説明

バケットエレベータ及びバケットエレベータの残留穀物処理方法

【課題】 穀物の品質が確保されるバケットエレベータ及びバケットエレベータの底部残留物処理方法を提供する。
【解決手段】 下部ユニット9の底板3に設けられた送風口39から底板3上の残留穀物4に送風して当該残留穀物4を穀物汲み上げ方向Aへ吹き上げるエアスウィープ構造を採用した。したがって、吹き上げられた残留穀物4が下ベルト車11の回りを旋回するバケット6によって回収される。これにより、次に搬送される穀物と残留穀物4との品種が異なる場合に、次に搬送される穀物に残留穀物4が混入される、所謂コンタミ(異品種混入)が防止されて、穀物の品質及び商品価値が確保される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バケットエレベータ及びバケットエレベータの残留穀物処理方法に関するもので、特に、穀物を搬送するためのバケットエレベータ及び該バケットエレベータの底部に残留した穀物の処理方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、塔の内部に、上ベルト車と下ベルト車とに巻回された無端ベルトが張設されて、該無端ベルトに所定間隔で複数個のバケットが取付けられたバケットエレベータが知られている(例えば、特許文献1参照。)。上記バケットエレベータでは、無端ベルトを走行させて各バケットを循環させることにより、当該バケットエレベータの底部に搬入された被搬送物が各バケットによって汲み上げられて搬送される。ところで、このようなバケットエレベータを穀物搬送用として設備した場合に、当該バケットエレベータの底板上に残留される穀物(以下、残留穀物と称する。)が問題になる。上記穀物搬送用のバケットエレベータ(以下、単にバケットエレベータと称する。)では、次に搬送される穀物と残留穀物との品種が異なる場合には、次に搬送される穀物に残留穀物が混入されて所謂コンタミ(異品種混入)の状態になり、品質及び商品価値が低下する。
【0003】
そこで、このようなバケットエレベータでは、底板をバケットの軌道に整合させて湾曲させることにより当該底板とバケットの軌道との間隔を小さく形成して、残留穀物が少なくなるように工夫されている。しかしながら、上記バケットエレベータでは、穀物に肌ずれ(米の場合、玄米に傷が付くことをいう。)が発生するのを防ぐために、底板とバケットの軌道との間に適正な間隔を確保する必要がある。したがって、依然として底板とバケットの軌道との間隔には穀物が残留されるため、コンタミを完全になくすことができず、さらなる改良が望まれる。また、上記バケットエレベータでは、次に搬送される穀物と残留穀物との品種が同一であったとしても、特に、残留穀物の含水率が高い(米の場合、16%以上が高いと規定されている。)場合には、当該残留穀物が底板上で変質して劣化する虞がある。
【特許文献1】特開平7−53025号公報(段落番号0015〜0019、図1及び図5)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、第1の目的は、穀物の品質が確保されるバケットエレベータを提供することにある。
また、第2の目的は、穀物の品質が確保されるバケットエレベータの底部残留物処理方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記第1の目的を達成するために、本発明のうち請求項1に記載の発明は、塔の内部に調節された無端ベルトに複数個のバケットが所定間隔で取付けられて、塔の下部に供給された穀物が所定の軌道で循環されるバケットによって汲み上げられるバケットエレベータであって、底板に設けられる送風口から穀物汲み上げ方向へ向けてエアが送風される送風手段を備えることを特徴とする。
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のバケットエレベータにおいて、送風手段の送風量が調節される送風量制御手段を備えることを特徴とする。
請求項3に記載の発明は、請求項1又は2に記載のバケットエレベータにおいて、バケットの軌道と底板との間隔を保持した状態で無端ベルトの張力が調節されるベルト張力調節手段を備えることを特徴とする。
【0006】
上記第2の目的を達成するために、本発明のうち請求項4に記載の発明は、無端ベルトに所定間隔で取付けられて所定の軌道で循環される複数個のバケットによって穀物が汲み上げられるバケットエレベータの残留穀物処理方法であって、底板に設けられた送風口からエアを送風させることにより底板上に残留された穀物を穀物汲み上げ方向へ向けて吹き上げて、この吹き上げられた穀物をバケットによって回収することを特徴とする。
