バッファ回路
【目的】本発明の目的は、バイポーラとCMOSを組合わせた、高速、低消費電力のノンインバータ型の複合バッファ回路を提供することにある。
【構成】2つのnpnトランジスタの、コレクタ・エミッタ経路を直列接続し、一方(上側)のnpnトランジスタのベースは入力端子に直流的に接続する。また、他方(下側)のnpnトランジスタの前段に、ソース接地形のMOS回路を設ける。
【効果】npnトランジスタの前段に、低速なソースフォロワ回路を用いない。このため、高速、低消費電力のノンインバータ形バッファ回路が得られる。
【構成】2つのnpnトランジスタの、コレクタ・エミッタ経路を直列接続し、一方(上側)のnpnトランジスタのベースは入力端子に直流的に接続する。また、他方(下側)のnpnトランジスタの前段に、ソース接地形のMOS回路を設ける。
【効果】npnトランジスタの前段に、低速なソースフォロワ回路を用いない。このため、高速、低消費電力のノンインバータ形バッファ回路が得られる。
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、CMOSとバイポーラとを組合わせた低消費電力、高速のバッファ回路に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来からCMOSとバイポーラ、トランジスタとを組合わせてCMOSの低消費電力とバイポーラの高速性とを兼ね備えたバッファ回路を構成しようという試みが知られている。図1はその一例のバッファ回路でインバータである。この種の回路としては、これと異なる構成のものも知られているが、インバータが多い。
【0003】本発明に関連した技術については、アイ・イー・イー・イー・トランザクションズ・オン・エレクトロン・デバイシズ、Vol.ED−16、No.11、1969年11月、第945頁ないし第951頁(IEEE TRANSACTIONS ON ELECTRON DEVICES Vol.ED−16,No11,Nov.1969,pp.945−951)に記載されている。
【0004】また、米国特許第3,609,479号公報(特にFig.9)や、特開昭48−35761号公報(特に第9図)に記載されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】ところで、この種のバッファ回路は、たとえばCMOS論理ゲート回路に付加した高駆動能力の高速、低消費電力の論理ゲートを構成したり、また、LSI内で負荷の軽い回路部分はCMOSのみで構成し、負荷の重い回路にのみこれらのバッファ回路を付加して、全体として高集積、高速、低消費電力のLSIを構成したりするのに適している。たとえば、図2はそのような回路構成の一例であり、CMOSゲート(例として2入力NANDゲートを示している)にバイポーラ・CMOSバッファ回路(たとえば図1の回路)を付加したものである。この回路構成の場合、負荷CL(配線容量および駆動すべき次段ゲートの入力容量の和)が小さい場合(たとえば0.1pF程度の場合)には一般にはCMOSだけで充分に高速であり、バッファ回路を付加すればかえって負荷駆動の応答は遅くなってしまう。しかし、CLが大きく(たとえば1pF程度と)なると、CMOS回路は駆動能力が劣るため非常に遅くなり、遅延時間は軽負荷の時の数倍(たとえば3倍以上)となる。この場合、バイポーラとCMOSの複合バッファ回路を付加することにより、付加回路部分も含めた回路全体の遅延時間を短縮(たとえば、軽負荷時のCMOS回路の2倍程度に)できる。負荷CLが更に大きな場合には、バッファ回路付加による高速化効果は更に大きくなることは言うまでもなかろう。
【0006】なお図1の回路では、回路の下半分にCMOSソースフォロワ回路が含まれている。一般にCMOSソースフォロワ回路は電圧利得をもたず、速度が遅いことが知られている。このため図1の回路は高速動作の点でなお不十分という問題があった。
【0007】ところで、図2に示すように、通常、CMOS論理ゲートは、NANDおよびNORが基本回路となっており、これらのゲートにインバータ回路を組合せると、AND、ORなど、否定を含まない論理となる。図2はその1例を示し、CMOSにより構成されたNANDゲートの出力に、図1に示した如きバイポーラとCMOSの複合のバッファ回路22が接続され、AND回路が得られる。
【0008】しかしながら、このような肯定の論理回路となる組合わせを多用したり、あるいは基本回路としてランダム論理を組むのは困難となる。したがって、これらのバッファ回路として高速、低消費電力のノンインバータ型のバッファ回路が望まれる。
【0009】従って、本発明の目的は、バイポーラとCMOSを組合わせた、高速、低消費電力のノンインバータ型の複合バッファ回路を提供することにある。
【0010】本願発明者等は上記目的を達成するため、バッファ回路の構成方法の検討を行なった。
【0011】図3は本願発明者等による第1の検討回路である。この回路はnチャネルMOSトランジスタQM1及びQM4、pチャネルMOSトランジスタQM2,及びQM3,npnバイポーラトランジスタQB1,QB2からなる。この回路は次のように動作する。まず、入力,出力とも高レベルである状態を考える。この時、QM2,QM3はオフであり、QM1,QM4がオンである。したがってQB2はオフである。また、出力OUTの負荷は容量性なので、定常状態ではQB1も殆んどオフである。この状態のもとで出力OUTが何かの原因(たとえば出力に接続される負荷のリーク電流等)で低レベルとなったとするとQM1を経てQB1にベース電流が供給され出力OUTは高レベルに保たれる。OUTが高レベルにある限りほぼQB1はオフであり、従って定常状態では殆んど電流は流れない。次に、入力INが高レベルから低レベルに切換わる状態を考える。切換わった直後は出力OUTはまだ高レベルにある。この状態ではQM2,QM3がオン、QM1,QM4はオフである。