説明

バイパスジョイント線

【課題】電線に対して簡便な作業で確実に取り付けられるバイパスジョイント線を提供する。
【解決手段】可撓性を有する金属線2と、金属線2の両端に配置されて互いに離間する二箇所で電線100に連結される一対の連結部3とを備え、連結部3が、電線100の外周面に摩擦係合されたクランプ本体4と、クランプ本体4に電線100を挟んで対向するように配置された蓋体5とを有し、クランプ本体4と蓋体5とのそれぞれには電線100を挟んで対向するように配置されてその外周面を挟持する一対の挟持部6が設けられ、電線100に係合されたクランプ本体4に対して蓋体5が電線100の軸線方向に互いに近接する方向へ相対的にスライドされるのに応じて一対の挟持部6が互いに近接移動されるくさび嵌合手段7が設けられた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バイパスジョイント線に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電車に対して給電を行う方法として、電車の軌道に沿うようにき電線を配置する方法が知られている。き電線は一般的に数百メートル以上の間隔でその軸線方向に複数の電線が接続されて構成されている。複数の電線の接続部には、スリーブと呼ばれる筒状の金属管が設けられ、スリーブを電線に圧縮接続することによって電線を接続するのが一般的である。
しかしながら、近年、アルミき電線の圧縮接続部では、電線の素線間あるいは素線とスリーブとの間の接触面の腐食等による劣化が原因と見られるき電線の断線が報告されている。これは圧縮接続部が酸化または腐食劣化を起こすことによって接触抵抗が増加してスリーブ全体が過熱溶断するほか、接触抵抗が不均等になることで一部の素線が過電流になることでスリーブ近傍で順次破断するプロセスが知られている。
き電線のような送電線を交換するためには多大な時間と労力を要するため、送電線を交換するまでの期間、送電線としての電気的性能及び機械的性能を補完するためのバイパス装置の設置が有効であると考えられている。
【0003】
このようなバイパス装置の例として、特許文献1には、送電線同士を圧縮接続するスリーブを迂回して支持するためのバイパス装置が記載されている。この特許文献1に記載のバイパス装置は、送電線同士を圧縮接続するスリーブの両側にくさび形引留クランプを配置させ、その間を、引留クランプを両側に圧縮接続したバイパス電線で連結して電気的・機械的に接続するようになっている。
このバイパス装置によれば、送電線を交換するまでの期間、送電線としての電気的性能と機械的性能を補完することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2002−101539号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載のバイパス装置では、引留クランプによる電線の機械的な接続に加えてPGクランプによる電気的な接続を行う構成であるため、装置の長さが長くなってしまう。さらに、くさび形引留クランプを電線に接続する際に2つ割接続部材と接続部材との三つの部材のそれぞれを順次固定して取り付ける必要があり、このため高所作業における作業性が悪いという問題があった。
【0006】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであって、その目的は電線に対して簡便な作業で確実に取り付けられるバイパスジョイント線の提供を図ることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、この発明は以下の手段を提案している。
本発明のバイパスジョイント線は、電線に接続されるバイパスジョイント線であって、可撓性を有する金属線と、前記金属線の両端に配置されて互いに離間する二箇所で前記電線に連結される一対の連結部とを備え、前記連結部が、前記電線の外周面に摩擦係合されたクランプ本体と、前記クランプ本体に前記電線を挟んで対向するように配置された蓋体とを有し、前記クランプ本体と前記蓋体とのそれぞれには前記電線を挟んで対向するように配置されて前記外周面を挟持する一対の挟持部が設けられ、前記電線に係合された前記クランプ本体に対して前記蓋体が前記電線の軸線方向に互いに近接する方向へ相対的にスライドされるのに応じて前記一対の挟持部が互いに近接移動されるくさび嵌合手段が設けられたことを特徴としている。
【0008】
この発明によれば、くさび嵌合手段によって挟持部が近接移動されて電線が挟持され、蓋体に固定された金属線によって電線の離間する二箇所が機械的かつ電気的にバイパス接続される。
