説明

バインダー樹脂組成物及び無機微粒子分散ペースト組成物

【課題】チキソトロピー性、拭き取り性等に優れ、スクリーン印刷性の経時変化が少なく、かつ、低温焼成が可能であるバインダー樹脂組成物、及び、無機微粒子分散ペースト組成物を提供する。
【解決手段】ゲル浸透クロマトグラフィーにより測定したポリスチレン換算数平均分子量が4000〜40万のポリアルキレンエーテル、水酸基を3個以上有する有機化合物、有機溶剤、及び、無機微粒子を含有する無機微粒子分散ペースト組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チキソトロピー性、拭き取り性に優れ、スクリーン印刷性の経時変化が少なく、かつ、低温焼成が可能なバインダー樹脂組成物及び無機微粒子分散ペースト組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
プラズマディスプレイパネル(以下、PDPともいう)は、平板状蛍光体表示板として注目されている。PDPは、前面ガラス基板と背面ガラス基板との間に備えられた放電空間内で電極間にプラズマ放電させ、放電空間内に封入されているガスから発生した紫外線を放電空間内の蛍光体に当てることにより発光を得るものである。
【0003】
放電空間内の蛍光体は、従来は、テルピネオール等の有機溶剤に、バインダー樹脂としてエチルセルロースを溶解させて得られる有機バインダーに、蛍光体を分散させて得られるペースト組成物を、スクリーン印刷装置を用いてガラス基板表面に塗工し、有機溶剤を乾燥させた後、エチルセルロースを熱分解させることによりガラス基板表面で焼結したものである。
【0004】
スクリーン印刷を行う際には、塗工するペースト組成物がチキソトロピー性(以下、チキソ性ともいう)を有することが好ましい。チキソ性とは、例えば、回転粘度計で粘度を評価した場合、高回転(歪速度が高い変位)では粘性が低くなり、低回転(歪速度が低い変位)では粘性が高くなる性質であり、ペースト組成物においては、塗工の際には粘度が充分に低く塗工が容易で、一方、塗工後に静置して乾燥させる際には粘度が充分に高く自然流延してしまわないという性質が求められる。
【0005】
バインダー樹脂としてエチルセルロースを用いると、良好なチキソ性が得られるが、熱分解性が悪いため、500℃程度まで加熱する必要がある。このような高温で加熱してしまうと、蛍光体の初期輝度が劣化してしまうという問題があった。
【0006】
これに対し、特許文献1、特許文献2には、有機バインダーとしてエーテル材料とアクリル樹脂との組み合わせが開示されている。このような有機バインダーは低温で分解するため、蛍光体の初期輝度の劣化の問題が生じない。
ここで、スクリーン印刷装置を用いてペースト組成物を印刷する作業を長時間連続して行った場合には、スクリーン印刷版からガラス基板に落ちきらずにスクリーン印刷版の裏面にペースト組成物が付着する現象が発生する。スクリーン印刷版の裏面はその都度ウエス等によって拭き取りがなされるが、有機バインダーとしてエーテル材料とアクリル樹脂との組み合わせを用いると、スクリーン印刷版の拭き取り性が悪いという問題が生じる。拭き取り性が悪いと、スクリーン印刷版からガラス基板が剥れなくなり、生産性が極端に悪くなるという問題があった。
【特許文献1】特開2005−179178号公報
【特許文献2】特開2002−311583号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記現状に鑑み、チキソトロピー性、拭き取り性に優れ、スクリーン印刷性の経時変化が少なく、かつ、低温焼成が可能なバインダー樹脂組成物及び無機微粒子分散ペースト組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、ゲル浸透クロマトグラフィーにより測定したポリスチレン換算数平均分子量が4000〜40万のポリアルキレンエーテルと、水酸基を3個以上有する有機化合物とを含有することを特徴とするバインダー樹脂組成物である。
