説明

バケット式垂直コンベア及びそれを使用した土砂の搬送方法

【課題】 土砂を上下方向に搬送するバケット式垂直コンベアであって、土砂に礫や小石等の異物が含まれていても、チェーンや駆動モータ等の支障を来たすことなく、連続して搬送作業を継続できるようにする。
【解決手段】 コンベア本体(10)と、コンベア本体の内部に上下方向に移動可能に無端状に繋げられたチェーン(16)と、チェーンを移動させる駆動モータと、チェーンに所定間隔おきに取り付けられた複数のバケット(18)と、バケットの移動軌跡の底部に沿って配置され、バケットの移動にともなって土砂をバケットに掬い上げる釜状底部(22)とを具備し、釜状底部(22)はコンベア本体(10)に対して移動可能に取り付けられ、バケットとの隙間を変化させ得るように構成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は土砂を上下方向に搬送するバケット式垂直コンベア、及びこのバケット式垂直コンベアによる土砂の搬送方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、流動体や土砂等を上下方向に搬送する装置としてバケット式コンベアがある。
【0003】
この種のバケット式コンベアは、内部に上下方向に移動する無端チェーンを有し、このチェーンに所定間隔おきに複数のバケットが、取り付けられている。コンベア本体の下部付近にホッパーがあり、例えば運搬車、搬送車等により運ばれて来た掘削した土砂が、ホッパーに投入され、コンベア本体の下部を形成している釜状底部において土砂はバケットにて掬い上げられ、コンベア本体の上部まで搬送される。そして、ここからトラック等に積み込んで、他の個所へ運ばれる。
【0004】
従来技術として、例えば、特許文献1(特開平1−150611号公報)には、回転式ホッパー付バケット式コンベアが開示され、バケット式コンベア装置本体に油圧作動により回転可能なホッパーをコンベアの下部に取り付け、ホッパーを水平位置から垂直位置まで回転可能とすると共に、装置本体に運搬物の落下防止板を設け、土砂の詰まり装置外への落下を防止している。
【0005】
しかし、土砂を上下方向に搬送する従来のバケット式垂直コンベアは、基本的には図1に示すような構造を有する。即ち、コンベア本体10の内部にスプロケット12やガイドロラ14を介して上下方向に移動可能な無端状のチェーン16が設けられ、このチェーン16に所定間隔おきに複数のバケット18が取り付けられていて、土砂がホッパー20から投入されると、土砂の入口21からコンベア本体10に入り、バケット18の下部の移動軌跡に沿って設けられた釜状底部22により土砂がバケット18に掬い上げられて上方へ搬送される。図示しないが、土砂がコンベア本体10の上部まで搬送されると、バケット18から離れ、トラック等に積載される。
【0006】
このような従来構造のバケット式垂直コンベアでは、特に、搬送する流動体が土砂である場合、バケット18と釜状底部22との間に礫や小石(図示せず)が噛み込んでしまうことがあるが、このような場合に、土砂の搬送作業を中断することが必要であった。また、場合によっては、バケット18の変形、チェーン16の外れ・切断、駆動モータ(図示せず)の焼付などを発生することがあった。
【0007】
【特許文献1】特開平1−150611号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述のように従来のバケット式垂直コンベアにおいては、搬送する対象物が例えば土砂等である場合において、礫や小石等の異物が含まれている場合には、釜状底部とバケットとの間に異物か噛み込み、チェーンや駆動モータ等の支障を来していた。
【0009】
