説明

バッキング防止装置

【課題】推進工法において、推進施工中の管接続時に推進管列が発進立坑側に押し戻されるバッキングを防止できる装置を提供する。
【解決手段】推進管10の所定の位置に、壁面に直交するように壁内面から放射方向に所定の長さで内ネジ加工した円筒状の接続ソケット8を設け、壁外面からは円筒状の特殊ソケット7を前記接続ソケット8と中心軸が同軸となるように連結して設けた注入孔と、前記特殊ソケット7とほぼ同じ長さで前記特殊ソケット7に内接する円筒状の嵌設桿4を有し、前記嵌設桿4の一端に強固な箱体3の底板を連結して設けたバッキング支持金具とにより、前記バッキング支持金具の嵌設桿4を推進管10外部から特殊ソケット7内に嵌設し、前記箱体3側面の一面を推進管10の外周部に設置した移動固定枠11に当接させて固定することによってバッキングを防止させる装置である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地中に推進管を順次埋設していく推進工法において、推進施工中の推進管接続時に先端の掘進機面板に作用する水圧や土圧によって、推進管列が発進立坑側に押し戻されるバッキングを防止する装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
推進工法は、推進管列の先端に装備した掘進機先端の面板で前方の地盤を切削しながら、発進立坑内に設置した元押ジャッキで推進管列の最後端を押圧することによって、掘進機及び推進管列を所定の位置に埋設していく方法である。
【0003】
推進施工中における推進管の接続は、1本分の推進管の埋設が完了すると、発進立坑内において元押ジャッキが縮小され、推進管と元押ジャッキの間にできたスペ−スに次の推進管を吊り降ろして設置し、設置した推進管の後端を元押ジャッキで押圧することによって、前の推進管と接続する方法が用いられている。しかし、地下水圧や土圧の大きい土質条件下では、掘進機先端の面板に大きな水圧や土圧が作用しているため、推進管の接続時の元押ジャッキを縮小した際に、掘進機とともに後続する推進管列を後方に押し戻すバッキング現象が発生する。このため、次の推進管を据付けるスペ−スがなくなったり、発進坑口壁の止水ゴムが推進管の抜けによって反転し、止水性を無くして地下水や土砂が発進立坑内に噴発して流れ出るという問題が発生していた。
【0004】
このため、近年はバッキング防止力を得るために、インサ−トアンカ−方式が多く採用されている。その方法は、推進管外部の両側面に複数本のインサ−トアンカ−を設置し、そのインサ−トアンカ−部に複数枚の支持プレ−トを複数本のボルトで固定する。支持プレ−トは、推進管の両側に設置された推進台上の受プレ−トに当接させて支持する方法である。支持プレ−トは複数本のボルトで固定されており、比較的大きなバッキング反力を得ることができる。また、他のバッキング防止方法としては、推進管の両側面に設けられた
注入孔に推進管壁を貫通して所定の長さだけ外側に突出させた棒状の突出桿と、推進管内側には前記突出桿位置に嵌挿孔を設け管内壁面に当接するように設置した内側分布板と、前記内側分布板を介して突出桿を固定する内側固定金具と、推進管外側には、前記突出桿位置に嵌挿孔を設け管外壁面に当接するように設置した外側分布板に、前記嵌挿孔を覆うように筒状の挿通筒を前記外側分布板に固設し、前記挿通筒の前方側面を前記外側分布板から補強材で補強固定して一体化したバッキング力支持金具と、前記バッキング支持金具の挿通筒からでた突出桿の端部を固定する外側固定金具と、により構成される装置により、大きなバッキング力を簡単に防止できる装置が開発されている。
【特許文献1】特開2008−82068号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記したインサ−トアンカ−方式では、バッキング力の大きさに合わせてインサ−トアンカ−の本数を増減することが可能であるが、大きなバッキング力の場合には支持プレ−トを固定するインサ−トアンカ−の本数が非常に多くなり、インサ−トアンカ−に設置するボルトの取り付け、撤去に多くの時間を必要とし、推進施工にかけられる時間が著しく減少するという問題がある。また、インサ−トアンカ−部の穴埋め処理も必要となり、設置本数が多くなるとより多くの労力と費用を必要とする。さらに、注入孔より外部に突出させた一対の突出桿に挿通した挿通筒よりなるバッキング防止装置は、予め設けてある滑材やグラウト注入用の注入孔に突出桿を挿通して行うだけの効率の良い方法であり、短時間で容易にバッキング防止が実施できるが、推進中に地下水や土砂の侵入を防止するためのメクラ蓋の設置や滑材やグラウト注入時の逆流を防止するための逆止弁の設置を行うために設けられる注入孔内のソケット内ネジが、大きなバッキング力を受ける突出桿によって潰され、メクラ蓋や逆止弁が設置できなく、推進施工が実施できないという問題が発生していた。また、大きなバッキング力が発生すると、注入孔周辺のコンクリ−ト壁にクラックが発生するという問題も発生していた。このため本発明は、大きなバッキング力であっても、推進施工に支障なく安全に防止できるバッキング防止装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、推進施工中の推進管接続時に、先端の掘進機面板に作用する水圧や土圧によって、推進管列が発進立坑側に押し戻される現象を防止するバッキング防止装置において、
