説明

バッテリ保護装置

【課題】バッテリと接続している車両構成要素毎の状態や電流の入出力を把握することを要することなくバッテリを保護する。
【解決手段】ハイブリッドシステムは、バッテリ電流値を検出するバッテリ電流センサ10と、バッテリの状態に応じてバッテリに対する入出力電流を制限する電流制限値を設定する電流制限値設定部21と、電流制限値設定部21が設定した電流制限値とバッテリ電流センサ10が検出したバッテリ電流値との比を算出する制限電流比算出部22と、制限電流比算出部22が算出した比を基にバッテリに対して電流の入出力を行う各車両構成要素の駆動のための要求値を制限する制限係数を算出する要求制限係数算出部23と、各車両構成要素に対する各要求値と要求制限係数算出部23が算出した制限係数との各乗算値を各車両構成要素それぞれを駆動制御するための最終的な要求値として算出する最終要求値算出部25と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハイブリッド車両が搭載するバッテリの保護に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、エンジンのほかにモータで駆動し燃費向上を目的とするハイブリッド車両では、車両に搭載されているバッテリの電力で、モータ駆動分やその他の必要な電力分を補い、また、減速時にはその運動エネルギーを回生電力としてバッテリに充電するといった充放電制御が行われている。
このようなハイブリッド車両では、バッテリ残量が極端に少ない場合に、さらに放電が進んでしまうと走行や車両システムの維持が困難になる、又は、バッテリの充放電量の過剰な状態が長時間続くと、バッテリ性能の劣化や故障の原因となってしまう恐れがある。
【0003】
そのため、ハイブリッド車両では、バッテリ保護の観点から電流の入出量を制限する制御方法が必要となる。このような制御方法として、システムを統括する上位コントローラが電流の入出力を制限する制御方法がある(例えば特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−193630号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、システムを統括する上位コントローラが電流の入出力を制限する制御方法では、バッテリと接続しているコンポーネント(車両構成要素)毎の状態や電流の入出力を把握する必要があったため、バッテリと接続されるコンポーネントが多ければ多いほど、上位コントローラが把握する情報も増し、その制御方法が複雑化してしまう恐れがある。
本発明は、バッテリと接続している車両構成要素毎の状態や電流の入出力を把握することを要することなくバッテリを保護することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記課題を解決するために、(1)本発明の一態様では、エンジンと、前記エンジンによって駆動され要求値を基に制御される発電モータと、要求値を基に制御され駆動輪を駆動する駆動モータと、前記発電モータの発電電力及び前記駆動モータの回生電力を蓄え前記駆動モータに力行電力を供給するバッテリとを備える車両の前記バッテリを保護するバッテリ保護装置において、前記バッテリに対する入出力電流の指標値を取得するバッテリ入出力電流指標値取得手段と、前記バッテリの状態に応じて前記バッテリに対する入出力電流を制限する制限値を設定する制限値設定手段と、前記制限値設定手段が設定した制限値と前記バッテリ入出力電流指標値取得手段が取得した指標値との比を算出する比算出手段と、前記比算出手段が算出した比を基に前記バッテリに対して電流の入出力を行う前記発電モータ及び前記駆動モータを少なくとも含む各車両構成要素の駆動のための要求値を制限する制限係数を算出する制限係数算出手段と、前記各車両構成要素に対する各要求値と前記制限係数算出手段が算出した制限係数との各乗算値を前記各車両構成要素それぞれを駆動制御するための最終的な要求値として算出する最終要求値算出手段と、を備えることを特徴とするバッテリ保護装置を提供できる。
【0007】
