説明

バイオリアクターの構造

【課題】第1バイオリアクターから第2バイオリアクターに培養細胞を移動する必要のない、直線的に拡大縮小可能なバイオリアクター装置及びシステムの提供。
【解決手段】直線的に拡大縮小可能なバイオリアクター10が2つの脚部12及び14を含み、各脚部がその上方に位置決めしたセクション16によって連結される。ガス源に接続した通路20及び22を通してバイオリアクター10にガスを導入する。反応体導入用の、また単数又は複数の生成物取り出し用の、またはガス逃出用のガスベントとしての入口31及び33を設ける。外側容積部分24を、バイオリアクター10内の温度制御用のヒーターを格納するように形状付けする。有効容積部分の幅と、高さとを有する内側容積部分の断面はバイオリアクター10の長さ部分を通して一定であり、有効容積が増大した後でも、攪拌状況がバイオリアクター10の長さ方向部分を通して本来一定化される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本件出願は2006年11月15日付で提出した米国仮特許出願番号第60/859,178号の利益を主張するものである。本発明は、任意の所望容積に直線的に拡大縮小可能な廃棄性のバイオリアクターに関し、詳しくは、本発明は、その長さ寸法を増大しつつも、バイオ反応を実施する容積部分内のその他の寸法及びアスペクト比(幅/高さ)を一定に維持して流体動力学を一定に維持するバイオリアクターに関する。
【背景技術】
【0002】
微生物細胞の培養(発酵)又は、動植物細胞の培養(組織培養)は商業上重要な化学的及び生化学的製法である。こうしたプロセスでは、モノクロナール抗体又は酵素のようなタンパク質、ワクチン又はアルコール飲料を含む商業価値のある化学物質を、一般に入手の容易な出発材料を用いて経済的に合成できることから生細胞が使用される。
発酵には、栄養液媒中での生細胞の成長又は管理が含まれる。代表的な発酵バッチプロセスでは、所望の微生物又は真核細胞を、水、栄養物質、溶解ガスからなる培地に配置して所望の培養密度に成長(又は増殖)させる。栄養液媒は、生細胞の生存上必要な且つ成長及び又は複製し続けるための環境条件を最適化する全ての化学物質を含むべきである。現在、代表的な微生物細胞培養プロセスでは、微生物群を、攪拌層型か又は気体流動床型の連続リアクター内で循環する栄養液媒中に懸濁させている。同様に、哺乳動物細胞の試験管培養では細胞をロールフラスコ内で浮遊培養し、又は、表面付着を必要とする細胞の場合は、付着細胞上に栄養媒体を収納させた組織培養フラスコ内で細胞を密集培養させている。そうして維持された生細胞は、栄養混合物中に導入した前駆体物質から単数又は複数の所望の製品を代謝生成する。単数又は複数の所望の生成物は、培養液から精製するか、又は細胞自体から抽出する。
【0003】
現在、バイオテクノロジー工業では、殺菌性及び再使用性を有することから、ステンレス鋼製のバイオリアクター及び配管を製造プロセスで伝統的に使用しているが、こうしたシステムはコスト高な上に、バイオ反応過程での成長に伴って反応容積が増大するので、培養細胞を定期的に移動させる必要もある。しかしながら、大型のリアクターの場合、有効反応容積は培養細胞の容積増大と共に直線的には拡大しないので混合条件が培養細胞容積によって変化し、培養細胞は一様に混合されなくなる。従って、培養細胞を、混合条件を本来同じにするような、幾何形状の異なるバイオリアクターに培養細胞を移す必要があるが、そのためには資本コストを増大させることになる多数のリアクターセット、通常は3つのセットを管理し、更には、培養細胞の移動条件を培養細胞が汚染されないように管理する必要がある。こうした条件はバイオ反応コストを著しく増大させる。
直線的に拡大縮小する反応システムを使用する場合、リアクター内にデッドゾーンを生じさせることなく培養細胞を循環させてバイオリアクター内でバイオ反応を完了させる手段が含まれるべきであり、細胞の剪断条件を回避すべきであり、細胞の成長及び生育力維持用の栄養、酸素又は二酸化炭素を添加する、のみならず所望の適正pHを維持する手段を設ける必要があり、初期状態での殺菌と、その後の所望されざる細胞形式及び細胞毒素の排除とに注意する必要がある。
