説明

バッキング剤用組成物

【課題】従来のバッキング剤層と同程度の物性を有するバッキング剤層を形成することが可能であり、かつ、可使時間が長く短時間で硬化可能なバッキング剤用組成物を提供する。
【解決手段】分子中に2つ以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネートと、分子中に2つの水酸基を有するジオールと、3つ以上の水酸基を有する多価アルコールに由来する構造単位(イ)を有し、数平均分子量が2,000〜10,000であるポリオールと、二環式アミジン構造を有する触媒と、を含有するバッキング剤用組成物。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バッキング剤用組成物に関するものである。更に詳しくは、従来のバッキング剤層と同程度の物性を有するバッキング剤層を形成し、可使時間が十分に長く、かつ、硬化時間が短いバッキング剤用組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、カーペット等の繊維製品や人工芝の裏面には、繊維製品や人工芝のパイル糸を保持するためのバッキング剤層が配設されている。このバッキング剤層は、例えば、基布にパイル糸をタフティング(植設)した後、基布の裏面に、上記バッキング剤層を形成するための組成物(以下、「バッキング剤用組成物」と記す場合がある)を塗布し、塗布したバッキング剤用組成物を硬化されることにより得られるものである。
【0003】
ところで、上記バッキング剤用組成物は、塗工作業性の観点から、塗工作業完了までは硬化反応が進まないこと、即ち、可使時間が長いことが求められている。一方、塗工作業完了後には短時間で硬化することが求められている。このような性質を有するバッキング剤用組成物としては、特定の、ポリイソシアネート、及びポリオールを含有するものが知られている。例えば、特定のポリイソシアネート、2つの活性水素含有基を有する低分子化合物、及び平均官能基数が1.8〜2.2であるポリオールを含有するバッキング剤用組成物が提案されている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
【特許文献1】特許第2750132号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1に記載のバッキング剤用組成物は、未だ可使時間が短く、塗工後、硬化に時間がかかるという点において、なお改善の余地を残すものであった。
【0006】
本発明は、このような従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、加熱による刺激を受けることにより、硬化反応を加速度的に促進させる特定の触媒を含有させることによって、可使時間が長く短時間で硬化可能なバッキング剤用組成物を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、特定の、ポリイソシアネート、ジオール、ポリオール及び触媒を含有することによって、上記課題を解決することが可能であることを見出し、本発明を完成するに至った。具体的には、本発明により、以下のバッキング剤用組成物が提供される。
【0008】
[1] 分子中に2つ以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネートと、分子中に2つの水酸基を有するジオールと、3つ以上の水酸基を有する多価アルコールに由来する構造単位(イ)を有し、数平均分子量が2,000〜10,000であるポリオールと、二環式アミジン構造を有する触媒と、を含有するバッキング剤用組成物。
【0009】
[2] 前記ポリオールは、更に、アルキレンオキサイドに由来する構造単位(ロ)を含有し、前記構造単位(イ)と前記構造単位(ロ)とがエーテル結合により結合された前記[1]に記載のバッキング剤用組成物。
【0010】
[3] 前記ポリオールは、前記構造単位(ロ)の末端にエチレンオキサイドキャップ構造を有している前記[2]に記載のバッキング剤用組成物。
【0011】
[4] 前記ポリイソシアネート中のイソシアネート基のモル数(イ)は、前記ジオール中の水酸基のモル数と前記ポリオール中の水酸基のモル数との合計のモル数(ロ)に対する割合(モル数(イ)/モル数(ロ)=NCO/OH)が、0.9〜1.3である前記[1]〜[3]のいずれかに記載のバッキング剤用組成物。
【0012】
[5] 前記ポリオールは、水酸基当量が700〜3,000(g/eq)のものである前記[1]〜[4]のいずれかに記載のバッキング剤用組成物。
【発明の効果】
【0013】
本発明のバッキング剤用組成物は、このバッキング剤用組成物により形成されるバッキング剤層の硬化物硬度、引張り強度、及び破断時伸びを従来のものと同程度に維持しつつ、塗工時の可使時間が十分に長く、かつ、塗工後には短時間で硬化可能である。従って、塗工作業性が向上する。また、本発明のバッキング剤用組成物により形成されるバッキング剤層は、パイル糸を良好に保持し、耐屈曲性も良好である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、本発明を実施するための最良の形態について説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではない。即ち、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、以下の実施の形態に対し適宜変更、改良等が加えられたものも本発明の範囲に属することが理解されるべきである。
