バックル
【課題】雄部材と、これに結合する雌部材とを備えたバックルにおいて、雄部材における一対の脚部の拡開の範囲を適切に制限して、連結部および脚部の破損を防止する
【解決手段】バックル1の雄部材2が、基部11と、雌部材3と係合可能な一対の脚部12,12と、基部から離間された位置において一対の脚部を連結すると共に、基部側に凸状をなす湾曲部分13cを有する連結部13と、一対の脚部の間で基部から雌部材との結合方向に突出すると共に、湾曲部分の少なくとも一部を間において対峙する一対の突出部14,14とを備え、一対の脚部は、それらの自由端側が拡開するように弾性変形可能であり、連結部は、脚部の拡開の際に、湾曲部分の弾性変形によって伸長可能であり、一対の突出部は、連結部が伸長する際に湾曲部分にそれぞれ係合して当該連結部の伸長を規制する構成とする。
【解決手段】バックル1の雄部材2が、基部11と、雌部材3と係合可能な一対の脚部12,12と、基部から離間された位置において一対の脚部を連結すると共に、基部側に凸状をなす湾曲部分13cを有する連結部13と、一対の脚部の間で基部から雌部材との結合方向に突出すると共に、湾曲部分の少なくとも一部を間において対峙する一対の突出部14,14とを備え、一対の脚部は、それらの自由端側が拡開するように弾性変形可能であり、連結部は、脚部の拡開の際に、湾曲部分の弾性変形によって伸長可能であり、一対の突出部は、連結部が伸長する際に湾曲部分にそれぞれ係合して当該連結部の伸長を規制する構成とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、雄部材と、これに結合する雌部材とを備えたバックルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、雄部材に設けられた一対の脚部が雌部材に挿入された状態で係止されることにより、両部材が結合状態となるバックルが普及している。この種のバックルでは、雄部材の一対の脚部は、紐状部材を取付可能な基部から雌部材との結合方向に突設されるのが一般的である。しかし、このような構成の脚部は、非結合時に周囲の物体に引っ掛ったり、雌部材に適切に挿入されない状態で結合方向に無理に押し込まれたりすると、自由端側が外側に拡開されて破損するおそれがある。
【0003】
そこで、そのような脚部の破損を防止するために、例えば、雄部材において、一対の脚部を連結すると共に、中間部が基部側へ最も接近するように湾曲状に形成された連結部と、この連結部の中間部と両脚部との間において、雄部材の結合方向に延設された一対の突出部とを備えたバックルが存在する(特許文献1参照)。この従来のバックルによれば、一対の脚部の間から一対の突出部を延出させることにより、連結部の中間部と両脚部との間のスペースを狭くして、周囲の物体などを引っ掛ける可能性を低減でき、また、結合状態において、雄部材と雌部材との間に捻り力が作用した場合でも、突出部が雌部材に当接して脚部への負荷を軽減できるという利点もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開WO2009/093313号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載のバックルでは、連結部の弾性力のみによって脚部の拡開を抑制する構成であるため、脚部が過度に拡開されることにより、連結部や脚部に大きな負荷がかかって連結部や脚部が破損してしまうという問題があった。その一方で、連結部13の剛性を高めるなどして脚部の拡開を抑制することも考えられるが、その場合には、通常の結合または結合解除動作における脚部の弾性変形が妨げられるという問題が生じる。
【0006】
本発明は、このような従来技術の課題を鑑みて案出されたものであり、雄部材における一対の脚部の拡開の範囲を適切に制限して、連結部および脚部の破損を防止することを可能としたバックルを提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するためになされた本発明の第1の側面では、雄部材(2)と、これに結合する雌部材(3)とを備えたバックル(1)であって、前記雄部材は、基部(11)と、前記基部から前記雌部材との結合方向に突出し、前記雌部材と係合可能な一対の脚部(12,12)と、前記基部から離間された位置において前記一対の脚部を連結すると共に、前記基部側に凸状をなす湾曲部分(13c)を有する連結部(13)と、前記一対の脚部の間で前記基部から前記雌部材との結合方向に突出すると共に、前記湾曲部分の少なくとも一部を間において対峙する一対の突出部(14,14)とを備え、前記一対の脚部は、それらの自由端側が拡開するように弾性変形可能であり、前記連結部は、前記脚部の拡開の際に、前記湾曲部分の弾性変形によって伸長可能であり、前記一対の突出部は、前記連結部が伸長する際に前記湾曲部分にそれぞれ係合して当該連結部の伸長を規制する構成とする。
【0008】
また、本発明の第2の側面として、前記第1の側面に関し、前記一対の突出部は、前記湾曲部分にそれぞれ係合した状態で、前記一対の脚部の拡開方向に弾性変形可能である構成とする。
【0009】
また、本発明の第3の側面として、前記第1または第2の側面に関し、前記一対の突出部には、第1の係合爪(51,51)がそれぞれ設けられ、前記湾曲部分には、前記第1の係合爪とそれぞれ係合可能な一対の第2の係合爪(41,41)が設けられた構成とする。
【0010】
また、本発明の第4の側面として、前記第3の側面に関し、前記第1の係合爪の各々は、前記雌部材との結合方向に沿った前記雄部材の中心軸線(C1)に対して線対称となるように設けられ、前記第2の係合爪の各々は、前記結合方向に沿った前記雌部材の中心軸線(C2)に対して線対称となるように設けられた構成とする。
【0011】
また、本発明の第5の側面として、前記第1から第4の側面のいずれかに関し、前記雌部材は、前記雄部材との結合の際に、前記一対の脚部の移動をガイドするガイド壁(75,76)を備え、前記一対の突出部は、前記結合の完了時に、前記ガイド壁と当接状態となる構成とする。
【0012】
