説明

バイヤー法によって製造される低有機炭素量の水酸化アルミニウム

バイヤー法によって製造される水酸化アルミニウム組成物であって、前記製造される水酸化アルミニウムは、水酸化アルミニウム1グラム当たり、約0.5ミリグラム未満の総有機炭素量である総有機炭素量を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一般的にはバイヤー法に関し、より詳しくは、バイヤー法によって製造される水酸化アルミニウムから総有機炭素を除去する方法、およびこの方法を用いて製造された水酸化アルミニウムに関する。
【背景技術】
【0002】
アルミナ三水和物としても知られる水酸化アルミニウムは、還元によって金属アルミニウムを製造するために使用される焼成アルミナをはじめとする、多くのアルミナを原料とする生成物の前駆体である。水酸化アルミニウムは、最も一般的には、ボーキサイトなどのアルミナを含む鉱石から得られる。ボーキサイトのアルミナ成分の回収は、通常、高温高圧力下のアルカリ媒体での抽出(digestion)を含む、よく知られるバイヤー法によって行われる。ボーキサイトの抽出によって、通常「貴液」と呼ばれる飽和アルミン酸ナトリウム溶液が得られ、これからアルミナ成分が、通常は水酸化アルミニウムの種結晶の添加を経て、析出化によって回収される。
【0003】
アルミナ製造のためのバイヤー法においては、ボーキサイト鉱石は粉砕され、水でスラリー化され、それから高温高圧力下、水酸化ナトリウムとしても知られる苛性ソーダで抽出される。苛性溶液はアルミニウムの酸化物を溶かし、水溶性のアルミン酸ナトリウム溶液を作る。「赤泥」と呼ばれる、ボーキサイト鉱石の苛性不溶性成分は、その後、溶解したアルミン酸ナトリウムを含む水層から分離される。固化した水酸化アルミニウムは溶液から析出し、生成物として集められる。
【0004】
より詳細には、粉砕されたボーキサイト鉱石は、水スラリーが作られるスラリーミキサーへ送り込まれる。スラリーを構成する水は、通常、使用済み溶液(spent liquor、後述する)であり、苛性ソーダが添加される。このボーキサイト鉱石スラリーはそれから希釈され、抽出槽あるいは一連の抽出槽を通り、そこで高温高圧力下、利用できるアルミナ総量の約98%が苛性溶解性のアルミン酸ナトリウムとして鉱石から取り出される。抽出の後、スラリーはいくつかのフラッシュタンクを通り、ここで、抽出されたスラリーの圧力は数気圧から1気圧へと下げられ、スラリーの温度は約200℃から約105℃へと下げられる。
【0005】
フラッシング工程を経たアルミン酸塩液は、抽出の後まで残る、あるいは抽出の間に析出する、不溶性残渣からなる約1〜20質量%の固体を含んでいる。比較的粗い固体粒子は、「サンドトラップ」サイクロンによってアルミン酸塩液から取り除かれる。比較的細かい固体粒子は、通常、最初に沈降を行い、それから必要に応じて、ろ過を行うことによって液から分離される。フラッシュタンクを出たアルミン酸塩液のスラリーは、リサイクルされた洗浄機オーバーフロー液の流れによって希釈される。フラッシュタンクは含み、第一沈降層の前までの、抽出槽から出てそれに続くスラリーの希釈を経るバイヤー法スラリーを、ここでは第一沈降槽フィードと呼ぶ。
【0006】
通常、第一沈降槽フィードは、その後第一沈降槽のセンターウエルに送り込まれ、そこで凝集剤によって処理される。泥が沈降するに伴い、「グリーン液」あるいは「貴液」と呼ばれる浄化されたアルミン酸ナトリウム溶液が第一沈降層の最上部から溢れ、それが集められる。この第一沈降層からのオーバーフローは、次の工程段階に移される。
【0007】
第一沈降層オーバーフローの浄化は、水酸化アルミニウムの効率的な製造に不可欠である。もし沈降層をオーバーフローするアルミン酸塩液が許容できない量の分散固体を含む場合(1リットル当たり約10〜500mgの分散固体の場合)、ろ過によって、ろ液が液1リットル当たり約10mg未満の分散固体となるように、さらに浄化しなければならない。水酸化アルミニウムの前の、第一沈降槽の後に集められた液の、残渣分散固体を取り除くための処理を、第二浄化段階と呼ぶ。
【0008】
