説明

バッテリ保護IC及びバッテリ装置

【課題】 いかなる個数のバッテリを直列接続しても対応することができ、耐圧が高くならないバッテリ保護IC及びそのバッテリ保護ICを搭載したバッテリ装置を提供する。
【解決手段】 一のバッテリ保護ICにおける充電制御信号入力端子及び放電制御信号入力端子に、クランプ回路121が設けられるので、これらの端子に接続される他のバッテリ保護ICの出力ドライバ112に、耐圧以上の電圧が印加されなくなる。よって、バッテリ保護ICの耐圧が高くならなくてもよくなる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バッテリを保護するバッテリ保護IC及び複数のバッテリ保護ICを搭載したバッテリ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、携帯用電子機器が普及している。通常、この機器は、バッテリ及びバッテリを保護するバッテリ保護ICを搭載したバッテリ装置によって駆動している。複数のバッテリが直列接続または並列接続されることにより、バッテリ装置は携帯用電子機器によって要求される携帯用電子機器の電源電圧を発生し、その電源電圧によって携帯用電子機器は動作している。
【0003】
ここで、いかなる個数のバッテリを直列接続しても対応することができるバッテリ保護ICが提案されている。この提案では、複数のバッテリからなるブロックを保護するバッテリ保護ICが複数使用され、これらの複数のバッテリ保護ICがカスケード接続して互いに通信している(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−117780号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1によって開示された技術では、各バッテリ保護IC内部の所定のトランジスタ(例えば、出力段のトランジスタ)に対し、最大で直列接続している全てのバッテリの電池電圧の合計電圧が印加されてしまう。よって、バッテリ保護ICの耐圧が合計電圧分だけ必要になってしまう。
本発明は、上記課題に鑑みてなされ、いかなる個数のバッテリを直列接続しても対応することができ、耐圧が高くならないバッテリ保護IC及び複数のバッテリ保護ICを搭載したバッテリ装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するため、バッテリを保護するバッテリ保護ICにおいて、充電器からバッテリへの充電を制御する充電制御信号を出力する充電制御信号出力端子と、前記バッテリの電池電圧を監視し、前記電池電圧が過充電検出電圧以上になると、その旨を検出し、検出信号を出力する電圧監視回路と、前記検出信号が出力されると、オフすることによって充電電流を遮断させる第一導電型の出力ドライバと、外部に抵抗が接続され、充電制御信号が入力する充電制御信号入力端子と、前記抵抗に発生した電圧によって前記充電制御信号入力端子の電圧がソース電圧側に引っ張られていくと、オフし、前記充電制御信号入力端子がオープンになるまたは前記充電制御信号入力端子にハイが入力されると、オンする前記第一導電型のトランジスタと、前記トランジスタのゲート電圧を所定電圧にクランプするクランプ回路と、前記トランジスタがオフすると、オンし、前記トランジスタがオンすると、オフすることによって前記充電電流を遮断させる前記出力ドライバと、を備えていることを特徴とするバッテリ保護ICを提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明では、一のバッテリ保護ICにおける充電制御信号入力端子に、クランプ回路が設けられるので、この端子に接続される他のバッテリ保護ICの出力ドライバに、耐圧以上の電圧が印加されなくなる。よって、バッテリ保護ICの耐圧が高くならなくてもよくなる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】バッテリ保護ICを示す図である。
【図2】複数のバッテリ保護ICがカスケード接続されたバッテリ装置を示す図である。
【図3】複数のバッテリ保護ICがカスケード接続されたバッテリ装置を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態を、図面を参照して説明する。
まず、バッテリ保護ICの構成について説明する。図1は、バッテリ保護ICを示す図である。
【0010】
バッテリ保護ICは、リチウムイオンバッテリなどのバッテリ104a〜104dの電池電圧を監視し、バッテリ104a〜104dを保護する。
