説明

バッチプラント生産計画システム、バッチプラント生産計画方法及びバッチプラント生産計画プログラム

【課題】多段階に製品及び中間製品を製造する必要があり、かつ、バッチで製造される化学物質の製造などの生産計画も立案可能なバッチプラント生産計画システムを提供する。
【解決手段】 生産製品情報を取得する生産情報取得手段と、製品製造に必要な情報を有するレシピデータベースと、生産計画を立案する生産計画立案手段と、生産計画が書き込まれる生産計画データベースと、を備え、生産計画立案手段は、製品製造に必要な中間製品のバッチ数等を求め、バッチ数の計算において、前のロットの余剰を考慮して計算し、バッチ数の端数は繰り上げを行い、繰り上げにより余った量は、余剰とし、それらを前記生産計画データベースに書き込むステップと、全ての生産すべき製品及び中間製品について、上記ステップを繰り返すステップと、を実行するバッチプラント生産計画システム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生産現場で製品を生産するときに使用される生産計画を立案するためのシステム、方法及びプログラムに関し、特に、バッチプラントの生産計画を立案するためのバッチプラント生産計画システム、バッチプラント生産計画方法及びバッチプラント生産計画プログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
化学プラントで製造される化学物質等の製品は、バッチ生産で製造されることが多い。バッチで製造する場合は、バッチ単位でしか製造できないので、例えば、客先からの注文が1.5バッチだった場合、その半端の0.5バッチの処理が問題であった。また、化学物質などの製品を製造するためには、複数段階のプロセスを得て製造をするものも多く、別の言い方をすると、製品を製造するためには、中間製品が必要で、その中間製品を製造するためには別の中間製品が必要でと、多段階に中間製品をも製造する必要がある場合がある。
【0003】
従来、このようにバッチで製造される製品の生産計画では、半端のバッチを処理するために、複数ロットをまとめて管理する、ロットまとめと言われる方法が用いられていた。ロットまとめと言われる方法は、例えば、第1ロットが1.5バッチ、第2ロットが2.3バッチ、第3ロットが1.2バッチ必要な場合、これらのロットをまとめて、1.5+2.3+1.2=5バッチ必要と考えて、5バッチ製造する方法である。
【0004】
また、生産計画を立案する方法として以下の発明が開示されている。
【0005】
特許文献1に開示された投入計画立案方式は、投入対象製品から仮投入品種を選択し、資材チェックと設備能力チェックのもと、仮投入外製品との入れ替えを行いながら投入品種のロットを作成し、ロットサイズに満たない品種について可能な限りロットの統合を行うステップ、を備えている。
【0006】
これにより、ロットの統合を行うので段取り替えの回数を削減し、設備効率を向上させることができるとしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開平11−10190号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来のロットまとめ方法では、複数のロットを一つにまとめて管理するので、その内の一つのロットに異常があった場合、一つにまとめられた複数のロットの次工程の製品の全てを検査する必要がある。即ち、ロットのトレーサビリティが良くないという問題がある。
【0009】
また、特許文献1に記載の投入計画立案方式は、バッチ生産に対応していないという問題があった。更に、化学物質のように、多段階に製品及び中間製品を製造する必要がある場合には、対応していないという問題もあった。
【0010】
本発明は、かかる実情に鑑み、多段階に製品及び中間製品を製造する必要があり、かつ、バッチで製造される化学物質の製造などにも適用でき、トレーサビリティも良く、更に、バッチの端数も無駄なく処理可能なバッチプラント生産計画システム、バッチプラント生産計画方法及びバッチプラント生産計画プログラムを提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の課題は、下記の各発明によって解決することができる。
【0012】
