説明

バイオリアクター及びその運転方法

【課題】ガスリフトにより循環される流量を制御可能にすることにより、反応開始初期時におけるガス不足や反応促進時におけるガス過剰の問題を緩和することができるバイオリアクター及びその運転方法を提供する。
【解決手段】本発明のバイオリアクターは、反応容器を構成する本体部1と、本体部1の外部に配置された気液分離槽2と、一端3aが本体部1の内部に浸漬され他端3bが気液分離槽2に接続された排出管3と、一端4aが気液分離槽2の底部2aに接続され他端4bが排出管3よりも下方の本体部1に接続された復流管4と、本体部1に原料物質Mを投入する供給口5と、供給口5よりも上方に配置され本体部1から処理液Uを取り出す取出口6と、供給口5と取出口6との間に配置され生体触媒Cを捕集するセパレータ7と、排出管3の流量を調整する流量調整手段8と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、原料物質と生体触媒とを溶液中で反応させて有用物質を生成し、該有用物質を含む処理液を取り出すバイオリアクター及びその運転方法に関し、特に、ガスリフトにより循環される流量を制御可能に構成したバイオリアクター及びその運転方法に関する。
【背景技術】
【0002】
バイオリアクターは、原料物質と生体触媒との組み合わせにより、種々の有用物質を取り出すことができる装置であり、生化学工業における重要な装置である。かかるバイオリアクターにより取り出される有用物質の一つにバイオエタノールがある。バイオエタノールは、サトウキビやトウモロコシのようなバイオマス資源(植物資源)を発酵・蒸留して生成されるエタノールのことである。かかるバイオエタノールは、燃料として利用することができるとともに再生可能なエネルギーである。現在主流のガソリンや重油は化石燃料であり、枯渇してしまうと再生できないという問題があるが、バイオエタノールは原料である植物を育成することによりいくらでも再生が可能である。また、バイオエタノールは、植物を原料としているため、その育成段階における光合成により二酸化炭素を吸収することができる。すなわち、バイオエタノールの燃焼により二酸化炭素が発生したとしても、育成段階で二酸化炭素を吸収しており、差引ゼロと考えることができる。したがって、バイオエタノールは、燃焼させても二酸化炭素が増加することがなく、地球温暖化の防止に大きく貢献する燃料であり、国際的に注目されている燃料である。
【0003】
かかるバイオリアクターには種々の形態のものが存在するが、回分式と連続式に大別することができる。回分式は、バイオリアクターに生体触媒と原料物質を入れて反応を開始し、温度やpH等の制御を行いながらバイオリアクター内で反応を最終段階まで行わせる方法である。一方、連続式は、バイオリアクターに原料物質を連続的に供給し、同時にバイオリアクターから生成物を連続的に取り出す方法である。現在のバイオリアクターは、雑菌汚染によるリスク回避の点から回分式が主流であるが、スケールメリットや生産効率等の観点からは連続式の方が優れている。連続式バイオリアクターには、例えば、特許文献1〜特許文献3に記載されたものが提案されている。
【0004】
特許文献1に記載されたバイオリアクターは、連続式流動床型バイオリアクターであり、下から順に、導入部、生体処理部及び固液分離部の複数の筒部材が連結された管体と、管体の下方部に設けられた供給口と、管体の生体処理部内に設けられた区画用の小孔板と、管体の上方部に設けられた取出口と、管体の固液分離部内であって中央部に設けられた筒状の隔壁とを備えている。かかるバイオリアクターは、内部に原料物質と生体触媒を充填して空気を供給することにより生体触媒を流動させながら、原料物質の発酵等の生物的処理を行い、得られた処理液を取出口から排出している。この過程において、生体触媒及び処理液は、水流発生手段により管体の上方部に上昇することとなるが、生体触媒及び処理液は隔壁の内部で流動し、処理液と一部の生体触媒が隔壁の外部に流出して取出口側へと押し出される。隔壁の外部は水流発生手段による上方向きの水流の影響を受けにくいため、生体触媒は途中で自重により下降することとなり、処理液のみが取出口へ移動し、処理液と生体触媒を分離している。
【0005】
また、特許文献2に記載されたバイオリアクターは、流入管から流入する廃水を嫌気性雰囲気中で処理して越流堰から流出させる流動床型バイオリアクターと、このバイオリアクターの上部に接続された脱硫塔と、前記バイオリアクター内の液面に設置されたエアリフト管と、脱硫塔からの処理ガスを前記エアリフト管の下端部に戻すブロアとを備え、前記エアリフト管上部の廃水を前記バイオリアクターの流入管に導いたことを特徴とする嫌気性バイオリアクター装置である。そして、流入管からバイオリアクター内に流入する廃水は、嫌気性雰囲気中で処理され、越流堰から処理水となって系外に流出する。また、バイオリアクター内で発生した硫化水素は脱硫塔に導かれて処理され、処理ガスがブロアによりエアリフト管に戻されエアリフト作用によって廃水を上昇させるとともに、ストリッピングによって廃水中の硫化水素を追出している。
【0006】
また、特許文献3に記載されたバイオリアクターは、発酵用反応室を有する反応容器と、前記反応室に流入水を導入する機構と、浄化された水を溢流によって回収する溢流溝と、該溢流溝よりも低いレベルに配置されスラッジ及びガスを含む液体を回収する回収装置と、回収された液体からガスを分離する分離室と、スラッジを含む液体を反応容器の下底部分に戻す下降パイプと、を有している。かかるバイオリアクターは、ガスのリフト作用により上昇したスラッジを分離して反応容器に戻していることから、自己循環型のバイオリアクターということができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2002−281958号公報