【0004】
バイオリアクター用のあるシステムでは、バイオリアクターバッグをその上部に配置したモーター又は油圧機器を備える大型テーブルを使用している。モーター/油圧機器はバイオリアクターバッグを錠止して細胞を一定動作させる。また、バイオリアクターバッグはガス及び栄養供給チューブと、廃棄ガス及び廃棄物チューブとを有し、好気性有機物のための空気のようなガスや栄養を供給し、呼気ガス、二酸化炭素その他のような廃棄物を除去することができる。これらのチューブは、バイオリアクターバッグの動きに合わせてガスや流体/固体が一様に動けるように作用する。米国特許第6,190,913号を参照されたい。そうしたシステムでは、資本集約的な設備を損耗しやすい構成部品と共に使用する必要がある他、テーブルと共に使用することのできるバイオリアクターバッグの寸法には、テーブルの寸法と、このテーブルに備わるモーター/油圧機器のリフト能力とによる制限がある。
【0005】
別のシステムでは、両端を可動アームに取り付けた可撓性の長いチューブ状バッグを使用し、充填したバッグを可動アームからU字形に吊り下げ、次いで各アームを互いに交互に上下に動かすことで、バッグ内の流体を揺動させ且つ移動させている。所望であればバッグの中央セクションに制限部を設け、混合動作をより均一化させることができる。このシステムでは、特殊形状のバッグが必要であり、液体を移動させるための油圧機器その他のリフティング装置が必要であるし、その重さから、バッグの寸法及び容積には設備のリフティング能力とバッグ強度による制限がある。
【0006】
選択的に加圧及び収縮させ得る1つ以上のバッグを、発酵層、混合バッグ、貯蔵バッグその他、のような廃棄性のバイオバッグと組み合わせて使用することで改善が見られた。バッグの外側選択部分の周囲に単数又は複数の圧力バッグを配置し又は、そうした単数又は複数の圧力バッグをバッグの小部分内に収納し得る。単数又は複数の圧力バッグを選択的に加圧及び収縮させることでバッグ内で流体を移動させ、かくして、ダメージを伴う剪断力又はフォームを生じさせることなく、バッグ内で細胞を確実に浮遊させ、混合及び又はガス及び又は栄養物/排泄物を移動させることができる。
あるいは、ガスをバッグ内に導入するスパージャーその他のデバイスを収納した静止(移動しない)バッグを選択しても良い。この場合、ガスがバッグ内の流体を移動させ、ガス、栄養物、廃棄物を混合及び移動させる。
【0007】
米国特許第5,565,015号では、プラスチック容器内にシールした、平坦な、膨張性の、多孔質チューブが使用される。このチューブはガス圧力下に膨張してバッグ内にガスを流入させる。ガスを付加しない場合はチューブは潰れて各孔を実質的に閉じてバッグからの液漏れを防止する。
米国特許第6,432,698号では、チューブをバッグ内のガスディフューザーに挿通し且つシールしている。この場合、逆流防止用の弁その他手段が無いので、バッグ内の液体が、ディフューザーからガスラインを経て結局はエアポンプに入るのを防止するためにガスを一定の正圧下に維持する必要があると思われる。
これらの2つの米国特許に開示される構造は何れも、容器内の液体が漏出する可能性があり、漏液が、ガス供給システムのようなシステムの上流側構成部品のバッグの内容物を汚染する恐れがある。更には、何れの発明でも、ガス分与のための別個の構成部品が導入されている。
【0008】
【特許文献1】米国仮特許出願番号第60/859178号明細書
【特許文献2】米国特許第6190913号明細書
【特許文献3】米国特許第5565015号明細書
【特許文献4】米国特許第6432698号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
