説明

バイオメディア装置及びその使用方法

延在する中央芯と、水から生物類を捕捉するとともに当該中央芯に沿って位置づけられた環状体と、を備えるバイオメディア装置。当該バイオメディア装置は、さらに、上記中央芯に連結された少なくとも一つの補強部材を備えている。一実施形態において、バイオメディア装置は廃水処理のためトリクルタワー内にて使用される。他の実施形態において、バイオメディア装置は発電所外部にて使用され、受水口を介して引込まれる稚貝の影響を最小限とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、米国仮特許出願(出願番号:60/754,053、出願日:2005年12月27日)に基づく優先権を主張している。
【0002】
本発明はバイオメディア装置に関し、より詳しくは、廃水処理の際有用である、環状コードでできたバイオメディア装置に関する。
【背景技術】
【0003】
本発明はバイオメディア装置及びその使用方法に関する。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0004】
一実施形態において、本発明のバイオメディア装置は、延在する中央芯と、中央芯に連結された少なくとも一つの補強部材と、中央芯の長手方向に位置する複数の環状体と、を備えている。
【0005】
他の実施形態において、本発明のバイオメディア装置は、延在する中央芯を備えており、当該中央芯の幅は、約10.0ミリメートルである。そして中央芯に沿って複数の環状体が位置している。
【0006】
さらなる他の実施形態において、バイオメディア装置は、延在する中央芯と、水から生物類を捕捉するために中央芯に沿って位置する複数の環状体と、を備えており、当該装置は、一フィートあたり、捕捉された生物類を約150.0から約300.0ポンド保持するように構成されている。
【0007】
本発明にかかる使用方法の一実施形態において、当該方法は、延在する中央芯と、中央芯に連結される少なくとも一つの補強部材と、中央芯に沿って位置する複数の環状体とを備えるバイオメディア装置を提供する工程と、少なくとも一種の生物を含む水を供する工程と、上記バイオメディア装置を用いて、水から上記少なくとも一種の生物類を捕捉する工程と、を備えている。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
本願請求項に係る発明の一実施形態について、添付の図面に示す。図面は必ずしも本発明を限定するものではなく、また、本発明の理解に必ずしも必要ではない細部要素や理解するに困難な他の要素の表現については、省略され得るものと解されなければならない。当然、本発明は必ずしも図面に示された特定の実施形態に限定されるものではないものと解されなければならない。
【0009】
本明細書において、「バイオメディア」とは、水処理に関連して使用されるあらゆる材料又は物質を意味する。本発明は、環状コードでできたバイオメディアに関連し、当該バイオメディアには延在する中央芯及び当該中央芯に沿って位置する複数の環状体が備えられている。本明細書において、「延在する」とは、水平寸法よりも大きな垂直寸法を有することを意味する。一実施形態において、本発明は中央芯に連結された補強部材をさらに備えている。本発明のバイオメディアは、トリクルタワー中にて、又は水処理を伴う他の様々な用途に使用され得る。
【0010】
まず図1について言及する。図1には本発明の環状コードでできたバイオメディア10の第一実施形態が示されている。図1のバイオメディアには、第一側面14及び第二側面16を有する中央芯12と、第一側面14及び第二側面16の各々から横向きに伸びた複数の環状体18と、中央芯に連結された補強部材20と、が備えられている。また、バイオメディア10は前部21及び背部23も有している。
【0011】
中央芯12は様々な方法、様々な材料で構成され得る。一実施形態において、中央芯12は編まれた状態とされている。中央芯12の当該編まれた部分には、縦方向に配列された複数の(例えば4〜6の)縫い目22が備えられていてもよい。中央芯12は毛糸状の材料から形成されていてもよい。当該毛糸状の材料として好適なものには、例えば、ポリエステル、ポリアミド、ポリ塩化ビニリデン、ポリプロピレン、及びその他当業者に周知の材料が含まれ得る。このような毛糸状の材料は、連続的なフィラメントや、紡糸繊維であってもよい。中央芯12の横幅lについては、比較的幅狭であり、適宜変更される。一実施形態において、当該横幅lは約10.0mm以下であり、通常、約3.0mm以上約8.0mm以下、又は約4.0mm以上約6.0mm以下である。