QB1のベースに蓄積されていた電荷はQM2により引抜かれQB1はオフとなり、一方、QB2にはQB3を経てベース電流が供給されるのでオンとなる。従って、QB2のコレクタにはそのベース電流のhFE倍の電流が流れるので、出力OUTは急速に低レベルに向かう。出力OUTが低レベルになると、出力OUTからQB2へのベース電流は供給されなくなり、QB2はオフとなる。この状態ではQM2もオンとなっているが、QB1のベース電荷は既に引抜かれているので、電流は流れない。つまり、入出力とも低レベルの定常状態にあっても、電流はリーク電流以外は流れない。次に、入力が低レベルから高レベルへと切換わる場合について考える。入力が切換わった直後は、出力はまだ低レベルにある。従って、QM1はオン、QM2オフ、QM3オフ、QM4オンとなり、QM1を経てQB1にベース電流が供給される一方、QB2のベース電荷はQM4により引抜かれる。従って、QB2は急速にオフとなり、出力OUTはQB1により高レベルへと向かう。出力OUTが完全に高レベルとなるとQM1を経てのベース電流は流れなくなり、最初に説明した状態に戻る。
【0012】以上説明したように、図3の回路では、入出力が高または低レベルに留まっている限りはリーク電流が流れるだけで消費電力は殆んど零であり、電力は切換の過渡時に流れるだけである。従って、全体として消費電力は小さく、CMOSと同じと考えてよい。一方、出力から見るとMOSトランジスタのgmがhFE倍(すなわち約2桁倍)してみえるので、出力の負荷容量が大きくても充分に高速化できる。なお、高速化のためには、QM1(または場合によってはQM3も)はデプリーション型であることが望ましい。
【0013】上記の図3の回路には、トランジスタQM1、QM2からなるCMOSソースフォロワ回路が含まれている。このため図3の回路も高速動作の点でなお不十分である。
【0014】図4は本願発明者等による第2の検討回路である。この回路と図3の回路との違いは、図3で出力OUTに接続されていたQM2のドレーンが図4ではQB2のベースに接続されている点だけである。図4の回路では、入力が高レベルから低レベルへと切換わる時に、QB1のベースから引抜かれた電荷はQB2にベース電流として供給され、従ってその分だけQB2がオンとなる時間が早くなる。その他の動作については、図4と図3は同じである。
【0015】ところで、図3、図4の検討回路では、高速化のためにはQM1はデプリーション型であることが望ましい。デプリーション型でなければ、入力が高レベルであっても、出力を充分に高レベルにする程ベース電流を供給できないからである。従って、出力を充分に高レベルに保つことも高速化することも困難となる。一方、図3、図4の他のMOSトランジスタは一般にエンハンスメント型(勿論、必要に応じてデプリーション型にしてもさしつかえないことは言うまでもない)であるため、図3、図4の実施例の場合、高性能化のためにはエンハンスメント型とデプリーション型の両型のMOSトランジスタを使用することが必要となり、プロセス的に多少複雑となる。
【0016】図4の回路においても、トランジスタQM1、QM2からなるCMOSソースフォロワ回路が含まれている。従って図4の回路も高速動作の点でなお不十分である。
【0017】図5は、本願発明者等による第3の検討回路であり、上述のような欠点が除かれている。
【0018】図5の回路はpチャネルMOSトランジスタQM11,QM12及びQM13、nチャネルMOSトランジスタQM14、npnバイポーラトランジスタQB11及びQB12から成る。
【0019】この回路の動作を簡単に説明する。まず、入力、出力とも高レベルである状態を考える。この時、QM11,QM12,QM13はオフであり、QM14のみがオンである。従って、QB11,QB12ともにオフである。この状態のもとで出力OUTが何かの原因(たとえば出力に接続される負荷のリーク電流等)で低レベルとなったとするとQM12がオンとなりQB11に入力端INからベース電流が供給され出力OUTは高レベルに保たれる。OUTが高レベルにある限りQB11はオフであり、従って定常状態では殆んど電流は流れない。次に、入力INが高レベルから低レベルに切換わる状態を考える。切換わつた直後は出力OUTはまだ高レベルにある。この状態ではQM11,QM13がオン、QM12,QM14はオフである。QB11のベースに蓄積されていた電荷はQM11により引抜かれQB11はオフとなり、一方、QB12にはQM13を経てベース電流が供給されるのでオンとなる。従って、QB12のコレクタにはそのベース電流のhFE倍の電流が流れるので、出力OUTは急速に低レベルに向かう。出力OUTが低レベルになると、出力OUTからQB12へのベース電流は供給されなくなり、QB12はオフとなる。この状態ではQM11,QM12もオンとなっているが、QB11のベース電荷は既に引抜かれているので、電流は流れない。つまり、入出力ともに低レベルの定常状態にあっても、電流はリーク電流以外は流れない。次に、入力が低レベルから高レベルと切換わる場合について考える。入力が切換わった直後は、出力はまだ低レベルにある。従って、QM11はオフ,QM12はオン,QM13はオフ,QM14はオンとなり、QM12を経てQB11にベース電流が供給される一方、QB12のベース電荷はQM14により引抜かれる。従って、QB12は急速にオフとなり、出力OUTはQB11により高レベルへと向かう。出力OUTが完全に高レベルとなるとQM12はオフとなり、最初に説明した状態に戻る。
【0020】以上説明したように図5の回路でも入出力が高または低レベルに留まっている限りはリーク電流が流れるだけで消費電力は殆んど零であり、電流は切換の過渡時に流れるだけである。従って、全体として消費電力は、図3、図4の実施例と同様に、CMOSと同様と考えてよく、また実効的にCMOSゲートのgmがhFE倍されると考えてよいことは、図3、図4の実施例の場合と同じである。