【特許文献2】特開平6−142683号公報
【特許文献3】特開昭61−71896号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1のような生体触媒の浮沈により流動床を形成する膨張式のバイオリアクターでは、生物的処理により発生するガスの発生速度との関係から、反応開始初期には、ガス発生量が少なく、十分な撹拌が得られず、定常状態に達するまでに時間を要してしまうという問題があった。また、反応の促進によりガス発生量が増加して液流量が過剰になると、微生物の粒子が系外に流出してしまい、微生物の補充や微生物により汚染された設備の清掃等を必要とし、装置の復旧やメンテナンスに障害をきたすという問題があった。さらに、特許文献1のように、生物的処理により発生するガスをリフトガスとして利用しているバイオリアクターでは、ガス発生量の制御が困難であるという問題もあった。また、リフトガスの供給源として外部エアを導入することも考えられるが、ポンプ等の設備を設けなければならず、コストアップやエネルギー効率の低下をもたらすという問題があった。
【0009】
また、特許文献2のように、バイオリアクター内で発生したガスの処理ガスを循環させてリフトガスとする場合であっても、反応開始初期には、ガス発生量が少なく、十分なリフトガスをエアリフト管に供給することができず、定常状態に達するまでに時間を要してしまうという問題があった。また、リフトガスをブロワでエアリフト管に戻しているため、コストアップとなってしまう、エネルギー効率が低下してしまう等の問題もあった。
【0010】
また、特許文献3のような自己循環型のバイオリアクターにおいても、特許文献1及び特許文献2と同様に、反応開始初期時におけるガス不足の問題を生じる。さらに、スラッジを自重で下降させているため、スラッジの性状等により循環する流量や濃度が安定しないと問題があった。加えて、下降パイプが反応容器の内部に配置されていることから、スラッジの性状や流量等を確認することは勿論、これらを制御することも困難であるという問題もあった。
【0011】
本発明は上述した問題点に鑑み創案されたものであり、ガスリフトにより循環される流量を制御可能にすることにより、反応開始初期時におけるガス不足や反応促進時におけるガス過剰の問題を緩和することができるバイオリアクター及びその運転方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明によれば、原料物質と生体触媒とを溶液中で反応させて有用物質を生成し、該有用物質を含む処理液を取り出すバイオリアクターであって、反応容器を構成する本体部と、該本体部の外部に配置された気液分離槽と、一端が前記本体部の内部に浸漬され他端が前記気液分離槽に接続された排出管と、一端が前記気液分離槽の底部に接続され他端が前記排出管よりも下方の前記本体部に接続された復流管と、前記本体部に前記原料物質を投入する供給口と、該供給口よりも上方に配置され前記本体部から前記処理液を取り出す取出口と、前記供給口と前記取出口との間に配置され前記生体触媒を捕集するセパレータと、前記排出管の流量を調整する流量調整手段と、を有し、前記供給口から投入した原料物質と前記本体部内の生体触媒とを反応させて有用物質を生成し、これらを含む溶液を反応ガスの浮力により上昇させ、前記セパレータを通過した前記処理液を前記取出口から放出し、前記セパレータで捕集した前記生体触媒を含む溶液を前記流量調整手段により流量を制御しながら前記排出管から前記気液分離槽に送流し、前記気液分離槽で前記反応ガスを分離し、残留溶液を前記復流管から前記本体部に送戻する、ことを特徴とするバイオリアクターが提供される。
【0013】
前記流量調整手段は、前記本体部の液面から浸漬した前記排出管の深さ、前記本体部の液面から突出した前記排出管の高さ又は前記排出管の流路断面積のいずれかを調整する手段であることが好ましい。
【0014】
例えば、前記深さを調整する手段は、前記取出口の高さを変更可能に構成する手段であり、前記高さを調整する手段は、前記気液分離槽の高さを変更可能に構成する手段又は前記排出管と前記気液分離槽の接続部の高さを変更可能に構成する手段であり、前記流路断面積を調整する手段は、使用する前記排出管の本数を切り替え可能に構成する手段又は使用する前記排出管の配管径を切り替え可能に構成する手段である。
【0015】
また、本発明によれば、原料物質と生体触媒とを溶液中で反応させて有用物質を生成し、該有用物質を含む処理液を取り出すバイオリアクターの運転方法であって、前記生体触媒を含む溶液中に前記原料物質を投入し、前記原料物質と前記生体触媒の反応により生じた反応ガスにより反応溶液を上昇させ、前記反応溶液から前記生体触媒を除去した処理液を系外に放出し、捕集した前記生体触媒を含む溶液を前記バイオリアクターの運転状況に応じて流量を調整しながら気液分離部に送流し、前記気液分離部で前記反応ガスを除去して残留溶液を前記反応容器に送戻する、ことを特徴とするバイオリアクターの運転方法が提供される。
【0016】
例えば、前記バイオリアクターは、運転開始時又は反応促進時に前記気液分離部に送流する流量が増加され、定常運転時又は反応維持時に前記気液分離部に送流する流量が略一定に維持され、運転停止時又は反応抑制時に前記気液分離部に送流する流量が減少されるように制御される。
【発明の効果】
【0017】