即ち、本発明のバッチプラント生産計画システムは、生産すべき製品の種類、量についての情報を外部から取得する生産情報取得手段と、製品を製造するために必要な情報が記憶されているレシピデータベースと、前記生産情報取得手段及び前記レシピデータベースから取得した情報に基づいて生産計画を立案する生産計画立案手段と、前記生産計画立案手段によって立案された生産計画が書き込まれる生産計画データベースと、を備え、前記生産計画立案手段は、前記生産情報取得手段から取得した生産すべき製品についての情報に基づいて、前記生産すべき製品を製造するために必要な情報である製品製造情報を前記レシピデータベースから取得する製品製造情報取得ステップと、前記製品製造情報に基づいて、前記生産すべき製品を製造するために必要な中間製品の種類とその数量とバッチ数とを求め、その際、バッチ数の計算において、同じ中間製品の前のロットがあり、そのロットで余剰があるときは、その余剰を加えて計算し、バッチ数の計算で端数が出たときは、バッチ数の繰り上げを行い、繰り上げたバッチ数分生産することによって余った量は、余剰とし、求められた前記中間製品の種類と、その数量と、バッチ数と、余剰と、を前記生産計画データベースにロットごとに書き込む製造情報書き込みステップと、前記生産情報取得手段から取得した全ての生産すべき製品について、前記製品製造情報取得ステップと前記製造情報書き込みステップとを実行する製品繰り返しステップと、前記中間製品を製造するために必要な第2の中間製品が更に存在する場合は、前記中間製品を生産すべき製品と見なして、前記製品製造情報取得ステップと前記製造情報書き込みステップとを中間製品を製造するため必要な第2の中間製品が存在しなくなるまで繰り返し実行する中間製品繰り返しステップと、を実行することを主要な特徴としている。
【0013】
これにより、多段階に製品及び中間製品を製造する必要があり、かつ、バッチで製造される化学物質の製造などの生産計画も立案可能になる。また、ロットごとに生産計画を立てるのでトレーサビリティも良く、更に、バッチの端数は次のバッチで使用するのでバッチの端数も無駄なく処理可能である。
【0014】
また、本発明のバッチプラント生産計画方法は、コンピュータと、製品を製造するために必要な情報が記憶されているレシピデータベースと、生産計画が書き込まれる生産計画データベースと、を備えた生産計画システムを用いてバッチプラントの生産計画を立案するバッチプラント生産計画方法であって、コンピュータが、外部から生産すべき製品についての情報を取得するステップと、コンピュータが、取得した前記生産すべき製品についての情報に基づいて、前記生産すべき製品を製造するために必要な情報である製品製造情報を前記レシピデータベースから取得する製品製造情報取得ステップと、コンピュータが、前記製品製造情報に基づいて、前記生産すべき製品を製造するために必要な中間製品の種類とその数量とバッチ数とを求め、その際、バッチ数の計算において、同じ中間製品の前のロットがあり、そのロットで余剰があるときは、その余剰を加えて計算し、バッチ数の計算で端数が出たときは、バッチ数の繰り上げを行い、繰り上げたバッチ数分生産することによって余った量は、余剰とし、求められた前記中間製品の種類と、その数量と、バッチ数と、余剰と、を前記生産計画データベースにロットごとに書き込む製造情報書き込みステップと、コンピュータが、外部から取得した全ての生産すべき製品について、前記製品製造情報取得ステップと前記製造情報書き込みステップとを実行する製品繰り返しステップと、コンピュータが、前記中間製品を製造するために必要な第2の中間製品が更に存在する場合は、前記中間製品を生産すべき製品と見なして、前記製品製造情報取得ステップと前記製造情報書き込みステップとを中間製品を製造するため必要な第2の中間製品が存在しなくなるまで繰り返し実行する中間製品繰り返しステップと、を備えることを主要な特徴としている。
【0015】
これにより、多段階に製品及び中間製品を製造する必要があり、かつ、バッチで製造される化学物質の製造などの生産計画も立案可能になる。また、ロットごとに生産計画を立てるのでトレーサビリティも良く、更に、バッチの端数は次のバッチで使用するのでバッチの端数も無駄なく処理可能である。
【0016】