【0015】
[1]バッキング剤用組成物:
本発明のバッキング剤用組成物は、分子中に2つ以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネートと、分子中に2つの水酸基を有するジオールと、3つ以上の水酸基を有する多価アルコールに由来する構造単位(イ)を有し、数平均分子量が2,000〜10,000であるポリオールと、二環式アミジン構造を有する触媒と、を含有するものである。
【0016】
[1−1]ポリイソシアネート:
ポリイソシアネートは、分子中に2つ以上のイソシアネート基を有する物質である。このようなポリイソシアネートは、ジオール及びポリオールと反応し、バッキング剤用組成物を硬化させる。また、加熱を契機にして触媒が活性化することにより、硬化反応が加速度的に進むため、塗工したバッキング剤用組成物を速やかに硬化させることができるという利点がある。
【0017】
例えば、脂肪族、芳香族、脂環式等のいずれであってもよく、具体的には、キシリレンジイソシアネート、ポリフェニルメタンジイソシアネート、4,4′−ジフェニルメタンジイソシアネート(「モノメリックMDI」と記す場合がある)、モノメリックMDIとポリメチレンポリフェニルポリイソシアネートとの混合物(「ポリメリックMDI」と記す場合がある)、モノメリックMDIのカルボジイミド変性物、モノメリックMDIのウレタン変性物などの液状変性物、イソホロンジイソシアネート、トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ナフタレンジイソシアネート、水添ジフェニルメタンジイソシアネート、水添キシリレンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート等のジイソシアネート化合物やこれらのイソシアヌレート体、ビウレット体、アダクト体などの重合物を挙げることができる。これらの中でも、芳香族が好ましく、特にポリメリックMDI、モノメリックMDIのカルボジイミド変性物、モノメリックMDIのウレタン変性物などの液状変性物が好ましい。これらは単独で用いてもよいし、2種以上のものを組み合せて用いてもよい。
【0018】
ポリイソシアネートの分子中のイソシアネート基の数は、2.0〜4.5であることが好ましい。更に好ましくは、2.0〜3.0である。2つ以上のイソシアネート基を有すると、バッキング剤用組成物の硬化反応が速やかに進むため、硬化時間が短くなるという利点がある。一方、分子中にイソシアネート基が1つであると、バッキング剤用組成物が発泡したり、硬化不足になったりするおそれがある。
【0019】
[1−2]ジオール:
ジオールは、分子中に2つの水酸基を有する物質である。このジオールは鎖伸長剤としての役割を果たすものである。即ち、ポリイソシアネートと速やかに反応し、硬化反応を短くするという利点がある。一方、分子中にイソシアネート基が1つであると、ジオールによって架橋構造が形成されず(塊状反応が速やかに行われず)、バッキング剤用組成物により形成されるバッキング剤層の硬化が不足するおそれがある。
【0020】
上記ジオールとしては、例えば、脂肪族、芳香族、及び脂環式等のいずれであってもよく、具体的には、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ヘキサメチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、2−メチル−1,3−プロパンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、1,9−ノナンジオール、シクロヘキサンジオール、1,4−ビス(β−ヒドロキシエトキシ)ベンゼン等を挙げることができる。
【0021】
但し、本発明のバッキング剤用組成物のジオールは、炭素数2〜8のアルキレンオキサイドに由来する繰り返し構造を有するものであることが好ましい。即ち、炭素数2〜8のアルキレンオキサイドの付加重合体であることが好ましい。例えば、ポリエチレングリコール等であることが好ましい。このような構造により、2つの水酸基が、それぞれ、直鎖状の分子の末端に位置するため、鎖伸長剤としての役割を更に容易に果たすことが可能になる。
【0022】
ジオールは、数平均分子量300以下の低分子量ジオールであることが好ましい。数平均分子量300以下の低分子量であると、ポリイソシアネートとの架橋構造を形成した際に、ポリイソシアネートに対して自由度を与えず、本発明のバッキング剤用組成物を効果的に硬化させ、更に優れた機械的物性を付与することができる。ジオールの数平均分子量は、60〜300であることが更に好ましく、90〜280であることが特に好ましい。数平均分子量が300超であると、硬化後のバッキング剤用組成物が軟らかくなりすぎる傾向がある。
【0023】
[1−3]ポリオール:
ポリオールは、3つ以上の水酸基を有する多価アルコールに由来する構造単位(イ)を有する物質である。このような構造単位(イ)を有することにより、硬化後のバッキング剤用組成物は適度な硬度を有し、短時間に硬化反応を完了させることができるという利点がある。一方、構造単位(イ)を有さない場合には、バッキング剤用組成物の硬化時間が長くなる傾向にあるため好ましくない。また、バッキング剤層の硬化が不足するおそれがあるため好ましくない。
【0024】
更に、ポリオールは、数平均分子量が2,000〜10,000であることが必要である。このような範囲とすることにより、バッキング剤用組成物において良好な粘度が得られるため、塗工作業性が向上するという利点がある。更に、バッキング剤用組成物により形成されるバッキング剤層の破断時伸びが更に向上するという利点がある。
【0025】
ポリオールの数平均分子量は、2,000〜7,000であることが好ましく、2,500〜6,000であることが更に好ましい。数平均分子量が2,000未満であると、硬化後のバッキング剤用組成物が硬くなるため、伸びが小さくなり、耐屈曲性に劣る傾向がある。一方、数平均分子量が10,000超であると、硬化後のバッキング剤用組成物が軟らかくなりすぎるため、パイルを保持するための強度が十分に得られなくなる傾向がある。
【0026】
なお、本明細書において「数平均分子量」というときは、GPC法(Gel Permeation Chromatography法)で測定されたポリスチレン換算の数平均分子量を意味するものとする。
【0027】
上記ポリオールは、例えば、トリメチロールプロパン、グリセリン、ヘキサントリオール、ペンタエリスリトール、ソルビトール、ネオペンチルグリコール等の多価アルコール類とエチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等のアルキレンオキサイドとの付加重合により得られるポリエーテルポリオール;多価アルコール類とマレイン酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、酒石酸、テレフタル酸、イソフタル酸等の多塩基酸類との縮合反応により得られるポリエステルポリオール;ε−カプロラクトン、γ−バレロラクトン等のラクトン類の開環重合により得られるポリエステルポリオール;アクリル酸ヒドロキシエチル、アクリル酸ヒドロキシブチル、トリメチロールプロパンアクリル酸モノエステル等の水酸基を含有する重合性モノマーの単独重合体、或いはこれらと共重合可能なモノマー(アクリル酸、メタクリル酸、スチレン、アクリロニトリル、α−メチルスチレン等)との共重合体であるアクリルポリオール;ヒマシ油又はその誘導体;両末端にエポキシ基を有するエポキシ樹脂と、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン等とを反応させて得られるエポキシポリオール等を挙げることができる。これらは単独で用いてもよいし、2種以上のものを組み合せて用いてもよい。
【0028】
また、本発明のバッキング剤用組成物のポリオールは、更に、アルキレンオキサイドに由来する構造単位(ロ)を含有し、前記構造単位(イ)と前記構造単位(ロ)とがエーテル結合により結合されたものであることが好ましい。即ち、分子中に3つ以上の水酸基を有する多価アルコールにアルキレンオキサイドを開環付加重合させることにより調製されるポリオールであることが好ましい。このような構造により、バッキング剤用組成物において良好な粘度が得られるため、塗工作業性が向上し、また、硬化後の耐水性が優れるという利点がある。多価アルコールとしては、例えば、トリメチロールプロパン、グリセリン、ヘキサントリオール、ペンタエリスリトール、ソルビトール、ネオペンチルグリコール等が挙げられる。これらの中でも、グリセリン、トリメチロールプロパン等が好ましい。アルキレンオキサイドとしては、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド等が好ましい。
【0029】
なお、ポリオールが、「分子中に3つ以上の水酸基を有する」というときは、多価アルコールが1種類である場合には、その多価アルコール1分子中に水酸基が3つ以上存在することを意味し、多価アルコールが複数種存在する場合には、複数種の多価アルコール1分子中に存在する水酸基の平均が3以上であることを意味するものとする。具体的には、多価アルコールとしてグリセリンを用いた場合には、ポリオールは3つの水酸基を有することを意味し、多価アルコールとしてペンタエリストールを用いた場合には、ポリオールは4つの水酸基を有することを意味する。
【0030】
また、ポリオールは、構造単位(ロ)の末端にエチレンオキサイドキャップ構造を有していることが好ましい。このような構造により、本発明のバッキング剤用組成物の粘度を低く抑えることができるため、塗工作業性が向上するという利点がある。
【0031】
ポリオールは、水酸基当量が700〜3,000(g/eq)のものであることが好ましい。このような範囲にすることにより、バッキング剤用組成物により形成されるバッキング剤層が良好な硬化物硬度、引張り強度、破断時伸びを有するという利点がある。なお、本明細書において、「水酸基当量(g/eq)」というときは、OH(水酸基)1個当たりのポリオールの分子量を意味し、以下の式(a)により算出される値である。なお、「水酸基数」とは、ポリオールを調製する際に用いられる多価アルコール1分子中の水酸基の数を意味する。
(a)水酸基当量(g/eq)=数平均分子量/水酸基数