また、本発明は、ゲル浸透クロマトグラフィーにより測定したポリスチレン換算数平均分子量が4000〜40万のポリアルキレンエーテル、水酸基を3個以上有する有機化合物、有機溶剤、及び、無機微粒子を含有することを特徴とする無機微粒子分散ペースト組成物である。
以下に本発明を詳述する。
【0009】
本発明者らは、無機微粒子分散ペースト組成物のバインダー樹脂として、ポリアルキレンエーテル樹脂を用いることにより、熱分解温度の問題や拭き取り性の問題を解決することを考えた。
しかしながら、バインダー樹脂に対する無機微粒子の分散性が悪いという問題や、充分なチキソ性が得られないという問題があった。また、低分子量のポリアルキレンエーテル樹脂を用いると、有機溶剤等で希釈されることにより、チキソ性が得られないという問題があった。
本発明者らは、更に鋭意検討の結果、一定の範囲の数平均分子量を有するポリアルキレンエーテル樹脂、水酸基を一定以上有する有機化合物を含有するバインダー樹脂組成物は無機微粒子の分散性に優れ、チキソトロピー性を発現することを見出した。
更に、一定の範囲の数平均分子量を有するポリアルキレンエーテル樹脂、水酸基を一定以上有する有機化合物及び無機微粒子を含有する無機微粒子分散ペースト組成物は、チキソトロピー性、拭き取り性、更には糸曳性にも優れ、スクリーン印刷性の経時変化が少なく、かつ、低温焼成が可能であるということを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0010】
本発明の無機微粒子分散ペースト組成物は、ゲル浸透クロマトグラフィー(以下、GPCともいう)により測定したポリスチレン換算数平均分子量が4000〜40万のポリアルキレンエーテルを含有する。
本発明において、上記ポリアルキレンエーテルは、バインダーとしての役割を有する。
【0011】
上記ポリアルキレンエーテルは、GPCにより測定したポリスチレン換算数平均分子量の下限が4000、上限が40万である。ポリスチレン換算数平均分子量が4000未満であると、充分なチキソ性が得られないことがあり、40万を超えると、沸点が高くなりすぎ、低温焼成ができなくなったり、糸曳きが悪くなったりすることがある。好ましい下限は6000、好ましい上限は35万であり、より好ましい下限は8000、より好ましい上限は30万である。
また、GPCによりポリスチレン換算数平均分子量を測定する際のカラムとしてはSHOKO社製カラムLF−804等が挙げられる。
【0012】
上記ポリアルキレンエーテルとしては特に限定されず、例えば、ポリプロピレングリコールエーテル、ポリテトラメチレングリコールエーテル、ポリエチレングリコールエーテル等が挙げられる。なかでも、ポリエチレングリコールエーテルは有機溶媒に溶けない場合があり、また、ポリテトラメチレングリコールエーテルは熱分解性が劣る場合がある等の理由から、ポリプロピレングリコールエーテルが好適に用いられる。
しかし、ポリアルキレンエーテル類は複数の種類のランダム又はブロック共重合体が容易に製造できるため、ポリエチレングリコールエーテルの結晶性等の問題は容易に解決が可能である。そのため、ポリエチレングリコールエーテルとポリプロピレングリコールエーテルとの共重合体、ポリエチレングリコールエーテルとポリテトラメチレングリコールエーテルとの共重合体、ポリプロピレングリコールエーテルとポリテトラメチレングリコールエーテルとの共重合体は好適に用いることができる。
【0013】
本発明の無機微粒子分散ペースト組成物は、水酸基を3個以上有する有機化合物を含有する。
上記ポリアルキレンエーテルは、溶媒等で希釈されることにより、低粘度化されるため、無機微粒子分散ペースト組成物はスクリーン印刷性が低下する。しかし、本発明の無機微粒子分散ペースト組成物においては、上記水酸基を3個以上有する有機化合物を添加することにより、上記ポリアルキレンエーテルとの間に水素結合による相互作用が生じるため、本発明の無機微粒子分散ペースト組成物の熱分解性を損なうことなく増粘させることができ、更に、後述する無機微粒子を添加することにより、チキソ性を向上させることができる。