また、電線に対してクランプ本体をかぶせ、クランプ本体に蓋体を嵌合させるだけで連結部が電線に取り付けられ、簡便な作業でバイパスジョイント線を電線に対して確実に取り付けることができる。
【0009】
また、本発明のバイパスジョイント線は、前記一対の連結部が、前記電線において第一電線と第二電線とが接続された接続部を挟む位置で前記第一電線と前記第二電線とのそれぞれに連結されると共に、前記金属線が、前記電線の軸線方向に前記接続部より長く設定されていることが好ましい。
【0010】
この場合、電線に通っていた電気の一部が金属線にも流れるので、一対の連結部の間において腐食等によって電気抵抗が増加した際には金属線側に電気がバイパスされることで接続部が加熱溶断するのを防止することができる。さらに、電線が接続部において溶断した場合には、電線によって連結部のそれぞれが離間する方向に牽引されるが、このとき、くさび嵌合によってクランプ本体と蓋体による電線の挟持力がさらに強くなるため、溶断した電線のそれぞれを引き留めて支持することができる。
【0011】
また、本発明のバイパスジョイント線は、前記くさび嵌合手段が、前記クランプ本体と前記蓋体とのいずれか一方において前記挟持部に対して所定の勾配を有する摺動面が形成されたスライダと、前記クランプ本体と前記蓋体との他方において前記スライダと摺動自在に係合する溝とを備える。
この場合、溝とスライダによる摺動移動によってクランプ本体と蓋体とがくさび嵌合するので、クランプ本体と蓋体とが摺動移動した際の位置関係によってクランプ本体と蓋体とによって生じる空間の大きさが連続的に変化する。このため、接続する電線の太さに合わせて最適に連結部を嵌合させることができる。
【0012】
また、本発明のバイパスジョイント線は、前記挟持部が前記軸線方向に平行で前記外周面に嵌合する湾曲部を有することが好ましい。
この場合、挟持部が電線の軸線に平行な湾曲面を有するので、挟持部は電線の外周面に対して面として接触する。このため、挟持部と電線との接触面積が大きくなるので挟持部が互いに近接した際に電線にかかる押圧力を分散させて好適に挟持することができる。
【0013】
また、本発明のバイパスジョイント線は、前記クランプ本体における前記挟持部が前記外周面に係合する複数の突出部を有することが好ましい。
この場合、突出部が電線の外周面に係合するので、クランプ本体における挟持部と電線における外周面との摩擦力が増加し、クランプ本体の電線の軸線方向への進退移動を抑制することができる。
【0014】
また、本発明のバイパスジョイント線は、前記金属線が軟銅からなる撚り線であることが好ましい。
この場合、金属線が電気伝導性を有すると共に可撓性を有するので、バイパスジョイント線を接続する際に連結部の位置がずれても金属線が撓むことで電線を好適に挟持することができる。さらに、金属線が軟銅からなるので、熱伝導性が高く、接続部に熱が生じた際にこの熱をこのバイパスジョイント線へ一時的に逃がすことができるので熱による電線の溶断を防止することもできる。
【0015】
また、本発明のバイパスジョイント線は、前記金属線の中間部に前記金属線に外嵌する保護管を有することが好ましい。
この場合、保護管は接続部に金属線が接触するのを防止している。このため、接続部のスリーブ等が磨耗あるいは破損することや、スリーブ等によって金属線が磨耗あるいは破損することを回避することができる。
【0016】
また、本発明のバイパスジョイント線は、前記連結部が電気伝導性を有することが好ましい。
この場合、連結部が電気伝導性を有するので連結部を電線に接続するだけで機械的かつ電気的な接続を行うことができる。
【0017】
また、本発明のバイパスジョイント線は、前記連結部が、前記クランプ本体と前記蓋体との相対移動を制限する制限部をさらに備えることが好ましい。
この場合、制限部によってクランプ本体と蓋体との相対移動が制限され、スライダと溝との係合が外れないように支持することができる。これによってくさび嵌合の緩みによるこのバイパスジョイント線の電線からの脱落を防止することができる。
【0018】
また、本発明のバイパスジョイント線は、前記制限部が、前記クランプ本体と前記蓋体とのいずれか一方に固定されて前記軸線方向に延びて配置されたボルトと、前記クランプ本体と前記蓋体との他方に固定されて前記ボルトが挿通される長孔が形成された受け部と、前記ボルトに螺合するナットとを有することが好ましい。