(2)本発明の一態様では、前記バッテリ入出力電流指標値取得手段は、バッテリ電流値を前記指標値として取得し、前記制限値設定手段は、前記バッテリに対する入出力電流を制限する電流値を前記制限値として設定し、前記比算出手段は、前記制限値設定手段が設定した制限値と前記バッテリ入出力電流指標値取得手段が取得したバッテリ電流値との比を算出する。
【0008】
(3)本発明の一態様では、前記バッテリ入出力電流指標値取得手段は、バッテリ電流値とバッテリ電圧値との乗算値を前記指標値として検出し、前記制限値設定手段は、前記バッテリに対する入出力電力を制限する電力値を前記制限値として設定し、前記比算出手段は、前記制限値設定手段が設定した制限値と前記バッテリ入出力電流指標値取得手段が取得した乗算値との比を算出する。
【0009】
(4)本発明の一態様では、前記電流比算出手段は、前記バッテリ電流値が前記電流制限値に近いほど前記比を大きくし、前記制限係数算出手段は、前記比が大きいほど前記要求制限係数を小さくする。
(5)本発明の一態様では、前記制限係数算出手段は、前記各車両構成要素毎に前記制限係数を算出する。
【発明の効果】
【0010】
(1)の態様の発明によれば、発電モータ及び駆動モータ等のバッテリに対して電流の入出力を行う各車両構成要素毎の状態や電流の入出力を監視することなく、バッテリに対する入出力電流を制限してバッテリを保護できる。
(2)の態様の発明によれば、バッテリ電流値を用いることで簡易にバッテリに対する入出力電流を制限できる。
(3)の態様の発明によれば、バッテリに対する入出力電力を用いることで簡易にバッテリに対する入出力電流を制限できる。
【0011】
(4)の態様の発明によれば、バッテリ電流値が電流制限値に近いほど制限係数を小さくするため、制限係数を用いて算出される最終的な要求値も小さくなる。これにより、本発明では、バッテリ電流値が電流制限値に近いほど、各車両構成要素に対する最終的な要求値が小さくなるように制限される。よって、本発明では、バッテリ電流値が電流制限値に近いほど、バッテリに対する入出力電流を抑えることができる。
(5)の態様の発明によれば、各車両構成要素毎にバッテリに対する入出力電流の制限ができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本実施形態のシリーズ式ハイブリッド車両のハイブリッドシステムの構成例を示す図である。
【図2】ハイブリッドコントローラ(ECU)の構成例を示すブロック図である。
【図3】ハイブリッドコントローラ(ECU)の具体的な構成例を示す図である。
【図4】制限電流比と要求制限係数との関係の一例を示す特性図である。
【図5】ハイブリッドコントローラ(ECU)の動作等の説明に使用する図である。
【図6】複数のコンポーネントの要求値を制限する説明に使用する図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本発明の実施形態を図面を参照しつつ説明する。
本実施形態は、シリーズ式ハイブリッド車両のハイブリッドシステムである。
(構成)
図1は、シリーズ式ハイブリッド車両のハイブリッドシステム1の構成例を示す図である。図1に示すように、シリーズ式ハイブリッド車両のハイブリッドシステム1では、エンジン2の出力軸と発電用モータ3の入力軸を直列につなぎ、発電用モータ3の発電電力又はバッテリ4からの放電電力で駆動用モータ5を回転させて駆動輪31,32を駆動する構成になっている。
【0014】
図1に示すように、ハイブリッドシステム1を搭載する車両は、エンジン2、発電用モータ3、バッテリ(例えば高電圧バッテリ)4、駆動用モータ5、発電モータインバータ6、駆動モータインバータ7、エンジンコントローラ8、充電器9、バッテリ電流センサ10、及びECU(Electronic Control Unit)20を有している。
このような構成において、バッテリ電流センサ10は、バッテリ4の実電流を検出する。そして、バッテリ電流センサ10は、検出値をECU20に出力する。なお、図示しないが、車両は、ハイブリッドシステム1を構築する様々なセンサ、例えば、発電用モータ3及び駆動用モータ5のモータ回転数を検出するセンサ等を有している。
【0015】