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載のバケットエレベータの底部残留物処理方法において、送風口からエアを送風させて底板上に残留された穀物に通風させることにより、底板上に残留された穀物の品質を保持することを特徴とする。
請求項6に記載の発明は、請求項4又は5に記載のバケットエレベータの底部残留物処理方法において、バケットの軌道と底板との間隔を保持しつつ無端ベルトの張力を調節することを特徴とする。
【0007】
したがって、請求項1に記載の発明では、送風手段によって、底板に設けられる送風口から穀物汲み上げ方向へ向けてエアが送風される。
請求項2に記載の発明では、送風量制御手段によって、送風口から送風されるエアの送風量が調節される。
請求項3に記載の発明では、ベルト張力調節手段によって、バケットの軌道と底板との間隔を保持した状態で無端ベルトの張力が調節される。
【0008】
請求項4に記載の発明では、送風口から送風されたエアによって残留穀物が穀物汲み上げ方向へ吹き上げられる。そして、吹き上げられた残留穀物は穀物汲み上げ方向へ移動するバケットによって回収される。
請求項5に記載の発明では、送風口から送風させたエアを残留穀物に通風させることにより、残留穀物の含水率、温度等が調節されて当該残留穀物の品質が保持される。
請求項6に記載の発明では、無端ベルトの張力が調節されても、バケットの軌道と底板との間隔が適正に保持される。
【発明の効果】
【0009】
穀物の品質が確保されるバケットエレベータ及びバケットエレベータの底部残留物処理方法を提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の一実施の形態を図1〜図8に基づいて説明する。図1に示されるように、本バケットエレベータ1は、昇降機本体2(塔)の底板3上に搬入された穀物が、当該昇降機本体2の内部を循環する複数個のバケット6によって汲み上げられて上方へ搬送される。上記昇降機本体2は、内部に無端ベルト7が上下方向に張設されて、該無端ベルト7に上記バケット6が所定間隔で取付けられる。また、上記昇降機本体2は、上部に配設される上部フレーム8に支持された上ベルト車10と、下部に配設される下部ユニット9に支持された下ベルト車11とに、上記無端ベルト7が巻回される。そして、上記昇降機本体2は、上記上部フレーム8に設けられるベルト駆動用モータ12によって上ベルト車10が回転駆動されることにより、無端ベルト7に取付けられた各バケット6が所定の軌道C(図2参照)で循環される構造になっている。
【0011】
図2に示されるように、上記下部ユニット9は、相互に対向する一対の側板13の略円弧状に形成された下側の各辺に、バケット6の軌道Cに整合させて湾曲させた上記底板3が架設されて形成されるユニットベース14を備えて、該ユニットベース14が昇降機本体2の下部フレーム15に上下動可能に収容される。また、図1、図6及び図7に示されるように、本バケットエレベータ1は、上記昇降機本体2の下部フレーム15の底板34と上記下部ユニット9の底板3との間にエア導入室38が形成されて、該エア導入室38とブロア装置35(送風手段)とが送風管36を介して接続される。図8に示されるように、上記昇降機本体1は、下部ユニット9のユニットベース14の底板3が、昇降機本体1幅方向(図8における紙面視方向)に延びる複数個の板状のエレメント37がバケット6の軌道Cに沿わせて配列されて構成されて、相互に隣接されるエレメント37の重ね合わせ部には、上記エア導入室38に導入されたエアがバケット6の穀物汲み上げ方向Aへ底板3上の残留穀物4に向けて送風される送風口39が設けられる。
【0012】
なお、本バケットエレベータ1は、上記ブロア装置35の送風量が送風量制御装置(送風量制御手段)によってコントロールされる。そして、図7に示されるように、本バケットエレベータ1では、底板3の送風口39から所定送風量のエアを送風させて残留穀物4を穀物汲み上げ方向Aへ吹き上げることにより、該吹き上げられた残留穀物4が下ベルト車11の回りを旋回するバケット6によって回収される構造(エアスウィープ構造)になっている。また、本バケットエレベータ1では、底板3の送風口39から所定送風量のエアを送風させて底板3上の残留穀物4に通風させることにより、当該残留穀物4の品質が保持されるように構成される。なお、上記ユニットベース14と下部フレーム15とはシーリングを介して摺動される。また、図6及び図7に示されるように、上記下部フレーム15の正面(図6及び図7における紙面視右側の面)には、穀物搬送路32によって搬送された穀物を下部ユニット9内(底板3上)に取り込むための穀物取込口33が設けられる。
