771;TNP−470;Abbott Inhibitor A−832234:Sheppardら、(2005) 96th AACR Meeting,Abstract #2531)を用いて、示した濃度で異なる時間処理した(2時間、6時間、24時間、48時間)。培地をファルコンチューブ内に収集し、付着した細胞をダルベッコリン酸緩衝生理食塩水(Invitrogen、#14190)で2回洗浄した。D−PBS洗浄液を培地と合わせた。付着した細胞を、5mlのベルセン(Versene)(Invitrogen、15040)と一緒に20分間インキュベートし、プレートをこすり落とし、培地/洗浄液の溶液と合わせた。細胞を室温、300×gで4分間遠心分離し、0.5mlのD−PBS(Invitrogen、#14190)に再懸濁させ、Thomaチャンバーにおいて計数した。細胞を再度遠心分離し、上清を取り除いた。続いて、細胞をIEF溶解緩衝液(7Mの尿素、2Mのチオ尿素、4%CHAPS、1%DTT、1%ファルマライト(Pharmalyte)、pH3〜10(GE Healthcare)に、1ml当たり細胞2×107個の密度で再懸濁させ、穏やかに攪拌しながら30分間インキュベートした。溶解物を10.000×gで5分間遠心分離し、上清を新品のエッペンドルフマイクロ試験管に収集し、最後に−70℃で凍結させる。
【0128】
IEF分離
詳細に分析するために、細胞抽出物を電気泳動により分離した。等電点電気泳動をpH7〜9の勾配範囲で行った。IEFゲル(CleanGel IEF ultra ETC1001−52、ETC、Germany)を、7Mの尿素、2Mのチオ尿素、1%DTE、4%CHAPS、3%セルバライト(Servalyte)、7〜9で120分間再水和させ、Multiphor II電気泳動ユニット(GE Healthcare)に集めた。試料(5μl)を陽極の近くに適用し、陽極緩衝液(6Mのグリシン)および陰極の流動液10(Serva、Germany)を流した。ゲルをプレフォーカシングした後(700V、30分)、20℃、500Vで30分間、試料の導入を行った。2000Vで210分間分離を行い、次いで2500Vで10分間、バンドを鮮明化した。取り除いた後、PVDF膜上に拡散ブロットするためにゲルをトランスファー緩衝液(50mMのトリスHCl、pH7.5、4Mの塩化グアニジウム、1mg/mlのDTT)中で平衡化し、一晩作動させた。続いて、膜を、3時間、クーマシーブルーで染色するか、またはウサギPcAb抗ヒトEEF1A1(Proteintech Group、USA;11402−1−AP)で免疫染色し、ECL−Plus試薬(GE Healthcare)を用いて検出した。
【0129】
N末端タンパク質の配列決定
IEF分離し、PVDF膜にブロットし、クーマシーブルーで染色した後に、種々の細胞抽出物についてアミノ末端配列の決定を行った。単一のクーマシーバンドを切り出し、Procise491タンパク質配列決定装置(Applied Biosystems、USA)に適用し、標準のプロトコールに従って作動させた。
【0130】
酵素的消化および質量分析
IEF分離した後、クーマシーブルー染色したアクリルアミドゲルバンドを切り出し、50%アセトニトリルで2回洗浄し、純粋なアセトニトリルですすいだ。重炭酸アンモニウム10μlに溶解させたトリプシン0.1μg、pH7.4をゲルバンドに加えることによってゲルの消化を行った。37℃で一晩インキュベートした。消化混合物の一定分量をMALDI−TOF MS(Ultraflex、Bruker、Germany)の標的プレート上に塗布し、マトリックスとしてα−シアノ−4−ヒドロキシ桂皮酸を加えた。質量分析を行い、標準のプロトコールを適用してペプチド断片を検出した。得られたペプチドの質量リストを、Mascot検索アルゴリズム(Matrix Science、UK)を使用してSwissProtデータベースと対照して検索してタンパク質を同定した。さらに、質量マップの別個のペプチドを、それらの個々のペプチドの一次配列を決定し、明確なタンパク質のアノテーションのために、続くMS断片化試験に使用した。
【0131】
表1は、図10についての説明的な情報を含有する。化合物をbEND3細胞と一緒に、示した濃度で48時間インキュベートし、溶解させ、EEF1A1の電気泳動移動度シフトをIEFゲルにおいて評価した。使用した化合物は、示した効力(IC50)を持つMetAP2阻害剤およびHUVEC細胞増殖の阻害剤と特徴付けられた。MetAP2阻害を、トリペプチドMet−Ala−Serを切断し、続いてL−アミノ酸酸化酵素およびL−アミノ酸過酸化酵素で構成される酵素結合反応を使用して切断されたメチオニンを検出することによって測定した(Wangら、(2003) Biochemistry 42(17):5035−5042)。示した化合物によるHUVEC細胞増殖の阻害を、Roche(Swizerland;カタログ番号:11 647 229 001)の比色BrdU−Elisaを使用して測定した。この場合、化合物は、段階希釈して、HUVEC内皮細胞と一緒に72時間インキュベートし、続いてBrdU検出処理した。
【0132】
図面の簡単な説明
図1は、異なる内皮細胞および癌細胞からの細胞抽出物の、IEF分離後の、MetAP2阻害剤を適用した後に観察された新規バンドを伴う処理に関連したパターンを示す(レーン1、5、9:IEFマーカータンパク質;レーン2、6、12:100nMのTNP470;レーン3、7:1μMの、A−832234と同一である2−[2−((Z−)−3−ジエチルアミノ−プロペニル)−4−フルオロ−ベンゼンスルホニルアミノ]−5,6,7,8−テトラヒドロ−ナフタレン−1−カルボン酸;レーン4、8、11:0.5%DMSO。
【0133】
図2は、図1のレーン2〜4を拡大した画像を示す。
【0134】
図3は、MetAP2阻害後の、EEF1A1のN末端におけるMet1を確認するエドマン法の結果を示す。TNP470で処理したHT1080+bEND3細胞について検出された配列は、M1GKEKTHINIである。
【0135】
図4は、バンド1およびバンド2(図2を参照されたい)をゲル内消化した後のタンパク質の同定および質量マップおよびデータベースアノテーションを示す。
【0136】
図5は、N末端ペプチドを局在化するステップと、MSMSによって配列決定するステップと、N末端のプロセシングの特徴付けをするステップとを含む、N末端の決定を示す。バンド1の質量マップは配列acGKEKTHINIVVIGHVDSGK (M+H+: 2.073,2)に対応し、バンド2の質量マップは配列MGKEKTHINIVVIGHVDSGK (M+H+: 2.162,2)に対応する。
【0137】
図6は、バンド1のトリプシン消化の親質量2.073,2DのMSMS分析を示し、配列acGKEKTHINIVVIGHVDSGKを明らかにしている。
【0138】
図7は、バンド2のトリプシン消化の親質量2.162,2DのMSMS分析を示し、配列MGKEKTHINIVVIGHVDSGKを明らかにしている。
【0139】
図8は、2つの細胞抽出物について、EEF1A1の同定の評価を示す(レーン1、3:DMSO;レーン2、4:TNP470)。
【0140】
図9は、TNP470を用いて処理したbEND3細胞抽出物におけるEEF1A1の移動度シフトを示す。48時間後に対照試料(0.5%DMSO)に追加のバンドは出現しなかった。
【0141】
図10は、活性なMetAP2阻害剤から明確に識別可能な陰性対照を用いたEEF1A1の移動度シフトを示す(TNP−470、A−832234;レーン1〜4:表1を参照されたい)。
【0142】
図11は、EEF1A1(P68104;配列番号1)およびEEF1A2(Q05639;配列番号2)の配列比較を示し、それらは92.7%の配列同一性を有する。どちらの受託番号も、Swiss−Prot配列データベースを参照している。
【0143】
例1
処理に関連したパターンは、IEF後にpIが低い新規バンドを示す
異なる内皮細胞および癌細胞(マウス:bEND3、ヒト:HT1080、HCT116)を処理した後、細胞抽出物のIEF分離をpH7〜9の範囲で行った(図1)。DMSOで処理した細胞およびMetAP2阻害剤(100nMのTNP−470;1μMの、A−832234と同一である2−[2−((Z)−3−ジエチルアミノ−プロペニル)−4−フルオロ−ベンゼンスルホニルアミノ]−5,6,7,8−テトラヒドロ−ナフタレン−1−カルボン酸)で処理した細胞からの抽出物を比較すると、クーマシーブルーで染色した後に新規のタンパク質バンド(図1、バンド2、矢印を参照されたい)が検出された。拡大した画像を図2に示す。
【0144】
例2
エドマン法によるEEF1A1の特徴付け
例1で得られたタンパク質バンドについてN末端の配列決定をすることにより、アミノ酸配列MGKEKTHINIが決定された。データベースの配列との比較により、バンド2について、対応するタンパク質がEF1αであると同定された(図3)。N末端がブロックされたタンパク質に典型的なバンド1についてはアミノ酸シグナルが検出されなかった。
【0145】
例3
MSによるEEF1A1の特徴付け
例1で得られたバンド1およびバンド2のトリプシンによるゲル内消化物を質量分析に適用した。データベース検索において、対応する質量リストによっても、両方の消化物についてタンパク質EEF1A1が同定された。このアノテーションは、バンド2のN末端配列決定の結果と一致した(例2、図3を参照されたい)。EEF1A1配列に関してアノテーションされたトリプシンペプチドを図4に示す。
【0146】
注目すべきことに、両方の質量マップを比較することにより、それぞれが1つの示差的なペプチド質量を含有することが示された。バンド2は、mw=2.162Dのペプチドを含有し、それはバンド1には存在しなかった;バンド1については、mw=2.073Dのペプチドが独占的に検出された(図5)。
【0147】
mw=2.162DのペプチドのMS断片化により、メチオニンを含有するペプチドMGKEKTHINIVVIGHVDSGK(図7)が同定され、mw=2.073Dのペプチドにより、アミノ末端が切断されアセチル化された形のacGKEKTHINIVVIGHVDSGKが同定された(図6)。この知見は、特にTNP470を用いて処理した後にEEF1A1のバンド2が出現することと一致した。
【0148】
例4
免疫分析によるEEF1A1の同一性の確認
例1で得られたバンドはどちらも、マウス相同体とも公差反応するポリクローナルウサギPcAb抗ヒトEEF1A1抗体を使用して特異的に検出された。2つの細胞抽出物についてのEEF1A1の同定についての評価を図8に示す。
【0149】
例5
処理に関連した移動度シフトは、細胞型とは無関係に観察された
EEF1A1の移動度シフトは、図9に示したように(bEND3細胞抽出物について示す)、2つの構造的に別個のMetAP2阻害剤(TNP470)を用いて試験した全ての細胞型において確かに検出することができた。48時間後でさえ、対照試料では追加のバンドは出現しなかったが、強度が増加した2番目のバンド(バンド2)は、2時間後にはすでに見られた(図9)。陰性対象は、活性化合物から明確に識別することができた(図10;表1)。
【0150】
【表1】
【0151】
例6
2つのアイソフォームEEF1A1およびEEF1A2は、92.7%の配列相同性を含む(図11)。どちらのアイソフォームも最初の82アミノ酸の範囲内が同一であり、したがって、MetAP2の基質である。
【技術分野】
【0001】
本発明は、MetAP2および/またはEEF1Aを発現可能な細胞系またはその試料を準備すること、その系の少なくとも一部分を、スクリーニングされる化合物と一緒にインキュベートすること、およびN末端メチオニン残基を有するEEF1A(MetEEF1A)を決定することによりMetAP2阻害を検出することによって、MetAP2活性を阻害する化合物をスクリーニングするための方法に関する。本発明の別の目的は、MetAP2活性によって引き起こされ、媒介され、かつ/または拡大される生理学的状態および/または病理学的状態をモニタリングするための方法であって、少なくとも1つの単一の化合物の有効量を、そのような治療を必要とする哺乳動物に投与すること、およびその哺乳動物から採取した生体試料においてMetEEF1Aを決定することによってモニタリングする方法に関する。本発明は、バイオマーカーとしてのEEF1Aの使用にも関する。
【背景技術】
【0002】
原核生物および真核生物のタンパク質合成は、N末端メチオニンを指定するAUGコドンで開始される。細胞タンパク質の大部分において、メチオニンは同時翻訳で除去され、この開始メチオニンの除去は、こうしたタンパク質の正常な機能、すなわち、活性、局在性および安定性のために必要である。N末端メチオニンのプロセシングは、2つの細胞内メタロプロテアーゼ:メチオニンアミノペプチダーゼ1およびメチオニンアミノペプチダーゼ2(MetAP1およびMetAP2)の作用によって行われる。MetAP1およびMetAP2は、いくつもの重要な点で異なる。これらの点として、基質特異性および発現調節が挙げられる。例えば、MetAP2は、MetAP1によって影響を受けない限られたタンパク質群をプロセシングすることができる。さらに、MetAP2の発現誘発は、細胞増殖に関連するのに対して、MetAP1は構成的に発現される。つい最近、MetAP1が細胞周期のG2/M期において役割を果たすことが示されたが、一方、MetAP2の阻害はG1期停止をもたらす。
【0003】
MetAP2の生物学的な役割はよくわかっていないが、しかし、この酵素は胚発生および血管形成において重要な役割を果たしており、酵素活性を阻害することは、癌の治療法のための魅力的な手法であると考えられている。天然物のフマギリンおよびその類似体TNP−470は、MetAP2活性を選択的に遮断し、内皮細胞の増殖を阻害する。抗血管形成化合物であるTNP470は、MetAP2を強力かつ不可逆的に阻害するが、重大な毒性があるため、その治療的使用は限られている。基質の相互作用についてのさらなる知見が、MetAP2阻害剤の抗血管形成作用および抗腫瘍作用を説明する一助となり得る。
【0004】
最近、薬物感受性細胞が、1型酵素によってはプロセシングすることができない特異的なMetAP2基質を有する可能性があると主張された。したがって、いくつかの手法を利用して、薬物で処理した細胞がメチオニンのプロセシングにおいて特異的な異常を有するかどうかを決定した。フマギリン、TNP−470およびA−832234を細胞ベースのアッセイに使用してMetAP2阻害を試験し、MetAP2阻害についての新規かつ強力なマーカータンパク質を同定した。
【0005】
約10年前、メチオニンプロセシングの選択的な阻害後に、ハウスキーピングタンパク質であるグリセルアルデヒド3−リン酸脱水素酵素(GAPDH)が検出された。活性な細胞MetAP2酵素についての初期アッセイは、TNP−470を用いて処理された細胞の酵素GAPDHの2Dゲル移動度シフトに基づくTurkら(1999)Chem & Biol 6:823−833により知られている。このアッセイは、不可逆的なMetAP2阻害剤に対してのみ使用することができる。Wangら(2008) PNAS 105(6):1838−1843は、1D等電点電気泳動(IEF)により、N末端メチオニンを有するGAPDH変異体とN末端メチオニンを有さないGAPDH変異体が分離される可能性があり、IEFに続く免疫ブロットにより、細胞MetAP2阻害のマーカーとしてのGAPDHについてのアッセイがもたらされる可能性があるという推測によって、成熟したプロセシングされたGAPDHから、N末端メチオニンがプロセシングされていないGAPDH変異体を区別するアッセイを確立するための取り組みを開始した。しかし、GAPDHは、処理されたHCT−116ヒト結腸癌細胞だけでなく、処理されていない、メチオニンが欠如したN末端配列を有するHCT−116ヒト結腸癌細胞でも同定された。今まで、この推定マーカーをモニタリングするための高信頼性かつ強力な検出系を確立することはできていない。
【0006】
先行技術はまた、MetAP2のバイオマーカーとしてのタンパク質14−3−3γの検出についても記載している(WO2002/39990A2)。14−3−3γアイソフォームは、MetAP阻害化合物が哺乳動物細胞に適用された際に誘発されることが報告された。14−3−3γアイソフォームは、14−3−3タンパク質ファミリーに属する。14−3−3γアイソフォームの特異的な検出は、関連アイソフォームがタンパク質の分析的な試験において非常に類似した性質を示し、さらにより具体的には、変化した14−3−3γアイソフォームが検出される必要があるという事実によって妨げられる。
【0007】
したがって、本発明の基礎を形成している技術的な課題は、MetAP2のタンパク質分解活性を有効に阻害する化合物をスクリーニングするための方法を提供することである。本発明の別の課題は、そのような化合物のMetAP2を阻害する性質をin vitroおよびin vivoで同定および特徴付けすることを可能にするバイオマーカーを提供することである。増殖依存性疾患を簡便かつ高速にモニタリングすることを可能にする、MetAP2の活性変化を検出するための物質を提供することもさらに別の課題である。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】、異なる内皮細胞および癌細胞からの細胞抽出物の、IEF分離後の、MetAP2阻害剤を適用した後に観察された新規バンドを伴う処理に関連したパターンを示す図である。