【0021】図6は、本願発明者等による第4の検討回路である。この回路と図5の回路との違いは、図5で出力OUTに接続されていたQM11のドレーンが図6ではQB12のベースに接続されている点だけである。図6R>6の回路では、入力が高レベルから低レベルへと切換わる時に、QB11のベースから引抜かれた電荷はQB12にベース電流として供給され、従ってその分だけQB12がオンとなる時間が早くなる。その他の動作については、図6と図5は同じである。なお、図5、図6の回路では、QB11のベース電流を前段回路が供給しなければならないので、図3、図4の場合に比べ前段に多少大きな駆動能力が必要とされる。
【0022】図5及び図6の回路は、CMOSソースフォロワ回路を含まない。いずれの回路もnpnトランジスタQB11のベースと入力端子INの間は、pチャネルMOSトランジスタQM12のドレイン・ソース電流通路を介して、直流的に結合されている。従って上記のCMOSソースフォロワを用いたバッファ回路より高速である。
【0023】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するための手段は、CMOSとバイポーラトランジスタとを含むバッファ回路と、該バッファ回路の入力に接続されたMOS回路とを具備してなるバイポーラCMOS複合回路であって、上記バッファ回路は、入力端子(IN)と、出力端子(OUT)と、エミッタ−コレクタ電流通路が第1の動作電位点と上記出力端子(OUT)との間に接続された第1のnpnトランジスタ(QB1)と、エミッタ−コレクタ電流通路が上記出力端子(OUT)と第2の動作電位点との間に接続された第2のnpnトランジスタ(QB2)と、ドレイン−ソース電流通路が上記第2のnpnトランジスタ(QB2)のベースと上記出力端子(OUT)との間に接続されたpチャネルMOSトランジスタ(QM3)と、ドレイン−ソース電流通路が上記第2のnpnトランジスタ(QB2)のベースと上記第2の動作電位点との間に接続されたnチャネルMOSトランジスタ(QM4)とを有し、該pチャネルMOSトランジスタ(QM3)は、そのドレインが上記第2のnpnトランジスタ(QB2)のベースの側に、そのソースが上記出力端子(OUT)の側になる向きに接続されてなり、該nチャネルMOSトランジスタ(QM4)は、そのドレインが上記第2のnpnトランジスタ(QB2)のベースの側に、そのソースが上記第2の動作電位点の側になる向きに接続されてなり、上記pチャネルMOSトランジスタ(QM3)と上記nチャネルMOSトランジスタ(QM4)のゲートは共に上記入力端子(IN)に接続されてなり、上記第1のnpnトランジスタ(QB1)のベースは上記入力端子(IN)に直接接続されてなり、上記MOS回路はゲートに入力信号が印加され、ドレインが上記バッファ回路の上記入力端子に接続されたnチャネルMOSトランジスタを有してなることを特徴とするバイポーラCMOS複合回路とすることである。(図7、図8参照。)
【0024】
【作用】上記手段によれば、npnトランジスタQB1のベースを入力端子INに直流的に接続する。このためQB1の前段としてはMOSトランジスタを持たない。従ってQB1の立ち上がりが非常に速くなる。
【0025】また、npnトランジスタQB2の前段の2つのMOSトランジスタが、ソースフォロワではなく、ソース接地回路となっている。従ってこのMOSトランジスタ回路が高速に動作する。
【0026】これらにより、従来技術に比して大幅に高速化されたバッファ回路が得られる。
【0027】
【実施例】図7は本発明の一実施例の回路図である。この実施例では、図3、図4、または図5、図6においてQM1,QM2、またはQM11,QM12をとり去り、QB1またはQB11のべースを直接入力端子に接続した形となっている。この場合、QB1は入力が極く低レベルにある以外の時はオン状態にあるので、入力に乗った雑音は全て出力側に現われるという欠点を有している。しかし、雑音余裕度が充分に確保されている場合には、この回路を使用できる。なおこの回路の動作については、図3〜図6の動作説明から明らかであるので、説明を省く。
【0028】図7の回路もCMOSソースフォロワを用いていないため、高速バッファ回路が得られる効果がある。また後に述べるように、前段にCMOSインバータを接続しても高速回路が得られる効果がある。
【0029】以上説明したきた回路の使用例について簡単に述べる。図8は3入力CMOSNANDゲートAと図6の回路Bとを組み合わせた例で、全体として3入力NAND回路を構成している。この回路の遅延時間を、現在高速バイポーラ論理回路として最も標準的なECL回路の遅延時間と、同一レベルのプロセスを仮定して比較した。その結果、負荷容量1pFに対して、図8の回路の遅延時間はECLとほぼ同一となることがわかった。また、A,B両部分での遅延時間はほぼ等しくECLの遅延時間のそれぞれ約半分であった。また、この時の消費電力はスイッチング・サイクル時間50nsを仮定してECLの約20分の1と極めて僅かである。つまり、図8の回路を使用すれば、消費電力の点からはECLの約20倍高集積のLSIを構成し、単位ゲートの遅延時間を基本的にはECLと同程度にできることになる。