推進管の所定の位置に、壁面に直交するように壁内面から放射方向に所定の長さで内ネジ加工した円筒状の接続ソケットを設け、壁外面からは円筒状の特殊ソケットを前記接続ソケットと中心軸が同軸となるように連結して設けた注入孔と、前記特殊ソケットとほぼ同じ長さで前記特殊ソケットに内接する円筒状の嵌設桿を有し、前記嵌設桿の一端に強固な箱体の底板を連結して設けたバッキング支持金具とにより、前記バッキング支持金具の嵌設桿を推進管外部から特殊ソケット内に嵌設し、前記箱体側面の一面を推進管の外周部に設置した移動固定枠に当接して固定することによってバッキングを防止させるバッキング防止装置である。
【0007】
注入孔の接続ソケットは、メクラ蓋や逆止弁が装着できる長さで内ネジが加工されている。接続ソケットに連結して設置される特殊ソケットは、接続ソケットと中心軸が同軸となるように連結して設けられている。特殊ソケットの材質は、挿通された嵌設桿から受ける大きな力に対して十分に耐えられるように強度の高い鋼材が使用される。特殊ソケット内径が接続ソケット内径と異なる場合には、特殊ソケットと接続ソケットの連結位置に接続板が取り付けられて一体化される。接続板の中央部は、接続ソケットの内径とほぼ同径で開口されて特殊ソケットとは貫通した状態となっている。注入孔の設置位置は、推進管の中間部分で、円周方向の複数ケ所に設置される。
【0008】
バッキング支持金具の嵌設桿は、注入孔内の特殊ソケットとほぼ同じ長さで内接する構造となっている。嵌設桿の材質は、強度の高い鋼材が用いられ、想定されるバッキング力に対して事前に検討が行われ、嵌設桿の本数や内外径等が決定される。
【0009】
嵌設桿の一端に連結して固設される箱体は、四方の側板と底板とにより構成され、頂部は解放された状態となっている。箱体の底板には、嵌設桿の内径とほぼ同径で開口されており、箱材の頂部から固定ボルトを嵌設桿、接続ソケット内を挿通させ、推進管内面で固定ボルトを締付具によって締め付けて、バッキング支持金具を固定させる。
【0010】
移動固定枠の形状は、注入孔の設置位置に合わせて移動固定枠面が推進管外周面に隣接するように四角や多角形状に変化させて製作される。移動固定枠がその位置より後方に移動しないように、発進立坑壁の前方又は後方から移動阻止材を延長させて固設し支持する構造となっている。移動固定枠及び移動阻止材には大きなバッキング力が作用するため、H型鋼等の鋼材が用いられる。特に大きなバッキング力を受け持つ場合には後方から支持する移動阻止材の方式が有効である。
【発明の効果】
【0011】
本発明のバッキング防止装置は、推進管の注入孔の壁外面からほぼ中間までの間に設置した特殊ソケット内の挿通桿部だけによってバッキング力を受け持つため、壁内面部に設置した接続ソケットにはバッキング力が作用しないので、接続ソケットの内ネジは痛むこともなく、推進施工時に必要となるメクラ蓋や逆止弁の設置が確実に行える。また、注入孔の挿通桿部には、特殊ソケットによる補強が施されており、大きなバッキング力が作用しても特殊ソケットを介してコンクリ−ト面に分散して伝達されるため、従来技術のようにひび割れや破損が発生することがなくなった。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
推進施工中の推進管接続時に、先端の掘進機面板に作用する水圧や土圧によって、推進管列が発進立坑側に押し戻されるバッキングを、複数ケ所の注入孔を利用することによって、安全で確実に防止できる技術を実現した。
【実施例1】
【0013】
図1は、本発明のバッキング支持金具を説明する断面図である。バッキング支持金具1は、四方の側板と底板からなる箱体3と、該箱体3の底板中央に固設した円筒状の嵌設桿4とにより構成される。底板の嵌設桿4部には、嵌設桿4の内径とほぼ同径で孔が開口されている。底板の孔からは、嵌設桿4内を通って推進管の壁内面から突出する長さをもった固定ボルト5が嵌挿され、固定ボルト5の下端はネジ部が設けられて締付具6が取り付けられている。
【0014】
嵌設桿4は、所定の長さで製作されており、その内外径及び本数は受け持つバッキング力の大きさによって変化させる。通常は、下端に連結される接続ソケット7の外径よりも大きなものとなっている。嵌設桿4は、推進管が受けるバッキング力を箱体3に確実に伝達するために箱体3の底板に強固に固設されている。固設方法としては、従来技術である溶接技術等が一般に用いられる。
【0015】