この場合、クランプ本体と蓋体とは、ボルトが長孔に挿通された状態でボルトにナットが螺合して組み合わされている。このため、くさび嵌合手段が緩んでクランプ本体と蓋体とが電線の軸線方向に相対移動しても制限部におけるボルトとナットの係合が外れないので、電線の振れ等による振動がこのバイパスジョイント線に伝わってもこのバイパスジョイント線が電線から脱落しないように支持することができる。
【発明の効果】
【0019】
本発明に係るバイパスジョイント線によれば、くさび嵌合する連結部によって電線同士をバイパス接続することで、電線に対して簡便な作業で確実に取り付けられるバイパスジョイント線を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の実施形態のバイパスジョイント線を示す図である。
【図2】本実施形態の連結部の構成を示す図である。
【図3】本実施形態のクランプ本体の構成を示す正面図である。
【図4】同クランプ本体の構成を示す背面図である。
【図5】同クランプ本体の構成を示す左側面図である。
【図6】同クランプ本体の構成を示す下面図である。
【図7】本実施形態の蓋体の構成を示す平面図である。
【図8】同蓋体の構成を示す左側面図である。
【図9】同蓋体の構成を示す正面図である。
【図10】同蓋体の構成を示す斜視図である。
【図11】本発明のバイパスジョイント線の使用時の動作を示す斜視図である。
【図12】同バイパスジョイント線の使用時の動作を示す斜視図である。
【図13】同バイパスジョイント線の変形例を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の一実施形態のバイパスジョイント線について図1から図13を参照して説明する。
【0022】
図1は本実施形態のバイパスジョイント線1が電線100に取り付けられた状態を示している。また、図2は図1の連結部3を示す拡大図である。図1および図2に示すように、本実施形態のバイパスジョイント線1には、軟銅からなる撚り線で可撓性を有する金属線2が設けられている。本実施形態の金属線2では公称断面積が325mmであるCu325が採用されている。また、金属線2の両端は連結部3に挿入され、かしめによって固定されている。
【0023】
金属線2の長さは、接続部101の長さによって最適に設定されるもので、接続部101に設けられているスリーブ102等よりも長く、このスリーブ102を挟むように電線100をバイパスできる長さであることが好ましい。
【0024】
金属線2の両端のそれぞれには、金属線2と電線100とを連結するための一対の連結部3が設けられている。連結部3は、金属線2の先端が挿入固定された蓋体5と、蓋体5とくさび嵌合すると共に電線100の外周面に摩擦係合するクランプ本体4と、蓋体5とクランプ本体4とを連結する制限部8とを備える。
【0025】
図3ないし図6はクランプ本体4の構成を示す図である。クランプ本体4は例えば銅からなり、本実施形態では鋳造によって作られている。図3に示すように、クランプ本体4は電線100の外周面に沿って湾曲して形成され、かつ図5に示すように電線100の軸線方向に延ばして形成されている。また、径方向断面が略U字状の嵌合部9を有する。嵌合部9の表面にはこの嵌合部9から突出する略円柱状に形成された突出部10が設けられている(図6参照)。本実施形態の突出部10はクランプ本体4と一体に形成されている。また、嵌合部9の両端部には、軸線方向に延びて互いに平行に形成された溝11aと溝11bとからなる一対の溝11が形成され、図3及び図4に示すように一対の溝11における嵌合部9側への開口が互いに対向する位置関係になっている。
【0026】
また、クランプ本体4の長手方向の端部には制限部8の一部である受金12が固定されている。受金12は薄板状の金属からなり、本実施形態ではステンレス鋼からなる。また、受金12の基端側がクランプ本体4に固定され、受金12の先端側にはクランプ本体4の長手方向に貫通する孔13が形成されている。
【0027】
図7ないし図10は蓋体5の構成を示す図である。本実施形態の蓋体5は銅からなる。図7に示すように、金属線2は蓋体5の一端に形成された筒状部15に挿入されて、かしめられることで固定されている。また、蓋体5は金属線2の軸方向に延びて長尺に形成され、蓋体5にはクランプ本体4とくさび嵌合するためのスライダ16が形成されている。また、蓋体5には制限部8の一部であり受金12の孔13に挿入可能なボルト17がL字金具18を介して固定されている。ボルト17にはボルト17に螺合可能なナット14(図12参照)が取り付け可能である。
【0028】