【0012】
図1に示されるように、複数の環状体18が、中央芯12の第一側面14及び第二側面16から横方向に伸びている。図から分かるように、複数の環状体は、水から様々な種類の生物類を捕捉することができるように設計されている。当該複数の環状体は、柔軟性に富んでおり、生物類の成長コロニーを収容することができる。それと同時に、複数の環状体18により空気が循環されるので、バイオメディアをトリクルタワーにおいて使用した際には、生物類の成長コロニーは十分な量の酸素を消費することができ、廃水から毒素を取り除くに十分な時間を生き永らえることができる。
【0013】
複数の環状体18は、通常、中央芯12と同様の材料から構成される。また、可変の横幅l’を有していてもよい。各環状体18の当該可変の横幅l’は、約10.0mm以上約15.0mm以下の範囲内である。環状体が大きすぎる場合には、生物類で飽和状態となり、生物類が脱落してしまう場合があり、また、さらなる生物類を捕捉することが不可能となる場合がある。
【0014】
図から分かるように、中央芯12の横幅は、複数の環状体の各々の横幅全体に対してかなり小さい。即ち、中央芯12はバイオメディア装置の横幅全体の約1/7〜1/5を占める。実際、バイオメディア装置の背部23から観察した場合、中央芯12はわずかに視認できる程度である。図2に表れているように、中央芯は、横方向に伸びている複数の環状体18により、ほぼ全体が隠れた状態となっている。
【0015】
中央芯12は補強部材20を使用することで任意に強化されていてもよい。当該補強部材20は、通常、中央芯に沿って伸びており、中央芯と互いに連結されている。本明細書において、「補強部材」とは、中央芯とは異なる材料からなるとともに中央芯に付加される、あらゆる材料、物質を意味するものである。補強部材20の材料は、中央芯12の材料よりも高い抗張力を有しており、約50.0ポンド〜約15,00ポンド程度の破壊強度を有している。即ち、補強部材20は、高強度合成フィラメント、テープ、ステンレス鋼ワイヤ、及びその他ワイヤ等を含む、様々な材料から構成され得る。とりわけ有用な材料としては、Kevlar(Kevlarは米国Du Pont社の登録商標である。)、及びTensylon(Tensylonは米国Synthetic Industries社の登録商標である。)の二つが挙げられる。
【0016】
本発明のもう一つの例によれば、バイオメディア装置の製造方法が提供される。当該方法は、毛糸状の材料を編み込み中央芯12を形成する工程と、中央芯12に沿って位置するように、中央芯から複数の環状体18を引き抜く工程と、を備えている。これにはイタリアComez SpA社から購入可能な編み機を使用することができる。さらに、一以上の補強部材20が、中央芯12に様々な方法にて付加されていてもよい。
【0017】
バイオメディア10を強化できる第一の方法として、編み込み段階にて中央芯12の横糸に、一以上の補強部材20を加えることが挙げられる。このような補強部材20は中央芯12の縦糸に対して実質的に平行となるよう配置されていてもよく、中央芯12の複合構造中に縫い込まれていてもよい。このような補強部材により、中央芯の伸長強度を損なうことなく、中央芯12の幅を従来のバイオメディアの中央芯よりも縮小させることができる。
【0018】
一実施形態において、二つの補強部材20が使用されており、一部材ずつ中央芯12の各側面に配置されている。再び図1について言及する。図1には二つの補強部材24、26が示されており、当該補強部材は外壁を成している。
【0019】
バイオメディア10を強化できる第二の方法として、編み込み工程の後、撚り合わせ操作において、一以上の補強部材20を導入することが挙げられる。この方法によれば、張力が付与された補強部材を中央芯12へと平行に導入することができ、中央芯12はこれら補強部材20の周りを覆った状態となる。
【0020】
加えて、補強部材20を組み込む上記第一の方法及び第二の方法が組み合わされていてもよい。即ち、編み込み工程の間に一以上の補強部材20を中央芯12へと配置し、そして、その後の撚り合わせ工程の間に一以上の補強部材20を導入してもよい。これら補強部材20は、同じものでも異なるものでもよい(例えば、編み込み工程においてはKevlarを用い、撚り合わせ工程においてはステンレス鋼ワイヤが導入されてもよい。)。