【図2】図1のレーン2〜4を拡大した画像を示す図である。
【図3】MetAP2阻害後の、EEF1A1のN末端におけるMet1を確認するエドマン法の結果を示す図である。
【図4】バンド1およびバンド2(図2を参照されたい)をゲル内消化した後のタンパク質の同定および質量マップおよびデータベースアノテーションを示す図である。
【図5】N末端ペプチドを局在化するステップと、MSMSによって配列決定するステップと、N末端のプロセシングの特徴付けをするステップとを含む、N末端の決定を示す。
【図6】バンド1のトリプシン消化の親質量2.073,2DのMSMS分析を示す。
【図7】バンド2のトリプシン消化の親質量2.162,2DのMSMS分析を示す。
【図8】2つの細胞抽出物について、EEF1A1の同定の評価を示す。
【図9】TNP470を用いて処理したbEND3細胞抽出物におけるEEF1A1の移動度シフトを示す。
【図10】、活性なMetAP2阻害剤から明確に識別可能な陰性対照を用いたEEF1A1の移動度シフトを示す。
【図11】EEF1A1(P68104;配列番号1)およびEEF1A2(Q05639;配列番号2)の配列比較を示す。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明は、メチオニンアミノペプチダーゼ2(MetAP2)の活性を阻害する化合物をスクリーニングするための方法であって、
(a)単一の細胞、細胞培養物、組織、器官および哺乳動物の群から選択される、MetAP2および/または真核生物翻訳伸長因子1アルファ(EEF1A)を発現可能な細胞系またはその試料を準備するステップと、
(b)その系の少なくとも一部分を、スクリーニングされる化合物と一緒にインキュベートするステップと、
(c)N末端メチオニン残基を有するEEF1A(MetEEF1A)を決定することによってMetAP2阻害を検出するステップと
を含む方法を提供することによってこの課題を解決する。
【0010】
驚いたことに、タンパク質EEF1Aは、MetAP2の基質であることが本発明者らによって実証されたが、MetAP1によってはプロセシングされないと思われる。したがって、前述のEEF1Aタンパク質は、MetAP2活性のレベルをモニタリングするのによく適している新規バイオマーカーとなる。MetAP2阻害剤を使用した細胞ベースの試験の後で、本発明の基礎をなすバイオマーカーEEF1Aが、予想外に、示差的にプロセシングされることがわかった。MetAP2が薬理学的に阻害された後、EEF1Aの開始メチオニンが切断されないので、このタンパク質はアセチル化されたグリシン残基ではなくN末端メチオニンを持っている。
【0011】
タンパク質EEF1Aは、配列および他の特徴に関してはすでに当技術分野の水準において記述されているが、しかし、MetAP2との関連については以前に特定されていない。真核生物翻訳伸長因子1アルファ(EEF1A)は、GTP結合性伸長因子ファミリー(EF−Tu/EF−1Aサブファミリー)に属する50kDの細胞質タンパク質である。この因子は、タンパク質の生合成に関与し、Exportin−5(XPO5)、EEF1A1、Ranおよびアミノアシル化されたtRNAで構成される核外輸送複合体において特に見出される。XPO5との相互作用により、リボソームのA部位へのアミノアシルtRNAのGTP依存性結合が促進される。前述のタンパク質EEF1Aは、eEF1A、EF1A、EF1α、EF1アルファ、EF1a、白血球受容体クラスターメンバー7(LENG7)および伸長因子Tu(EF−Tu)など、別の呼び方をすることができる。EF−Tuは、実際には構造および機能が別のタンパク質であると考えるものとする。
【0012】
EEF1Aは、EEF1A1、EEF1A2などの異なるタンパク質の群を含み、それらは保護範囲に包含される。明確に挙げたアイソフォームはどちらも、同一のN末端を有し、本発明の方法に特に適用可能である。EEF1Aによって表される群のタンパク質メンバーは互いに置き換えることができるので、特定のEEF1Aアイソフォームを参照することは、保護範囲を限定すると解釈されるものではない。EEF1A1などの特定のEEF1Aアイソフォームに関する本明細書の教示は、そこで適切であれば、EEF1A群の他のメンバーに制限なく有効かつ適用可能であるとみなされる。EEF1A群の一部のメンバー、またはさらに全メンバーに対する、特にN末端における高い相同性、ならびにMetAP2に対する強い基質親和性を示す別のEEF1Aアイソフォームをさらに特徴付けすることも除外されない。したがって、本発明の教示は、現在既知であるEEF1Aアイソフォームに制限されず、それらに対する相同性が高く、かつMetAP2に対する基質親和性が強いそれぞれのEEF1Aアイソフォームを包含するものとする。EEF1Aのアイソフォームは、例えばGenbank、SwissProtなどの多数のデータベースに一般に受諾され確定された受託番号(例えば、P68104、Q05639)によって容易に特定することができる。
【0013】
第1のステップ(a)において、細胞系を準備する。細胞系は、細胞を含むという条件で、任意の対象であると定義される。したがって、細胞系は、単一の細胞、細胞培養物、組織、器官および哺乳動物の群から選択することができる。細胞系の範囲は、そのような生物学的実体の一部、すなわち組織試料、器官試料および哺乳動物試料も含む。当然のことながら、前述の順の各細胞系は、それぞれの後続の系の試料を表す。
【0014】
詳細には、細胞試料は、試験される哺乳動物からin vivoまたはin situで取り出す。細胞試料の採取は適正な医療のための原則に従う。生体試料は、任意の生物学的種から取り出すことができるが、試料は特に実験動物またはヒト、より好ましくはラット、マウスまたはヒト、最も好ましくはヒトから取り出される。
【0015】
本発明において、細胞系は生体液も含んでよく、体液試料は血液、血清、血漿、唾液または尿からなることが好ましい。生検による、特に病気の部位の近くで取り出された組織試料を集めることも好ましい。生体試料は、例えば子宮、脳下垂体、肝臓、脳、結腸、乳房、脂肪組織などの任意の組織に由来するものであってよい。試料は、精製して水素結合形成の阻害剤などの妨害物質を除去することができる。
【0016】
細胞試料は、MetAP2および/またはEEF1A、好ましくはMetAP2およびEEF1Aの発現が可能であるという条件で、単離された状態、培養物中、または細胞系としてのいずれかの、任意の種類の初代細胞または遺伝子操作された細胞を指す。細胞がMetAP2を発現可能であることが特に好ましいが、MetAP2欠損細胞を使用することができ、酵素MetAP2を人工的に細胞系に加えることも排除されないものとする。細胞がEEF1Aを発現可能であることも特に好ましいが、EEF1A欠損細胞を使用することができ、EEF1Aを人工的に細胞系に加えることも排除されないものとする。本発明のアッセイは、in vitroにおいてさらに完全に実行することができる、すなわち、本発明によるステップ(a)の細胞系を放棄することができる。したがって、ステップ(a)は、単離されたMetAP2の量が、粗製物が精製された形態で提供されるように改変される。
【0017】
さらに当然のことながら、同じ機能を有するMetAP2の変異体、突然変異体、部分または相同なタンパク質配列は、定義ならびに保護の範囲に包含される。元の配列とその誘導体の間の変化の程度は、必然的に、基質認識およびメチオニン切断の必要条件によって限定される。好ましくは、相同性は、少なくとも85%、より好ましくは少なくとも95%、最も好ましくは少なくとも98%に達する。起こり得る変化は、少なくとも1つのアミノ酸の欠失、挿入、置換、修飾および付加、または別のタンパク質酸(protein acid)との融合を含む。操作された細胞は、対応する遺伝子またはその部分を有する適切なベクターを用いたトランスフェクションによって、MetAP2タンパク質を発現することができる。組換え細胞は、真核生物由来であることが好ましい。
【0018】
MetAP2の変化に関する先の教示は、適切であれば、EEF1Aの変化に制限なく有効かつ適用可能であるとみなされる。当業者には明らかであるように、本発明は、配列番号1および2(図11を参照されたい)の全長タンパク質EEF1Aに限定されると解釈されるものではない。EEF1Aの生理学的断片または人工断片、EEF1Aの二次修飾、種依存性の変化ならびにEEF1Aの対立遺伝子変異体も本発明に包含される。この点において、「対立遺伝子変異体」は、単一遺伝子座に存在し得る遺伝子またはDNA配列の2種以上の異なる型のうち1つの遺伝子産物を示すと理解される。人工断片は、配列番号1または2に開示した配列に由来する少なくともN末端の20個の連続したアミノ酸、好ましくは少なくともN末端の40個の連続したアミノ酸、より好ましくは少なくともN末端の60個の連続したアミノ酸、非常に好ましくは少なくともN末端の82個の連続したアミノ酸からなる診断対象のN末端を少なくとも含む、合成的にまたは組換え技術によって作製されたペプチドを包含することが好ましい。N末端の長さがN末端断片に従って定義されるそのようなN末端断片または全長タンパク質のN末端は、少しでも基質認識を確実にするために、配列番号1および2に記載のタンパク質の対応するN末端と完全な同一性を示すことが特に好ましい。そのような断片は、免疫測定法において標準物質として有利に使用することができる。本発明による方法において、全長EEF1Aまたはこのマーカーの生理学的変異体が検出されることが好ましい。
【0019】
本発明のより好ましい実施形態において、スクリーニング法のステップ(a)において細胞系を準備する。本発明の最も好ましい細胞系は、マウス脳内皮腫細胞(bEND.3)、ヒト結腸癌細胞(HCT116)、ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC)および/またはヒト線維肉腫細胞(HT1080)である。
【0020】
細胞試料は保存、例えば凍結などして、一定期間培養するか、または即座にステップ(b)に供する。スクリーニングされる化合物と一緒にインキュベートする前に、細胞試料を複数の部分に分ける。少なくとも2つの部分を準備し、一方はスクリーニング用に使用し、他方は対照としての役割を果たす。スクリーニング用部分の数は、対照用部分の数を超えることが好ましい。通常、きわめて多数の部分をハイスループットスクリーニングに供する。
【0021】
本明細書で使用する「MetAP2阻害活性を有する化合物」とは、MetAP2の生物学的作用の少なくとも一部を遮断する作用物質であり、起源が内因性であろうと外因性であろうと、MetAP2と結合および相互作用し、それによってMetAP2の特定の生物学的作用を停止させることができる任意の因子、作用物質、化合物を指す。当業者には、例えば、MetAP2の生物学的作用の1つが細胞増殖の促進であることは既知であろう。
【0022】
化合物は、標的分子と相互作用することができる生物学的かつ/または化学的な構造で構成される。ここで、MetAP2シグナル伝達の任意の構成要素が「標的分子」とみなされるものとし、標的分子はMetAP2タンパク質標的に限定されず、コード遺伝子もしくはその遺伝子産物、または調節タンパク質、または前記遺伝子もしくはその遺伝子産物を含むシグナル伝達経路の構成要素も含んでよい。したがって、化合物の特異的相互作用は、細胞機能の変化を単に標的にするだけのことまたは誘発することのいずれかを含み得る、またはさらにはどちらの作用も同時に含み得る。
【0023】
本発明の方法でスクリーニングされる化合物はどのようにも制限されない。具体的には、化合物は、核酸、ペプチド、炭水化物、ポリマー、50〜1,000Daの分子量を有する小分子およびタンパク質の群から選択される。それらの化合物は、多くの場合ライブラリーにおいて入手可能である。細胞試料の別個の部分内で単一の化合物をインキュベートすることが好ましい。しかし、1つの部分内で少なくとも2種の化合物をインキュベートすることによって化合物の協同作用を調査することも可能である。別の細胞部分を化合物の非存在下で同時にインキュベートする。
【0024】
「インキュベート」という用語は、化合物と細胞を、化合物および/または標的の種類に応じて異なる期間接触させることを指す。インキュベートのプロセスは、種々の他のパラメータ、例えば細胞の種類および検出感度にも左右され、その最適化は当業者に既知の常法通りの手順に従う。インキュベーションの手順は、化学変換せずに実現することができる、または生化学反応を伴ってよい。化学溶液を加えることおよび/または物理的な手順、例えば熱の影響を適用することにより、試料内の標的構造の接近容易性を改善することができる。インキュベートの結果として特定のインキュベート産物が形成される。
【0025】
ステップ(c)において、本発明の目的の有効化合物の特定を、N末端メチオニンを有するEEF1Aの存在を決定することによって間接的に行う。決定は、特定の時点で行い、実験の開始時のシグナル強度および陽性対照/陰性対照と相関させる。対照系は、化合物と一緒にインキュベートしない(陰性対照)、または対照系はMetAP2阻害活性を有さない標準化合物(陰性対照)もしくはMetAP2阻害活性を有する標準化合物(陽性対照)と一緒にインキュベートする、のいずれかである。活性は、タンパク質のプロセシングにおける変化、すなわち潜在的阻害化合物を用いて処理した後に開始メチオニンが切断されないことによって明らかになる。各処理間で対比較を行う。対比較には、所与の処理条件下での所与のバイオマーカーEEF1Aについての、第2の処理条件下でのこのタンパク質のタンパク質プロセシングのデータと比較した、タンパク質プロセシングのデータが必要である。比較は、既知の市販プログラムを活用して適切な統計的技法を使用して行う。
【0026】
インタクトな細胞を、選択した検出方法に適用することによって検出を行うことができる。しかし、細胞抽出物を最初に準備することが好ましい。浸透圧衝撃を引き起こし、細胞膜を穿孔することができる適切な周知の溶解緩衝液中で細胞溶解を行うことができる。細胞構造の安定性も、例えばボールミル、フレンチプレス、超音波などの機械的な力によって、細胞壁および細胞膜それぞれの酵素的分解によって、ならびに/または界面活性剤の作用によって破壊することができる。バイオマーカーを、さらに精製して妨害物質を除去することができ、またはバイオマーカーEEF1Aを試料中に濃縮することができる。下流のプロセシングおよび/または濃縮は、沈降法、透析法、ゲル濾過法、ゲル溶出法、または、HPLCもしくはイオン交換クロマトグラフィーなどのクロマトグラフィー法によって行うことが好ましい。より良好な収率のためにいくつかの方法を組み合わせることが推奨される。
【0027】
MetAP2阻害を検出する適切な試験は、当業者に既知である、または当業者はそれを常法に従って容易に設計することができる。多くの異なる種類のアッセイが既知であり、その例を下記に示す。本発明によるアッセイは、遺伝子の発現を検出および/または定量化するために適した任意のアッセイであってよいが、MetEEF1Aは、MetEEF1Aと特異的に相互作用する物質を用いて決定することが好ましい。
【0028】
本明細書で使用する「特異的な物質」という用語は、信頼性の高い結合性を確実にするためにMetEEF1Aに対して高い親和性を有する分子を含む。物質は、タンパク質の部分に対して特異的であることが好ましい。そのようなタンパク質の部分とは、特定の機能を発現させるために十分な領域についての制限、すなわち、認識のための構造的決定因子の規定を表す。全ての切断は、特有の認識を保存する必要条件により必然的に限定される。しかし、遺伝子産物の部分は非常に小さくてもよい。物質は、選択された単一の標的との排他的かつ定方向の相互作用を保証するために、単一特異的であることが好ましい。特異的な物質は、EEF1A(例えばN末端にアセチル化されたグリシン残基を有するタンパク質)とMetEEF1A(すなわち、N末端にメチオニン残基を有するタンパク質)を識別できることが特に必要とされる。
【0029】
本発明によるタンパク質またはそのN末端部の認識は、アミノ酸配列の一次構造レベル、二次構造レベルおよび/または三次構造レベルにおける、物質との特異的な相互作用によって実現することができる。N末端における単一のアミノ酸修飾は、一次構造の認識に都合がよい。本発明に照らして、「認識」という用語は、それに限定されることなく、特異的な物質と標的の間の任意の種類の相互作用、具体的には、例えば共有結合、疎水性/親水性相互作用、ファンデルワールス力、イオン対、水素結合、リガンド−受容体相互作用、エピトープと抗体結合部位の間の相互作用、ヌクレオチド塩基対合などの共有または非共有の結合または会合に関する。そのような会合には、ペプチド、タンパク質または他のヌクレオチド配列などの他の分子の存在も包含してよい。
【0030】
特異的な物質は、認識、結合および相互作用を可能とするように、標的分子と相互作用することができる生物学的および/または化学的な構造で構成される。具体的には、物質は、核酸、ペプチド、炭水化物、ポリマー、50〜1,000Daの分子量を有する小分子およびタンパク質、好ましくは核酸およびタンパク質の群から選択される。特異的な物質は、信頼性の高い検出を確実にするために十分な感受性および特異性を表す。特異的な物質は、その対応する標的分子に対して少なくとも10-7Mの親和性を有する。特異的な物質は、その標的分子に対して好ましくは10-8Mまたは、なおさらに好ましくは10-9Mの親和性を有する。当業者には理解されるように、特異的という用語は、試料中に存在する他の生体分子がMetEEF1Aに特異的な物質と有意に結合しないことを示すために使用される。標的分子以外の生体分子との結合レベルは、標的分子の結合親和性のわずか10%の親和性、より好ましくはわずか5%未満の結合親和性になることが好ましい。最も好ましい特異的な物質は、親和性ならびに特異性に関する上記の最小限の基準の両方を満たす。
