説明

バックライト及び液晶表示装置

【課題】液晶表示パネルとバックライトを備える液晶表示装置において、液晶表示パネルに偏光子を内蔵することなく、外付けの偏光子の数を減らす仕組みを提供する。
【解決手段】本発明のバックライト3は、一方を光取り出し側とした一対の基板11,12と、一対の基板のうち光取り出し側の基板11の内面側に設けられたワイヤーグリッド偏光子13と、一対の基板11,12の間にワイヤーグリッド偏光子13と対向する状態に設けられた発光層20を含む有機層16とを有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、画像表示用の光源となるバックライトとこれを備える液晶表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置は、液晶を封じ込めた2枚のガラス基板の表面(外側の面)に、それぞれ一方向に振動する光だけを透過させる偏光板を貼り付けた液晶表示パネルと、この液晶表示パネルの背面側から光を照射するバックライトとから構成されている。
【0003】
偏光板は、直線偏光を行なう偏光フィルムのほかに、支持機能を持つ機材フィルム、保護のためのPET(ポリエチレンテレフタレート)フィルム、及び外部から保護するための保護フィルムといった多種類のフィルムを積層して貼り合わせた構造になっている。
【0004】
このため、偏光板の部材費が高く、液晶表示パネルの製造コストを引き上げる要因にもなっている。また、2枚のガラス基板に偏光板を貼り付ける工程においては、ガラス基板と偏光板の界面で、ゴミのかみこみや気泡の混入などの不良が発生しやすく、このことが液晶表示パネルの歩留まりを低下させ、製造コストを引き上げる原因になっている。
【0005】
液晶表示パネルに外付けする偏光板では、前述したような問題が生じることから、近年では、偏光子を液晶表示パネルに内蔵する構造が提案されている(例えば、特許文献1を参照)。
【0006】
【特許文献1】特開2003−167246号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、偏光子を液晶表示パネルに内蔵する構造を採用する場合は、薄膜トランジスタ等を形成した駆動基板と各電極との電気的な短絡や、寄生容量の介在など、画素回路を設計するうえで不都合なことが多い。
【0008】
本発明は、上記課題を解決するためになされたもので、その目的は、液晶表示パネルとバックライトを備える液晶表示装置において、液晶表示パネルに偏光子を内蔵することなく、外付けの偏光子の数を減らすことができる仕組みを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るバックライトは、一方を光取り出し側とした一対の基板と、前記一対の基板のうち前記光取り出し側の基板の内面側に設けられた偏光子と、前記一対の基板の間に前記偏光子と対向する状態に設けられた発光層とを有するものである。
【0010】
本発明に係るバックライトにおいては、一対の基板の間に設けられた発光層で発光した光が、光取り出し側の基板の内面側に設けられた偏光子に入射し、そこを通過することにより、直線偏光として取り出される。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、偏光子を内蔵したバックライト構造の採用により、液晶表示パネルに偏光子を内蔵することなく、外付けの偏光子の数を減らすことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明の具体的な実施の形態について図面を参照しつつ詳細に説明する。
【0013】
図1は本発明が適用される透過型の液晶表示装置の概略構成を示す斜視図である。図示した液晶表示装置1は、主として、液晶表示パネル(液晶セル)2と、バックライト3とを備えた構成となっている。
【0014】
液晶表示パネル2は、図示はしないが、例えば薄膜トランジスタ等を含む画素回路が形成された駆動基板と、この駆動基板に対向して配置される対向基板と、駆動基板と対向基板の間に封入される液晶層とを用いて構成されるものである。駆動基板及び対向基板は、それぞれ透明なガラス基板を用いて構成されるものである。
【0015】