そこで、本発明では、例え搬送する土砂に礫や小石等の異物が含まれていても、チェーンや駆動モータ等の支障を来たすことなく、また搬送作業を中断することなく連続して土砂等の搬送作業を行うことのできるバケット式垂直コンベア、及びこのバケット式垂直コンベアを用いて土砂の搬送方法を提案することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記の課題を達成するために、本発明によれば、土砂を上下方向に搬送するバケット式垂直コンベアであって、コンベア本体と、該コンベア本体の内部に上下方向に移動可能に無端状に繋げられたチェーンと、該チェーンを移動させる駆動モータと、前記チェーンに所定間隔おきに取り付けられた複数のバケットと、該バケットの移動軌跡の底部に沿って配置され、バケットの移動にともなって土砂を前記バケットに掬い上げる釜状底部とを具備し、該釜状底部は前記コンベア本体に移動可能に取り付けられ、前記バケットとの隙間を変化させ得るように構成したバケット式垂直コンベアが提供される。
【0011】
本発明では、釜状底部を前記コンベア本体に移動可能に取り付け、釜状底部とバケットとの間隔を変化させ得るように構成したので、搬送する土砂や礫や小石等の異物が含まれていた場合は、釜状底部とバケットとの隙間を広げて、土砂や礫を通過させることができる。土砂や礫が通過した後は、釜状底部を元の位置を戻して、搬送作業を続行することができるので、チェーンや駆動モータ等の支障を来たすことなく、土砂等の搬送作業を続行することができる。
【0012】
この場合において、前記駆動モータの電流値を検出する手段と、検出した電流値に応じて前記コンベア本体に対する前記釜状底部の位置を制御する制御手段と、を具備することを特徴とする。
【0013】
また、本発明によると、コンベア本体と、該コンベア本体の内部に上下方向に移動可能に無端状に繋げられたチェーンと、該チェーンを移動させる駆動モータと、前記チェーンに所定間隔おきに取り付けられた複数のバケットと、該バケットの移動軌跡の底部に沿って配置され、バケットの移動にともなって土砂を前記バケットに掬い上げる釜状底部とを具備したバケット式垂直コンベアによる土砂の搬送方法であって、前記駆動モータの電流値が所定値より大きい状態が一定時間継続した場合に、前記釜状底部を下方に移動して前記バケットとの隙間を広げ、前記駆動モータの電流値が所定値より小さくなった後に、前記釜状底部を元の位置を戻すことを特徴とするバケット式垂直コンベアによる土砂の搬送方法が提供される。
【0014】
搬送する土砂に礫や小石等の異物が含まれ、釜状底部とバケットとの隙間に異物を噛み込んだ時は、バケットやチェーンに負荷がかかり、駆動モータの電流値が上昇するが、この電流値の所定値以上の状態が一定時間続くことで、土砂に異物が含んだものと判断し、制御手段により釜状底部を移動させて、隙間を広げるように制御する。このような制御を行なうことにより多少の異物を噛み込んだ場合においても連続して土砂の搬送作業を続けることができる。
【0015】
この場合において、前記釜状底部を下方へ移動した後に、前記駆動モータの電流値が所定値より大きい状態が引き続き一定時間継続した場合に、前記釜状底部をさらに下方へ移動し、前記電流値が所定値より小さくなった後に前記釜状底部の位置を元へ戻すことを特徴とする。
【0016】
釜状底部を下方へ移動させる工程を2段階とすることにより、搬送する土砂に含まれる礫や小石等の異物の大きさに応じて適度に間隔を調整することが可能となり、作業の連続性及び効率化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、添付図面を参照して本発明の実施の形態について詳細に説明する。
【0018】
図2及び図3は本発明に係るバケット式垂直コンベアを示す。コンベア本体10の内部にスプロケット12やガイドロラ14を介して矢印に示すように上下方向に移動可能な無端状のチェーン16が設けられ、このチェーン16に所定間隔おきに複数のバケット18が取り付けられていて、土砂がホッパー20から投入されると、土砂の入口21からコンベア本体10に入り、バケット18の移動軌跡に沿って設けられた釜状底部22により土砂がバケット18に掬い上げられて上方へ搬送される。図示しないが、土砂がコンベア本体10の上部まで搬送されると、バケット18から離れ、トラック等に積載される。
【0019】
以上は図1に示した従来のバケット式垂直コンベアと同様の構造であるが、本発明の実施形態では、釜状底部22の一方の側を蝶番24を介してコンベア本体10に取り付け、他方の側を油圧ジャッキ26を介してコンベア本体10に取り付ける。これにより、釜状底部22をコンベア本体10に対して回転可能に、即ち、釜状底部22を移動可能としてバケット18の移動軌跡の外周との隙間を調整可能とした。