【0030】また、本発明のバッファの使用法として、別のアプローチも可能である。図9はその概念を示したもので、AはCMOSゲートを複数個組合わせた論理回路網であり、B,B´等は本願発明のバッファ回路である。この場合、CMOSゲートの回路網は、各ゲートの負荷が充分軽いと考えられる程度の範囲でまとめられており、各CMOSゲートは軽負荷(つまり負荷ゲートが近くに配置されており、配線容量等が少ない)の条件で動作している。一方、チップ内の遠方に配置されているゲートへの入力を印加するとか、またはファンアウトが多いとかで負荷が重い場合には、信号はバッファ回路B等を介して伝達される。従って、負荷による遅延時間の増加は少ない。このような使用法のいたって簡単な場合を図10に示す。この場合、たとえばI2から入力された信号は、CMOSゲートA1,A3,A4を経てB2でバッファされて出力O2へ出て行く。この場合、A1,A3,A4の負荷は軽いので各々ECLの約1/2の遅延時間で動作する。また、出力O2の負荷が重くても、この部分もECLの約1/2の遅延時間で動作するので、全体としてECLの2倍の遅延時間でゲート3段が動作することになる。この遅延時間の低減は、CMOSゲート回路網部分での縦続ゲート数が多い程大きくなる。しかし、一般にゲート数が多くなると負荷も大きくなるので、どこかに最適点がある。この最適点は、使用するプロセス・テクノロジー、回路設計技術のレベル等で決まる。また、図9に示した使用方法の場合、バイポーラ・CMOSバッファの使用個数が減少するので、バッファ使用によるチップ面積増加も少なく押え得る。また、実際に使用する際には、論理ゲート網に対するバイポーラCMOS複合バッファとしては、ノンインバータ型とインバータ型との両者を組合わせて使うことになろうが、その場合インバータ型のバッファとしては従来型のどのようなものを本発明のバッファと組合わせて使用してもよい。
【0031】図11は本発明の効果を示す計算機シミュレーション結果を示す図である。横軸は負荷容量CL、縦軸はゲート遅延時間tpdである。図11のL2で示した直線は、図7の回路の入力端子(IN)に、図2中の前段のCMOSインバータ回路を付加し、図7の回路の出力端子(OUT)に負荷容量CLを付加した回路に関して計算した特性である。
【0032】図11のL1で示した直線は、図3に示したCMOSソースフォロワを含む第1の検討回路に関して計算した特性である。ここでは前段にインバータ回路は付加しておらず、図3の回路のみによる特性である。この特性は上記のL2よりも遅延時間が大きいという結果が得られている。
【0033】この図から、図7の回路は前段にインバータを付加しても、図3の回路よりさらに遅延時間が小さく、大幅な高速化が図れるという効果が得られる。
【0034】一般にCMOS回路中では、CMOSソースフォロワ回路が遅いため極力インバータ回路を用いる。従って大きな負荷を駆動する場合、出力用のバッファ回路の前段のCMOSゲートはインバータ回路であることが多い。一方CMOSインバータの出力を受けるバッファ回路は、出力の論理の要請に応じてインバータ形およびノンインバータ形の両方が必要とされる。このためインバータ形バッファ回路の前段にCMOSインバータをもつ回路と、ノンインバータ形バッファ回路の前段にCMOSインバータをもつ回路のいずれもが高速であることが望まれる。本発明によれば高速なノンインバータ形バッファ回路が得られる効果がある。なお、本発明においてMOSトランジスタのVTHを変えることにより、速度、消費電力、出力レベルなどを変え得るが、それは設計の問題であり、本発明の範囲内にあることはいうまでもない。
【0035】また、npnトランジスタをpnpトランジスタに変えpチャンネルMOSトランジスタとnチャンネルMOSトランジスタとを入れ替えても、同様な動作をさせ得ることは言うまでもない。
【0036】
【発明の効果】以上のように本願発明により、ノンインバータ型の高速、低消費電力の複合バッファ回路が得られ、もって駆動能力の高い所望の論理回路が容易に構成できるのでその工業的価値は大きい。
【図面の簡単な説明】
【図1】従来のインバータ型のバッファ回路である。
【図2】本発明によるバッファ回路の使用方法を示す図である。
【図3】本願発明者等による第1の検討回路である。
【図4】本願発明者等による第2の検討回路である。
【図5】本願発明者等による第3の検討回路である。
【図6】本願発明者等による第4の検討回路である。
【図7】本発明の一実施例を示す図である。
【図8】本発明のバッファ回路の使用方法の一実施例を示す図である。
【図9】本発明のバッファの使用方法の他の実施例の概念図である。
【図10】図9の概念を具体化した、簡単な使用例である。
【図11】本発明の効果を示す計算機シミュレーションの結果を示す図である。
【符号の説明】
IN…入力端子、OUT…出力端子、QB1,QB2…npnトランジスタ、QM3…pチャネルMOSトランジスタ、QM4…nチャネルMOSトランジスタ。
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、CMOSとバイポーラとを組合わせた低消費電力、高速のバッファ回路に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来からCMOSとバイポーラ、トランジスタとを組合わせてCMOSの低消費電力とバイポーラの高速性とを兼ね備えたバッファ回路を構成しようという試みが知られている。図1はその一例のバッファ回路でインバータである。この種の回路としては、これと異なる構成のものも知られているが、インバータが多い。
【0003】本発明に関連した技術については、アイ・イー・イー・イー・トランザクションズ・オン・エレクトロン・デバイシズ、Vol.ED−16、No.11、1969年11月、第945頁ないし第951頁(IEEE TRANSACTIONS ON ELECTRON DEVICES Vol.ED−16,No11,Nov.1969,pp.945−951)に記載されている。