【0014】
上記水酸基を3個以上有する有機化合物としては特に限定されず、例えば、グリセリン、ジグリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、メソ−エリスリトール、L−スレイトール、D−スレイトール、DL−スレイトール、2−ヒドロキシメチル−1,3−プロパンジオール、1,1,1−トリヒドロキシメチルエタン、1,2,4−ブタントリオール、1,2,6−ヘキサントリオール等が挙げられる。なかでも、常温で液状のものが好適に用いられる。
【0015】
上記水酸基を3個以上有する有機化合物は、上記ポリアルキレンエーテルとの相溶性が高まることから、水酸基価が200mgKOH/g以上の多官能ポリエーテルであることが好ましい。また、より相溶性が高まることから、上記多官能ポリエーテルは、上記ポリアルキレンエーテルと同一の基本繰り返し構造を持つことが好ましい。
上記水酸基を3個以上有する有機化合物として、このようなものを用いることにより、スクリーン印刷時の拭き取り性が良好となる。
【0016】
上記水酸基を3個以上有する有機化合物の含有量としては特に限定されないが、本発明の無機微粒子分散ペースト組成物全体に対して好ましい下限は0.1重量%である。0.1重量%未満であると、充分なチキソ性が得られないことがある。
また、上記水酸基を3個以上有する有機化合物が、上記水酸基価が200mgKOH/g以上の多官能ポリエーテルである場合は、上記ポリアルキレンエーテルとの相溶性が悪くなりにくいため、含有量の上限は特に限定されない。更に、上記多官能ポリエーテルを用いることで、無機微粒子分散ペースト組成物の低温分解性が向上する。
一方、上記水酸基を3個以上有する有機化合物が、上記水酸基価が200mgKOH/g以上の多官能ポリエーテル以外である場合は、好ましい上限は50重量%である。50重量%を超えると、上記ポリアルキレンエーテルとの相溶性が悪くなることがあり、無機微粒子分散ペーストの貯蔵安定性が悪化することがある。
【0017】
ここで、上記ゲル浸透クロマトグラフィーにより測定したポリスチレン換算数平均分子量が4000〜40万のポリアルキレンエーテルと、上記水酸基を3個以上有する有機化合物とを含有するバインダー樹脂組成物もまた、本発明の1つである。
【0018】
本発明の無機微粒子分散ペースト組成物は、有機溶剤を含有する。
上記有機溶剤は、本発明の無機微粒子分散ペースト組成物の拭き取り性及び糸曳性を高める目的で用いられる。
上記有機溶剤としては特に限定されず、例えば、ターピネオール、エチレングリコールエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ブチルカルビトール、ブチルカルビトールアセテート、イソホロン、乳酸ブチル、ジオクチルフタレート、ジオクチルアジペート、ベンジルアルコール、フェニルプロピレングリコール、クレゾール、2−フェノキシエタノール、1,2−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサントリオール、1,2,6−ヘキサントリオール等が挙げられる。これらは、単独で用いられてもよいし2種以上が併用されてもよい。
ここで、無機微粒子分散ペースト組成物の拭き取り性は、組成物中の樹脂分率に依存し、樹脂分が少ないほど拭き取り性が良好である。このことから、これらの例示のうち、高粘度かつ沸点が200〜300℃であるターピネオール、2−フェノキシエタノール、1,2−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサントリオール、1,2,6−ヘキサントリオール等は、上記ポリアルキレンエーテルの添加量を減らしても粘度を高め、300℃以下で蒸発するため好適に用いられる。
【0019】