図8及び図9に示すように、スライダ16は、電線100の外周面に対して摺動可能な第一摺動面19と、第一摺動面19に対して所定の勾配を有し第一摺動面19に対向する位置に形成された第二摺動面20とを有する。第一摺動面19は、スライダ16の長手方向に延びて形成され、電線100の外周に好適に接触するように電線100の外周と略同形状に湾曲された湾曲面21を有する。湾曲面21の表面は平滑に形成されているため、湾曲面21は電線100に対して引っかかることなく摺動するようになっている。この湾曲面21と上述の嵌合部9によって、電線100を挟持する挟持部6が構成されている。
【0029】
第二摺動面20はスライダ16の両側部に離間して一対設けられており、上述のクランプ本体4の溝11のそれぞれに対してこの第二摺動面20が摺動可能になっている。また、勾配は、第一摺動面19と第二摺動面20とが、蓋体5の筒状部15側に行くに従って近接するような角度に設定されて形成されている。スライダ16の第二摺動面20とクランプ本体4の溝11とによって挟持部6を電線100に押圧するためのくさび嵌合手段7が構成されている。
【0030】
なお、くさび嵌合手段7は、一対の挟持部6のそれぞれを電線100の軸線に対して直行する方向に近接あるいは離間させるように構成されている。
【0031】
以上に説明する構成の、本実施形態のバイパスジョイント線1の作用について、図1、図11及び図12を参照しながら説明を行う。
まず、本実施形態のバイパスジョイント線1の電線100への装着方法について詳述する。バイパスジョイント線1は、金属線2の両端が連結部3のそれぞれの蓋体5の筒状部15に固定された状態で提供されている。作業者は、第一電線100Aと第二電線100Bとが接続された接続部101を被覆するように設けられたスリーブ102に対して、このスリーブ102を挟むように離間した二点にクランプ本体4を嵌合させる。このとき、作業者はクランプ本体4の電線100に対する向きに留意し、制限部8の受金12部が互いに対向するような向きに配置する(図1参照)。
【0032】
続いて、図11に示すように、クランプ本体4に対して蓋体5を接続する。クランプ本体4が電線100に嵌合された状態で、このクランプ本体4を手等で支持しながら溝11に蓋体5のスライダ16を挿入する。より詳しくは、クランプ本体4の受金12と反対側の端部の溝11のそれぞれに、スライダ16の筒状部15側の端部を挿入する。
【0033】
クランプ本体4に対して蓋体5を挿入してゆくことで、湾曲面21と嵌合部9とが近接してクランプ本体4と蓋体5によって生じる筒状の内部空間の径を縮小するように移動する。これに伴い、湾曲面21と嵌合部9とがこの電線100の外周面に当接する。このとき、受金12に設けられた孔13に蓋体5のボルト17が挿入される。必要に応じて、受金12に挿入されたボルト17に、このボルト17にナット14を螺合させることでクランプ本体4と蓋体5とを物理的に接続して連結部3が電線100から脱落しないように仮止めしてもよい。
【0034】
なお、高所作業においてクランプ本体4が電線100から脱落することを防止するために、一方のクランプ本体4を電線100に嵌合させてこのクランプ本体4に蓋体5を接続し、この作業が完了した後に他方のクランプ本体4を電線100に嵌合させる作業を始めることが好ましい。
【0035】
続いて、上述と同様に、スリーブ102を挟んで反対側の電線100においてもクランプ本体4を電線100に嵌合させ、蓋体5をクランプ本体4に挿入して連結部3を構成する。このとき、スリーブ102を挟む位置に取り付けられた連結部3のそれぞれは、まだ電線100に対して固定されていないので、金属線2の電線100に対するたわみ量等を調整するためにクランプ本体4を電線100の軸線方向に微小に進退させることができる。
【0036】
続いて、図12に示すように、クランプ本体4に対して蓋体5をスリーブ102方向にさらに挿入する。この際、蓋体5の端部を木槌等で打ち込むことで蓋体5はクランプ本体4の溝11にさらに挿入され、このとき電線100の外周面に当接していた挟持部6が電線100を押圧するようになり、湾曲面21と嵌合部9とが電線100の外面へ押圧固定されることで連結部3がこの電線100に固定される。
【0037】
連結部3のそれぞれにおいて電線100への押圧固定が行われた後、制限部8の受金12の孔13に挿入されたボルト17に螺合されたナット14を締付けて、蓋体5とクランプ本体4とが外れないように支持する。こうして一連の作業が終了する。
【0038】
以下では、上述したように電線100に装着された本発明のバイパスジョイント線1の使用時の動作について図1及び図12を参照して詳述する。