また、本発明の第6の側面として、前記第1から第5の側面のいずれかに関し、前記雄部材には、紐状部材(A1)を取付可能であり、前記基部には、前記雌部材との結合方向に交差する方向に延在し、且つ前記紐状部材を通すことが可能な貫通孔(21)が形成され、前記雄部材と前記雌部材との結合状態において、前記貫通孔の一部が当該雌部材内に収容される構成とする。
【発明の効果】
【0013】
上記本発明の第1の側面によれば、雄部材の一対の脚部が拡開する際に、連結部の伸長(すなわち、湾曲部分の弾性変形)を一対の突出部によって規制する構成としたため、雄部材における一対の脚部の拡開の範囲を適切に制限して、連結部および脚部の破損を防止できる。
また、上記本発明の第2の側面によれば、脚部の拡開方向に弾性変形可能な一対の突出部によって連結部の伸長を穏やかに規制することが可能となり、脚部の拡開時に連結部に対して局部的な負荷がかかることを抑制することができる。
また、上記本発明の第3の側面によれば、雄部材の一対の脚部が拡開する際に、一対の突出部を湾曲部分に対して簡易な構成により係合させることができる。
また、上記本発明の第4の側面によれば、雄部材の一対の脚部が拡開する際に、一対の突出部を湾曲部分に対してより確実に係合させることができる。
また、上記本発明の第5の側面によれば、バックルの結合状態において、一対の突出部がガイド壁と当接状態となることにより、雄部材と雌部材とのガタツキを防止することができる。
また、上記本発明の第6の側面によれば、バックルの結合状態におけるサイズの増大を抑制しつつ、非結合状態の雄部材において紐状部材を貫通孔に容易に通すことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実施形態に係るバックル1の結合状態を示す斜視図である。
【図2】実施形態に係る雄部材2の平面図である。
【図3】実施形態に係る雄部材2の側面図である。
【図4】図2中のIV−IV線断面図である。
【図5】実施形態に係る雌部材3の平面図である。
【図6】実施形態に係る雌部材3の側面図である。
【図7】実施形態に係る雌部材3の正面図である。
【図8】図5中のVIII−VIII線断面図である。
【図9】図6中のIX−IX線断面図である。
【図10】実施形態に係る雄部材2の脚部の拡開動作を示す説明図である。
【図11】実施形態に係る雄部材2と雌部材3の結合動作を示す説明図である。
【図12】実施形態に係る雄部材2と雌部材3の結合状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。説明にあたり、バックル1を構成する雄部材2および雌部材3の方向については、それぞれ各図に示す配置にしたがって上下、前後および左右を定めるものとする。
【0016】
図1に示すように、バックル1は、雄部材2と、これに結合する雌部材3とを備え、これら両部材2,3に取り付けられた紐状部材A1,A2の連結に供されるものである。雄部材2および雌部材3は、ぞれぞれ合成樹脂によって一体成形される。
【0017】
図2〜図4に示すように、雄部材2は、紐状部材を取付可能な基部11と、この基部11から前方(雌部材3との結合方向)に突出する一対の脚部12,12と、基部11から前方に離間された位置において脚部12,12を連結する連結部13と、一対の脚部12,12の間において基部11から前方に突出する一対の突出部14,14とを有する。雄部材2の各部の形状は、平面視において、前後方向に沿った中心軸線C1(図2参照)に対して線対称(左右対称)となっている。
【0018】
基部11は、平面視において中央に貫通孔21が形成された略矩形状の枠体22と、貫通孔21を左右に横切るように枠体22の左右に架け渡された取付用バー23とを有している。図4に示すように、取付用バー23には紐状部材A1の端部が巻掛けられる。紐状部材A1は、その固定端側A1aが後方に引っ張られることで、その内側の自由端A1b側が折り曲げられた状態で舌片状部24の後端縁24aに対して押し付けられ、これにより、舌片状部24や取付用バー23との間の摩擦力によって強固に固定される。
【0019】
脚部12,12は、図2に示すように、基部11の前壁11aの左右両側から前方に略直線状に突出する弾性片部31と、この弾性片部31の前端に連なり、先端(自由端)12aに向けて内側に湾曲しながら前方に延出する係合片部32とを有している。弾性片部31は、左右方向(雌部材3との結合方向に対して交差する方向)への弾性変形が容易なように、平面視において係合片部32よりも小さい幅で設けられている。この弾性片部31の弾性変形により、脚部12,12は、先端12aを互いに接近または離間させるように変位することが可能である。弾性片部31と係合片部32との境界では、係合片部32が外方に拡幅されて係合段部33が形成されている。さらに、脚部12,12の先端12aには、上下方向に突出するガイド突部34が設けられている。
【0020】
連結部13は、脚部12,12の突出方向における中間位置において左右方向に延在する。連結部13は、脚部12,12の内側にそれぞれ接続される略直線状の両端部13a,13aと、これら左右の両端部13a,13aを結ぶように左右方向の中央に配置されると共に、後方(基部11側)に凸状をなす湾曲部(湾曲部分)13cとを有している。湾曲部13cは、略U字状を呈しており、円弧状をなす後端側には、外側斜め前方に突出する係合爪(第2の係合爪)41,41がそれぞれ設けられている。
【0021】
突出部14,14は、基部11の前壁11aから延出し、その先端14aに向けてそれぞれ内側に湾曲する形状をなす。突出部14,14は、平面視において、前壁11a、脚部12,12および連結部13に囲まれたスペースに配置され、湾曲部13cを間に挟み込むように対峙している。突出部14,14の先端14aには、内側斜め後方に突出する係合爪(第1の係合爪)51,51がそれぞれ設けられている。
【0022】
図5〜図9に示すように、雌部材3は、略箱状を呈しており、上壁61と、これに対向する下壁62と、これら上壁61および下壁62の左右縁部を接続する左右の側壁63,63とを備え、これらの壁61〜63によって雄部材2が挿入される内部スペースが画成されている。雌部材3の各部の形状は、平面視において、前後方向に沿った中心軸線C2(図5参照)に対して線対称(左右対称)となっている。