更に、本発明のバッチプラント生産計画プログラムは、コンピュータを、製品を製造するために必要な情報が記憶されているレシピデータベースと、生産計画が書き込まれる生産計画データベースと、にアクセスさせて、前記コンピュータにバッチプラントの生産計画を立案させるバッチプラント生産計画プログラムであって、コンピュータに、外部から生産すべき製品についての情報を取得させるステップと、コンピュータに、取得した前記生産すべき製品についての情報に基づいて、前記生産すべき製品を製造するために必要な情報である製品製造情報を前記レシピデータベースから取得させる製品製造情報取得ステップと、コンピュータに、前記製品製造情報に基づいて、前記生産すべき製品を製造するために必要な中間製品の種類とその数量とバッチ数とを求めさせ、その際、バッチ数の計算において、同じ中間製品の前のロットがあり、そのロットで余剰があるときは、その余剰を加えて計算させ、バッチ数の計算で端数が出たときは、バッチ数の繰り上げを行わせ、繰り上げたバッチ数分生産することによって余った量は、余剰とし、求められた前記中間製品の種類と、その数量と、バッチ数と、余剰と、を前記生産計画データベースにロットごとに書き込ませる製造情報書き込みステップと、コンピュータに、外部から取得した全ての生産すべき製品について、前記製品製造情報取得ステップと前記製造情報書き込みステップとを実行させる製品繰り返しステップと、コンピュータに、前記中間製品を製造するために必要な第2の中間製品が更に存在する場合は、前記中間製品を生産すべき製品と見なして、前記製品製造情報取得ステップと前記製造情報書き込みステップとを中間製品を製造するため必要な第2の中間製品が存在しなくなるまで繰り返し実行させる中間製品繰り返しステップと、を備えることを主要な特徴としている。
【0017】
これにより、多段階に製品及び中間製品を製造する必要があり、かつ、バッチで製造される化学物質の製造などの生産計画も立案可能になる。また、ロットごとに生産計画を立てるのでトレーサビリティも良く、更に、バッチの端数は次のバッチで使用するのでバッチの端数も無駄なく処理可能である。
【発明の効果】
【0018】
本発明のバッチプラント生産計画システム、バッチプラント生産計画方法及びバッチプラント生産計画プログラムによれば、多段階に製品及び中間製品を製造する必要があり、かつ、バッチで製造される化学物質の製造などの生産計画も立案可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明のバッチプラント生産計画システムの一実施形態を示す機能ブロック図である。
【図2】生産計画データベースに記憶されているデータの一例を示した図である。
【図3】レシピデータベースに記憶されているデータの一例を示した図である。
【図4】図2の各バッチを視覚的に表した図である。
【図5】本発明のバッチプラント生産計画方法の一実施例を示すフロー図である。
【図6】発明のバッチプラント生産計画方法の一実施例を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、添付図面を参照しながら、本発明を実施するための形態を詳細に説明する。本発明は、コンピュータで実現されるものであり、コンピュータを構成するハードウエア、ソフトウエアによって以下に記載する実施例の各構成要件が実現されるものである。ここで、本発明は、実施例として、架空の製品の生産計画例に基づいて説明されるが、もちろんこの例に限定されるものではなく、本発明は、バッチプラントの生産計画一般に広く適用可能である。
【0021】
<システム構成>
本発明のバッチプラント生産計画システムの一実施形態について図面を参照して説明する。図1は、本発明のバッチプラント生産計画システムの一実施形態を示す機能ブロック図である。図1に示すように、本発明のバッチプラント生産計画システムは、生産すべき製品の種類、量についての情報を外部から取得する生産情報取得手段10と、製品を製造するために必要な情報が記憶されているレシピデータベース20と、生産情報取得手段10及びレシピデータベース20から取得した情報に基づいて生産計画を立案する生産計画立案手段30と、生産計画立案手段30によって立案された生産計画が書き込まれた生産計画データベース40と、を主に含んで構成される。
【0022】
生産情報取得手段10は、生産すべき製品の種類、量についての情報を他の生産管理システムや営業のシステム等の外部から取得する。
【0023】
レシピデータベース20について、図3に示す。図3は、レシピデータベースに記憶されているデータの一例を示した図である。図3に示すように、レシピデータベース20には、製品毎に、その製品を合成するための材料である中間製品の種類及び投入量、投入すべき化学物質(製品合成のために中間製品と混合すべき化学物質のことを言う、以下、投入化学物質と称する。)の種類及び投入量、バッチサイズ等の情報が記憶されている。なお、以下においては、中間製品及び投入化学物質を投入品とも称する。
【0024】
生産計画立案手段30は、生産情報取得手段10から生産すべき製品とその量を取得し、レシピデータベース20からその製品製造に必要な情報として、中間製品、投入化学物質、それぞれの投入量、バッチサイズ等を取得し、これらの情報に基づいて、生産計画を立案する。
【0025】