ECU20は、マイクロコンピュータ及びその周辺回路を備えるコントローラにおいて構成されている。例えば、ECU20は、CPU、ROM、RAM等によって構成されている。そして、ROMには、各種処理を実現する1又は2以上のプログラムが格納されている。CPUは、ROMに格納されている1又は2以上のプログラムに従って各種処理を実行する。本実施形態では、例えば、ECU20は、ハイブリッドコントローラである。
【0016】
このECU(以下、ハイブリッドコントローラという。)20は、バッテリ電流センサ10等からのセンサ検出値を基に、エンジン2、発電用モータ3、及び駆動用モータ5について各種の駆動制御を行う。そのために、ハイブリッドコントローラ20は、エンジン2の駆動制御に際してエンジンコントローラ8にエンジン駆動要求を出力する。また、ハイブリッドコントローラ20は、発電用モータ3の駆動制御に際して発電モータインバータ6に発電用モータトルク要求を出力する。また、ハイブリッドコントローラ20は、駆動用モータ5の駆動制御に際して駆動モータインバータ7に駆動モータトルク要求を出力する。
【0017】
そして、本実施形態では、ハイブリッドコントローラ20は、バッテリ4に対する入出力(充放電)を制限すべくバッテリ4に接続されている各コンポーネント(発電用モータ3、駆動用モータ5、充電器9等)の駆動を制限する処理を行う。この制限処理については後で詳述する。
エンジンコントローラ8は、マイクロコンピュータ及びその周辺回路を備えるコントローラにおいて構成されている。例えば、エンジンコントローラ8は、一般的なECUと同様に、CPU、ROM、RAM等によって構成されている。そして、ROMには、各種処理を実現する1又は2以上のプログラムが格納されている。CPUは、ROMに格納されている1又は2以上のプログラムに従って各種処理を実行する。
【0018】
このエンジンコントローラ8は、ハイブリッドコントローラ20からのエンジン駆動要求を実現するようにエンジン2の回転数及びトルクを制御する。エンジンコントローラ8は、例えば、エンジン2のスロットルバルブのスロットル開度、燃料噴射量等を制御してエンジン2の回転数及びトルクを制御する。
また、発電モータインバータ6は、発電用モータ3を駆動制御する。具体的には、発電モータインバータ6は、ハイブリッドコントローラ20からの要求トルク(本実施形態では最終要求トルク)を基に、各相毎の駆動電流によって発電用モータ3の各相を制御し、発電用モータ3の発電制御を行う。
【0019】
発電用モータ3は、回転軸がエンジン2の出力軸に接続されている。これにより、発電用モータ3は、エンジン2の駆動力によって電力を発生する。発電用モータ3は、発電電力をバッテリ4又は駆動用モータ5に供給する。バッテリ4は、発電用モータ3及び駆動用モータ5に接続されており、発電用モータ3の発電電力又は駆動用モータ5の発電電力(回生電力)によって充電される。
【0020】
また、駆動モータインバータ7は、駆動用モータ5を駆動制御する。具体的には、駆動モータインバータ7は、ハイブリッドコントローラ20からの要求トルク(本実施形態では最終要求トルク)を基に、各相毎の駆動電流によって駆動用モータ5の各相を制御し、駆動用モータ5の力行制御又は回生制御を行う。
駆動用モータ5は、駆動輪31,32に連絡する駆動軸に接続されている。この駆動用モータ5は、発電用モータ3の発電電力又はバッテリ4から出力される電力(放電電力)により駆動される。これにより、駆動用モータ5は、駆動軸を駆動して駆動輪31,32を駆動する。
【0021】
充電器9は、商用電源からバッテリ4を充電するためのものである。充電器9は、例えば、ハイブリッドコントローラ20等の上位コントローラによって充電制御される。これにより、上位コントローラは、充電制御時の要求に応じて、充電器9についてバッテリ4への充電量や充電時間等を制御する。
次に、本実施形態におけるハイブリッドコントローラ20の前記制限処理の一例を説明する。
【0022】
図2は、制限処理のためのハイブリッドコントローラ20における構成例を示す図である。
図2に示すように、ハイブリッドコントローラ20は、電流制限値設定部21、制限電流比算出部22、要求制限係数算出部23、コンポーネント用係数設定部24、及び最終要求値算出部25を備える。
【0023】