【0023】
図7に示すように、雌部材3の後面側には雄部材2の脚部12,12等が挿入される挿入口71が設けられており、この挿入口71は内部スペースを介して前面側の前部開口72(図8参照)に連通する。また、図5および図8に示すように、左右の側壁63,63の前端部には、取付用バー73が左右に架け渡されており、この取付用バー73には紐状部材A2の端部が巻掛けられる。さらに、図6および図9に示すように、前後方向における側壁63,63の中央には、雄部材2との結合時に、その脚部12,12の係合片部32が外方に突出する側部開口74がそれぞれ設けられている。
【0024】
図7および図8に示すように、上壁61の内面には、雄部材2の脚部12,12の移動をガイドする左右一対のガイド壁75,75が下方に突設されている。ガイド壁75,75は、上壁61の左右の所定領域の厚みを増大することにより生じた段部として形成されている。図9に示すように、ガイド壁75,75の後端は、側壁63,63の後端部の内面に接続される一方、ガイド壁75,75の中間部は、平面視において、前方(すなわち、雄部材2の挿入方向)に向かうに従って間隔が狭くなるように内側に傾斜している。また、ガイド壁75,75の前端は、互いに所定の間隔をもって対峙するように配置されている。同様に、下壁62の内面には、上壁61のガイド壁75,75と上下に対応する位置に左右一対のガイド壁76,76が上方に突設されている。
【0025】
また、下壁62の左右方向中央には、上壁61に向けて垂直に延びる縦壁77が設けられている。縦壁77は、前後方向において、雌部材3の中央付近から上壁61の前縁付近まで延在する。このような縦壁77により、扁平な雌部材3に対して上下方向に圧潰するような力が作用しても、上壁61と下壁62との間隔を維持して雌部材3の破損を防止することができる。なお、縦壁77の上縁77aの位置は、ガイド壁76,76の下縁76aの位置と略一致する。
【0026】
次に、雄部材2の脚部12,12の拡開動作について説明する。図10に示すように、非結合状態において、雄部材2の脚部12,12の少なくとも一方に不意に外力が作用すると、雄部材2の脚部12,12が外側に拡開される場合がある。このような場合、連結部13は、脚部12,12が拡開するに連れて左右方向に伸長する。より詳細には、連結部13の両端部13a,13aは脚部12,12によって左方または右方に引っ張られ、湾曲部13cがU字状の両端を開くように弾性変形する。これにより、湾曲部13cに設けられた係合爪41,41は、初期位置から外側斜め前方に変位して突出部14,14の係合爪51,51とそれぞれ係合する。これらの係合により、連結部13の左右方向の伸長が規制される。その結果、脚部12,12の拡開の範囲が適切に制限され、連結部13および脚部12,12の破損を防止することができる。
【0027】
この場合、係合爪51,51は、連結部13の係合爪41,41の係合爪41,41よりも外側かつ前方に位置する構成としたため、雄部材2の脚部12,12が拡開する際に、係合爪51,51と係合爪41,41とを確実に係合させることができる。
【0028】
ここで、突出部14,14は、その係合爪51,51が湾曲部13cの係合爪41,41にそれぞれ係合した状態で、左右方向(脚部12,12の拡開方向)にそれぞれ弾性変形可能な構成とすることができる。これにより、突出部14,14によって連結部13の伸長を穏やかに規制することができ、連結部13に対して局部的な負荷がかかることを抑制することができる。
【0029】
なお、上記動作とは逆に、雄部材2の脚部12,12を閉じる方向に外力が作用した場合(例えば、バックル1の結合解除時に、側部開口74から突出する係合片部32を使用者が指で内側に押し込んだ場合)、連結部13は、脚部12,12が閉じる(互いの先端12aを接近させる)に連れて収縮する。より詳細には、連結部13の両端部13a,13aは脚部12,12によって内側に押し込まれ、湾曲部13cがU字状の両端を接近させるように弾性変形する。これにより、湾曲部13cの後縁側は前方(基部11側)に変位すると共に、係合爪41,41が内側斜め前方に変位するが、これらの変位は突出部14,14の間のスペースで行われるため、連結部13の動作が突出部14,14によって阻害されることはない。
【0030】
次に、雄部材2と雌部材3との結合動作について説明する。バックル1では、雄部材2の脚部12,12を雌部材3の挿入口71から挿入することにより、図11及び図12に示すような結合状態となる。雄部材2を雌部材3に挿入する際には、まず、脚部12,12におけるガイド突部34が雌部材3の挿入口71付近のガイド壁76,76(上壁61のガイド壁75,75も同様)に当接する。その後、徐々に間隔が狭くなるガイド壁76,76によってガイド突部34が内側に押圧されるため、脚部12,12は内側に弾性変形しながら結合方向に移動する。最終的に、ガイド突部34がガイド壁76,76の後端を超えて結合方向に移動すると、ガイド壁76,76の押圧が解除され、これにより脚部12,12が元の状態に復元して結合が完了する。このとき、脚部12,12の係合片部32は、雌部材3の側部開口74から外方に突出し、係合段部33が側部開口74の前縁74aによって係止される。
【0031】
また、雄部材2を雌部材3に挿入する際には、突出部14,14は、ガイド突部34と同様にガイド壁76,76によってガイドされ、結合完了時において、ガイド壁76,76の内面に当接した状態となる。このとき、突出部14,14は、その先端14aを接近させるように内側に向けて僅かに弾性変形した状態となる。このような構成により、バックル1の結合状態における雄部材2と雌部材3とのガタツキを防止することができる。なお、突出部14,14の弾性変形の復元力は、雄部材2と雌部材3とを分離する方向に作用する。したがって、バックル1の結合を解除する際に、突出部14,14の復元力により雄部材2を雌部材3容易に取り外すことができるという利点がある。
【0032】