【0031】
タンパク質またはペプチドは、抗体、サイトカイン、リポカリン、受容体、レクチン、アビジン、リポタンパク質、糖タンパク質、オリゴペプチド、ペプチドリガンドおよびペプチドホルモンからなる群から選択されることが好ましい。抗体を特異的な物質として使用することがより好ましい。「抗体」とは、免疫グロブリン遺伝子またはその断片によって本質的にコードされるポリペプチドを指す。本発明によると、抗体は、インタクトな免疫グロブリンまたはいくつもの、よく特徴付けされた断片として存在する。断片は、Fab断片、Fc断片、一本鎖抗体(scFv)、可変領域、定常領域、H鎖(VH)、およびL鎖(VL)からなる群、より好ましくはFab断片およびscFvから選択されることが好ましい。Fab断片およびFc断片などの断片は、種々のペプチダーゼを使用した切断によって作製することができる。さらに、断片は、操作し、組換え発現させることができ、scFvが好ましい。
【0032】
「核酸」という用語は、DNAポリマーまたはRNAポリマーに組み込むことができる、合成ヌクレオチド、非天然ヌクレオチドまたは修飾ヌクレオチドを二者択一的に含む一本鎖または二本鎖のDNAまたはRNAの天然ポリマーまたは合成ポリマーを指す。各ヌクレオチドは、糖部分、リン酸部分、およびプリン残基またはピリミジン残基のいずれかからなる。核酸は、一本鎖または二本鎖のDNAまたはRNA、プライマー、アンチセンスオリゴヌクレオチド、リボザイム、DNA酵素、アプタマーおよび/またはsiRNA、またはそれらの部分であることが好ましい。核酸は、場合によってホスホロチオエートDNA、ロックド核酸(LNA)、ペプチド核酸(PNA)またはSpiegelmerのように修飾されてもよい。MetAP2に特異的な物質として使用するために特に好ましい核酸プローブはアプタマーである。
【0033】
DNAアプタマーおよびRNAアプタマーは、多種多様の標的分子に対して高い親和性を表すことがわかっている。標的の構造は、タンパク質、ペプチドおよび、例えば有機色素、ヌクレオチド、アミノ酸、ビタミン、アルカロイドなどの小分子を含み得る。RNA内で利用可能な2’−ヒドロキシル基により、いくつかの分子内接触および分子間接触が促進されるのでRNAアプタマーがより好ましく、ここで、分子間接触は、同じ配列の分子間、異なる配列の分子間、またはRNAとRNAで構成されていない任意の他の分子との間でなされる。それらの核酸リガンドは、効率的なin vitro選択手順、いわゆるSELEXプロセス(試験管内進化法:systematic evolution of ligands by exponential enrichment)によって同定することができる。RNAは、生体溶液中で非常に核酸分解しやすいので、RNAアプタマーは、例えば、ホスホロチオエート、ロックド核酸、またはSpiegelmerを使用して化学修飾するべきである。Spiegelmerと称されるL−RNAバージョンのアプタマーは、自然分解プロセスに対して本質的に影響を受けないので、特に寿命が長い。アプタマーは、広範囲の構造上の標的に対して親和性が高いため、抗体と非常に類似した働きをする。
【0034】
アプタマーは、標準のホスホラミダイト化学を使用して合成することができる。さらに、およそ30個を超えるヌクレオチドを有するRNAアプタマーは、in vitro転写によって、有利に大量に合成することができる。アプタマーの選択、合成、および精製については当業者に周知である。
【0035】
特異的な物質を標識することができ、その際に、標識は、特異的な物質の固有の特徴および適用される検出方法、すなわち、必要な感受性、コンジュゲートの容易さ、安定性要件、ならびに利用可能な器具類および廃棄設備に左右される。特異的なインキュベート産物を検出するために、適用される方法はモニタリングされる特異的なインキュベート産物に左右され、それは当業者に周知である。本発明による適切な検出方法の好ましい例は、発光、具体的には蛍光、さらにVIS着色および/または放射性発光である。
【0036】
発光は、化学発光、生物発光または光ルミネセンスの結果としての光の放射に関係する。化学発光は、化学反応の結果として可視光線の放射を伴うが、一方生物発光は、ルシフェラーゼの活性を必要とする。現在好ましい光ルミネセンスは、蛍光刺激としても既知であり、光子の吸収によって引き起こされ、照射によってもたらされることが好ましく、およそ10-8秒の期間内に波長が30〜50nm移行して光子として再度放出される。蛍光を検出するための機器としては、典型的な卓上蛍光光度計、蛍光マルチウェルプレートリーダー、光ファイバー蛍光光度計、蛍光顕微鏡および蛍光検出と連結したマイクロチップ/マイクロ流体系が挙げられるが、それらに限定されない。
【0037】
VIS着色とは、任意の無色の物質を肉眼で見えるように可視化することを指す。着色強度は光度計で測定することが好ましい。
【0038】
同位元素の放射能放射は、シンチレーションによって測定する。液体シンチレーションのプロセスは、有機溶媒とシンチレーションカクテルと称される溶質の系におけるベータ放射の獲得によって試料中のベータ崩壊を検出することを伴う。試料中の3H、14C、32P、33Pおよび35Sなどの放射性同位元素によって放射されるベータ崩壊電子は溶媒分子を励起させ、それにより今度はエネルギーが溶質に移動する。溶質のエネルギー放射(光量子)は、シンチレーションカウンター内の光電子増倍管によって電気信号に変換される。カクテルは、試料の均一な懸濁を保つ可溶化剤としても作用しなければならない。他の崩壊プロセス(崩壊系列)の結果としてガンマ線光子がしばしば生じ、新規に形成された核の過剰なエネルギーが取り除かれる。進路に沿って衝突することによってイオン化が誘導されてもそれらは質量を持たずほとんど生じない。ガンマ光子は、3つの機構:コンプトン効果、光電効果および対生成の1つまたは複数によって検出および定量化するために吸収される。本発明の有利なガンマ崩壊同位元素は125Iである。
【0039】
標識方法は、標識が容易に検出される限りは特に限定されない。「標識された特異的な物質」は、バイオマーカーと結合した標識の存在を検出することによってMetEEF1Aタンパク質の存在を検出することができるように、リンカーもしくは化学結合を通じて共有的に、またはイオン性、ファンデルワールス、静電気的、疎水性相互作用または水素結合を通じて非共有的に、のいずれかで標識に結合したものである。
【0040】
抗MetEEF1A抗体の酵素への共有結合は、グルタルアルデヒトとの結合などの種々の方法によって行うことができる。酵素および抗体の両方が遊離アミノ基を介してグルタルアルデヒトと連結し、網目状の酵素と抗体の副産物が取り出される。別の方法では、酵素がペルオキシダーゼなどの糖タンパク質である場合、糖残基を介して抗体と結合する。
【0041】
酵素は、過ヨウ素酸ナトリウムによって酸化され、抗体のアミノ基に直接連結される。炭水化物を含有する他の酵素もこのように抗体と結合させることができるが、時には酸化による活性の損失、例えばアルカリホスファターゼの活性の低減が観察される。酵素の結合は、抗体のアミノ基と、βガラクトシダーゼなどの酵素の遊離のチオール基を、スクシニミジル6−(N−マレイミド)ヘキサノエートなどのヘテロ二官能性リンカーを使用して連結させることによっても行うことができる。
【0042】
タンパク質に対する抗体の特異的な免疫学的結合性は、直接的または間接的に検出することができる。直接的な標識としては、抗体に付着させた蛍光性または発光性のタグ、金属、色素、放射性核種などが挙げられる。ヨウ素125(125I)で標識した抗体を使用することができる。タンパク質マーカーに特異的な化学発光抗体を使用した化学発光アッセイは、タンパク質レベルの、高感度で非放射性の検出に適している。蛍光色素で標識した抗体も適切である。蛍光色素の例としては、DAPI、フルオレセイン、Hoechst33258、R−フィコシアニン、B−フィコエリトリン、R−フィコエリトリン、ローダミン、Texas red、およびリサミンが挙げられるが、それらに限定されない。間接的な標識としては、例えば西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)、アルカリホスファターゼ(AP)、β−ガラクトシダーゼ、ウレアーゼなどの当技術分野で周知の種々の酵素が挙げられる。西洋ワサビペルオキシダーゼによる検出系は、例えば、過酸化水素の存在下で450nmにおいて検出可能な可溶性産物をもたらす発色性基質であるテトラメチルベンジジン(TMB)と一緒に使用することができる。アルカリホスファターゼによる検出系は、例えば、405nmにおいて容易に検出可能な可溶性産物をもたらす発色性基質であるp−ニトロフェニルリン酸と一緒に使用することができる。同様に、β−ガラクトシダーゼによる検出系は、410nmにおいて検出可能な可溶性産物をもたらす発色性基質であるo−ニトロフェニル−β−D−ガラクトピラノシド(galactopyranosxde)(ONPG)と一緒に使用することができる。ウレアーゼによる検出系は、尿素−ブロモクレゾールパープルなどの基質と一緒に使用することができる。
【0043】
本発明の好ましい実施形態において、抗体は検出可能部で標識され、その検出可能部としては、放射性核種、例えばフルオレセイン、フルオレセインイソチオシアネート(FITC)、Oregon Green(商標)、ローダミン、Texas red、テトラローダミン(tetrarhodimine)イソチオシアネート(TRITC)、Cy3、Cy5などの蛍光色素、例えば、緑色蛍光タンパク質(GFP)、フィコエリトリンなどの蛍光マーカー、腫瘍関連プロテアーゼによって活性化される自己消光蛍光化合物、例えばルシフェラーゼ、HRP、APなどの酵素、ナノ粒子、ビオチン、ジゴキシゲニンなどが挙げられるが、それらに限定されない。
【0044】
本発明の別の好ましい実施形態において、核酸は、全て当技術分野で周知であるジゴキシゲニン、ビオチン、化学発光物質、蛍光色素、磁気ビーズ、金属ビーズ、コロイド粒子、高電子密度試薬、酵素、または放射性同位元素を用いて標識される。本発明の範囲で核酸を標識するために好ましい同位元素は、3H、14C、32P、33P、35S、または125Iであり、32P、33P、または125Iがより好ましい。
【0045】
競合的な免疫測定法および非競合的な免疫測定法を含め、種々の免疫測定法技術を使用することができる。「免疫測定法」という用語は、酵素増倍免疫測定法(EMIT)、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)、IgM抗体捕捉ELISA(MAC ELISA)および微粒子酵素免疫測定法(MEIA)などの酵素免疫測定法(EIA)、さらにはキャピラリー電気泳動免疫測定法(CEIA)、放射免疫測定法(RIA);免疫放射線測定法(IRMA)、蛍光偏光免疫測定法(FPIA)および化学発光測定法(CL)を含むがそれらに限定されない技法を包含する。望ましければ、そのような免疫測定法は自動化することができる。免疫測定法は、レーザー誘起蛍光法と組み合わせて使用することもできる。フローインジェクションリポソーム免疫測定法およびリポソーム免疫センサーなどのリポソーム免疫測定法も、本発明における使用に適している。さらに、タンパク質/抗体複合体の形成によって光散乱が増加し、それがマーカー濃度の関数としてピーク速度シグナルに変換される比濁測定法は、本発明の方法における使用に適している。
【0046】
本発明のある実施形態において、抗体をMetEEF1Aに対して特異的な物質として使用し、抗体を標識することによって、好ましくはELISA、RIA、蛍光免疫測定法(FIA)、可溶性粒子免疫測定法(SPIA)またはウェスタンブロット法によって、インキュベート産物を検出する。
【0047】
本発明の好ましい実施形態において、インキュベート産物を検出するためにELISAを使用する。ELISAの構成要素は、免疫応答のパートナーの一方に結合させた酵素である。MetEEF1Aのトレーサー抗原(分析物誘導体)は、競合的なELISAにおいて単一の捕捉抗体(以下、一次と称する)を使用して標識することが好ましく、一方、この抗体は、一次抗体よりも別のMetEEF1Aのエピトープを対象とする第2の抗体(以下、二次と称する)による抗原−抗体複合体の沈殿を含むことが好ましい非競合的なELISAにおいて標識されることが好ましい。抗原と2つの抗体からなる複合体は、サンドイッチ複合体とも呼ばれる。検出は、その後に続く、産物、好ましくは視覚的な着色、生物発光、蛍光または電気信号(酵素電極)の測定によって認識される着色産物への基質の酵素的変換を含む。本発明において標識するために好ましい酵素は当業者に既知であり、例えばペルオキシダーゼ(例えばHRP)、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)、緑色蛍光タンパク質(GFP)、グルタチオンSトランスフェラーゼ(GST)、ルシフェラーゼ、β−ガラクトシダーゼおよびAPである。
【0048】
そのうえ好ましいのは、合成中に免疫試薬、好ましくはトレーサーMetEEF1Aに組み込まれるか、またはアッセイの免疫試薬、好ましくは抗体に引き続いて結合する放射性同位元素を利用した放射性免疫測定法である。本発明の方法において好ましい放射性同位元素は3H、14C、32P、33P、35S、および125Iであり、14C、35S、および125Iがより好ましい。都合のよい方法は、結合性の競合原理に従う。一定量の放射性MetEEF1Aと、様々な量の分析される試料のMetEEF1Aマーカーは、過剰に存在している規定量の抗体について競合する。トレーサーの置換は、較正曲線によって評価することができるマーカー濃度と直接比例する。
【0049】
フルオロフォアで都合よく標識した抗原または抗体を、それぞれFIAにおいて使用する。
【0050】
SPIAは、凝集の結果として銀粒子の色が変化することを利用する。これは二次抗体も指示薬の反応も必要とせず、本発明の範囲内で特に有用になる。同様に都合がよいのは、着色されたラテックス粒子に結合した抗体を使用するラテックス凝集である。しかし、これには、結合していない抗原および/または非特異的に結合している抗原を事前の洗浄ステップで除去するためにMetEEF1Aを強く固定することが必要である。
【0051】
一般に、検出するための方法は全て、結合していない抗原および/または非特異的に結合している抗原をMetEEF1A/抗体複合体から分離するための集中的な洗浄ステップを含む。さらに、任意の検出方法の実験手順は、当業者に周知である。
【0052】
本発明の特異的なインキュベート産物を検出するための別の都合のよい方法は、ウェスタンブロット法である。まず、ゲルを混合し流し込み、予め調製した試料をゲルにローディングし、電気泳動によって分画する。ポリアクリルアミドゲル中に存在するタンパク質を、対象である特異的なタンパク質MetEEF1Aを検出するために抗体が適用されてもよいニトロセルロース膜にブロットする。ブロットのプロセスの効率は100%ではないため、ゲル中に残ったMetEEF1Aを、クーマシーブルーを使用して非選択的に染色することができる。ウェスタンブロット法は、簡便に実行され、濃度を正確に決定する必要がない場合に有利である。
【0053】
既存のEEF1Aに対して様々な特異的な抗体が存在する。抗体は、通常哺乳生物において、その生物体にとって未知である抗原によって免疫応答が引き起こされた際に産生され、3,000g/molを超える分子量を有する。具体的には、ヒトEEF1A1抗原を対象とするポリクローナル抗体が既知である。抗体を産生させるために都合のよい宿主種には、ヤギ、ウサギ、およびマウスが含まれる。別のポリクローナル抗体およびモノクローナル抗体を、異なる種から生じたEEF1Aおよびその断片に対して選択することができる。ハイブリドーマ技術などの一般的な技法が当業者に周知である。EEF1Aを対象とする抗体は、本発明の方法において特異的な物質として適用される。
【0054】
直接的な標識または間接的な標識からのシグナルは、例えば、発色性基質から着色を検出するための分光光度計を使用して、125Iを検出するためのガンマ線計測器などの、放射線を検出するための放射線計測器を使用して、または特定の波長の光線の存在下で蛍光を検出するための蛍光光度計を使用して分析することができる。酵素に結合した抗体を検出するために、EMAXマイクロプレートリーダー(Molecular Devices;Menlo Park,CA)などの分光光度計を製造者の説明書に従って使用して定量分析を行うことができる。望ましければ、本発明のアッセイは自動化すること、またはロボットによって行うことができ、多数の試料からのシグナルを同時に検出することができる。
【0055】
抗体は、例えば磁気マトリックス粒子またはクロマトグラフのマトリックス粒子、アッセイプレートの表面(例えばマイクロタイターのウェル)、固体基質材料または膜(例えば、プラスチック、ナイロン、紙)などの種々の固体支持体上に固定化することができる。アッセイ用条片は、抗体または固体支持体上のアレイ内の複数の抗体を被覆することによって調製することができる。この条片は、次いで試験試料に浸し、素早く洗浄ステップおよび検出ステップを通して処理して着色されたスポットなどの測定可能なシグナルを発生させることができる。
