説明

バッテリパックを電源とする電動車

【課題】 電動車の性能を向上しつつ、エネルギーの浪費を防止する。
【解決手段】 電動車10は、車体12と、車体12に設けられている駆動輪32と、駆動輪32にトルクを加えるモータ38と、複数のバッテリパック100が着脱可能なバッテリホルダ50と、バッテリパック100からモータ38へ電力を供給する回路ユニット70を備えている。回路ユニット70は、バッテリホルダ50に取り付けられたバッテリパック100を、その数にかかわらず、モータ38へ電気的に接続することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バッテリパックを電源とする電動車に関する。ここでいう電動車は、車輪にトルクを加えるモータを有する車両を広く含む。例えば、電動車には、電動自転車(電動アシスト自転車、ハイブリッド自転車とも称される)、電動バイク(原動機付自転車を含む)、電動車いす、電気自動車、ハイブリッドカー(モータを含む二種類以上の原動機を有する車両)、各種の電動作業車(例えばフォークリフトや清掃車)、電動式乗用玩具、電動搬送台車、電動リフタ、電動式無人搬送車、電動式無線操縦車両を含む。電動車には、人が乗車可能な車両と、人が乗車不能な車両の、両者が含まれる。電動車は、車輪が地面や軌道に直接的に接触するものに限られず、車輪を取り囲む無限軌道(履帯又はキャタピラー(登録商標)とも称される)を有するものも含まれる。
【背景技術】
【0002】
特許文献1に、バッテリパックを電源とする電動自転車が開示されている。この電動自転車は、車体と、車体に回転可能に設けられている前輪及び後輪と、ユーザが力を加えるペダルと、ペダルに加えられた力を後輪に伝達する人力伝達機構と、後輪にトルクを加えるモータと、モータに電力を供給するバッテリパックを取り付けるバッテリホルダを備えている。バッテリホルダは、前輪の上方に位置するフロントバスケット内に配置されている。この種の電動自転車では、モータによる補助力を受けることにより、ユーザがペダルを楽に漕ぐことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平10−119853号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
バッテリパックを電源とする電動車では、その性能が、バッテリパックの性能に大きく依存する。即ち、バッテリパックの容量が大きいほど、電動車の最大航続距離は長くなり、バッテリパックの出力電圧が大きいほど、電動車の最大出力は高くなる。従って、従来の電動車では、その性能を高めるために、多くのバッテリセルを内蔵する大型のバッテリパックが採用されている。しかしながら、大型のバッテリパックは、電動車の重量増大を招くことになり、電動車のエネルギー効率を低下させる要因となり得る。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の問題に関して、本発明者は、ユーザによる電動車の使用形態に着目した。多くのユーザは、電動車に、最大航続距離の長さや最大出力の大きさを要求する。しかしながら、本発明者の研究によると、ユーザが電動車によって長距離を移動する頻度は少なく、電動車は日常的に短距離の移動に使用されていることが判明した。この知見に基づき、本発明では、電動車が複数のバッテリパックを使用可能とし、予定する電動車の使用形態に応じて、使用するバッテリパックの数をユーザが調整可能となる構成を実現する。
【0006】
本発明によって具現化される電動車は、車体と、車体に設けられている駆動輪と、駆動輪にトルクを加えるモータと、複数のバッテリパックが着脱可能なバッテリホルダと、バッテリホルダに取り付けられたバッテリパックからモータへ電力を供給する回路ユニットを備えている。回路ユニットは、バッテリホルダに取り付けられたバッテリパックを、その数にかかわらず、モータへ電気的に接続可能に構成されている。
【0007】
上記した構成によると、ユーザは、予定する電動車の使用形態に応じて、使用するバッテリパックの数を調整することができる。例えば、電動車によって長距離の移動を予定する場合、ユーザは、複数のバッテリパックを使用することにより、電動車の最大航続距離や最大出力といった性能を高めることができる。一方、電動車によって短距離の移動を予定する場合、ユーザは、一つのみのバッテリパックを使用することにより、電動車の重量を軽くすることができる。それにより、ユーザが電動車に要求する性能を満足しつつ、電動車の日常的な使用時にエネルギーが浪費されることを防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】電動自転車の外観を示す模式図。