上記有機溶剤の添加量としては特に限定されないが、本発明の無機微粒子分散ペースト組成物100重量部に対して好ましい下限は5重量部、好ましい上限は30重量部である。5重量部未満であると、本発明の無機微粒子分散ペースト組成物の拭き取り性を充分に高めることができないことがあり、30重量部を超えると、本発明の無機微粒子分散ペースト組成物のチキソ性が低下し、スクリーン印刷性が低下することがある。
【0020】
本発明の無機微粒子分散ペースト組成物は、無機微粒子を含有する。
上記無機微粒子としては特に限定されず、例えば、銅、銀、ニッケル、パラジウム、アルミナ、ジルコニア、酸化チタン、チタン酸バリウム、窒化アルミナ、窒化ケイ素、窒化ホウ素、ケイ酸塩ガラス、鉛ガラス、CaO・Al・SiO系無機ガラス、MgO・Al・SiO系無機ガラス、LiO・Al・SiO系無機ガラスの低融点ガラス、BaMgAl1017:Eu、ZnSiO:Mn、(Y、Gd)BO:Eu等の蛍光体、種々のカーボンブラック、金属錯体等が挙げられる。熱劣化することが知られている蛍光体等の無機微粒子は、低温分解できるバインダーと組み合わせることで熱劣化を抑えたプロセスで焼結体を得ることが可能である。なかでも、蛍光体を用いることにより、PDP、FED(Field Emission Display)、SED(Surface Conduction Electron Emission Display)等の各種ディスプレイ装置の蛍光面形成に好適に用いることができる。
【0021】
上記無機微粒子の添加量としては特に限定されないが、本発明の無機微粒子分散ペースト組成物100重量部に対して好ましい上限は50重量部である。50重量部を超えると、均一に分散させることが困難となることがある。
【0022】
本発明の無機微粒子分散ペースト組成物は、B型粘度計を用い、プローブ回転数を5rpmに設定して測定したときの粘度η5rpmと、プローブ回転数を30rpmに設定して測定したときの粘度η30rpmとの比η5rpm/η30rpmが1.5以上であることが好ましい。1.5未満であると、本発明の無機微粒子分散ペースト組成物のチキソ性が低下し、スクリーン印刷性が低下することがある。
また、本発明の無機微粒子分散ペースト組成物は、比重の重い無機微粒子を分散させなければならないので、ある程度粘度が高くなければ比重の重い無機微粒子が沈降してしまう。そのため、23℃においてB型粘度計を用い、回転数5rpmにおける粘度が20Pa・s以上であることが好ましい。
【0023】
本発明の無機微粒子分散ペースト組成物は、大気中350℃で10分加熱したときに、GPCにより測定したポリスチレン換算数平均分子量が4000〜40万のポリアルキレンエーテル、及び、水酸基を3個以上有する有機化合物の分解率が99.5%以上である。これにより、本発明の無機微粒子分散ペースト組成物は、無機微粒子、特に蛍光体の劣化の原因となる高温焼成をすることなく低温で焼成が可能となる。
【0024】
本発明の無機微粒子分散ペースト組成物の製造方法としては特に限定されず、従来公知の攪拌方法、具体的には例えば、3本ロール等で混練を行えばよい。
【0025】
本発明の無機微粒子分散ペースト組成物は、300℃未満で蒸発する溶剤、及び、300℃未満で熱分解するポリアルキレンエーテル樹脂から構成されているため低温焼成が可能となる。
ここで、低温焼成とは、バインダー初期重量の99.5%が失われる焼成温度が低温であることを意味し、本明細書においては窒素置換等をしない通常の空気雰囲気下で、焼成温度が250〜400℃である場合を低温焼成と定義する。
【発明の効果】
【0026】
本発明により、一定の範囲の数平均分子量を有するポリアルキレンエーテル樹脂、水酸基を一定以上有する有機化合物を含有する無機微粒子分散ペースト組成物は、チキソトロピー性、拭き取り性、糸曳性に優れ、スクリーン印刷性の経時変化が少なく、かつ、低温焼成が可能であるということを見出した。