解決しようとする課題は、第1バイオリアクターから第2バイオリアクターに培養細胞を移動する必要のない、直線的に拡大縮小可能なバイオリアクター装置及びシステムを提供することである。そうした装置及びシステムによれば、バイオリアクター内で一定範囲のバイオ反応条件を使用することが可能となる。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明によれば、直線的に拡大縮小可能な廃棄性のバイオリアクターが提供される。高さ、幅、長さを有するバイオリアクターを参照しての“直線的に拡大縮小可能な”とは、バイオリアクターの、アスペクト比(幅/高さ)を維持したままで長さ方向に拡張自在性があることを意味するものとする。アスペクト比と断面形状とを一定に維持したままでバイオリアクターをある時間にわたり伸ばして行くことで、バイオリアクター内の混合条件を本来一定に保ちつつ、バイオリアクターの有効容積を増大させることが可能となる。この特徴により、培養成長の全期間を通して一つのバイオリアクターで単数又は複数の所望の生成物を得ることができるようになる。
【0011】
本発明のバイオリアクターは、ガス導入手段及びガス排除手段とを含み、また、反応体添加手段と、単数又は複数の所望の生成物を取り出す手段をも含む。
バイオリアクターは、それ自体に折り込み、巻き付け自在であり、又はそれ自体にクランプを取り付けることでシールを形成し得、高分子組成物のような可撓性材料から形成される。可撓性材料は反応体又は生成物を汚染しないものである。
バイオリアクターは、液状反応体がバイオリアクターの外壁の内面に沿って上昇し、次いで反応容積部分内をこの内面から離間する方向に降下するように形状付けされる。
【0012】
バイオリアクターは、外壁の第1内面にして、バイオリアクターの内壁の第2内面と共に閉じた容積部分を形成する第1内面を含む。第1内面及び第2内面は、相互に収斂又は拡開して、バイオリアクター内に導入したガスの影響下に、バイオリアクター内の液状反応体を本来螺旋方向に移動させる少なくとも一部分を有する。
バイオリアクターは、細胞が付着し得る水平又は実質的に水平な表面を持たないように形成される。これは、気泡形成用のガスをそこを通して供給する水平面を使用してこの水平面から細胞を押し出すようにするか又は反応体の内面を角度付けする、又はその両方によって実現し得る。
【発明の効果】
【0013】
第1バイオリアクターから第2バイオリアクターに培養細胞を移動する必要のない、直線的に拡大縮小可能なバイオリアクター装置及びシステムが提供され、本装置及びシステムによれば、バイオリアクター内で一定範囲のバイオ反応条件を使用することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
本発明によれば、廃棄性の、拡張自在のバイオリアクターが提供される。バイオリアクターは、一定のアスペクト比を有し、高さと幅とを含む断面が一定であり、長さが増大されることによってバイオリアクターの有効容積が大きくなる。バイオリアクターの、培養細胞、栄養、1つ以上のガスを導入してバイオ反応を生じさせる有効容積は初期状態では比較的小さい。ここで、“有効容積”とは、バイオリアクターにおいて反応が生じる容積を言うものとする。バイオリアクターの容積の一部には、この有効容積部分の上方に位置決めしたガス収納容積部分が含まれる。拡張は、バイオリアクターが伸び、バイオリアクターの有効容積が増大する方向で行う。バイオリアクターの幅及び高さを含む断面はこの拡張中は一定に維持されるので、混合条件は一定に維持され得かくしてその間の反応条件は一定に維持され得る。これは、ガス導入により生じるリアクター断面内での反応体の循環動作が、バイオリアクターの長さ寸法に関する位置に関わらず同じだからである。
【0015】
バイオリアクターは任意の様式下に伸ばすことができる。かくして、バイオリアクターの、現在使用していない端部を折り開き又は巻き解くことができる。更には、バイオリアクターの未使用部分を一つ以上のクランプを使用して使用中の有効容積部分から分離させ得、また、これらのクランプを連続的に除去することで、ある時間に渡り所望の有効容積を得ることができる。
バイオリアクターの内側容積部分は、反応体が有効容積部分の全ての部分で相互に十分に混合するような形状とされる。かくして、混合が殆ど又は全く生じないデッドゾーンの発生が回避される。
バイオリアクターは、液状反応体を、バイオリアクターの外壁の内面に沿って上昇させ、次いで反応容積内部をこの内面から離れる方向に降下させるように形状付けされる。