箱体3は、嵌設桿4を介して伝達されたバッキング力に対して、変形や破損しないように強度の高い鋼材等で強固に製作されている。
【0016】
図2は、本発明の注入孔を説明する断面図である。注入孔2は、推進管10の壁内面から放射方向に所定の長さで内ネジ加工した円筒状の接続ソケット8を設け、壁外面からは円筒状の特殊ソケット7を前記接続ソケット8の中心軸と同軸となるように連結して構成される。通常は、特殊ソケット7の内径の方が接続ソケット8の内径よりも大きくなっている。特殊ソケット7内径と接続ソケット8内径が異なる場合は、連結部には接続板9が設置されて一体化される。接続板9の中央部は、接続ソケット8の内径とほぼ同径で開口されて特殊ソケット7とは貫通した状態となっている。
【0017】
特殊ソケット7の内径は、前記した嵌設桿4の外径が収納できる大きさに設定される。注入孔2を構成する特殊ソケット7及び接続ソケット8は、コンクリ−ト打設時に一体化して構築され、強固な構造となっている。
【0018】
図3は、本発明のバッキング防止状況を説明する断面図である。推進管10の頂部には、特殊ソケット7と接続ソケット8が連結された注入孔2が設けられている。注入孔2の特殊ソケット7内には、バッキング支持金具1の嵌設桿4が嵌設され、上部の箱体3の側板位置には移動固定枠11が当接して固設されている。
【0019】
箱体3の頂部から、固定ボルト5を嵌設桿4内から接続ソケット8内を通して推進管10の内部に突出させ、固定ボルト5を推進管10の内面で締付具6によって締め付けることによって、バッキング支持金具1を固定する。
【0020】
推進管10の接続時に、元押ジャッキが縮小されると掘進機先端の面板に作用する水圧や土圧によって、推進管10にはバッキング力が作用する。バッキング力によって推進管10は、後方へ押し戻されようとするが、推進管10の注入孔1の特殊ソケット7内に嵌設された嵌設桿4が推進管10の後退を阻止する。嵌設桿4は、予め想定されるバッキング力に対して変形や破損しないように本数や大きさが検討されている。
【0021】
箱体3からのバッキング力を受ける移動固定枠11は、バッキング力によって決定された注入孔1数に合わせて形状が決められる。推進管10の頂部と両サイドの3点に注入孔1を計画した場合は、移動固定枠11の形状は各注入孔1位置に移動固定枠11面が隣接するように門型形状となる。
【0022】
移動固定枠11の支持は、発進立坑壁の前方又は後方から移動阻止材(図示省略)を延長させて固設する構造となっている。移動固定枠11や移動阻止材はバッキング力によって変形や座屈等を起こさないように、強度の高いH型鋼材等で製作される。
【0023】
推進管10の接続が終了すると、最後部の推進管10端面に元押ジャッキが当接されて推進準備が完了する。推進準備が完了すると、各注入孔2に嵌設したバッキング支持金具1が撤去され、接続ソケット8部に逆止弁とメクラ蓋を装着して推進施工が再開される。
【産業上の利用可能性】
【0024】
地下水圧の高い土質条件や土被りが深い施工条件下での推進工事に適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明のバッキング支持金具を説明する断面図である。
【図2】本発明の注入孔を説明する断面図である。
【図3】本発明のバッキング防止状況を説明する断面図である。
【符号の説明】
【0026】
1 バッキング支持金具
2 注入孔
3 箱体
4 嵌設桿
5 固定ボルト
6 締付具
7 特殊ソケット
8 接続ソケット
9 接続板
10 推進管
11 移動固定枠

【特許請求の範囲】
【請求項1】
推進施工中の推進管接続時に、先端の掘進機面板に作用する水圧や土圧によって、推進管列が発進立坑側に押し戻される現象を防止するバッキング防止装置において、
推進管の所定の位置に、壁面に直交するように壁内面から放射方向に所定の長さで内ネジ加工した円筒状の接続ソケットを設け、壁外面からは円筒状の特殊ソケットを前記接続ソケットと中心軸が同軸となるように連結して設けた注入孔と、前記特殊ソケットとほぼ同じ長さで前記特殊ソケットに内接する円筒状の嵌設桿を有し、前記嵌設桿の一端に強固な箱体の底板を連結して設けたバッキング支持金具とにより、前記バッキング支持金具の嵌設桿を推進管外部から特殊ソケット内に嵌設し、前記箱体側面の一面を推進管の外周部に設置した移動固定枠に当接して固定することによって、バッキングを防止させることを特徴とするバッキング防止装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−189939(P2010−189939A)
【公開日】平成22年9月2日(2010.9.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−35738(P2009−35738)
【出願日】平成21年2月18日(2009.2.18)
【出願人】(000158769)機動建設工業株式会社 (41)
【Fターム(参考)】