【0032】
ポリオールの水酸基当量は、800〜2,500(g/eq)であることが更に好ましく、900〜1,800であることが特に好ましい。水酸基当量が700(g/eq)未満であると、硬化後のバッキング剤用組成物が硬くなるため、伸びが小さくなり、耐屈曲性に劣る傾向がある。一方、水酸基当量が3,000(g/eq)超であると、硬化後のバッキング剤用組成物が軟らかくなりすぎるため、パイルを保持するための強度が十分に得られなくなる傾向がある。
【0033】
本発明のバッキング剤用組成物中のジオール及びポリオールの含有量は、特に制限はないが、ジオールの水酸基のモル数は、ポリオールの水酸基のモル数に対する割合(ジオールの水酸基モル数/ポリオールの水酸基モル数;以下、「ジオールOH/ポリオールOH」と記す場合がある)が0.2〜14となるように含有されることが好ましい。このような範囲にすることにより、バッキング剤用組成物により形成されるバッキング剤層が良好な硬化物硬度、引張り強度、破断時伸びを有するという利点がある。上記割合(ジオールOH/ポリオールOH)が、0.2未満であると、引張り強度が低くなる傾向がある。一方、14超であると、硬化後のバッキング剤用組成物が硬くなりすぎるため、伸びが小さくなり、耐屈曲性に劣る傾向がある。上記割合(ジオールOH/ポリオールOH)は、0.7〜11であることが更に好ましく、1.5〜9であることが特に好ましい。
【0034】
[1−4]触媒:
触媒は、二環式アミジン構造を有するものである。即ち、分子内にプロトンが共鳴安定化されたアミジン構造を有する化合物である。このような構造を有することにより、常温下では触媒活性が低く、加熱されたことを契機として触媒作用を発現するため、塗工後、任意にバッキング剤用組成物を硬化させることができる。即ち、可使時間を長くすることができるという利点がある。このように長い可使時間を確保することができるため、塗工作業を確実に行うことができる。また、触媒作用を発現すると、バッキング剤用組成物を短時間で硬化させることができる。なお、加熱温度は、60℃程度以上であれば良く、加熱方法は特に制限はない。
【0035】
二環式アミジン構造を有する触媒としては、例えば、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデセン−7(「DBU」と記す場合がある)、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデセン−7のオクチル酸塩(「DBU−C8」と記す場合がある)、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデセン−7のフェノール塩、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデセン−7のフタル酸塩、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデセン−7のトルエンスルホン酸塩、6−(2−ヒドロキシプロピル)−1,8−ジアザビシクロ[5.4.0]ウンデセン−7、1,5−ジアザビシクロ[4.3.0]ノネン−5、1−クロロ−6,7,8,9,10,12−ヘキサヒドロ−アゼピン[2,1−b]キナゾリン、10−クロロ−2,3,4,6,7,8,9,10−オクタヒドロ−ピリミド[1,2−A]アゼピン、10−ベンジル−2,3,4,6,7,8,9,10−オクタヒドロ−ピリミド[1,2−A]アゼピン、10−ペンタデシル−2,3,4,6,7,8,9,10−オクタヒドロ−ピリミド[1,2−A]アゼピン、2,3,4,6,7,8,9,10−オクタヒドロ−ピリミド[1,2−A]アゼピン−10−カルボン酸フェニルアミド、2,3,4,6,7,8,9,10−オクタヒドロ−ピリミド[1,2−A]アゼピン、5,7,8,9,10,11−ヘキサヒドロ−アゼピン[1,2−A]キナゾリン、1,2,3,5,6,7−ヘキサヒドロ−ベンゾ−(f)ピリミド[1,2−A]アゼピン、2−フェニル−2,3,4,6,7,8,9,10−オクタヒドロ−ピリミド[1,2−A]アゼピン、
【0036】
3−クロロ−6,7,8,9,10,12−ヘキサヒドロ−アゼピノ[2,1−b]キナゾリン、4−クロロ−6,7,8,9,10,12−ヘキサヒドロ−アゼピノ[2,1−b]キナゾリン、4−メトキシ−6,7,8,9,10,12−ヘキサヒドロ−アゼピノ[2,1−b]キナゾリン、2,3−ジメトキシ−6,7,8,9,10,12−ヘキサヒドロ−アゼピノ[2,1−b]キナゾリン、6,7,8,9,10,12−ヘキサヒドロ−アゼピノ[2,1−b]キナゾリン、2−クロロ−6,7,8,9,10,12−ヘキサヒドロ−アゼピノ[2,1−b]キナゾリン、2−ブロモ−6,7,8,9,10,12−ヘキサヒドロ−アゼピノ[2,1−b]キナゾリン、及び4−メチル−6,7,8,9,10,12−ヘキサヒドロ−アゼピノ[2,1−b]キナゾリン等を挙げることができる。これらの中でも、DBU、DBU−C8が好ましい。
【0037】
ところで、従来のバッキング剤用組成物は、例えば、ジブチル錫ジラウレートなどの無機系の触媒が配合されており、この無機触媒は、常温下であっても硬化反応を促進させてしまう。そのため、バッキング剤用組成物の可使時間が短く、塗工作業性が低く、取り扱い難いものであった。
【0038】