バイオリアクターは、外壁の第1内面にして、バイオリアクターの内壁の第2内面と共に閉じた容積部分を形成する第1内面を含む。第1内面及び第2内面は、相互方向に収斂する又は相互に拡開して、バイオリアクター内の液状反応体を、バイオリアクター内に導入したガスの影響下に本来螺旋方向に移動させる少なくとも一部分を有する。
【0016】
バイオリアクターは、細胞がそこに付着し得る水平方向の、又は実質的に水平方向の表面を持たないようにも形成される。これは、気泡を形成するガスをそこを通して供給する水平面を用い、この水平面から細胞を押し出すようにするか、又は、反応体の内壁を角度付けすることによって、又はその両方によって実現し得る。角度付けした内壁は実質的に垂直であることが好ましい。
本発明のバイオリアクターはその1実施例では2つの脚部を有し、これらの脚部がその間部分の橋絡セクションで図1〜7に示すように相互に連結され、又は図8に示すように丸い又は楕円の反応体壁形状を有する。更に、ガス供給源を持つ水平面は図7及び図8に示すように多孔質フィルター又は多孔質膜であり得、あるいは図1〜6に示すように液体内にガスを通す1つ以上のスパージャーその他の、ガス通過性のガス供給デバイスを含み得、何れの場合でも、ガスは細胞を同伴しつつ上昇するか、又は液体中に送られるに際して細胞を押し上げる。
【0017】
バイオリアクターには、その内部温度を制御するヒーターを格納する外部容積部分を設ける。バイオリアクター内に反応体を導入する又はバイオリアクターから生成物を取り出すための1つ以上の入口を設ける。
バイオリアクターの長さ方向に沿ってバイオリアクターに付着させるなどしてバイオリアクターと一体係止し得る少なくとも1つの有孔通路によって、バイオリアクターの有効容積内にガスを導入する、或いは、単数又は複数の有孔通路を、スパージャーチューブのようにバイオリアクターから分離形成し得、バイオリアクターの有効容積が増大した場合にバイオリアクター内に漸次挿通させ得る。バイオリアクターの、有孔通路を挿通する部分からの漏出防止用の従来のシール手段を設け得る。有孔通路は、反応体又は生成物を汚染しない高分子組生物の様な可撓性材料、又はセラミック、グラスマットまたは焼結ガラス材料のようなガラス、又は、反応体又は生成物を汚染しない焼結ステンレス鋼から形成され得る。
【0018】
好適なプラスチックは親水性又は疎水性のものであり得る。しかしながら、親水性のものである場合は、有孔通路内の空気圧を液体侵入圧力に一定化するか又はそれ以上として液体を有孔通路の外側に維持させる、又は弁または疎水性フィルターの如きを設けて上流側を遮断し、有孔通路及び又はガス供給源の上流側からの液体横溢が生じないことが保証されるべきである。プラスチックは生来、親水性又は疎水性のものであり得、又は所望の特性を持たせるように表面処理され得る。プラスチックは単層又は所望であれば複層化され得る。複層化通路の1実施例のものは、多孔質のプラスチック層を、デブリを捕捉し得且つ捕捉したデブリを有孔通路を詰まらせないようにする、開口度の高いプレフィルター又は深さフィルターで覆った多孔質プラスチック層を有する。孔寸法は、ガスの所望の泡沫寸法に基づいて選択されるが、ミクロ孔(0.1〜10μm)のものからマクロ孔(10μm以上)の範囲のものであり得、微孔質フィルター、織った繊維又はフィルター、多孔質の織らない材料、例えばTyvek(商標)シート材、水槽用フィルタでよく見かけるモノリス又はパッドその他による如き膜又はフィルターから形成され得る。選択するプラスチックはその内部で成長する細胞に悪影響が及ばないよう、バイオリアクター環境との共存性を有するべきである。好適なプラスチックには、これに限定しないが、ポリエチレン又はポリプロピレンのようなポリオレフィン、ポリスルフォン又はポリエーテルスルフォンのようなポリスルフォン(polysulfones)、ナイロン、PTFE樹脂、PEF、PVDF、PETその他が含まれる。
【0019】
導入されるガスは、反応体として、また反応体攪拌手段として機能する。