【図2】電動自転車の電気的な構成を示すブロック図。
【図3】バッテリ接続回路の回路構造を示す図(二つのバッテリパック)。
【図4】バッテリ接続回路の回路構造を示す図(一つのバッテリパック)。
【図5】開いた状態のバッテリホルダの正面図。
【図6】開いた状態のバッテリホルダの側面図。
【図7】閉じた状態のバッテリホルダの側面図。
【図8】図5中のVIII−VIII線における断面図。
【図9】ばね部材によって押されたバッテリパックを示す図。
【図10】バッテリ接続回路の変形例を示す図(並列接続の状態)。
【図11】バッテリ接続回路の変形例を示す図(直列接続の状態)。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の一実施形態において、回路ユニットは、バッテリホルダに取り付けられた複数のバッテリパックを、並列に接続可能であることが好ましい。この構成によると、バッテリホルダに多くのバッテリパックを取り付けるほど、モータに多くの電力を供給することが可能となり、電動車の最大航続距離を長くすることができる。また、一部のバッテリパックの充電が尽きたとしても、他のバッテリパックがモータへの電力供給を継続することができる。
【0010】
本発明の一実施形態において、回路ユニットは、バッテリホルダに取り付けられたバッテリパックへの逆電流を防止する整流素子を備えることが好ましい。この構成では、複数のバッテリパックの間で出力電圧に差が生じた場合でも、バッテリパックに逆電流が流れることを防止することができる。
【0011】
本発明の一実施形態において、回路ユニットは、バッテリホルダに取り付けられた複数のバッテリパックを、直列に接続可能であることが好ましい。この構成では、バッテリホルダに多くのバッテリパックを取り付けるほど、モータに高い電圧を印加することが可能となり、電動車の最大出力を大きくすることができる。
【0012】
本発明の一実施形態において、バッテリホルダは、駆動輪の上方に位置することが好ましい。また、より好ましくは、バッテリホルダに複数のバッテリパックを取り付けたときに、少なくとも一つのバッテリパックの重心が、駆動輪の回転軸を含む鉛直面に対して一方側に位置し、他の少なくとも一つのバッテリパックの重心が、当該鉛直面に対して他方側に位置することが好ましい。この構成では、バッテリパックの重量が主に駆動輪へ負荷される。その結果、駆動輪の地面への接地圧が高まり、駆動輪が地面を強くグリップすることができる。駆動輪のグリップ力が高まることで、例えば駆動輪のスリップが防止され、モータによるエネルギーの消費が抑制される。なお、前述した従来の電動自転車では、バッテリパックが従動輪である前輪の上方に配置される(特開平10−119853号公報を参照)。このような構成であると、バッテリパック100の重量が、駆動輪である後輪にほとんど負荷されず、バッテリパック100の重量によって、後輪のグリップ力を高めることができない。
【0013】
上記した実施形態において、電動車は、駆動輪の上方に配置された荷台をさらに備えることが好ましい。この場合、バッテリホルダは、駆動輪と荷台の間に配置されていることが好ましい。この構成では、バッテリパックの重量と、荷台に積載された荷物の重量の両者によって、駆動輪の地面に対するグリップ力を高めることができる。また、バッテリホルダが荷台よりも下方に配置されていると、バッテリパックの重量によって、電動車の重心を比較的に低くすることができる。
【0014】
本発明の一実施形態において、バッテリホルダは、各々がバッテリパックを着脱可能な複数のバッテリ受入部を有することが好ましい。この場合、各々のバッテリ受入部は、取り付けられたバッテリパックに係合し、かつ、その係合を解除可能なロック部と、取り付けられたバッテリパックを取り外し方向へ付勢する付勢部材と、を有することが好ましい。この構成では、ユーザがロック部による係合を解除すると、付勢部材がバッテリパックをその取り出し方向へ移動させる。それにより、ユーザは、バッテリホルダからバッテリパックを容易に取り外すことができる。
【0015】
本発明の一実施形態において、電動車は、ユーザが力を加えるペダルと、ペダルに加えられた力を駆動輪又は他の車輪に伝達する人力伝達機構をさらに備えることで、電動自転車(電動アシスト自転車とも称される)とすることができる。この場合、電動自転車は、二輪車に限られず、一輪車や三輪車であってもよい。電動自転車の車輪の数は特に限定されない。
【実施例】
【0016】