液晶表示パネル2の一方の面は光の入射面となり、この入射面に対向するようにバックライト3が配置されている。液晶表示パネル2の他方の面は光の出射面(画像の表示面)となり、この出射面に偏光板4が貼り付けられるようになっている。ちなみに、液晶表示パネル2の一方の面(光の入射面)には偏光板が貼り付けられていない。
【0016】
バックライト3は、液晶表示パネル2の背面側から光を照射するものである。
【0017】
一般に、透過型の液晶表示装置のバックライトの構造は、主に直下型バックライト、エッジライト型バックライト、平面光源型バックライトに大別される。直下型バックライトは、液晶表示パネルの真後ろに蛍光灯と反射フィルムを置いて面光源としたものである。直下型バックライトは、発光効率が良く高輝度を得られることから、大型テレビジョン用途の液晶表示パネルと組み合わせて用いられることが多い。
【0018】
しかしながら、直下型バックライトでは、テレビジョンモニタが大型になるほど、光源である蛍光灯の本数が増え、それにつれて重量も増える。また、蛍光灯の配置を隠して均一な面光源にするためには、20mm〜40mmの十分な奥行きが必要となり、この点が液晶表示装置を厚くする最大の要因になっている。
【0019】
エッジライト型バックライトは、導光板の側面に蛍光灯を置いて面光源としたものである。エッジライト型バックライトは、薄型ではあるものの輝度が比較的小さく、導光板のために非常に重い。このため、テレビジョン用途には平面光源型バックライトが理想的である。平面光源型バックライトには、光源として有機EL(Electro Luminescence)や平面型蛍光ランプが用いられる。
【0020】
特に、有機ELは部材も少なく、インバータも必要としないため、原理的には薄型、軽量が可能であり薄型テレビジョンに適したバックライトとなっている。このため、本発明の実施形態においては、薄型、軽量に適した有機ELを光源とする有機ELバックライトを、上記のバックライト3に採用している。
【0021】
図2は本発明の実施形態に係るバックライトの断面図であり、図3は当該バックライトの分解斜視図である。
【0022】
図示のようにバックライト3は、大きくは、一対(2枚)の基板11,12と、偏光子となるワイヤーグリッド偏光子13と、一対(2つ)の電極14,15と、有機層16と、シール材17とを備えた構成となっている。
【0023】
一対の基板11,12は、バックライト3の厚み方向で互いに対向する状態で配置されている。一対の基板11,12のうち、一方の基板11は、バックライト3の光を外部に取り出すための「光取り出し側」の基板となっている。このため、基板11は、光の透過率が非常に高い透明なガラス基板を用いて構成されている。基板12は、例えば基板11と同様に透明なガラス基板を用いて構成してもよいが、特にバックライト3の機能上は光を透過する性質を持たなくてもよい。
【0024】
ワイヤーグリッド偏光子13は、後述する発光層で発光した光(自然光)を直線偏光に変える偏光子である。ワイヤーグリッド偏光子13は、基板11の内面側に設けられている。基板11の内面とは、基板12に対向する側の面をいう。このため、基板11の内面側に設けられたワイヤーグリッド偏光子13は、一対の電極14,15とその間に挟まれた有機層16を介して、基板12と対向する状態に配置されている。
【0025】
ワイヤーグリッド偏光子13は、Y軸方向に細長い金属ワイヤー(金属線)13AをX軸方向に等間隔に並べたストライプ(すだれ)構造になっている。図3におけるX軸方向は、液晶表示パネル2の表示面で水平方向に相当し、Y軸方向は同垂直方向に相当する。
【0026】
本実施形態においては、ワイヤーグリッド偏光子13を構成する金属ワイヤー13Aの並び方向をX軸方向とし、金属ワイヤー13Aの長手方向をY軸方向としている。ただし、本発明を実施するにあたっては、金属ワイヤー13Aの並び方向をY軸方向とし、金属ワイヤー13Aの長手方向をX軸方向としてもよい。
【0027】
ワイヤーグリッド偏光子13は、偏光効率に優れ、透過率が高く、視野角が広い偏光子である。X軸方向に並ぶ金属ワイヤー13Aの間隔は、ワイヤーグリッド偏光子13に所望の偏光機能をもたせるために、発光層で発光した光(可視光)の波長よりも小さく設定されている。例えば、金属ワイヤー13Aの間隔は100nm程度で、金属ワイヤー13Aの線幅は50nm程度となっている。
【0028】