具体的には、生産計画立案手段30は、生産すべき製品のロット数を決定し、各ロットごとにそのロットの製品を製造するのに必要な中間製品の種類、量、ロットを決定する。更に、中間製品自身が、別の中間製品から合成される場合は、中間製品自身を製品と考えて上記と同様にして生産計画を作成する。製品が、複数の中間製品から多段に製造される場合は、最終製品から、上記生産計画を上流に向かって繰り返して行う。
【0026】
生産計画データベース40には、生産計画立案手段30によって立案された生産計画である、各中間製品の種類、量、ロット等の情報が記憶される。生産計画データベースについて図2に示す。図2は、生産計画データベース40に記憶されているデータの一例を示した図である。図2に示すように、製品ごと、中間製品ごと、ロットごとに、製品名、必要量、バッチサイズ等の情報が記憶されている。
【0027】
ここで、生産計画立案手段30は、中間製品のロット管理において、同一中間製品のロットであっても、ロットをまとめて管理する(ロットまとめと言う)こと無く、ロットごとに管理を行う。
【0028】
その際、数量に端数が出たとき、例えば、ある製品1について中間製品Aが2.2ロット必要で、製品2について中間製品Aが3.8ロット必要な場合、ロットまとめを行う場合には、中間製品Aをまとめて、2.2ロット+3.8ロット=6ロット製造というように行うが、本発明ではそのようには行わない。即ち、本発明では、製品1について、中間製品Aの2.2ロット製造は、繰り上げて3ロット製造にする。余った0.8ロットを製品2の中間製品Aに振り分けると考えて、製品2の中間製品Aは、3ロット製造にする。
【0029】
これにより、トレーサビリティが向上するので、品質管理が容易になる。具体的には、例えば、ロットまとめを行った場合には、中間製品Aのどれかのロットに不良が発生したときは、ロットがまとまっているためその不良ロットがどの製品に使われたかトレースできず、製品1と製品2の両方を検査する必要がある。これに対して、本発明では、製品1の中間製品Aのロットと、製品2の中間製品Aのロットとが分かれて管理されているので、中間製品Aのどれかのロットに不良が発生しても、製品1か製品2のどちらかを検査すればすむ。
【0030】
<システム動作>
次に本発明のバッチプラント生産計画システムの動作について、事例を用いて詳細に説明する。以下の事例に基づいて説明するが、本発明は、この事例に限定されるものではなく、バッチ方式で生産を行うプラントの生産計画全般に適用できることは言うまでもない。
【0031】
図1と図2を参照して、生産計画立案手段30は、生産情報取得手段10が取得した生産すべき最終製品の製品名と必要量を生産情報取得手段10から取得する。例えば、生産計画立案手段30は、製品P1について必要量200Kgの情報を生産情報取得手段10から取得すると、その情報を生産計画データベース40に書き込む。図2のテーブル(1,1)を参照すると、製品名にP1、必要量に200Kgが書き込まれている。
【0032】
図3も共に参照して、次に、生産計画立案手段30は、レシピデータベース20を参照して、製品P1を製造するために必要な情報である、バッチサイズ、投入品の種類及び量、使用装置を取得する。ここで、生産計画立案手段30は、製品P1のバッチサイズは50Kgなので、必要量200Kg生産するには、200Kg/50Kg=4バッチ必要であると計算し、その結果を生産計画データベース40に書き込む。図2のテーブル(1,1)には、バッチサイズ50Kgと、バッチ数4とが書き込まれている。
【0033】
同様に、生産計画立案手段30は、次々と生産情報取得手段から生産情報を取得し、レシピデータベース20を参照して、生産情報を図2のテーブル(1,2)、テーブル(1,3)、テーブル(1,4)に示すように書き込んでゆく。
【0034】
次に、生産計画立案手段30は、上流方向の計画を作成してゆく。生産計画立案手段30は、テーブル(1,1)と、レシピデータベース20とを参照して、製品P1を200Kg製造するために必要な情報をテーブル(2,1)に書き込んでゆく。具体的には、製品P1を1バッチ50Kg製造するためには、レシピデータベース20(図3参照)を参照して、40Kgの中間製品Q1と、投入品X5と、が必要なので、P1を200Kg製造するには、200Kg×40Kg/50Kg=160Kgの中間品Q1が必要であると計算し、その結果をテーブル(2,1)の次工程供給量欄に書き込む。次工程供給量とは、次工程(この場合は、テーブル(1,1)の工程)に必要とされる製品の量のことである。
【0035】