【0056】
有用な物理フォーマットは、複数の異なるバイオマーカーを検出するための、複数の別々の、アドレス指定可能な(addressable)位置を有する表面を含む。そのようなフォーマットとしては、タンパク質マイクロアレイまたはタンパク質チップが挙げられる。それらの実施形態において、個々の表面位置には、それぞれの位置に、検出のための1つまたは複数のタンパク質マーカーを固定化する抗体を含むことが出来る。あるいは、表面には、表面の別々の位置で固定化された1つまたは複数の別々の粒子(例えば、微少粒子またはナノ粒子)を含んでよく、微小粒子は、1つまたは複数の検出用タンパク質マーカーを固定化するための抗体を含む。
【0057】
分析は、種々の物理フォーマットにおいて行うことができる。例えば、マイクロタイタープレートの使用または自動化を用いて、大量の試験試料を処理することを容易にすることができる。あるいは、適時に診断または予後決定することを容易にするために単一の試料フォーマットを開発することができる。
【0058】
カメラまたは他の記録装置(例えば、光ダイオードおよびデータ記憶装置)によって表示され、場合によって記録された光学画像は、場合によって、本明細書の任意の実施形態において、例えば画像をデジタル化しその画像をコンピュータ上で保管し分析することによってさらに処理する。デジタル化、保管、およびデジタル化映像またはデジタル化光学画像の分析のために、種々の市販の周辺機器およびソフトウェアが利用可能である。従来のシステムの1つは、検体の視野から当技術分野において一般的に使用される冷却した電荷結合素子(CCD)カメラに光線を伝える。CCDカメラは画素(ピクセル)のアレイを含む。検体からの光線はCCD上で画像化される。検体の領域に対応する特定のピクセルをサンプリングして各位置に関する光強度を得る。多数のピクセルを並行して処理して速度を増加させる。本発明の装置および方法は、任意の試料を表示するために、例えば、蛍光視野または暗視野の顕微鏡法によって容易に使用される。
【0059】
本発明の別の実施形態において、バイオマーカーの分析を、例えば、高速液体クロマトグラフィー(high pressure liquid chromatography)(HPLC)および/または、例えばマトリックス支援レーザー脱離イオン化質量分析(MALDI−MS)、マトリックス支援レーザー脱離イオン化飛行時間型質量分析(MALDI−TOF/MS)、タンデムMSなどの質量分析によって、好ましくは質量分析、より好ましくはMALDI−TOF/MSまたはタンデムMSによって、実現することができる。バイオマーカーの分析は、完全なタンパク質の質量を決定することおよび/またはタンパク質断片を決定することを含む。少なくとも完全なタンパク質の質量を決定し、場合によって続いて断片の質量を決定することが好ましい。MALDI−TOFを考慮すると、バイオマーカーは、励起状態のレーザーの波長において高い吸収を示す、適切なマトリックスに吸収され、それによって断片イオンの発生が防がれる。穏やかなイオンの発生によって安定のままであるバイオマーカーは、他の細胞構成要素から分離することができる。飛行時間型質量分析の検出は、高真空における質量分離の原理に基づいている。考慮すべきは、一定の均一な静電場によって加速される、同じ位置から同時に開始されるイオン化された種である。そのイオン化された種の速度は、その質量対電荷比に明確に関連付けられ、検出器への到着時間が直接その質量を示す。
【0060】
配列決定または電気泳動によってバイオマーカーの決定を行うことは本発明のさらに別の実施形態である。配列分析の非限定的な例としては、エドマン法、キャピラリーアレイ配列決定法、熱サイクル配列決定法、固相配列決定法、MALDI−TOF/MSなどの質量分析を用いた配列決定法、およびハイブリダイゼーションによる配列決定法が挙げられ、エドマン法が好ましい。電気泳動分析の非限定的な例としては、アガロースゲル電気泳動法またはポリアクリルアミドゲル電気泳動法などの平板ゲル電気泳動法、キャピラリー電気泳動法、変性剤濃度勾配ゲル電気泳動法および等電点電気泳動法(IEF)などが挙げられ、1D IEFが好ましい。IEF分析は、特にクーマシーブルーまたは銀によって染色される。
【0061】
電気化学的なプロセスおよびプローブも、よく確立されており、例えば、参照により本明細書に組み込まれているWO2003/060464A2に記載されている。
【0062】
本発明の好ましい実施形態において、MetEEF1Aの誘発および蓄積は、1次元に沿ったIEFによって、続いて、ウェスタンブロット、質量分析およびN末端の配列決定の群から選択される少なくとも1種の方法によって検出される。メチオニン末端残基を有するMetEEF1Aは、構成的にアセチル化されたEEF1Aアイソフォームと比較して、中性のpHにおいて正に荷電しており、そのことにより2つのアイソフォームをpIによって分離することができる。したがって、ウェスタンブロット用の抗体はMetEEF1Aに対して単一特異的である必要がないが、一般にEEF1Aに対して特異的な任意の抗体、すなわち、EEF1Aの全てのアイソフォームに対して反応性である、またはアセチル化されたグリシン(acGlyEEF1A)もしくはメチオニン(MetEEF1A)のいずれかで開始されるEEF1Aの2つのアイソフォームに特異的な抗体を適用することができる。検出方法の単一の適用に関する先の教示は、その組み合わせに制限なく有効かつ利用可能である。
【0063】
スクリーニング方法の別の実施形態において、MetAP2阻害の検出をステップ(c)においてさらに精密にすることができる。この目的のために、ステップ(c)は、さらに、
(c’)シグナルの量またはシグナルの変化を系内のMetEEF1A濃度と相関させるサブステップと、
(c’’)このMetEEF1A濃度を、化合物と一緒にインキュベートしていない細胞系内および/またはMetAP2阻害活性を有する標準化合物と一緒にインキュベートした細胞系内の別のMetEEF1A濃度と比較することによってMetAP2阻害レベルを検出するサブステップと
を含む。
【0064】
本発明の細胞系を、種々の濃度の同定されたMetAP2阻害剤と一緒にインキュベートする。阻害剤の存在下で観察されるシグナルの放出量またはシグナルの変化は、その化合物に起こる活性の変化を示す。シグナルの変化は、シグナル強度および/またはシグナル寿命の変化である。シグナルの変化によってシグナルが減少または増加するかどうかは問題ではない。シグナルが失われることさえも、シグナルの変化とみなす。次に、シグナルの量またはシグナルの変化を、それぞれ、試料中の阻害剤の濃度と関連付けることができる、すなわち、較正曲線によって対応する濃度を計測することが可能になる。較正曲線は、UV/VIS着色または発光を使用したランベルトベールの方程式に基づくことが好ましい。引き続いて、存在する場合、産物の複合体内のMetEEF1Aのモル部を考慮することによってバイオマーカーの濃度を算出する。例えば、抗体/MetEEF1A複合体内に存在する特異的な物質とMetEEF1Aのモル比は1:1であり、したがってインキュベート産物のモル濃度がMetEEF1Aのモル濃度に相当することが好ましい。
【0065】
試料中のMetEEF1Aの濃度を、処理されていない細胞および/または処理された細胞のいずれかの、既知のMetEEF1Aの濃度レベルと比較することによって化合物の有効性を診断する。当然のことながら、既知濃度は統計的に証明され、したがって、それぞれ、特定のレベルまたは範囲を表している。処理されていない細胞のMetEEF1A濃度レベルと異なる測定濃度はどれも、試験した細胞試料の異常性を示し、一方、処理されていない細胞の濃度レベルに匹敵するMetEEF1A濃度では、化合物を阻害剤として分類することができない。MetAP2阻害の検出について、処理されていない細胞の遺伝子産物の濃度レベルを超える濃度が測定されることが好ましい。この方法を使用して、出願人らは、感受性を、マイクロモル以下またはさらにはナノモルの濃度で実証した。較正プロットにより、この方法を数桁に及ぶダイナミック範囲で適用することができることが明らかになる。
【0066】
化合物の有効性を評価するための別の実施形態によると、本スクリーニング方法は、さらに、ステップ(c)においてアセチル化されたN末端グリシン残基を有するEEF1A(acGlyEEF1A)を決定し、ステップ(c’)においてシグナルの量またはシグナルの変化を系内のacGlyEEF1A濃度と相関させ、場合によってMetEEF1A対acGlyEEF1Aの比を決定し、ステップ(c’’)において、acGlyEEF1A濃度および/またはMetEEF1A対acGlyEEF1Aの比を、化合物と一緒にインキュベートしていない細胞系内および/またはMetAP2阻害活性を有する標準化合物と一緒にインキュベートした細胞系内の、別のacGlyEEF1A濃度および/または別のMetEEF1A対acGlyEEF1Aの比と比較するように行う。MetEEF1Aを考慮した決定、相関、および検出に関する先の教示は、好都合であれば、acGlyEEF1Aを検出することに制限なく有効かつ適用可能である。
【0067】
MetAP2活性を低下させることが明らかになっている化合物のうち、それぞれの、またはいくつかの代表的なものをさらなる分析のために選択する。本発明の好ましい実施形態において、スクリーニング方法は、化合物と、metAP2遺伝子もしくはその遺伝子産物、または調節タンパク質、または前記遺伝子もしくはその遺伝子産物を含むシグナル伝達経路の構成要素との特異的な相互作用を検出することを含む別のステップ(d)を含む。ただし、前述の相互作用により、MetAP2活性は減少、またはさらには阻害される。化合物のMetAP2タンパク質標的への特異的な結合を検出することが好ましい。対照に対して最大の相違を示す化合物を選出することが好ましい。その化合物を、本発明のmetAP2タンパク質標的またはその関連分子への結合によって開始されない別のシグナル伝達を排除するための特異性について分析し、そのうえ、別の標的構造への同時ドッキングが起こる場合、結合した経路による不都合な反応または他の影響を防ぐために、そのような交差反応性について試験する。特異的かつ/または単一特異的な結合性を検出するためのいくつかの方法、例えば、ゲルシフト実験、Biacore測定、X線構造解析、競合的結合研究などが当技術分野で既知である。スクリーニング方法の好ましい実施形態において、本発明の標的構造への物質の単一特異的な結合が検出される。
【0068】
明確な活性の上方制御または下方制御のいずれかを認識することができるように、本発明のバイオマーカーの示差的なタンパク質プロセシング分析によってMetEEF1Aの発現の方向および強度も算定することができ、それが化合物の選択の基礎を形成する。MetAP2活性を阻害する化合物のスクリーニングは本発明の範囲において好ましいが、この方法は、MetAP2活性化因子のスクリーニングにも取り組むことができる。より一般的には、本発明は、MetAP2活性を変化させる化合物をスクリーニングするための方法であって、
(a)単一の細胞、細胞培養物、組織、器官および哺乳動物の群から選択される、MetAP2を発現可能な細胞系またはその試料を準備するステップと、
(b)その系の少なくとも一部分を、スクリーニングされる化合物と一緒にインキュベートするステップと、
(c)MetEEF1Aを決定するステップと、
(c’)シグナルの量またはシグナルの変化を系内のMetEEF1A濃度と相関させるステップと、
(c’’)このMetEEF1Aの濃度を、化合物と一緒にインキュベートしていない細胞系内および/またはMetAP2活性化活性またはMetAP2阻害活性を有する標準化合物と一緒にインキュベートした細胞系内の別のMetEEF1Aの濃度と比較することによってMetAP2活性を検出するステップと、場合によって
(d)MetAP2活性を変化させる化合物と、metAP2遺伝子、またはその調節タンパク質もしくは遺伝子産物、または前記遺伝子もしくはその遺伝子産物を含むシグナル伝達経路の構成要素との特異的な相互作用を検出するステップと
を含む方法にも関する。
【0069】
MetAP2活性化とは、対照系と比較して、MetEEF1Aの発現レベルの任意の観察可能な、または測定可能な減少を指す。それに対して、MetAP2阻害とは、対照系と比較して、MetEEF1Aの発現レベルの任意の観察可能なまたは測定可能な増加を指す。発現レベルの測定は、生体試料におけるタンパク質バイオマーカーの能力がある任意の技法を使用して行うことができる。それらの技法の例は、上記した。EEF1Aのプロセシングの調節について、MetEEF1A濃度が、対照系内のMetEEF1A濃度を少なくとも2倍、好ましくは少なくとも10倍、より好ましくは少なくとも25倍、最も好ましくは少なくとも40倍下回るか、または上回るかのいずれかであることも、本発明の別の実施形態である。本発明の非常に好ましい実施形態において、MetAP2の活性化によって、MetEEF1AがacGlyEEF1Aに完全に変換され(すなわち、MetEEF1Aの欠如)、一方MetAP2阻害によっては、MetEEF1Aが完全に保存される(すなわち、MetEEF1Aの独占的な出現)。
【0070】
MetAP2阻害剤をスクリーニングするための方法に関する本明細書の先の教示は、好都合であれば、MetAP2モジュレーターをスクリーニングするための方法に制限なく有効かつ適用可能であるとみなされる。特に、MetAP2阻害剤に関する先の教示および進行中の教示は、好都合であれば、MetAP2活性化因子に制限なく有効かつ適用可能であり、その際、当業者には当然のことながら、活性化する化合物と阻害する化合物の特定の効果は本質的に正反対である。
【0071】
本発明の方法は、抗増殖活性をもたらす化合物をスクリーニングするために適用されることが好ましい。本明細書において、具体的には、小細胞肺癌、非小細胞肺癌、骨肉腫、ヒト乳癌または接触阻止されたマウス線維芽細胞などの増殖性細胞培養物を適用する。したがって、血管新生活性および/または抗腫瘍活性がある化合物をスクリーニングすることが特に好ましい。そのような活性は、MetAP2活性によって引き起こされ、媒介され、かつ/または拡大される生理学的状態および/または病理学的状態に関連する。MetAP2阻害剤は、増殖性疾患、好ましくは腫瘍および転移を含めた癌を治療するための細胞障害性薬として非常に有用である。MetAP2阻害剤は、種々のリンパ腫、肉腫、細胞腫および骨髄腫の成長を阻害するために特に適している。さらに、MetAP2阻害剤は、血管新生依存性疾患、例えば種々の眼の血管新生疾患を治療するために適している。
【0072】
本発明は、抗増殖性徴候に対する治療用化合物をスクリーニングするための方法の実施形態であって、ステップ(a)において哺乳動物を準備し、ステップ(b)において、スクリーニングされる化合物を哺乳動物に投与し、ステップ(c)において、哺乳動物から採取した生体試料中のMetEEF1Aを決定することによって治療効果を検出する実施形態も教示している。当然のことながら、「抗増殖性徴候に対する治療用化合物」という表現は、過剰で、制御されず、かつ加速的な細胞の成長、分裂および増殖を特徴とする臨床像の治療において適切な化合物を使用すること、したがって、その化合物が抗増殖性の適用において治療効果があることを指す。
【0073】
ステップ(a)の哺乳動物は、ヒトでない生物体であることが好ましく、実験動物であることがより好ましく、遺伝子改変することができるマウスまたはラットなどの種であることが最も好ましい。哺乳動物は、MetEEF1Aレベルが低いこと、またはさらにはMetEEF1Aレベルを欠くことに関連付けられる任意の増殖性臨床像に罹患している。このバイオマーカーMetEEF1Aのタンパク質ベースでの発現レベルを、前記哺乳動物患者の腫瘍組織または血漿の組織試料などの生検試料において測定し、ベースラインとして設定する。
【0074】
ステップ(b)において、例えば、マウスまたはラットを、注射、注入、経口摂取または直腸摂取によって候補化合物と接触させることができる。ヒトでない生物体の別個の部分内で単一の化合物をインキュベートすることが好ましい。ステップb)は、哺乳動物患者の腫瘍または血漿の組織試料などの試料を前記抗MetAP2薬物にex vivoで暴露させることによってin vitroで行うこともできる。ステップ(b)をin vitroで行う場合、ヒト患者が好ましい。
【0075】
ステップ(c)において、MetEEF1Aの発現レベルを、ステップa)と同じようにして再度測定し、ステップa)およびc)において測定された発現レベルにおける差異を算出する。いかなる差異も、最初のベースラインに対する変化に本質的に基づき、それによって、所定のスクリーニング化合物とMetAP2の相互作用が確認される。望ましいMetEEF1Aの発現レベルの増加により、MetAP2が首尾よく阻害されたことが示され、これを治療効果と相関させる。そのような関連性は、治療された哺乳動物のみを使用することにより、単回用量または多回用量の所定のスクリーニング化合物に対する効果の時系列をモニタリングすることによって確立することができる。効果は、定性的パラメータ、例えば症状の重症度の減少、または定量的パラメータ、例えば細胞成長速度の低下、腫瘍サイズの縮小などのいずれかを用いることによって決定する。ステップ(c)で得られたバイオマーカーMetEEF1Aの発現レベルがステップ(a)と比較して高いことが、前記哺乳動物が前記スクリーニング化合物を用いた治療に対して治療上有利に応答する可能性が高いことを示す。この増加は、比較を、下方制御されたMetAP2活性を本質的に示す健康な対照の哺乳動物(すなわち、いかなる増殖性異常もない)と行うという条件で、閾値に近づく可能性がある。したがって、ステップ(c)の決定は、非増殖性効果および/または増殖性効果を示す別の哺乳動物と比較することにおいて都合よく行う。比較用哺乳動物は、スクリーニングされる化合物には暴露させないが、同じように処理してMetEEF1Aレベルを測定する。ステップ(c)は、