電流制限値設定部21は、バッテリ4に対する入出力電流を制限する電流制限値を設定する。そして、電流制限値設定部21は、設定した電流制限値を制限電流比算出部22に出力する。
ここで、電流制限値設定部21では、バッテリ電流値の入出力を示す符号と同一の符号を用いて電流制限値を設定する。ここで、バッテリ電流値(入出力電流値)は、電流の入出力方向に応じて+又は−の符号を用いて表される値である。例えば、バッテリ4から電流を出力(放電)する場合の電流値が+の電流値であり、バッテリ4に電流が入力(充電)される場合の電流値が−の電流値である。このようなことから、電流制限値設定部21は、バッテリ電流値の入出力を示す符号と同一の符号となるように、この例では、バッテリ4からの電流の出力を制限する電流制限値を+の値として、バッテリ4への電流の入力を制限する電流制限値を−の値として設定する。
【0024】
また、以上のような符号の場合には、発電用モータ3に対して発電要求をするとき、駆動用モータ5に対して回生要求をするとき、及び充電器9に対して充電要求をするときは、バッテリ4への入力になるため、−の符号の電流制限値による制限を受ける。また、駆動用モータ5に対して力行要求をするとき、バッテリ4からの出力になるため、+の符号の電流制限値による制限を受ける。よって、駆動用モータ5については、力行動作及び回生動作によって、+及び−の両方の符号の電流制限値によって制限を受ける。
【0025】
さらに、電流制限値設定部21は、例えば、バッテリ4の状態、例えばバッテリ4の液温、バッテリ4のSOC(State Of Charge)等を基に電流制限値を設定する。例えば、バッテリ充電時にバッテリ4の液温が低いとバッテリ4への入力電流を大きくすることができないことから、電流制限値設定部21は、バッテリ4の液温が低いほど、バッテリ4への入力電流をより制限する値に電流制限値を設定する。
【0026】
制限電流比算出部22は、バッテリ電流センサ10が検出したバッテリ電流値(実電流値)と電流制限値設定部21が設定した電流制限値との比(本実施形態では、バッテリ電流値/電流制限値、以下、制限電流比という。)を算出する。そして、制限電流比算出部22は、算出した制限電流比を要求制限係数算出部23に出力する。
要求制限係数算出部23は、制限電流比算出部22が算出した制限電流比に対応する要求制限係数を算出する。そして、要求制限係数算出部23は、算出した要求制限係数を最終要求値算出部25に出力する。
【0027】
最終要求値算出部25は、コンポーネントに対する要求値及び要求制限係数を基に、最終的な要求値である最終要求値を算出する。このとき、最終要求値算出部25は、コンポーネント用係数設定部24が設定した各コンポーネント毎の係数(例えば係数≦1)をも用いて最終要求値を算出する。コンポーネント用係数設定部24は、例えば、テーブル等の態様によって、各コンポーネントに対応する係数を保持している。
【0028】
図3は、ハイブリッドコントローラ20の構成のより具体的な例であり、特に、制限電流比算出部22、要求制限係数算出部23、及び最終要求値算出部25の具体例を示す図である。
図3に示すように、制限電流比算出部22は、除算部22であり、要求制限係数算出部23は、テーブルを有した演算部23であり、最終要求値算出部25は、乗算部25である。
【0029】
このような構成において、除算部22は、バッテリ電流センサ10からのバッテリ実電流値と電流制限値設定部21からの電流制限値との比である制限電流比(バッテリ実電流値I/電流制限値I)を算出する。そして、除算部22は、算出した制限電流比を演算部23に出力する。
演算部23は、テーブルを参照して除算部22が算出した制限電流比に対応する要求制限係数を算出する。
【0030】
図4は、演算部23が要求制限係数を算出する際に用いるテーブルの一例を示す図である。
図4に示すように、テーブルは、制限電流比と要求制限係数との関係からなり、要求制限係数は、正値(+)で制限電流比が大きいほど1から小さくなる。
また、要求制限係数は、負値(−)で小さくなっても(その絶対値が大きくなっても)、1のままとなる。すなわち、電流制限値によって制限する入出力方向とバッテリ実電流値の符号が示すバッテリ4に対する電流の入出力方向とが異なる場合、制限電流比は、負値(−)になり、この場合、要求制限係数は、制限電流比の大きさ(絶対値の大きさ)にかかわらず常に1になる。