なお、図4に示したように、連結部13の両端部13a,13aにおける上下幅は、湾曲部13c(前側)の上下幅に比べて縮幅され、ガイド壁75,75の下縁75aとガイド壁76,76の上縁76aとの間隔よりも小さくなっている。したがって、結合状態のバックル1において、連結部13はガイド壁76,76と係合しない。一方、突出部14,14では、図3に示したように、先端14aが連結部13の両端部13a,13aの上下幅と同一に設定されているが、この先端14a以外の部分の上下幅はガイド壁75,75の上縁75aとガイド壁76,76の下縁76aとの間隔よりも大きく設定されている。これにより、突出部14,14はガイド壁75,75およびガイド壁76,76に係合可能となっている。
【0033】
ここで、連結部13の少なくとも一部(ここでは、湾曲部13c(前側))における上下幅と、突出部14,14の少なくとも一部(ここでは、先端14a以外の部分)の上下幅とは、結合および結合解除動作を妨げない程度に雌部材3の上壁61と下壁62との間隔と略等しい大きさに設定することができる。このような構成により、バックル1の結合状態では、雌部材3に対して上下方向に圧潰するような力が作用しても、上述の縦壁77と同様に雌部材3の破損を防止することができる。この場合、湾曲部13cの内側に位置する雌部材3の縦壁と相俟って雌部材3の破損を防止する効果が高まるという利点もある。
【0034】
また、バックル1では、雄部材2と雌部材3の結合時には、図11及び図12に示すように、雄部材2において貫通孔21が形成された基部11の一部(前側)が雌部材3に収容された状態となる。つまり、雄部材2では、貫通孔21の一部をなす前側開口21aの前後方向幅(基部11の前壁11aと取付用バー23の間の間隙W1)が必要な大きさに確保される一方、雌部材3との結合時には、前側開口21aの雌部材3側が雌部材3内に挿入されることにより実質的に縮小された前後方向幅(雌部材3の前端と取付用バー23の間の間隙W2)を有することとなる。
【0035】
このような構成により、バックル1では、例えば、雄部材2に取り付けられる紐状部材A1(図4参照)の自由端A1bが複数回折り畳まれて、端部の厚みが他の部位よりも大きい場合でも、非結合状態の雄部材2において紐状部材A1を容易に取付可能(すなわち、貫通孔21に対して紐状部材A1を容易に挿通可能)でありながら、雄部材2と雌部材3との結合方向におけるサイズの増大を抑制することができる。
【0036】
なお、基部11に設けられる貫通孔21は、少なくとも雌部材3との結合方向に交差する方向に延在し、且つ紐状部材A1の取付に供される(紐状部材をA1を通すことが可能である)ものであればよく、その構成(開口形状や取付用バー23の配置等)は種々の変更が可能である。また、このような雄部材2の基部11における貫通孔21の一部が雌部材3に収容される構成は、上述の雄部材2における突出部等の他の構成要素が変更(省略や形状・配置の変更等)された場合にも適宜採用可能である。
【0037】
本発明を特定の実施形態に基づいて説明したが、これらの実施形態はあくまでも例示であって、本発明は実施形態によって限定されるものではない。例えば、一対の突出部と連結部の湾曲部位とを係合させるための各々に設けられた係合爪は、厳密に爪状の部位に限定されず、例えば、同様に機能する段部、開口縁部および切欠き縁部等でもよい。また、雄部材の脚部を連結する連結部の形状は種々の変更が可能であり、例えば、湾曲部分を複数設けた構成も可能である。さらに、バックルの結合対象は、ベルト、ケーブル、紐その他の紐状部材に限定されず雄部材または雌部材の一方が他の器具等に固定された構成も可能である。なお、上記実施形態に示した本発明に係るバックルの各構成要素は、必ずしも全てが必須ではなく、少なくとも本発明の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜取捨選択することが可能である。
【符号の説明】
【0038】
1 バックル
2 雄部材
3 雌部材
11 基部
12 脚部
13 連結部
13c 湾曲部(湾曲部分)
14 突出部
41 係合爪(第2の係合爪)
51 係合爪(第1の係合爪)
75 ガイド壁
A1 紐状部材
C1 中心軸線(雄部材)
C2 中心軸線(雌部材)
【技術分野】
【0001】
本発明は、雄部材と、これに結合する雌部材とを備えたバックルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、雄部材に設けられた一対の脚部が雌部材に挿入された状態で係止されることにより、両部材が結合状態となるバックルが普及している。この種のバックルでは、雄部材の一対の脚部は、紐状部材を取付可能な基部から雌部材との結合方向に突設されるのが一般的である。しかし、このような構成の脚部は、非結合時に周囲の物体に引っ掛ったり、雌部材に適切に挿入されない状態で結合方向に無理に押し込まれたりすると、自由端側が外側に拡開されて破損するおそれがある。
【0003】
そこで、そのような脚部の破損を防止するために、例えば、雄部材において、一対の脚部を連結すると共に、中間部が基部側へ最も接近するように湾曲状に形成された連結部と、この連結部の中間部と両脚部との間において、雄部材の結合方向に延設された一対の突出部とを備えたバックルが存在する(特許文献1参照)。この従来のバックルによれば、一対の脚部の間から一対の突出部を延出させることにより、連結部の中間部と両脚部との間のスペースを狭くして、周囲の物体などを引っ掛ける可能性を低減でき、また、結合状態において、雄部材と雌部材との間に捻り力が作用した場合でも、突出部が雌部材に当接して脚部への負荷を軽減できるという利点もある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】国際公開WO2009/093313号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1に記載のバックルでは、連結部の弾性力のみによって脚部の拡開を抑制する構成であるため、脚部が過度に拡開されることにより、連結部や脚部に大きな負荷がかかって連結部や脚部が破損してしまうという問題があった。その一方で、連結部13の剛性を高めるなどして脚部の拡開を抑制することも考えられるが、その場合には、通常の結合または結合解除動作における脚部の弾性変形が妨げられるという問題が生じる。
【0006】
