バッフル装置を備えるオイル拡散ポンプ
複数のアパーチャを備えるバッフルであって、複数のアパーチャのうちの少なくとも1つが先細り部と末広がり部とを備えるバッフルを提供する。例によっては、少なくとも2つの同心の円錐を備えるバッフルが用いられてもよい。他の例では、バッフルは、質量分析計などの分析装置用のオイル拡散ポンプにおいて用いられてもよい。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
技術分野
本明細書に開示される例は概して、拡散ポンプで用いる装置および方法に関する。より詳細には、本明細書に開示される特定の実施例は、質量分析計用のオイル拡散ポンプにおいて用いられ得る装置に関する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0002】
背景
単純なバッフルは、多くの場合、気体をオイル拡散ポンプに注ぎ込んでオイル蒸気がポンプから出て行くのを阻止するための空間の使用の点で効率が悪い。一般的な構造は、光学濃度を達成するために、オフセット、重なり合った板もしくは面、または山形スロットからなっている。さらに、多くの既存のバッフルは、オイル蒸気およびエアゾールのための出口経路が光学的に密であることにより、冷却される量に依拠する。このような構造は、多くの場合、相当な空間、組立およびコストを必要とする。
【課題を解決するための手段】
【0003】
概要
第1の局面に従って、噴射アセンブリと、加熱素子と、チャンバと、バッフルとを備えるオイル拡散ポンプを提供する。特定の例において、バッフルは、チャンバに流体結合されかつ複数のアパーチャを備える非冷却バッフルであってもよく、複数のアパーチャのうちの少なくとも1つは、先細り部と末広がり部とを備える。
【0004】
例によっては、バッフルは、バッフルの中心軸のまわりに対称ないくつかのアパーチャを伴って構築および配置されてもよい。他の例では、バッフルは、バッフルの中心軸のまわりに非対称ないくつかのアパーチャを伴って構築および配置されてもよい。さらなる例では、オイル拡散ポンプは、拡散ポンプに流体結合された追加のポンプをさらに備えていてもよい。特定の例において、バッフルは周方向線状突起をさらに備えていてもよい。他の例では、バッフルは、少なくとも2つの同心の円錐を備えていてもよく、アパーチャは少なくとも2つの同心の円錐の間に位置決めされてもよい。例によっては、バッフルは、少なくとも2つの同心の円錐を接続するように構成された少なくとも1つのリブをさらに備えていてもよい。
【0005】
別の局面に従って、噴射アセンブリと、加熱素子と、チャンバと、チャンバに流体結合されかつ少なくとも2つの同心の円錐を備える非冷却バッフルとを備えるオイル拡散ポンプを開示する。例によっては、バッフルは、2個〜5個の同心の円錐を備えていてもよい。他の例では、ポンプは、オイル拡散ポンプに流体結合された追加のポンプをさらに備えていてもよい。例によっては、バッフルは、周方向線状突起を備えていてもよい。特定の例において、バッフルは、少なくとも2つの同心の円錐の間に位置決めされたアパーチャを含んでいてもよい。
【0006】
さらなる局面に従って、質量分析器と、質量分析器に流体結合された検出器と、質量分析器および検出器に流体結合されたオイル拡散ポンプとを備える質量分析計を提供する。特定の例において、質量分析計のオイル拡散ポンプは、複数のノズルと、加熱素子と、オイルを受けるように構成されかつ加熱素子および噴射アセンブリに結合されたチャンバと、チャンバに流体結合されかつ複数のアパーチャを備える非冷却バッフルとを備え、複数のアパーチャのうちの少なくとも1つは、先細り部と末広がり部とを備える。
【0007】
特定の例において、質量分析計のバッフルは、少なくとも2つの同心の円錐を含み、アパーチャは少なくとも2つの同心の円錐の間に位置決めされる。例によっては、バッフルは、同心の円錐を接続する少なくとも1つのリブを備えていてもよい。特定の例において、質量分析計は、質量分析器に流体結合された試料導入装置をさらに備える。他の例では、質量分析計は、試料導入装置に流体結合されたガスクロマトグラフィシステムをさらに備える。さらなる例では、オイル拡散ポンプは、質量分析計の質量分析器に近接して取付けられてもよい。
【0008】
別の局面に従って、質量分析器と、質量分析器に流体結合された検出器と、質量分析器および検出器に流体結合されたオイル拡散ポンプとを備える質量分析計を開示する。特定の例において、オイル拡散ポンプは、複数のノズルを備える噴射アセンブリと、加熱素子と、オイルを受けるように構成されかつ加熱素子および噴射アセンブリに結合されたチャンバと、チャンバに流体結合されかつ少なくとも2つの同心の円錐を備える非冷却バッフルとを備える。例によっては、バッフルは、少なくとも2つの同心の円錐の間に位置決めされたアパーチャを含んでいてもよい。特定の例において、バッフルは、同心の円錐を接続するように構成された少なくとも1つのリブをさらに備えていてもよい。例によっては、質量分析計は、質量分析器に流体結合された試料導入装置をさらに備えていてもよい。他の例では、質量分析計は、試料導入装置に流体結合されたガスクロマトグラフィシステムをさらに備えていてもよい。特定の例において、オイル拡散ポンプは、質量分析計の質量分析器に近接して取付けられてもよい。
【0009】
さらなる局面に従って、質量分析計を構成する方法を提供する。特定の例において、この方法は、試料導入装置に近接してオイル拡散ポンプを取付けるステップと、先細り部および末広がり部を備える少なくとも1つのアパーチャを含む非冷却バッフルを有するオイル拡散ポンプを構成するステップとを備え、バッフルは、オイル拡散ポンプからオイル蒸気が失われるのを抑制するように構築および配置される。例によっては、この方法は、複数のアパーチャを有するバッフルを構成するステップをさらに備えていてもよく、各アパーチャは、先細り部と末広がり部とを備える。
【0010】
別の局面に従って、試料導入装置に近接してオイル拡散ポンプを取付けるステップと、少なくとも2つの同心の円錐を備える非冷却バッフルを有するオイル拡散ポンプを構成するステップとを備える質量分析計を構成する方法であって、バッフルは、オイル拡散ポンプからオイル蒸気が失われるのを抑制するように構築および配置される方法を開示する。例によっては、この方法は、同心の円錐の間に位置決めされた少なくとも1つのアパーチャを有するバッフルを構成するステップをさらに備えていてもよい。
【0011】
本明細書のメリットを考慮すると、さらなる局面、例、実施例および特徴が当業者によって認識される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】特定の例に従うオイル拡散ポンプの概略図である。
【図2A】特定の例に従うバッフルの上面図である。
【図2B】特定の例に従うバッフルの底面図である。
【図3】特定の例に従う先細り部と末広がり部とを有するアパーチャを備えるバッフルの断面図である。
【図4A】特定の例に従うさまざまなバッフルの形状を示す断面図である。
【図4B】特定の例に従うさまざまなバッフルの形状を示す断面図である。
【図4C】特定の例に従うさまざまなバッフルの形状を示す断面図である。
【図4D】特定の例に従うさまざまなバッフルの形状を示す断面図である。
【図5】特定の例に従う非対称のバッフルを示す断面図である。
【図6】特定の例に従う、ガスケットで非対称にされた対称的なバッフルを示す断面図である。
【図7】特定の例に従う質量分析計のブロック図である。
【図8】特定の例に従う組立てられたオイル拡散ポンプの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図面を参照して、特定の実施例について以下でより詳細に説明する。
特に文脈から明らかでない限り、「上部」および「底部」という用語の使用は、任意であり、例示の目的でのみ行なわれ、本明細書に開示される装置はいかなる向きで用いられてもよい。加えて、特定の寸法、特徴、構成要素などは、本明細書に開示される技術をより理解しやすくするために、比例していない態様でまたは従来の態様でない態様で、拡大されているか、歪められているか、または別の方法で示されている可能性がある。
【0014】
詳細な説明
本明細書に開示される技術の特定の特徴、局面および例は、既存のシステムに勝る大きな利点を提供し、この利点には、気体流の改善、機器へのオイル粒子の流入の防止、検出限界の改善などが含まれるが、それらに限定されない。本明細書に開示されるバッフルの特定の実施例は、オイル拡散ポンプ、たとえば質量分析計に結合されたオイル拡散ポンプを有するさまざまなシステムにおいて用いられてもよい。本明細書に開示されるバッフルの例は、任意のオイル拡散ポンプ用に構築および配置されてもよく、一方の方向への気体伝導度を他方の方向への気体伝導度よりも容易に提供する。バッフルの特定の実施例はまた、一方の方向へのオイル蒸気および粒子の流れを大幅に低減することができ、実施例によっては、一方の方向へのオイル蒸気および粒子の流れを防ぐことができる。本明細書に開示されるいくつかの例は、非冷却バッフルに向けられている。「非冷却バッフル」は、本明細書において用いられるときには、積極的な熱除去を行なわないバッフル、たとえば冷却流体を用いることによるバッフルを指す。バッフルが非冷却バッフルである実施例では、バッフルは、冷却バッフルよりも小さな寸法を有していてもよく、平均自由行程を減少させて気体の原子および分子がオイル蒸気およびエアゾールと衝突する可能性を増大させる可能性があり、ポンプの口に触れることなく真空チャンバに存在し得るため、伝導によって熱が直接伝達されない。バッフルは、たとえば、オイルが通過する直接の経路(視線)を妨げるように光学的に密であること、オイル蒸気が凝縮するのに好適な表面積を提供すること、オイルエアゾールまたは微粒子が衝突および付着するのに好適な面を提供すること、オイルが集まって、滴下して、拡散ポンプに戻るのに好適な幾何学的形状を提供することなどの他の利点を提供し得る。
【0015】
特定の例に従って、本明細書に開示されるバッフルはオイル拡散ポンプにおいて用いられてもよい。バッフルを含むオイル拡散ポンプの簡略図が図1に示されている。オイル拡散ポンプ100は、加熱素子120と、気化するオイルを受けるように構成されたエリアまたはチャンバ130と、多段噴射アセンブリ140などの噴射アセンブリと、バッフル150とを含む筐体110を備え、バッフル150は非冷却バッフルとして示されているが、場合によっては冷却バッフルを用いてもよい。ポンプの外面は、たとえばウォータージャケット、もしくは図1に示されるウォーターコイル160および162などのウォーターコイルを用いて、空冷または水冷されてもよい。オイル拡散ポンプ100の動作中、加熱素子120はオイルを気化させるように作動する。オイル蒸気が噴射アセンブリ140の中で上向きに移動すると、オイルは噴射アセンブリのさまざまなノズル、たとえばノズル142および144などの同心の輪の形状のノズルを通して噴射されるかまたは出され、筐体110の冷却壁上で凝縮する。蒸気は、凝縮すると、流体入口170および172などの1つ以上の流体入口(たとえば、気体またはエアゾール入口)を通ってポンプに入る気体分子を同伴する。多段噴射アセンブリ140は、気体オイル分子が高速で噴射口