【0004】また、米国特許第3,609,479号公報(特にFig.9)や、特開昭48−35761号公報(特に第9図)に記載されている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】ところで、この種のバッファ回路は、たとえばCMOS論理ゲート回路に付加した高駆動能力の高速、低消費電力の論理ゲートを構成したり、また、LSI内で負荷の軽い回路部分はCMOSのみで構成し、負荷の重い回路にのみこれらのバッファ回路を付加して、全体として高集積、高速、低消費電力のLSIを構成したりするのに適している。たとえば、図2はそのような回路構成の一例であり、CMOSゲート(例として2入力NANDゲートを示している)にバイポーラ・CMOSバッファ回路(たとえば図1の回路)を付加したものである。この回路構成の場合、負荷CL(配線容量および駆動すべき次段ゲートの入力容量の和)が小さい場合(たとえば0.1pF程度の場合)には一般にはCMOSだけで充分に高速であり、バッファ回路を付加すればかえって負荷駆動の応答は遅くなってしまう。しかし、CLが大きく(たとえば1pF程度と)なると、CMOS回路は駆動能力が劣るため非常に遅くなり、遅延時間は軽負荷の時の数倍(たとえば3倍以上)となる。この場合、バイポーラとCMOSの複合バッファ回路を付加することにより、付加回路部分も含めた回路全体の遅延時間を短縮(たとえば、軽負荷時のCMOS回路の2倍程度に)できる。負荷CLが更に大きな場合には、バッファ回路付加による高速化効果は更に大きくなることは言うまでもなかろう。
【0006】なお図1の回路では、回路の下半分にCMOSソースフォロワ回路が含まれている。一般にCMOSソースフォロワ回路は電圧利得をもたず、速度が遅いことが知られている。このため図1の回路は高速動作の点でなお不十分という問題があった。
【0007】ところで、図2に示すように、通常、CMOS論理ゲートは、NANDおよびNORが基本回路となっており、これらのゲートにインバータ回路を組合せると、AND、ORなど、否定を含まない論理となる。図2はその1例を示し、CMOSにより構成されたNANDゲートの出力に、図1に示した如きバイポーラとCMOSの複合のバッファ回路22が接続され、AND回路が得られる。
【0008】しかしながら、このような肯定の論理回路となる組合わせを多用したり、あるいは基本回路としてランダム論理を組むのは困難となる。したがって、これらのバッファ回路として高速、低消費電力のノンインバータ型のバッファ回路が望まれる。
【0009】従って、本発明の目的は、バイポーラとCMOSを組合わせた、高速、低消費電力のノンインバータ型の複合バッファ回路を提供することにある。
【0010】本願発明者等は上記目的を達成するため、バッファ回路の構成方法の検討を行なった。
【0011】図3は本願発明者等による第1の検討回路である。この回路はnチャネルMOSトランジスタQM1及びQM4、pチャネルMOSトランジスタQM2,及びQM3,npnバイポーラトランジスタQB1,QB2からなる。この回路は次のように動作する。まず、入力,出力とも高レベルである状態を考える。この時、QM2,QM3はオフであり、QM1,QM4がオンである。したがってQB2はオフである。また、出力OUTの負荷は容量性なので、定常状態ではQB1も殆んどオフである。この状態のもとで出力OUTが何かの原因(たとえば出力に接続される負荷のリーク電流等)で低レベルとなったとするとQM1を経てQB1にベース電流が供給され出力OUTは高レベルに保たれる。OUTが高レベルにある限りほぼQB1はオフであり、従って定常状態では殆んど電流は流れない。次に、入力INが高レベルから低レベルに切換わる状態を考える。切換わった直後は出力OUTはまだ高レベルにある。この状態ではQM2,QM3がオン、QM1,QM4はオフである。QB1のベースに蓄積されていた電荷はQM2により引抜かれQB1はオフとなり、一方、QB2にはQB3を経てベース電流が供給されるのでオンとなる。従って、QB2のコレクタにはそのベース電流のhFE倍の電流が流れるので、出力OUTは急速に低レベルに向かう。出力OUTが低レベルになると、出力OUTからQB2へのベース電流は供給されなくなり、QB2はオフとなる。この状態ではQM2もオンとなっているが、QB1のベース電荷は既に引抜かれているので、電流は流れない。つまり、入出力とも低レベルの定常状態にあっても、電流はリーク電流以外は流れない。次に、入力が低レベルから高レベルへと切換わる場合について考える。入力が切換わった直後は、出力はまだ低レベルにある。従って、QM1はオン、QM2オフ、QM3オフ、QM4オンとなり、QM1を経てQB1にベース電流が供給される一方、QB2のベース電荷はQM4により引抜かれる。従って、QB2は急速にオフとなり、出力OUTはQB1により高レベルへと向かう。出力OUTが完全に高レベルとなるとQM1を経てのベース電流は流れなくなり、最初に説明した状態に戻る。
【0012】以上説明したように、図3の回路では、入出力が高または低レベルに留まっている限りはリーク電流が流れるだけで消費電力は殆んど零であり、電力は切換の過渡時に流れるだけである。従って、全体として消費電力は小さく、CMOSと同じと考えてよい。一方、出力から見るとMOSトランジスタのgmがhFE倍(すなわち約2桁倍)してみえるので、出力の負荷容量が大きくても充分に高速化できる。なお、高速化のためには、QM1(または場合によってはQM3も)はデプリーション型であることが望ましい。
【0013】上記の図3の回路には、トランジスタQM1、QM2からなるCMOSソースフォロワ回路が含まれている。このため図3の回路も高速動作の点でなお不十分である。
【0014】図4は本願発明者等による第2の検討回路である。この回路と図3の回路との違いは、図3で出力OUTに接続されていたQM2のドレーンが図4ではQB2のベースに接続されている点だけである。図4の回路では、入力が高レベルから低レベルへと切換わる時に、QB1のベースから引抜かれた電荷はQB2にベース電流として供給され、従ってその分だけQB2がオンとなる時間が早くなる。その他の動作については、図4と図3は同じである。