浄化されたアルミン酸ナトリウム液には、水酸化アルミニウム、Al(OH)の形でのアルミナの析出を促すために、水酸化アルミニウムの種結晶が入れられる。水酸化アルミニウム粒子あるいは結晶は、それから濃縮された苛性溶液から分離され、残りの液層、使用済み溶液(spent liquor)は、最初の抽出段階に戻され、アルカリで苛性溶液として再構成された上で抽出剤として使用される。
【0009】
ボーキサイトは世界の多くの場所で見られ、鉱石の組成は地域によって異なる。多くのボーキサイトは、抽出段階で鉱石のアルミナ成分と一緒に抽出されてしまう有機炭素(有機不純物ともいう)を含んでおり、これは得られる液を汚染することになる。鉱石中に見られる有機炭素成分のほとんどが高分子量化合物からなり、その一部はアルカリ抽出工程において低分子量化合物へと分解し、それによって液中に溶解する様々な有機塩が作られる。バイヤー法は、アルカリ抽出段階への使用済み苛性溶液の頻繁なリサイクルを含むため、液の有機炭素成分は連続的に増加し、処理されるボーキサイトの種類によって、液1リットル当たり、約5〜40グラムの炭素量の範囲のレベルまで達する。有機炭素成分の蓄積は、低い総有機炭素成分量が必要とされる用途に水酸化アルミニウムが使用できるのに十分な程度の低い有機炭素成分量で、経済的かつ効率的に水酸化アルミニウムを製造するのを著しく妨げるような高レベルまで達する。
【0010】
バイヤー液中の有機炭素量を制御することは水酸化アルミニウム製造における重要な点であるため、既にこのような有機炭素量の制御のためにいくつかの方法が開発されている。特許文献1(シェーパーズら)では、液を水酸化マグネシウムと水酸化アルミニウムの析出混合物を形成するマグネシウム化合物と接触させることによって、有機不純物をバイヤー液から取り除くことが提案されている。この特許によれば、この析出物は、吸着あるいは化学吸着によって、いくらかの有機不純物を取り除くことができる。マグネシウム化合物はバイヤー法のどの段階で添加してもよく、抽出に先立って添加、あるいは抽出されたスラリーに添加することが好ましいとされている。この方法では少なくとも有機不純物の一部を取り除くことはできるが、析出する水酸化物の混合物の形成は、操作上の困難をもたらすことになる。また、析出する水酸化物の混合物は、水酸化アルミニウムを含むため、その結果生成物としてのアルミナのロスをもたらすことになる。さらに、析出混合物は処理液残部から分離しなければならないが、これは更なる工程段階を必要とし、そして/あるいは、廃棄しなければならない総赤泥量を増やすことになる。
【0011】
特許文献2(メルシエら)においては、バリウム含有化合物がバイヤー液に添加される。このバリウム化合物はアルミン酸バリウムとして析出し、析出物質は液中に存在する有機不純物のバリウム塩も含むものである。先に論じた特許文献のように、この方法は、沈降および/またはろ過装置と、付加的な工程段階を必要とする、処理液から取り除かなければならない化合物の析出を含むものである。この方法は焼成によって、ろ過されたバリウム化合物の回収と再利用が可能である。しかし、周知のバリウム塩の毒性が与える容認できない環境および/または健康への危害は、それによって得られる浄化効果によっても正当化できるものではない。
【0012】
特許文献3(マティヤスィら)では、有機不純物は、石灰による液の苛性化と、続く苛性化液の濃縮によって、不純物を含んだバイヤー液中から取り除かれる。濃縮によって、液から多量の有機不純物を含む固体が析出する。固体は分離され、それから廃棄される。この方法では、液から十分な量の有機不純物の除去を行うことができるが、この方法に関する問題は、現実的でなく、費用がかかることである。良好な純度とするためには、多量の液が石灰で処理され、濃縮されなければならない。これらの液処理方法は、多量の石灰と膨大なエネルギーの使用と多大なソーダ量のロスを要する。「ソーダ量」とは、バイヤー液中に存在するあらゆるナトリウム塩をいう。特に、アルミン酸ナトリウムに関連するソーダ、フリーの水酸化ナトリウム、そして炭酸ナトリウムである。これら全ては主要な原料コスト源である主要な原料、苛性ソーダ由来のものである。それゆえ、全てのバイヤー法精製装置は、ソーダ量のロスを最小限にするように稼動する。
【0013】