を通過し、筐体110の壁上で凝縮するときに圧力勾配が作り出されるように設計される。最上部ノズルから出るオイル蒸気は、最も「逆流」しやすく、またはポンプの上に取付けられたチャンバ、入口またはマニホールドに望ましくなく導入されやすい。オイル蒸気の移動により、エリア130付近では高圧が発生し、流体入口170および172ではより低い圧力が発生し、これは流体入口170および172に結合された装置またはチャンバ(図示せず)の圧力を低減させるポンピングをもたらす。流体入口170および172からの同伴された気体は、圧力を増大させてポンプ100の基部に向かって流れ、別のポンプ、たとえばフォアポンプに流体結合され得る出口180を通して排出される。
【0016】
特定の例に従って、非冷却バッフル150は、以下にさらに記載されるように、流体入口170および172に結合された装置またはチャンバにオイル蒸気が入ることを防ぐように構築および配置されてもよい。オイルポンプの特定の実施例においてバッフルを含むことによって、オイルポンプは、オイルが検出器または分析器に入ることなく試料導入装置または試料入口に近接して取付けられてもよく、たとえば、ポンプは数インチ以内に取付けられる場合もあれば、いかなる介在装置もない状態で直接流体結合される場合もある。このような利点は、質量分析計において機器の総底面積を低減するのに特に有用であり得る。また、試料導入装置に近づけて拡散ポンプを取付けることによって、流体結合の向上を達成することができ、ポンプとポンプが取付けられる装置との間の流体結合をより優れたものにする。この構成は、機器による種の検出と干渉し得る気体の除去を増大させ得るおよび/または機器の汚染割合を低減し得る。この開示のメリットを考慮すると、本明細書に開示されるバッフルを使用することのさらなる利点が当業者によって認識される。
【0017】
特定の例に従って、少なくとも2つの同心の円錐を備える非冷却バッフルを開示する。同心の円錐は、ポンプに入る流体、たとえば気体を濃縮させるという利点を有する。この濃縮効果により、入ってくる分子が、上流に移動するオイル蒸気と衝突する可能性が増大する。この効果はまた、バッフルを通るオイルの逆流を抑制する。同心の円錐は空間の効率的な使用ももたらし、これによりバッフルの全体的な大きさが低減し得る。同心の円錐は、円錐をまとめるために逆転する角度およびリブを含んでいてもよい。この構造により、オイル拡散ポンプへの気体伝導の効率が増大し得る(制約の低下および空間使用の最適化)。バッフルの実施例は、ファネリング(漏斗)効果をもたらすための先細り面とデファネリング(逆漏斗)効果をもたらすための末広がり面とを伴って構成されてもよい。この構造はさらに、オイル拡散ポンプから出るオイル蒸気およびエアゾールを阻止ならびに凝縮させる有効性を増大させる。ひとつなぎの構造であるために、バッフルはたとえば単一の金属片から製造され得るが、他の好適な材料を用いることができ、バッフルを容易に設置、取外しおよび洗浄することができる。所望のバッフルの幾何学的形状は、旋盤研削およびフライス削りによって達成されてもよく、選択される材料に起因して元来剛性があり、安定していてもよい。
【0018】
特定の例において、同心の円錐を備える非冷却バッフルの概略図が図2A(上面図)および図2B(底面図)に示されている。バッフル200は、アパーチャ220などのアパーチャによって間隔をおいて配置された円錐205および210などの複数の同心の円錐を備える。同心の円錐およびアパーチャの厳密な構造、数および形状は、オイル拡散ポンプの使用目的に応じて変化し得る。特定の例において、バッフルは、約4個〜約12個の同心の円錐、より詳細には約5個〜約10個の同心の円錐、たとえば約6個〜約9個の同心の円錐を含む。この開示のメリットを考慮すると、バッフルが十分な流体をポンプに流入させ、ポンプからオイル蒸気が失われるのを防ぐまたは抑制する限り、より少数の同心の円錐を用いてもよいことが当業者によって認識される。
【0019】
特定の例において、バッフルにおけるアパーチャの数は、変化し得て、存在する同心の円錐の数によって典型的には決定される。アパーチャの形状および幾何学的形状も、少な
くとも一部には、用いられる同心の円錐の形状およびタイプに基づいていてもよい。図3を参照して、4個の同心の円錐310、312、314および316を備えるバッフル300のアパーチャの断面図が示されている。バッフル300では、アパーチャは、バッフル300の径方向軸に垂直な中心軸(図3ではz軸として示されている)のまわりに対称に間隔をおいて配置され、示される実施例では中心軸の各側に3つのアパーチャがある。バッフル300の上面320からバッフル300の中心まで、アパーチャは、バッフルの中心軸に向かって角度が付いた部分を含む。この部分は、場合によっては、本明細書において「先細り部」と称される。バッフル300の厚みのほぼ中程で、たとえばバッフルの中心で、アパーチャの角度は、逆転するまたはバッフルの中心軸から離れるように変化する。この部分は、場合によっては、本明細書において「末広がり部」と称される。このように、アパーチャの中心からの径方向の距離は、上面からバッフルの中央までは減少し、次いで、バッフルの中央からバッフルの底面に向かって増大している。たとえば、r1はr2よりも大きく、r2はr3未満である。この構造により、オイル蒸気がバッフルから逃げるのを制限しながら流体がバッフルに流入することが可能になる。たとえば、流体入口へのおよび/または拡散ポンプからのオイルのいかなる逆流も最小限に抑えながら気体が拡散ポンプに入り、噴射されたオイル蒸気によって同伴されるように、バッフルは拡散ポンプの上部に置かれて、流体入口および拡散ポンプに流体結合されてもよい。バッフル300におけるアパーチャの各々は先細り部と末広がり部とを含むように示されているが、バッフルは、たった1つのアパーチャまたはすべてのアパーチャに満たないアパーチャが先細り部と末広がり部とを伴って構成されるように構築および配置されてもよい。
【0020】
特定の例に従って、アパーチャの厳密な断面形状は変化し得て、異なる構造は、オイル蒸気がポンプから逃げる可能性を低減しながらポンプへの流体流入を増大させ得る。この開示のメリットを考慮すると、圧力差が作り出されかつ相当量のオイル蒸気がポンプから出ることがない限りいずれの所望のアパーチャ断面形状を用いてもよいことを当業者は認識する。特定の例において、アパーチャは、図4Aのアパーチャ405に示されるように複数の先細り部および末広がり部を含んでいてもよい。例によっては、アパーチャは非対称であってもよく、径方向軸の下よりも径方向軸の上の部分が長い。このタイプのアパーチャの例が、図4Bにおけるアパーチャ410として示されている。他の例では、アパーチャは、気体流に対する抵抗をより低くするように丸い屈曲または湾曲を伴って構成されてもよい。丸みを帯びた屈曲を有するアパーチャの例が、図4Cにおけるアパーチャ415として示されている。例によっては、アパーチャは、図4Dのアパーチャ420に示されるように、(上面から底面に)まず末広がりになり、先細りになっていてもよい。このようなアパーチャの形状は、たとえばバッフルにおいて用いられる円錐について特定の構造を選択することによって選択されてもよく、アパーチャは隣接する円錐同士の間の空間によって作り出される。円錐をまとめるためにリブなどを用いてもよい。加えて、バッフルの異なるエリアに異なるアパーチャの形状が存在するように円錐の形状は非対称であってもよい。この開示のメリットを考慮すると、アパーチャの他の構成が当業者によって容易に選択される。
【0021】
特定の例に従って、本明細書に開示されるバッフルは、アパーチャが中心軸(図3)のまわりに対称に配置されるように、またはアパーチャが中心軸のまわりに非対称に配置されるように設計されてもよい。たとえばおよび図5を参照して、バッフル500はバッフル500の左側にアパーチャ502、504、506および508を備え、バッフル500の右側にアパーチャ510および512を備える。たとえばバッフルの一方の端部に向かう流体流が他方の端部に向かう流体流よりも多い場合には、非対称のバッフルを用いることが望ましいであろう。たとえば、バッフルの右側よりもバッフルの左側の気体流が高い場合には、アパーチャの量が左側で多くなっている非対称のバッフルを用いることが望ましいであろう。このような構成により、右側よりも左側からより多くの量の流体を引寄せることが可能である。非対称のバッフルは、たとえば非対称の円錐を用いることによっ
て、同心の円錐同士の間の空間を金属などの構造材料で充填することによって製造される場合もあれば、蓋、ガスケットなどを用いて選択されたアパーチャを覆うことによって製造される場合もある。金属ガスケット605を用いて非対称にされた対称的なバッフル600の例が図6に示されている。バッフル600の一方の側で選択されたアパーチャを封止するために第2の金属ガスケット610も用いてもよいが、特定の例では、オイル蒸気がアパーチャに入って凝縮するようにガスケット610を省略することが望ましいであろう。ガスケットを用いて非対称のバッフルを作り出す実施例では、ガスケットの周囲からいかなるオイルも逃げることを防ぐまたは抑制する流体密封を与えるために、高温封止材または類似の材料がガスケットとバッフル面との間に置かれてもよい。図5および図6に示されるバッフルは(上から下に)先細りになって次いで末広がりになるアパーチャを含むように構成されているが、この開示のメリットを考慮すると、冷却バッフルまたは非冷却バッフルのいずれかである非対称のバッフルの他のアパーチャの形状および構造が当業者によって容易に選択される。
【0022】
特定の例に従って、本明細書に開示される冷却バッフルは、バッフル内で冷却流体を循環させるための入口および出口を含んでいてもよい。バッフルの冷却は、たとえば、バッフル面上でオイル蒸気を凝縮させてオイル蒸気が逆流するのを防ぐために望ましいであろう。例によっては、冷却流体は、水、水の沸点を上げるために添加剤、たとえば塩類、エチレングリコールなどを含む水、気化温度が拡散ポンプの動作温度を上回る他の何らかの流体であってもよい。例によっては、冷却流体の温度は、オイル蒸気が凝縮するが、流体入口からポンプに入る流体が任意の実質的な程度まで凝縮しないように選択されてもよい。気体の凝縮はポンプオイルの汚染および/またはポンプ性能の低下をもたらす可能性があり、ポンプオイルを頻繁に取替える必要がある。
【0023】