【0021】
本発明のさらなる他の例によれば、上記バイオメディア装置10の使用方法が提供される。バイオメディア装置10はトリクルタワーや吸水口を備える発電所外部に使用され得る。
【0022】
廃水処理のためトリクルタワーにおいて使用する場合は、環状コードでできた複数のバイオメディアスタンドがトリクルタワー内に垂直に吊るされる。廃水がバイオメディアスタンドへと滴り落ちると、微生物が当該スタンド、特に環状体の内側及び環状体周り、にて継続的に成長する。
【0023】
このようなバイオマス重量の増加によって、バイオメディアスタンドは、伸びやすくなる、若しくはクリープを引き起こしやすくなる。仮にこのようなことが起こった場合、バイオメディアスタンドは撓み、隣接のものを侵す虞がある。バイオメディアの重量が増加すると、このような撓みによりバクテリアが隣接して増殖し、ブリッジを形成して、廃水浄化プロセスの劣化を伴うこととなる。しかしながら、上述の本発明のバイオメディア構造によれば、中央芯12が幅狭であるため、上記のクリープにかかる問題を低減することができる。これは、トリクルタワー内の個々のバイオメディアが比較的小さな横幅を有しており、各バイオメディア装置間に余分にスペースをとることができるからである。
【0024】
さらに、補強部材20を有することで、本発明に係るワイヤ及びフィラメント状構造の伸びを低減することができる。これらワイヤ等に沿って、本発明にかかるバイオメディア10は、1フィートあたりに保持される生物の重量について、従来の構造を有するバイオメディアよりも大きな重量を保持することができるものと考えられる。本発明者らは、本発明にかかるバイオメディア装置10が、1フィートあたり300ポンド以上の重量を保持できることを見出している。このことは、バイオメディアが引き起こすリスクを低減でき、また、トリクルタワー内で使用している間に生じる破断を軽減することもできるという有利な点を有する。さらにこのことで、トリクルタワーは、微生物の増殖を減らすための保守が必要となる前までに、より多くの廃水を処理することが可能となる。
【0025】
変更例において、Kevlar、Tensylon、ワイヤ等は、撚り合わせ工程をすることなく、張力付与の下で導入され得る。そして、基礎となる小さな領域が全て互いに正確な位置に配置されるように、編み込み構造がトリクルタワーへと取り込まれる。この構成により、メディア構造全体に空気が最大限に供給される。
【0026】
他の実施例において、本発明にかかるバイオメディア10は、発電所の受水口から引き込まれる水の処理に用いられてもよい。多くの場合、発電所の受水口は、通常、湖のような多量の水がある所にて成長する稚貝を引き込んでいる。当該稚貝は最終的に成体となり、発電所の濾過システムに深刻なダメージを与える虞がある。この問題に対応するため、本発明にかかるバイオメディア10の支持体が、発電所の受水口の外側に沈められていてもよい。複数の環状体18により稚貝は発電所へと引き込まれる前に捕捉されるため、発電所内において育つ稚貝を減らし、そのことによって、上述の発電所濾過システムへのダメージを最小限とすることができる。
【0027】
当業者は、本発明の範囲から逸脱しない範囲で、本明細書に記載される変形例、変更例、及び他の実施例に想到し得るであろう。従って、本発明は、上記詳細な説明に限定されることはない。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本発明にかかる環状コードでできたバイオメディアの正面図である。
【図2】図1に示された環状コードでできたバイオメディアの背面図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
延在する中央芯と、該中央芯に連結された少なくとも一つの補強部材と、前記中央芯の長手方向に沿って位置する複数の環状体と、を備えるバイオメディア装置。
【請求項2】
前記中央芯が毛糸状の材料で構成されている、請求項1に記載のバイオメディア装置。
【請求項3】
前記毛糸状の材料には連続フィラメント又は紡糸繊維のうちの少なくとも一つが含まれている、請求項2に記載のバイオメディア装置。
【請求項4】
前記少なくとも一つの補強部材が、前記毛糸状の材料よりも高い引張り強度を有するものである、請求項2に記載のバイオメディア装置。
【請求項5】
前記毛糸状の材料が、ポリエステル、ポリアミド、ポリ塩化ビニリデン、及びポリプロピレンからなる群より選ばれた材料である、請求項2に記載のバイオメディア装置。