【0015】ところで、図3、図4の検討回路では、高速化のためにはQM1はデプリーション型であることが望ましい。デプリーション型でなければ、入力が高レベルであっても、出力を充分に高レベルにする程ベース電流を供給できないからである。従って、出力を充分に高レベルに保つことも高速化することも困難となる。一方、図3、図4の他のMOSトランジスタは一般にエンハンスメント型(勿論、必要に応じてデプリーション型にしてもさしつかえないことは言うまでもない)であるため、図3、図4の実施例の場合、高性能化のためにはエンハンスメント型とデプリーション型の両型のMOSトランジスタを使用することが必要となり、プロセス的に多少複雑となる。
【0016】図4の回路においても、トランジスタQM1、QM2からなるCMOSソースフォロワ回路が含まれている。従って図4の回路も高速動作の点でなお不十分である。
【0017】図5は、本願発明者等による第3の検討回路であり、上述のような欠点が除かれている。
【0018】図5の回路はpチャネルMOSトランジスタQM11,QM12及びQM13、nチャネルMOSトランジスタQM14、npnバイポーラトランジスタQB11及びQB12から成る。
【0019】この回路の動作を簡単に説明する。まず、入力、出力とも高レベルである状態を考える。この時、QM11,QM12,QM13はオフであり、QM14のみがオンである。従って、QB11,QB12ともにオフである。この状態のもとで出力OUTが何かの原因(たとえば出力に接続される負荷のリーク電流等)で低レベルとなったとするとQM12がオンとなりQB11に入力端INからベース電流が供給され出力OUTは高レベルに保たれる。OUTが高レベルにある限りQB11はオフであり、従って定常状態では殆んど電流は流れない。次に、入力INが高レベルから低レベルに切換わる状態を考える。切換わつた直後は出力OUTはまだ高レベルにある。この状態ではQM11,QM13がオン、QM12,QM14はオフである。QB11のベースに蓄積されていた電荷はQM11により引抜かれQB11はオフとなり、一方、QB12にはQM13を経てベース電流が供給されるのでオンとなる。従って、QB12のコレクタにはそのベース電流のhFE倍の電流が流れるので、出力OUTは急速に低レベルに向かう。出力OUTが低レベルになると、出力OUTからQB12へのベース電流は供給されなくなり、QB12はオフとなる。この状態ではQM11,QM12もオンとなっているが、QB11のベース電荷は既に引抜かれているので、電流は流れない。つまり、入出力ともに低レベルの定常状態にあっても、電流はリーク電流以外は流れない。次に、入力が低レベルから高レベルと切換わる場合について考える。入力が切換わった直後は、出力はまだ低レベルにある。従って、QM11はオフ,QM12はオン,QM13はオフ,QM14はオンとなり、QM12を経てQB11にベース電流が供給される一方、QB12のベース電荷はQM14により引抜かれる。従って、QB12は急速にオフとなり、出力OUTはQB11により高レベルへと向かう。出力OUTが完全に高レベルとなるとQM12はオフとなり、最初に説明した状態に戻る。
【0020】以上説明したように図5の回路でも入出力が高または低レベルに留まっている限りはリーク電流が流れるだけで消費電力は殆んど零であり、電流は切換の過渡時に流れるだけである。従って、全体として消費電力は、図3、図4の実施例と同様に、CMOSと同様と考えてよく、また実効的にCMOSゲートのgmがhFE倍されると考えてよいことは、図3、図4の実施例の場合と同じである。
【0021】図6は、本願発明者等による第4の検討回路である。この回路と図5の回路との違いは、図5で出力OUTに接続されていたQM11のドレーンが図6ではQB12のベースに接続されている点だけである。図6R>6の回路では、入力が高レベルから低レベルへと切換わる時に、QB11のベースから引抜かれた電荷はQB12にベース電流として供給され、従ってその分だけQB12がオンとなる時間が早くなる。その他の動作については、図6と図5は同じである。なお、図5、図6の回路では、QB11のベース電流を前段回路が供給しなければならないので、図3、図4の場合に比べ前段に多少大きな駆動能力が必要とされる。
【0022】図5及び図6の回路は、CMOSソースフォロワ回路を含まない。いずれの回路もnpnトランジスタQB11のベースと入力端子INの間は、pチャネルMOSトランジスタQM12のドレイン・ソース電流通路を介して、直流的に結合されている。従って上記のCMOSソースフォロワを用いたバッファ回路より高速である。
【0023】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決するための手段は、CMOSとバイポーラトランジスタとを含むバッファ回路と、該バッファ回路の入力に接続されたMOS回路とを具備してなるバイポーラCMOS複合回路であって、上記バッファ回路は、入力端子(IN)と、出力端子(OUT)と、エミッタ−コレクタ電流通路が第1の動作電位点と上記出力端子(OUT)との間に接続された第1のnpnトランジスタ(QB1)と、エミッタ−コレクタ電流通路が上記出力端子(OUT)と第2の動作電位点との間に接続された第2のnpnトランジスタ(QB2)と、ドレイン−ソース電流通路が上記第2のnpnトランジスタ(QB2)のベースと上記出力端子(OUT)との間に接続されたpチャネルMOSトランジスタ(QM3)と、ドレイン−ソース電流通路が上記第2のnpnトランジスタ(QB2)のベースと上記第2の動作電位点との間に接続されたnチャネルMOSトランジスタ(QM4)とを有し、該pチャネルMOSトランジスタ(QM3)は、そのドレインが上記第2のnpnトランジスタ(QB2)のベースの側に、そのソースが上記出力端子(OUT)の側になる向きに接続されてなり、該nチャネルMOSトランジスタ(QM4)は、そのドレインが上記第2のnpnトランジスタ(QB2)のベースの側に、そのソースが上記第2の動作電位点の側になる向きに接続されてなり、上記pチャネルMOSトランジスタ(QM3)と上記nチャネルMOSトランジスタ(QM4)のゲートは共に上記入力端子(IN)に接続されてなり、上記第1のnpnトランジスタ(QB1)のベースは上記入力端子(IN)に直接接続されてなり、上記MOS回路はゲートに入力信号が印加され、ドレインが上記バッファ回路の上記入力端子に接続されたnチャネルMOSトランジスタを有してなることを特徴とするバイポーラCMOS複合回路とすることである。(図7、図8参照。)