本実施形態では、このバイパスジョイント線1は、図1に示すように第一電線100Aと第二電線100Bとの接続部101に設けられたスリーブ102をバイパスするように接続されている。電線100の接続部101においては、スリーブ102等の内部で電線100が腐食した際に生じる熱によって電線100及びスリーブ102が溶断する可能性が考えられる。これは、電線100における腐食部分において電気抵抗が増加したことが原因である。
【0039】
本発明のバイパスジョイント線1が装着された電線100において、電線100に流れる電気の一部が連結部3及び金属線2にも流れることで接続部101をバイパスして第一電線100Aから第二電線100Bへ電気が流れる。連結部3及び金属線2が電気伝導性の良い銅からなるので、接続部101においてはバイパスジョイント線1を接続したことによって電気抵抗が低減される。従って電気抵抗によって生じる発熱が抑制され、電線100の接続部101における電線100あるいはスリーブ102の溶断が抑制される。
【0040】
また、電線100の腐食が進行して電線100の接続部101が破断した場合には、第一電線100Aと第二電線100Bとが互いに離間するが、このときバイパスジョイント線1によって第一電線100Aと第二電線100Bが連結されているのでこの第一電線100Aと第二電線100Bとの電気的な接続が維持される。
【0041】
さらに、第一電線100Aと第二電線100Bとによってバイパスジョイント線1が牽引される際には、例えば図12の矢印A、Bに示す方向への牽引力が生じる事になる。このとき、くさび嵌合手段7によってこの牽引力が、挟持部6が電線100の軸線方向へ近接して電線100の外周面を押圧する力に変換されるため、電線100の外周面がより強く挟持されることになる。従って第一電線100A及び第二電線100Bとバイパスジョイント線1との接続が維持され、電線100の端が地上に落下するのが抑制される。
【0042】
以上説明したように、本実施形態のバイパスジョイント線1によれば、挟持部6及びくさび嵌合手段7によって電線100が挟持され、電線100の一部がバイパス接続されるので、電線100に対して簡便な作業で確実に取り付けられる。
【0043】
また、くさび嵌合手段7が溝11とスライダ16とを備えるので、溝11とスライダ16による摺動移動によってクランプ本体4と蓋体5とがくさび嵌合する。このため、接続する電線100の太さに合わせて好適に連結部3を嵌合させ、連結部3における嵌合部9と湾曲面21とによって生じる筒状の内部空間の径を連続的に変化させて電線100を押圧することができる。
【0044】
また、挟持部6が湾曲部を有するので、挟持部6は電線100の外周面に対して面として接触する。このため、挟持部6と電線100との接触面積が大きくなるので挟持部6が互いに近接した際に電線100にかかる押圧力を分散させて好適に挟持することができる。
【0045】
また、嵌合部9が電線100の外周面に係合する複数の突出部10を有するので、クランプ本体4の電線100の軸線方向への進退移動を抑制することができる。このため、電線100によってこのバイパスジョイント線1が牽引された際に電線100からクランプ本体4が抜け落ちることが防止され、くさび嵌合手段7を好適に作動させることができる。
【0046】
また、金属線2が軟銅からなる撚り線であるので、金属線2は電気伝導性を有すると共に可撓性を有する。従ってバイパスジョイント線1を接続する際に連結部3の位置がずれても金属線2が撓むことで電線100を好適に挟持することができる。さらに、金属線2が軟銅からなるので、熱伝導性が高く、接続部101に熱が生じた際にこの熱をこのバイパスジョイント線1へ一時的に逃がすことができるので熱による電線100の溶断を防止することもできる。
【0047】
また、連結部3が電気伝導性を有するので連結部3を電線100に接続するだけで機械的かつ電気的な接続を行うことができる。
【0048】
また、連結部3がクランプ本体4と蓋体5との相対移動を制限する制限部8を備えるので、スライダ16と溝11との係合が外れないように支持することができる。これによってくさび嵌合の緩みによるこのバイパスジョイント線1の電線100からの脱落を防止することができる。
【0049】
また、制限部8が蓋体5に固定されて電線100の軸線方向に延びて配置されたボルト17と、クランプ本体4に固定されてボルト17が挿通される孔13が形成された受金12と、ボルト17に螺合するナット14とを有するので、電線100の振れ等による振動がこのバイパスジョイント線1に伝わってくさび嵌合手段7が緩んでもこのバイパスジョイント線1が電線100から脱落しないように支持することができる。