本発明は、このような従来技術の課題を鑑みて案出されたものであり、雄部材における一対の脚部の拡開の範囲を適切に制限して、連結部および脚部の破損を防止することを可能としたバックルを提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するためになされた本発明の第1の側面では、雄部材(2)と、これに結合する雌部材(3)とを備えたバックル(1)であって、前記雄部材は、基部(11)と、前記基部から前記雌部材との結合方向に突出し、前記雌部材と係合可能な一対の脚部(12,12)と、前記基部から離間された位置において前記一対の脚部を連結すると共に、前記基部側に凸状をなす湾曲部分(13c)を有する連結部(13)と、前記一対の脚部の間で前記基部から前記雌部材との結合方向に突出すると共に、前記湾曲部分の少なくとも一部を間において対峙する一対の突出部(14,14)とを備え、前記一対の脚部は、それらの自由端側が拡開するように弾性変形可能であり、前記連結部は、前記脚部の拡開の際に、前記湾曲部分の弾性変形によって伸長可能であり、前記一対の突出部は、前記連結部が伸長する際に前記湾曲部分にそれぞれ係合して当該連結部の伸長を規制する構成とする。
【0008】
また、本発明の第2の側面として、前記第1の側面に関し、前記一対の突出部は、前記湾曲部分にそれぞれ係合した状態で、前記一対の脚部の拡開方向に弾性変形可能である構成とする。
【0009】
また、本発明の第3の側面として、前記第1または第2の側面に関し、前記一対の突出部には、第1の係合爪(51,51)がそれぞれ設けられ、前記湾曲部分には、前記第1の係合爪とそれぞれ係合可能な一対の第2の係合爪(41,41)が設けられた構成とする。
【0010】
また、本発明の第4の側面として、前記第3の側面に関し、前記第1の係合爪の各々は、前記雌部材との結合方向に沿った前記雄部材の中心軸線(C1)に対して線対称となるように設けられ、前記第2の係合爪の各々は、前記結合方向に沿った前記雌部材の中心軸線(C2)に対して線対称となるように設けられた構成とする。
【0011】
また、本発明の第5の側面として、前記第1から第4の側面のいずれかに関し、前記雌部材は、前記雄部材との結合の際に、前記一対の脚部の移動をガイドするガイド壁(75,76)を備え、前記一対の突出部は、前記結合の完了時に、前記ガイド壁と当接状態となる構成とする。
【0012】
また、本発明の第6の側面として、前記第1から第5の側面のいずれかに関し、前記雄部材には、紐状部材(A1)を取付可能であり、前記基部には、前記雌部材との結合方向に交差する方向に延在し、且つ前記紐状部材を通すことが可能な貫通孔(21)が形成され、前記雄部材と前記雌部材との結合状態において、前記貫通孔の一部が当該雌部材内に収容される構成とする。
【発明の効果】
【0013】
上記本発明の第1の側面によれば、雄部材の一対の脚部が拡開する際に、連結部の伸長(すなわち、湾曲部分の弾性変形)を一対の突出部によって規制する構成としたため、雄部材における一対の脚部の拡開の範囲を適切に制限して、連結部および脚部の破損を防止できる。
また、上記本発明の第2の側面によれば、脚部の拡開方向に弾性変形可能な一対の突出部によって連結部の伸長を穏やかに規制することが可能となり、脚部の拡開時に連結部に対して局部的な負荷がかかることを抑制することができる。
また、上記本発明の第3の側面によれば、雄部材の一対の脚部が拡開する際に、一対の突出部を湾曲部分に対して簡易な構成により係合させることができる。
また、上記本発明の第4の側面によれば、雄部材の一対の脚部が拡開する際に、一対の突出部を湾曲部分に対してより確実に係合させることができる。
また、上記本発明の第5の側面によれば、バックルの結合状態において、一対の突出部がガイド壁と当接状態となることにより、雄部材と雌部材とのガタツキを防止することができる。
また、上記本発明の第6の側面によれば、バックルの結合状態におけるサイズの増大を抑制しつつ、非結合状態の雄部材において紐状部材を貫通孔に容易に通すことが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】実施形態に係るバックル1の結合状態を示す斜視図である。
【図2】実施形態に係る雄部材2の平面図である。
【図3】実施形態に係る雄部材2の側面図である。
【図4】図2中のIV−IV線断面図である。
【図5】実施形態に係る雌部材3の平面図である。
【図6】実施形態に係る雌部材3の側面図である。
【図7】実施形態に係る雌部材3の正面図である。
【図8】図5中のVIII−VIII線断面図である。
【図9】図6中のIX−IX線断面図である。
【図10】実施形態に係る雄部材2の脚部の拡開動作を示す説明図である。
【図11】実施形態に係る雄部材2と雌部材3の結合動作を示す説明図である。
【図12】実施形態に係る雄部材2と雌部材3の結合状態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。説明にあたり、バックル1を構成する雄部材2および雌部材3の方向については、それぞれ各図に示す配置にしたがって上下、前後および左右を定めるものとする。
【0016】
図1に示すように、バックル1は、雄部材2と、これに結合する雌部材3とを備え、これら両部材2,3に取り付けられた紐状部材A1,A2の連結に供されるものである。雄部材2および雌部材3は、ぞれぞれ合成樹脂によって一体成形される。
【0017】
図2〜図4に示すように、雄部材2は、紐状部材を取付可能な基部11と、この基部11から前方(雌部材3との結合方向)に突出する一対の脚部12,12と、基部11から前方に離間された位置において脚部12,12を連結する連結部13と、一対の脚部12,12の間において基部11から前方に突出する一対の突出部14,14とを有する。雄部材2の各部の形状は、平面視において、前後方向に沿った中心軸線C1(図2参照)に対して線対称(左右対称)となっている。
【0018】
基部11は、平面視において中央に貫通孔21が形成された略矩形状の枠体22と、貫通孔21を左右に横切るように枠体22の左右に架け渡された取付用バー23とを有している。図4に示すように、取付用バー23には紐状部材A1の端部が巻掛けられる。紐状部材A1は、その固定端側A1aが後方に引っ張られることで、その内側の自由端A1b側が折り曲げられた状態で舌片状部24の後端縁24aに対して押し付けられ、これにより、舌片状部24や取付用バー23との間の摩擦力によって強固に固定される。