特定の例に従って、本明細書に開示されるバッフルの厳密な寸法は、ポンプ、ポンプ筐体の大きさ、所望の流量、所望の真空などに応じて変化し得る。例によっては、バッフルは(上または下から見ると)概して円形であり、その直径は約3〜6インチ、より詳細には約3〜5インチ、たとえば約4インチである。特定の例において、バッフルの上部から底部までの厚みは、約0.25〜約2インチ、より詳細には約0.5インチ〜約1.5インチ、たとえば約0.75インチであってもよい。バッフルが冷却される実施例では、冷却流体の入口および/または出口を設けるために寸法全体を増大させることが望ましいであろう。
【0024】
特定の例に従って、バッフルを製造するために用いられる厳密な材料は変化し得て、選択される材料は、ポンプ性能にいかなる実質的な悪影響も及ぼすことなくポンプ筐体における高温および高圧に耐えることができる任意の材料であってもよい。例によっては、バッフルは、金属、高温ポリマーまたはそれらの組合せを含んでいてもよい。特定の例において、望ましくはバッフルにおいて用いられる材料は、ポンプが真空を与えている装置、たとえば質量分析計、電子顕微鏡、半導体処理設備などに悪影響を及ぼし得るいかなる微粒子または気体も実質的に抜くまたは放出することがない。例によっては、バッフルは、バッフルにおいて腐食を抑制または低減するためにステンレス鋼または他の概して不活性の材料から作られてもよい。
【0025】
特定の例に従って、本明細書に開示されるバッフルは、ポンプへのバッフルの取付を支援する1つ以上の印を含んでいてもよい。このような印は、矢印、テキストまたは構造的特徴を含んでいてもよい。たとえば、1つの向きにのみ正確にバッフルがポンプに取付けられるように周方向線状突起が含まれていてもよい。バッフルの中心軸に平行な周方向溝が、ポンプにおける取付部材と噛合うように含まれていてもよい。このような溝は、ポンプへのバッフルの取付を支援するように好適に角度が付いていてもよい。たとえば、溝は、単一の向きにのみバッフルがポンプに取付けられるように角度が付いていてもよい。
【0026】
特定の例に従って、本明細書に開示されるバッフルは、同心の円錐以外の形状を含んでいてもよい。特に、特定の実施例は、固体金属ディスクに機械加工されるかまたは穴をあけられた先細り部および末広がり部を有するアパーチャを含んでいてもよい。他の実施例は、本体にエッチングされるかまたは別の方法で本体から製造されたアパーチャを含む。例によっては、所望の形状ならびに/または所望のアパーチャ間隔および配置を有する一体型本体を提供するために2つ以上の部品または部分の接合部を含む。この開示のメリットを考慮すると、拡散ポンプで用いるのに好適なバッフルを製造するためのさらなる構成が当業者によって容易に選択される。
【0027】
特定の例において、本明細書に開示される拡散ポンプは、1つ以上の追加のポンプ、たとえばメカニカルポンプ、フォアポンプ、ターボ分子ポンプなどに結合されてもよい。たとえば、拡散ポンプの真空チャンバから気体の大部分を除去するために単純なメカニカルポンプを用いてもよい。拡散ポンプは、さらに気体を除去して圧力を低下させるように作動してもよく、その結果、真空を引寄せる。好適なポンプは、回転ポンプ、オイルレス(ドライ)ポンプ、スクロールポンプ、分子吸収ポンプ、ダイヤフラムポンプなどを含むが、それらに限定されない。この開示のメリットを考慮すると、さらなる好適なポンプが当業者によって容易に選択される。
【0028】
特定の例に従って、本明細書に開示されるバッフルは、バッフルにおいて用いられる同心の円錐または他の幾何学的構造に加えて、光学濃度を達成するために、1つ以上の重なり合った板もしくは面、または山形スロットを含んでいてもよい。このような板および山形により、ポンプへの流体流入をさらに調整することができ、ポンプから出るオイル蒸気をさらに抑制することができる。
【0029】
特定の例に従って、バッフル、たとえば冷却バッフルまたは非冷却バッフルを含む本明細書に開示されるオイル拡散ポンプは、圧力が約1×10-6トール〜約4×10-7トールまたはそれより低い圧力まで下がった真空を提供してもよい。オイル拡散ポンプが質量分析計において用いられる実施例では、オイル拡散ポンプは、圧力が約3×10-5トール〜約1×10-5トールまたはそれより低い圧力の真空を提供してもよい。本明細書に開示されるオイル拡散ポンプを用いてさらなる好適な圧力が可能である。
【0030】
特定の例に従って、本明細書に開示されるバッフルは、質量分析計に結合されたオイル拡散ポンプにおいて用いられてもよい。質量分析計(MS)の概略図が図7に示されている。質量分析計700は、試料導入装置710と、イオン源720と、質量分析器730と、検出器740と、プロセッサ750と、拡散ポンプ760とを備える。本明細書に開示される(冷却または非冷却)バッフルのうちの1つを含む拡散ポンプ760は、減圧下でシステムが動かされるように、試料導入装置710、イオン源720、質量分析器730および検出器740に真空を与えるように作動する。しかしながら、特定の例では、減圧下では、質量分析器730および検出器740のみが動かされ得る。特定の例において、試料導入装置710は、バッチタイプ入口、直接プローブ入口、または質量分析計がクロマトグラフィシステムに結合される場合には、クロマトグラフ入口、たとえばジェットセパレータを含む入口を含んでいてもよい。試料導入装置720は、注入器、噴霧器、または試料をシステムに導入し得る他の好適な装置を含んでいてもよい。
【0031】
特定の例に従って、質量分析器730は、概して試料の性質、所望の分解能などに応じて多くの形態を取り得て、例示的な質量分析器が以下に列挙される。検出器740は、既存の質量分析計、たとえば電子増倍管、光電子増倍管、ファラデーカップ、コーティングされた写真乾板、イオントラップ、シンチレーション検出器などとともに用いられ得る任意の好適な検出装置、およびこの開示のメリットを考慮して当業者によって選択される他
の好適な装置であってもよい。プロセッサ750は典型的には、MS700に導入された試料を分析するために、マイクロプロセッサおよび/またはコンピュータおよび好適なソフトウェアを含む。MS700に導入された種の化学的同一性を判断するために、1つ以上のデータベースがプロセッサ750によってアクセスされてもよい。また、当該技術分野において公知の他の好適なさらなる装置が、パーキンエルマー・インコーポレイテッド(マサチューセッツ州ウォルサム)から市販されているターボマトリックス(TurboMatrix)モデルとともに用いられるものなどのオートサンプラー(autosampler)を含むがそれに限定されないMS700とともに用いられてもよい。
【0032】
特定の例に従って、MS700の質量分析器は、所望の分解能および導入された試料の性質に応じて多くの形態を取り得る。特定の例において、質量分析器は、走査質量分析器、(たとえば、単一および二重集束MS装置で用いる)磁場分析器、四重極質量分析器、イオントラップ分析器(たとえば、サイクロトロン、四重極イオントラップ)、飛行時間分析器(たとえば、マトリックス支援レーザ脱離イオン化飛行時間分析器)、および質量対電荷比率が異なる種を分離し得る他の好適な質量分析器であってもよい。
【0033】
特定の他の例に従って、イオン源は、質量分析において一般に用いられるイオン化方法を実現するために装置を含んでいてもよい。たとえば、イオンが質量分析器に入る前に種をイオン化するために電子衝撃源が組立てられてもよい。他の例では、イオンが質量分析器に入る前に種をイオン化するために化学イオン化源が用いられてもよい。さらに他の例では、イオンが質量分析器に入る前に種をイオン化するために電界イオン化源が用いられてもよい。さらに他の例では、たとえば原子の高速打込み、電界脱離、レーザ脱離、プラズマ脱離、熱脱離、エレクトロハイドロダイナミックイオン化/脱離などのために構成された供給源などの脱離源が用いられてもよい。さらに他の例では、サーモスプレーイオン化源が用いられてもよい。この開示のメリットを考慮すると、本明細書に開示される装置とともに用いるイオン化のための好適な装置を選択することは当業者の能力の範囲内である。
【0034】
特定の例に従って、MSはガスクロマトグラフなどのクロマトグラフィシステムに結合されてもよい。ガスクロマトグラフは概して、試料導入装置と、クロマトグラフィカラムを備えるオーブンと、試料導入装置およびクロマトグラフィカラムを接続する1つ以上の流体流経路とを含む。ガスクロマトグラフは、種を分離し、それらの分離した種を検出のためにMSに渡すように作動する。他の例では、MSは液体クロマトグラフまたは超臨界流体クロマトグラフに結合されてもよい。この開示のメリットを考慮すると、MSに結合するためのさらなる好適な装置が当業者によって容易に選択される。
【0035】
特定の例に従って、MSは別のMSに結合されてもよい。第2のMSは、本明細書に記載されるポンプに類似した拡散ポンプを含む場合もあれば、ターボ分子ポンプまたは他の好適なタイプのポンプを含む場合もある。MSシステムにおいて拡散ポンプを用いることにより、総コストが大幅に下がる。ターボ分子ポンプを有する第2のMSシステムが、高流量、たとえば250L/秒またはそれ以上の流量を受けることができる第2の段として構成されてもよい。拡散ポンプを有する第1の段とターボ分子ポンプを有する第2の段との組合せにより、高い総流量をもたらしながらシステムの総コストを下げることができる。この開示のメリットを考慮すると、第1のMS段がターボ分子ポンプを含み、第2のMS段が拡散ポンプを含むように、第1および第2の段を逆にしてもよいことが当業者によって認識される。このような構成では、第2のMS段にとって許容可能なレベルまで流量を低減するために気体ストリームの一部を逃がすことが望ましいであろう。
【0036】
特定の例に従って、本明細書に開示されるポンプおよびMSシステムは概して、1つ以上のアルゴリズムを実装するソフトウェアを用いて制御されるように構成される。好適な
ソフトウェアは、たとえばパーキンエルマー・インコーポレイテッド(マサチューセッツ州ウォルサム)から市販されており、クラルス(Clarus)(登録商標)600質量分析計とともに使用できるターボマス(TurboMass)(商標)GC/MSソフトウェアを含む。この開示のメリットを考慮すると、本明細書に開示される装置とともに用いる他の好適なアルゴリズムを選択することは当業者の能力の範囲内である。
【0037】
特定の例に従って、本明細書に開示されるオイル拡散ポンプに結合された質量分析計の感度は、少なくとも一部には、検出される種、用いられる検出器のタイプなどに依存する。光電子増倍管を用いると、たとえば信号対ノイズ比率が30:1の約1ピコグラムのオクタフルオロナフタレンを検出することが可能であろう。本明細書に記載されるバッフルを含む低コストオイル拡散ポンプを含む質量分析計によってこのような低い検出限界を達成できることは大きな利点である。
【0038】