実施例の電動自転車10について、図面を参照しながら説明する。図1は、電動自転車10を示す模式図である。図1に示すように、電動自転車10は、メインフレーム12と、ステアリングコラム14と、荷台20と、前輪30と、後輪32を備えている。ステアリングコラム14は、メインフレーム12の前端に、回転可能に取り付けられている。メインフレーム12とステアリングコラム14は、電動自転車10の車体を構成している。前輪30は、ステアリングコラム14の下端に、回転可能に取り付けられている。後輪32は、メインフレーム12の後端に、回転可能に取り付けられている。荷台20は、メインフレーム12に固定されており、後輪32の上方に位置している。荷台20には、荷物を積載することができる。
【0017】
電動自転車10は、ユーザが把持するハンドル16と、ユーザが着座するサドル18と、ユーザが足で漕ぐペダル34を備えている。ハンドル16は、ステアリングコラム14に固定されている。サドル18は、メインフレーム12に固定されている。ペダル34は、メインフレーム12に回転可能に取り付けられている。ペダル34は、チェーン36を介して後輪32に接続されており、ユーザがペダル34に加えた力(トルク)は、チェーン36を介して後輪32に伝達される。即ち、ユーザがペダル34を漕ぐと、電動自転車10は前進する。
【0018】
図2は、電動自転車10の電気的な構成を示すブロック図である。図1、図2に示すように、電動自転車10は、モータ38と、バッテリホルダ50と、回路ユニット70を備えている。モータ38は、後輪32にトルクを加える原動機である。モータ38は、インホイールモータ(ハブモータとも称される)であり、後輪32のハブに内蔵されている。モータ38は、バッテリホルダ50に取り付けられたバッテリパック100を電源とする。バッテリホルダ50には、最大で、二つのバッテリパック100を取り付けることができる。バッテリホルダ50に取り付けられたバッテリパック100は、回路ユニット70を介して、モータ38へ電気的に接続される。
【0019】
なお、バッテリパック100は、本来、電動工具用のバッテリパックである。即ち、電動自転車10は、専用のバッテリパックを必要とせず、電動工具用のバッテリパックを使用することができる。そのことから、ユーザは、バッテリパック100を、電動自転車10だけでなく、電動工具にも使用することができる。電動工具を既に所有するユーザは、電動自転車10を購入する際に、バッテリパック100を新たに購入する必要がない。
【0020】
電動自転車10は、さらに、踏力センサ40と車速センサ42と操作ユニット44を備えている。踏力センサ40は、ユーザがペダル34に加えた力(トルク)を検出するセンサである。車速センサ42は、電動自転車10の速度を検出するセンサである。操作ユニット44は、ユーザが操作するユーザインターフェースである。ユーザは、操作ユニット44を操作することで、電動自転車10の電源を入れたり、電動自転車10のモードを切り替えたりすることができる。踏力センサ40と車速センサ42と操作ユニット44はそれぞれ、回路ユニット70に接続されている。
【0021】
図2に示すように、回路ユニット70は、バッテリ接続回路72と、モータコントローラ78を有している。バッテリ接続回路72は、二つのバッテリパック100を、モータコントローラ78へ電気的に接続する。モータコントローラ78は、バッテリパック100からモータ38へ供給される電力を調節することによって、モータ38が後輪32に加えるトルクを調節する。ここで、モータコントローラ78は、踏力センサ40と車速センサ42による検出値に基づいて、モータ38が後輪32に加えるトルクを決定する。即ち、ユーザがペダル34に加える力(トルク)と、電動自転車10の速度に応じて、モータ38が後輪32に加えるトルクが調節される。例えば、ユーザがペダル34に加える力が大きいほど、モータ38が後輪32に加えるトルクを大きくする。それにより、ユーザは、発進時や登坂時においても、ペダル34を楽に漕ぐことができる。また、電動自転車10の速度が大きくなるほど、モータ38が後輪32に加えるトルクを小さくする。それにより、電動自転車10の速度超過を防止することができる。
【0022】