触媒は、ポリイソシアネート、ジオール、ポリオール、及び後述する着色剤やフィラーの総量(以下「各成分総量(ハ)」と記す場合がある)100質量部に対して0.001〜5質量部配合することが好ましい。触媒は、この範囲で含有されることにより、十分な可使時間を確保しつつ、硬化時間が短くなり、これらの性質のバランスが適度にとれたバッキング剤用組成物が得られるという利点がある。配合量が0.001質量部未満であると、硬化時間が長くなる傾向がある。一方、5質量部超であると、可使時間が短くなる傾向がある。また、触媒の上記配合量は、0.005〜1質量部であることが更に好ましく、0.01〜0.2質量部であることが特に好ましい。
【0039】
[1−5]その他の成分:
本発明のバッキング剤用組成物は、必要に応じて各種の添加剤を配合することができる。例えば、増量剤、発泡剤、分散剤;架橋剤、フェノール系、有機ホスファイト系、チオエーテル系などの酸化防止剤;光安定剤;紫外線吸収剤;アミド系、有機金属塩系、エステル系などの滑剤;含臭素有機系、リン酸系、三酸化アンチモン、水酸化マグネシウム、赤リンなどの難燃剤;有機顔料;無機顔料;金属イオン系などの無機、有機抗菌剤、安定剤、老化防止剤、防腐剤、増粘剤などを添加することができる。
【0040】
増量剤(以下、「フィラー」と記す場合がある)は、固形分濃度の増加や重量感を付与する目的で必要に応じて用いることができる。このようなフィラーとしては、クレー、カオリン、タルク、炭酸カルシウム、重炭酸カルシウム、珪藻土、グラファイト、アルミナ、酸化鉄、酸化チタン、シリカ、ゴム粉末、ガラスフレーク、ベントナイト、水酸化アルミニウムなどを挙げることができる。この中でも、炭酸カルシウム、重炭酸カルシウムが好ましい。
【0041】
上記増量剤の含有量は、上記各成分総量(ハ)に対して、通常、0〜400質量部であることが好ましく、更に好ましくは、100〜300質量部、特に好ましくは、150〜250質量部である。400質量部を超えると、バッキング剤用組成物の粘度が高くなり、塗工性が悪くなる傾向がある。
【0042】
発泡剤としては、例えば、空気、窒素、二酸化炭素、アルゴン、及びヘリウム等の気体;水;例えば、クロロフルオロメタン、クロロフルオロエタン等の低沸点ハロゲン化化合物;例えば、アゾビス(ホルムアミド)等のアゾ化合物;及び微粉砕固体を挙げることができる。これらの中でも、気体を用いることが好ましい。なお、これらは単独で或いは2種以上混合して用いることができる。
【0043】
上記発泡剤の含有量は、上記各成分総量(ハ)に対して、通常、0〜10質量部であることが好ましく、更に好ましくは、0〜5質量部、特に好ましくは、0〜3質量部である。10質量部を超えると、発泡剤によってバッキング剤用組成物が発泡した際に、密度が低くなり、硬化後の強度が低下する傾向がある。
【0044】
[1−6]NCO/OH:
ポリイソシアネート中のイソシアネート基のモル数(イ)は、前記ジオール中の水酸基のモル数と前記ポリオール中の水酸基のモル数との合計のモル数(ロ)に対する割合(モル数(イ)/モル数(ロ)=NCO/OH)が、0.9〜1.3であることが好ましい。この範囲とすることにより、ポリオール中の水酸基の大半が、ポリイソシアネート中のイソシアネート基との反応により消費されるため、未反応のポリオールの残留を防止することができる。未反応のポリオールが残留していると、バッキング剤用組成物により形成したバッキング剤層の耐水性が悪化するおそれがある。また、イソシアネート基が他の反応によりその一部が消費されたとしても、水酸基と反応するイソシアネート基を確保することができる。
【0045】
上記割合は、1.05〜1.2であることが更に好ましく、1.05〜1.15であることが特に好ましい。0.9未満であると、バッキング剤用組成物に未反応の水酸基が多く残留するため、バッキング剤層の耐水性が悪くなる傾向がある。一方、1.3超であると、未反応のイソシアネート基が過剰に残留するため、硬化時間が長くなり、硬化直後のバッキング剤がべたつく傾向がある。
【0046】
[2]バッキング剤用組成物の製造方法:
本発明のバッキング剤用組成物は、例えば、以下のようにして製造することができる。まず、上記ジオール、ポリオール、触媒、及び必要に応じて増量剤等の添加剤をラインブレンダー、ニーダー、ブレンダー、万能混合撹拌機などの混合機により混合温度5〜40℃で混合し、混合液を調製する。基布に塗工する直前に、この混合液にポリイソシアネートを添加し、上記混合機により混合して本発明のバッキング剤用組成物を得ることができる。
【0047】
[3]バッキング剤層:
本発明のバッキング剤用組成物は、カーペット等の繊維製品や人工芝などの裏面に配設されるバッキング剤層として使用することができる。例えば、人工芝は、基布、及び前記基布の一方の面に配設された多数のパイル糸を有する人工芝基布と、基布の他方の面に、上記バッキング剤用組成物が塗工されることにより形成されたバッキング剤層とを備えている。上記バッキング剤用組成物を用いることにより、パイル糸の抜けを防止し、カーペット等に適度な曲げ硬さを付与することが可能であり、敷設後に皺が形成されることを防止することができるため、寸法安定性を付与することができるという利点がある。
【0048】