図1を参照するに、バイオリアクター10は2つの脚部12及び14を含み、これらの脚部はその上方に位置決めしたセクション16によって連結される。セクション16の上方にガス容積部分18を設け、ここに未反応のガスを収集する。ガス源(図示せず)に接続した通路20及び22を通してバイオリアクター10にガスを導入する。反応体導入用の、また単数又は複数の生成物を取り出すための、またはガスを逃出させるガスベントとしての入口31及び33を設ける。外側容積部分24を、バイオリアクター10内の温度制御用のヒーター(図示せず)を格納するように形状付けする。図3に示すように、有効容積部分の幅28と、高さ29とを有する内側容積部分26の断面はバイオリアクター10の長さ部分を通して一定である。高さ30は有効容積部分の高さであるが、反応体の添加又は生成物の取り出しに伴って若干変化する。かくして、有効容積が増大した後でも、矢印32及び34で示すような攪拌状況がバイオリアクター10の長さ方向部分を通して本来一定化される。
【0020】
図2を参照するに、バイオリアクターの拡張段階が例示される。第1段階ではバイオリアクター10Aで第1バイオ反応段階を実施する。バイオリアクター10Aの部分35はバイオリアクター自体に折り込まれている。第2段階では折り込まれた前記部分35を折り開き、バイオリアクター10Aの長さ部分に沿って拡張してバイオリアクター10Bとし、第2バイオ反応段階を実施する。第3段階では折り込まれた部分35を折り開いて形成したバイオリアクター10Bを長さ方向に沿って拡張してバイオリアクター10Cとし、第3バイオ反応段階を実施する。図示されるように、バイオリアクターの、バイオリアクター10A、10B、10Cの最大幅及び最大高さを含む断面は一定に維持される。断面の寸法変化は、反応体添加及び又は生成物取り出しによって多少生じたとしても僅かである。有効容積部分の高さは本来一定に維持される。バイオ反応が完了するとバイオリアクター10Cは廃棄され得る。
図4を参照するに、本発明のバイオリアクターの別の形態が番号11で示される。バイオリアクター11は、非拡張部分37がバイオリアクター自身に折り込まれるのではなく、むしろバイオリアクター自身に巻き付けられる点を除き、本来バイオリアクター10A(図2)と同じ構造を有する。非拡張部分37はバイオ反応の所望の過程で所望の長さ分巻き解かれる。使用に際し、バイオリアクターは図2に例示する実施態様下に用いられ、バイオ反応が完了し生成物が取り出されると、容認され得るコストで廃棄され得る。
【0021】
図5を参照するに、バイオリアクター13が例示され、図1のバイオリアクターと同じ形態を有している。バイオリアクター13はクランプ手段46及び48によって分離容積部分40、42及び44の各セグメントに分離されている。反応体を導入し、生成物を取り出し、又はガスを逃出させ得るガスベントとしての入口31及び33を設ける。バイオリアクター13の有効容積を増やしたい場合は、クランプ46を釈放して分離容積部分40と42とを一体化させ、有効容積を更に増やしたい時はクランプ48を釈放して分離容積部分40、42、44を一体化させる。図5のバイオリアクターによれば、バイオ反応を実施するためのもっと速いプロセスを使用することが可能となる。クランプ46及び48を閉じた状態で初期バイオ反応を分離容積部分40と44とで同時に実施し得、クランプ46及び48を釈放した後に、分離容積部分40、42、44で最終バイオ反応を実施し得る。かくして、バイオリアクターの倍の容積部分を所望の反応状況下に利用し得、バイオリアクターの残りの単数又は複数の容積部分を所望のスケジュールで利用できるので、初期バイオ反応を、現用のバイオリアクターと比較して倍の容積で実施することができる。
【0022】