本発明によれば、チキソトロピー性、拭き取り性に優れ、スクリーン印刷性の経時変化が少なく、かつ、低温焼成が可能なバインダー樹脂組成物及び無機微粒子分散ペースト組成物を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【0028】
(実施例1)
ポリプロピレングリコールエーテル(ポリスチレン換算数平均分子量15000)を35重量部、有機溶剤としてテルピネオール20重量部、水酸基を3個以上有する有機化合物としてグリセリンを5重量部配合し、高速攪拌装置にて均一になるまで混練し、バインダー樹脂組成物を作製した。
次に、無機微粒子として、蛍光体であるZnSiO:Mn(日亜化学工業社製、緑色蛍光体)を40重量部添加し、高速攪拌機にて混練後、3本ロールミルにてなめらかになるまで混練することにより、無機微粒子分散ペースト組成物を作製した。
なお、ポリスチレン換算数平均分子量は、GPCにより測定し、カラムとしてSHOKO社製カラムLF−804を用いた。以下の実施例及び比較例も同様である。
【0029】
(実施例2)
ポリプロピレングリコールエーテル(ポリスチレン換算数平均分子量8000)を35重量部、有機溶剤としてテルピネオール20重量部、水酸基を3個以上有する有機化合物としてグリセリンを5重量部配合し、高速攪拌装置にて均一になるまで混練し、バインダー樹脂組成物を作製した。
次に、無機微粒子として、蛍光体であるZnSiO:Mn(日亜化学工業社製、緑色蛍光体)を40重量部添加し、高速攪拌機にて混練後、3本ロールミルにてなめらかになるまで混練することにより、無機微粒子分散ペースト組成物を作製した。
【0030】
(実施例3)
ポリプロピレングリコールエーテル(ポリスチレン換算数平均分子量15000)を25重量部、有機溶剤としてテルピネオール10重量部、水酸基を3個以上有する有機化合物として多官能ポリプロピレングリコールエーテル(水酸基価755mgKOH/g)を25重量部配合し、高速攪拌装置にて均一になるまで混練し、バインダー樹脂組成物を作製した。
次に、無機微粒子として、蛍光体であるZnSiO:Mn(日亜化学工業社製、緑色蛍光体)を40重量部添加し、高速攪拌機にて混練後、3本ロールミルにてなめらかになるまで混練することにより、無機微粒子分散ペースト組成物を作製した。
【0031】
(実施例4)
ポリプロピレングリコールエーテル(ポリスチレン換算数平均分子量15000)を25重量部、有機溶剤としてテルピネオール10重量部、水酸基を3個以上有する有機化合物として多官能ポリプロピレングリコールエーテル(水酸基価288mgKOH/g)を25重量部配合し、高速攪拌装置にて均一になるまで混練し、バインダー樹脂組成物を作製した。
次に、無機微粒子として、蛍光体であるZnSiO:Mn(日亜化学工業社製、緑色蛍光体)を40重量部添加し、高速攪拌機にて混練後、3本ロールミルにてなめらかになるまで混練することにより、無機微粒子分散ペースト組成物を作製した。
【0032】
(実施例5)
ポリプロピレングリコールエーテル(ポリスチレン換算数平均分子量15000)を35重量部、有機溶剤としてテルピネオール20重量部、水酸基を3個以上有する有機化合物としてグリセリンを5重量部配合し、高速攪拌機にて均一になるまで混練し、バインダー樹脂組成物を作製した。
次に、無機微粒子として、蛍光体であるBaMgAl1017:Eu(日亜化学工業社製、青色蛍光体)を40重量部添加し、高速攪拌機にて混練後、3本ロールミルにてなめらかになるまで混練することにより、無機微粒子分散ペースト組成物を作製した。
【0033】
(実施例6)
ポリプロピレングリコールエーテル(ポリスチレン換算数平均分子量15000)を35重量部、有機溶剤としてテルピネオール20重量部、水酸基を3個以上有する有機化合物としてグリセリンを5重量部配合し、高速攪拌装置にて均一になるまで混練し、バインダー樹脂組成物を作製した。