図3は、バッテリ接続回路72の回路構造を示している。図3に示すように、バッテリ接続回路72は、並列回路であり、バッテリホルダ50に取り付けられた二つのバッテリパック100を、並列に接続する。バッテリ接続回路72が並列回路であることから、バッテリホルダ50には、必ずしも二つのバッテリパック100を取り付ける必要はない。図4に示すように、ユーザは、バッテリホルダ50へ、バッテリパック100を一つだけ取り付けることもできる。この場合でも、バッテリ接続回路72は、その一つのバッテリパック100を、モータコントローラ78(即ち、モータ38)へ電気的に接続することができる。そのことから、ユーザは、予定する電動自転車10の使用形態に応じて、使用するバッテリパック100の数を調整することができる。例えば、電動自転車10によって長距離の移動を予定する場合、ユーザは、二つのバッテリパック100を使用することで、電動自転車10の最大航続距離を長くすることができる。一方、電動自転車10によって短距離の移動を予定する場合、ユーザは、バッテリパック100を一つだけ使用することで、電動自転車10の重量を軽くすることができる。電動自転車10の重量が軽くなることで、モータ38によるエネルギー消費が抑制される。
【0023】
図3、図4に示すように、バッテリ接続回路72は、複数のダイオード74を備えている。複数のダイオード74は、整流素子であり、バッテリパック100に逆電流が流れることを防止する。この構成によると、二つのバッテリパック100の間で出力電圧に差が生じた場合でも、低電圧のバッテリパック100に逆電流が流れることを防止することができる。そのことから、例えば一方のバッテリパック100の充電が尽きたとしても、電動自転車10は走行し続けることができる。充電が尽きたバッテリパック100を、バッテリホルダ50から取り外さなくてもよい。
【0024】
次に、バッテリホルダ50の配置について説明する。図1に示すように、バッテリホルダ50は、後輪32の回転軸32aの上方に配置されている。特に、本実施例では、バッテリホルダ50に二つのバッテリパック100を取り付けたときに、一つのバッテリパック100の重心が、後輪32の回転軸32aを含む鉛直面Aに対して前方側に位置し、他の一つのバッテリパック100の重心が、当該鉛直面Aに対して後方側に位置する。このような構成によると、二つのバッテリパック100の重量が、主に後輪32へ負荷される。その結果、後輪32の地面への接地圧が高まり、後輪32が地面を強くグリップすることができる。ここで、後輪32は、モータ38のトルクが加えられる駆動輪である。駆動輪である後輪32のグリップ力が高まることで、後輪32のスリップが防止され、モータ38によるエネルギーの消費を抑制することができる。
【0025】
さらに、本実施例の電動自転車10では、後輪32の上方に荷台20が設けられており、バッテリホルダ50が後輪32と荷台20の間に配置されている。この構成によると、バッテリパック100の重量だけでなく、荷台20に積載された荷物の重量によっても、後輪32の地面に対するグリップ力を高めることができる。また、バッテリホルダ50が荷台20よりも下方に配置されているので、バッテリパック100の重量によって、電動自転車10の重心を比較的に低くすることができる。
【0026】
次に、バッテリホルダ50の構造について説明する。図5はバッテリホルダ50の正面図であり、図6、図7はバッテリホルダ50の側面図を示している。図8は、図5中のVIII−VIII線における断面図を示している。なお、バッテリホルダ50の正面は、電動自転車10の側方を向いている。また、図5、図6、図8はバッテリホルダ50が開いた状態を示しており、図7はバッテリホルダ50が閉じた状態を示している。通常、電動自転車10は、バッテリホルダ50を閉じた状態で使用される。
【0027】
バッテリホルダ50は、ケーシング52と、ケーシング52の開口52aを塞ぐカバー54を備えている。ケーシング52は、二つのバッテリパック100を収容可能であり、二つのバッテリパック100は、ケーシング52の開口52aから出し入れされる。ケーシング52の内部には、二つのバッテリ受入部60が設けられている。各々のバッテリ受入部60は、一つのバッテリパック100を着脱可能に受け入れる。二つのバッテリ受入部60は、ケーシング52の開口52aに沿って並んでいる。従って、各々のバッテリ受入部60では、バッテリパック100の着脱を独立して行うことができる。即ち、一方のバッテリパック100を取り付けたままで、他方のバッテリパック100を取り付け、及び取り外すことができる。図7に示すように、カバー54を閉じると、バッテリホルダ50は、二つのバッテリパック100を完全に収容する。
【0028】