【0013】
図3〜図5に示されるように、上記下部ユニット9には、上記ユニットベース14の対向する一対の側面を貫通して、該一対の側面に各軸受16を介して回転可能に支持される軸材17が設けられて、該軸材17には、当該軸材17に対して一体で回転される上記下ベルト車11が装着される。また、上記下部ユニット9は、上記昇降機本体2の下部フレーム15に対して上下動可能に設けられる一対のスライドベース18を備える。さらに、各スライドベース18の下部には、上記軸材17の両端を回転可能に支持する軸受19が配設される。そして、本バケットエレベータ1には、各スライドベース18を同期させて駆動させることにより、上ベルト車10と下ベルト車11とに巻回された無端ベルト7の張力が調節される自動テンション機構20(ベルト張力調節手段)が設けられる。図2〜図4に示されるように、上記自動テンション機構20は、上記下部ユニット9の各スライドベース18の上部外側面に固定される各ナット21と、各ナット21に螺合されて下部フレーム15に取付けられたブラケット23によって回転可能に支持される各加減ねじ22とを備える。
【0014】
また、上記自動テンション機構20は、各加減ねじ22の上端に各スプロケット24が固着されて、各スプロケット24に無端チェーン25が巻回される。さらに、上記自動テンション機構20は、下部フレーム15の上部左側(図4における紙面視左側)にエアモータ26が取付けられて、該エアモータ26の回転軸に固着されるスプロケット27と下部フレーム15の一側に配置された上記加減ねじ22に固着されるスプロケット28とに無端チェーン29が巻回される。そして、本バケットエレベータ1では、上記エアモータ26を定期的に作動させて各加減ねじ22を所定の回転トルクで回転駆動させることにより、下部ユニット9が下方へ所定の押圧力で押圧される。これにより、本バケットエレベータ1では、下部ユニット9の底板3とバケット6の軌道Cとの間隔が適正に保持された状態で、上ベルト車10と下ベルト車11とに巻回された無端ベルト7に所定の張力が付与される構造になっている。なお、本バケットエレベータ1では、コンプレッサ40(図1参照)からエアモータ26へ供給される圧縮エアの圧力がレギュレータ30によって制御されることで、各加減ねじ22の回転トルク、即ち無端ベルト7の張力が調節される構造になっている。
【0015】
次に、本バケットエレベータ1の作用を説明する。本バケットエレベータ1では、穀物搬送路32を搬送されて穀物取込口33から下部ユニット9の底板3上に搬入された穀物が、昇降機本体2の内部を循環する複数個のバケット6によって順次汲み上げられて上方へ搬送される。そして、バケット6に汲み上げられた穀物は、バケット6が上ベルト車10の回りを旋回する過程で、上部フレーム8に設けられた穀物搬出口31から昇降機本体1の外部へ搬出される。また、本バケットエレベータ1では、下部ユニット9の底板3とバケット6の軌道Cとの間に、穀物の肌ずれを防ぐための適正な間隔が設けられることから、図6に示されるように、穀物の搬送が完了後、当該底板3上には穀物(残留穀物4)が残留される。そして、底板3上の残留穀物4を回収する場合には、バケット6を循環させた状態で、底板3の送風口39から残留穀物4に向けて送風させて、当該底板3上の残留穀物4を穀物汲み上げ方向Aへ吹き上げる。これにより、吹き上げられた残留穀物4が下ベルト車11の回りを旋回するバケット6によって順次回収される。
【0016】
バケット6に回収された残留穀物4は、当該バケット6が上ベルト車10の回りを旋回する過程で、上記穀物搬出口31から昇降機本体1の外部へ搬出される。また、残留穀物4を底板3上で保存する場合には、底板3の送風口39から残留穀物4に向けて送風させて当該底板3上の残留穀物4に通風させる。これにより、残留穀物4の含水率、温度等が適正に保たれて当該残留穀物4の劣化が防がれる。また、本バケットエレベータ1では、自動テンション機構20(ベルト張力調節手段)によって、無端ベルト7の張力が定期的に適正に調節される。この時、本バケットエレベータ1では、下部フレーム15に対して下部ユニット9が下方へ所定の押圧力で押圧されて無端ベルト7の張力が調節されるため、当該下部ユニット9の底板3とバケット6の軌道Cとの適正な間隔が確保される。
【0017】
この実施の形態では以下の効果を奏する。