ワイヤーグリッド偏光子13は、金属ワイヤー13Aに平行な方向(Y軸方向)に振動する電界ベクトルを持つような偏光を反射し、金属ワイヤー13Aに直交する方向(X軸方向)に振動する電界ベクトルを持つ偏光を透過することにより、直線偏光を得るものである。このため、ワイヤーグリッド偏光子13は、金属ワイヤー13Aの並び方向に沿うX軸を透過軸、これに交差(直交)するY軸を反射軸としている。したがって、発光層からワイヤーグリッド偏光子13に入射する光のうち、X軸方向に振動する光はワイヤーグリッド偏光子13を透過して直線偏光となり、それ以外の光はワイヤーグリッド偏光子13で反射して戻り光となる。
【0029】
ちなみに、液晶表示パネル2側に設けられる偏光板4と、ワイヤーグリッド偏光子13とは、互いに透過軸の回転位相が90°ずれた関係となる。すなわち、ワイヤーグリッド偏光子13の透過軸がX軸と平行であるとすると、偏光板4の透過軸はY軸と平行になり、偏光板4の吸収軸はX軸と平行になる。
【0030】
一対の電極14,15は、一方がアノード電極で、他方がカソード電極となっている。ここでは、光取り出し側の基板11に近い電極14をアノード電極とし、光取り出し側と反対側の基板12に近い電極15をカソード電極としている。このため、アノード電極14は光取り出し側に配置され、カソード電極15は光取り出し側と反対側に配置されている。
【0031】
アノード電極14は、バックライト3内の発光層で発光した光を外側に取り出すために、光を透過する透明電極として形成されている。アノード電極14は、バックライト3内の発光層で発光した光を有効に利用するために(つまり光の取り出し効率を上げるために)、光を反射する反射電極として形成されている。
【0032】
このため、アノード電極14は、例えば、ITO(Indium−Tin−Oxide)やIZO(Inidium−Zinc−Oxide)のように、光の透過率が高い導電性材料を用いて構成される。また、カソード電極15は、例えばアルミニウム(Al),銀(Ag)のように光の反射率が高い導電性材料(金属材料)を用いて構成される。カソード電極と有機層の界面には電子注入を良好にするため仕事関数の小さい材料、例えばカルシウム(Ca)やリチウム(Li)化合物を成膜する。
【0033】
アノード電極14の外側の電極面には、上述したワイヤーグリッド偏光子13が物理的に接触(電気的に導通)している。ワイヤーグリッド偏光子13は、基板11とアノード電極14の間に挟まれた状態で設けられている。
【0034】
有機層16は、アノード電極14とカソード電極15の間に挟み込まれた状態で設けられている。有機層16は、有機材料を用いて形成されるもので、アノード電極14からカソード電極15に向かって、ホール注入層18、ホール輸送層19、発光層(有機発光層)20及び電子輸送層21を順に積層した4層構造になっている。
【0035】
ホール注入層18は、例えば、m−MTDATA〔4,4,4 -tris(3-methylphenylphenylamino)triphenylamine〕によって形成されるものである。ホール輸送層19は、例えば、α−NPD[4,4-bis(N-1-naphthyl-N-phenylamino)biphenyl]によって形成されるものである。なお、材料はこれに限定されず、例えばベンジジン誘導体、スチリルアミン誘導体、トリフェニルメタン誘導体、ヒドラゾン誘導体などの正孔輸送材料を用いることができる。また、ホール注入層18及びホール輸送層19は、それぞれ複数層からなる積層構造であってもよい。
【0036】
発光層20は、例えば、R(赤),G(緑),B(青)の色成分ごとに異なる有機発光材料によって形成されるものである。具体的には、赤色発光層は、例えば、ホスト材料となるADNに、ドーパント材料として2,6≡ビス[(4’≡メトキシジフェニルアミノ)スチリル]≡1,5≡ジシアノナフタレン(BSN)を30重量%混合したものにより構成される。緑色発光層は、例えば、ホスト材料となるADNに、ドーパント材料としてクマリン6を5重量%混合したものにより構成される。青色発光層は、例えば、ゲスト材料となるADNに、ドーパント材料として4,4’≡ビス[2≡{4≡(N,N≡ジフェニルアミノ)フェニル}ビニル]ビフェニル(DPAVBi)を2.5重量%混合したものにより構成される。
【0037】