(c’)シグナルの量またはシグナルの変化を系内のMetEEF1A濃度と相関させるサブステップと、
(c’’)MetEEF1A濃度を、非増殖性細胞および/または増殖性細胞の系内の別のMetEEF1A濃度と比較することによって、抗増殖性活性のレベルを検出するサブステップと
をさらに含むことが好ましい。本実施形態の範囲内で、増殖性障害に罹患しているヒトでない生物体の対象の少なくとも2体を試料として準備し、それらの部分集合に化合物を投与し、タンパク質プロセシングのパターンを、化合物を投与した対象および化合物を投与しなかった対象における障害の症状と相関させることがさらに好ましい。一般的なスクリーニング方法の基本的な原理が、好都合であれば、下記のいかなる特別な実施形態にも制限なく有効かつ適用可能であることは言うまでもない。
【0076】
治療効果と一緒に、定性的なレベルをステップ(c)に組み込む。「治療的に関連する効果」により、疾患の1つまたは複数の症状がある程度軽減する、または、疾患または病的状態に関連する、またはその原因である1つまたは複数の生理学的パラメータまたは生化学的パラメータが、部分的にまたは完全に正常に戻る。さらに、「治療有効量」という表現は、この量を受けていない対応する対象と比較した、以下の結果:疾患、症候群、状態、病気、障害もしくは副作用の治療の改善、治癒、予防もしくは解消、または同様に、疾患、病気もしくは障害の進行の低下を有する量を指す。「治療有効量」という表現は、正常な生理機能を増加させるために有効な量も包含する。いくつかの化合物を試験することにより、哺乳動物の対象を治療するために最適な可能性のある化合物が選択される。選出された化合物のin vivo用量率は、そのin vitroのデータに関して、特異的な細胞の増殖に有利に予め調整する。したがって、治療の有効性は著しく増大する。
【0077】
スクリーニング方法によって同定された化合物は、本発明の別の目的である。スクリーニング方法に関する本明細書の先の教示は、好都合であれば、化合物自体に制限なく有効かつ適用可能である。
【0078】
所与の障害または状態に関連するMetAP2活性を変化させる、好ましくはMetAP2活性を阻害する化合物を同定することは、そのような疾患または状態を予防、治療または制御するために治療的に有効な用量で患者に投与することができる医薬の開発を導くことができる。したがって、本発明はさらに、少なくとも1つの本発明による化合物、および場合によって賦形剤および/またはアジュバントを含む薬剤に関する。本発明の目的において、「アジュバント」とは、同時に、同時期に、または逐次的に投与された場合に、本発明の活性成分に対して特異的な応答を増強または改変することが可能なあらゆる物質を指す。注射液用の既知のアジュバントは、例えば、水酸化アルミニウムもしくはリン酸アルミニウムなどのアルミニウム組成物、QS21などのサポニン、ムラミルジペプチドもしくはムラミルトリペプチド、ガンマインターフェロンもしくはTNFなどのタンパク質、M59、スクアレンまたはポリオールである。したがって、本発明は、活性成分として、有効量の本発明によってスクリーニングされた化合物の少なくとも1つ、および/または生理学的に許容されるその塩を、薬学的に容認されるアジュバントと一緒に含む医薬組成物にも関する。
【0079】
本発明の目的における「薬剤」、「薬物」、「医薬組成物」または「医薬製剤」とは、1つまたは複数の本発明のMetAP2阻害剤またはその調製物を含み、MetAP2のシグナリングに関連する疾患に罹患している患者を、その全体的な状態またはその生物体の特定領域の状態の病原的な改変を少なくとも一時的に確立することができるように、予防、治療、経過観察またはアフターケアに使用することができる、医薬分野の任意の作用物質である。
【0080】
さらに、活性成分は、単独でまたは他の治療と組み合わせて投与することができる。相乗効果は、医薬組成物中に2つ以上の化合物を使用することによって実現することができる、すなわち、本発明のMetAP2阻害剤に、少なくとももう1つの作用物質を活性成分として組み合わせる。活性成分は、同時に、または逐次的に、のいずれかで使用することができる。
【0081】
医薬製剤は、任意の望ましい適切な方法、例えば経口的な(頬側または舌下を含む)、直腸への、経鼻的な、局所的な(頬側、舌下または経皮を含む)、膣内への方法または非経口的な方法(皮下、筋肉内、静脈内、皮内を含む)による投与に適合させることができる。そのような製剤は、薬学分野で既知の全てのプロセスを使用して、例えば、活性成分と(1つまたは複数の)賦形剤または(1つまたは複数の)アジュバントを組み合わせることによって調製することができる。
【0082】
本発明の医薬組成物は、一般的な、固体または液体の、担体、希釈剤および/または添加剤ならびに製薬用の通常のアジュバントを使用した既知の手段で、適切な用量で作製される。単一剤形を作製するために活性成分と組み合わせる賦形剤材料の量は、治療される宿主および投与の詳細な様式に応じて変化する。適切な賦形剤としては、経腸的(例えば経口的)、非経口的または局所的適用などの異なる投与経路に適していて、本発明の化合物またはその塩と反応しない、有機物質または無機物質が挙げられる。適切な賦形剤の例は、水、植物油、ベンジルアルコール、アルキレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセロールトリアセテート、ゼラチン、乳糖またはデンプンなどの炭水化物、ステアリン酸マグネシウム、タルク、および石油ゼリーである。
【0083】
経口投与に適合させた医薬製剤は、例えば、カプセルもしくは錠剤;粉末もしくは顆粒;水性溶液もしくは水性懸濁液もしくは非水性の液体;食用泡もしくは泡状食品;または液体水中油エマルションもしくは液体油中水エマルションなどの分割した単位で投与することができる。
【0084】
したがって、例えば、錠剤またはカプセルの形で経口投与する場合、活性成分構成要素は、例えば、エタノール、グリセロール、水などの経口用で、無毒性かつ薬学的に許容される不活性の賦形剤と組み合わせることができる。粉末は、化合物を適切な微細サイズに微粉砕し、それを、同様に微粉砕した、例えば、デンプンまたはマンニトールなどの食用炭水化物などの薬学的な賦形剤と混合することによって調製する。フレーバー、保存料、分散剤および色素も同様に存在してよい。
【0085】
カプセルは、上記の通り粉末混合物を調製し、それを成形ゼラチン殻に充填することによって作製する。流動促進剤および潤滑剤、例えば、高度に分散したケイ酸、タルク、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸カルシウムまたは固形のポリエチレングリコールを、充填操作の前に粉末混合物に添加することができる。カプセルが摂取された後の医薬品の利用されやすさを改善するために、寒天、炭酸カルシウムまたは炭酸ナトリウムなどの崩壊剤または可溶化剤も同様に添加してよい。
【0086】
さらに、望ましければ、または必要であれば、適切な結合剤、潤滑剤および崩壊剤ならびに色素も同様に、混合物に組み込むことができる。適切な結合剤としては、デンプン、ゼラチン、天然糖、例えばブドウ糖もしくはベータ乳糖など、トウモロコシで作られた甘味料、天然ゴムおよび合成ゴム、例えばアラビアゴム、トラガカントゴムもしくはアルギン酸ナトリウムなど、カルボキシメチルセルロース、ポリエチレングリコール、ワックスなどが挙げられる。これらの剤形に使用される潤滑剤としては、オレイン酸ナトリウム、ステアリン酸ナトリウム、ステアリン酸マグネシウム、安息香酸ナトリウム、酢酸ナトリウム、塩化ナトリウムなどが挙げられる。崩壊剤としては、デンプン、メチルセルロース、寒天、ベントナイト、キサンタンガムなどが挙げられるがそれらに制限されない。錠剤は、例えば、粉末混合物を調製し、その混合物を顆粒化または乾式プレスし、潤滑剤および崩壊剤を添加し、混合物全体をプレスして錠剤を生じさせることによって製剤する。粉末混合物は、粉砕した化合物を、適切な様式で、上記の通り希釈剤または基剤と、および場合によって、例えば、カルボキシメチルセルロース、アルギン酸塩、ゼラチンもしくはポリビニルピロリドンなどの結合剤、例えばパラフィンなどの溶解遅延剤、例えば第四級塩などの吸収促進剤、および/または例えばベントナイト、カオリンもしくは第二リン酸カルシウムなどの吸収剤と混合することによって調製する。粉末混合物は、例えば、シロップ、デンプンペースト、アラビアゴム粘液(acadia mucilage)またはセルロース溶液またはポリマー材料などの結合剤で湿らせ、それを、ふるいを通してプレスすることによって顆粒化することができる。顆粒化の代替として、粉末混合物を打錠機に通し、不均一な形状の塊を生じさせ、それを砕いて顆粒を形成することができる。錠剤が鋳型に固着するのを防ぐために、ステアリン酸、ステアリン酸塩、タルクまたは鉱油を添加することによって顆粒を潤滑にすることができる。次いで、潤滑にされた混合物をプレスして錠剤を生じさせる。本発明による化合物は、易流動性の不活性賦形剤と組み合わせ、次いで直接プレスして顆粒化または乾式プレスのステップを行わずに錠剤を生じさせることもできる。シェラック密封層、糖またはポリマー材料の層およびワックスの光沢層からなる透明または不透明な保護層が存在してもよい。異なる用量単位間を区別できるようにするために、それらの被覆に色素を加えることができる。
【0087】
例えば、溶液、シロップおよびエリキシル剤などの経口用液体は、所与量が予め規定された量の化合物を含むように、用量単位の形態に調製することができる。シロップは、化合物を、適切なフレーバーと一緒に水溶液に溶解させることによって調製することができ、一方エリキシル剤は、無毒性のアルコールビヒクルを使用して調製する。懸濁液は、化合物を無毒性ビヒクルに分散させることによって製剤することができる。可溶化剤および乳化剤、例えば、エトキシ化イソステアリルアルコールおよびポリオキシエチレンソルビトールエーテルなど、保存料、フレーバー添加剤、例えば、ペパーミント油または天然甘味料またはサッカリン、または他の人工甘味料なども同様に添加することができる。
【0088】
経口投与するための用量単位製剤は、望ましければ、マイクロカプセル中に被包することができる。この製剤は、放出が延長または遅延されるように、例えば、粒子材料をポリマー、ワックスなどで被覆または包埋することによって調製することもできる。
【0089】
本発明による化合物およびその塩、溶媒和物および生理機能のある誘導体は、小型単層ベシクル、大型単層ベシクルおよび多層ベシクルなどのリポソーム送達系の形で投与することができる。リポソームは、コレステロール、ステアリルアミンまたはホスファチジルコリンなどの種々のリン脂質から形成することができる。
【0090】
本発明による活性成分は、標的細胞内の目的地へ向けた輸送、標的細胞内への組み込み、および/または分布を促進する別の分子と融合または複合体化することもできる。
【0091】
本発明による化合物およびその塩、溶媒和物および生理機能のある誘導体は、化合物分子が結合している個々の担体としてモノクローナル抗体を使用して送達することもできる。化合物は、標的医薬品担体として可溶性ポリマーに結合させることもできる。そのようなポリマーは、パルミトイルラジカルで置換されたポリビニルピロリドン、ピラン共重合物、ポリヒドロキシプロピルメタアクリルアミドフェノール、ポリヒドロキシエチルアスパルトアミドフェノールまたはポリエチレンオキシドポリリジンを包含する。化合物は、薬剤の制御放出を実現するために適した生分解性ポリマー、例えば、ポリ乳酸、ポリ−イプシロン−カプロラクトン、ポリヒドロキシ酪酸、ポリオルトエステル、ポリアセタール、ポリジヒドロキシピラン、ポリシアノアクリル酸および架橋した、または両親媒性のヒドロゲルのブロック共重合体の類にさらに結合させることができる。
【0092】
経皮投与に適合させた医薬製剤は、レシピエントの表皮に広範に、密接に接触させるための独立した硬膏として投与することができる。したがって、例えば、活性成分は、Pharmaceutical Research,3(6),318(1986)において一般的な用語で説明されているように、イオントフォレシスによって硬膏から送達することができる。
【0093】
局所投与に適合させた医薬化合物は、軟膏剤、クリーム、懸濁液、ローション、粉末、溶液、ペースト、ゲル、噴霧剤、エアロゾルまたは油として製剤することができる。眼または他の外側の組織、例えば口および皮膚を治療するために、製剤は、局所用の軟膏剤またはクリームとして適用されることが好ましい。軟膏剤を生じさせる製剤の場合、活性成分は、パラフィン基剤または水混和性クリーム基剤のいずれかと一緒に使用することができる。あるいは、活性成分は、水中油クリーム基剤または油中水基剤を用いてクリームを生じるように製剤することができる。眼に局所的に適用するために適合させた医薬製剤は、活性成分を適切な担体、特に水性溶媒に溶解または懸濁させた点眼剤を含む。口内に局所的に適用するために適合させた医薬製剤は、ロゼンジ、香錠および口内洗浄剤を包含する。
【0094】
直腸投与に適合させた医薬製剤は、座剤または浣腸剤の形で投与することができる。
【0095】
経鼻投与に適合させた、担体が固体物質である医薬製剤は、例えば、20〜500ミクロンの範囲の粒子サイズを有する粗い粉末を含み、嗅剤が取り込まれるように投与される、すなわち、鼻の近くに保持した、粉末を含有する容器から、鼻腔を経由して急速に吸入することによって投与する。担体物質として液体を含む鼻用噴霧剤または点鼻剤として投与するための適切な製剤は、活性成分の水溶液または油溶液を包含する。
【0096】
吸入による投与に適合させた医薬製剤は、各種の加圧エアロゾルディスペンサー、噴霧器または吸入器によって発生させることができる微細粒子状の塵またはミストを包含する。
【0097】
膣内投与に適合させた医薬製剤は、膣座薬、タンポン、クリーム、ゲル、ペースト、泡または噴霧剤の製剤として投与することができる。
【0098】
非経口投与に適合させた医薬製剤としては、治療されるレシピエントの血液との等張性を製剤に与える、抗酸化剤、緩衝液、静菌剤および溶質を含む水性滅菌注射溶液および非水性滅菌注射溶液;および懸濁媒および増粘剤を含んでよい水性滅菌懸濁液および非水性滅菌懸濁液が挙げられる。製剤は、単回用量または多回用量の容器、例えば密封したアンプルおよびバイアルに投入し、フリーズドライ(凍結乾燥)した状態で貯蔵することができ、したがって、注射するためには、使用する直前に、滅菌した担体となる液体、例えば水を加えればよい。処方に従った注射液および注射懸濁液は、滅菌粉末、滅菌顆粒および滅菌錠剤から調製することができる。
【0099】
特に上記した構成成分に加え、製剤は、製剤の詳細な種類に対して当技術分野で一般的な他の作用物質も含んでよいことは言うまでもなく、したがって、例えば、経口投与に適した製剤はフレーバーを含んでよい。
【0100】
本発明の好ましい実施形態において、医薬組成物は経口的または非経口的に投与され、経口的に投与されることがより好ましい。具体的には、活性成分は、酸付加塩および塩基付加塩の両方を含めることを意図した、薬学的に許容される塩などの水溶性の形で提供される。さらに、本発明の化合物およびその塩は、凍結乾燥し、生じた凍結乾燥物を使用して、例えば注射用調製物を作製することができる。示した調製物は、滅菌されてよく、かつ/または担体タンパク質(例えば血清アルブミン)などの助剤、潤滑剤、保存料、安定化剤、充填剤、キレート化剤、抗酸化剤、溶媒、結合剤、懸濁化剤、湿潤剤、乳化剤、塩(浸透圧に影響を及ぼすための)、緩衝物質、着色料、フレーバリング、および1つまたは複数の別の活性物質、例えば1つまたは複数のビタミンを含んでよい。添加剤は当技術分野で周知であり、種々の製剤に使用される。
【0101】
医薬製剤は、用量単位ごとに所定量の活性成分を含む用量単位の形で投与することができる。製剤中の予防的または治療的な活性成分の濃度は、約0.1〜100wt%で変動し得る。式(I)の化合物または薬学的に許容されるその塩は、用量単位当たり、好ましくはおよそ0.5〜1000mg、より好ましくは1〜700mg、最も好ましくは5〜100mgの用量で投与される。一般に、そのような用量範囲は、一日当たりの取り込みの総量に適している。言い換えれば、一日当たりの用量は、およそ0.02〜100mg/体重kgであることが好ましい。しかし、各患者に対する特定の用量は、多種多様の因子に左右される(例えば、治療される状態、投与方法ならびに患者の年齢、体重および状態に左右される)。好ましい用量単位製剤は、上記の通り、活性成分の一日当たりの用量または部分用量、または相当するその画分を含むものである。さらに、この種類の医薬製剤は、薬学分野で既知のプロセスを使用して調製することができる。
【0102】