特定の例に従って、光学機器に真空を与えるために、本明細書に開示される装置が用いられてもよい。たとえば、真空円偏光二色性、真空紫外線、X線分光法、または酸素もしくは空気が光を吸収し得る他の光学的技術は、真空を用いて、試料チャンバからいかなる空気または酸素も取除く。低コストでおよび逆流によるいかなる実質的な汚染もない状態で、真空を与えて、光吸収、光放射、またはそれら両方を測定するために、本明細書に開示されるオイル拡散ポンプがこのような分析装置において用いられてもよい。
【0039】
特定の例に従って、本明細書に開示されるバッフルは、電子顕微鏡に結合されたオイル拡散ポンプにおいて用いられてもよい。特定の例において、電子顕微鏡は、電子ビームまたは電子供給源と、試料ホルダと、1つ以上のコンデンサと、対物レンズと、コレクタ画面とを備える。透過電子顕微鏡では、電流を印加することによって陰極が加熱されると、電子が発生する。電子は陽極における高圧に向かって移動する。加速電圧は典型的には50〜150kVの間である。電圧差が高くなればなるほど、電子波はより短くなり、これによって顕微鏡の分解能が増大する。加速した電子ビームは、陽極の底部におけるアパーチャを通過する。顕微鏡は典型的には、電磁場を発生させる電子コイルからなるレンズシステムを含む。電子ビームはまずコンデンサによって集束され、試料を通過して、そこで電子のうちのいくつかが偏向される。偏向の度合は対象物の質量対電荷比率に依存する。原子の質量が大きくなればなるほど、偏向の度合が大きくなる。低原子番号を有する原子の場合、少なくともいくらかのコントラストを得るために試料をコントラスト強調化学物質(重金属)で処理することが望ましいであろう。散乱した電子は、試料を通過した後、対物レンズによって集められ、画像が形成される。この画像は、第2のレンズを用いて、処理されてもよく、デジタル的に強調されてもよく、または拡大されてもよい。形成された画像は、たとえば蛍光スクリーンまたは写真材料を用いて閲覧することができる。本明細書に開示されるオイル拡散ポンプは、顕微鏡内に真空を与えるために透過顕微鏡に結合されてもよい。
【0040】
特定の例に従って、本明細書に開示されるバッフルは、半導体処理装置およびシステムに結合されたオイル拡散ポンプにおいて用いられてもよい。このような装置は、蒸着装置、たとえば真空蒸着装置、物理蒸着装置、スパッタリング装置などを含むが、それらに限定されない。たとえば、薄膜デバイスを堆積させるまたは保護もしくはバリアコーティングを堆積させて、腐食を防ぐまたは過酷な環境に耐えるようにするために、オイル拡散ポンプが用いられてもよい。他の例では、真空蒸着チャンバにおいて低下した圧力を与えるためにオイル拡散ポンプが用いられてもよい。たとえば、蒸発する材料がチャンバに置かれてもよい。電子ビームはチャンバの中の材料に入射し得て、電子ビームによって生じる加熱が材料を蒸発させる。蒸発した材料を受けるために基板がチャンバ内に位置決めされてもよい。基板と材料との間の距離は、マニピュレータなどの機械的装置を用いて調節されてもよい。蒸発した材料は、たとえばアルミナ、ジルコニア、チタニアなどの特定の耐
火物の場合には、基板上に凝縮によって堆積させられてもよく、または蒸発した材料は反応性ガスによって基板に運ばれてもよい。共同蒸発プロセスも用いられてもよい。この開示のメリットを考慮すると、本明細書に開示されるオイル拡散ポンプとともに用いるのに好適なさらなる蒸着プロセスおよび装置が当業者によって容易に選択される。
【0041】
特定の例において、オイル拡散ポンプは他の装置において用いられてもよい。たとえば、オイル拡散ポンプは、分子ビームエピタキシなどの結晶成長用に設計された装置および方法とともに用いられてもよい。オイル拡散ポンプは、凍結乾燥装置において用いられてもよい。オイル拡散ポンプは、電子マイクロプローブにおいて用いられてもよい。オイル拡散ポンプは、真空が望ましい他のシステムおよび装置において用いられてもよい。
【0042】
特定の例において、バルブ、冷却トラップなどのさらなる特徴が、本明細書に開示されるオイル拡散ポンプとともに用いられてもよい。オイル拡散ポンプにおいて用いられるオイルの厳密なタイプは変化し得て、好適なオイルは、シリコーンベースのオイル、サントバック(Santovac)(登録商標)ポンプオイル、インランド(Inland)(商標)ポンプオイル、モドック(Modoc)(商標)ポンプオイル、および他の好適なタイプのポンプオイルを含むが、それらに限定されない。ポンプを動かすために用いられる条件は、少なくとも一部には、用いられるオイルのタイプ、所望の圧力、加熱素子のタイプなどに基づいて選択されてもよい。
【0043】
特定の例に従って、オイル拡散ポンプにおいてオイル蒸気が失われるのを抑制する方法を提供する。例によっては、この方法は、複数のアパーチャを伴って構築および配置されたバッフルを有するポンプを構成するステップを備え、アパーチャのうちの少なくとも1つが先細り部と末広がり部とを含む。例によっては、バッフルは、各アパーチャが先細り部と末広がり部とを含むように構成されてもよい。
【0044】
特定の例に従って、質量分析計を構成する方法を提供する。例によっては、この方法は、試料導入装置に近接してオイル拡散ポンプを取付けるステップを備える。上述のように、近接するという用語は、試料導入装置の隣にまたは試料導入装置に隣接して拡散ポンプを取付けることを指す。既存の拡散ポンプは典型的には試料導入装置に近接して取付けられない。なぜなら、オイル蒸気の逆流が分析と干渉するためである。この方法は、先細り部と末広がり部とを備える少なくとも1つのアパーチャを含むバッフルを有するオイル拡散ポンプを構成するステップをさらに備えていてもよい。例によっては、バッフルは、オイル拡散ポンプからオイル蒸気が失われるのを抑制するように構築および配置されてもよい。
【0045】
本明細書に記載される新規の技術をさらに示すために、特定の具体的な例について以下で説明する。
【0046】
例1
以下のようにオイル拡散ポンプを組立てた。熱シールドを除去し、非冷却型の、対称的な、同心の先細り/末広がりバッフルを、上からポンプの口におよび真空チャンバ内に挿入することによって、オイル拡散ポンプ(エドワードからのモデル番号EO50/60)を変更した。1片のアルミニウム棒または板からバッフルを機械加工した。旋盤研削によってバッフル輪郭を作った。フライス削りによって先細り/末広がりアパーチャを作成した。バッフルの寸法は、直径が3.9インチであり、厚みが0.66インチであった。バッフルを重力によって所定の位置に保持した。組立てられた拡散ポンプの概略図が図8に示されている。ポンプ800は、非冷却バッフル810と、噴射アセンブリ820と、オイルを受けるためのチャンバ830と、加熱素子840とを含んでいた。
【0047】
例2
ガスクロマトグラフ(GC)に結合された質量分析計(MS)を用いて、例1のオイル拡散ポンプのテストを行なった。拡散ポンプは、クリーンなMSにおいて十分な期間にわたってポンピングすることを許されると、1ピコグラムのオクタフルオロナフタレン(OFN)信号対ノイズ100:1基準を満たした。名目上の動作条件(1mL/分のGCカラム流)では、約4×10-5トールの真空圧力が達成された。試料とともに通常動作を3〜4週間行なった後、明らかなオイル環境は存在していなかった。ポンプは、スプリットレス注入を用いると、3〜4mL/分のキャリアガス圧力−パルスまで許容した。
【0048】
冠詞「a」、「an」、「the」および「said」は、本明細書に開示される例の要素を紹介するときには、1つ以上の要素があることを意味するように意図されている。「備えている(comprising)」、「含んでいる(including)」および「有している(having)」という用語は、制約がないように意図されており、列挙される要素以外に追加の要素が存在し得ることを意味するように意図されている。この開示のメリットを考慮すると、例のさまざまな構成要素を他の例におけるさまざまな構成要素と交換または置換してもよいことが当業者によって認識される。
【0049】
特定の局面、例および実施例について上述してきたが、この開示のメリットを考慮すると、開示される例示的な局面、例および実施例の追加、置換、変形および変更が可能であることが当業者によって認識される。
【技術分野】
【0001】
技術分野
本明細書に開示される例は概して、拡散ポンプで用いる装置および方法に関する。より詳細には、本明細書に開示される特定の実施例は、質量分析計用のオイル拡散ポンプにおいて用いられ得る装置に関する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0002】
背景
単純なバッフルは、多くの場合、気体をオイル拡散ポンプに注ぎ込んでオイル蒸気がポンプから出て行くのを阻止するための空間の使用の点で効率が悪い。一般的な構造は、光学濃度を達成するために、オフセット、重なり合った板もしくは面、または山形スロットからなっている。さらに、多くの既存のバッフルは、オイル蒸気およびエアゾールのための出口経路が光学的に密であることにより、冷却される量に依拠する。このような構造は、多くの場合、相当な空間、組立およびコストを必要とする。
【課題を解決するための手段】
【0003】
概要
第1の局面に従って、噴射アセンブリと、加熱素子と、チャンバと、バッフルとを備えるオイル拡散ポンプを提供する。特定の例において、バッフルは、チャンバに流体結合されかつ複数のアパーチャを備える非冷却バッフルであってもよく、複数のアパーチャのうちの少なくとも1つは、先細り部と末広がり部とを備える。
【0004】
例によっては、バッフルは、バッフルの中心軸のまわりに対称ないくつかのアパーチャを伴って構築および配置されてもよい。他の例では、バッフルは、バッフルの中心軸のまわりに非対称ないくつかのアパーチャを伴って構築および配置されてもよい。さらなる例では、オイル拡散ポンプは、拡散ポンプに流体結合された追加のポンプをさらに備えていてもよい。特定の例において、バッフルは周方向線状突起をさらに備えていてもよい。他の例では、バッフルは、少なくとも2つの同心の円錐を備えていてもよく、アパーチャは少なくとも2つの同心の円錐の間に位置決めされてもよい。例によっては、バッフルは、少なくとも2つの同心の円錐を接続するように構成された少なくとも1つのリブをさらに備えていてもよい。
【0005】
別の局面に従って、噴射アセンブリと、加熱素子と、チャンバと、チャンバに流体結合されかつ少なくとも2つの同心の円錐を備える非冷却バッフルとを備えるオイル拡散ポンプを開示する。例によっては、バッフルは、2個〜5個の同心の円錐を備えていてもよい。他の例では、ポンプは、オイル拡散ポンプに流体結合された追加のポンプをさらに備えていてもよい。例によっては、バッフルは、周方向線状突起を備えていてもよい。特定の例において、バッフルは、少なくとも2つの同心の円錐の間に位置決めされたアパーチャを含んでいてもよい。
【0006】