また、生産計画立案手段30は、中間品Q1について、レシピデータベース20(図3参照)を参照して、Q1のバッチサイズ100Kgを取得し、Q1を160Kg製造するには、160Kg/100Kg=1.6バッチ必要であると計算する。ここで、バッチ生産では、1バッチ単位でしか生産はできないので、1.6バッチを2バッチとする繰り上げ処理を行い、テーブル(2,1)に記載する。更に、余りである、2バッチ−1.6バッチ=0.4バッチ、つまり、0.4バッチ×100Kg(バッチサイズ)=40Kgを余剰として、テーブル(2,1)の余剰の欄に記載する。
【0036】
続いて、生産計画立案手段30は、同様に、テーブル(1,2)と、レシピデータベース20とからテーブル(2,2)の内容を書き込んでゆくが、前のロットであるテーブル(2,1)を参照し、生産計画対象中間製品が、同じQ1なので、前ロット(2,1)の余りバッチ0.4バッチ、即ち余剰40Kgを考慮して書き込む。
【0037】
つまり、テーブル(1,2)から製品P2は、200Kg必要であり、製品P2を200Kg製造するには、レシピテーブルを参照して、中間製品Q1の必要量は、200Kg×45Kg/50Kg=180Kgとなる。生産計画立案手段30は、このように計算を行い、180Kgを、テーブル(2,2)の次工程供給量の欄に記載する。次工程供給量とは、次工程(この場合は、テーブル(1,2)の工程)の生産計画に必要とされるQ1の量のことである。
【0038】
また、テーブル(2,2)の工程で必要なQ1の生産量は、前ロットのテーブル(2,1)の余剰40Kgがあるので、これを差し引いた、180Kg−40Kg=140Kgとなる。生産計画立案手段30は、この計算を行って、140Kgをテーブル(2,2)の工程別必要量の欄に記載する。工程別必要量とは、前ロットの余剰も考慮した、その工程で必要な生産量のことである。
【0039】
更に、140Kgの生産が必要なので、ロット数に換算するとレシピデータベース20(図3参照)からQ1は、1ロット100Kgなので、1.4ロット製造が必要となり、繰り上げて2ロット必要と計算される。この場合、2ロット−1.4ロット=0.6ロット、つまり、0.6ロット×100Kg=60Kg余剰になる。生産計画立案手段30は、これらの計算を行って、ロット数欄に2を、余剰欄に60Kgを書き込む。生産計画立案手段30は、同様にして、テーブル(2,3)、テーブル(2,4)に対して、計算及び書き込みを行う。更に、上流に向かって計算を行い、テーブル(2,1)の中間製品Q1を製造するための生産計画を、レシピデータベース20を参照して行い、テーブル(3,1)(図示せず)を作成してゆく。このように、計算及び書き込みをレシピデータベース20に記載された範囲でずっと行ってゆく。
【0040】
ここで、これらの計算及び書き込みの順序は、上記においては、テーブル(1,1)、テーブル(1,2)、テーブル(1,3)、テーブル(1,4)・・・、テーブル(2,1)、テーブル(2,2)、テーブル(2,3)、テーブル(2,4)の順番、即ち、ロットの順番に計算、書き込みを行って、次に、上流の工程の計算、書き込みを行ったが、逆に、テーブル(1,1)、テーブル(2,1)、テーブル(3,1)(図示せず)、・・・、テーブル(1,2)、テーブル(2,2)、テーブル(3,2)(図示せず)、・・・のように、工程を上流に遡る順番に計算、書き込みを行って、それからロットの順番に計算、書き込みを行っても良い。なお、計算方法、書き込み方法は、同じなので具体的な計算方法、書き込み方法の説明は省略する。
【0041】
本発明によれば、上記で説明したように、多段の工程によって製造される化学物質が複数存在し、それぞれの中間製品も同一であったり無かったりと複雑な状況であっても、各工程、各ロットの生産計画を迅速に、正確に立案することができる。
【0042】
また、本発明によれば、ロットまとめを行わなくても、余剰を無駄なく使用することができる。更に、本発明は、ロットまとめを行わないので、あるロットに不良が出てもそのロットに関係した製品だけ不良の調査を行うことができるなど、トレーサビリティに優れている。
【0043】
次に、上記で説明した生産計画の内容について、視覚的な図面を用いて更に説明する。図4は、図2の各バッチを視覚的に表した図である。図4の上段は、本発明により行った生産計画を表し、下段は、従来のロットまとめ方法により行った生産計画を表す。
【0044】
図4の上段の左側には、図2のテーブル(1,1)と、テーブル(2,1)に記載された内容、即ち、製品P1が、200Kg=50Kg×4バッチ必要であることと、P1を200Kg製造するために、中間製品Q1を100Kg×2バッチ=200Kg製造し、次工程供給量が160Kg(P1製造に使用する量)なので、40Kg余って、その余りは、製品ロット2に使用されることと、が記載されている。ここで、記号100で示される図形は、1つのバッチを示し、同様に図形も全て1つのバッチを示す。