バッテリ保護ICは、充電制御信号出力端子103、充電制御信号入力端子118及びバッテリ接続端子105〜109を備えている。また、バッテリ保護ICは、電圧監視回路110a〜110d及び制御回路113を備えている。また、バッテリ保護ICは、定電流回路115a〜115c、抵抗115d、NMOS119〜120、NMOS122、保護素子116、抵抗117及びクランプ回路121を備えている。また、バッテリ保護ICは、制御回路114、保護素子111及び出力ドライバ112を備えている。
【0011】
電圧監視回路110a〜110dは、バッテリ接続端子105〜109を介し、バッテリ104a〜104dにそれぞれ接続されている。電圧監視回路110a〜110dの出力端子は、制御回路113の入力端子に接続されている。制御回路113の出力端子は、制御回路114の入力端子に接続されている。
充電制御信号入力端子118は、保護素子116のカソードに接続され、抵抗117を介してNMOS119のソースに接続され、クランプ回路121のアノードに接続され、NMOS122のゲートに接続されている。保護素子116及びクランプ回路121のカソードは、グランド端子に接続されている。NMOS120及びNMOS122のソースは、グランド端子に接続されている。NMOS119のゲートは、NMOS120のゲート及びドレインに接続されている。電源端子とNMOS119のドレインとの間に抵抗115dが設けられ、電源端子とNMOS120のドレインとの間に定電流回路115cが設けられ、電源端子とクランプ回路121のアノードとの間に定電流回路115bが設けられ、電源端子とNMOS122のドレインとの間に定電流回路115aが設けられている。NMOS122のドレインは、制御回路114の入力端子に接続されている。
【0012】
制御回路114の出力端子はNMOS112のゲートに接続されている。NMOS112のソースはグランド端子に接続され、NMOS112のドレインは充電制御信号出力端子103及び保護素子111のカソードに接続されている。保護素子111のアノードはグランド端子に接続されている。充電制御信号出力端子103から出力された、充電を制御する充電制御信号は、充電制御FET101をオンオフ制御している。
【0013】
次に、充電器(図示せず)からバッテリ104a〜104dへの充電を制御する過充電時におけるバッテリ保護ICの動作について説明する。
【0014】
電圧監視回路110a〜110dがバッテリ104a〜104dの電池電圧をそれぞれ監視している。少なくとも一つのバッテリの電池電圧が過充電検出電圧(過度の充電のため、充電を禁止する時の電圧)以上になると、少なくとも一つの電圧監視回路がその旨を検出する。その電圧監視回路は、検出信号を出力ドライバ112のゲートに制御回路113〜114を介して出力する。すると、出力ドライバ112はオフする。充電制御信号出力端子103は、充電制御信号を充電制御FET101のゲートに出力することになる。充電制御FET101のゲート電圧は、抵抗102により、EB+端子に接続された充電器の充電器電圧にプルアップされる。よって、充電制御FET101はオフし、充電電流が遮断される。
【0015】
また、充電制御信号が、充電制御信号入力端子118に入力し、NMOS122の閾値以上の信号が、充電制御信号入力端子118及び抵抗117を介してNMOS122のゲートに印加されると、NMOS122は、オンする。すると、制御回路114の入力端子及び出力端子の電圧はローになり、出力ドライバ112のゲート電圧がローになる。すると、出力ドライバ112はオフする。充電制御信号出力端子103は、充電制御信号を充電制御FET101のゲートに出力することになる。充電制御FET101のゲート電圧は、抵抗102により、EB+端子に接続された充電器の充電器電圧にプルアップされる。よって、充電制御FET101はオフし、充電電流が遮断される。このように、外部から充電制御信号入力端子118が制御され、バッテリ保護ICは充電制御を行うことができる。なお、検出信号が電圧監視回路110a〜110dから出力されていても、出力されていなくても、充電制御信号が充電制御信号入力端子118に入力すると、充電電流が遮断される。
【0016】
次に、バッテリ104a〜104dから負荷(図示せず)への放電を制御する過放電時におけるバッテリ保護ICの動作について説明する。
【0017】
図示しないが、充電制御FET101、抵抗102、放電制御FET及び抵抗が設けられ、バッテリ保護IC内部に充電制御のための上記の回路が二つ設けられている。充電制御のための上記の回路において、一方は上記のように過充電時に充電制御のために動作し、他方は過放電時に放電制御のために動作する。充電制御の場合、バッテリの電池電圧が過充電電圧以上になると、電圧監視回路がその旨を検出し、充電が制御され、放電制御の場合、バッテリの電池電圧が過放電電圧(過度の放電のため、放電を禁止する時の電圧)未満になると、電圧監視回路がその旨を検出し、放電が制御される。これらを用い、バッテリ保護ICは充電制御と同様に放電制御も行うことができる。