【0024】
【作用】上記手段によれば、npnトランジスタQB1のベースを入力端子INに直流的に接続する。このためQB1の前段としてはMOSトランジスタを持たない。従ってQB1の立ち上がりが非常に速くなる。
【0025】また、npnトランジスタQB2の前段の2つのMOSトランジスタが、ソースフォロワではなく、ソース接地回路となっている。従ってこのMOSトランジスタ回路が高速に動作する。
【0026】これらにより、従来技術に比して大幅に高速化されたバッファ回路が得られる。
【0027】
【実施例】図7は本発明の一実施例の回路図である。この実施例では、図3、図4、または図5、図6においてQM1,QM2、またはQM11,QM12をとり去り、QB1またはQB11のべースを直接入力端子に接続した形となっている。この場合、QB1は入力が極く低レベルにある以外の時はオン状態にあるので、入力に乗った雑音は全て出力側に現われるという欠点を有している。しかし、雑音余裕度が充分に確保されている場合には、この回路を使用できる。なおこの回路の動作については、図3〜図6の動作説明から明らかであるので、説明を省く。
【0028】図7の回路もCMOSソースフォロワを用いていないため、高速バッファ回路が得られる効果がある。また後に述べるように、前段にCMOSインバータを接続しても高速回路が得られる効果がある。
【0029】以上説明したきた回路の使用例について簡単に述べる。図8は3入力CMOSNANDゲートAと図6の回路Bとを組み合わせた例で、全体として3入力NAND回路を構成している。この回路の遅延時間を、現在高速バイポーラ論理回路として最も標準的なECL回路の遅延時間と、同一レベルのプロセスを仮定して比較した。その結果、負荷容量1pFに対して、図8の回路の遅延時間はECLとほぼ同一となることがわかった。また、A,B両部分での遅延時間はほぼ等しくECLの遅延時間のそれぞれ約半分であった。また、この時の消費電力はスイッチング・サイクル時間50nsを仮定してECLの約20分の1と極めて僅かである。つまり、図8の回路を使用すれば、消費電力の点からはECLの約20倍高集積のLSIを構成し、単位ゲートの遅延時間を基本的にはECLと同程度にできることになる。
【0030】また、本発明のバッファの使用法として、別のアプローチも可能である。図9はその概念を示したもので、AはCMOSゲートを複数個組合わせた論理回路網であり、B,B´等は本願発明のバッファ回路である。この場合、CMOSゲートの回路網は、各ゲートの負荷が充分軽いと考えられる程度の範囲でまとめられており、各CMOSゲートは軽負荷(つまり負荷ゲートが近くに配置されており、配線容量等が少ない)の条件で動作している。一方、チップ内の遠方に配置されているゲートへの入力を印加するとか、またはファンアウトが多いとかで負荷が重い場合には、信号はバッファ回路B等を介して伝達される。従って、負荷による遅延時間の増加は少ない。このような使用法のいたって簡単な場合を図10に示す。この場合、たとえばI2から入力された信号は、CMOSゲートA1,A3,A4を経てB2でバッファされて出力O2へ出て行く。この場合、A1,A3,A4の負荷は軽いので各々ECLの約1/2の遅延時間で動作する。また、出力O2の負荷が重くても、この部分もECLの約1/2の遅延時間で動作するので、全体としてECLの2倍の遅延時間でゲート3段が動作することになる。この遅延時間の低減は、CMOSゲート回路網部分での縦続ゲート数が多い程大きくなる。しかし、一般にゲート数が多くなると負荷も大きくなるので、どこかに最適点がある。この最適点は、使用するプロセス・テクノロジー、回路設計技術のレベル等で決まる。また、図9に示した使用方法の場合、バイポーラ・CMOSバッファの使用個数が減少するので、バッファ使用によるチップ面積増加も少なく押え得る。また、実際に使用する際には、論理ゲート網に対するバイポーラCMOS複合バッファとしては、ノンインバータ型とインバータ型との両者を組合わせて使うことになろうが、その場合インバータ型のバッファとしては従来型のどのようなものを本発明のバッファと組合わせて使用してもよい。
【0031】図11は本発明の効果を示す計算機シミュレーション結果を示す図である。横軸は負荷容量CL、縦軸はゲート遅延時間tpdである。図11のL2で示した直線は、図7の回路の入力端子(IN)に、図2中の前段のCMOSインバータ回路を付加し、図7の回路の出力端子(OUT)に負荷容量CLを付加した回路に関して計算した特性である。
【0032】図11のL1で示した直線は、図3に示したCMOSソースフォロワを含む第1の検討回路に関して計算した特性である。ここでは前段にインバータ回路は付加しておらず、図3の回路のみによる特性である。この特性は上記のL2よりも遅延時間が大きいという結果が得られている。
【0033】この図から、図7の回路は前段にインバータを付加しても、図3の回路よりさらに遅延時間が小さく、大幅な高速化が図れるという効果が得られる。
【0034】一般にCMOS回路中では、CMOSソースフォロワ回路が遅いため極力インバータ回路を用いる。従って大きな負荷を駆動する場合、出力用のバッファ回路の前段のCMOSゲートはインバータ回路であることが多い。一方CMOSインバータの出力を受けるバッファ回路は、出力の論理の要請に応じてインバータ形およびノンインバータ形の両方が必要とされる。このためインバータ形バッファ回路の前段にCMOSインバータをもつ回路と、ノンインバータ形バッファ回路の前段にCMOSインバータをもつ回路のいずれもが高速であることが望まれる。本発明によれば高速なノンインバータ形バッファ回路が得られる効果がある。なお、本発明においてMOSトランジスタのVTHを変えることにより、速度、消費電力、出力レベルなどを変え得るが、それは設計の問題であり、本発明の範囲内にあることはいうまでもない。