バッテリパック100には、可動フック102と、解除ボタン104が設けられている。可動フック102は、バッテリパック100に対して、突出するように付勢されている。解除ボタン104は、可動フック102と一体に形成されており、解除ボタン104を押すと、可動フック102は押し下げられる。可動フック102は、本来、電動工具と係合して、バッテリパック100を電動工具にロックするロック部材である。一方、各々のバッテリ受入部60には、フック係合穴62とばね部材64が設けられている。フック係合穴62は、バッテリパック100に向けて開口している。ばね部材64は、バッテリパック100に当接する位置に設けられている。バッテリパック100がバッテリ受入部60に取り付けられると、可動フック102がフック係合穴62に係合する。それにより、バッテリパック100がバッテリ受入部60にロックされる。このとき、ばね部材64は、バッテリパック100によって圧縮されており、バッテリパック100をケーシング52の開口52aに向けて付勢する。即ち、バッテリパック100は、ばね部材64によって、その取り出し方向に向けて付勢される。
【0029】
バッテリホルダ50からバッテリパック100を取り出す場合、ユーザは、カバー54を開け、バッテリパック100の解除ボタン104を押す。図9に示すように、バッテリパック100の解除ボタン104が押されると、バッテリパック100の可動フック102が、バッテリ受入部60のフック係合穴62から離脱する。それにより、バッテリパック100のロックが解除される。バッテリパック100のロックが解除されると、ばね部材64の付勢力により、バッテリパック100はケーシング52の開口52aに向けて移動する。その結果、バッテリパック100は、ケーシング52の開口52aから大きく突出する。ユーザは、ケーシング52の内部へ指を入れることなく、バッテリパック100を容易に取り出すことができる。ケーシング52とバッテリパック100の間にユーザが指を入れるための空間を設ける必要がないので、ケーシング52をコンパクトに設計することができる。
【0030】
以上のように、本実施例の電動自転車10では、第1の特徴として、バッテリホルダ50が二つのバッテリパック100を着脱可能であるとともに、回路ユニット70が、バッテリホルダ50に取り付けられたバッテリパック100を、その数にかかわらず、モータ38へ電気的に接続することができる。この構成により、ユーザは、予定する電動自転車10の使用形態に応じて、使用するバッテリパック100の数を調整することができる。
【0031】
また、本実施例の電動自転車10では、第2の特徴として、バッテリホルダ50が、駆動輪である後輪32の上方(詳しくは、後輪32の回転軸32aの上方)に配置されている。そして、バッテリホルダ50へ二つのバッテリパック100を取り付けたときに、一方のバッテリパック100の重心が、後輪32の回転軸32aを含む鉛直面Aに対して前方側に位置し、他方のバッテリパック100の重心が、当該鉛直面Aに対して後方側に位置する。この構成によると、二つのバッテリパック100の重量が主に後輪32に負荷され、後輪32のグリップ力を高めることができる。後輪32のグリップ力が高まることで、モータ38によるエネルギーの消費を抑制することができる。
【0032】
さらに、本実施例の電動自転車10では、第3の特徴として、バッテリホルダ50の各々のバッテリ受入部60が、取り付けられたバッテリパック100に係合し、かつ、その係合を解除可能なフック係合穴62と、取り付けられたバッテリパック100を取り出し方向に向けて付勢するばね部材64を、有している。この構成により、ユーザがフック係合穴62による係合を解除すると、ばね部材64がバッテリパック100をその取り出し方向へ移動させる。それにより、ユーザは、バッテリホルダ50からバッテリパック100を容易に取り外すことができる。
【0033】
上記した電動自転車10において、バッテリ接続回路72は、二つのバッテリパック100を直列に接続する直列回路であってもよい。あるいは、図10、図11に示すように、バッテリ接続回路72は、複数のスイッチング回路76をさらに有し、二つのバッテリパック100の接続形態を変更可能に構成することもできる。即ち、このバッテリ接続回路72は、複数のスイッチング回路76を切り替えることによって、二つのバッテリパック100を並列に接続することもできるし(図10参照)、二つのバッテリパック100を直列に接続することもできる(図11参照)。このバッテリ接続回路72によれば、二つのバッテリパック100を並列に接続することで、電動自転車10の最大航続距離を長くすることでき、二つのバッテリパック100を直列に接続することで、電動自転車10の最大出力を大きくすることができる。例えば、ユーザが操作ユニット44によって「長距離モード」と「高出力モード」を選択可能とし、「長距離モード」が選択された場合は二つのバッテリパック100を並列に接続し、「高出力モード」が選択された場合は二つのバッテリパック100を直列に接続する、構成とすることもできる。