【0018】
次に、全てのバッテリの電池電圧が過放電検出電圧以上であって過充電検出電圧未満である通常時におけるバッテリ保護ICの動作について説明する。
【0019】
全ての電圧監視回路は、検出信号を出力ドライバ112のゲートに制御回路113〜114を介して出力しない。すると、出力ドライバ112はオンする。充電制御FET101のゲート電圧は、バッテリ保護ICのグランド電圧になる。よって、充電制御FET101はオンし、充電電流が遮断されない。OLE#LINK3また、バッテリ保護ICは充電制御と同様に放電制御も行い、放電制御FET(図示せず)はオンし、放電電流が遮断されない。
ここで、充電制御信号入力端子118及び放電制御信号入力端子を制御することによって充電制御及び放電制御を行うことができることを利用し、複数のバッテリ保護ICをカスケード接続することにより、さらに複数のバッテリを保護することができる。
【0020】
次に、複数のバッテリ保護ICを搭載し、複数のバッテリ保護ICがカスケード接続されたバッテリ装置の構成について説明する。図2は、複数のバッテリ保護ICがカスケード接続されたバッテリ装置を示す図である。
バッテリ装置は、外部端子EB+及び外部端子EB−を備えている。また、バッテリ装置は、抵抗204、抵抗240、P型の充電制御FET202、P型の放電制御FET201及びバッテリ206a〜206lを備えている。また、バッテリ装置は、バッテリ保護IC226〜228、抵抗211〜212、抵抗217〜218及び抵抗223〜224を備えている。
【0021】
バッテリ保護IC228において、充電制御信号入力端子221がバッテリ保護IC228のグランド端子に抵抗223を介して接続され、放電制御信号入力端子222がバッテリ保護IC228のグランド端子に抵抗224を介して接続されている。また、バッテリ接続端子230kとバッテリ接続端子230lとの間にバッテリ206iが接続され、バッテリ接続端子230lとバッテリ接続端子230mとの間にバッテリ206jが接続され、バッテリ接続端子230mとバッテリ接続端子230nとの間にバッテリ206kが接続され、バッテリ接続端子230nとバッテリ接続端子230oとの間にバッテリ206lが接続されている。バッテリ206i〜206lは、バッテリ保護IC228に並列に設けられている。
【0022】
バッテリ保護IC227において、充電制御信号入力端子215が充電制御信号出力端子219に抵抗217を介して接続され、放電制御信号入力端子216が放電制御信号出力端子220に抵抗218を介して接続されている。また、バッテリ接続端子230fとバッテリ接続端子230gとの間にバッテリ206eが接続され、バッテリ接続端子230gとバッテリ接続端子230hとの間にバッテリ206fが接続され、バッテリ接続端子230hとバッテリ接続端子230iとの間にバッテリ206gが接続され、バッテリ接続端子230iとバッテリ接続端子230jとの間にバッテリ206hが接続されている。バッテリ206e〜206hは、バッテリ保護IC227に並列に設けられている。
【0023】
最上段のバッテリ保護IC226において、充電制御信号入力端子209が充電制御信号出力端子213に抵抗211を介して接続され、放電制御信号入力端子210が放電制御信号出力端子214に抵抗212を介して接続されている。また、バッテリ接続端子230aとバッテリ接続端子230bとの間にバッテリ206aが接続され、バッテリ接続端子230bとバッテリ接続端子230cとの間にバッテリ206bが接続され、バッテリ接続端子230cとバッテリ接続端子230dとの間にバッテリ206cが接続され、バッテリ接続端子230dとバッテリ接続端子230eとの間にバッテリ206dが接続されている。バッテリ206a〜206dは、バッテリ保護IC226に並列に設けられている。また、充電制御FET202のゲートが充電制御信号出力端子207及び抵抗204を介した外部端子EB+に接続され、放電制御FET201のゲートが放電制御信号出力端子208及び抵抗240を介したバッテリ206aの正極端子に接続されている。バッテリ保護IC226において、充電制御信号出力端子207から出力された充電制御信号は、充電制御FET202をオンオフ制御し、放電制御信号出力端子208から出力された、放電を制御する放電制御信号は、放電制御FET201をオンオフ制御している。
【0024】
外部端子EB+は、充電制御FET202及び放電制御FET201を介してバッテリ206aの正極端子に接続されている。バッテリ206a〜206lは、直列接続されている。バッテリ206lの負極端子は、外部端子EB−に接続されている。また、図示しないが、外部端子EB+と外部端子EB−との間に、バッテリ206a〜206lを充電する充電器またはバッテリ206a〜206lによって駆動される負荷が設けられている。