【0019】
脚部12,12は、図2に示すように、基部11の前壁11aの左右両側から前方に略直線状に突出する弾性片部31と、この弾性片部31の前端に連なり、先端(自由端)12aに向けて内側に湾曲しながら前方に延出する係合片部32とを有している。弾性片部31は、左右方向(雌部材3との結合方向に対して交差する方向)への弾性変形が容易なように、平面視において係合片部32よりも小さい幅で設けられている。この弾性片部31の弾性変形により、脚部12,12は、先端12aを互いに接近または離間させるように変位することが可能である。弾性片部31と係合片部32との境界では、係合片部32が外方に拡幅されて係合段部33が形成されている。さらに、脚部12,12の先端12aには、上下方向に突出するガイド突部34が設けられている。
【0020】
連結部13は、脚部12,12の突出方向における中間位置において左右方向に延在する。連結部13は、脚部12,12の内側にそれぞれ接続される略直線状の両端部13a,13aと、これら左右の両端部13a,13aを結ぶように左右方向の中央に配置されると共に、後方(基部11側)に凸状をなす湾曲部(湾曲部分)13cとを有している。湾曲部13cは、略U字状を呈しており、円弧状をなす後端側には、外側斜め前方に突出する係合爪(第2の係合爪)41,41がそれぞれ設けられている。
【0021】
突出部14,14は、基部11の前壁11aから延出し、その先端14aに向けてそれぞれ内側に湾曲する形状をなす。突出部14,14は、平面視において、前壁11a、脚部12,12および連結部13に囲まれたスペースに配置され、湾曲部13cを間に挟み込むように対峙している。突出部14,14の先端14aには、内側斜め後方に突出する係合爪(第1の係合爪)51,51がそれぞれ設けられている。
【0022】
図5〜図9に示すように、雌部材3は、略箱状を呈しており、上壁61と、これに対向する下壁62と、これら上壁61および下壁62の左右縁部を接続する左右の側壁63,63とを備え、これらの壁61〜63によって雄部材2が挿入される内部スペースが画成されている。雌部材3の各部の形状は、平面視において、前後方向に沿った中心軸線C2(図5参照)に対して線対称(左右対称)となっている。
【0023】
図7に示すように、雌部材3の後面側には雄部材2の脚部12,12等が挿入される挿入口71が設けられており、この挿入口71は内部スペースを介して前面側の前部開口72(図8参照)に連通する。また、図5および図8に示すように、左右の側壁63,63の前端部には、取付用バー73が左右に架け渡されており、この取付用バー73には紐状部材A2の端部が巻掛けられる。さらに、図6および図9に示すように、前後方向における側壁63,63の中央には、雄部材2との結合時に、その脚部12,12の係合片部32が外方に突出する側部開口74がそれぞれ設けられている。
【0024】
図7および図8に示すように、上壁61の内面には、雄部材2の脚部12,12の移動をガイドする左右一対のガイド壁75,75が下方に突設されている。ガイド壁75,75は、上壁61の左右の所定領域の厚みを増大することにより生じた段部として形成されている。図9に示すように、ガイド壁75,75の後端は、側壁63,63の後端部の内面に接続される一方、ガイド壁75,75の中間部は、平面視において、前方(すなわち、雄部材2の挿入方向)に向かうに従って間隔が狭くなるように内側に傾斜している。また、ガイド壁75,75の前端は、互いに所定の間隔をもって対峙するように配置されている。同様に、下壁62の内面には、上壁61のガイド壁75,75と上下に対応する位置に左右一対のガイド壁76,76が上方に突設されている。
【0025】
また、下壁62の左右方向中央には、上壁61に向けて垂直に延びる縦壁77が設けられている。縦壁77は、前後方向において、雌部材3の中央付近から上壁61の前縁付近まで延在する。このような縦壁77により、扁平な雌部材3に対して上下方向に圧潰するような力が作用しても、上壁61と下壁62との間隔を維持して雌部材3の破損を防止することができる。なお、縦壁77の上縁77aの位置は、ガイド壁76,76の下縁76aの位置と略一致する。
【0026】
次に、雄部材2の脚部12,12の拡開動作について説明する。図10に示すように、非結合状態において、雄部材2の脚部12,12の少なくとも一方に不意に外力が作用すると、雄部材2の脚部12,12が外側に拡開される場合がある。このような場合、連結部13は、脚部12,12が拡開するに連れて左右方向に伸長する。より詳細には、連結部13の両端部13a,13aは脚部12,12によって左方または右方に引っ張られ、湾曲部13cがU字状の両端を開くように弾性変形する。これにより、湾曲部13cに設けられた係合爪41,41は、初期位置から外側斜め前方に変位して突出部14,14の係合爪51,51とそれぞれ係合する。これらの係合により、連結部13の左右方向の伸長が規制される。その結果、脚部12,12の拡開の範囲が適切に制限され、連結部13および脚部12,12の破損を防止することができる。
【0027】
この場合、係合爪51,51は、連結部13の係合爪41,41の係合爪41,41よりも外側かつ前方に位置する構成としたため、雄部材2の脚部12,12が拡開する際に、係合爪51,51と係合爪41,41とを確実に係合させることができる。
【0028】
ここで、突出部14,14は、その係合爪51,51が湾曲部13cの係合爪41,41にそれぞれ係合した状態で、左右方向(脚部12,12の拡開方向)にそれぞれ弾性変形可能な構成とすることができる。これにより、突出部14,14によって連結部13の伸長を穏やかに規制することができ、連結部13に対して局部的な負荷がかかることを抑制することができる。
【0029】
