説明

バターケーキ類の製造方法

【課題】バター、砂糖、卵、小麦粉を主原料とするバターケーキ類の製造方法において、オールインミックス法のように簡便でありながら、作業者による品質のばらつきがなく、かつシュガーバッター法と同等の品質を得ることができるバターケーキ類の製造方法を提供すること。
【解決手段】バター、砂糖、卵、小麦粉を含有するバターケーキ類の製造方法において、予め調製された油脂と糖類を含有する混合物及び、予め調製された油脂と小麦粉を含有する混合物を用いることを特徴とするバターケーキ類の製造方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、オールインミックス法のように簡便でありながら、作業者による品質のばらつきがなく、かつシュガーバッター法と同等の品質を得ることができるバターケーキ類の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、パウンドケーキなどの、バター、砂糖、卵、小麦粉を主原料とするバターケーキ類を製造するための方法として、「シュガーバッター法」「フラワーバッター法」「オールインミックス法」という3種類の製造方法が知られている。
【0003】
まず、「シュガーバッター法」とは、油脂と砂糖をホイップさせた後、卵を加え、最後に小麦粉を混合し生地を調製する3つの工程を経る方法であり、この製法で得られるパウンドケーキは、ふんわりとしてほぐれがよく、3種類の製造方法の中では、もっとも品質のよいものが得られるが、熟練を要する作業のため、作業者の技術により品質に差が出ることが多い。
【0004】
次に、「フラワーバッター法」とは、油脂と小麦粉をホイップさせた後、砂糖、卵を加え、更にホイップし生地を調製する3つの工程を経る方法であり、技術的には「シュガーバッター法」よりは簡便とされているが、得られるパウンドケーキの品質が、「シュガーバッター法」のものと比べるとドライなものとなる傾向がある。
【0005】
そして、「オールインミックス法」とは、油脂、砂糖、卵、小麦粉などの全ての原料を合わせてホイップし、生地を調製する1つの工程で済む方法であり、作業的にはもっとも簡便であるが、全ての原料を一度に混合するため、混合状態により品質に差が生じ、作業者によるばらつきが出やすい。また、得られるパウンドケーキの品質も、「シュガーバッター法」のものと比べるとやや重たく、ほぐれが悪い傾向がある。
【0006】
そこで、上記問題点を解決するために、特許文献1には、バターケーキ類をオールインミックス方式にて製造するに際し、油脂分として常温で可塑性を呈する油中水型の製菓用油脂組成物を使用することを特徴とする、バターケーキ類の製造方法が提案されているが、この方法では、常温で可塑性を有する乳化物を調製しなければならず、またバターケーキ類の配合が制限されるため、簡便な方法ではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平6−53号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、バター、砂糖、卵、小麦粉を主原料とするバターケーキ類の製造方法において、オールインミックス法のように簡便でありながら、作業者による品質のばらつきがなく、かつシュガーバッター法と同等の品質を得ることができるバターケーキ類の製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
そこで、本発明者らは鋭意検討を重ねた結果、予め調製された油脂と糖類を含有する混合物及び、予め調製された油脂と小麦粉を含有する混合物を用いることで、上記課題を解決できるという知見を得、本発明のバターケーキ類の製造方法を完成させるに至った。
【0010】
すなわち、本発明は、
(1)バター、砂糖、卵、小麦粉を含有するバターケーキ類の製造方法において、予め調製された油脂と糖類を含有する混合物及び、予め調製された油脂と小麦粉を含有する混合物を用いることを特徴とするバターケーキ類の製造方法、
(2)予め調製された油脂と糖類を含有する混合物が、砂糖50重量%以上及びバターを含有する(1)記載のバターケーキ類の製造方法、
(3)予め調製された油脂と糖類を含有する混合物に含まれる砂糖が結晶状態で存在する(2)記載のバターケーキ類の製造方法、
(4)予め調製された油脂と小麦粉を含有する混合物が、薄力粉45重量%以上及びバターを含有する(1)記載のバターケーキ類の製造方法、である。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、バター、砂糖、卵、小麦粉を主原料とするバターケーキ類の製造方法において、オールインミックス法のように簡便でありながら、作業者による品質のばらつきがなく、かつシュガーバッター法と同等の品質を得ることができるバターケーキ類の製造方法を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明を詳細に説明する。
【0013】
本発明により製造することができる、バターケーキ類とは、パウンドケーキやフルーツケーキ、バターケーキ、マドレーヌ、フィナンシェ、チーズケーキ、バウムクーヘンなどのバター、砂糖、卵、小麦粉を主成分とするケーキ類である。
【0014】
本発明のバターケーキ類の製造方法は、予め調製された油脂と糖類を含有する混合物及び、予め調整された油脂と小麦粉を含有する混合物を用いることを特徴とし、予め混合物を調製し用いることでオールインミックス法のように簡便な方法でありながら、全ての原料を一度に混合する際の品質のばらつきを解消し、さらにシュガーバッター法と同等の、ほぐれがよく、ふんわりとした品質を得ることが可能となる。
【0015】