【0031】
演算部23は、このような一例のテーブルを参照して除算部22が算出した制限電流比に対応する要求制限係数を算出する。さらに、演算部23は、算出した要求制限係数と最終要求値の算出するコンポーネントの係数(例えば係数≦1)との乗算値として最終的な要求制限係数を取得する。そして、演算部23は、算出した要求制限係数(≦1)を乗算部25に出力する。
【0032】
乗算部25は、ハイブリッドコントローラ20が算出した要求トルクと演算部23が算出した要求制限係数とを乗算し、最終要求トルクを算出する。
ここで、要求トルク又は最終要求トルクは、発電用モータ3を駆動させるための値(発電トルク)、駆動用モータ5を力行駆動又は回生駆動させるための値(駆動トルク、回生トルク)である。また、充電器9による充電制御のための要求値(充電器出力要求)に対しても、乗算部25は、要求トルクに対する処理と同様に、演算部23が算出した要求制限係数とを乗算し、最終要求値を算出する。
【0033】
ハイブリッドコントローラ20は、このようにして算出した最終要求トルク又は最終要求値をその要求をする発電用モータ3、駆動用モータ5、及び発電器9等のコンポーネント(具体的には各コンポーネントを制御するインバータ等の上位コントローラ)に出力する。
【0034】
(動作等)
次に、ハイブリッドコントローラ20における動作、作用等を図5に示す例を参照して説明する。
ここで、図5(a)は、制限電流比算出部22に入力されるバッテリ電流値Iと電流制限値Iとを示す。また、図5(b)は、そのように入力される値を基に制限電流比算出部22が算出した制限電流比(I/I)を示す。また、図5(c)は、制限電流比算出部22が算出した制限電流比を基に要求制限係数算出部23が算出した要求制限係数を示す。また、図5(d)は、要求トルクTと、要求トルクT及び要求制限係数算出部23が算出した要求制限係数を基に算出した最終要求トルクTとを示す。
【0035】
また、図5に示す例は、電流制限値Iが一定値の場合であり、要求トルクTが一定値の場合の例である。
この図5(a)及び(b)に示すように、ハイブリッドコントローラ20は、電流制限値Iに対してバッテリ電流値Iが下回りその乖離が大きくなると、それに応じて小さい制限電流比を算出する。さらに、図5(c)に示すように、ハイブリッドコントローラ20は、算出した制限電流比に対応する要求制限係数を算出する。そして、図5(d)に示すように、ハイブリッドコントローラ20は、算出した要求制限係数を要求トルクに乗算して最終要求トルクを算出する。
【0036】
これにより、例えば、図5中A及びBに示すように、ハイブリッドコントローラ20は、電流制限値Iに対してバッテリ電流値Iが近づくほど、要求トルクをより小さくした最終要求トルクを算出する。すなわち、ハイブリッドコントローラ20は、電流制限値Iに対してバッテリ電流値Iが近づくほど、要求トルクの制限度合いを大きくする。
【0037】
また、ハイブリッドコントローラ20は、電流制限値Iに対してバッテリ電流値Iが下回りその乖離が大きくなると、要求トルクと同等と最終要求トルクを算出する。すなわち、ハイブリッドコントローラ20は、電流制限値Iに対してバッテリ電流値Iが下回りその乖離が大きくなると、要求トルクの制限度合いを緩くしていく。
また、バッテリ電流値の符号と電流制限値の符号とが異なる場合、すなわち、バッテリ電流値が示す電流の入出力方向と電流制限値が制限する電流の入出力方向とが異なる場合、図4に示すように、要求制限係数が常に1になる。よって、要求トルクは、そのまま最終要求トルクとして制限を受けずに出力される。
【0038】
以上のようにして、ハイブリッドコントローラ20は、バッテリ4に対する入出力電流を制限することができる。そして、ハイブリッドコントローラ20は、電流制限値の設定等によって最終的に算出した要求制限係数によって要求トルクを制限しているため、該要求トルクによる駆動要求対象のコンポーネントの状態や電流の入出力を監視することなく、バッテリ4に対する入出力電流を制限してバッテリ4を保護できる。
【0039】