基布としては、例えば、テープ状の熱可塑性樹脂を一軸延伸したフラットヤーン等を織成したものを挙げることができる。基材の厚さは、特に制限はないが、例えば、0.1〜10mmであることが好ましく、0.2〜2mmであることが更に好ましい。0.1〜10mmの範囲とすることにより、カーペット等の重量を軽減するという利点がある。
【0049】
パイル糸としては、例えば、ポリエチレン、ポリエステル、ポリアミド等を延伸したものを挙げることができる。
【0050】
バッキング剤層の厚さは、特に制限はないが、例えば、0.2〜10mmであることが好ましく、0.5〜5mmであることが更に好ましい。0.2〜10mmの範囲とすることにより、カーペット等に適度な曲げ硬さを付与するという利点がある。
【0051】
上記人工芝は、例えば、以下のように製造することができる。まず、人工芝に使用する基材を用意する。この基材としては、上述の基材を用いることができる。次に、バッキング剤層となるバッキング剤用組成物を調整する。この組成物は、上述の組成物を用いることができる。この組成物を基材の少なくとも片面上に、塗布量100〜1,500g/m(乾燥質量)で塗布し、塗布後、90〜150℃で5〜40分間の加熱乾燥を行い、バッキング剤層を形成する。このようにして、基材の少なくとも片面にバッキング剤層が形成された人工芝を製造することができる。なお、組成物の塗工方法は、特に制限はなく、上述した、アプリケーター等の塗工装置を使用し、公知の方法を採用することができる。
【実施例】
【0052】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、実施例、比較例中の「部」及び「%」は、特に断らない限り質量基準である。また、各種物性値の測定方法、及び諸特性の評価方法を以下に示す。
【0053】
実施例、比較例においては、ポリイソシアネート、ジオール、ポリオール、触媒及びフィラーとして以下に記載のものを使用した。
【0054】
(1)ポリイソシアネート:
分子中に2つのイソシアネート基を有するポリイソシアネートである4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート重合体(商品名:スミジュールPF、NCO含有率23質量%、平均官能基数2、住化バイエルウレタン社製)
【0055】
(2)ジオール:
分子中に2つの水酸基を有し、数平均分子量が250であるポリプロピレングリコール(商品名:ユニオールD250、官能基数2、日本油脂社製)
【0056】
(3)ポリオール:
(A)3つの水酸基を有する多価アルコールであるグリセリンに由来する構造単位(イ)及びアルキレンオキサイドに由来する構造単位(ロ)を含有し、数平均分子量が5,100であるポリエーテルポリオール(商品名:エクセノール5030、官能基数3、水酸基当量1700g/eq、旭硝子社製)、(B)3つの水酸基を有する多価アルコールであるグリセリンに由来する構造単位(イ)及びアルキレンオキサイドに由来する構造単位(ロ)を含有し、数平均分子量が5,100であって、構造単位(ロ)の末端にエチレンオキサイドキャップ構造を有するポリエーテルポリオール(商品名:エクセノール823、官能基数3、水酸基当量1700g/eq、旭硝子社製、末端エチレンオキサイドキャップ)、(C)3つの水酸基を有する多価アルコールに由来する構造単位(イ)及びアルキレンオキサイドに由来する構造単位(ロ)を含有し、数平均分子量が3,000であるポリエーテルポリオール(商品名:アデカポリエーテルG−3000B、官能基数3、水酸基当量1000g/eq、旭電化工業社製)、
【0057】
(D)3つの水酸基を有する多価アルコールに由来する構造単位(イ)及びアルキレンオキサイドに由来する構造単位(ロ)を含有し、数平均分子量が1,500であるポリエーテルポリオール(商品名:アデカポリエーテルG−1500、官能基数3、水酸基当量500g/eq、旭電化工業社製)、(E)2つの水酸基を有する多価アルコールであるプロピレングリコールに由来する構造単位(イ)及びアルキレンオキサイドに由来する構造単位(ロ)を含有し、数平均分子量が3,000であるポリエーテルポリオール(商品名:エクセノール3020、官能基2、水酸基当量1,500g/eq、旭硝子社製)
【0058】
(4)触媒:
(A)二環式アミジン構造を有する触媒である、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデセン−7(サンアプロ社製、表中「DBU」と記す)、(B)二環式アミジン構造を有する触媒である、1,8−ジアザビシクロ[5,4,0]ウンデセン−7のオクチル酸塩(商品名:U−CAT SA102、サンアプロ社製、表中「DBU−C8」と記す)、(C)ジブチル錫ジラウレート(商品名:アデカスタブBT11、旭電化工業社製、表中「有機スズ」と記す)、(D)二環式アミジン構造を有さない触媒である、2−メチル−1,4−ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(エアープロダクツジャパン社製、表中「Me−DABCO」と記す)
【0059】
(5)フィラー:
重質炭酸カルシウム(商品名:SS #30、日東粉化工業社製)
【0060】
[数平均分子量]:
ジオール、ポリオールの数平均分子は、GPC法(Gel Permeation Chromatography法)で測定されたポリスチレン換算の数平均分子量である。
【0061】