【0025】
次に、通常時におけるバッテリ装置の動作について説明する。
バッテリ206a〜206lの電池電圧が通常であるとき、バッテリ保護IC228、バッテリ保護IC227及びバッテリ保護IC226の出力ドライバ112がオンしている。
【0026】
バッテリ保護IC228とバッテリ保護IC227との関係において、バッテリ保護IC228の出力ドライバ112がオンすると、バッテリ保護IC227のNMOS119のソース電圧(充電制御信号入力端子215の電圧)はソース電圧側(バッテリ保護IC228のグランド電圧側)に引っ張られていく。よって、バッテリ保護IC227のNMOS119におけるゲート電圧とソース電圧との差分電圧が大きくなり、NMOS119に流れる電流が多くなる。すると、バッテリ保護IC227の抵抗115dに流れる電流が、バッテリ保護IC227のNMOS119、バッテリ保護IC227の抵抗117、抵抗217及びバッテリ保護IC228のNMOS112を介し、バッテリ保護IC228のグランド端子に流れる。これらのバッテリ保護IC227の抵抗117及び抵抗217に電圧がバッテリ保護IC228のグランド電圧に基づいて発生し、この電圧により、バッテリ保護IC227のNMOS122のゲート・ソース間電圧はNMOS122の閾値未満に下がり、NMOS122はオフする。すると、バッテリ保護IC227の制御回路114の入力端子及び出力端子の電圧はハイになり、バッテリ保護IC227の出力ドライバ112のゲート電圧がハイになる。すると、やはり、バッテリ保護IC227の出力ドライバ112はオンすることになる。
【0027】
バッテリ保護IC227とバッテリ保護IC226との関係において、バッテリ保護IC227の出力ドライバ112がオンすると、やはり、バッテリ保護IC226の出力ドライバ112もオンすることになる。
【0028】
充電制御FET202のゲート電圧は、バッテリ保護IC226のグランド電圧になる。よって、充電制御FET202はオンし、充電電流が遮断されない。このように、充電制御信号入力端子、放電制御信号入力端子、充電制御信号出力端子及び放電制御信号出力端子が使用されることにより、各バッテリ保護IC間で信号のやり取りが行われる。また、バッテリ装置は充電制御と同様に放電制御も行うことができ、放電制御FET201はオンし、放電電流が遮断されない。
【0029】
ここで、バッテリ保護IC227の抵抗115dに流れる電流の電流値及び抵抗217の抵抗値により、保護素子116、抵抗217及びバッテリ保護IC228の出力ドライバ112を介し、電流がバッテリ保護IC227のグランド端子からバッテリ保護IC228のグランド端子に流れることがある。つまり、保護素子116に順方向電流が流れることがある。順方向電流が流れることにより、保護素子116が破壊することがある。よって、保護素子116に順方向電流が流れ、保護素子116が破壊しないように、バッテリ保護IC227の抵抗115dに流れる電流の電流値及び抵抗217の抵抗値が回路設計される。
【0030】
次に、過充電時におけるバッテリ装置の動作について説明する。
【0031】
バッテリ206a〜206hの電池電圧が通常であるとき、バッテリ保護IC227及びバッテリ保護IC226の出力ドライバ112がオンしている。バッテリ206i〜206lの電池電圧が過充電検出電圧以上である時、バッテリ保護IC228の出力ドライバ112がオフしている。つまり、充電制御信号入力端子215はオープンになっている。
【0032】
充電制御信号入力端子215の電圧は、バッテリ保護IC227の定電流回路115bにより、バッテリ保護IC227の電源電圧付近まで上がろうとする。充電制御信号入力端子215の電圧がバッテリ保護IC227のNMOS122の閾値以上になると、このNMOS122はオンし、バッテリ保護IC227の制御回路114の入力端子及び出力端子の電圧はローになり、バッテリ保護IC227の出力ドライバ112のゲート電圧がローになる。すると、バッテリ保護IC227の出力ドライバ112はオフする。
【0033】
バッテリ保護IC227の出力ドライバ112がオフすると、同様に、バッテリ保護IC226の出力ドライバ112もオフする。充電制御信号出力端子207は、充電制御信号を充電制御FET202のゲートに出力することになる。
充電制御FET202のゲート電圧は、抵抗204により、外部端子EB+に接続された充電器の充電器電圧にプルアップされる。よって、充電制御FET202はオフし、充電電流が遮断される。このように、充電制御信号入力端子、放電制御信号入力端子、充電制御信号出力端子及び放電制御信号出力端子が使用されることにより、各バッテリ保護IC間で電圧監視回路によって検出された検出信号のやり取りが行われ、充電制御が行われる。
【0034】