さらなる局面に従って、質量分析器と、質量分析器に流体結合された検出器と、質量分析器および検出器に流体結合されたオイル拡散ポンプとを備える質量分析計を提供する。特定の例において、質量分析計のオイル拡散ポンプは、複数のノズルと、加熱素子と、オイルを受けるように構成されかつ加熱素子および噴射アセンブリに結合されたチャンバと、チャンバに流体結合されかつ複数のアパーチャを備える非冷却バッフルとを備え、複数のアパーチャのうちの少なくとも1つは、先細り部と末広がり部とを備える。
【0007】
特定の例において、質量分析計のバッフルは、少なくとも2つの同心の円錐を含み、アパーチャは少なくとも2つの同心の円錐の間に位置決めされる。例によっては、バッフルは、同心の円錐を接続する少なくとも1つのリブを備えていてもよい。特定の例において、質量分析計は、質量分析器に流体結合された試料導入装置をさらに備える。他の例では、質量分析計は、試料導入装置に流体結合されたガスクロマトグラフィシステムをさらに備える。さらなる例では、オイル拡散ポンプは、質量分析計の質量分析器に近接して取付けられてもよい。
【0008】
別の局面に従って、質量分析器と、質量分析器に流体結合された検出器と、質量分析器および検出器に流体結合されたオイル拡散ポンプとを備える質量分析計を開示する。特定の例において、オイル拡散ポンプは、複数のノズルを備える噴射アセンブリと、加熱素子と、オイルを受けるように構成されかつ加熱素子および噴射アセンブリに結合されたチャンバと、チャンバに流体結合されかつ少なくとも2つの同心の円錐を備える非冷却バッフルとを備える。例によっては、バッフルは、少なくとも2つの同心の円錐の間に位置決めされたアパーチャを含んでいてもよい。特定の例において、バッフルは、同心の円錐を接続するように構成された少なくとも1つのリブをさらに備えていてもよい。例によっては、質量分析計は、質量分析器に流体結合された試料導入装置をさらに備えていてもよい。他の例では、質量分析計は、試料導入装置に流体結合されたガスクロマトグラフィシステムをさらに備えていてもよい。特定の例において、オイル拡散ポンプは、質量分析計の質量分析器に近接して取付けられてもよい。
【0009】
さらなる局面に従って、質量分析計を構成する方法を提供する。特定の例において、この方法は、試料導入装置に近接してオイル拡散ポンプを取付けるステップと、先細り部および末広がり部を備える少なくとも1つのアパーチャを含む非冷却バッフルを有するオイル拡散ポンプを構成するステップとを備え、バッフルは、オイル拡散ポンプからオイル蒸気が失われるのを抑制するように構築および配置される。例によっては、この方法は、複数のアパーチャを有するバッフルを構成するステップをさらに備えていてもよく、各アパーチャは、先細り部と末広がり部とを備える。
【0010】
別の局面に従って、試料導入装置に近接してオイル拡散ポンプを取付けるステップと、少なくとも2つの同心の円錐を備える非冷却バッフルを有するオイル拡散ポンプを構成するステップとを備える質量分析計を構成する方法であって、バッフルは、オイル拡散ポンプからオイル蒸気が失われるのを抑制するように構築および配置される方法を開示する。例によっては、この方法は、同心の円錐の間に位置決めされた少なくとも1つのアパーチャを有するバッフルを構成するステップをさらに備えていてもよい。
【0011】
本明細書のメリットを考慮すると、さらなる局面、例、実施例および特徴が当業者によって認識される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】特定の例に従うオイル拡散ポンプの概略図である。
【図2A】特定の例に従うバッフルの上面図である。
【図2B】特定の例に従うバッフルの底面図である。
【図3】特定の例に従う先細り部と末広がり部とを有するアパーチャを備えるバッフルの断面図である。
【図4A】特定の例に従うさまざまなバッフルの形状を示す断面図である。
【図4B】特定の例に従うさまざまなバッフルの形状を示す断面図である。
【図4C】特定の例に従うさまざまなバッフルの形状を示す断面図である。
【図4D】特定の例に従うさまざまなバッフルの形状を示す断面図である。
【図5】特定の例に従う非対称のバッフルを示す断面図である。
【図6】特定の例に従う、ガスケットで非対称にされた対称的なバッフルを示す断面図である。
【図7】特定の例に従う質量分析計のブロック図である。
【図8】特定の例に従う組立てられたオイル拡散ポンプの断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
図面を参照して、特定の実施例について以下でより詳細に説明する。
特に文脈から明らかでない限り、「上部」および「底部」という用語の使用は、任意であり、例示の目的でのみ行なわれ、本明細書に開示される装置はいかなる向きで用いられてもよい。加えて、特定の寸法、特徴、構成要素などは、本明細書に開示される技術をより理解しやすくするために、比例していない態様でまたは従来の態様でない態様で、拡大されているか、歪められているか、または別の方法で示されている可能性がある。
【0014】
詳細な説明
本明細書に開示される技術の特定の特徴、局面および例は、既存のシステムに勝る大きな利点を提供し、この利点には、気体流の改善、機器へのオイル粒子の流入の防止、検出限界の改善などが含まれるが、それらに限定されない。本明細書に開示されるバッフルの特定の実施例は、オイル拡散ポンプ、たとえば質量分析計に結合されたオイル拡散ポンプを有するさまざまなシステムにおいて用いられてもよい。本明細書に開示されるバッフルの例は、任意のオイル拡散ポンプ用に構築および配置されてもよく、一方の方向への気体伝導度を他方の方向への気体伝導度よりも容易に提供する。バッフルの特定の実施例はまた、一方の方向へのオイル蒸気および粒子の流れを大幅に低減することができ、実施例によっては、一方の方向へのオイル蒸気および粒子の流れを防ぐことができる。本明細書に開示されるいくつかの例は、非冷却バッフルに向けられている。「非冷却バッフル」は、本明細書において用いられるときには、積極的な熱除去を行なわないバッフル、たとえば冷却流体を用いることによるバッフルを指す。バッフルが非冷却バッフルである実施例では、バッフルは、冷却バッフルよりも小さな寸法を有していてもよく、平均自由行程を減少させて気体の原子および分子がオイル蒸気およびエアゾールと衝突する可能性を増大させる可能性があり、ポンプの口に触れることなく真空チャンバに存在し得るため、伝導によって熱が直接伝達されない。バッフルは、たとえば、オイルが通過する直接の経路(視線)を妨げるように光学的に密であること、オイル蒸気が凝縮するのに好適な表面積を提供すること、オイルエアゾールまたは微粒子が衝突および付着するのに好適な面を提供すること、オイルが集まって、滴下して、拡散ポンプに戻るのに好適な幾何学的形状を提供することなどの他の利点を提供し得る。
【0015】
特定の例に従って、本明細書に開示されるバッフルはオイル拡散ポンプにおいて用いられてもよい。バッフルを含むオイル拡散ポンプの簡略図が図1に示されている。オイル拡散ポンプ100は、加熱素子120と、気化するオイルを受けるように構成されたエリアまたはチャンバ130と、多段噴射アセンブリ140などの噴射アセンブリと、バッフル150とを含む筐体110を備え、バッフル150は非冷却バッフルとして示されているが、場合によっては冷却バッフルを用いてもよい。ポンプの外面は、たとえばウォータージャケット、もしくは図1に示されるウォーターコイル160および162などのウォーターコイルを用いて、空冷または水冷されてもよい。オイル拡散ポンプ100の動作中、加熱素子120はオイルを気化させるように作動する。オイル蒸気が噴射アセンブリ140の中で上向きに移動すると、オイルは噴射アセンブリのさまざまなノズル、たとえばノズル142および144などの同心の輪の形状のノズルを通して噴射されるかまたは出され、筐体110の冷却壁上で凝縮する。蒸気は、凝縮すると、流体入口170および172などの1つ以上の流体入口(たとえば、気体またはエアゾール入口)を通ってポンプに入る気体分子を同伴する。多段噴射アセンブリ140は、気体オイル分子が高速で噴射口
を通過し、筐体110の壁上で凝縮するときに圧力勾配が作り出されるように設計される。最上部ノズルから出るオイル蒸気は、最も「逆流」しやすく、またはポンプの上に取付けられたチャンバ、入口またはマニホールドに望ましくなく導入されやすい。オイル蒸気の移動により、エリア130付近では高圧が発生し、流体入口170および172ではより低い圧力が発生し、これは流体入口170および172に結合された装置またはチャンバ(図示せず)の圧力を低減させるポンピングをもたらす。流体入口170および172からの同伴された気体は、圧力を増大させてポンプ100の基部に向かって流れ、別のポンプ、たとえばフォアポンプに流体結合され得る出口180を通して排出される。
【0016】
特定の例に従って、非冷却バッフル150は、以下にさらに記載されるように、流体入口170および172に結合された装置またはチャンバにオイル蒸気が入ることを防ぐように構築および配置されてもよい。オイルポンプの特定の実施例においてバッフルを含むことによって、オイルポンプは、オイルが検出器または分析器に入ることなく試料導入装置または試料入口に近接して取付けられてもよく、たとえば、ポンプは数インチ以内に取付けられる場合もあれば、いかなる介在装置もない状態で直接流体結合される場合もある。このような利点は、質量分析計において機器の総底面積を低減するのに特に有用であり得る。また、試料導入装置に近づけて拡散ポンプを取付けることによって、流体結合の向上を達成することができ、ポンプとポンプが取付けられる装置との間の流体結合をより優れたものにする。この構成は、機器による種の検出と干渉し得る気体の除去を増大させ得るおよび/または機器の汚染割合を低減し得る。この開示のメリットを考慮すると、本明細書に開示されるバッフルを使用することのさらなる利点が当業者によって認識される。
【0017】
特定の例に従って、少なくとも2つの同心の円錐を備える非冷却バッフルを開示する。同心の円錐は、ポンプに入る流体、たとえば気体を濃縮させるという利点を有する。この濃縮効果により、入ってくる分子が、上流に移動するオイル蒸気と衝突する可能性が増大する。この効果はまた、バッフルを通るオイルの逆流を抑制する。同心の円錐は空間の効率的な使用ももたらし、これによりバッフルの全体的な大きさが低減し得る。同心の円錐は、円錐をまとめるために逆転する角度およびリブを含んでいてもよい。この構造により、オイル拡散ポンプへの気体伝導の効率が増大し得る(制約の低下および空間使用の最適化)。バッフルの実施例は、ファネリング(漏斗)効果をもたらすための先細り面とデファネリング(逆漏斗)効果をもたらすための末広がり面とを伴って構成されてもよい。この構造はさらに、オイル拡散ポンプから出るオイル蒸気およびエアゾールを阻止ならびに凝縮させる有効性を増大させる。ひとつなぎの構造であるために、バッフルはたとえば単一の金属片から製造され得るが、他の好適な材料を用いることができ、バッフルを容易に設置、取外しおよび洗浄することができる。所望のバッフルの幾何学的形状は、旋盤研削およびフライス削りによって達成されてもよく、選択される材料に起因して元来剛性があり、安定していてもよい。