図6を参照するに、バイオリアクター49が容積部分50、52、54、56、58、60、62、64、66、とクランプ51、53、55、57、59、61、63、65を含んでいる。初期バイオ反応は容積部分50、52、54、62、64、66で同時に実施する。バイオリアクター49の容積を増やしたい時はクランプ51、53、55、61,63、65を釈放して容積部分50、52、54を容積部分56と一体化させ、容積部分62、64、66を容積部分60に一体化させ、そこで第2バイオ反応を実施する。バイオリアクター49の容積を更に増やしたい場合はクランプ57,59を釈放して容積部分50、52、54、56、58、60、62、64、66の全てを一体化させる。図6のバイオリアクターによれば、6つの容積部分内で初期バイオ反応を同時に実施し、これら6つの容積部分を一体化させて所望に応じて順次追加容積部分と一体化させ得るので、バイオ反応を実施するためのもっと急速なプロセスを使用することが可能となる。容積部分50、52、54、62、64、66は、バイオリアクターの残りの容積部分と一体形成し得、又はそれら残りの容積部分とは別に形成することができる。別形成する場合は、接着材又は空気圧力を使用して各容積部分を残りの容積部分にシールすることが出来る。
【0023】
或いはバイオ反応を、例えば容積部分50のような1つの容積部分で開始し、次いで必要に応じて1つ以上の追加の容積部分52、54、62、64、66を順次開放して寸法を漸増させるようにして順次実施することができる。
図7を参照するに、バイオリアクター70が示され、図1〜6を参照して上述した様式下に拡張し得る長さを有し、可撓性材料から形成されている。反応体を導入し、生成物を取り出し、又はガスを逃出させるガスベントとしての入口31及び33を設け、脚部72及び74を、これらの脚部の下方に位置決めしたセクション76によって連結し、ガスを、セクション76の内部に位置決めした有孔通路78を通して導入し、バイオリアクター70の内部温度を制御し且つバイオリアクター70に対する支持を提供する2つのヒーター80及び82を設ける。
【0024】
図8にはバイオリアクター81が示され、図1〜6を参照して上述した様式下に長さ方向に拡張し得る可撓性材料から形成されている。反応体を導入し、生成物を取り出し、又はガスを逃出させるガスベントとしての入口31及び33を設け、反応体を、そこを通してバイオリアクター81にガスが流入するところの容積部分86の上方に位置決めした容積部分84の内部に位置決めし、ガスを、ガス透過性膜88を通して、この膜の細胞を破裂させないように制御しつつ送り、反応体の表面92の下方には、反応体におけるフォーム形成と細胞破裂とが回避されるように、通過ガスを制御する第2膜90を位置決めする。
【0025】
本発明のバイオリアクターを、可撓性プラスチック材料から形成し得る。熱可塑性プラスチックを使用するのが好ましく、そうしたプラスチックには、これに限定しないが、ポリエチレンやポリプロピレンのようなポリオレフィンホモポリマー、ポリオレフィンコポリマー、ナイロン、エチレンビニルアセテートコポリマー(EVAコポリマー)、エチレンビニルアルコール(EVOH)その他が含まれる。多層フィルム又は多層シートをバイオリアクター材料として使用することが好ましく、そうした多層フィルム又は多層シートは一般に、直鎖状低密度ポリエチレンのようなポリエチレン又はポリプロピレンの幾つかの層と、各相を相互に付着させ及び又はバイオリアクター外へのガス移行を阻止するために使用する、例えばエチレンビニルアセテートコポリマーやエチレンビニルアルコールのようなその他の層とから作製する。プラスチックは、その内部の作用を目視検査しつつ行い得るよう、透明であることが好ましい。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明のバイオリアクターの斜視図である。
【図2】本発明のバイオリアクターの拡張段階を例示する斜視図である。
【図3】バイオ反応の有効容積の幅及び高さを含む本発明のバイオリアクターの断面図である。
【図4】本発明の他のバイオリアクターの斜視図である。
【図5】クランプを使用する本発明のバイオリアクターの斜視図である。
【図6】クランプを使用する本発明の他のバイオリアクターの斜視図である。
【図7】本発明の他のバイオリアクターの断面図である。
【図8】本発明の他のバイオリアクターの断面図である。
【符号の説明】
【0027】
10、10A、10B、10C、11、13、49、70、81 バイオリアクター
12、14、72、74 脚部
16、76 セクション
18 ガス容積部分
20、22 通路