次に、無機微粒子として、蛍光体である(Y、Gd)BO:Eu(日亜化学工業社製、赤色蛍光体)を40重量部添加し、高速攪拌機にて混練後、3本ロールミルにてなめらかになるまで混練することにより、無機微粒子分散ペースト組成物を作製した。
【0034】
(比較例1)
ポリプロピレングリコールエーテル(ポリスチレン換算数平均分子量2000)を35重量部、有機溶剤としてテルピネオール20重量部、水酸基を3個以上有する有機化合物としてグリセリンを5重量部配合し、高速攪拌装置にて均一になるまで混練し、バインダー樹脂組成物を作製した。
次に、無機微粒子として、蛍光体であるZnSiO:Mn(日亜化学工業社製、緑色蛍光体)を40重量部添加し、高速攪拌機にて混練後、3本ロールミルにてなめらかになるまで混練することにより、無機微粒子分散ペースト組成物を作製した。
【0035】
(比較例2)
ポリプロピレングリコールエーテル(ポリスチレン換算数平均分子量2000)を25重量部、有機溶剤としてテルピネオール10重量部、水酸基を3個以上有する有機化合物として多官能ポリプロピレングリコールエーテル(水酸基価755mgKOH/g)を25重量部配合し、高速攪拌装置にて均一になるまで混練し、バインダー樹脂組成物を作製した。
次に、無機微粒子として、蛍光体であるZnSiO:Mn(日亜化学工業社製、緑色蛍光体)を40重量部添加し、高速攪拌機にて混練後、3本ロールにてなめらかになるまで混練することにより、無機微粒子分散ペースト組成物を作製した。
【0036】
(比較例3)
メチルメタクリレートをテルピネオール中にて重合することにより、ポリスチレン換算数平均分子量10万のアクリル樹脂を得た。テルピネオール含有アクリル樹脂を35重量部、有機溶剤としてテルピネオール20重量部、水酸基を3個以上有する有機化合物としてグリセリンを5重量部配合し、高速攪拌装置にて均一になるまで混練し、バインダー樹脂組成物を作製した。
次に、無機微粒子として、蛍光体であるZnSiO:Mn(日亜化学工業社製、緑色蛍光体)を40重量部添加し、高速攪拌機にて混練後、3本ロールにてなめらかになるまで混練することにより、無機微粒子分散ペースト組成物を作製した。
【0037】
(比較例4)
ポリプロピレングリコールエーテル(ポリスチレン換算数平均分子量15000)を40重量部、有機溶剤としてテルピネオール20重量部を配合し、高速攪拌装置にて均一になるまで混練し、バインダー樹脂組成物を作製した。
次に、無機微粒子として、蛍光体であるZnSiO:Mn(日亜化学工業社製、緑色蛍光体)を40重量部添加し、高速攪拌機にて混練後、3本ロールミルにてなめらかになるまで混練することにより、無機微粒子分散ペースト組成物を作製した。
【0038】
<評価>
実施例1〜6及び比較例1〜4で得られた無機微粒子分散ペースト組成物について以下の評価を行った。結果を表1に示した。
【0039】
(1)スクリーン印刷性(粘度比法(チキソ性評価法))
無機微粒子分散ペースト組成物をB型粘度計(BROOK FILED社製、DVII+Pro)を利用して23℃で、回転数5rpmと30rpmとについてそれぞれ粘度η5rpm、η30rpmを測定した。得られた粘度から粘度比η5rpm/η30rpmを求めた。
粘度比η5rpm/η30rpmが1.5以上であるものをスクリーン印刷性に優れるものと判断した。
【0040】
(2)TG・DTA評価
無機微粒子分散ペースト組成物の蛍光体を加える前のバインダー樹脂組成物を熱分解装置(TAインスツルメンツ社製simultaneousSDT2960)を用いて空気雰囲気下にて昇温温度10℃/minで600℃まで加熱し、完全に熱分解が終了する温度を測定した。
分解終了温度が400℃以下のものを良好と判断した。
【0041】
(3)拭き取り性評価
ステンレス板上に10gの無機微粒子分散ペースト組成物をアプリケータにて5ミルの厚みに塗工し、エタノールを含ませたキムタオルにて拭き取り、拭き取り易さを以下の基準により評価した。
○:きれいに拭き取ることができた。
×:きれいに拭き取ることができなかった。
【0042】
(4)熱分解率評価