【0035】また、npnトランジスタをpnpトランジスタに変えpチャンネルMOSトランジスタとnチャンネルMOSトランジスタとを入れ替えても、同様な動作をさせ得ることは言うまでもない。
【0036】
【発明の効果】以上のように本願発明により、ノンインバータ型の高速、低消費電力の複合バッファ回路が得られ、もって駆動能力の高い所望の論理回路が容易に構成できるのでその工業的価値は大きい。
【図面の簡単な説明】
【図1】従来のインバータ型のバッファ回路である。
【図2】本発明によるバッファ回路の使用方法を示す図である。
【図3】本願発明者等による第1の検討回路である。
【図4】本願発明者等による第2の検討回路である。
【図5】本願発明者等による第3の検討回路である。
【図6】本願発明者等による第4の検討回路である。
【図7】本発明の一実施例を示す図である。
【図8】本発明のバッファ回路の使用方法の一実施例を示す図である。
【図9】本発明のバッファの使用方法の他の実施例の概念図である。
【図10】図9の概念を具体化した、簡単な使用例である。
【図11】本発明の効果を示す計算機シミュレーションの結果を示す図である。
【符号の説明】
IN…入力端子、OUT…出力端子、QB1,QB2…npnトランジスタ、QM3…pチャネルMOSトランジスタ、QM4…nチャネルMOSトランジスタ。
【特許請求の範囲】
【請求項1】CMOSとバイポーラトランジスタとを含むバッファ回路と、該バッファ回路の入力に接続されたMOS回路とを具備してなるバイポーラCMOS複合回路であって、上記バッファ回路は、入力端子と、出力端子と、エミッタ−コレクタ電流通路が第1の動作電位点と上記出力端子との間に接続された第1のnpnトランジスタと、エミッタ−コレクタ電流通路が上記出力端子と第2の動作電位点との間に接続された第2のnpnトランジスタと、ドレイン−ソース電流通路が上記第2のnpnトランジスタのベースと上記出力端子との間に接続されたpチャネルMOSトランジスタと、ドレイン−ソース電流通路が上記第2のnpnトランジスタのベースと上記第2の動作電位点との間に接続されたnチャネルMOSトランジスタとを有し、該pチャネルMOSトランジスタは、そのドレインが上記第2のnpnトランジスタのベースの側に、そのソースが上記出力端子の側になる向きに接続されてなり、該nチャネルMOSトランジスタは、そのドレインが上記第2のnpnトランジスタのベースの側に、そのソースが上記第2の動作電位点の側になる向きに接続されてなり、上記pチャネルMOSトランジスタと上記nチャネルMOSトランジスタのゲートは共に上記入力端子に接続されてなり、上記第1のnpnトランジスタのベースは上記入力端子に直接接続されてなり、上記MOS回路はゲートに入力信号が印加され、ドレインが上記バッファ回路の上記入力端子に接続されたnチャネルMOSトランジスタを有してなることを特徴とするバイポーラCMOS複合回路。
【請求項1】CMOSとバイポーラトランジスタとを含むバッファ回路と、該バッファ回路の入力に接続されたMOS回路とを具備してなるバイポーラCMOS複合回路であって、上記バッファ回路は、入力端子と、出力端子と、エミッタ−コレクタ電流通路が第1の動作電位点と上記出力端子との間に接続された第1のnpnトランジスタと、エミッタ−コレクタ電流通路が上記出力端子と第2の動作電位点との間に接続された第2のnpnトランジスタと、ドレイン−ソース電流通路が上記第2のnpnトランジスタのベースと上記出力端子との間に接続されたpチャネルMOSトランジスタと、ドレイン−ソース電流通路が上記第2のnpnトランジスタのベースと上記第2の動作電位点との間に接続されたnチャネルMOSトランジスタとを有し、該pチャネルMOSトランジスタは、そのドレインが上記第2のnpnトランジスタのベースの側に、そのソースが上記出力端子の側になる向きに接続されてなり、該nチャネルMOSトランジスタは、そのドレインが上記第2のnpnトランジスタのベースの側に、そのソースが上記第2の動作電位点の側になる向きに接続されてなり、上記pチャネルMOSトランジスタと上記nチャネルMOSトランジスタのゲートは共に上記入力端子に接続されてなり、上記第1のnpnトランジスタのベースは上記入力端子に直接接続されてなり、上記MOS回路はゲートに入力信号が印加され、ドレインが上記バッファ回路の上記入力端子に接続されたnチャネルMOSトランジスタを有してなることを特徴とするバイポーラCMOS複合回路。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図10】
【図11】
【図8】
【図9】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図10】
【図11】
【図8】
【図9】
【公開番号】特開平5−206837
【公開日】平成5年(1993)8月13日
【国際特許分類】
【出願番号】特願平4−35995
【分割の表示】特願昭57−116771の分割
【出願日】昭和57年(1982)7月7日
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【公開日】平成5年(1993)8月13日
【国際特許分類】
【分割の表示】特願昭57−116771の分割
【出願日】昭和57年(1982)7月7日
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
[ Back to top ]