まず、本発明のバターケーキ類の製造方法に用いることのできる油脂としては、通常マーガリンやショートニング等に利用される油脂を使用することができ、例えばナタネ油、大豆油、ヒマワリ種子油、綿実油、落花生油、米糠油、コーン油、サフラワー油、オリーブ油、カポック油、ゴマ油、月見草油、パーム油、シア脂、サル脂、カカオ脂、ヤシ油、パーム核油等の植物性油脂、あるいは乳脂、牛脂、ラード、魚油、鯨油等の動物性油脂を挙げることができ、これら油脂類を単独あるいは複数種以上ブレンドしたものを硬化、分別、エステル交換等行った加工油脂なども挙げることができるが、常温において可塑性を呈する物性を有する油脂組成が好ましく、さらには風味を考慮すると、油脂としてバターを用いることがより好ましい。
【0016】
また、本発明のバターケーキ類の製造方法に用いることのできる糖類としては、ショ糖、ブドウ糖、果糖、麦芽糖などを挙げることができ、これらの中でも砂糖を用いることが好ましく、予め調製された油脂と糖類を含有する混合物には砂糖を50重量%以上含有することが好ましい。さらに、混合物に含まれる砂糖が結晶状態で存在することがより好ましく、これにより得られるバターケーキ類の食感をより軽いものできる効果が得られる。
【0017】
さらに、本発明のバターケーキ類の製造方法に用いることのできる小麦粉としては、強力粉、中力粉、薄力粉を挙げることができ、これらの中でも薄力粉を用いることが好ましく、予め調製された油脂と小麦粉を含有する混合物には小麦粉を45重量%以上含有することが好ましい。
【0018】
本発明において、油脂と糖類を含有する混合物を予め調製しておく際の製法としては、例えばバターと砂糖を含有する混合物を得る場合、固形状のバターを適当なサイズにカットしたものを砂糖と混合後、板状に成型し、冷凍することにより得ることができる。
【0019】
また、本発明において、油脂と小麦粉を含有する混合物を予め調製しておく際の製法としては、例えばバターと小麦粉を含有する混合物を得る場合、固形状のバターを適当なサイズにカットしたものを小麦粉と混合後、板状に成型し、冷凍することにより得ることができる。
【0020】
上記のように得られた、油脂と糖類を含有する混合物及び油脂と小麦粉を含有する混合物を用いることで、バターケーキ類を簡便に製造することができるが、これら混合物を用いたバターケーキ類の製造方法としては、予め調製された混合物と他の原料をオールインミックス法と同様、一度に混合することで、バターケーキ類の生地を得ることができる。この際、混合物の品温は他の原料と同様、室温程度に調温されていることが好ましく、また、混合物の油脂を融解させずに用いられることが好ましい。
【0021】
以下、本発明について実施例を示し、より詳細に説明する。なお、例中の%及び部はいずれも重量基準を意味する。
【0022】
(油脂と糖を含有する混合物の調製)
固形状のバターを適当なサイズにカットしたもの32%に、グラニュー糖68%を混合し、板状に成型したものを冷凍し、油脂と糖を含有する混合物を得た。
【0023】
(油脂と小麦粉を含有する混合物の調製)
固形状のバターを適当なサイズにカットしたもの45%に、薄力粉55%を混合し、板状に成型したものを冷凍し、油脂と小麦粉を含有する混合物を得た。
【実施例1】
【0024】
砂糖15.3%とベーキングパウダー0.4%及び予め調製されたバターとグラニュー糖を含有する混合物14.1%と予め調製されたバターと薄力粉を含有する混合物45.2%を一度に混合後、全卵24.9%を数回に分けて混合し、更にホイップし最終生地比重を0.90にしたものをオーブンにて焼成した。
焼成条件は、上火、下火とも180℃、焼成時間30分とした。
【0025】
(比較例1)
(シュガーバッター法)
まず、バター24.9%とグラニュー糖24.9%を混合し、比重が0.85となるまでホイップした。
つぎに、全卵24.9%を数回に分けて混合し、更にホイップした。
最後に、薄力粉24.9%とベーキングパウダー0.4%を混合し、更にホイップし最終生地比重0.90にしたものをオーブンにて焼成した。
焼成条件は、上火、下火とも180℃、焼成時間30分とした。
【0026】
(比較例2)
(フラワーバッター法)
まず、バター24.9%、薄力粉24.9%とベーキングパウダー0.4%を混合し、比重が0.85となるまでホイップした。
つぎに、グラニュー糖24.9%を混合した。
最後に全卵24.9%を数回に分けて混合し、更にホイップし最終生地比重0.90としたものをオーブンにて焼成した。
焼成条件は、上火、下火とも180℃、焼成時間30分とした。
【0027】
(比較例3)
(オールインミックス法)
バター24.9%、グラニュー糖24.9%、薄力粉24.9%、全卵24.9%及びベーキングパウダー0.4%を一度に混合後、ホイップし最終生地比重0.90としたものをオーブンにて焼成した。
焼成条件は、上火、下火とも180℃、焼成時間30分とした。
【0028】
実施例1、比較例1〜3の各製法についての、所要時間、作業性、品質の評価(◎:優良、○:優、△:良、×:可)を表に示す。
【0029】



【特許請求の範囲】
【請求項1】
バター、砂糖、卵、小麦粉を含有するバターケーキ類の製造方法において、予め調製された油脂と糖類を含有する混合物及び、予め調製された油脂と小麦粉を含有する混合物を用いることを特徴とするバターケーキ類の製造方法。
【請求項2】
予め調製された油脂と糖類を含有する混合物が、砂糖50重量%以上及びバターを含有する請求項1記載のバターケーキ類の製造方法。
【請求項3】
予め調製された油脂と糖類を含有する混合物に含まれる砂糖が結晶状態で存在する請求項2記載のバターケーキ類の製造方法。
【請求項4】
予め調製された油脂と小麦粉を含有する混合物が、薄力粉45重量%以上及びバターを含有する請求項1記載のバターケーキ類の製造方法。