同様な精製方法は特許文献4(ヤマダら)に開示されている。この方法においては、バイヤー液は最初に濃縮され、それからアルミナと苛性成分が所定レベルに調節された後に高温で焼成される。「液焼成(liquor burning)」としてバイヤー業界で知られているこの方法は、有機不純物の除去に効果的な手段である。この欠点は、多量の液の濃縮され、それから焼成されなければならず、大量の費用とエネルギーの消費が必要とされることである。液焼成は、大気汚染を避けるために、排ガス制御装置も必要とする。
【0014】
特許文献5(イナオら)では、有機不純物の酸化ための銅触媒による湿式酸化法と、これ引き続く析出物として銅触媒を取り除くための含硫黄化合物の添加が提案されている。酸化は触媒と酸素分子の存在下、高温高圧力下で行われる。この方法は、高価な圧力容器の使用と膨大なエネルギーを必要とする高温高圧力下での抽出を行わなければいけないという点で、いくつかの欠点を有している。加えて、銅触媒は汚染を防ぐために処理された液から除去しなければならない。除去された硫化銅の廃棄は、環境および/または健康への危害をもたらす。同様に、特許文献6(メイルトら)では、ボーキサイト抽出容器中へ直接酸素分子を送り込むことによって、有機不純物が高温高圧力下で酸化される。使用される酸素の量は、液への酸素の溶解度以下に制限されるが、それは一部の有機不純物だけを分解するに足る量にすぎない。さらに、高圧が必要とされることによる爆発の可能性がある。
【0015】
特許文献6(カザマら)では、過酸化ナトリウム粉末や50%過酸化水素のような様々な過酸化剤が、有機不純物の一部を分解するために使用されている。これは効果的ではあるけれども、これらの試薬は高価であり危険である。また、バイヤー貴液の色は、バイヤー貴液を通る1%のオゾンを含む僅かな空気の流れによって取り除かれる。しかしながら、この薄いオゾン流は色を除去するのみであり、有機不純物を酸化するには不十分である。
【特許文献1】米国特許第4,046,855号明細書
【特許文献2】米国特許第4,101,629号明細書
【特許文献3】米国特許第4,335,082号明細書
【特許文献4】米国特許第4,280,987号明細書
【特許文献5】米国特許第4,215,094号明細書
【特許文献6】特開昭53−146259号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
総有機炭素量がより低い、バイヤー法によって製造される水酸化アルミニウムを提供することが望まれている。また、バイヤー法によって、総有機炭素量がより低い水酸化アルミニウムを製造するために使用される、高温高圧を必要とせず、相対的に環境に優しい方法も望まれている。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の第一の態様は、バイヤー法によって製造される水酸化アルミニウム組成物において、水酸化アルミニウムの総有機炭素が、水酸化アルミニウム1グラム当たり、約0.5ミリグラム未満の有機炭素である水酸化アルミニウムを製造することを含む改良である。
【0018】
本発明の第二の態様は、水酸化アルミニウムを製造するためのバイヤー法において、水酸化アルミニウム1g当たり、約0.5ミリグラム未満の有機炭素である総有機炭素量で、以下の工程を含んで前記水酸化アルミニウムを製造することを含む改良である:
a)水酸化アルミニウムの水スラリーを作るために、pHが約10より大きい水に、水酸化アルミニウムを分散する工程であって、前記スラリーは水1リットル当たり、約50〜1000グラムの固体を含み、前記スラリーの温度は約5〜95℃である工程;
b)適当な攪拌技術を用いてスラリー中の固体の分散状態を維持する工程;
c)前記スラリーを酸素にオゾンが混合された混合物と接触させる工程であって、前記酸素中のオゾン濃度が約1〜20質量%であり、酸素中にオゾンが混合された混合物の温度が約0〜30℃である工程;
d)スラリーから水酸化アルミニウムを集める工程。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
本発明の第一の態様は、バイヤー法によって製造される水酸化アルミニウム組成物において、水酸化アルミニウムの総有機炭素が、水酸化アルミニウム1グラム当たり、約0.5ミリグラム未満の有機炭素である水酸化アルミニウムを製造することを含む改良である。
【0020】
バイヤー法によって製造される水酸化アルミニウムは、水1リットル当たり約50〜1000グラムの固体を含むスラリーとなるように、好ましくは水1リットル当たり約400〜700グラムの固体を含むスラリーとなるように、水中に分散される。