ここで、充電制御信号入力端子215の電圧がバッテリ保護IC227の電源電圧付近まで上がろうとする時、バッテリ保護IC227内部にクランプ回路121がないと、バッテリ保護IC228の出力ドライバ112(オフしている)のドレイン電圧がバッテリ保護IC227の電源電圧付近まで上がってしまう。つまり、バッテリ保護IC228の出力ドライバ112に、バッテリ206e〜206lの8個分の電池電圧が印加されてしまう。よって、バッテリ206e〜206lの8個分の電池電圧に対応した、高耐圧のバッテリ保護ICが要求されてしまう。
【0035】
しかし、本発明では、バッテリ保護IC227内部にクランプ回路121が設けられているので、バッテリ保護IC228の出力ドライバ112に、バッテリ206e〜206lの8個分の電池電圧が印加されない。よって、バッテリ206e〜206lの8個分の電池電圧に対応した、高耐圧のバッテリ保護ICが要求されず、バッテリの4個分の電池電圧に対応した、バッテリ保護ICが要求されるようになる。NMOS122のゲートに印加される電圧が所定電圧以上になろうとすると、このクランプ回路121はNMOS122のゲート電圧をその所定電圧にクランプするが、クランプ時にNMOS122のゲート電圧(所定電圧)がハイになるよう回路設計されている。つまり、クランプ時にクランプ回路121に発生する電圧は、NMOS122の閾値以上になるよう回路設計されている。
【0036】
次に、過放電時におけるバッテリ装置の動作について説明する。
【0037】
バッテリ装置は充電制御と同様に放電制御も行うことができる。
このようにすると、一のバッテリ保護ICにおける充電制御信号入力端子及び放電制御信号入力端子に、クランプ回路121が設けられるので、これらの端子に接続される他のバッテリ保護ICの出力ドライバ112に、耐圧以上の電圧が印加されなくなる。よって、バッテリ保護ICの耐圧が高くならなくてもよくなり、製造プロセスが複雑にならなくなる。
【0038】
また、1種類のバッテリ保護ICが、製造されることにより、バッテリ保護ICは、バッテリ保護ICを1個使用し、1個のバッテリ保護ICの耐圧以内のバッテリ数を有する電子機器(例えば、ノートパソコン)、及び、バッテリ保護ICを複数個使用し、1個のバッテリ保護ICの耐圧以上のバッテリ数を有する電子機器(例えば、電動工具)の両方に対応することができる。つまり、バッテリ保護ICは、いかなる個数のバッテリを直列接続しても対応することができる。よって、バッテリ保護ICの利便性が高くなる。
【0039】
また、充電制御信号入力端子、放電制御信号入力端子、充電制御信号出力端子及び放電制御信号出力端子が使用されることにより、各バッテリ保護IC間で信号のやり取りが行われるので、バッテリ装置内部に信号通信用のICやトランジスタは不要になり、その分、バッテリ装置内部の部品点数が減る。
また、1個のバッテリ保護ICが4個のバッテリを保護することができる。
また、4個以上のバッテリが設けられても、バッテリ保護ICが複数個使用されることにより、複数のバッテリ保護ICが4個以上のバッテリを保護することができる。
なお、1個のバッテリ保護ICに、4個のバッテリが接続されているが、5個以上または4個未満のバッテリが接続されてもよい。この時、バッテリの数に基づいて電圧監視回路が設けられ、電圧監視回路の数に基づいて制御回路113が回路設計される。
また、バッテリ保護ICが、3個設けられているが、4個以上または3個未満設けられてもよい。
【0040】
また、P型の充電制御FET202及び放電制御FET201が使用されているが、図3に示すように、N型の充電制御FET323及び放電制御FET324が使用されてもよい。この時、充電制御FET202及び放電制御FET201が削除され、充電制御FET323及び放電制御FET324がバッテリ330の負極端子と外部端子EB−との間に設けられる。充電制御FET323のゲートが最上段のバッテリ保護IC327の充電制御信号出力端子319に接続され、放電制御FET324のゲートが最上段のバッテリ保護IC327の放電制御信号出力端子320に接続されている。また、抵抗204が削除され、抵抗321が充電制御FET323のゲートと外部端子EB−との間に設けられ、抵抗240が削除され、抵抗350が放電制御FET324のゲートとバッテリ330の負極端子との間に設けられる。また、抵抗223が削除され、抵抗342がバッテリ保護IC325の電源端子と充電制御信号入力端子340との間に設けられる。また、抵抗224が削除され、抵抗343がバッテリ保護IC325の電源端子と充電制御信号入力端子341との間に設けられる。この時、バッテリ保護IC325〜327内部の充電制御および放電制御のための回路において、NMOS112、NMOS119〜120及びNMOS122はPMOSになり、クランプ回路121などは電源端子側に配置される。