また、図6は、複数のコンポーネントの要求値(要求トルクも含む)を制限する場合の例を示す図である。そのため、図6に示す例では、最終要求値算出部25に第1〜第nコンポーネント要求値が入力されている。ここで、各コンポーネントは、例えば、発電用モータ3、駆動用モータ5、又は充電器9等である。
図6に示すように、最終要求値算出部(例えば乗算部)25は、第1〜第nコンポーネント要求値、要求制限係数算出部(例えば演算部)23が算出した要求制限係数、及びコンポーネント用係数設定部24が設定した各コンポーネント要求値用の係数を基に、第1〜第nコンポーネント最終要求値を算出する。
【0040】
詳しくは、最終要求値算出部25は、第1コンポーネント要求値に要求制限係数及び第1コンポーネント要求値用係数(例えば係数≦1)を乗算して第1コンポーネント最終要求値を算出する。すなわち、最終要求値算出部25は、要求制限係数と第1コンポーネント要求値用係数(例えば係数≦1)との乗算値を最終的な第1コンポーネント用の要求制限係数とし、その第1コンポーネント用の要求制限係数と第1コンポーネント要求値とを乗算して第1コンポーネント最終要求値を算出する。
【0041】
同様にして、最終要求値算出部25は、第2コンポーネント要求値に要求制限係数及び第2コンポーネント要求値用係数(例えば係数≦1)を乗算して第2コンポーネント最終要求値を算出する。そして、最終要求値算出部25は、第nコンポーネント要求値に要求制限係数及び第nコンポーネント要求値用係数(例えば係数≦1)を乗算して第nコンポーネント最終要求値を算出する。
【0042】
ここで、各コンポーネント要求値用係数は、どのコンポーネントを優先的に動作させるかなどの指標によって決定された優先度等を基に設定されている。
このように、ハイブリッドコントローラ20は、各コンポーネントの要求値に各コンポーネント用の要求制限係数を乗算して各コンポーネントの最終要求値を算出している。この結果、ハイブリッドコントローラ20は、発電用モータ3、駆動用モータ5及び充電器9等のバッテリ4に対する電流の入出力を行う各コンポーネント毎の状態や電流の入出力を監視することなく、各コンポーネントに対して電流の入出力制限ができる。
【0043】
具体的には、図1中に記載しているように、バッテリ4に対する電流の入出量を制限したい場合、発電用モータ3に対しては、発電電力の入力制限をするために、発電要求を制限できる。また、駆動用モータ5に対しては、回生電力の入力制限をする場合には、回生トルク要求を制限でき、力行電力のための出力制限をする場合には、駆動トルク要求を制限できる。また、充電器9に対しては、充電電力の入力制限をするために、充電器出力要求を制限できる。
【0044】
そして、ハイブリッドコントローラは、このような制限によって、バッテリ4に対する入出力電流を制限してバッテリ4を保護できる。
以上の本実施形態の説明において、バッテリ電流センサ10は、例えば、バッテリ入出力電流指標値取得手段を構成する。また、電流制限設定部21は、例えば、制限値設定手段を構成する。また、制限電流比算出部22は、例えば、比算出手段を構成する。また、要求制限係数算出部23は、例えば、制限係数算出手段を構成する。また、最終要求値算出部25は、例えば、最終要求値算出手段を構成する。
【0045】
(本実施形態の変形例)
本実施形態では、発電用モータ2、駆動用モータ5、及び充電器9を具体的に挙げたが、バッテリ4に対する電流の入出力を行うコンポーネントであればこれら具体例に限定されない。
【0046】
また、本実施形態では、要求制限係数算出部23が算出した要求制限係数とコンポーネント用係数設定部24が設定した各コンポーネント要求値用の係数を基に最終的な要求制限係数を算出しているが、これに限定されない。例えば、本実施形態では、コンポーネント用係数設定部24を備えることなく、要求制限係数算出部23が、各コンポーネント毎の制限電流比と要求制限係数との関係からなるテーブルを有し、その各テーブルを参照して、各コンポーネント毎に制限電流比に対応する要求制限係数を取得するようにしても良い。
【0047】