本発明は、MetAP2活性によって引き起こされ、媒介され、かつ/または拡大される生理学的状態および/または病理学的状態をモニタリングするための方法であって、少なくとも1つの単一の化合物または生理学的に許容されるその塩の有効量を、そのような治療を必要とする哺乳動物に投与し、MetEEF1Aがその哺乳動物から採取した生体試料において決定される方法にも関する。モニタリング期間にわたって前記バイオマーカーの発現レベルが高いことは、MetAP2活性が減少したことを示し、このことは、前記化合物を用いた治療に対して前記哺乳動物が応答する可能性が高いことに関連付けられる。化合物は、上記の通り本発明のスクリーニング方法によって得ることが好ましい。したがって、スクリーニング方法に関する本明細書の先の教示は、好都合であれば、モニタリング方法に制限なく有効かつ適用可能である。
【0103】
上記のEEF1Aの同定により、状況、状態または治療の進行を評価するための有力なツールが提供される。本発明は、各患者それぞれに対するMetAP2阻害化合物の有効性をモニタリングするための臨床マーカーとして使用することができる。具体的には、閉経、手術、治療レジメンの開始、または治療レジメンの完了などの事象に先立って、患者においてEEF1Aを同定してベースラインの結果を準備することができる。次いで、そのような事象の間か後のいずれかにおいて同定方法を使用し、このベースラインを、得られた結果と比較することができる。この情報を診断目的および予後決定目的の両方のために使用することができる。臨床マーカーに関する情報は、加えて、対象の生体試料におけるMetEEF1Aの誘発および蓄積をモニタリングすることによって、活性化合物の用量およびレジメンを最適化するために使用することができる。さらに、本発明の方法は、治療的に有効な化合物および/または選択された化合物についての治療有効量または治療有効レジメンを見出し、それによって、患者に対してそれぞれ治療法を選択し、最適化するために使用することができる。
【0104】
したがって、本発明のモニタリング方法は、ヒト医学および獣医学において利用することができる。哺乳動物は実験動物および/またはヒトでない生物体であることが好ましい。本明細書において、化合物は、治療法として機能し、疾患の発症前または発症後に、1回または数回投与することができる。「有効量」または「有効用量」または「用量」という用語は、本明細書では互換的に使用し、疾患または病理学的状態に対して予防的または治療的に明らかな効果を有する医薬化合物の量、すなわち、組織、系、動物またはヒトにおいて、例えば、研究者または医師が求めるまたは望む生物学的応答または医学的応答を引き起こす医薬化合物の量を指す。
【0105】
上記の本発明の使用の医薬産物は、特に治療的治療のために使用する。モニタリングを治療の1種とみなし、例えば、応答を高め、MetAP2に関連する疾患の病原性および/または症状を完全に根絶するために、化合物を明確な間隔で投与することが好ましい。同一の化合物または異なる化合物のいずれかを適用することができる。薬剤は、疾患が発生する可能性を低下させるため、またはさらにはMetAP2活性に関連する疾患が発症するのを事前に防ぐため、または、現れ、継続している症状を治療するために使用することもできる。本発明の目的において、予防的な治療は、対象が、家族性素因、遺伝子異常または以前経験した疾患などの、上記の生理学的状態または病理学的状態についての任意の前提条件を有する場合に得策である。
【0106】
本発明が関する疾患は癌性疾患であり、耳鼻咽喉領域、肺、縦隔、胃腸管、泌尿生殖器系、婦人科系、乳房、内分泌系、皮膚および骨の癌性疾患、さらには軟部組織の肉腫、中皮腫、黒色腫、中枢神経系の新生物、乳児期の癌性疾患、リンパ腫、白血病、腫瘍随伴性症候群、原発腫瘍不明の転移(CUP症候群)、腹膜癌腫症(peritoneal carcinomatoses)、免疫抑制に関連する悪性腫瘍および/または腫瘍転移の群から選択される。より具体的には、腫瘍は以下の種類の癌と指定することができる:乳腺腺癌、前立腺腺癌および結腸腺癌;気管支から生じる肺癌の全ての型;骨髄の癌、黒色腫、肝癌、神経芽細胞腫、乳頭腫;アプドーマ、分離腫、鰓腫、悪性カルチノイド症候群、カルチノイド心疾患、癌腫(例えば、ウォーカー癌腫、基底細胞癌、基底扁平細胞癌(squamobasal carcinoma)、ブラウン・ピアース癌、腺管癌、エールリッヒ癌、上皮内癌、2型癌(cancer-2 carcinoma)、メルケル細胞癌、粘膜癌、非小細胞性気管支癌、燕麦細胞癌、乳頭癌、硬性癌、気管支肺胞上皮癌、気管支癌、扁平上皮癌および移行上皮癌)、組織球性機能障害(histiocytic functional disorder)、白血病(例えば、B細胞白血病、混合細胞型白血病、ヌル細胞白血病、T細胞白血病、慢性T細胞白血病、HTLV−II関連白血病、急性リンパ性白血病、慢性リンパ性白血病、マスト細胞白血病、および骨髄性白血病に関連する)、悪性組織球症、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫、孤立性形質細胞腫;細網内皮症、軟骨芽細胞腫;軟骨腫、軟骨肉腫;線維腫;線維肉腫;巨細胞腫、組織球腫、脂肪腫、脂肪肉腫、白血肉腫、中皮腫、粘液腫、粘液肉腫、骨腫、骨肉腫、ユーイング肉腫、滑膜腫、腺線維腫、腺リンパ腫、癌肉腫、脊索腫、頭蓋咽頭腫、未分化胚細胞腫、過誤腫、間葉腫、中腎腫、筋肉腫、エナメル上皮腫、セメント質腫、歯牙腫、奇形種;胸腺腫、絨毛芽腫、腺癌、腺腫、胆管癌、真珠腫、円柱腫、嚢胞腺癌、嚢胞腺腫、顆粒膜細胞腫、雌雄細胞芽腫(gynadroblastoma)、汗腺腫、島細胞腫瘍、ライジッヒ細胞腫、乳頭腫、セルトリ細胞腫、莢膜細胞腫、平滑筋腫、平滑筋肉腫、筋芽細胞腫、筋腫、筋肉腫、横紋筋腫、横紋筋肉腫、上衣腫、神経節腫、神経膠腫、髄芽細胞腫、髄膜腫、神経鞘腫、神経芽細胞腫、神経上皮腫、神経線維腫、神経腫、傍神経節腫、非クロム親和性傍神経節腫、角化血管腫、好酸球増加症を伴う血管リンパ様過形成、硬化性血管腫、血管腫症、グロムス血管腫、血管内皮腫、血管腫、血管外皮腫、血管肉腫、リンパ管腫、リンパ管筋腫、リンパ管肉腫、松果体腫、葉状嚢肉腫、血管肉腫、リンパ管肉腫、粘液肉腫、卵巣癌、肉腫(例えばユーイング肉腫、実験的に、カポジ肉腫およびマスト細胞肉腫)、新生物(例えば、骨新生物、乳房新生物、消化器系の新生物、直腸結腸新生物、肝臓新生物、膵臓新生物、脳下垂体新生物、精巣新生物、眼窩新生物、頭頸部、中枢神経系の新生物、聴覚器官、骨盤、気道および尿生殖路の新生物)、神経線維腫症ならびに子宮頸部扁平上皮異形成。
【0107】
腫瘍は、扁平上皮、膀胱、胃、腎臓、頭部、頸部、食道、子宮頸部、甲状腺、腸、肝臓、脳、前立腺、尿生殖路、リンパ系、胃、喉頭および/または肺の腫瘍群から選択されることが好ましい。
【0108】
腫瘍は、肺腺癌、小細胞肺癌、膵癌、神経膠芽腫、結腸癌および乳癌の群から選択されることがさらに好ましい。さらに、血液および免疫系の腫瘍を治療および/またはモニタリングすること、より好ましくは、急性骨髄性白血病、慢性骨髄性白血病、急性リンパ性白血病および/または慢性リンパ性白血病の群から選択される腫瘍を治療および/またはモニタリングすることが優先される。そのような腫瘍も、本発明の目的の癌として指定することができる。
【0109】
本発明の別の実施形態において、口腔舌扁平上皮癌、頭部扁平上皮癌、頸部扁平上皮癌、膵癌および乳癌は、モニタリング方法によって探求される対象から外される。
【0110】
本発明の前記化合物は、その最終的な塩でない形で使用することができる。一方、本発明は、それらの化合物を薬学的に許容されるその塩の形で使用することも包含し、その塩は、当技術分野で既知の手順によって種々の有機酸および無機酸および有機塩基および無機塩基から得ることができる。「薬学的に許容される塩」および「生理学的に許容される塩」という表現は、本明細書では互換的に使用し、この関連では、本発明による化合物をその塩の1つの形で含む活性成分、特に、この塩の形が、遊離型の活性成分またはこれまで使用されている他の塩の形の活性成分と比較して改善された薬物動態特性を活性成分に与える場合を意味するものとみなす。活性成分の薬学的に許容できる塩の形により、初めて、以前は有さなかった望ましい薬物動態特性を持ち、さらには体内での治療的有効性に関してこの活性成分の薬力学に好ましい影響を及ぼすことができる活性成分ももたらされ得る。
【0111】
本発明は、MetAP2活性を決定するための方法であって、
(a)単一の細胞、細胞培養物、組織、器官および哺乳動物の群から選択される、MetAP2を発現可能な細胞系またはその試料を準備するステップと、
(b)その系の少なくとも一部分を、スクリーニングされる化合物と一緒にインキュベートするステップと、
(c)MetEEF1Aを決定し、シグナルの量またはシグナルの変化を系内のMetEEF1A濃度と相関させることによってMetAP2活性を決定するステップであって、MetAP2活性とMetEEF1A濃度が逆比例するステップと
を含む方法にも関する。
【0112】
本発明の方法を用いて、完全な阻害または最大活性の間の任意の部分活性を設定することができ、またはさらには上記の閾値を得ることができる。逆比例は、線形関数または非線形関数のいずれかに従い得る。さらに、化合物をスクリーニングするための方法ならびに生理学的状態および/または病理学的状態をモニタリングする方法に関する先の教示は、MetAP2活性を決定する方法に制限なく有効かつ適用可能である。
【0113】
さらに、本発明は、抗MetAP2薬物を用いた治療の候補である、腫瘍に罹患している患者が、前記薬物を用いた治療に対して応答する可能性を予測するためのin vitroの方法であって、前記患者から得た組織試料において、予後遺伝子発現産物であるMetEEF1Aの発現レベルを決定するステップを含み、遺伝子産物の発現が参照値と比較して高いことが、その患者が前記治療に応答する見込みがあることを示す方法に関する。前記抗MetAP2薬物を用いた治療は、最初に行う単独治療法とすることができ、選択された遺伝子発現産物は発現されたタンパク質MetEEF1Aである。あるいは、前記抗MetAP2薬物を用いた治療は、患者が化学療法抵抗性の腫瘍を発症した後に、化学療法薬剤と組み合わせた治療法であり、選択された遺伝子発現産物は、発現されたタンパク質MetEEF1Aである。参照値は、参照患者または参照患者群から得た1つまたは複数の、特定の機能的もしくは臨床的な特性、および/または特定の、遺伝子発現プロファイルまたはタンパク質発現プロファイルによって定義する。前記参照患者または参照患者群は、遺伝子産物を発現していない、または候補患者と比較して遺伝子産物の発現が少ない。参照値は、決定される特定の臨床的応答パラメータによって、または特定の前治療の状態もしくは治療の状態によって、個々に構築または定義する発現の閾値である。適切な臨床的応答パラメータは、無増悪生存期間(PFS)、全生存期間(OS)、部分応答(PR)、安定応答(SR)、進行性疾患(PD)またはその組み合わせである。組織試料は、前記抗MetAP2薬物を用いて治療する前、さらには前記抗MetAP2薬物を用いて治療中に患者から取り出す。治療中に得た遺伝子発現産物の発現レベルを、前記患者の治療を開始する前に得た値と比較する。患者の試料は、例えば、腫瘍組織または血漿に由来する。
【0114】
増殖性によって引き起こされた障害または状態、具体的には癌に罹患している患者が、抗MetAP2薬物を用いた治療に対して治療上有利に応答する可能性を予測するためのin vitroにおける別の方法は、(a)前記患者の腫瘍組織または血漿の生検組織試料においてMetEEF1Aバイオマーカーの発現レベルをタンパク質ベースで測定するステップと、(b)前記患者の腫瘍または血漿の組織試料を前記抗MetAP2薬物にex vivoで暴露させるステップと、(c)ステップ(b)の前記暴露させた組織試料において、ステップ(a)で特定した前記バイオマーカーの発現レベルを測定するとともにステップ(b)および(c)で測定された発現レベルの差異を算出するステップとを含み、このステップ(c)で得られた前記バイオマーカーの発現レベルがステップ(a)と比較して高いことが、前記患者が前記抗MetAP2薬物を用いた治療に対して治療上有利に応答する可能性が高いことを示す。
【0115】
MetAP2活性の低下についてのバイオマーカーとしての、配列番号1のアミノ酸配列を含むEEF1A1および/または配列番号2のアミノ酸配列を含むEEF1A2(図11を参照されたい)、または同じ機能を有する、変異体、突然変異体、アミノ酸配列の部分または少なくとも85%相同な配列、またはEEF1A1をコードする核酸および/またはEEF1A2をコードする核酸配列の使用も本発明の目的である。本発明の別の目的は、口腔舌扁平上皮癌、頭部扁平上皮癌、頸部扁平上皮癌、膵癌および乳癌を除外した条件下で、細胞の増殖についてのバイオマーカーとしてのEEF1Aの使用に関する。乳癌を除外した条件下で、腫瘍の発生および/または進行性腫瘍の成長の可能性の低下についてのバイオマーカーとしてのEEF1Aの使用も、本発明のさらに別の目的である。好ましい使用は、血管新生の阻害および/または腫瘍の阻害についてのバイオマーカーとしてのEEF1Aの適用に関する。
【0116】
バイオマーカーは、MetAP2活性の低下、細胞増殖の状況および/または腫瘍が発生する可能性の低下および/または進行性腫瘍の成長をモニタリング、決定、および/または予測するために使用することができる。別の使用は、「評価する」という一般用語に包含することができる。データは一定期間にわたってモニタリングし、一方データは特定の時間において決定することは言うまでもない。期間と時間はどちらも、行う実験に応じて当業者が容易に設計することができる。さらに、EEF1Aは、癌に罹患している哺乳動物と、癌の治療において投与されることになっている、かつ/または投与されているMetAP2阻害薬について、薬学的な効果および/または臨床的応答をin vitroで予測するためのバイオマーカーとして使用することができる。基礎をなす治療は、特に最初に行う治療であり、哺乳動物患者を治療するのに用いる阻害薬を単独治療法で投与する。基礎をなす治療の代替の実施形態において、前記薬物は化学療法薬剤と組み合わせ、前記患者は化学療法抵抗性の癌を発症している。
【0117】
別の好ましい使用は、バイオマーカーとしてのMetEEF1A1および/またはMetEEF1A2の使用に関する。スクリーニング方法に関する本明細書の先の教示は、好都合であれば、任意の前記使用に制限なく有効かつ適用可能である。
【0118】
さらに、本発明は、特に、MetAP2活性を検出および/または特徴付けするための本発明の方法を行うために、EEF1A、好ましくはMetEEF1Aと特異的に相互作用する物質を含むキットとして実施することができる。本発明のキットは、本発明の方法の実施の仕方についての書面による説明書を含む、または使用者を書面による説明書に向かわせる物品を含んでよい。ある実施形態において、キットは、レポーター部分またはレポーター装置をさらに含む。さらに、キットは、バイオマーカーを単離するための抽出試薬を含んでよい。スクリーニング方法に関する本明細書の先の教示は、好都合であれば、キットに制限なく有効かつ適用可能であるとみなされる。
【0119】
本発明の範囲において、特有のバイオマーカーEEF1Aを適用することによってMetAP2阻害剤またはモジュレーターをスクリーニングする方法が初めて提供される。本発明は、酵素的なMetAP2活性が妨害されている細胞におけるMetEEF1Aの誘発および蓄積について教示している。MetAP2阻害剤についてのバイオマーカーとしてのEEF1Aはいくつかの利点を有する。EEF1Aは豊富な細胞タンパク質であるので腫瘍試料において容易に検出することができる。EEF1AのN末端の状況は、一定期間にわたってMetAP2の酵素活性を反映し、したがって、MetAP2阻害の結果を真に表し、試験化合物の有効性と良好に相関する。さらに、MetEEF1Aの読み取り情報はMetAP2自体ではなくMetAP2に特異的な基質についてであるので、MetAP2阻害剤の全ての種類に対して使用することができる。基質はMetAP2によってプロセシングされるが、MetAP1によってはプロセシングされず、そのことにより、抗血管新生活性および抗増殖活性が、MetAP2のタンパク質分解活性が阻害されることに特異的に起因することを証明することが可能になる。
【0120】
MetAP2によりメチオニンのプロセシングを阻害することにより、in vitroにおける腫瘍細胞の成長が遮断される。MetAP2阻害剤は、その抗増殖活性について観察されたのと同様に、用量依存的にMetEEF1Aを誘発しさえする。強力なマーカーによって、MetAP2阻害剤を用いて治療した細胞だけでなく動物対象およびヒト対象においてもMetAP2阻害をモニタリングできる可能性がある。MetEEF1Aの誘発は、in vivoにおける抗血管新生活性および抗腫瘍活性とも相関する。EEF1AのN末端の状況は、in vitroおよびin vivoにおける細胞のMetAP2阻害についての優れたバイオマーカーである。EEF1Aのプロセシングは、前臨床試験および臨床試験においてMetAP2阻害をモニタリングするのに役立つ。
【0121】
示差的にプロセシングされたEEF1Aアイソフォームを分析することは、大規模スクリーニング試験に非常に適している。新規マーカーにより、新規MetAP2阻害剤を同定することが可能になる。化合物は、作用の特定の細胞機構を用いて同定および評価することができ、さらに、それが抗血管新生作用および/または抗増殖作用を発揮する可能性を都合よく証明することができる。EEF1A、特にMetEEF1Aの特徴付けは、結果としてMetAP2活性によって引き起こされ、媒介され、かつ/または拡大される状態を診断し、予防的もしくは治療的に治療し、かつ/またはモニタリングするための医薬組成物が提供される、MetAP2による基質の認識に決定的に関与する。その使用により、MetAP2依存性疾患に明らかに関係する症状を直接かつ迅速に低下させる広範囲の治療法に対する新規手法が保証される。その化合物は、哺乳動物における抗癌薬として特に有用である。