アズワン社製アルミカップにサンプル番号が分かるように印を入れ、電子天秤を用いて予め重量を評価した。無機微粒子分散ペースト組成物の蛍光体を加える前のバインダー樹脂組成物を約10g、アルミカップに秤量した。脱気可能な強制循環式オーブンを予め350℃に設定し、内部温度が安定したことを確認した後、バインダー樹脂組成物を秤量したアルミカップをオーブンに投入し、10分後取り出し、室温で冷却後、電子天秤にてアルミカップの重量を秤量し、バインダー樹脂組成物の分解率を評価した。
【0043】
【表1】

【0044】
実施例1〜6においては、すべての評価項目において良好な結果が得られた。
比較例1、2においては、高分子量ポリアルキレンエーテルを添加しなかったためにチキソ性が得られず、全体的に粘度が低くなった。そのため、経時変化観察にて蛍光体の沈降が見られた。
比較例3においては、アクリル樹脂を用いたが、熱分解温度が高く、エタノール拭き取り性では強い粘着性を示し、拭き取り性が悪かった。
比較例4においては、水酸基を3個以上有する有機化合物を添加しなかったためにチキソ性が得られず、全体的に粘度が低くなった。そのため、経時変化観察にて蛍光体の沈降が見られた。
【産業上の利用可能性】
【0045】
本発明によれば、チキソトロピー性、拭き取り性に優れ、スクリーン印刷性の経時変化が少なく、かつ、低温焼成が可能なバインダー樹脂組成物及び無機微粒子分散ペースト組成物を提供することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ゲル浸透クロマトグラフィーにより測定したポリスチレン換算数平均分子量が4000〜40万のポリアルキレンエーテルと、水酸基を3個以上有する有機化合物とを含有することを特徴とするバインダー樹脂組成物。
【請求項2】
ゲル浸透クロマトグラフィーにより測定したポリスチレン換算数平均分子量が4000〜40万のポリアルキレンエーテル、水酸基を3個以上有する有機化合物、有機溶剤、及び、無機微粒子を含有することを特徴とする無機微粒子分散ペースト組成物。
【請求項3】
ポリアルキレンエーテルは、ポリプロピレングリコールエーテルであることを特徴とする請求項2記載の無機微粒子分散ペースト組成物。
【請求項4】
水酸基を3個以上有する有機化合物は、水酸基価が200mgKOH/g以上の多官能ポリエーテルであることを特徴とする請求項2又は3記載の無機微粒子分散ペースト組成物。
【請求項5】
水酸基を3個以上有する有機化合物の含有量が0.1〜50重量%であることを特徴とする請求項2又は3記載の無機微粒子分散ペースト組成物。
【請求項6】
有機溶剤の沸点が200〜300℃であることを特徴とする請求項2、3、4又は5記載の無機微粒子分散ペースト組成物。
【請求項7】
無機微粒子は、蛍光体であることを特徴とする請求項2、3、4、5又は6記載の無機微粒子分散ペースト組成物。
【請求項8】
23℃においてB型粘度計を用い、プローブ回転数を5rpmに設定して測定したときの粘度η5rpmと、プローブ回転数を30rpmに設定して測定したときの粘度η30rpmとの比η5rpm/η30rpmが1.5以上であることを特徴とする請求項2、3、4、5、6又は7記載の無機微粒子分散ペースト組成物。
【請求項9】
大気中350℃で10分加熱したときに、ポリアルキレンエーテル、及び、水酸基を3個以上有する有機化合物の分解率が99.5%以上であることを特徴とする請求項2、3、4、5、6、7又は8記載の無機微粒子分散ペースト組成物。

【公開番号】特開2007−106802(P2007−106802A)
【公開日】平成19年4月26日(2007.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−296774(P2005−296774)
【出願日】平成17年10月11日(2005.10.11)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】