【0045】
図4の上段の中央には、図2のテーブル(1,2)と、テーブル(2,2)とに記載された内容、即ち、製品P2が、200Kg=50Kg×4バッチ必要であることと、P2を200Kg製造するために、中間製品Q1を100Kg×2バッチ=200Kg製造し、製品ロット1からの余り40Kgを加えて240Kgあるが、次工程供給量が180Kg(P2製造に使用する量)なので、60Kg余って、その余りは、製品ロット3に使用されることと、が記載されている。
【0046】
図4の上段の右側には、図2のテーブル(1,3)と、テーブル(2,3)とに記載された内容、即ち、製品P1が、150Kg=50Kg×3バッチ必要であることと、P1を150Kg製造するために、中間製品Q1を100Kg×1バッチ製造し、製品ロット2からの余り60Kgを加えて160Kgあるが、次工程供給量が120Kg(P1製造に使用するよう)なので、40Kg余って、その余りは次のロットに使用されることが記載されている。
【0047】
次に図4の下段に示す従来の生産計画について説明すると、図4の下図は、製品ロット1の製品P1と、製品ロット2の製品P2と、製品ロット3の製品P1とに必要な中間製品はQ1であり、共通するので、Q1についてロットまとめを行い、1ロットで、Q1を5バッチ製造することを示している。
【0048】
ここで、記号120で示されるバッチに異常が発生したとすると、本発明の場合は、ロットごとに生産計画されているので、記号120のバッチの異常が影響を与えるのは、製品ロット2の製品P2のみであることが分かる。よって、品質検査は、製品ロット2の製品P2のみ行えばよい。このように、本発明によれば、トレーサビリティを高めることができる。
【0049】
これに対して、従来の生産計画で製造すると、図4の下段に示すように、5バッチが1ロットなので、記号120のバッチがどの製品に使用されたか不明である。よって、製品ロット1から3までの全ての製品について品質検査をする必要がある。
【0050】
また、本発明においては、仮に図4の記号130で示されるバッチに異常があったとしても、製品ロット2と製品ロット3のみ品質検査をすれば良く、従来のロットまとめ方法のように、製品ロット1から3までの全てを品質検査する必要がない。
【0051】
<バッチプラント生産計画フロー>
次に、本発明のバッチプラント生産計画方法について、フロー図を用いて更に説明する。図5、図6は、本発明のバッチプラント生産計画方法の一実施例を示すフロー図である。
【0052】
図5を参照して、生産計画立案手段30は、生産情報取得手段10が取得した生産情報を取得する(S1)。生産情報とは、製造すべき製品とその製造量に関する情報である。生産情報取得手段10は、外部の例えば、営業システムや他の生産管理システムから生産情報を取得する。
【0053】
生産計画立案手段30は、生産情報を製品ロットごとに生産計画データベース40に書き込む(S2)。これは、図2のテーブル(1,1)、テーブル(1,2)、テーブル(1,3)、テーブル(1,4)に書き込むことに相当する。
【0054】
生産計画立案手段30は、レシピデータベース20から製品製造に必要な材料である中間製品(図3のレシピデーベースの投入品1に該当する)の種類と、その混合比(図3のレシピデータベースのように、混合比のデータではなく、投入品1の量と、投入品2の量と、が記載されている場合は、それ等の量から混合比を計算する)と、バッチサイズに関する情報と、を取得する(S3)。
【0055】
生産計画立案手段30は、中間製品の量とバッチ数とを計算して、計算結果を生産計画データベース40に書き込む(S4)。この際、同じ中間製品の前のロットがあり、そのロットで余剰があるときは、その余剰を加えて計算する。これは、例えば、図2のテーブル(2,2)の場合において、テーブル(2,2)の中間製品は、Q1であり、その前のロットのテーブル(2,1)の中間製品もQ1で同じで、かつ、テーブル(2,1)は、余剰が40Kgあるので、テーブル(2,2)の計算では、その余剰40Kgを加えて計算するということである。また、バッチ数の計算において、端数が出たときは、繰り上げを行い、繰り上げたバッチ数分生産することによって余った量は、余剰欄に書き込むということである。
【0056】