また、本実施形態では、ハイブリッドコントローラ20において、バッテリ電流値とバッテリ電圧値との乗算値である電力値を取得する一方でバッテリ4に対する入出力電力を制限する電力値を制限値として設定し、設定した制限値(電力制限値)と取得した電力値との比(取得電力値/電力制限値)を基に要求制限係数算出部23が要求制限係数を算出することもできる。
【0048】
以上、本発明の実施形態を具体的に説明したが、本発明の範囲は、図示され記載された例示的な実施形態に限定されるものではなく、本発明が目的とするものと均等な効果をもたらすすべての実施形態をも含む。さらに、本発明の範囲は、請求項1により画される発明の特徴の組み合わせに限定されるものではなく、すべての開示されたそれぞれの特徴のうち特定の特徴のあらゆる所望する組み合わせによって画されうる。
【符号の説明】
【0049】
1 ハイブリッドシステム、2 エンジン、3 発電用モータ、4 バッテリ、5 駆動モータ、9 充電器、10 バッテリ電流センサ、20 ハイブリッドコントローラ(ECU)、21 電流制限設定部、22 制限電流比算出部、23 要求制限係数算出部、24 コンポーネント用係数設定部、25 最終要求値算出部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンと、前記エンジンによって駆動され要求値を基に制御される発電モータと、要求値を基に制御され駆動輪を駆動する駆動モータと、前記発電モータの発電電力及び前記駆動モータの回生電力を蓄え前記駆動モータに力行電力を供給するバッテリとを備える車両の前記バッテリを保護するバッテリ保護装置において、
前記バッテリに対する入出力電流の指標値を取得するバッテリ入出力電流指標値取得手段と、
前記バッテリの状態に応じて前記バッテリに対する入出力電流を制限する制限値を設定する制限値設定手段と、
前記制限値設定手段が設定した制限値と前記バッテリ入出力電流指標値取得手段が取得した指標値との比を算出する比算出手段と、
前記比算出手段が算出した比を基に前記バッテリに対して電流の入出力を行う前記発電モータ及び前記駆動モータを少なくとも含む各車両構成要素の駆動のための要求値を制限する制限係数を算出する制限係数算出手段と、
前記各車両構成要素に対する各要求値と前記制限係数算出手段が算出した制限係数との各乗算値を前記各車両構成要素それぞれを駆動制御するための最終的な要求値として算出する最終要求値算出手段と、
を備えることを特徴とするバッテリ保護装置。
【請求項2】
前記バッテリ入出力電流指標値取得手段は、バッテリ電流値を前記指標値として取得し、
前記制限値設定手段は、前記バッテリに対する入出力電流を制限する電流値を前記制限値として設定し、
前記比算出手段は、前記制限値設定手段が設定した制限値と前記バッテリ入出力電流指標値取得手段が取得したバッテリ電流値との比を算出することを特徴とする請求項1に記載のバッテリ保護装置。
【請求項3】
前記バッテリ入出力電流指標値取得手段は、バッテリ電流値とバッテリ電圧値との乗算値を前記指標値として取得し、
前記制限値設定手段は、前記バッテリに対する入出力電力を制限する電力値を前記制限値として設定し、
前記比算出手段は、前記制限値設定手段が設定した制限値と前記バッテリ入出力電流指標値取得手段が取得した乗算値との比を算出することを特徴とする請求項1に記載のバッテリ保護装置。
【請求項4】
前記電流比算出手段は、前記バッテリ電流値が前記電流制限値に近いほど前記比を大きくし、
前記制限係数算出手段は、前記比が大きいほど前記要求制限係数を小さくすることを特徴とする請求項1乃至3の何れか1項に記載のバッテリ保護装置。
【請求項5】
前記制限係数算出手段は、前記各車両構成要素毎に前記制限係数を算出することを特徴とする請求項1乃至4の何れか1項に記載のバッテリ保護装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−91459(P2013−91459A)
【公開日】平成25年5月16日(2013.5.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−235550(P2011−235550)
【出願日】平成23年10月27日(2011.10.27)
【出願人】(000002082)スズキ株式会社 (3,196)
【Fターム(参考)】