【0122】
したがって、そのような生理学的状態または病理学的状態をin vitroにおいてスクリーニングおよびモニタリングすることにおいて、EEF1Aを、MetAP2活性を検出し特徴付けするためのバイオマーカーとみなす。検出方法ならびに本発明から生じたモニタリング方法は、簡便かつ高速な様式で行うことができる。さらに、適切なキットは、費用効率よく作製される。EEF1Aのアイソフォームのターゲティングは、MetAP2活性およびそれによって引き起こされた医学的障害に非常に特異的である。検出された物質は全て、親和性、特異性および安定性が高いこと;製造費用が低く扱いが簡単であることを特徴とする。それらの特徴は、交差反応がないことを含めて再現性のある作用、およびそれらの適合する標的構造との信頼でき、かつ安全な相互作用の基礎を形成する。
【0123】
本明細書で引用した全ての参照文献は、これによって、参照により本発明の開示に組み込まれる。
【0124】
当然のことながら、本発明は、本明細書に記載の特定の方法、特定の物質、使用およびキットに限定されず、そのような事項は当然変動し得る。これも当然のことながら、本明細書で使用した用語は、特定の実施形態を説明するためだけのものであり、本発明の範囲を限定するものではなく、本発明の範囲は添付の特許請求の範囲によってのみ定義される。添付の特許請求の範囲を含めた本明細書で使用した、「a(1つの)」、「an(1つの)」および「the(その)」などの単数形の単語は、文脈から明らかにそうでないことが示されていなければ、対応するその複数の指示対象を含む。したがって、例えば、「(1つの)物質」に言及することは、単一の物質またはいくつかの異なる物質を含み、「(1つの)方法」に言及することは、当業者に既知の同等のステップおよび方法に言及することを含む、などである。他に定義していなければ、本明細書で使用した技術用語および科学用語は、本発明が属する技術分野の当業者によって一般に理解されているのと同じ意味を有する。
【実施例】
【0125】
本発明の実施または試験において、本明細書に記載のものと同様または同等の方法および材料を使用することができるが、適切な例を下記で説明する。以下の例は、限定する目的ではなく、例証する目的で提供する。例の中では、夾雑活性がない(実施するときは必ず(whenever practical))標準試薬および標準緩衝液を使用する。例は、明確に実証された特徴の組み合わせに限定されないように特に解釈されるべきであり、例証された特徴は、本発明の技術的問題が解決すれば、再び制限なく組み合わせることができる。
【0126】
細胞培養およびMetAP2阻害剤を用いた処理
マウス脳内皮腫細胞(bEND3、ECACC番号9609129)を、10%(v/v)熱不活性化ウシ胎児血清(Pan Biotech、#3302)、1mMのピルビン酸ナトリウム(Invitrogen、#11360)および1×非必須アミノ酸溶液(Sigma、M7145)を補充したD−MEM(Invitrogen、#41965)中、10%CO2、37℃で培養した。ヒト結腸癌細胞(HCT116、ATCC CCL225)を、10%(v/v)熱不活性化ウシ胎児血清(Pan Biotech、#3302)、2mMのグルタミン(Invitrogen、#25030)および1mMのピルビン酸ナトリウム(Invitrogen、#11360)を補充したMEMアルファ(Invitrogen、#22571)中、10%CO2、37℃で培養した。ヒト臍帯静脈内皮細胞(HUVEC、PromoCell、C−12200)を、サプリメントミックス(supplement mix)(PromoCell、C−39215)を含んだ内皮細胞成長培地(PromoCell、C−22020)中、5%CO2、37℃で培養した。ヒト線維肉腫細胞(HT1080、ATCC CCL−121)を、10%(v/v)熱不活性化ウシ胎児血清(Pan Biotech、#3302)を補充したD−MEM(Invitrogen、#41965)中、10%CO2、37℃で培養した。
【0127】
細胞を、トリプシン/EDTA(Invitrogen、#15400)を用いて細胞培養フラスコから脱離させ、Thomaチャンバー(VWR、#631−1117)を使用して計数し、組織培養シャーレ(VWR、#391−2002、#391−2003)中の新鮮な培地に播種した(細胞密度:HT1080、bEND3:15cmのシャーレ当たり、培地30ml中、細胞0.5〜1×106個、HCT116:10cmのシャーレ当たり培地10ml中、細胞1×106個)。細胞を一晩培養し、ビヒクル対照(0.5%DMSO;Merck、#1.02931)または特異的なメチオニンアミノペプチダーゼ2阻害剤(フマギリン:Sigma、F−6771;TNP−470;Abbott Inhibitor A−832234:Sheppardら、(2005) 96th AACR Meeting,Abstract #2531)を用いて、示した濃度で異なる時間処理した(2時間、6時間、24時間、48時間)。培地をファルコンチューブ内に収集し、付着した細胞をダルベッコリン酸緩衝生理食塩水(Invitrogen、#14190)で2回洗浄した。D−PBS洗浄液を培地と合わせた。付着した細胞を、5mlのベルセン(Versene)(Invitrogen、15040)と一緒に20分間インキュベートし、プレートをこすり落とし、培地/洗浄液の溶液と合わせた。細胞を室温、300×gで4分間遠心分離し、0.5mlのD−PBS(Invitrogen、#14190)に再懸濁させ、Thomaチャンバーにおいて計数した。細胞を再度遠心分離し、上清を取り除いた。続いて、細胞をIEF溶解緩衝液(7Mの尿素、2Mのチオ尿素、4%CHAPS、1%DTT、1%ファルマライト(Pharmalyte)、pH3〜10(GE Healthcare)に、1ml当たり細胞2×107個の密度で再懸濁させ、穏やかに攪拌しながら30分間インキュベートした。溶解物を10.000×gで5分間遠心分離し、上清を新品のエッペンドルフマイクロ試験管に収集し、最後に−70℃で凍結させる。
【0128】
IEF分離
詳細に分析するために、細胞抽出物を電気泳動により分離した。等電点電気泳動をpH7〜9の勾配範囲で行った。IEFゲル(CleanGel IEF ultra ETC1001−52、ETC、Germany)を、7Mの尿素、2Mのチオ尿素、1%DTE、4%CHAPS、3%セルバライト(Servalyte)、7〜9で120分間再水和させ、Multiphor II電気泳動ユニット(GE Healthcare)に集めた。試料(5μl)を陽極の近くに適用し、陽極緩衝液(6Mのグリシン)および陰極の流動液10(Serva、Germany)を流した。ゲルをプレフォーカシングした後(700V、30分)、20℃、500Vで30分間、試料の導入を行った。2000Vで210分間分離を行い、次いで2500Vで10分間、バンドを鮮明化した。取り除いた後、PVDF膜上に拡散ブロットするためにゲルをトランスファー緩衝液(50mMのトリスHCl、pH7.5、4Mの塩化グアニジウム、1mg/mlのDTT)中で平衡化し、一晩作動させた。続いて、膜を、3時間、クーマシーブルーで染色するか、またはウサギPcAb抗ヒトEEF1A1(Proteintech Group、USA;11402−1−AP)で免疫染色し、ECL−Plus試薬(GE Healthcare)を用いて検出した。
【0129】
N末端タンパク質の配列決定
IEF分離し、PVDF膜にブロットし、クーマシーブルーで染色した後に、種々の細胞抽出物についてアミノ末端配列の決定を行った。単一のクーマシーバンドを切り出し、Procise491タンパク質配列決定装置(Applied Biosystems、USA)に適用し、標準のプロトコールに従って作動させた。
【0130】
酵素的消化および質量分析
IEF分離した後、クーマシーブルー染色したアクリルアミドゲルバンドを切り出し、50%アセトニトリルで2回洗浄し、純粋なアセトニトリルですすいだ。重炭酸アンモニウム10μlに溶解させたトリプシン0.1μg、pH7.4をゲルバンドに加えることによってゲルの消化を行った。37℃で一晩インキュベートした。消化混合物の一定分量をMALDI−TOF MS(Ultraflex、Bruker、Germany)の標的プレート上に塗布し、マトリックスとしてα−シアノ−4−ヒドロキシ桂皮酸を加えた。質量分析を行い、標準のプロトコールを適用してペプチド断片を検出した。得られたペプチドの質量リストを、Mascot検索アルゴリズム(Matrix Science、UK)を使用してSwissProtデータベースと対照して検索してタンパク質を同定した。さらに、質量マップの別個のペプチドを、それらの個々のペプチドの一次配列を決定し、明確なタンパク質のアノテーションのために、続くMS断片化試験に使用した。
【0131】
表1は、図10についての説明的な情報を含有する。化合物をbEND3細胞と一緒に、示した濃度で48時間インキュベートし、溶解させ、EEF1A1の電気泳動移動度シフトをIEFゲルにおいて評価した。使用した化合物は、示した効力(IC50)を持つMetAP2阻害剤およびHUVEC細胞増殖の阻害剤と特徴付けられた。MetAP2阻害を、トリペプチドMet−Ala−Serを切断し、続いてL−アミノ酸酸化酵素およびL−アミノ酸過酸化酵素で構成される酵素結合反応を使用して切断されたメチオニンを検出することによって測定した(Wangら、(2003) Biochemistry 42(17):5035−5042)。示した化合物によるHUVEC細胞増殖の阻害を、Roche(Swizerland;カタログ番号:11 647 229 001)の比色BrdU−Elisaを使用して測定した。この場合、化合物は、段階希釈して、HUVEC内皮細胞と一緒に72時間インキュベートし、続いてBrdU検出処理した。
【0132】
図面の簡単な説明
図1は、異なる内皮細胞および癌細胞からの細胞抽出物の、IEF分離後の、MetAP2阻害剤を適用した後に観察された新規バンドを伴う処理に関連したパターンを示す(レーン1、5、9:IEFマーカータンパク質;レーン2、6、12:100nMのTNP470;レーン3、7:1μMの、A−832234と同一である2−[2−((Z−)−3−ジエチルアミノ−プロペニル)−4−フルオロ−ベンゼンスルホニルアミノ]−5,6,7,8−テトラヒドロ−ナフタレン−1−カルボン酸;レーン4、8、11:0.5%DMSO。
【0133】
図2は、図1のレーン2〜4を拡大した画像を示す。
【0134】
図3は、MetAP2阻害後の、EEF1A1のN末端におけるMet1を確認するエドマン法の結果を示す。TNP470で処理したHT1080+bEND3細胞について検出された配列は、M1GKEKTHINIである。
【0135】
図4は、バンド1およびバンド2(図2を参照されたい)をゲル内消化した後のタンパク質の同定および質量マップおよびデータベースアノテーションを示す。
【0136】
図5は、N末端ペプチドを局在化するステップと、MSMSによって配列決定するステップと、N末端のプロセシングの特徴付けをするステップとを含む、N末端の決定を示す。バンド1の質量マップは配列acGKEKTHINIVVIGHVDSGK (M+H+: 2.073,2)に対応し、バンド2の質量マップは配列MGKEKTHINIVVIGHVDSGK (M+H+: 2.162,2)に対応する。
【0137】
図6は、バンド1のトリプシン消化の親質量2.073,2DのMSMS分析を示し、配列acGKEKTHINIVVIGHVDSGKを明らかにしている。
【0138】
図7は、バンド2のトリプシン消化の親質量2.162,2DのMSMS分析を示し、配列MGKEKTHINIVVIGHVDSGKを明らかにしている。
【0139】
図8は、2つの細胞抽出物について、EEF1A1の同定の評価を示す(レーン1、3:DMSO;レーン2、4:TNP470)。
【0140】
図9は、TNP470を用いて処理したbEND3細胞抽出物におけるEEF1A1の移動度シフトを示す。48時間後に対照試料(0.5%DMSO)に追加のバンドは出現しなかった。
【0141】
図10は、活性なMetAP2阻害剤から明確に識別可能な陰性対照を用いたEEF1A1の移動度シフトを示す(TNP−470、A−832234;レーン1〜4:表1を参照されたい)。
【0142】
図11は、EEF1A1(P68104;配列番号1)およびEEF1A2(Q05639;配列番号2)の配列比較を示し、それらは92.7%の配列同一性を有する。どちらの受託番号も、Swiss−Prot配列データベースを参照している。
【0143】
例1
処理に関連したパターンは、IEF後にpIが低い新規バンドを示す
異なる内皮細胞および癌細胞(マウス:bEND3、ヒト:HT1080、HCT116)を処理した後、細胞抽出物のIEF分離をpH7〜9の範囲で行った(図1)。DMSOで処理した細胞およびMetAP2阻害剤(100nMのTNP−470;1μMの、A−832234と同一である2−[2−((Z)−3−ジエチルアミノ−プロペニル)−4−フルオロ−ベンゼンスルホニルアミノ]−5,6,7,8−テトラヒドロ−ナフタレン−1−カルボン酸)で処理した細胞からの抽出物を比較すると、クーマシーブルーで染色した後に新規のタンパク質バンド(図1、バンド2、矢印を参照されたい)が検出された。拡大した画像を図2に示す。
【0144】
例2
エドマン法によるEEF1A1の特徴付け
例1で得られたタンパク質バンドについてN末端の配列決定をすることにより、アミノ酸配列MGKEKTHINIが決定された。データベースの配列との比較により、バンド2について、対応するタンパク質がEF1αであると同定された(図3)。N末端がブロックされたタンパク質に典型的なバンド1についてはアミノ酸シグナルが検出されなかった。
【0145】
例3
MSによるEEF1A1の特徴付け
例1で得られたバンド1およびバンド2のトリプシンによるゲル内消化物を質量分析に適用した。データベース検索において、対応する質量リストによっても、両方の消化物についてタンパク質EEF1A1が同定された。このアノテーションは、バンド2のN末端配列決定の結果と一致した(例2、図3を参照されたい)。EEF1A1配列に関してアノテーションされたトリプシンペプチドを図4に示す。
【0146】
注目すべきことに、両方の質量マップを比較することにより、それぞれが1つの示差的なペプチド質量を含有することが示された。バンド2は、mw=2.162Dのペプチドを含有し、それはバンド1には存在しなかった;バンド1については、mw=2.073Dのペプチドが独占的に検出された(図5)。
【0147】
mw=2.162DのペプチドのMS断片化により、メチオニンを含有するペプチドMGKEKTHINIVVIGHVDSGK(図7)が同定され、mw=2.073Dのペプチドにより、アミノ末端が切断されアセチル化された形のacGKEKTHINIVVIGHVDSGKが同定された(図6)。この知見は、特にTNP470を用いて処理した後にEEF1A1のバンド2が出現することと一致した。
【0148】
例4
免疫分析によるEEF1A1の同一性の確認
例1で得られたバンドはどちらも、マウス相同体とも公差反応するポリクローナルウサギPcAb抗ヒトEEF1A1抗体を使用して特異的に検出された。2つの細胞抽出物についてのEEF1A1の同定についての評価を図8に示す。
【0149】
例5
処理に関連した移動度シフトは、細胞型とは無関係に観察された
EEF1A1の移動度シフトは、図9に示したように(bEND3細胞抽出物について示す)、2つの構造的に別個のMetAP2阻害剤(TNP470)を用いて試験した全ての細胞型において確かに検出することができた。48時間後でさえ、対照試料では追加のバンドは出現しなかったが、強度が増加した2番目のバンド(バンド2)は、2時間後にはすでに見られた(図9)。陰性対象は、活性化合物から明確に識別することができた(図10;表1)。
【0150】
【表1】
【0151】
例6
2つのアイソフォームEEF1A1およびEEF1A2は、92.7%の配列相同性を含む(図11)。どちらのアイソフォームも最初の82アミノ酸の範囲内が同一であり、したがって、MetAP2の基質である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
メチオニンアミノペプチダーゼ2(MetAP2)の活性を阻害する化合物をスクリーニングするための方法であって、
(a)単一の細胞、細胞培養物、組織、器官および哺乳動物の群から選択される、MetAP2および真核生物翻訳伸長因子1アルファ(EEF1A)を発現可能な細胞系またはその試料を準備するステップと、
(b)前記系の少なくとも一部分を、スクリーニングされる化合物と一緒にインキュベートするステップと、
(c)N末端メチオニン残基を有するEEF1A(MetEEF1A)を決定することによってMetAP2阻害を検出するステップと、
を含む方法。
【請求項2】
(d)MetAP2活性を阻害する化合物と、metAP2遺伝子もしくはその遺伝子産物、または調節タンパク質、または前記遺伝子もしくはその遺伝子産物を含むシグナル伝達経路の構成要素との特異的な相互作用を検出するステップ、好ましくは化合物とMetAP2タンパク質の特異的な結合を検出するステップ、
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ステップ(c)が、