【0020】
定常の運転時は、油圧ジャッキ26は収縮した位置にあり、釜状底部22はコンベア本体10に対して所定位置にある。この時、バケット18の移動軌跡と釜状底部22の内周面との間は隙間をごく僅かである。
【0021】
搬送される土砂の中に、例えば礫や小石が含まれていて、バケット18の外縁と釜状底部22の内周面との間に礫や小石が噛み込まれてしまった場合は、バケット18やチェーン16に過剰な負荷がかかり、スプロケットを介してチェーン16を回転する駆動モータ(図示せず)にも過負荷がかかりその電流値が定常時の電流値よりも高くなる。
【0022】
この電流値が所定の範囲を越えた時は、図3に示すように、油圧ジャッキ26を伸長させる方向に駆動させる。これにより、釜状底部22は蝶番24を中心として回転し、コンベア本体10に対して下方位置へ移動する。バケット18はチェーン16の回転移動により連続的に移動しているので、バケット18は噛み込んでいた礫や小石28から離れ、土砂を上方へ搬送し、次のバケット18が前に噛み込まれていた礫や小石28を土砂と共に上方へ搬送する。
【0023】
このように噛み込まれていた礫や小石28がバケット18の外縁と釜状底部22の内周面との隙間から離れることにより、バケット18やチェーン16、駆動モータ(図示せず)に対する過負荷が解消される。この時、油圧ジャッキ26を元の位置へ収縮させる方向に駆動し、釜状底部22を蝶番24中心に上方向に回転させてコンベア本体10に対して元の位置へ戻す。
【0024】
図4は駆動モータにかかる負荷に対し油圧ジャッキの作動制御を示す概略図である。駆動モータ30の電流値は電流検知器32により検知され、検知した電流値に応じて油圧ユニット34を制御し、油圧ジャッキ26を伸縮制御する。このように、本発明の実施形態では、礫や小石等の異物がバケット18と釜状底部22の内周面との間に噛み込まれた等の状況を、駆動モータ30の電流値にて判定する。
【0025】
図5は本発明のバケット式垂直コンベアの動作について、2段階で制御する場合の一例を示すフローチャートである。
【0026】
土砂の搬送の過程において、駆動モータの電流値が、例えば90Aを越えたか否かを検出し、更に、この状態が一定時間A(例えば2.5秒)継続したか否かをタイマーにて検出する。したがって、駆動モータの電流値が90Aを越えた場合においても瞬間的にこの電流値を越えたような場合は、これをもって、礫や小石等の異物の噛み込みが生じたものとは判断せずに、定常の動作を続行する。
【0027】
駆動モータの電流値が、90Aを越えた状態が2.5秒継続したことが検出されると、今度はこれをもって、礫や小石等の異物の噛み込みが生じたものと判断し、油圧ジャッキ26を駆動して釜状底部22をストローク1(例えば20mm)下方へ移動させる。なお、釜状底部22の移動ストロークは、バケット18の移動軌跡の直下の位置における移動寸法とする。
【0028】
釜状底部22がストローク1だけ下方へ移動した後においても、なお、駆動モータの電流値が90Aを越えた状態が一定時間B(例えば2.0秒間)継続したか否かを検知し、継続していない場合は、礫や小石等の異物の噛み込みが解消されたものと判断し、油圧ジャッキ26を駆動して釜状底部22を上方へ移動させて元の位置へ戻す。
【0029】
下方へストローク1移動後に、なお駆動モータの電流値が90Aを越えた状態が2.0秒間継続していることを検知した場合は、更に油圧ジャッキを駆動して釜状底部22をストローク2(例えば35mm)まで下方へ移動させる。そして、この状態で、なお駆動モータの電流値が90Aを越えた状態が一定時間C(例えば1.5秒間)継続しているか否かを検出し、継続していない場合は、噛み込み等の異常事態が解消されたものと判断し、油圧ジャッキを駆動して釜状底部22を上方へ移動させて元の位置へ戻す。
【0030】
下方へストローク2移動後に、なお駆動モータの電流値が90Aを越えた状態が1.5秒間継続していることを検知した場合は、このバケット式垂直コンベアは異常な事態にあると判断し、駆動モータを停止して、コンベア自体の動作を停止して作業者により点検する。
【0031】