【請求項6】
前記毛糸状の材料が編物構造とされており、少なくとも一つの前記補強部材が前記中央芯に縫い込まれている、請求項2に記載のバイオメディア装置。
【請求項7】
前記中央芯の幅が、約5ミリメートル以下である、請求項1に記載のバイオメディア装置。
【請求項8】
前記中央芯の幅が、前記バイオメディア装置の横幅全体の約1/7〜1/5程度の大きさである、請求項1に記載のバイオメディア装置。
【請求項9】
前記少なくとも一つの補強部材が、前記中央芯に沿って伸びるとともに、前記中央芯と互いに連結されている、請求項1に記載のバイオメディア装置。
【請求項10】
前記少なくとも一つの補強部材が、少なくとも部分的に前記中央芯に編み込まれている、請求項1に記載のバイオメディア装置。
【請求項11】
前記少なくとも一つの補強部材及び前記中央芯が、互いに撚り合わされている、請求項1に記載のバイオメディア装置。
【請求項12】
前記少なくとも一つの補強部材が、緊張して前記中央芯に導入されている、請求項1に記載のバイオメディア装置。
【請求項13】
前記少なくとも一つの補強部材が、高強度合成フィラメント、テープ、及びステンレス鋼ワイヤからなる群より選ばれた材料からなる、請求項1に記載のバイオメディア装置。
【請求項14】
延在する中央芯を備え、該中央芯の幅が約10.0ミリメートル以下であり、
前記中央芯に沿って位置する複数の環状体を備える、バイオメディア装置。
【請求項15】
前記中央芯の幅寸法が約3.0mm以上約8.0mm以下である、請求項14に記載のバイオメディア装置。
【請求項16】
さらに、少なくとも一つの補強部材を備える、請求項14に記載のバイオメディア装置。
【請求項17】
延在する中央芯と、水から生物類を捕捉するために前記中央芯に沿って位置する複数の環状体と、を備えるバイオメディア装置であって、
捕捉された前記生物類を、1フィートあたり約150.0〜約300.0ポンド保持できるように構成されている、バイオメディア装置。
【請求項18】
さらに、前記延在する中央芯に連結された補強部材を備える、請求項17に記載のバイオメディア装置。
【請求項19】
延在する中央芯、該中央芯に連結された少なくとも一つの補強部材、及び前記中央芯に沿って位置する複数の環状体、を備えるバイオメディア装置を供する工程と、
少なくとも一種の生物を含む水を供する工程と、
前記バイオメディア装置を用いて、前記水から前記少なくとも一種の生物を捕捉する工程と、
を備える方法。
【請求項20】
前記中央芯が毛糸状の材料からなる、請求項19に記載の方法。
【請求項21】
前記毛糸状の材料には、連続フィラメント又は紡糸繊維が含まれている、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
さらに、前記バイオメディア装置をトリクルタワーへと配置する工程を備える、請求項19に記載の方法。
【請求項23】
さらに、前記バイオメディア装置を前記水の中に沈めるように配置する工程を備える、請求項19に記載の方法。
【請求項24】
さらに、前記バイオメディア装置を水流中に置く工程を備える、請求項21に記載の方法。
【請求項25】
さらに、延在する中央芯と、該中央芯に連結された少なくとも一つの補強部材と、前記中央芯に沿って位置する複数の環状体とを備える他のバイオメディア装置を供する工程を備え、前記バイオメディア装置が、前記他のバイオメディア装置とは離隔されている、請求項19に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2009−521329(P2009−521329A)
【公表日】平成21年6月4日(2009.6.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−548821(P2008−548821)
【出願日】平成18年12月21日(2006.12.21)
【国際出願番号】PCT/US2006/062506
【国際公開番号】WO2007/076449
【国際公開日】平成19年7月5日(2007.7.5)
【出願人】(508252055)バイオプロセス エイチツーオー エルエルシー (1)
【氏名又は名称原語表記】BioProcessH2O LLC
【住所又は居所原語表記】207 High Point Avenue, Suite 7, Portsmouth, Rhode Island 02871 United States of America
【Fターム(参考)】