【0021】
スラリーの温度は約5〜95℃であり、好ましくは約15〜40℃であり、最も好ましくは約20〜30℃である。
【0022】
固体は、適当な攪拌技術を用いて分散状態が維持される。これには、バッチ式または連続式槽型容器、流動層反応器、あるいは他の適当な反応器中での機械攪拌として、もしくは連続パイプ流反応器(continuous pipe-flow reactor)中の乱流によって、等の方法が含まれるが、これらに限定されるものではない。
【0023】
スラリーのpHは、約9より大きい、より好ましくは約10より大きい、最も好ましくは約12より大きい、塩基性である。スラリーのpHを必要なレベルに上げ、維持するために、適当な塩基を使用することができる。適当な塩基には、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化セシウム、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化ストロンチウム、酸化バリウム、あるいはこれらの水酸化物が含まれる。好ましい塩基は、水酸化ナトリウム、酸化カルシウム、酸化バリウムである。最も好ましいのは酸化カルシウムと酸化バリウムである。
【0024】
酸化カルシウムと酸化バリウム塩基は、炭素化合物とオゾンの反応で最終的に生成する炭酸イオンと、以下の反応一般式にしたがって反応し、析出するため好ましい:
+ C → CO + 1/2 O
CO + 2OH → CO2−+ H
M(OH) + CO2− → MCO + 2OH(M=カルシウムまたはバリウム)
【0025】
水層からの炭酸イオンの除去がないと、水酸化アルミニウムとオゾンとの相互作用の効果はヒドロキシルラジカルのクエンチングによって減じられてしまう。これは、ヒドロキシラジカルがオゾンから形成されるものであり、アルカリ性のpHで有機化合物の酸化に関与する反応種がヒドロキシラジカルであることによるものである。
【0026】
約1〜20質量%のオゾンを含む、酸素中にオゾンが混合された混合物は、約0〜30℃、好ましくは約10〜20℃の温度で水酸化アルミニウムスラリーに添加される。オゾン/酸素混合物は、いかなる公知の手法によっても、水酸化アルミニウムから効果的に有機炭素を取り除く量を水酸化アルミニウムスラリーに添加することができる。水酸化アルミニウムスラリーに、オゾン/酸素混合物を添加するために使用する典型的な装置には、バッチ式または連続式槽型容器、充てん床反応器、流動層反応器、混合槽中のガス拡散器、あるいは、液またはスラリーと気体とを接触させるように設計された他の装置が含まれるが、これに限定されるものではない。この種の装置は、ヘルブル(Helble)ら著、「パルプおよび製紙工業におけるオゾン処理と固定床生物膜反応器を組み合わせた先進的な廃液処理(Advanced Effluent Treatment in the Pulp and Paper Industry with a Combined Process of Ozonation and Fixed Bed Biofilm Reactors)」、ウオーターサイエンスアンドテクノロジー、第40巻、第11〜12号、1999年、pp343〜350に述べられている。
【0027】
水酸化アルミニウムスラリーを入れるための反応器が選択された後、接触の好ましい方法は、市販の酸素中オゾン低圧力注入装置を使用して、スラリ−中に、酸素中にオゾンが混合された混合物を注入することである。
【0028】
水酸化アルミニウムスラリーに添加されるオゾン/酸素混合物の量は、使用される装置の個々の種類に依存する。オゾン/酸素混合物の量は、通常、水酸化アルミニウム固体1キログラム当たり、オゾンが約0.4〜10グラムとなる範囲である。しかしながら、添加することのできるオゾン/酸素混合物の最大量は、スラリーによって物理的に吸収されることのできるオゾンの量によってのみ事実上制限されることは当業者に理解されるであろう。
【0029】