上述した本発明のバイオリアクター及びその運転方法によれば、反応ガスのガスリフト作用により反応容器内の溶液を循環させる自己循環型のバイオリアクターであっても、流量調整手段によりガスリフトにより循環される流量を制御可能にすることができ、反応開始初期時におけるガス不足や反応促進時におけるガス過剰の問題を緩和することができる。特に、流量調整手段を排出管の深さや高さや流路断面積を調整する手段とすることにより、ガスリフトにより循環される流量を容易に制御することができる。
【0018】
また、本発明によれば、ガス発生量が少ない場合に循環流量を増加させ、定常状態を維持したい場合に循環流量を一定に維持し、ガス発生量が過剰な場合に循環流量を減少させることができ、バイオリアクターの運転状況に応じて循環流量を制御することができ、ガス発生量に依拠することなく溶液を撹拌することができ、反応開始初期時におけるガス不足や反応促進時におけるガス過剰の問題を効果的に緩和することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係るバイオリアクターの第一実施形態を示す側面断面図である。
【図2】排出管のガス流量Qg、液流量Qf及び浸漬深さ比Hs/(Hs+H)との関係を示す図である。
【図3】第一実施形態の作用を示す図であり、(A)は本体部の液面を高くした状態、(B)は本体部の液面を低くした場合、を示している。
【図4】本発明に係るバイオリアクターの他の実施形態を示す図であり、(A)は第二実施形態、(B)は第三実施形態、(C)は第四実施形態、(D)は第五実施形態、を示している。
【図5】本発明に係るバイオリアクターの他の実施形態を示す図であり、(A)は第六実施形態、(B)は第七実施形態、(C)は第八実施形態、を示している。
【図6】本発明に係るバイオリアクターの第九実施形態を示す図である。
【図7】排出管のガス流量Qg、液流量Qf及び排出管径Dの関係を示す図である。
【図8】第九実施形態の作用を示す図であり、(A)は排出管の流路面積:中の状態、(B)は排出管の流路面積:大の状態、を示している。
【図9】本発明に係るバイオリアクターの他の実施形態を示す図であり、(A)は第十実施形態、(B)は第九実施形態の変形例、(C)は第十実施形態の変形例、を示している。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について図1〜図9を用いて説明する。ここで、図1は、本発明に係るバイオリアクターの第一実施形態を示す側面断面図である。
【0021】
図1に示したバイオリアクターは、原料物質Mと生体触媒Cとを溶液中で反応させて有用物質を生成し、有用物質を含む処理液Uを取り出すバイオリアクターであり、反応容器を構成する本体部1と、本体部1の外部に配置された気液分離槽2と、一端3aが本体部1の内部に浸漬され他端3bが気液分離槽2に接続された排出管3と、一端4aが気液分離槽2の底部2aに接続され他端4bが排出管3よりも下方の本体部1に接続された復流管4と、本体部1に原料物質Mを投入する供給口5と、供給口5よりも上方に配置され本体部1から処理液Uを取り出す取出口6と、供給口5と取出口6との間に配置され生体触媒Cを捕集するセパレータ7と、排出管3の流量を調整する流量調整手段8と、を有し、供給口5から投入した原料物質Mと本体部1内の生体触媒Cとを反応させて有用物質を生成し、これらを含む溶液を反応ガスgの浮力により上昇させ、セパレータ7を通過した処理液Uを取出口6から放出し、セパレータ7で捕集した生体触媒Cを含む溶液を流量調整手段8により流量を制御しながら排出管3から気液分離槽2に送流し、気液分離槽2で反応ガスgを分離し、残留溶液を復流管4から本体部1に送戻することを特徴とする。なお、図1において、説明の便宜上、生体触媒Cを○、反応ガスgを●で表示している。
【0022】
前記本体部1は、両端が閉じた筒形状をなした反応容器であり、セパレータ7の下方の空間が主たる反応処理層を形成している。図1では、高さ方向が幅方向よりも長い塔型の場合を図示しているが、幅方向が高さ方向よりも長い槽型であってもよい。また、本体部1は、反応容器を構成するため、生体触媒Cや反応生成物(有用物質を含む処理液U、反応ガスg等)により腐食し難い素材により形成される。かかる素材は、バイオリアクターの用途に応じて選別されるものであるが、例えば、ガラス素材やステンレス等の金属素材が使用される。
【0023】
前記気液分離槽2は、排出管3により送流される溶液から、反応ガスg(例えば、二酸化炭素)を分離する機器である。気液分離槽2まで送流される溶液は反応ガスgの浮力によって送流されるため、気液分離槽2は本体部1内の溶液の液面よりも上方に配置される。気液分離槽2は、例えば、底部2aが徐々に縮径した漏斗形状を有し、側面から気液分離槽2内に放出された生体触媒C(○)を含む溶液を自重により底部2aに収集し、反応ガスg(●)を気液分離槽2の上部空間2bに収集して、反応ガスgを分離できるように構成されている。気液分離槽2の上部には排気口2cが接続されており、分離された反応ガスgを系外に放出している。排気口2cには、反応ガスgの流量を計測するガス流量計を配置してもよい。なお、本発明のバイオリアクターに使用される気液分離槽2は、図示したものに限られず、気体と液体を分離できる機器であればよい。
【0024】