【0018】
特定の例において、同心の円錐を備える非冷却バッフルの概略図が図2A(上面図)および図2B(底面図)に示されている。バッフル200は、アパーチャ220などのアパーチャによって間隔をおいて配置された円錐205および210などの複数の同心の円錐を備える。同心の円錐およびアパーチャの厳密な構造、数および形状は、オイル拡散ポンプの使用目的に応じて変化し得る。特定の例において、バッフルは、約4個〜約12個の同心の円錐、より詳細には約5個〜約10個の同心の円錐、たとえば約6個〜約9個の同心の円錐を含む。この開示のメリットを考慮すると、バッフルが十分な流体をポンプに流入させ、ポンプからオイル蒸気が失われるのを防ぐまたは抑制する限り、より少数の同心の円錐を用いてもよいことが当業者によって認識される。
【0019】
特定の例において、バッフルにおけるアパーチャの数は、変化し得て、存在する同心の円錐の数によって典型的には決定される。アパーチャの形状および幾何学的形状も、少な
くとも一部には、用いられる同心の円錐の形状およびタイプに基づいていてもよい。図3を参照して、4個の同心の円錐310、312、314および316を備えるバッフル300のアパーチャの断面図が示されている。バッフル300では、アパーチャは、バッフル300の径方向軸に垂直な中心軸(図3ではz軸として示されている)のまわりに対称に間隔をおいて配置され、示される実施例では中心軸の各側に3つのアパーチャがある。バッフル300の上面320からバッフル300の中心まで、アパーチャは、バッフルの中心軸に向かって角度が付いた部分を含む。この部分は、場合によっては、本明細書において「先細り部」と称される。バッフル300の厚みのほぼ中程で、たとえばバッフルの中心で、アパーチャの角度は、逆転するまたはバッフルの中心軸から離れるように変化する。この部分は、場合によっては、本明細書において「末広がり部」と称される。このように、アパーチャの中心からの径方向の距離は、上面からバッフルの中央までは減少し、次いで、バッフルの中央からバッフルの底面に向かって増大している。たとえば、r1はr2よりも大きく、r2はr3未満である。この構造により、オイル蒸気がバッフルから逃げるのを制限しながら流体がバッフルに流入することが可能になる。たとえば、流体入口へのおよび/または拡散ポンプからのオイルのいかなる逆流も最小限に抑えながら気体が拡散ポンプに入り、噴射されたオイル蒸気によって同伴されるように、バッフルは拡散ポンプの上部に置かれて、流体入口および拡散ポンプに流体結合されてもよい。バッフル300におけるアパーチャの各々は先細り部と末広がり部とを含むように示されているが、バッフルは、たった1つのアパーチャまたはすべてのアパーチャに満たないアパーチャが先細り部と末広がり部とを伴って構成されるように構築および配置されてもよい。
【0020】
特定の例に従って、アパーチャの厳密な断面形状は変化し得て、異なる構造は、オイル蒸気がポンプから逃げる可能性を低減しながらポンプへの流体流入を増大させ得る。この開示のメリットを考慮すると、圧力差が作り出されかつ相当量のオイル蒸気がポンプから出ることがない限りいずれの所望のアパーチャ断面形状を用いてもよいことを当業者は認識する。特定の例において、アパーチャは、図4Aのアパーチャ405に示されるように複数の先細り部および末広がり部を含んでいてもよい。例によっては、アパーチャは非対称であってもよく、径方向軸の下よりも径方向軸の上の部分が長い。このタイプのアパーチャの例が、図4Bにおけるアパーチャ410として示されている。他の例では、アパーチャは、気体流に対する抵抗をより低くするように丸い屈曲または湾曲を伴って構成されてもよい。丸みを帯びた屈曲を有するアパーチャの例が、図4Cにおけるアパーチャ415として示されている。例によっては、アパーチャは、図4Dのアパーチャ420に示されるように、(上面から底面に)まず末広がりになり、先細りになっていてもよい。このようなアパーチャの形状は、たとえばバッフルにおいて用いられる円錐について特定の構造を選択することによって選択されてもよく、アパーチャは隣接する円錐同士の間の空間によって作り出される。円錐をまとめるためにリブなどを用いてもよい。加えて、バッフルの異なるエリアに異なるアパーチャの形状が存在するように円錐の形状は非対称であってもよい。この開示のメリットを考慮すると、アパーチャの他の構成が当業者によって容易に選択される。
【0021】
特定の例に従って、本明細書に開示されるバッフルは、アパーチャが中心軸(図3)のまわりに対称に配置されるように、またはアパーチャが中心軸のまわりに非対称に配置されるように設計されてもよい。たとえばおよび図5を参照して、バッフル500はバッフル500の左側にアパーチャ502、504、506および508を備え、バッフル500の右側にアパーチャ510および512を備える。たとえばバッフルの一方の端部に向かう流体流が他方の端部に向かう流体流よりも多い場合には、非対称のバッフルを用いることが望ましいであろう。たとえば、バッフルの右側よりもバッフルの左側の気体流が高い場合には、アパーチャの量が左側で多くなっている非対称のバッフルを用いることが望ましいであろう。このような構成により、右側よりも左側からより多くの量の流体を引寄せることが可能である。非対称のバッフルは、たとえば非対称の円錐を用いることによっ
て、同心の円錐同士の間の空間を金属などの構造材料で充填することによって製造される場合もあれば、蓋、ガスケットなどを用いて選択されたアパーチャを覆うことによって製造される場合もある。金属ガスケット605を用いて非対称にされた対称的なバッフル600の例が図6に示されている。バッフル600の一方の側で選択されたアパーチャを封止するために第2の金属ガスケット610も用いてもよいが、特定の例では、オイル蒸気がアパーチャに入って凝縮するようにガスケット610を省略することが望ましいであろう。ガスケットを用いて非対称のバッフルを作り出す実施例では、ガスケットの周囲からいかなるオイルも逃げることを防ぐまたは抑制する流体密封を与えるために、高温封止材または類似の材料がガスケットとバッフル面との間に置かれてもよい。図5および図6に示されるバッフルは(上から下に)先細りになって次いで末広がりになるアパーチャを含むように構成されているが、この開示のメリットを考慮すると、冷却バッフルまたは非冷却バッフルのいずれかである非対称のバッフルの他のアパーチャの形状および構造が当業者によって容易に選択される。
【0022】
特定の例に従って、本明細書に開示される冷却バッフルは、バッフル内で冷却流体を循環させるための入口および出口を含んでいてもよい。バッフルの冷却は、たとえば、バッフル面上でオイル蒸気を凝縮させてオイル蒸気が逆流するのを防ぐために望ましいであろう。例によっては、冷却流体は、水、水の沸点を上げるために添加剤、たとえば塩類、エチレングリコールなどを含む水、気化温度が拡散ポンプの動作温度を上回る他の何らかの流体であってもよい。例によっては、冷却流体の温度は、オイル蒸気が凝縮するが、流体入口からポンプに入る流体が任意の実質的な程度まで凝縮しないように選択されてもよい。気体の凝縮はポンプオイルの汚染および/またはポンプ性能の低下をもたらす可能性があり、ポンプオイルを頻繁に取替える必要がある。
【0023】
特定の例に従って、本明細書に開示されるバッフルの厳密な寸法は、ポンプ、ポンプ筐体の大きさ、所望の流量、所望の真空などに応じて変化し得る。例によっては、バッフルは(上または下から見ると)概して円形であり、その直径は約3〜6インチ、より詳細には約3〜5インチ、たとえば約4インチである。特定の例において、バッフルの上部から底部までの厚みは、約0.25〜約2インチ、より詳細には約0.5インチ〜約1.5インチ、たとえば約0.75インチであってもよい。バッフルが冷却される実施例では、冷却流体の入口および/または出口を設けるために寸法全体を増大させることが望ましいであろう。
【0024】
特定の例に従って、バッフルを製造するために用いられる厳密な材料は変化し得て、選択される材料は、ポンプ性能にいかなる実質的な悪影響も及ぼすことなくポンプ筐体における高温および高圧に耐えることができる任意の材料であってもよい。例によっては、バッフルは、金属、高温ポリマーまたはそれらの組合せを含んでいてもよい。特定の例において、望ましくはバッフルにおいて用いられる材料は、ポンプが真空を与えている装置、たとえば質量分析計、電子顕微鏡、半導体処理設備などに悪影響を及ぼし得るいかなる微粒子または気体も実質的に抜くまたは放出することがない。例によっては、バッフルは、バッフルにおいて腐食を抑制または低減するためにステンレス鋼または他の概して不活性の材料から作られてもよい。
【0025】
特定の例に従って、本明細書に開示されるバッフルは、ポンプへのバッフルの取付を支援する1つ以上の印を含んでいてもよい。このような印は、矢印、テキストまたは構造的特徴を含んでいてもよい。たとえば、1つの向きにのみ正確にバッフルがポンプに取付けられるように周方向線状突起が含まれていてもよい。バッフルの中心軸に平行な周方向溝が、ポンプにおける取付部材と噛合うように含まれていてもよい。このような溝は、ポンプへのバッフルの取付を支援するように好適に角度が付いていてもよい。たとえば、溝は、単一の向きにのみバッフルがポンプに取付けられるように角度が付いていてもよい。
【0026】
特定の例に従って、本明細書に開示されるバッフルは、同心の円錐以外の形状を含んでいてもよい。特に、特定の実施例は、固体金属ディスクに機械加工されるかまたは穴をあけられた先細り部および末広がり部を有するアパーチャを含んでいてもよい。他の実施例は、本体にエッチングされるかまたは別の方法で本体から製造されたアパーチャを含む。例によっては、所望の形状ならびに/または所望のアパーチャ間隔および配置を有する一体型本体を提供するために2つ以上の部品または部分の接合部を含む。この開示のメリットを考慮すると、拡散ポンプで用いるのに好適なバッフルを製造するためのさらなる構成が当業者によって容易に選択される。
【0027】
特定の例において、本明細書に開示される拡散ポンプは、1つ以上の追加のポンプ、たとえばメカニカルポンプ、フォアポンプ、ターボ分子ポンプなどに結合されてもよい。たとえば、拡散ポンプの真空チャンバから気体の大部分を除去するために単純なメカニカルポンプを用いてもよい。拡散ポンプは、さらに気体を除去して圧力を低下させるように作動してもよく、その結果、真空を引寄せる。好適なポンプは、回転ポンプ、オイルレス(ドライ)ポンプ、スクロールポンプ、分子吸収ポンプ、ダイヤフラムポンプなどを含むが、それらに限定されない。この開示のメリットを考慮すると、さらなる好適なポンプが当業者によって容易に選択される。