オゾンがスラリーと接触され続ける時間は、好ましくは約10〜150分であり、好ましくは約30〜120分であり、最も好ましくは約60〜90分である。オゾンがスラリーと接触され続ける時間の長さは、スラリーへのオゾンの添加速度やスラリー中の固体量を含む多くの要因に依存する。スラリーへのオゾンの添加が比較的早いと、工程が完了するのに要する時間は比較的短くなる。オゾンのスラリーへの添加速度と、水酸化アルミニウムから有機炭素を十分取り除くのに要する時間の最適化は、当業者の通常の能力の範囲内である。
【0030】
工程の終わりに、オゾン供給は止められ、固体水酸化アルミニウムは、業界で公知の通常の固体収集技術を用いてスラリーから集められる。固体収集技術には、濃縮、ろ過、遠心分離、沈降、デカンテーションが含まれるが、これに限定されるものではない。
【0031】
非常に純度が高い水酸化アルミニウムが必要とされる用途のためには、オゾン処理から集められた水酸化アルミニウムは、水酸化ナトリウム溶液中で抽出し、それに引き続いて純度の高い水酸化アルミニウム種結晶を用いて析出させることによって、さらに精製される。この方法は、以下の付加的な工程を含むものである:
e)水酸化ナトリウム水溶液に水酸化アルミニウムを添加し、水酸化ナトリウムに水酸化アルミニウムを抽出させる工程;
f)水酸化アルミニウムの種結晶による析出化を始めるために、溶液に固体水酸化アルミニウムを添加する工程;
g)水酸化アルミニウム1グラム当たり約0.2g未満の有機炭素である総有機炭素量の、析出した水酸化アルミニウムを集める工程。
【0032】
バイヤー法を用いて製造し、オゾンで処理し、それから水酸化ナトリウムから抽出および析出した水酸化アルミニウムは、水酸化アルミニウム1グラム当たり、約0.2g未満の有機炭素である総有機成分を有する。
【0033】
上述した方法によって製造される生成物は、引き続く処理工程を有するバイヤー法によって製造された水酸化アルミニウムであり、これによって製造された水酸化アルミニウムは、水酸化アルミニウム1グラム当たり、約0.5g未満の有機炭素である総有機炭素を有する。
【実施例】
【0034】
以下の実施例は、本発明の具体例を説明し、当業者に本発明の製法と使用法を教示するものである。これらの実施例は、決して本発明あるいはその保護範囲を限定するものではない。
【0035】
(実施例1)
バイヤー法に従って製造された水酸化アルミニウムが、水1リットル当たり、約442グラムの固体を含むスラリーとなるように水に分散された。pHは、スラリー水1リットル当たり、33%NaOH約1ミリリットルの割合で、33%NaOHを添加することによって、少なくともpH約12となるように調整された。固体はバッチ式槽の中で、機械的攪拌によって分散状態が維持された。
【0036】
約14質量%のオゾンを含む、酸素中にオゾンが混合された混合物が、約23℃の温度で、水酸化アルミニウムスラリー中へ入れられた。オゾンは約90分間スラリーと接触状態にされた。
【0037】
水酸化アルミニウムの色は、吸収されたオゾンの関数として、ハンターラブスキャンXEスペクトロメータで測定された。データは表に示されている。総有機炭素量(Total Organic Carbon)は、試料を燃やし、赤外分析法によって二酸化炭素の量を割り出すことによって測定した。
【0038】
総有機炭素量(TOC)は、水酸化アルミニウム1グラム当たりの有機炭素ミリグラム、あるいは以下の式で表される質量%TOCで記録される。
有機炭素のグラム量/水酸化アルミニウムのグラム量 ×100
【0039】
表1に結果を示す。
【0040】
【表1】

【0041】
ハンターカラーのデータは、総有機炭素量の低下は、色の退色に付随して起こることを示している。
【0042】
(実施例2)
バイヤー法に従って製造された水酸化アルミニウムが、水1リットル当たり、約332グラムの固体を含むスラリーとなるように水に分散された。pHは、スラリー水1リットル当たり、約1ミリリットルの割合で、33%NaOHを添加することによってpH12となるように調整された。水温は約22℃であった。固体はバッチ式反応槽中で、機械的攪拌によって分散状態が維持された。約13質量%のオゾンを含む、酸素中に室温のオゾンが混合された混合物は、水酸化アルミニウムスラリー中へ入れられた。オゾンは約90分間スラリーと接触状態にされた。表2に結果を示す。
【0043】
【表2】

【0044】