(実施例1)
[バッキング剤用組成物の調製]:
ポリイソシアネート17.56質量部、ジオール96.2質量部、ポリオール(A)17.86質量部、及びフィラー54.96質量部を加えて混合液Aを得た。更にこの混合液A100質量部に対して、触媒(A)0.014質量部を加えて混合することにより、バッキング剤用組成物を調製した。なお、このバッキング剤用組成物は、NCO/OHが、1.1(NCO/OH=1.1/1.0)であった。
【0062】
[評価方法]:
実施例及び比較例においては、以下の試験を行うことにより、各種評価を行った。
【0063】
[可使時間]:
バッキング剤用組成物の塗工作業性を評価するため、バッキング剤用組成物の粘度が所定の粘度に達するまでの時間(可使時間)を測定した。即ち、可使時間(min)は、上記混合液Aの粘度を基準粘度とし、この基準粘度に対して、バッキング剤用組成物の調製後、粘度が基準粘度の3倍に達するまでの時間とした。具体的には、所定量の、ジオール、ポリオール(A)、フィラー、及び触媒(A)を予め混合し、その後、ポリイソシアネートを更に添加する。このポリイソシアネートを添加したときを開始時間とし、予め測定しておいた基準粘度の3倍に達した時間を終了時間とする。なお、バッキング剤用組成物の粘度、及び混合液Aの粘度(基準粘度)は、粘度B型粘度計(型番「BM型」、東京計器社製)の4号ローターに、12rpmで25℃、1分間供して測定した。評価基準は、可使時間が20分以上を「○」とし、可使時間が20分未満を「×」とした。
【0064】
[硬化速度]:
バッキング剤用組成物の硬化速度を評価するため、バッキング剤用組成物の硬化時間(min)を測定した。具体的には、バッキング剤用組成物を基布に塗工し、硬化させた硬化物の以下条件におけるトルクが3.0kg・cmに達するまでの時間を測定した。キュラストメーター(型番;キュラストメーター7、エー・アンド・デイ社製)を用い、ダイス形状:ISO6502フラットプレートダイロータレスキュアメータ、振幅角:1/4度、測定110℃の条件で測定した。評価基準は、硬化時間が5分以下を「○」とし、硬化時間が5分超を「×」とした。
【0065】
[硬化物硬度]:
バッキング剤用組成物により形成されるバッキング剤層の物性を評価するため、バッキング剤層の硬度を測定した。具体的には、バッキング剤用組成物を金型に流し込み、110℃、15分間の熱プレスにより、硬化させて厚み2mmのシート状のバッキング剤層を得た。このバッキング剤層を23℃、65%の環境下で5日間養生し、以下の条件で硬化物(バッキング剤層)硬度を測定した。JIS K7312 7.硬さ試験に準拠し、JIS K6253に準拠したデュロメータータイプD(型番;アスカータイプD、高分子計器社製)、測定温度23℃の条件で測定した。評価基準は、硬化物硬度が75以下を「○」とし、硬化物硬度が75超を「×」とした。
【0066】
[引張り強さ]:
上記硬化物硬度評価と同様にしてバッキング剤層を得、その引張り強さ(MPa)を測定した。測定は、JIS K6301 5.引張試験に準拠し、2号ダンベルを用い、温度条件23℃、引張り速度100mm/minの条件で行った。なお、引張試験に用いた引張試験機は、島津製作所社製の「島津オートグラフAG−5000」である。評価基準は、引張り強さが4.0MPa以上を「○」とし、引張り強さが4.0MPa未満を「×」とした。
【0067】
[破断時伸び]:
上記引張り強さ評価と同様の条件でバッキング剤層を引張り、その破断時の伸び率を測定した。評価基準は、伸び率が100%以上を「○」とし、伸び率が100%未満を「×」とした。
【0068】
[評価結果]:
本実施例のバッキング剤用組成物は、基準粘度が4,200mPa・s、可使時間が56.8分、硬化速度が2.5分であり、本実施例のバッキング剤用組成物により形成されたバッキング剤層は、硬化物硬度が65、引張り強さが8.8MPa、破断時伸びが276%であった。これらの評価結果はすべて良好であった。従って、本実施例のバッキング剤用組成物は、分子中に2つのイソシアネート基を有するポリイソシアネートとして4,4’−ジフェニルメタンジイソシアネート重合体;分子中に2つの水酸基を有し、数平均分子量が250であるジオール;グリセリンに由来する構造単位(イ)及びアルキレンオキサイドに由来する構造単位(ロ)を含有し、数平均分子量が5,100であるポリオール;及び二環式アミジン構造を有する触媒としてDBUを含有することにより、可使時間が長く、硬化速度が早いことが確認できた。そのため、塗工作業性が向上することが示唆される。また、本実施例のバッキング剤用組成物により形成されたバッキング剤層は、硬化物硬度、引張り強さ、及び破断時伸びが優れていることが確認できた。
【0069】
[人工芝の作製]:
バッキング剤層を有する繊維製品や人工芝などの一例として、人工芝を以下のようにして作製した。ポリエチレン製のパイル糸をポリプロピレン製の織布(基布)に植設させる。その後、本発明のバッキング剤用組成物を塗工液とし、この塗工液をアプリケーターにより1200g/mで織布の裏面に塗布し、110℃の熱風循環式オーブンで15分間硬化させた後、23℃、65%の環境下で5日間養生してバッキング剤層の厚さがおよそ0.75mmである人工芝を作製した。
【0070】
[抜糸力]:
バッキング剤層によるパイルの保持力を評価するため、上記人工芝の複数本のパイルのうち、1本のパイル(パイル束)をJIS L1023に準拠して抜糸し、その抜糸に必要な力(抜糸力)を測定した。評価基準は、抜糸力が70N以上を「○」とし、抜糸力が70N未満を「×」とした。
【0071】
[耐屈曲性]:
バッキング剤層の耐屈曲性を評価するため、上記人工芝の裏面(塗布面)が外側となるように2つ折りにしたときのバッキング剤層の状態を目視にて観察した。評価基準は、適度な曲げ反発性があるものを「○」とし、強く折り曲げようとするとバッキング剤層に破損を生ずる場合があるものを「×」とした。
【0072】
[評価結果]:
本実施例の人工芝は、本実施例のバッキング剤用組成物により形成したバッキング剤層を有するため、抜糸力が102N、耐屈曲性が「○」であり、良好な結果を示した。従って、この人工芝は、良好な抜糸力を有するためパイル糸を良好に保持することが確認できた。また、耐屈曲性に優れた人工芝を形成することができることが確認できた。
【0073】
(実施例2〜4、比較例1〜4):
表1に示す配合処方とすること以外は、上述した実施例1と同様にして実施例2〜4、比較例1〜4のバッキング剤用組成物を調製し、各種評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0074】
【表1】

【0075】
[評価結果]:
表1に示すように、比較例1のバッキング剤用組成物は、可使時間が50分程度あるが、この組成物により形成したバッキング剤層は、組成物に含有するポリオールの数平均分子量が1,500であるため、硬化物硬度、及び破断時伸びが十分ではなかった。更に、比較例1のバッキング剤用組成物により形成したバッキング剤層を有する人工芝は、耐屈曲性において十分ではなかった。比較例2のバッキング剤用組成物は、ポリオールに、3つ以上の水酸基を有する多価アルコールに由来する構造単位(イ)を備えていないため、硬化時間が長く、硬化速度が遅かった。比較例3、4のバッキング剤用組成物は、二環式アミジン構造を有する触媒を含有していないため、可使時間が短く、十分な可使時間が得られず、硬化速度も遅かった。
【0076】
実施例2〜4のバッキング剤用組成物は、実施例1のバッキング剤用組成物と同様に、可使時間が長く、硬化速度が早いことが確認できた。そのため、塗工作業性が向上することが示唆される。また、実施例2〜4のバッキング剤用組成物により形成されたバッキング剤層は、硬化物硬度、引張り強さ、及び破断時伸びが優れていることが確認できた。
【0077】
特に、実施例3のバッキング剤用組成物は、ポリオールの構造単位(ロ)の末端にエチレンオキサイドキャップ構造を更に有しているため、基準粘度が低く、塗工作業性が更に向上することが示唆される。また、実施例4のバッキング剤用組成物は、ポリオールの数平均分子量が3,000あり、実施例1〜3のバッキング剤用組成物に含有されるポリオールの数平均分子量よりも低分子量であるため、基準粘度が低く、塗工作業性が更に向上することが示唆される。
【産業上の利用可能性】
【0078】
本発明のバッキング剤用組成物は、このバッキング剤用組成物により形成されるバッキング剤層の硬化物硬度、引張り強度、及び破断時伸びを従来のものと同程度に維持しつつ、塗工時の可使時間が十分に長く、かつ、塗工後には短時間で硬化可能であるため、塗工作業性に優れ、従来のバッキング剤層と同程度の物性を有するカーペット等の繊維製品や人工芝等の形成に用いられる組成物として好適に使用することができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
分子中に2つ以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネートと、
分子中に2つの水酸基を有するジオールと、
3つ以上の水酸基を有する多価アルコールに由来する構造単位(イ)を有し、数平均分子量が2,000〜10,000であるポリオールと、
二環式アミジン構造を有する触媒と、
を含有するバッキング剤用組成物。
【請求項2】
前記ポリオールは、更に、アルキレンオキサイドに由来する構造単位(ロ)を含有し、前記構造単位(イ)と前記構造単位(ロ)とがエーテル結合により結合された請求項1に記載のバッキング剤用組成物。
【請求項3】
前記ポリオールは、前記構造単位(ロ)の末端にエチレンオキサイドキャップ構造を有している請求項2に記載のバッキング剤用組成物。
【請求項4】
前記ポリイソシアネート中のイソシアネート基のモル数(イ)は、前記ジオール中の水酸基のモル数と前記ポリオール中の水酸基のモル数との合計のモル数(ロ)に対する割合(モル数(イ)/モル数(ロ)=NCO/OH)が、0.9〜1.3である請求項1〜3のいずれか一項に記載のバッキング剤用組成物。
【請求項5】
前記ポリオールは、水酸基当量が700〜3,000(g/eq)のものである請求項1〜4のいずれか一項に記載のバッキング剤用組成物。

【公開番号】特開2007−308547(P2007−308547A)
【公開日】平成19年11月29日(2007.11.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−137295(P2006−137295)
【出願日】平成18年5月17日(2006.5.17)
【出願人】(000230397)株式会社イーテック (49)
【Fターム(参考)】