31、33 入口
24 外側容積部分
28 幅
29 (内側容積部分26の)高さ
30 (有効容積部分の)高さ
32、34 (攪拌状況を示す)矢印
35 (バイオリアクター10Aの)部分
37 (バイオリアクター11の)非拡張部分
46、48 クランプ手段
40、42、44 分離容積部分
50、52、54、56、58、60、62、64、66 容積部分
51、53、55、57、59、61、63、65 クランプ
78 有孔通路
80、82 ヒーター
84、86 容積部分
88 ガス透過性膜
90 第2膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性材料から形成され、一定のアスペクト比と、調節自在の長さとを有するバイオリアクター。
【請求項2】
可撓性材料から形成され、橋絡セクションによって連結した2つの脚セクションを含む内側容積部分と、各脚セクション内にガスを導入するための手段と、脚セクションの長さ方向に沿ってガスを脚セクション内に導入するための手段と、バイオリアクターに反応体を導入するための手段と、バイオリアクターから生成物を取り出すための手段と、を含み、一定のアスペクト比と、調節自在の長さとを有するバイオリアクター。
【請求項3】
折り込んだバイオリアクターを長さ方向に折り開くことにより長さ調節自在である請求項1のバイオリアクター。
【請求項4】
折り込んだバイオリアクターを長さ方向に折り開くことにより長さ調節自在である請求項2のバイオリアクター。
【請求項5】
巻き付けたバイオリアクターを長さ方向に巻き解くことにより長さ調節自在である請求項1のバイオリアクター。
【請求項6】
巻き付けたバイオリアクターを長さ方向に巻き解くことにより長さ調節自在である請求項2のバイオリアクター。
【請求項7】
バイオリアクターの長さ方向に沿って位置決めしたクランプの一つ又は複数を釈放させることにより長さ調節自在である請求項1のバイオリアクター。
【請求項8】
バイオリアクターの長さ方向に沿って位置決めしたクランプの一つ又は複数を釈放させることにより長さ調節自在である請求項2のバイオリアクター。
【請求項9】
橋絡セクションが脚セクションの上方に位置決めされる請求項2のバイオリアクター。
【請求項10】
橋絡セクションが脚セクションの下方に位置決めされる請求項2のバイオリアクター。
【請求項11】
細胞が付着し得る水平又は実質的に水平な表面を有さないように形成した請求項1のバイオリアクター。
【請求項12】
細胞が付着し得る水平又は実質的に水平な表面を有さないように形成した請求項2のバイオリアクター。
【請求項13】
細胞が付着し得る水平又は実質的に水平な表面を有さず且つ丸形状に形成した請求項1のバイオリアクター。
【請求項14】
細胞が付着し得る水平又は実質的に水平な表面を有さず且つ丸形状に形成した請求項2のバイオリアクター。
【請求項15】
橋絡セクションが脚セクションの下方に位置決めされ、ガスを導入するための手段が、橋絡セクション内に位置決めした有孔通路を通して導入される請求項2のバイオリアクター。
【請求項16】
一定の断面を有する請求項1のバイオリアクター。
【請求項17】
断面が長さ方向に渡り一定に維持される請求項1のバイオリアクター。
【請求項18】
ヒーターを格納するための容積部分を外側に設けた請求項2のバイオリアクター。
【請求項19】
ガスを導入するための手段が、1つ以上の多孔質材料層から形成した有孔通路である請求項2のバイオリアクター。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2008−212143(P2008−212143A)
【公開日】平成20年9月18日(2008.9.18)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2007−295758(P2007−295758)
【出願日】平成19年11月14日(2007.11.14)
【出願人】(390019585)ミリポア・コーポレイション (212)
【氏名又は名称原語表記】MILLIPORE CORPORATION
【Fターム(参考)】