以上、好ましいあるいは具体的な実施形態に関連して本発明を説明してきたが、これらの実施形態は発明を網羅あるいは発明を制限するものではない。むしろ、本発明は、請求項に規定される本発明の趣旨および範囲に含まれる全ての変更、修正、均等物を包含するものである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バイヤー法によって製造される水酸化アルミニウム組成物において、前記水酸化アルミニウム中の総有機炭素量が、水酸化アルミニウム1グラム当たり、約0.5ミリグラム未満の総有機炭素量である水酸化アルミニウムを製造することを含む改良。
【請求項2】
前記水酸化アルミニウムの総有機炭素量が、水酸化アルミニウム1グラム当たり、約0.3ミリグラム未満の総有機炭素量である請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
前記水酸化アルミニウムの総有機炭素量が、水酸化アルミニウム1グラム当たり、約0.2ミリグラム未満の総有機炭素量である請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
水酸化アルミニウムを製造するバイヤー法において、水酸化アルミニウムの総有機炭素量が、水酸化アルミニウム1グラム当たり、約0.5ミリグラム未満の総有機炭素量である前記水酸化アルミニウムを、以下の工程を含んで製造することを含む改良:
a)水酸化アルミニウムの水スラリーを作るために、pHが約10より大きい水に、水酸化アルミニウムを分散する工程であって、前記スラリーは水1リットル当たり約50〜1000グラムの固体を含み、前記スラリーの温度は約5〜95℃である工程;
b)適当な攪拌技術を用いて前記スラリー中の前記固体の分散状態を維持する工程;
c)前記スラリーを、酸素にオゾンが混合された混合物と接触させる工程であって、前記酸素中のオゾン濃度が約1〜20質量%であり、前記酸素にオゾンが混合された混合物の温度が約0〜30℃である工程;
d)前記スラリーから前記水酸化アルミニウムを集める工程。
【請求項5】
前記スラリーのpHが前記スラリーに塩基を添加することによって10より大きい値に維持され、前記塩基は水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化セシウム、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、酸化ストロンチウム、酸化バリウム、およびこれらの水酸化物からなる群から選択されるものである、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記塩基が酸化カルシウム、酸化バリウム、これらの水酸化物、および水酸化ナトリウムからなる群から選択されるものである請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記塩基が酸化カルシウムである請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記塩基が酸化バリウムである請求項6に記載の方法。
【請求項9】
以下の工程をさらに含むことを特徴とする請求項4に記載の方法:
e)水酸化ナトリウム水溶液に集めた水酸化アルミニウムを添加し、水酸化ナトリウムに水酸化アルミニウムを抽出させる工程;
f)水酸化アルミニウムの種結晶による析出化を始めるために、前記溶液に固体水酸化アルミニウムを添加する工程;
g)水酸化アルミニウム1グラム当たり約0.2mg未満の有機炭素である総有機炭素量の、析出した水酸化アルミニウムを集める工程。

【公表番号】特表2007−523815(P2007−523815A)
【公表日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−504642(P2005−504642)
【出願日】平成15年8月4日(2003.8.4)
【国際出願番号】PCT/US2003/024514
【国際公開番号】WO2005/009903
【国際公開日】平成17年2月3日(2005.2.3)
【出願人】(503270032)ナルコ カンパニー (22)
【氏名又は名称原語表記】NALCO COMPANY
【住所又は居所原語表記】1601 W.Diehl Road,Naperville,IL 60563−1198,United States of America
【Fターム(参考)】