生産計画立案手段30は、全ての製品ロットについて書き込みが終了したかの判断を行う(S5)。これは、図2で言えば、テーブル(2,1)、テーブル(2,2)、テーブル(2,3)、テーブル(2,4)と、水平方向に全てのロットのテーブルに書き込みが終了したかを確認するものである。その結果、書き込みが終了していない場合は、ステップS3に戻って、テーブル(2,2)、テーブル(2,3)と順番に繰り返して書き込んでゆく。書き込みが全て終了していたときは、次のステップを実行する。
【0057】
生産計画立案手段30は、更に上流の中間製品が存在するかの判断を行う(S6)。これは、その製品を製造するための中間製品が存在するかどうかの判断を行うものであり、例えば、図2のテーブル(1,1)にとっての上流は、テーブル(2,1)であり、テーブル(2,1)にとっての上流は、テーブル(2,1)の中間製品Q1を製造するための中間製品が存在する場合は、その中間製品についてのテーブル(3,1)(図示せず)のことである。判断の結果、上流の中間製品が存在する場合は、ステップS3に戻って、上流のテーブルに書き込んでゆく。上流の中間製品が存在しない場合は、終了になる。
【0058】
このように実行することにより、図2のテーブルを例に取ると、テーブル(1,1)から横方向に、テーブル(1,2)、テーブル(1,3)、テーブル(1,4)と書き込んで、次に、上流にゆき、テーブル(2,1)からテーブル(2,2)、テーブル(2,3)、テーブル(2,4)と書き込んでゆくことになる。
【0059】
次に図6を参照して説明する。図6は、図5のステップS5とS6とが入れ替わっただけある。よって、各ステップの詳細な説明は省略するが、図6の方法では次にようになる。即ち、図2を例に取ると、書き込む順番が、テーブル(1,1)から上流に(テーブル2,1)、テーブル(3,1)(図示せず)と上流が無くなるまで書き込んでゆき、次に、テーブル(1,2)から上流にテーブル(2,2)、(テーブル3,2)(図示せず)と書き込み、さらに書き込みを、テーブル(1,4)、テーブル(2,4)…と続けてゆく。
【0060】
このように、図5においては、水平方向に計算、書き込みを行って、それから段々に上流の計算書き込みを行うのに対して、図6の方法では、まず、上流に向かって計算、書き込みを続け、それから水平方向に計算、書き込みを広げてゆく。
【0061】
本発明においては、どちらの方法を採択することも可能であり。どちらも、同様の効果を有する。また、図5、図6で示されるフロー図において、この順番での実施のみに限定するものではなく、同様の効果を有し、本発明の目的を達成する限り、順番を変えて実施することもできる。
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明のバッチプラント生産計画システム及びバッチプラント生産計画方法は、コンピュータのCPU、メモリ、記憶装置、ディスプレイ、入出力デバイス等を含むハードウエア資源上に構築されたOS、アプリケーション、データベース、プログラム等によって実現されるものであり、製品の生産計画を立案するだけではなく、その製品の材料となる中間製品の生産計画、更にその中間製品の中間製品の生産計画と、上流に遡ってすべての生産計画を立案するという情報処理が上記のハードウエア資源を用いて具体的に実現されるものであるから、自然法則を利用した技術的思想に該当するものであり、バッチプラントの生産計画等の分野ならば、どの分野においても利用することができる。
【符号の説明】
【0063】
10:生産情報取得手段、20:レシピデータベース、30:生産計画立案手段、40:生産計画データベース

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バッチプラントの生産計画を立案するバッチプラント生産計画システムであって、
生産すべき製品の種類、量についての情報を外部から取得する生産情報取得手段と、
製品を製造するために必要な情報が記憶されているレシピデータベースと、
前記生産情報取得手段及び前記レシピデータベースから取得した情報に基づいて生産計画を立案する生産計画立案手段と、
前記生産計画立案手段によって立案された生産計画が書き込まれる生産計画データベースと、を備え、
前記生産計画立案手段は、
前記生産情報取得手段から取得した生産すべき製品についての情報に基づいて、前記生産すべき製品を製造するために必要な情報である製品製造情報を前記レシピデータベースから取得する製品製造情報取得ステップと、