このように、本発明のバケット式垂直コンベアについて、油圧ジャッキを2段階で制御して、釜状底部22をストローク1及びストローク2の2つの段階に下降制御することにより、礫や小石28がバケット18と釜状底部22の内周面との間に噛み込まれたとしても、バケット式垂直コンベアの動作自体を続行しながら自動的に駆動モータに対する異常な過負荷を解消することができ、作業性を向上することができる。
【0032】
以上添付図面を参照して本発明の実施形態について説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の精神ないし範囲内において種々の形態、変形、修正等が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0033】
以上説明したように、本発明によれば、たとえ搬送する土砂に礫や小石等の異物が含まれていてバケットと釜状底部との間に噛み込んだとしても、バケットの変形、チェーンの外れ、切断、駆動モータの焼付等の問題が自動的に解消され、連続して土砂等の搬送作業を継続することができ、搬送作業の効率化を達成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】従来のバケット式垂直コンベアの説明図である。
【図2】本発明の実施形態に係るバケット式垂直コンベア下部の断面図である。
【図3】同バケット式垂直コンベアに異物が噛み込んだ時の動作を示す図である。
【図4】駆動モータ、油圧ジャッキ等の作動制御を示す概略図である。
【図5】本発明のバケット式垂直コンベアの動作を示すフローチャートである。
【符号の説明】
【0035】
10 バケット式垂直コンベア本体
12 スプロケット
14 ガイドスプロケット
16 チェーン
18 バケット
20 ホッパー
22 釜状底部
24 蝶番
26 油圧ジャッキ
28 異物
30 駆動モータ
32 電流検知器
34 油圧ユニット

【特許請求の範囲】
【請求項1】
土砂を上下方向に搬送するバケット式垂直コンベアであって、コンベア本体と、該コンベア本体の内部に上下方向に移動可能に無端状に繋げられたチェーンと、該チェーンを移動させる駆動モータと、前記チェーンに所定間隔おきに取り付けられた複数のバケットと、該バケットの移動軌跡の底部に沿って配置され、バケットの移動にともなって土砂を前記バケットに掬い上げる釜状底部とを具備し、該釜状底部は前記コンベア本体に移動可能に取り付けられ、前記バケットとの隙間を変化させ得るように構成したバケット式垂直コンベア。
【請求項2】
前記駆動モータの電流値を検出する手段と、検出した電流値に応じて前記コンベア本体に対する前記釜状底部の位置を制御する制御手段と、を具備することを特徴とする請求項1に記載のバケット式垂直コンベア。
【請求項3】
コンベア本体と、該コンベア本体の内部に上下方向に移動可能に無端状に繋げられたチェーンと、該チェーンを移動させる駆動モータと、前記チェーンに所定間隔おきに取り付けられた複数のバケットと、該バケットの移動軌跡の底部に沿って配置され、バケットの移動にともなって土砂を前記バケットに掬い上げる釜状底部とを具備したバケット式垂直コンベアによる土砂の搬送方法であって、
前記駆動モータの電流値が所定値より大きい状態が一定時間継続した場合に、前記釜状底部を下方に移動して前記バケットとの隙間を広げ、前記駆動モータの電流値が所定値より小さくなった後に、前記釜状底部を元の位置を戻すことを特徴とするバケット式垂直コンベアによる土砂の搬送方法。
【請求項4】
前記釜状底部を下方へ移動した後に、前記駆動モータの電流値が所定値より大きい状態が引き続き一定時間継続した場合に、前記釜状底部をさらに下方へ移動し、前記電流値が所定値より小さくなった後に前記釜状底部の位置を元へ戻すことを特徴とする請求項3に記載のバケット式垂直コンベアによる土砂の搬送方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−62793(P2006−62793A)
【公開日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−245179(P2004−245179)
【出願日】平成16年8月25日(2004.8.25)
【出願人】(000140292)株式会社奥村組 (469)
【Fターム(参考)】