本バケットエレベータ1は、下部ユニット9の底板3に設けられた送風口39から底板3上の残留穀物4に送風して当該残留穀物4を穀物汲み上げ方向Aへ吹き上げるエアスウィープ構造を採用したことにより、吹き上げられた残留穀物4が下ベルト車11の回りを旋回するバケット6によって回収される。
したがって、本バケットエレベータ1では、次に搬送される穀物と残留穀物4との品種が異なる場合に、次に搬送される穀物に残留穀物4が混入される、所謂コンタミ(異品種混入)が防止されて、穀物の品質及び商品価値が確保される。
【0018】
また、本バケットエレベータ1は、昇降機本体2の下部フレーム15に対して下部ユニット9が上下動可能に構成されて、自動テンション機構20によって、下部フレーム15に対して下部ユニット9が下方へ所定の押圧力で押圧されて無端ベルト7に張力が付与される。
したがって、本バケットエレベータ1では、下部ユニット9の底板3とバケット6の軌道Cとの間隔が適正に保持されるため、バケット6で穀物を汲み上げる際に、底板3とバケット6との間隔に入り込んだ穀物に肌ずれを生じさせてしまうことがなく、穀物の品質及び商品価値が確保される。
【0019】
なお、実施の形態は上記に限定されるものではなく、例えば次のように構成してもよい。
空調装置によって温度と湿度とが調節されたエアをブロア装置35によって圧送して送風口39から底板3上の残留穀物4に通風させるように構成してもよい。この場合、残留穀物4の劣化がより確実に防ぐことができる。
本バケットエレベータ1では、エアモータ26によって加減ねじ22が回転駆動されるが、エアモータ26の代わりにトルク調節可能な電動モータを用いて構成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本バケットエレベータの全体図である。
【図2】本バケットエレベータの説明図で、下部ユニットが組付けられた下部フレームの左側面図である。
【図3】本バケットエレベータの説明図で、下部ユニットが組付けられた下部フレームの平面図である。
【図4】本バケットエレベータの説明図で、下部ユニットが組付けられた下部フレームの正面図である。
【図5】本バケットエレベータの説明図で、軸材の支持構造を示す図である。
【図6】本バケットエレベータの説明図で、下部ユニットの底板とバケットの軌道との間隔に穀物が残留された状態を示す図である。
【図7】本バケットエレベータの説明図で、送風口から送風されて吹き上げられた残留穀物がバケットによって回収される様子を示す図である。
【図8】図2におけるB部拡大図である。
【符号の説明】
【0021】
1 バケットエレベータ、3 底板、6 バケット、7 無端ベルト、20 自動テンション機構(ベルト張力調節手段)、35 ブロア装置(送風手段)、39 送風口

【特許請求の範囲】
【請求項1】
塔の内部に調節された無端ベルトに複数個のバケットが所定間隔で取付けられて、塔の下部に供給された穀物が所定の軌道で循環される前記バケットによって汲み上げられるバケットエレベータであって、底板に設けられる送風口から穀物汲み上げ方向へ向けてエアが送風される送風手段を備えることを特徴とするバケットエレベータ。
【請求項2】
前記送風手段の送風量を制御する送風量制御手段を備えることを特徴とする請求項1に記載のバケットエレベータ。
【請求項3】
前記バケットの軌道と前記底板との間隔を保持した状態で前記無端ベルトの張力が調節されるベルト張力調節手段を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載のバケットエレベータ。
【請求項4】
無端ベルトに所定間隔で取付けられて所定の軌道で循環される複数個のバケットによって穀物が汲み上げられるバケットエレベータの残留穀物処理方法であって、底板に設けられた送風口からエアを送風させることにより前記底板上に残留された穀物を穀物汲み上げ方向へ向けて吹き上げて、この吹き上げられた穀物をバケットによって回収することを特徴とするバケットエレベータの残留穀物処理方法。
【請求項5】
前記送風口からエアを送風させて前記底板上に残留された穀物に通風させることにより、前記底板上に残留された穀物の品質を保持することを特徴とする請求項4に記載のバケットエレベータの残留穀物処理方法。
【請求項6】
前記バケットの軌道と前記底板との間隔を保持しつつ前記無端ベルトの張力を調節することを特徴とする請求項4又は5に記載のバケットエレベータの残留穀物処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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