【0050】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
例えば、図13に示すように、本発明のバイパスジョイント線1の金属線2に金属や樹脂等からなる筒状の保護管22を設けて電線100との接触による金属線2の磨耗を回避する構成を採用することもできる。この場合、保護管22は接続部101に金属線2が接触するのを防止することができる。このため、接続部101のスリーブ102等が磨耗あるいは破損することや、スリーブ102等によって金属線2が磨耗あるいは破損することを回避することができる。また、この保護管22に代えて金属線2の外周面を樹脂等で被覆する構成とすることもできる。
【符号の説明】
【0051】
1 バイパスジョイント線
2 金属線
3 連結部
4 クランプ本体
5 蓋体
6 挟持部
7 くさび嵌合手段
8 制限部
9 嵌合部
10 突出部
11 溝
12 受金
13 孔
14 ナット
16 スライダ
17 ボルト
21 湾曲面
22 保護管
100 電線
100A 第一電線
100B 第二電線
101 接続部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電線に接続されるバイパスジョイント線であって、
可撓性を有する金属線と、
前記金属線の両端に配置されて互いに離間する二箇所で前記電線に連結される一対の連結部とを備え、
前記連結部が、
前記電線の外周面に摩擦係合されたクランプ本体と、
前記クランプ本体に前記電線を挟んで対向するように配置された蓋体とを有し、
前記クランプ本体と前記蓋体とのそれぞれには前記電線を挟んで対向するように配置されて前記外周面を挟持する一対の挟持部が設けられ、
前記電線に係合された前記クランプ本体に対して前記蓋体が前記電線の軸線方向に互いに近接する方向へ相対的にスライドされるのに応じて前記一対の挟持部が互いに近接移動されるくさび嵌合手段が設けられたことを特徴とするバイパスジョイント線。
【請求項2】
前記一対の連結部が、
前記電線において第一電線と第二電線とが接続された接続部を挟む位置で前記第一電線と前記第二電線とのそれぞれに連結されると共に、
前記金属線が、
前記電線の軸線方向に前記接続部より長く設定されていることを特徴とする請求項1に記載のバイパスジョイント線。
【請求項3】
前記くさび嵌合手段が、
前記クランプ本体と前記蓋体とのいずれか一方において前記挟持部に対して所定の勾配を有する摺動面が形成されたスライダと、
前記クランプ本体と前記蓋体との他方において前記スライダと摺動自在に係合する溝とを備えることを特徴とする請求項1または2に記載のバイパスジョイント線。
【請求項4】
前記挟持部が前記軸線方向に平行で前記外周面に嵌合する湾曲部を有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載のバイパスジョイント線。
【請求項5】
前記クランプ本体における前記挟持部が前記外周面に係合する複数の突出部を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載のバイパスジョイント線。
【請求項6】
前記金属線が軟銅からなる撚り線であることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載のバイパスジョイント線。
【請求項7】
前記金属線の中間部に前記金属線に外嵌する保護管を有することを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載のバイパスジョイント線。
【請求項8】
前記連結部が電気伝導性を有することを特徴とする請求項1〜7のいずれか一項に記載のバイパスジョイント線
【請求項9】
前記連結部が、
前記クランプ本体と前記蓋体との相対移動を制限する制限部をさらに備えることを特徴とする請求項1〜8のいずれか一項に記載のバイパスジョイント線。
【請求項10】
前記制限部が、
前記クランプ本体と前記蓋体とのいずれか一方に固定されて前記軸線方向に延びて配置されたボルトと、
前記クランプ本体と前記蓋体との他方に固定されて前記ボルトが挿通される孔が形成された受金と、
前記ボルトに螺合するナットとを有することを特徴とする請求項1〜9のいずれか一項に記載のバイパスジョイント線。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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