電子輸送層21は、例えば、8≡ヒドロキシキノリンアルミニウム(Alq3 )によって形成されるものである。なお、有機層16は、少なくとも発光層を含むものであって、その積層構造は単層〜3層であってもよいし、上記の4層(ホール注入層、ホール輸送層、発光層、電子輸送層)に電子注入層を加えた5層であってもよいし、それよりも多層であってもよい。
【0038】
バックライト3の内部では、上記のアノード電極14、カソード電極15及び有機層16により、基板11を素子基板として有機EL素子が構成されている。この有機EL素子は、アノード電極14とカソード電極15の間に所定の電圧を印加した際に、ホール注入層18から注入されかつホール輸送層19によって輸送されたホールと、電子輸送層21によって輸送された電子が、発光層20で再結合することにより、発光を生じる素子である。
【0039】
シール材17は、2枚の基板11,12の間で、ワイヤーグリッド偏光子13及び有機EL素子(14,15,16)を封止するためのものである。有機EL素子を搭載する基板11は、例えば図示しない保護層及び接着層を介して、基板12と貼り合わせられている。
【0040】
続いて、上記構成からなるバックライト3とこれを備える液晶表示装置1の製造方法について、図4を用いて説明する。
【0041】
まず、透明なガラス基板からなる基板11の表面(片面)に、例えばモリブデンとアルミニウムを順に積層してなる金属膜を成膜する(ステップS1)。金属膜は、例えば上記のアノード電極14をITOで形成した場合に、このITOとダイレクトに接続可能なアルミニウム合金のスパッタ等によって成膜してもよい。
【0042】
次に、上記の金属膜をフォトリソグラフィによってストライプ状にエッチングする(ステップS2)。この段階で、基板11の表面にワイヤーグリッド偏光子13が形成された状態となる。
【0043】
次に、ワイヤーグリッド偏光子13の金属ワイヤー13A間の隙間を埋めないように、例えばワイヤーグリッド偏光子13が形成されている基板11の表面にITOを斜め蒸着することにより、基板11上にワイヤーグリッド偏光子13を覆う状態でITO膜を成膜する(ステップS3a1)。
【0044】
次に、上記のITO膜を平坦化するために、ITO膜の表面を研磨する(ステップS3a2)。この段階で、基板11上にワイヤーグリッド偏光子13を介してITOのアノード電極14が形成された状態となる。
【0045】
なお、ワイヤーグリッド偏光子13の金属ワイヤー13A間は空隙になっていることが好ましいものの、必ずしも空隙になっている必要はなく、例えば空気に近い屈折率を有する、透明な低屈折率材料で当該空隙を埋めてもよい。
【0046】
具体的には、基板11上にワイヤーグリッド偏光子13を形成した後で、ITOの斜め蒸着に代えて、基板11の表面に金属ワイヤー13A間の隙間を埋め込むように二酸化シリコン(SiO2)を蒸着(成膜)することにより、基板11上にワイヤーグリッド偏光子13を覆う状態でSiO2膜を形成する(ステップS3b1)。SiO2以外の透明な低屈折率材料としては、例えばポリマー系の材料、フッ化物(フッ化マグネシウム、フッ化カルシウムなど)等を用いてもよい。
【0047】
次に、ワイヤーグリッド偏光子13の表面が露出するまでSiO2膜を平坦に研磨した後(ステップS3b2)、その上にITO膜を成膜する(ステップS3b3)。この場合も、上記同様に基板11上にワイヤーグリッド偏光子13を介してITOのアノード電極14が形成された状態となる。
【0048】
その後、基板11のアノード電極14の上に、例えば真空蒸着法によってホール注入層18、ホール輸送層19、発光層20及び電子輸送層21を順に積層する(ステップS4)。この段階で、基板11上に、上記ワイヤーグリッド偏光子13及びアノード電極14とともに、4層の有機層16が形成された状態となる。発光層20は、白色発光を得るために、それぞれ赤と緑と青の光を発光する層を積層することで形成する。
【0049】
次に、上記の有機層16の上に真空蒸着法等によってカソード電極15を形成した後(ステップS5)、基板12とシール材17を用いて、有機EL素子とワイヤーグリッド偏光子13を封止する(ステップS6)。この段階で、ワイヤーグリッド偏光子13を内蔵したバックライト3が得られる。ここで記述する「内蔵」とは、一対の基板11,12が対向している領域内に設けられることを意味し、各々の基板11,12の外面側に設けられる状態を含まない。