前記排出管3は、セパレータ7で捕集した生体触媒Cを含む溶液を気液分離槽2に送流する流路を形成している。かかる溶液の送流には反応ガスgの浮力を利用しているため、排出管3は上下に蛇行した部分を有しないように配置することが好ましい。また、いわゆるガスリフトポンプの原理を利用しているため、排出管3の径の大きさ、長さ、形状等は、使用されるバイオリアクターに応じてガスリフトポンプ可能な範囲で設計される。図1では、排出管3を略L字状に形成し、一端3a側を鉛直方向に他端3b側を水平方向に配置している。また、排出管3の一端3aは、本体部1内の溶液に浸漬され、セパレータ7に接続されている。なお、排出管3の他端3bは、気液分離槽2の側面に接続されている。
【0025】
前記復流管4は、気液分離槽2で分離された溶液を本体部1内に送戻する流路を形成している。かかる復流管4は、生体触媒Cを本体部1に戻すための流路であり、本体部1内では上昇流が形成されているため、他端4bをできるだけ本体部1の下方に接続することが好ましい。図1では、復流管4の他端4bは、本体部1の側面から内部に挿入されて溶液内に浸漬されており、原料物質Mの供給口5の上方に配置されている。ただし、図示した配置に限定されるものではなく、供給口5の下方に復流管4の他端4bを配置するようにしてもよい。なお、復流管4の他端4bは、本体部1内の溶液中に浸漬された部分の周面に複数の放出孔を形成したり、本体部1の側面に接近するように拡径したノズルを接続したりして、生体触媒Cが本体部1内で略均等に送戻されるようにしてもよい。
【0026】
また、復流管4には、図1に示したように、生体触媒Cの濃度や活性度を調整する気体や液体(例えば、空気、酸素、水、酸素水等)を投入する補給口4cが接続されていてもよいし、本体部1内の状況をモニタリングする計器4dが接続されていてもよい。計器4dは、例えば、流速計、温度計、pH(水素イオン指数)計、酸化還元電位(ORP)計、濃度計、流量計、圧力計、粘度計、光強度計、循環溶液を採取するサンプリング装置等であり、バイオリアクター内の特性、循環溶液の特性、生体触媒Cの特性等をモニタリングするために必要な計器類であればよく、複数の計器4dを配置してもよい。本発明では、復流管4の流量を計測する必要があるため、計器4dとして少なくとも流量計を配置することが好ましい。
【0027】
前記供給口5は、原料物質Mを本体部1内に投入する流路を形成している。図1に示した供給口5は、本体部1の略中央部に物質原料Mを投入することができるように、供給口5の先端が本体部1内の溶液中に浸漬されている。また、物質原料Mを投入し易くするように先端部を下方に向けて湾曲させるようにしてもよい。かかる供給口5は、原料物質Mと生体触媒Cとが反応する層をより広く確保するために、本体部1の下部に接続することが好ましい。また、供給口5は、本体部1に複数接続されていてもよい。このとき、各供給口5を偏心して本体部1に接続することにより、本体部1内で旋回流を発生させることができ、攪拌効率を向上させることができる。また、供給口5の近傍に攪拌器を配置してもよいし、本体部1内の溶液中に浸漬された部分の周面に複数の放出孔を形成してもよいし、本体部1の内面に接近するように拡径した放出ノズルを接続してもよい。
【0028】
前記取出口6は、有用物質を含む処理液Uを系外に取り出す流路を形成している。取出口6は、本体部1の側面上部に配置されており、本体部1内の溶液のオーバーフロー分を放出することができるように構成されている。図1に示した第一実施形態では、複数の取出口6(例えば、第一取出口61,第二取出口62,第三取出口63)が接続されており、第一取出口61〜第三取出口63のそれぞれにバルブ64が接続されており、使用する取出口6を切り替えることができるように構成されている。ここでは、第二取出口62のバルブ64を開とし、第一取出口61及び第三取出口63のバルブ64を閉として、第二取出口62から処理液Uを系外に取り出している。このように、複数の取出口6を本体部1に高さを変えて配置することにより、取出口6の高さを変更可能に構成することができ、本体部1内の液面の高さを制御することができる。取出口6には、処理液Uの流量を測定する流量計を配置してもよい。なお、取出口6の下流には、有用物質を濃縮するための蒸留又は精製を行う工程の装置が接続されている。
【0029】
前記セパレータ7は、反応ガスgの浮力により上昇する溶液から反応ガスg及び生体触媒Cを分離する機能を有する。本体部1内を上昇する溶液には、生体触媒C、有用物質、反応ガスg、水等の媒質が含まれており、有用物質を取り出すためには、少なくとも反応ガスg及び生体触媒Cを分離する必要がある。図1に示したセパレータ7では、上方に向かって縮径した円錐台の側面部形状を有し、下端が本体部1との間に所定の隙間を有するように上端が排出管3に連結されている。このように、セパレータ7を上方に向かって縮径した形状に構成することにより、セパレータ7に沿って上昇流が形成され、セパレータ7により堰止められた溶液は捕集されて排出管3に導かれる。本発明のバイオリアクターは循環流動床式であるため、排出管3により循環される溶液に有用物質が含まれていてもよい。なお、セパレータ7の構成は図示したものに限られず、セパレータ7を多段に形成してもよいし、処理液Uを通過させる濾過フィルターであってもよい。
【0030】
前記流量調整手段8は、排出管3の流量を調整する機能を有する。図1に示した第一実施形態では、取出口6の高さを変更可能に構成している第一取出口61〜第三取出口63及びバルブ64が流量調整手段8に相当する。本体部1内の溶液は、いわゆるガスリフトポンプの作用により、排出管3から気液分離槽2に汲み上げられる。ガスリフトポンプは、溶液内にガスを供給することにより、排出管3の入口側と出口側とに生じる密度差を利用して排出管3内の溶液を上昇させて輸送する。ここで、数1は、ガスリフトポンプを示す関係式である。
【数1】

【0031】