なお、上記動作とは逆に、雄部材2の脚部12,12を閉じる方向に外力が作用した場合(例えば、バックル1の結合解除時に、側部開口74から突出する係合片部32を使用者が指で内側に押し込んだ場合)、連結部13は、脚部12,12が閉じる(互いの先端12aを接近させる)に連れて収縮する。より詳細には、連結部13の両端部13a,13aは脚部12,12によって内側に押し込まれ、湾曲部13cがU字状の両端を接近させるように弾性変形する。これにより、湾曲部13cの後縁側は前方(基部11側)に変位すると共に、係合爪41,41が内側斜め前方に変位するが、これらの変位は突出部14,14の間のスペースで行われるため、連結部13の動作が突出部14,14によって阻害されることはない。
【0030】
次に、雄部材2と雌部材3との結合動作について説明する。バックル1では、雄部材2の脚部12,12を雌部材3の挿入口71から挿入することにより、図11及び図12に示すような結合状態となる。雄部材2を雌部材3に挿入する際には、まず、脚部12,12におけるガイド突部34が雌部材3の挿入口71付近のガイド壁76,76(上壁61のガイド壁75,75も同様)に当接する。その後、徐々に間隔が狭くなるガイド壁76,76によってガイド突部34が内側に押圧されるため、脚部12,12は内側に弾性変形しながら結合方向に移動する。最終的に、ガイド突部34がガイド壁76,76の後端を超えて結合方向に移動すると、ガイド壁76,76の押圧が解除され、これにより脚部12,12が元の状態に復元して結合が完了する。このとき、脚部12,12の係合片部32は、雌部材3の側部開口74から外方に突出し、係合段部33が側部開口74の前縁74aによって係止される。
【0031】
また、雄部材2を雌部材3に挿入する際には、突出部14,14は、ガイド突部34と同様にガイド壁76,76によってガイドされ、結合完了時において、ガイド壁76,76の内面に当接した状態となる。このとき、突出部14,14は、その先端14aを接近させるように内側に向けて僅かに弾性変形した状態となる。このような構成により、バックル1の結合状態における雄部材2と雌部材3とのガタツキを防止することができる。なお、突出部14,14の弾性変形の復元力は、雄部材2と雌部材3とを分離する方向に作用する。したがって、バックル1の結合を解除する際に、突出部14,14の復元力により雄部材2を雌部材3容易に取り外すことができるという利点がある。
【0032】
なお、図4に示したように、連結部13の両端部13a,13aにおける上下幅は、湾曲部13c(前側)の上下幅に比べて縮幅され、ガイド壁75,75の下縁75aとガイド壁76,76の上縁76aとの間隔よりも小さくなっている。したがって、結合状態のバックル1において、連結部13はガイド壁76,76と係合しない。一方、突出部14,14では、図3に示したように、先端14aが連結部13の両端部13a,13aの上下幅と同一に設定されているが、この先端14a以外の部分の上下幅はガイド壁75,75の上縁75aとガイド壁76,76の下縁76aとの間隔よりも大きく設定されている。これにより、突出部14,14はガイド壁75,75およびガイド壁76,76に係合可能となっている。
【0033】
ここで、連結部13の少なくとも一部(ここでは、湾曲部13c(前側))における上下幅と、突出部14,14の少なくとも一部(ここでは、先端14a以外の部分)の上下幅とは、結合および結合解除動作を妨げない程度に雌部材3の上壁61と下壁62との間隔と略等しい大きさに設定することができる。このような構成により、バックル1の結合状態では、雌部材3に対して上下方向に圧潰するような力が作用しても、上述の縦壁77と同様に雌部材3の破損を防止することができる。この場合、湾曲部13cの内側に位置する雌部材3の縦壁と相俟って雌部材3の破損を防止する効果が高まるという利点もある。
【0034】
また、バックル1では、雄部材2と雌部材3の結合時には、図11及び図12に示すように、雄部材2において貫通孔21が形成された基部11の一部(前側)が雌部材3に収容された状態となる。つまり、雄部材2では、貫通孔21の一部をなす前側開口21aの前後方向幅(基部11の前壁11aと取付用バー23の間の間隙W1)が必要な大きさに確保される一方、雌部材3との結合時には、前側開口21aの雌部材3側が雌部材3内に挿入されることにより実質的に縮小された前後方向幅(雌部材3の前端と取付用バー23の間の間隙W2)を有することとなる。
【0035】
このような構成により、バックル1では、例えば、雄部材2に取り付けられる紐状部材A1(図4参照)の自由端A1bが複数回折り畳まれて、端部の厚みが他の部位よりも大きい場合でも、非結合状態の雄部材2において紐状部材A1を容易に取付可能(すなわち、貫通孔21に対して紐状部材A1を容易に挿通可能)でありながら、雄部材2と雌部材3との結合方向におけるサイズの増大を抑制することができる。
【0036】
なお、基部11に設けられる貫通孔21は、少なくとも雌部材3との結合方向に交差する方向に延在し、且つ紐状部材A1の取付に供される(紐状部材をA1を通すことが可能である)ものであればよく、その構成(開口形状や取付用バー23の配置等)は種々の変更が可能である。また、このような雄部材2の基部11における貫通孔21の一部が雌部材3に収容される構成は、上述の雄部材2における突出部等の他の構成要素が変更(省略や形状・配置の変更等)された場合にも適宜採用可能である。
【0037】
本発明を特定の実施形態に基づいて説明したが、これらの実施形態はあくまでも例示であって、本発明は実施形態によって限定されるものではない。例えば、一対の突出部と連結部の湾曲部位とを係合させるための各々に設けられた係合爪は、厳密に爪状の部位に限定されず、例えば、同様に機能する段部、開口縁部および切欠き縁部等でもよい。また、雄部材の脚部を連結する連結部の形状は種々の変更が可能であり、例えば、湾曲部分を複数設けた構成も可能である。さらに、バックルの結合対象は、ベルト、ケーブル、紐その他の紐状部材に限定されず雄部材または雌部材の一方が他の器具等に固定された構成も可能である。なお、上記実施形態に示した本発明に係るバックルの各構成要素は、必ずしも全てが必須ではなく、少なくとも本発明の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜取捨選択することが可能である。
【符号の説明】
【0038】
1 バックル