【0050】
その後、上記のバックライト3を、予め表示面に偏光板4が貼り付けられた液晶表示パネル2の背面側(表示面と反対側)に取り付ける(ステップS7)。このとき、バックライト3の光取り出し側の基板11を、液晶表示パネル2の非表示面(表示面と反対側の面)と対向させる。
【0051】
以上の製造方法に得られた液晶表示装置1においては、バックライト3内部の発光層20で発光した光が、アノード電極14を透過してワイヤーグリッド偏光子13に入射し、そこを透過することにより、直線偏光として基板11の外側面から液晶表示パネル2に向けて照射される。
【0052】
また、発光層20で発光した光の一部や、ワイヤーグリッド偏光子13で反射した光(戻り光)は、カソード電極15で反射してワイヤーグリッド偏光子13に入射し、そこを透過することにより、直線偏光として基板11の外側面から液晶表示パネル2に向けて照射される。
【0053】
これにより、液晶表示パネル2の背面側からバックライト3によって照射される光は、バックライト3に内蔵されたワイヤーグリッド偏光子13の偏光機能により、直線偏光となる。このため、液晶表示パネル2側には、表示面に対してのみ偏光板4を貼り付けるだけで済む。したがって、液晶表示パネル2に偏光子を内蔵することなく、外付けの偏光子(偏光板)の数を半分に減らすことができる。
【0054】
この結果、偏光板にかかる部材費を削減することができる。また、液晶表示パネル2の製造工程で、パネル1枚当たりの偏光板の貼り付け回数が2回から1回に減るため、偏光板の貼り付け不良(ゴミのかみこみ、気泡の混入など)の発生率を半減させることができる。さらに、面発光の有機ELバックライトの採用により、軽量化及び薄型化を達成することができる。
【0055】
また、バックライト3に内蔵したワイヤーグリッド偏光子13をアノード電極14に接触させることにより、ワイヤーグリッド偏光子13がアノード電極14を低抵抗化するための補助電極として機能する。このため、金属ワイヤー13Aに沿うY軸方向でアノード電極14の電気抵抗を下げることができる。
【0056】
一般に、有機EL素子は、薄型・軽量には適しているものの、大型テレビジョン向けの大面積の有機EL素子を作製する場合は、配線抵抗による電圧ドロップが問題となる。有機EL素子の光取り出し側の電極には、一般的にITOのような透明導電膜や、極薄の金属膜が用いられる。このため、ある程度の厚みをもつ金属膜電極と比べて、電気抵抗が大きくなる。特に、大面積になると、電圧の入力側から離れるほど電圧が低下し、素子に注入されるキャリアが減少して、結果的に有機EL素子の輝度ムラとして認識される。
【0057】
このため、上述のようにワイヤーグリッド偏光子13を補助電極として機能させ、これによってアノード電極14の電気抵抗を下げることにより、特に、Y軸方向での電圧ドロップによる輝度ムラの発生を低減することができる。
【0058】
また、本発明の応用例として、図5に示すように、ワイヤーグリッド偏光子13の金属ワイヤー13A同士をX軸方向で連結部23により連結(架橋)した構成を採用すれば、X軸方向で隣り合う金属ワイヤー13A同士が電気的に接続(導通)された状態となる。連結部23は、ワイヤーグリッド偏光子13と一体に形成されるものである。
【0059】
このため、ワイヤーグリッド偏光子13を構成する金属ワイヤー13Aの線幅が50nmであるとすると、連結部23の線幅もそれと同じ50nmとなる。Y軸方向で隣り合う連結部23同士の間隔は、例えば1mm程度の広い間隔に設定する。Y軸方向で連結部23を形成する位置は、画像を表示したときに、その部分が認識されない、又は認識されにくいように、例えば液晶表示パネル2のブラックマトリクスと重なる位置に設定するとよい。
【0060】
上記の連結部23を設けた構成を採用した場合は、連結部23がアノード電極14を低抵抗化するための補助配線として機能する。したがって、上記のY軸方向だけでなく、X軸方向でも電圧ドロップによる輝度ムラの発生を低減することができる。その結果、例えば大面積のテレビジョン用途であっても、輝度ムラの少ないバックライト3を実現することが可能となる。
【0061】