数1のHs(ポンプ水中長さ)は、図1における本体部1の液面から浸漬した排出管3の深さ(浸漬深さ)Hsに相当し、数1のH(ガスリフト長さ)は、図1における本体部1の液面から突出した排出管3の高さ(突出高さ)Hに相当する。数1から明らかなように、排出管3の浸漬深さHsと排出管3の突出高さHは、排出管3により送流される液流量Qfに影響を与える。なお、本発明において、数1中のHs/(Hs+H)を排出管3の浸漬深さ比と称することとする。
【0032】
ここで、図2は、排出管のガス流量Qg、液流量Qf及び浸漬深さ比Hs/(Hs+H)との関係を示す図である。本図において、横軸はガス流量Qg(リットル/分)、縦軸は液流量Qf(リットル/分)を示している。図2は、排出管3の浸漬深さ比Hs/(Hs+H)の値を0.5〜1の範囲内で0.1刻みに、排出管3のガス流量Qg及び液流量Qfを計測した結果である。そして、本体部1の液面から突出した排出管3の高さHの値が小さいほど、すなわち、Hs/(Hs+H)の値が1に近いほど、少ないガス流量Qgで本体部1内の溶液の送流が開始され、また、ガス流量Qgに対する液流量Qfも増大することがわかる。したがって、本体部1の液面を高くして排出管3の浸漬深さHsを大きくし、排出管3の突出高さHを小さくすることにより、少ないガス流量Qgで溶液の循環を開始することができ、循環流量(液流量Qf)も増大させることができる。逆に、本体部1の液面を低くして排出管3の浸漬深さHsを小さくし、排出管3の突出高さHを大きくすることにより、溶液の循環を遅らせることができ、循環流量(液流量Qf)も減少させることができる。このように、本体部1の液面を調整して排出管3の浸漬深さHs及び突出高さHを変化させることにより、排出管3を通過して循環される液流量Qf及び循環開始時期を制御することができる。
【0033】
例えば、ガス発生量が少ない反応開始初期には、液面を高く(排出管3の浸漬深さHsを大きく又は排出管3の突出高さHを小さく)することにより、早期に溶液の循環を開始することができ、少ないガス流量Qgであっても十分な液流量Qfを確保することができ、本体部1内の溶液を効果的に撹拌して反応を促進させることができる。また、ガス発生量が過剰な場合には、液面を低く(排出管3の浸漬深さHsを小さく又は排出管3の突出高さHを大きく)することにより、ガス流量Qgが多い場合であっても循環される液流量Qfを少なくすることができ、本体部1内の反応を抑制することができる。
【0034】
ここで、図3は、第一実施形態の作用を示す図であり、(A)は本体部の液面を高くした状態、(B)は本体部の液面を低くした場合、を示している。図3(A)に示すように、第一取出口61のバルブ64を開とし、第二取出口62及び第三取出口63のバルブ64を閉とすることにより、本体部1の液面を高くすることができ、処理液Uは第一取出口61から放出される。また、図3(B)に示すように、第三取出口63のバルブ64を開とし、第一取出口61及び第二取出口62のバルブ64を閉とすることにより、本体部1の液面を低くすることができ、処理液Uは第三取出口63から放出される。また、定常状態の場合には、図1に示したように、第二取出口62のバルブ64を開とし、第一取出口61及び第三取出口63のバルブ64を閉とすればよい。このように、第一実施形態に示した流量調整手段8(第一取出口61〜第三取出口63及びバルブ64)によれば、取出口6の高さを変更することができ、排出管3の浸漬深さHs及び突出高さHを調整することができ、排出管3により循環される液流量Qfを制御することができる。
【0035】
次に、本発明に係るバイオリアクターの他の実施形態について説明する。図4は、本発明に係るバイオリアクターの他の実施形態を示す図であり、(A)は第二実施形態、(B)は第三実施形態、(C)は第四実施形態、(D)は第五実施形態、を示している。また、図5は、本発明に係るバイオリアクターの他の実施形態を示す図であり、(A)は第六実施形態、(B)は第七実施形態、(C)は第八実施形態、を示している。なお、各図において、図1に示した第一実施形態と同じ部品については、同じ符号を付し重複した説明を省略する。
【0036】
図4(A)に示した第二実施形態は、取出口6の構成を変更したものである。具体的には、本体部1の側面に1つの取出口65が接続され、取出口65が下流側で複数に分岐しており、各分岐管65a,65b,65cにバルブ64が接続されている。この分岐管65a〜65cは、第一実施形態の第一取出口61〜第三取出口63と同様に、上下方向に並設されており、バルブ64の開閉により、本体部1の液面高さを調整することができるように構成されている。したがって、かかる流量調整手段8(取出口65、分岐管65a〜65c及びバルブ64)によっても、排出管3の浸漬深さHs及び突出高さHを調整することができ、排出管3により循環される液流量Qfを制御することができる。
【0037】
図4(B)に示した第三実施形態は、取出口6をフレキシブルチューブ66により構成したものである。そして、フレキシブルチューブ66はスライダ67により上下に移動できるように構成されている。フレキシブルチューブ66は可撓性を有し、スライダ67の上下移動に追従して変形することができる。スライダ67は図示しない柱部材や壁部材に配置されたレール68に沿って移動可能に配置されており、図示しない駆動手段により自動又は手動で上下に移動できるように構成されている。したがって、スライダ67を上下移動させることにより、フレキシブルチューブ66の出口部の高さを調整することができ、本体部1の液面高さを調整することができる。すなわち、かかる流量調整手段8(フレキシブルチューブ66、スライダ67、レール68等)によっても、排出管3の浸漬深さHs及び突出高さHを調整することができ、排出管3により循環される液流量Qfを制御することができる。