(c’)シグナルの量またはシグナルの変化を前記系内のMetEEF1A濃度と相関させるステップと、
(c’’)前記MetEEF1A濃度を、化合物と一緒にインキュベートしていない細胞系内および/またはMetAP2阻害活性を有する標準化合物と一緒にインキュベートした細胞系内の別のMetEEF1A濃度と比較することによってMetAP2阻害レベルを検出するステップと、
をさらに含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
さらにステップ(c)においてアセチル化されたN末端グリシン残基を有するEEF1A(acGlyEEF1A)を決定し、ステップ(c’)においてシグナルの量またはシグナルの変化を系内のacGlyEEF1A濃度と相関させ、場合によってMetEEF1A対acGlyEEF1Aの比を決定し、ステップ(c’’)において、acGlyEEF1A濃度および/またはMetEEF1A対acGlyEEF1Aの比を、化合物と一緒にインキュベートしていない細胞系内および/またはMetAP2阻害活性を有する標準化合物と一緒にインキュベートした細胞系内の、別のacGlyEEF1A濃度および/または別のMetEEF1A対acGlyEEF1Aの比と比較する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
抗増殖性活性、好ましくは抗血管新生活性および/または抗腫瘍活性をもたらす化合物をスクリーニングするための、請求項1〜4のいずれか一項に記載の、好ましくは請求項1または2に記載の方法。
【請求項6】
増殖性によって引き起こされる障害または状態のための治療用化合物をスクリーニングするための請求項5に記載の方法であって、ステップ(a)において哺乳動物、好ましくは実験哺乳動物を準備し、そのMetEEF1Aを哺乳動物から採取した生体試料において決定し、ステップ(b)において、化合物が哺乳動物に投与され、ステップ(c)において、哺乳動物から採取した生体試料中のMetEEF1Aを決定することによって治療効果を検出し、MetEEF1Aの増加が、前記化合物に治療効果がある可能性が高いことを示す、方法。
【請求項7】
ステップ(c)が、
(c’)シグナルの量またはシグナルの変化を系内のMetEEF1A濃度と相関させるステップと、
(c’’)前記MetEEF1A濃度を、非増殖性細胞および/または増殖性細胞の系内の別のMetEEF1A濃度と比較することによって抗増殖性活性のレベルを検出するステップと
をさらに含む、請求項5または6に記載の方法。
【請求項8】
MetAP2活性によって引き起こされ、媒介され、かつ/または拡大される生理学的状態および/または病理学的状態をモニタリングするための方法であって、請求項1〜7のいずれか一項に記載のスクリーニング方法によって得られる少なくとも1つの化合物またはその生理学的に許容できる塩の有効量を、そのような治療を必要とする哺乳動物に投与し、MetEEF1Aが前記哺乳動物から採取した生体試料において決定され、MetEEF1Aの増加が、前記哺乳動物が前記化合物を用いた治療に応答する可能性が高いことを示す、方法。
【請求項9】
MetAP2活性を変化させる化合物をスクリーニングするための方法であって、
(a)単一の細胞、細胞培養物、組織、器官および哺乳動物の群から選択される、MetAP2を発現可能な細胞系またはその試料を準備するステップと、
(b)前記系の少なくとも一部分を、スクリーニングされる化合物と一緒にインキュベートするステップと、
(c)MetEEF1Aを決定するステップと、
(c’)シグナルの量またはシグナルの変化を系内のMetEEF1A濃度と相関させるステップと、
(c’’)前記MetEEF1Aの濃度を、化合物と一緒にインキュベートしていない細胞系内および/またはMetAP2活性化活性またはMetAP2阻害活性を有する標準化合物と一緒にインキュベートした細胞系内の別のMetEEF1Aの濃度と比較することによってMetAP2活性を検出するステップと、場合によって、
(d)MetAP2活性を変化させる化合物と、metAP2遺伝子、またはその調節タンパク質もしくは遺伝子産物、または前記遺伝子もしくはその遺伝子産物を含むシグナル伝達経路の構成要素との特異的な相互作用を検出するステップと
を含む方法。
【請求項10】
MetAP2活性を決定するための方法であって、
(a)単一の細胞、細胞培養物、組織、器官および哺乳動物の群から選択される、MetAP2を発現可能な細胞系またはその試料を準備するステップと、
(b)前記系の少なくとも一部分を、スクリーニングされる化合物と一緒にインキュベートするステップと、
(c)MetEEF1Aを決定し、シグナルの量またはシグナルの変化を系内のMetEEF1A濃度と相関させることによってMetAP2活性を決定するステップであって、MetAP2活性とMetEEF1A濃度が逆比例するステップと
を含む方法。
【請求項11】
MetAP2活性の低下を評価するためのバイオマーカーとしての、配列番号1のアミノ酸配列を含むEEF1A1および/または配列番号2のアミノ酸配列を含むEEF1A2、または同じ機能を有する、変異体、突然変異体、アミノ酸配列の部分または少なくとも85%相同な配列、またはEEF1A1をコードする核酸および/またはEEF1A2をコードする核酸配列の使用。
【請求項12】
口腔舌扁平上皮癌、頭部扁平上皮癌、頸部扁平上皮癌、膵癌および乳癌は除外されるという条件下で、細胞増殖を評価するためのバイオマーカーとしてのEEF1Aの使用。
【請求項13】
乳癌を除外した条件下で、腫瘍の発生、進行性腫瘍の成長の可能性の低下を評価するため、および/または血管新生の阻害および/または腫瘍の阻害を評価するための、バイオマーカーとしてのEEF1Aの使用。
【請求項14】
抗MetAP2薬物を用いた治療の候補である、腫瘍に罹患している患者が、前記薬物を用いた治療に対して応答する可能性を予測するためのin vitroの方法であって、前記患者から得た組織試料において、予後遺伝子発現産物であるMetEEF1Aの発現レベルを決定するステップを含み、遺伝子産物の発現が参照値と比較して高いことが、前記患者が前記治療に対して応答する見込みがあることを示す方法。
【請求項15】
増殖性によって引き起こされる障害または状態に罹患している患者が、抗MetAP2薬物を用いた治療に対して治療上有利に応答する可能性を予測するためのin vitroの方法であって、(i)前記患者の腫瘍組織または血漿の生検組織試料においてMetEEF1Aバイオマーカーの発現レベルをタンパク質ベースで測定するステップと、(ii)前記患者の腫瘍または血漿の組織試料を前記抗MetAP2薬物にex vivoで暴露させるステップと、(iii)ステップ(ii)の前記暴露させた組織試料において、ステップ(i)で特定した前記バイオマーカーの発現レベルを測定するとともにステップ(ii)および(iii)で測定された発現レベルの差異を算出するステップとを含み、このステップ(iii)で得られた前記バイオマーカーの発現レベルがステップ(i)と比較して高いことが、前記患者が前記抗MetAP2薬物を用いた治療に対して治療上有利に応答する可能性が高いことを示す方法。
【請求項1】
メチオニンアミノペプチダーゼ2(MetAP2)の活性を阻害する化合物をスクリーニングするための方法であって、
(a)単一の細胞、細胞培養物、組織、器官および哺乳動物の群から選択される、MetAP2および真核生物翻訳伸長因子1アルファ(EEF1A)を発現可能な細胞系またはその試料を準備するステップと、
(b)前記系の少なくとも一部分を、スクリーニングされる化合物と一緒にインキュベートするステップと、
(c)N末端メチオニン残基を有するEEF1A(MetEEF1A)を決定することによってMetAP2阻害を検出するステップと、
を含む方法。
【請求項2】
(d)MetAP2活性を阻害する化合物と、metAP2遺伝子もしくはその遺伝子産物、または調節タンパク質、または前記遺伝子もしくはその遺伝子産物を含むシグナル伝達経路の構成要素との特異的な相互作用を検出するステップ、好ましくは化合物とMetAP2タンパク質の特異的な結合を検出するステップ、
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
ステップ(c)が、
(c’)シグナルの量またはシグナルの変化を前記系内のMetEEF1A濃度と相関させるステップと、
(c’’)前記MetEEF1A濃度を、化合物と一緒にインキュベートしていない細胞系内および/またはMetAP2阻害活性を有する標準化合物と一緒にインキュベートした細胞系内の別のMetEEF1A濃度と比較することによってMetAP2阻害レベルを検出するステップと、
をさらに含む、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
さらにステップ(c)においてアセチル化されたN末端グリシン残基を有するEEF1A(acGlyEEF1A)を決定し、ステップ(c’)においてシグナルの量またはシグナルの変化を系内のacGlyEEF1A濃度と相関させ、場合によってMetEEF1A対acGlyEEF1Aの比を決定し、ステップ(c’’)において、acGlyEEF1A濃度および/またはMetEEF1A対acGlyEEF1Aの比を、化合物と一緒にインキュベートしていない細胞系内および/またはMetAP2阻害活性を有する標準化合物と一緒にインキュベートした細胞系内の、別のacGlyEEF1A濃度および/または別のMetEEF1A対acGlyEEF1Aの比と比較する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
抗増殖性活性、好ましくは抗血管新生活性および/または抗腫瘍活性をもたらす化合物をスクリーニングするための、請求項1〜4のいずれか一項に記載の、好ましくは請求項1または2に記載の方法。
【請求項6】
増殖性によって引き起こされる障害または状態のための治療用化合物をスクリーニングするための請求項5に記載の方法であって、ステップ(a)において哺乳動物、好ましくは実験哺乳動物を準備し、そのMetEEF1Aを哺乳動物から採取した生体試料において決定し、ステップ(b)において、化合物が哺乳動物に投与され、ステップ(c)において、哺乳動物から採取した生体試料中のMetEEF1Aを決定することによって治療効果を検出し、MetEEF1Aの増加が、前記化合物に治療効果がある可能性が高いことを示す、方法。
【請求項7】
ステップ(c)が、
(c’)シグナルの量またはシグナルの変化を系内のMetEEF1A濃度と相関させるステップと、
(c’’)前記MetEEF1A濃度を、非増殖性細胞および/または増殖性細胞の系内の別のMetEEF1A濃度と比較することによって抗増殖性活性のレベルを検出するステップと
をさらに含む、請求項5または6に記載の方法。
【請求項8】
MetAP2活性によって引き起こされ、媒介され、かつ/または拡大される生理学的状態および/または病理学的状態をモニタリングするための方法であって、請求項1〜7のいずれか一項に記載のスクリーニング方法によって得られる少なくとも1つの化合物またはその生理学的に許容できる塩の有効量を、そのような治療を必要とする哺乳動物に投与し、MetEEF1Aが前記哺乳動物から採取した生体試料において決定され、MetEEF1Aの増加が、前記哺乳動物が前記化合物を用いた治療に応答する可能性が高いことを示す、方法。
【請求項9】
MetAP2活性を変化させる化合物をスクリーニングするための方法であって、
(a)単一の細胞、細胞培養物、組織、器官および哺乳動物の群から選択される、MetAP2を発現可能な細胞系またはその試料を準備するステップと、
(b)前記系の少なくとも一部分を、スクリーニングされる化合物と一緒にインキュベートするステップと、
(c)MetEEF1Aを決定するステップと、
(c’)シグナルの量またはシグナルの変化を系内のMetEEF1A濃度と相関させるステップと、
(c’’)前記MetEEF1Aの濃度を、化合物と一緒にインキュベートしていない細胞系内および/またはMetAP2活性化活性またはMetAP2阻害活性を有する標準化合物と一緒にインキュベートした細胞系内の別のMetEEF1Aの濃度と比較することによってMetAP2活性を検出するステップと、場合によって、
(d)MetAP2活性を変化させる化合物と、metAP2遺伝子、またはその調節タンパク質もしくは遺伝子産物、または前記遺伝子もしくはその遺伝子産物を含むシグナル伝達経路の構成要素との特異的な相互作用を検出するステップと
を含む方法。
【請求項10】
MetAP2活性を決定するための方法であって、
(a)単一の細胞、細胞培養物、組織、器官および哺乳動物の群から選択される、MetAP2を発現可能な細胞系またはその試料を準備するステップと、
(b)前記系の少なくとも一部分を、スクリーニングされる化合物と一緒にインキュベートするステップと、
(c)MetEEF1Aを決定し、シグナルの量またはシグナルの変化を系内のMetEEF1A濃度と相関させることによってMetAP2活性を決定するステップであって、MetAP2活性とMetEEF1A濃度が逆比例するステップと
を含む方法。
【請求項11】
MetAP2活性の低下を評価するためのバイオマーカーとしての、配列番号1のアミノ酸配列を含むEEF1A1および/または配列番号2のアミノ酸配列を含むEEF1A2、または同じ機能を有する、変異体、突然変異体、アミノ酸配列の部分または少なくとも85%相同な配列、またはEEF1A1をコードする核酸および/またはEEF1A2をコードする核酸配列の使用。
【請求項12】
口腔舌扁平上皮癌、頭部扁平上皮癌、頸部扁平上皮癌、膵癌および乳癌は除外されるという条件下で、細胞増殖を評価するためのバイオマーカーとしてのEEF1Aの使用。
【請求項13】
乳癌を除外した条件下で、腫瘍の発生、進行性腫瘍の成長の可能性の低下を評価するため、および/または血管新生の阻害および/または腫瘍の阻害を評価するための、バイオマーカーとしてのEEF1Aの使用。
【請求項14】
抗MetAP2薬物を用いた治療の候補である、腫瘍に罹患している患者が、前記薬物を用いた治療に対して応答する可能性を予測するためのin vitroの方法であって、前記患者から得た組織試料において、予後遺伝子発現産物であるMetEEF1Aの発現レベルを決定するステップを含み、遺伝子産物の発現が参照値と比較して高いことが、前記患者が前記治療に対して応答する見込みがあることを示す方法。
【請求項15】
増殖性によって引き起こされる障害または状態に罹患している患者が、抗MetAP2薬物を用いた治療に対して治療上有利に応答する可能性を予測するためのin vitroの方法であって、(i)前記患者の腫瘍組織または血漿の生検組織試料においてMetEEF1Aバイオマーカーの発現レベルをタンパク質ベースで測定するステップと、(ii)前記患者の腫瘍または血漿の組織試料を前記抗MetAP2薬物にex vivoで暴露させるステップと、(iii)ステップ(ii)の前記暴露させた組織試料において、ステップ(i)で特定した前記バイオマーカーの発現レベルを測定するとともにステップ(ii)および(iii)で測定された発現レベルの差異を算出するステップとを含み、このステップ(iii)で得られた前記バイオマーカーの発現レベルがステップ(i)と比較して高いことが、前記患者が前記抗MetAP2薬物を用いた治療に対して治療上有利に応答する可能性が高いことを示す方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公表番号】特表2012−507268(P2012−507268A)
【公表日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−533565(P2011−533565)
【出願日】平成21年10月5日(2009.10.5)
【国際出願番号】PCT/EP2009/007102
【国際公開番号】WO2010/051882
【国際公開日】平成22年5月14日(2010.5.14)
【出願人】(591032596)メルク パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (1,043)
【氏名又は名称原語表記】Merck Patent Gesellschaft mit beschraenkter Haftung
【住所又は居所原語表記】Frankfurter Str. 250,D−64293 Darmstadt,Federal Republic of Germany
【Fターム(参考)】
【公表日】平成24年3月29日(2012.3.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年10月5日(2009.10.5)
【国際出願番号】PCT/EP2009/007102
【国際公開番号】WO2010/051882
【国際公開日】平成22年5月14日(2010.5.14)
【出願人】(591032596)メルク パテント ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング (1,043)
【氏名又は名称原語表記】Merck Patent Gesellschaft mit beschraenkter Haftung
【住所又は居所原語表記】Frankfurter Str. 250,D−64293 Darmstadt,Federal Republic of Germany
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]