図6は本発明の他の実施形態に係るバックライトの断面図である。図示したバックライト3は、一対の基板11,12、ワイヤーグリッド偏光子13、アノード電極14、カソード電極15、有機層16、シール材17を備える点は、先述の実施形態と共通するものの、それに加えて、基板11の内側面にレジスト部24が設けられ、このレジスト部24の上にワイヤーグリッド偏光子13が形成されている。
【0062】
レジスト部24は、ワイヤーグリッド偏光子13の金属ワイヤー13Aの並び方向で連続した山形断面をなすように、凹凸状に形成されている。レジスト部24の表面は、平面的にみると、ワイヤーグリッド偏光子13のワイヤー間隔に対応した波形の凹凸状に形成されている。
【0063】
これに対して、ワイヤーグリッド偏光子13の金属ワイヤー13Aは、山形断面をなすレジスト部24の頂部の直上に形成されている。このため、ワイヤーグリッド偏光子13の発光層20側の端部(上端部)は、レジスト部24の頂部形状にならって先細りのテーパー状に傾斜している。これにより、ワイヤーグリッド偏光子13の発光層20側の端部は、光取り出し側と反対側に配置されたカソード電極15の電極面に対して斜めに傾斜した状態に形成されている。
【0064】
図7は本発明の他の実施形態に係るバックライトとこれを備える液晶表示装置の製造方法を示すフローチャートである。
【0065】
まず、透明なガラス基板からなる基板11の表面(片面)にレジストを塗布してレジスト膜を形成した後(ステップS11)、このレジスト膜をフォトリソグラフィで凹凸状にパターニングする(ステップS12)。この段階で、基板11の表面にレジスト部24が形成された状態となる。
【0066】
次に、上記のレジスト部24を覆うように、基板11の表面(片面)に、例えばモリブデンとアルミニウムを順に積層してなる金属膜を成膜する(ステップS13)。この場合、金属膜の表面は、下地となるレジスト部24の表面形状にならって凹凸状に形成される。金属膜は、例えば上記のアノード電極14をITOで形成した場合に、このITOとダイレクトに接続可能なアルミニウム合金のスパッタ等によって成膜してもよい。
【0067】
次に、上記の金属膜をフォトリソグラフィによってストライプ状にエッチングする(ステップS14)。この段階で、基板11の表面にワイヤーグリッド偏光子13が形成された状態となる。
【0068】
次に、ワイヤーグリッド偏光子13の金属ワイヤー13A間の隙間を埋めないように、例えばワイヤーグリッド偏光子13が形成されている基板11の表面にITOを斜め蒸着することにより、基板11上にワイヤーグリッド偏光子13を覆う状態でITO膜を成膜する(ステップS15)。
【0069】
次に、上記のITO膜を平坦化するために、ITO膜の表面を研磨する(ステップS16)。この段階で、基板11上にレジスト部24及びワイヤーグリッド偏光子13を介してアノード電極14が形成された状態となる。
【0070】
その後、基板11のアノード電極14の上に、例えば真空蒸着法によってホール注入層18、ホール輸送層19、発光層20及び電子輸送層21を順に積層する(ステップS17)。この段階で、基板11上に、上記ワイヤーグリッド偏光子13及びアノード電極14とともに、4層の有機層16が形成された状態となる。発光層20は、白色発光を得るために、それぞれ赤と緑と青の光を発光する層を積層することで形成する。
【0071】
次に、上記の有機層16の上に真空蒸着法等によってカソード電極15を形成した後(ステップS18)、基板12とシール材17を用いて、有機EL素子とワイヤーグリッド偏光子13を封止する(ステップS19)。この段階で、ワイヤーグリッド偏光子13を内蔵したバックライト3が得られる。
【0072】
その後、上記のバックライト3を、予め表示面に偏光板4が貼り付けられた液晶表示パネル2の背面側(表示面と反対側)に取り付ける(ステップS20)。このとき、バックライト3の光取り出し側の基板11を、液晶表示パネル2の非表示面(表示面と反対側の面)と対向させる。
【0073】
以上の製造方法に得られた液晶表示装置1においては、先述した実施形態と同様に効果に加えて、次のような効果が得られる。すなわち、発光層20で発光した光の一部がワイヤーグリッド偏光子13で反射した場合は、そこで生じた反射光が戻り光となってカソード電極15に向かうことになる。
【0074】