【0034】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
【0035】
例えば、上記の実施例で説明した技術は、電動自転車10に限られず、他の種類の電動車にも同様に適用することができる。即ち、実施例で説明した技術は、バッテリパックを電源とするモータによって車輪にトルクを加える様々な装置へ、広く採用することができる。この場合、車輪の数、モータの数、乗車の可否、他の原動機の存在は、特に限定されない。
【0036】
本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組み合わせによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時の請求項に記載の組み合わせに限定されるものではない。本明細書または図面に例示した技術は複数の目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0037】
10:電動自転車
12:メインフレーム
14:ステアリングコラム
16:ハンドル
18:サドル
20:荷台
30:前輪
32:後輪
32a:後輪の回転軸
34:ペダル
36:チェーン
38:モータ
40:踏力センサ
42:車速センサ
44:操作ユニット
50:バッテリホルダ
60:バッテリ受入部
62:フック係合穴
64:ばね部材
70:回路ユニット
100:バッテリパック
102:可動フック
104:解除ボタン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車体と、
前記車体に設けられている駆動輪と、
前記駆動輪にトルクを加えるモータと、
複数のバッテリパックが着脱可能なバッテリホルダと、
前記バッテリホルダに取り付けられたバッテリパックからモータへ電力を供給する回路ユニットを備え、
前記回路ユニットは、前記バッテリホルダに取り付けられたバッテリパックを、その数にかかわらず、前記モータへ電気的に接続可能であることを特徴とする電動車。
【請求項2】
前記回路ユニットは、前記バッテリホルダに取り付けられた複数のバッテリパックを、並列に接続可能であることを特徴とする請求項1に記載の電動車。
【請求項3】
前記回路ユニットは、前記バッテリホルダに取り付けられたバッテリパックへの逆電流を防止する整流素子を備えることを特徴とする請求項1又は2に記載の電動車。
【請求項4】
前記回路ユニットは、前記バッテリホルダに取り付けられた複数のバッテリパックを、直列に接続可能であることを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の電動車。
【請求項5】
前記バッテリホルダは、前記駆動輪の上方に位置することを特徴とする請求項1から4のいずれか一項に記載の電動車。
【請求項6】
前記バッテリホルダに複数のバッテリパックを取り付けたときに、少なくとも一つのバッテリパックの重心が、駆動輪の回転軸を含む鉛直面に対して一方側に位置し、他の少なくとも一つのバッテリパックの重心が、当該鉛直面に対して他方側に位置することを特徴とする請求項5に記載の電動車。
【請求項7】
前記電動車は、前記駆動輪の上方に配置された荷台をさらに備え、
前記バッテリホルダは、前記駆動輪と前記荷台の間に配置されていることを特徴とする請求項5又は6に記載の電動車。
【請求項8】
前記バッテリホルダは、各々がバッテリパックを着脱可能な複数のバッテリ受入部を有し、
各々のバッテリ受入部が、取り付けられたバッテリパックに係合し、かつ、その係合を解除可能なロック部と、取り付けられたバッテリパックを取り外し方向へ付勢する付勢部材と、を有することを特徴とする請求項1から7のいずれか一項に記載の電動車。
【請求項9】
前記電動車は電動自転車であり、ユーザが力を加えるペダルと、ペダルに加えられた力を前記駆動輪又は他の車輪に伝達する人力伝達機構をさらに備える請求項1から8のいずれか一項に記載の電動車。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−235749(P2011−235749A)
【公開日】平成23年11月24日(2011.11.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−108484(P2010−108484)
【出願日】平成22年5月10日(2010.5.10)
【出願人】(000137292)株式会社マキタ (1,210)