【0041】
また、図示しないが、抵抗204にアノードが接続され、充電制御信号出力端子207にカソードが接続されたダイオードが追加されてもよい。このようにすると、過放電時、例えば、バッテリ206eの正極端子、バッテリ保護IC226のグランド端子、バッテリ保護IC226の出力ドライバ112の寄生ダイオード、バッテリ保護IC226の充電制御信号出力端子207、抵抗204、外部端子EB+及び負荷を介した電流経路で放電電流が遮断される。
【0042】
また、図示しないが、上記と同様に、抵抗321にカソードが接続され、充電制御信号出力端子319にアノードが接続されたダイオードが追加されてもよい。
また、充電制御信号入力端子221及び放電制御信号入力端子222に、バッテリ保護IC228のグランド電圧が抵抗223及び抵抗224を介してそれぞれ入力されているが、充電制御信号及び放電制御信号が外部からそれぞれ入力されるようにしてもよい。
また、図示しないが、上記と同様に、充電制御信号入力端子340及び放電制御信号入力端子341に、バッテリ保護IC325の電源電圧が抵抗342及び抵抗343を介してそれぞれ入力されているが、充電制御信号及び放電制御信号が外部からそれぞれ入力されるようにしてもよい。
【0043】
また、図2で、最上段のバッテリ保護IC226の出力ドライバによる出力回路はオープンドレイン出力回路であり、抵抗240が設けられているが、図示しないが、出力回路がCMOS出力回路になり、抵抗240が削除されてもよい。
また、図3で、最上段のバッテリ保護IC327の出力ドライバによる出力回路はオープンドレイン出力回路であり、抵抗350が設けられているが、図示しないが、出力回路がCMOS出力回路になり、抵抗350が削除されてもよい。
【符号の説明】
【0044】
101 充電制御FET 102 抵抗
103 充電制御信号出力端子 104a〜104d バッテリ
105〜109 バッテリ接続端子 110a〜110d 電圧監視回路
111 保護素子 112 出力ドライバ
113〜114 制御回路 115a〜115c 定電流回路
116 保護素子 115d、117 抵抗
118 充電制御信号入力端子 119〜120、122 NMOS
121 クランプ回路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
カスケード接続して使用され、バッテリの充放電を制御するバッテリ保護ICであって、
前記バッテリの過充電を監視し、検出信号を出力する電圧監視回路と、
前記検出信号に応じて前記バッテリの充電を制御する充電制御信号を出力する出力ドライバと、
前記充電制御信号を出力する充電制御信号出力端子と、
前段のバッテリ保護ICの充電制御信号が入力される充電制御信号入力端子と、
前段のバッテリ保護ICの充電制御信号がゲートに入力される第一トランジスタと、
前記第一トランジスタのゲートに設けられたカレントミラー回路と、を備え
前記カレントミラー回路は、
ゲートとドレインが電流源を介して電源端子に接続され、ソースがグランド端子に接続された第二トランジスタと、
ドレインが前記電源端子に接続され、ゲートが前記第二トランジスタのゲートとドレインに接続され、ソースが前記第一トランジスタのゲートに接続された第三トランジスタと、
を有することを特徴とするバッテリ保護IC。
【請求項2】
前記第一トランジスタのゲートに設けられ、前記充電制御信号入力端子の電圧が所定の電圧より高くならないように制御するクランプ回路を備えた、
ことを特徴とする請求項1記載のバッテリ保護IC。
【請求項3】
請求項1または2記載のバッテリ保護ICを複数カスケード接続してなるバッテリ装置であって、
前記バッテリ保護ICに並列に接続された前記バッテリと、
ゲートが最後段のバッテリ保護ICの前記充電制御信号出力端子に接続され、前記バッテリの充電を制御する充電制御トランジスタと、を備え、
前記充電制御信号入力端子は、前段のバッテリ保護ICの前記充電制御信号出力端子と接続されている、
ことを特徴とするバッテリ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2013−51873(P2013−51873A)
【公開日】平成25年3月14日(2013.3.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−235687(P2012−235687)
【出願日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【分割の表示】特願2007−178838(P2007−178838)の分割
【原出願日】平成19年7月6日(2007.7.6)
【出願人】(000002325)セイコーインスツル株式会社 (3,629)
【Fターム(参考)】