前記製品製造情報に基づいて、前記生産すべき製品を製造するために必要な中間製品の種類とその数量とバッチ数とを求め、その際、バッチ数の計算において、同じ中間製品の前のロットがあり、そのロットで余剰があるときは、その余剰を加えて計算し、バッチ数の計算で端数が出たときは、バッチ数の繰り上げを行い、繰り上げたバッチ数分生産することによって余った量は、余剰とし、求められた前記中間製品の種類と、その数量と、バッチ数と、余剰と、を前記生産計画データベースにロットごとに書き込む製造情報書き込みステップと、
前記生産情報取得手段から取得した全ての生産すべき製品について、前記製品製造情報取得ステップと前記製造情報書き込みステップとを実行する製品繰り返しステップと、
前記中間製品を製造するために必要な第2の中間製品が更に存在する場合は、前記中間製品を生産すべき製品と見なして、前記製品製造情報取得ステップと前記製造情報書き込みステップとを中間製品を製造するため必要な第2の中間製品が存在しなくなるまで繰り返し実行する中間製品繰り返しステップと、
を実行するバッチプラント生産計画システム。
【請求項2】
コンピュータと、製品を製造するために必要な情報が記憶されているレシピデータベースと、生産計画が書き込まれる生産計画データベースと、を備えた生産計画システムを用いてバッチプラントの生産計画を立案するバッチプラント生産計画方法であって、
コンピュータが、外部から生産すべき製品についての情報を取得するステップと、
コンピュータが、取得した前記生産すべき製品についての情報に基づいて、前記生産すべき製品を製造するために必要な情報である製品製造情報を前記レシピデータベースから取得する製品製造情報取得ステップと、
コンピュータが、前記製品製造情報に基づいて、前記生産すべき製品を製造するために必要な中間製品の種類とその数量とバッチ数とを求め、その際、バッチ数の計算において、同じ中間製品の前のロットがあり、そのロットで余剰があるときは、その余剰を加えて計算し、バッチ数の計算で端数が出たときは、バッチ数の繰り上げを行い、繰り上げたバッチ数分生産することによって余った量は、余剰とし、求められた前記中間製品の種類と、その数量と、バッチ数と、余剰と、を前記生産計画データベースにロットごとに書き込む製造情報書き込みステップと、
コンピュータが、外部から取得した全ての生産すべき製品について、前記製品製造情報取得ステップと前記製造情報書き込みステップとを実行する製品繰り返しステップと、
コンピュータが、前記中間製品を製造するために必要な第2の中間製品が更に存在する場合は、前記中間製品を生産すべき製品と見なして、前記製品製造情報取得ステップと前記製造情報書き込みステップとを中間製品を製造するため必要な第2の中間製品が存在しなくなるまで繰り返し実行する中間製品繰り返しステップと、
を備えるバッチプラント生産計画方法。
【請求項3】
コンピュータを、製品を製造するために必要な情報が記憶されているレシピデータベースと、生産計画が書き込まれる生産計画データベースと、にアクセスさせて、前記コンピュータにバッチプラントの生産計画を立案させるバッチプラント生産計画プログラムであって、
コンピュータに、外部から生産すべき製品についての情報を取得させるステップと、
コンピュータに、取得した前記生産すべき製品についての情報に基づいて、前記生産すべき製品を製造するために必要な情報である製品製造情報を前記レシピデータベースから取得させる製品製造情報取得ステップと、
コンピュータに、前記製品製造情報に基づいて、前記生産すべき製品を製造するために必要な中間製品の種類とその数量とバッチ数とを求めさせ、その際、バッチ数の計算において、同じ中間製品の前のロットがあり、そのロットで余剰があるときは、その余剰を加えて計算させ、バッチ数の計算で端数が出たときは、バッチ数の繰り上げを行わせ、繰り上げたバッチ数分生産することによって余った量は、余剰とし、求められた前記中間製品の種類と、その数量と、バッチ数と、余剰と、を前記生産計画データベースにロットごとに書き込ませる製造情報書き込みステップと、
コンピュータに、外部から取得した全ての生産すべき製品について、前記製品製造情報取得ステップと前記製造情報書き込みステップとを実行させる製品繰り返しステップと、
コンピュータに、前記中間製品を製造するために必要な第2の中間製品が更に存在する場合は、前記中間製品を生産すべき製品と見なして、前記製品製造情報取得ステップと前記製造情報書き込みステップとを中間製品を製造するため必要な第2の中間製品が存在しなくなるまで繰り返し実行させる中間製品繰り返しステップと、
を備えるバッチプラント生産計画プログラム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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