【0028】
特定の例に従って、本明細書に開示されるバッフルは、バッフルにおいて用いられる同心の円錐または他の幾何学的構造に加えて、光学濃度を達成するために、1つ以上の重なり合った板もしくは面、または山形スロットを含んでいてもよい。このような板および山形により、ポンプへの流体流入をさらに調整することができ、ポンプから出るオイル蒸気をさらに抑制することができる。
【0029】
特定の例に従って、バッフル、たとえば冷却バッフルまたは非冷却バッフルを含む本明細書に開示されるオイル拡散ポンプは、圧力が約1×10-6トール〜約4×10-7トールまたはそれより低い圧力まで下がった真空を提供してもよい。オイル拡散ポンプが質量分析計において用いられる実施例では、オイル拡散ポンプは、圧力が約3×10-5トール〜約1×10-5トールまたはそれより低い圧力の真空を提供してもよい。本明細書に開示されるオイル拡散ポンプを用いてさらなる好適な圧力が可能である。
【0030】
特定の例に従って、本明細書に開示されるバッフルは、質量分析計に結合されたオイル拡散ポンプにおいて用いられてもよい。質量分析計(MS)の概略図が図7に示されている。質量分析計700は、試料導入装置710と、イオン源720と、質量分析器730と、検出器740と、プロセッサ750と、拡散ポンプ760とを備える。本明細書に開示される(冷却または非冷却)バッフルのうちの1つを含む拡散ポンプ760は、減圧下でシステムが動かされるように、試料導入装置710、イオン源720、質量分析器730および検出器740に真空を与えるように作動する。しかしながら、特定の例では、減圧下では、質量分析器730および検出器740のみが動かされ得る。特定の例において、試料導入装置710は、バッチタイプ入口、直接プローブ入口、または質量分析計がクロマトグラフィシステムに結合される場合には、クロマトグラフ入口、たとえばジェットセパレータを含む入口を含んでいてもよい。試料導入装置720は、注入器、噴霧器、または試料をシステムに導入し得る他の好適な装置を含んでいてもよい。
【0031】
特定の例に従って、質量分析器730は、概して試料の性質、所望の分解能などに応じて多くの形態を取り得て、例示的な質量分析器が以下に列挙される。検出器740は、既存の質量分析計、たとえば電子増倍管、光電子増倍管、ファラデーカップ、コーティングされた写真乾板、イオントラップ、シンチレーション検出器などとともに用いられ得る任意の好適な検出装置、およびこの開示のメリットを考慮して当業者によって選択される他
の好適な装置であってもよい。プロセッサ750は典型的には、MS700に導入された試料を分析するために、マイクロプロセッサおよび/またはコンピュータおよび好適なソフトウェアを含む。MS700に導入された種の化学的同一性を判断するために、1つ以上のデータベースがプロセッサ750によってアクセスされてもよい。また、当該技術分野において公知の他の好適なさらなる装置が、パーキンエルマー・インコーポレイテッド(マサチューセッツ州ウォルサム)から市販されているターボマトリックス(TurboMatrix)モデルとともに用いられるものなどのオートサンプラー(autosampler)を含むがそれに限定されないMS700とともに用いられてもよい。
【0032】
特定の例に従って、MS700の質量分析器は、所望の分解能および導入された試料の性質に応じて多くの形態を取り得る。特定の例において、質量分析器は、走査質量分析器、(たとえば、単一および二重集束MS装置で用いる)磁場分析器、四重極質量分析器、イオントラップ分析器(たとえば、サイクロトロン、四重極イオントラップ)、飛行時間分析器(たとえば、マトリックス支援レーザ脱離イオン化飛行時間分析器)、および質量対電荷比率が異なる種を分離し得る他の好適な質量分析器であってもよい。
【0033】
特定の他の例に従って、イオン源は、質量分析において一般に用いられるイオン化方法を実現するために装置を含んでいてもよい。たとえば、イオンが質量分析器に入る前に種をイオン化するために電子衝撃源が組立てられてもよい。他の例では、イオンが質量分析器に入る前に種をイオン化するために化学イオン化源が用いられてもよい。さらに他の例では、イオンが質量分析器に入る前に種をイオン化するために電界イオン化源が用いられてもよい。さらに他の例では、たとえば原子の高速打込み、電界脱離、レーザ脱離、プラズマ脱離、熱脱離、エレクトロハイドロダイナミックイオン化/脱離などのために構成された供給源などの脱離源が用いられてもよい。さらに他の例では、サーモスプレーイオン化源が用いられてもよい。この開示のメリットを考慮すると、本明細書に開示される装置とともに用いるイオン化のための好適な装置を選択することは当業者の能力の範囲内である。
【0034】
特定の例に従って、MSはガスクロマトグラフなどのクロマトグラフィシステムに結合されてもよい。ガスクロマトグラフは概して、試料導入装置と、クロマトグラフィカラムを備えるオーブンと、試料導入装置およびクロマトグラフィカラムを接続する1つ以上の流体流経路とを含む。ガスクロマトグラフは、種を分離し、それらの分離した種を検出のためにMSに渡すように作動する。他の例では、MSは液体クロマトグラフまたは超臨界流体クロマトグラフに結合されてもよい。この開示のメリットを考慮すると、MSに結合するためのさらなる好適な装置が当業者によって容易に選択される。
【0035】
特定の例に従って、MSは別のMSに結合されてもよい。第2のMSは、本明細書に記載されるポンプに類似した拡散ポンプを含む場合もあれば、ターボ分子ポンプまたは他の好適なタイプのポンプを含む場合もある。MSシステムにおいて拡散ポンプを用いることにより、総コストが大幅に下がる。ターボ分子ポンプを有する第2のMSシステムが、高流量、たとえば250L/秒またはそれ以上の流量を受けることができる第2の段として構成されてもよい。拡散ポンプを有する第1の段とターボ分子ポンプを有する第2の段との組合せにより、高い総流量をもたらしながらシステムの総コストを下げることができる。この開示のメリットを考慮すると、第1のMS段がターボ分子ポンプを含み、第2のMS段が拡散ポンプを含むように、第1および第2の段を逆にしてもよいことが当業者によって認識される。このような構成では、第2のMS段にとって許容可能なレベルまで流量を低減するために気体ストリームの一部を逃がすことが望ましいであろう。
【0036】
特定の例に従って、本明細書に開示されるポンプおよびMSシステムは概して、1つ以上のアルゴリズムを実装するソフトウェアを用いて制御されるように構成される。好適な
ソフトウェアは、たとえばパーキンエルマー・インコーポレイテッド(マサチューセッツ州ウォルサム)から市販されており、クラルス(Clarus)(登録商標)600質量分析計とともに使用できるターボマス(TurboMass)(商標)GC/MSソフトウェアを含む。この開示のメリットを考慮すると、本明細書に開示される装置とともに用いる他の好適なアルゴリズムを選択することは当業者の能力の範囲内である。
【0037】
特定の例に従って、本明細書に開示されるオイル拡散ポンプに結合された質量分析計の感度は、少なくとも一部には、検出される種、用いられる検出器のタイプなどに依存する。光電子増倍管を用いると、たとえば信号対ノイズ比率が30:1の約1ピコグラムのオクタフルオロナフタレンを検出することが可能であろう。本明細書に記載されるバッフルを含む低コストオイル拡散ポンプを含む質量分析計によってこのような低い検出限界を達成できることは大きな利点である。
【0038】
特定の例に従って、光学機器に真空を与えるために、本明細書に開示される装置が用いられてもよい。たとえば、真空円偏光二色性、真空紫外線、X線分光法、または酸素もしくは空気が光を吸収し得る他の光学的技術は、真空を用いて、試料チャンバからいかなる空気または酸素も取除く。低コストでおよび逆流によるいかなる実質的な汚染もない状態で、真空を与えて、光吸収、光放射、またはそれら両方を測定するために、本明細書に開示されるオイル拡散ポンプがこのような分析装置において用いられてもよい。
【0039】
特定の例に従って、本明細書に開示されるバッフルは、電子顕微鏡に結合されたオイル拡散ポンプにおいて用いられてもよい。特定の例において、電子顕微鏡は、電子ビームまたは電子供給源と、試料ホルダと、1つ以上のコンデンサと、対物レンズと、コレクタ画面とを備える。透過電子顕微鏡では、電流を印加することによって陰極が加熱されると、電子が発生する。電子は陽極における高圧に向かって移動する。加速電圧は典型的には50〜150kVの間である。電圧差が高くなればなるほど、電子波はより短くなり、これによって顕微鏡の分解能が増大する。加速した電子ビームは、陽極の底部におけるアパーチャを通過する。顕微鏡は典型的には、電磁場を発生させる電子コイルからなるレンズシステムを含む。電子ビームはまずコンデンサによって集束され、試料を通過して、そこで電子のうちのいくつかが偏向される。偏向の度合は対象物の質量対電荷比率に依存する。原子の質量が大きくなればなるほど、偏向の度合が大きくなる。低原子番号を有する原子の場合、少なくともいくらかのコントラストを得るために試料をコントラスト強調化学物質(重金属)で処理することが望ましいであろう。散乱した電子は、試料を通過した後、対物レンズによって集められ、画像が形成される。この画像は、第2のレンズを用いて、処理されてもよく、デジタル的に強調されてもよく、または拡大されてもよい。形成された画像は、たとえば蛍光スクリーンまたは写真材料を用いて閲覧することができる。本明細書に開示されるオイル拡散ポンプは、顕微鏡内に真空を与えるために透過顕微鏡に結合されてもよい。
【0040】
特定の例に従って、本明細書に開示されるバッフルは、半導体処理装置およびシステムに結合されたオイル拡散ポンプにおいて用いられてもよい。このような装置は、蒸着装置、たとえば真空蒸着装置、物理蒸着装置、スパッタリング装置などを含むが、それらに限定されない。たとえば、薄膜デバイスを堆積させるまたは保護もしくはバリアコーティングを堆積させて、腐食を防ぐまたは過酷な環境に耐えるようにするために、オイル拡散ポンプが用いられてもよい。他の例では、真空蒸着チャンバにおいて低下した圧力を与えるためにオイル拡散ポンプが用いられてもよい。たとえば、蒸発する材料がチャンバに置かれてもよい。電子ビームはチャンバの中の材料に入射し得て、電子ビームによって生じる加熱が材料を蒸発させる。蒸発した材料を受けるために基板がチャンバ内に位置決めされてもよい。基板と材料との間の距離は、マニピュレータなどの機械的装置を用いて調節されてもよい。蒸発した材料は、たとえばアルミナ、ジルコニア、チタニアなどの特定の耐