【0038】
図4(C)に示した第四実施形態は、本体部1の液面の高さは変化させずに排出管3の浸漬深さHsを調整できるようにしたものである。具体的には、本体部1の側面に1つの取出口6が配置されており、排出管3を伸縮させて排出管3とセパレータ7の接続位置の高さを変更できるように構成している。排出管3の伸縮機構は、排出管3そのものを蛇腹状に構成してもよいし、複数の配管を連設してスライド可能に構成してもよい。かかる流量調整手段8(排出管3及びその伸縮機構)によっても、排出管3の浸漬深さHsを任意に調整することができ、排出管3により循環される液流量Qfを制御することができる。
【0039】
図4(D)に示した第五実施形態は、本体部1に液面計69を設置したものである。具体的には、液面計69は本体部1の上部内側面に設置されており、取出口6は従来と同様に本体部1の側面に1つだけ接続されており、取出口6にバルブ64が接続されている。このバルブ64は、液面計69と連動して開閉できるように制御されており、液面のレベルが所定の値となるように、開閉のタイミングや開度が調整される。したがって、かかる流量調整手段8(取出口6、バルブ64及び液面計69)によっても、排出管3の浸漬深さHs及び突出高さHを調整することができ、排出管3により循環される液流量Qfを制御することができる。
【0040】
図5(A)に示した第六実施形態は、本体部1の上部に複数の排出管3を配置して使用する排出管3によって排出管3の突出高さHを変更できるようにしたものである。具体的には、本体部1の上部に複数の排出管3(例えば、第一排出管31、第二排出管32、第三排出管33)を接続し、第一排出管31〜第三排出管33のそれぞれにバルブ34を配置している。第一排出管31〜第三排出管33は、それぞれ上下方向の高さが異なるように配置されており、バルブ34の開閉によって使用する排出管3を選択できるように構成されている。このように、排出管3の突出高さHを変更することによっても、Hs/(Hs+H)の値を制御することができる。例えば、排出管3の突出高さHが大きい第一排出管31を使用すれば、Hs/(Hs+H)の分母が大きくなるため、排出管3により循環される液流量Qfを抑制する方向に作用し、排出管3の突出高さHが小さい第三排出管33を使用すれば、Hs/(Hs+H)の分母が小さくなるため、排出管3により循環される液流量Qfを増大する方向に作用する。したがって、第六実施形態における流量調整手段8は、本体部1の液面から突出した排出管3の高さHを調整する手段であり、排出管3(第一排出管31〜第三排出管33)及びバルブ34により構成されており、排出管3と気液分離槽2の接続部の高さを変更可能に構成する手段である。
【0041】
図5(B)に示した第七実施形態は、排出管3の構成を変更したものである。具体的には、本体部1の上部に1つの主排出管35が接続され、主排出管35の下流側で複数に分岐しており、各分岐管35a,35b,35cにバルブ34が接続されるとともに、主排出管35における分岐管35a〜35cの間にバルブ36が接続されている。各分岐管35a〜35cは、第六実施形態の第一排出管31〜第三排出管33と同様に、上下方向に並設されており、バルブ34,36の開閉により、排出管3の突出高さHを調整することができるように構成されている。したがって、かかる流量調整手段8(主排出管35、分岐管35a〜35c及びバルブ34,36)によっても、排出管3の突出高さHを調整することができ、排出管3により循環される液流量Qfを制御することができる。
【0042】
図5(C)に示した第八実施形態は、排出管3をフレキシブルチューブ37により構成したものである。また、気液分離槽2には、スライダ21が接続されており、柱部材又は壁部材に配置されたレール22に沿って上下に移動できるように構成されている。フレキシブルチューブ37は可撓性を有し、気液分離槽2の上下移動に追従して変形することができる。したがって、気液分離槽2を上下移動させて、その高さを変更することにより、排出管3の突出高さHを調整することができる。かかる流量調整手段8(フレキシブルチューブ37、スライダ21、レール22等)によっても、排出管3の突出高さHを調整することができ、排出管3により循環される液流量Qfを制御することができる。
【0043】
次に、本発明に係るバイオリアクターの第九実施形態について説明する。図6は、本発明に係るバイオリアクターの第九実施形態を示す図である。なお、本図において、図1に示した第一実施形態と同じ部品については、同じ符号を付し重複した説明を省略する。
【0044】
図6に示した第九実施形態は、排出管3の気液分離槽2側が1つの主排出管38により構成されており、排出管3の本体部1側が複数の分岐管38a,38b,38cにより構成されており、各分岐管38a〜38cには両端部にバルブ39,39が接続されている。ここでは、分岐管38bのバルブ39,39を開とし、残りのバルブ39を閉として、中央の分岐管38bのみを使用して本体部1内の溶液を循環させている。かかる第九実施形態では、排出管3の浸漬深さHsや突出高さHは変化させずに、使用する分岐管38a〜38cの本数を調整することにより循環する液流量Qfを制御するものである。数1で示した関係式におけるスリップ比S及び定数Kは、以下の関係式(数2及び数3)を用いることにより、排出管径Dを含む形式に変換することができる。
【数2】

【数3】

【0045】