2 雄部材
3 雌部材
11 基部
12 脚部
13 連結部
13c 湾曲部(湾曲部分)
14 突出部
41 係合爪(第2の係合爪)
51 係合爪(第1の係合爪)
75 ガイド壁
A1 紐状部材
C1 中心軸線(雄部材)
C2 中心軸線(雌部材)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
雄部材と、これに結合する雌部材とを備えたバックルであって、
前記雄部材は、
基部と、
前記基部から前記雌部材との結合方向に突出し、前記雌部材と係合可能な一対の脚部と、
前記基部から離間された位置において前記一対の脚部を連結すると共に、前記基部側に凸状をなす湾曲部分を有する連結部と、
前記一対の脚部の間で前記基部から前記雌部材との結合方向に突出すると共に、前記湾曲部分の少なくとも一部を間において対峙する一対の突出部と
を備え、
前記一対の脚部は、それらの自由端側が拡開するように弾性変形可能であり、
前記連結部は、前記脚部の拡開の際に、前記湾曲部分の弾性変形によって伸長可能であり、
前記一対の突出部は、前記連結部が伸長する際に前記湾曲部分にそれぞれ係合して当該連結部の伸長を規制することを特徴とするバックル。
【請求項2】
前記一対の突出部は、前記湾曲部分にそれぞれ係合した状態で、前記一対の脚部の拡開方向に弾性変形可能であることを特徴とする請求項1に記載のバックル。
【請求項3】
前記一対の突出部には、第1の係合爪がそれぞれ設けられ、
前記湾曲部分には、前記第1の係合爪とそれぞれ係合可能な一対の第2の係合爪が設けられたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のバックル。
【請求項4】
前記第1の係合爪の各々は、前記雌部材との結合方向に沿った前記雄部材の中心軸線に対して線対称となるように設けられ、
前記第2の係合爪の各々は、前記結合方向に沿った前記雌部材の中心軸線に対して線対称となるように設けられたことを特徴とする請求項3に記載のバックル。
【請求項5】
前記雌部材は、前記雄部材との結合の際に、前記一対の脚部の移動をガイドするガイド壁を備え、
前記一対の突出部は、前記結合の完了時に、前記ガイド壁と当接状態となることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載のバックル。
【請求項6】
前記雄部材には、紐状部材を取付可能であり、
前記基部には、前記雌部材との結合方向に交差する方向に延在し、且つ前記紐状部材を挿通可能な貫通孔が形成され、
前記雄部材と前記雌部材との結合状態において、前記貫通孔の一部が当該雌部材内に収容されることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載のバックル。
【請求項1】
雄部材と、これに結合する雌部材とを備えたバックルであって、
前記雄部材は、
基部と、
前記基部から前記雌部材との結合方向に突出し、前記雌部材と係合可能な一対の脚部と、
前記基部から離間された位置において前記一対の脚部を連結すると共に、前記基部側に凸状をなす湾曲部分を有する連結部と、
前記一対の脚部の間で前記基部から前記雌部材との結合方向に突出すると共に、前記湾曲部分の少なくとも一部を間において対峙する一対の突出部と
を備え、
前記一対の脚部は、それらの自由端側が拡開するように弾性変形可能であり、
前記連結部は、前記脚部の拡開の際に、前記湾曲部分の弾性変形によって伸長可能であり、
前記一対の突出部は、前記連結部が伸長する際に前記湾曲部分にそれぞれ係合して当該連結部の伸長を規制することを特徴とするバックル。
【請求項2】
前記一対の突出部は、前記湾曲部分にそれぞれ係合した状態で、前記一対の脚部の拡開方向に弾性変形可能であることを特徴とする請求項1に記載のバックル。
【請求項3】
前記一対の突出部には、第1の係合爪がそれぞれ設けられ、
前記湾曲部分には、前記第1の係合爪とそれぞれ係合可能な一対の第2の係合爪が設けられたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のバックル。
【請求項4】
前記第1の係合爪の各々は、前記雌部材との結合方向に沿った前記雄部材の中心軸線に対して線対称となるように設けられ、
前記第2の係合爪の各々は、前記結合方向に沿った前記雌部材の中心軸線に対して線対称となるように設けられたことを特徴とする請求項3に記載のバックル。
【請求項5】
前記雌部材は、前記雄部材との結合の際に、前記一対の脚部の移動をガイドするガイド壁を備え、
前記一対の突出部は、前記結合の完了時に、前記ガイド壁と当接状態となることを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載のバックル。
【請求項6】
前記雄部材には、紐状部材を取付可能であり、
前記基部には、前記雌部材との結合方向に交差する方向に延在し、且つ前記紐状部材を挿通可能な貫通孔が形成され、
前記雄部材と前記雌部材との結合状態において、前記貫通孔の一部が当該雌部材内に収容されることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれかに記載のバックル。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【公開番号】特開2013−63149(P2013−63149A)
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−203074(P2011−203074)
【出願日】平成23年9月16日(2011.9.16)
【出願人】(000135209)株式会社ニフコ (972)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成25年4月11日(2013.4.11)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年9月16日(2011.9.16)
【出願人】(000135209)株式会社ニフコ (972)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]