その場合、ワイヤーグリッド偏光子13の端部がカソード電極15の電極面と平行になっていると、ワイヤーグリッド偏光子13で反射した光が真っ直ぐにカソード電極15に向かい、その電極面で再び反射することになる。このため、ワイヤーグリッド偏光子13とカソード電極15の間で光の反射が繰り返される。したがって、発光層20で発光した光の一部がバックライト3の内部に閉じ込められてしまい、その分だけ光の取り出し効率が低下する。
【0075】
一方、カソード電極15の電極面に対してワイヤーグリッド偏光子13の端部を斜めに傾斜させた場合は、ワイヤーグリッド偏光子13で反射した光がカソード電極15の電極面に斜めに照射される。このため、バックライト3の内部に光が閉じ込められることが皆無となる。したがって、発光層20で発光させた光をバックライト3から効率良く取り出すことができる。
【0076】
また、図示はしないが、カソード電極15の発光層20側の端部を、例えば数nmオーダーの微細な凹凸状に形成し、当該凹凸部で反射光の散乱(乱反射)が起こるようにしても、上記同様の原理で光の閉じ込みを回避し、バックライト3から効率良く光を取り出すことができる。
【図面の簡単な説明】
【0077】
【図1】本発明が適用される透過型の液晶表示装置の概略構成を示す斜視図である。
【図2】本発明の実施形態に係るバックライトの断面図である。
【図3】本発明の実施形態に係るバックライトの分解斜視図である。
【図4】本発明の実施形態に係るバックライトとこれを備える液晶表示装置の製造方法を説明するフローチャートである。
【図5】本発明の応用例を説明する図である。
【図6】本発明の他の実施形態に係るバックライトの断面図である。
【図7】本発明の他の実施形態に係るバックライトとこれを備える液晶表示装置の製造方法を説明するフローチャートである。
【符号の説明】
【0078】
1…液晶表示装置、2…液晶表示パネル、3…バックライト、4…偏光板、11,12…基板、13…ワイヤーグリッド偏光子、13A…金属ワイヤー13A、14…アノード電極、15…カソード電極、16…有機層、18…ホール注入層、19…ホール輸送層、20…発光層、21…電子輸送層、23…連結部、24…レジスト部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
一方を光取り出し側とした一対の基板と、
前記一対の基板のうち前記光取り出し側の基板の内面側に設けられた偏光子と、
前記一対の基板の間に前記偏光子と対向する状態に設けられた発光層と
を有することを特徴とするバックライト。
【請求項2】
前記発光層は、有機層に含まれる有機発光層である
ことを特徴とする請求項1記載のバックライト。
【請求項3】
前記一対の基板の間で前記有機層を挟む一対の電極を有し、
前記偏光子はワイヤーグリッド偏光子であって、当該ワイヤーグリッド偏光子が前記一対の電極のうち前記光取り出し側の電極の面に接触する状態に設けられている
ことを特徴とする請求項2記載のバックライト。
【請求項4】
前記ワイヤーグリッド偏光子は、所定の方向に等間隔に並べられた複数の金属ワイヤー同士を、前記所定の方向で連結する連結部を有する
ことを特徴とする請求項3記載のバックライト。
【請求項5】
前記ワイヤーグリッド偏光子の前記発光層側の端部が、前記光取り出し側と反対側に配置された電極の面に対して斜めに傾斜した状態、又は凹凸状に形成されている
ことを特徴とする請求項3記載のバックライト。
【請求項6】
液晶表示パネルと、
前記液晶表示パネルの背面側から光を照射するバックライトとを備え、
前記バックライトは、一方を光取り出し側とした一対の基板と、前記一対の基板のうち前記光取り出し側の基板の内面側に設けられた偏光子と、前記一対の基板の間に前記偏光子と対向する状態に設けられた発光層とを有する
ことを特徴とする液晶表示装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2009−164067(P2009−164067A)
【公開日】平成21年7月23日(2009.7.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−2804(P2008−2804)
【出願日】平成20年1月10日(2008.1.10)
【出願人】(000002185)ソニー株式会社 (34,172)
【Fターム(参考)】