ここで、図7は、排出管のガス流量Qg、液流量Qf及び排出管径Dの関係を示す図である。本図において、横軸はガス流量Qg(リットル/分)、縦軸は液流量Qf(リットル/分)を示している。図7は、排出管径Dの値を10〜30(mm)の範囲内で5mm刻みに、排出管3のガス流量Qg及び液流量Qfを計測した結果である。そして、排出管径Dが小さいほど、少ないガス流量Qgで本体部1内の溶液の送流が開始されることがわかる。また、排出管径Dが大きいほど、本体部1内の溶液の送流が開始されるタイミングが遅くなるが、液流量Qfが増大されることがわかる。したがって、排出管3を通過して循環される液流量Qfを増大させたい場合には排出管径Dを大きくすればよいし、液流量Qfを減少させたい場合には排出管径Dを小さくすればよいし、排出管3による循環開始時期を早めたい場合には排出管径Dを小さくすればよいし、排出管3による循環開始時期を遅くしたい場合には排出管径Dを大きくすればよく、排出管径Dを調整することにより、排出管3を通過して循環される液流量Qf及び循環開始時期を制御することができる。なお、排出管径Dの調整は、排出管3の径そのものを増減させるようにしてもよいし、流路断面積を増減させることにより間接的に排出管径Dを増減させるようにしてもよい。
【0046】
例えば、ガス発生量が少ない反応開始初期には、排出管3の排出管径Dを小さくすることにより、早期に溶液の循環を開始することができる。また、排出管3の排出管径Dを徐々に又は段階的に大きくすることにより、少ないガス流量Qgであっても十分な液流量Qfを確保することができ、本体部1内の溶液を効果的に撹拌して反応を促進させることができる。また、ガス発生量が過剰な場合には、排出管3の排出管径Dを小さくすることにより、ガス流量Qgが多い場合であっても循環される液流量Qfを少なくすることができ、本体部1内の反応を抑制することができる。
【0047】
ここで、図8は、第九実施形態の作用を示す図であり、(A)は排出管の流路面積:中の状態、(B)は排出管の流路面積:大の状態、を示している。図8(A)に示すように、分岐管38cのバルブ39のみを閉とし、他の分岐管38a,38bのバルブ39を開にすることにより、2本の分岐管38a,38bを使用して本体部1内の溶液を循環させることができる。したがって、図6に示した1本の分岐管38bのみを使用する場合と比較して、排出管3の流路断面積を増大させることができ、間接的に排出管3の排出管径Dを増大させることができ、循環する液流量Qfを増大させることができる。さらに、図8(B)に示すように、各分岐管38a〜38cの全てのバルブ39を開にすれば、全ての分岐管38a〜38cを使用して本体部1内の溶液を循環させることができる。したがって、図8(A)に示した状態よりも排出管3の流路断面積を増大させることができ、間接的に排出管3の排出管径Dを増大させることができ、循環する液流量Qfを増大させることができる。かかる流量調整手段8(排出管3及びバルブ39)は、排出管3の流路断面積、すなわち、排出管径Dを調整する手段であり、使用する排出管3の本数を切り替え可能に構成する手段である。
【0048】
次に、本発明に係るバイオリアクターの他の実施形態について説明する。図9は、本発明に係るバイオリアクターの他の実施形態を示す図であり、(A)は第十実施形態、(B)は第九実施形態の変形例、(C)は第十実施形態の変形例、を示している。なお、各図において、図6に示した第九実施形態と同じ部品については、同じ符号を付し重複した説明を省略する。
【0049】
図9(A)に示した第十実施形態は、第九実施形態における分岐管38a〜38cの径の太さを変えたものである。分岐管38aの径をd1、分岐管38bの径をd2、分岐管38cの径をd3とした場合、ここでは、d1>d2>d3となるように構成している。このように分岐管38a〜38cの径の太さを変えることにより、例えば、分岐管38c単独→分岐管38b単独→分岐管38a単独→分岐管38a+分岐管38c→分岐管38b+分岐管38c→分岐管38a+分岐管38b+分岐管38cのように排出管3の流路断面積を調整することができ、図6に示した第九実施形態よりも細かい調整を行うことができる。第十実施形態における流量調整手段8(排出管3及びバルブ39)は、排出管3の流路断面積、すなわち、排出管径Dを調整する手段であり、使用する排出管3の本数を切り替え可能に構成する手段であり、排出管3の配管径を切り替え可能に構成する手段でもある。
【0050】
図9(B)に示した第九実施形態の変形例は、排出管3の分岐数を9本(分岐管38a〜38i)に増やしたものである。また、図9(C)に示した第十実施形態の変形例は、排出管3の分岐数を9本(分岐管38a〜38i)に増やしつつ、径が大きい主たる分岐管38aを中央部に配置し、その周囲に径が小さい補助的な分岐管38b〜38iを配置したものである。これらの構成によっても使用する分岐管を選択することにより、排出管3の流路断面積を調整することができ、間接的に排出管3の排出管径Dを調整することができ、循環する液流量Qfを制御することができる。なお、図9(B)及び(C)は、図9(A)におけるX−X矢視断面に相当する図面である。
【0051】
上述した第一実施形態〜第十実施形態のバイオリアクターは、生体触媒Cを含む溶液中に原料物質Mを投入し、原料物質Mと生体触媒Cの反応により生じた反応ガスgにより反応溶液を上昇させ、反応溶液から生体触媒Cを除去した処理液Uを系外に放出し、 捕集した生体触媒Cを含む溶液をバイオリアクターの運転状況に応じて液流量Qfを調整しながら気液分離槽2に送流し、気液分離槽2で反応ガスgを除去して残留溶液を反応容器(本体部1)に送戻する、ことにより運転される。特に、本発明に係るバイオリアクターによれば、運転開始時又は反応促進時に気液分離槽2に送流する液流量Qfが増加するように運転され、定常運転時又は反応維持時に気液分離槽2に送流する液流量Qfが略一定に維持されるように運転され、運転停止時又は反応抑制時に気液分離槽2に送流する液流量Qfが減少するように運転される。
【0052】
例えば、定常運転時の液流量Qfは、生体触媒Cを含む溶液が本体部1と気液分離槽2との間を循環するために必要な最低限の液流量Qmf〜生体触媒Cが取出口6から流出しない液流量Qtの範囲で制御される。液流量Qmfは、数4により求められるが、流動化を安定させるため実際には液流量Qmfの2〜5倍程度の値となるように運転する。また、液流量Qtは、数5により求められる。具体的には、内径100mmの本体部1を有するバイオリアクターであって、粒径が0.3〜0.5mm、比重が1.2の粒子である生体触媒Cを使用した場合、定常運転時の液流量Qfは0.5〜5.0リットル/分の範囲内に制御されることが好ましい。
【数4】

【数5】

【0053】
本発明は上述した実施形態に限定されず、例えば、第一実施形態〜第十実施形態を適宜複合的に組み合わせてもよい、エタノール発酵以外のメタン発酵や脱窒素等の種々のガス発生プロセスに応用することができる等、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変更が可能であることは勿論である。
【符号の説明】
【0054】
1…本体部
2…気液分離槽
2a…底部
2b…上部空間
2c…排気口
3…排出管
3a…一端
3b…他端
4…復流管
4a…一端
4b…他端
4c…補給口
4d…計器
5…供給口
6,65…取出口
7…セパレータ
8…流量調整手段
21,67…スライダ
22,68…レール
31…第一排出管
32…第二排出管
33…第三排出管
34,36,39,64…バルブ
35,38…主排出管
35a〜35c,38a〜38i,65a〜65c…分岐管
37,66…フレキシブルチューブ
61…第一取出口
62…第二取出口
63…第三取出口
69…液面計


【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料物質と生体触媒とを溶液中で反応させて有用物質を生成し、該有用物質を含む処理液を取り出すバイオリアクターであって、
反応容器を構成する本体部と、
該本体部の外部に配置された気液分離槽と、
一端が前記本体部の内部に浸漬され他端が前記気液分離槽に接続された排出管と、
一端が前記気液分離槽の底部に接続され他端が前記排出管よりも下方の前記本体部に接続された復流管と、
前記本体部に前記原料物質を投入する供給口と、
該供給口よりも上方に配置され前記本体部から前記処理液を取り出す取出口と、
前記供給口と前記取出口との間に配置され前記生体触媒を捕集するセパレータと、
前記排出管の流量を調整する流量調整手段と、を有し、
前記供給口から投入した原料物質と前記本体部内の生体触媒とを反応させて有用物質を生成し、これらを含む溶液を反応ガスの浮力により上昇させ、前記セパレータを通過した前記処理液を前記取出口から放出し、前記セパレータで捕集した前記生体触媒を含む溶液を前記流量調整手段により流量を制御しながら前記排出管から前記気液分離槽に送流し、前記気液分離槽で前記反応ガスを分離し、残留溶液を前記復流管から前記本体部に送戻する、ことを特徴とするバイオリアクター。
【請求項2】
前記流量調整手段は、前記本体部の液面から浸漬した前記排出管の深さ、前記本体部の液面から突出した前記排出管の高さ又は前記排出管の流路断面積のいずれかを調整する手段である、ことを特徴とする請求項1に記載のバイオリアクター。
【請求項3】
前記深さを調整する手段は、前記取出口の高さを変更可能に構成する手段である、ことを特徴とする請求項2に記載のバイオリアクター。
【請求項4】
前記高さを調整する手段は、前記気液分離槽の高さを変更可能に構成する手段又は前記排出管と前記気液分離槽の接続部の高さを変更可能に構成する手段である、ことを特徴とする請求項2に記載のバイオリアクター。
【請求項5】
前記流路断面積を調整する手段は、使用する前記排出管の本数を切り替え可能に構成する手段又は使用する前記排出管の配管径を切り替え可能に構成する手段である、ことを特徴とする請求項2に記載のバイオリアクター。
【請求項6】
原料物質と生体触媒とを溶液中で反応させて有用物質を生成し、該有用物質を含む処理液を取り出すバイオリアクターの運転方法であって、
前記生体触媒を含む溶液中に前記原料物質を投入し、
前記原料物質と前記生体触媒の反応により生じた反応ガスにより反応溶液を上昇させ、
前記反応溶液から前記生体触媒を除去した処理液を系外に放出し、
捕集した前記生体触媒を含む溶液を前記バイオリアクターの運転状況に応じて流量を調整しながら気液分離部に送流し、
前記気液分離部で前記反応ガスを除去して残留溶液を前記反応容器に送戻する、
ことを特徴とするバイオリアクターの運転方法。
【請求項7】
前記バイオリアクターは、運転開始時又は反応促進時に前記気液分離部に送流する流量が増加され、定常運転時又は反応維持時に前記気液分離部に送流する流量が略一定に維持され、運転停止時又は反応抑制時に前記気液分離部に送流する流量が減少される、ことを特徴とする請求項6に記載のバイオリアクターの運転方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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