火物の場合には、基板上に凝縮によって堆積させられてもよく、または蒸発した材料は反応性ガスによって基板に運ばれてもよい。共同蒸発プロセスも用いられてもよい。この開示のメリットを考慮すると、本明細書に開示されるオイル拡散ポンプとともに用いるのに好適なさらなる蒸着プロセスおよび装置が当業者によって容易に選択される。
【0041】
特定の例において、オイル拡散ポンプは他の装置において用いられてもよい。たとえば、オイル拡散ポンプは、分子ビームエピタキシなどの結晶成長用に設計された装置および方法とともに用いられてもよい。オイル拡散ポンプは、凍結乾燥装置において用いられてもよい。オイル拡散ポンプは、電子マイクロプローブにおいて用いられてもよい。オイル拡散ポンプは、真空が望ましい他のシステムおよび装置において用いられてもよい。
【0042】
特定の例において、バルブ、冷却トラップなどのさらなる特徴が、本明細書に開示されるオイル拡散ポンプとともに用いられてもよい。オイル拡散ポンプにおいて用いられるオイルの厳密なタイプは変化し得て、好適なオイルは、シリコーンベースのオイル、サントバック(Santovac)(登録商標)ポンプオイル、インランド(Inland)(商標)ポンプオイル、モドック(Modoc)(商標)ポンプオイル、および他の好適なタイプのポンプオイルを含むが、それらに限定されない。ポンプを動かすために用いられる条件は、少なくとも一部には、用いられるオイルのタイプ、所望の圧力、加熱素子のタイプなどに基づいて選択されてもよい。
【0043】
特定の例に従って、オイル拡散ポンプにおいてオイル蒸気が失われるのを抑制する方法を提供する。例によっては、この方法は、複数のアパーチャを伴って構築および配置されたバッフルを有するポンプを構成するステップを備え、アパーチャのうちの少なくとも1つが先細り部と末広がり部とを含む。例によっては、バッフルは、各アパーチャが先細り部と末広がり部とを含むように構成されてもよい。
【0044】
特定の例に従って、質量分析計を構成する方法を提供する。例によっては、この方法は、試料導入装置に近接してオイル拡散ポンプを取付けるステップを備える。上述のように、近接するという用語は、試料導入装置の隣にまたは試料導入装置に隣接して拡散ポンプを取付けることを指す。既存の拡散ポンプは典型的には試料導入装置に近接して取付けられない。なぜなら、オイル蒸気の逆流が分析と干渉するためである。この方法は、先細り部と末広がり部とを備える少なくとも1つのアパーチャを含むバッフルを有するオイル拡散ポンプを構成するステップをさらに備えていてもよい。例によっては、バッフルは、オイル拡散ポンプからオイル蒸気が失われるのを抑制するように構築および配置されてもよい。
【0045】
本明細書に記載される新規の技術をさらに示すために、特定の具体的な例について以下で説明する。
【0046】
例1
以下のようにオイル拡散ポンプを組立てた。熱シールドを除去し、非冷却型の、対称的な、同心の先細り/末広がりバッフルを、上からポンプの口におよび真空チャンバ内に挿入することによって、オイル拡散ポンプ(エドワードからのモデル番号EO50/60)を変更した。1片のアルミニウム棒または板からバッフルを機械加工した。旋盤研削によってバッフル輪郭を作った。フライス削りによって先細り/末広がりアパーチャを作成した。バッフルの寸法は、直径が3.9インチであり、厚みが0.66インチであった。バッフルを重力によって所定の位置に保持した。組立てられた拡散ポンプの概略図が図8に示されている。ポンプ800は、非冷却バッフル810と、噴射アセンブリ820と、オイルを受けるためのチャンバ830と、加熱素子840とを含んでいた。
【0047】
例2
ガスクロマトグラフ(GC)に結合された質量分析計(MS)を用いて、例1のオイル拡散ポンプのテストを行なった。拡散ポンプは、クリーンなMSにおいて十分な期間にわたってポンピングすることを許されると、1ピコグラムのオクタフルオロナフタレン(OFN)信号対ノイズ100:1基準を満たした。名目上の動作条件(1mL/分のGCカラム流)では、約4×10-5トールの真空圧力が達成された。試料とともに通常動作を3〜4週間行なった後、明らかなオイル環境は存在していなかった。ポンプは、スプリットレス注入を用いると、3〜4mL/分のキャリアガス圧力−パルスまで許容した。
【0048】
冠詞「a」、「an」、「the」および「said」は、本明細書に開示される例の要素を紹介するときには、1つ以上の要素があることを意味するように意図されている。「備えている(comprising)」、「含んでいる(including)」および「有している(having)」という用語は、制約がないように意図されており、列挙される要素以外に追加の要素が存在し得ることを意味するように意図されている。この開示のメリットを考慮すると、例のさまざまな構成要素を他の例におけるさまざまな構成要素と交換または置換してもよいことが当業者によって認識される。
【0049】
特定の局面、例および実施例について上述してきたが、この開示のメリットを考慮すると、開示される例示的な局面、例および実施例の追加、置換、変形および変更が可能であることが当業者によって認識される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
オイル拡散ポンプであって、
複数のノズルを備える噴射アセンブリと、
加熱素子と、
オイルを受けるように構成され、かつ、前記加熱素子および前記噴射アセンブリに結合されたチャンバと、
前記チャンバに流体結合され、かつ、複数のアパーチャを備える非冷却バッフルとを備え、前記複数のアパーチャのうちの少なくとも1つは、先細り部と末広がり部とを備える、オイル拡散ポンプ。
【請求項2】
前記非冷却バッフルは、前記バッフルの中心軸のまわりに対称ないくつかのアパーチャを伴って構築および配置される、請求項1に記載のオイル拡散ポンプ。
【請求項3】
前記非冷却バッフルは、前記バッフルの中心軸のまわりに非対称ないくつかのアパーチャを伴って構築および配置される、請求項1に記載のオイル拡散ポンプ。
【請求項4】
前記拡散ポンプに流体結合された追加のポンプをさらに備える、請求項1に記載のオイル拡散ポンプ。
【請求項5】
前記非冷却バッフルは、周方向線状突起をさらに備える、請求項1に記載のオイル拡散ポンプ。
【請求項6】
前記バッフルは少なくとも2つの同心の円錐を含み、アパーチャは前記少なくとも2つの同心の円錐の間に位置決めされる、請求項1に記載のオイル拡散ポンプ。
【請求項7】
前記バッフルは、前記同心の円錐を接続する少なくとも1つのリブをさらに備える、請求項6に記載のオイル拡散ポンプ。
【請求項8】
オイル拡散ポンプであって、
複数のノズルを備える噴射アセンブリと、
加熱素子と、
オイルを受けるように構成され、かつ、前記加熱素子および前記噴射アセンブリに結合されたチャンバと、
前記チャンバに流体結合され、かつ、少なくとも2つの同心の円錐を備える非冷却バッフルとを備える、オイル拡散ポンプ。
【請求項9】
前記非冷却バッフルは、2個〜5個の同心の円錐を備える、請求項8に記載のオイル拡散ポンプ。
【請求項10】
前記拡散ポンプに流体結合された追加のポンプをさらに備える、請求項8に記載のオイル拡散ポンプ。
【請求項11】
前記非冷却バッフルは、周方向線状突起をさらに備える、請求項8に記載のオイル拡散ポンプ。
【請求項12】
前記非冷却バッフルは、前記少なくとも2つの同心の円錐の間に位置決めされたアパーチャを含む、請求項8に記載のオイル拡散ポンプ。
【請求項13】
質量分析計であって、
質量分析器と、
前記質量分析器に流体結合された検出器と、
前記質量分析器および前記検出器に流体結合されたオイル拡散ポンプとを備え、前記オイル拡散ポンプは、
複数のノズルを備える噴射アセンブリと、
加熱素子と、
オイルを受けるように構成され、かつ、前記加熱素子および前記噴射アセンブリに結合されたチャンバと、
前記チャンバに流体結合され、かつ、複数のアパーチャを備える非冷却バッフルとを備え、前記複数のアパーチャのうちの少なくとも1つは、先細り部と末広がり部とを備える、質量分析計。
【請求項14】
前記非冷却バッフルは少なくとも2つの同心の円錐を含み、アパーチャは前記少なくとも2つの同心の円錐の間に位置決めされる、請求項1に記載の質量分析計。
【請求項15】
前記非冷却バッフルは、前記同心の円錐を接続する少なくとも1つのリブをさらに備える、請求項14に記載の質量分析計。
【請求項16】
前記質量分析器に流体結合された試料導入装置をさらに備える、請求項13に記載の質量分析計。
【請求項17】
前記試料導入装置に流体結合されたガスクロマトグラフィシステムをさらに備える、請求項16に記載の質量分析計。
【請求項18】
前記オイル拡散ポンプは、前記試料導入装置に近接して取付けられる、請求項16に記載の質量分析計。
【請求項19】
質量分析計であって、
質量分析器と、
前記質量分析器に流体結合された検出器と、
前記質量分析器および前記検出器に流体結合されたオイル拡散ポンプとを備え、前記オイル拡散ポンプは、
複数のノズルを備える噴射アセンブリと、
加熱素子と、
オイルを受けるように構成され、かつ、前記加熱素子および前記噴射アセンブリに結合されたチャンバと、
前記チャンバに流体結合され、かつ、少なくとも2つの同心の円錐を備える非冷却バッフルとを備える、質量分析計。
【請求項20】
前記非冷却バッフルは、前記少なくとも2つの同心の円錐の間に位置決めされたアパーチャを含む、請求項19に記載の質量分析計。
【請求項21】
前記非冷却バッフルは、前記同心の円錐を接続する少なくとも1つのリブをさらに備える、請求項20に記載の質量分析計。
【請求項22】
前記質量分析器に流体結合された試料導入装置をさらに備える、請求項19に記載の質量分析計。
【請求項23】
前記試料導入装置に流体結合されたガスクロマトグラフィシステムをさらに備える、請求項22に記載の質量分析計。
【請求項24】
前記オイル拡散ポンプは、前記試料導入装置に近接して取付けられる、請求項19に記載の質量分析計。
【請求項25】
質量分析計を構成する方法であって、
試料導入装置に近接してオイル拡散ポンプを取付けるステップと、
先細り部と末広がり部とを備える少なくとも1つのアパーチャを含む非冷却バッフルを有する前記オイル拡散ポンプを構成するステップとを備え、前記バッフルは、前記オイル拡散ポンプからオイル蒸気が失われるのを抑制するように構築および配置される、方法。
【請求項26】
複数のアパーチャを有する前記非冷却バッフルを構成するステップをさらに備え、各アパーチャは、先細り部と末広がり部とを備える、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
質量分析計を構成する方法であって、
試料導入装置に近接してオイル拡散ポンプを取付けるステップと、
少なくとも2つの同心の円錐を備える非冷却バッフルを有する前記オイル拡散ポンプを構成するステップとを備え、前記バッフルは、前記オイル拡散ポンプからオイル蒸気が失われるのを抑制するように構築および配置される、方法。
【請求項28】
前記同心の円錐の間に位置決めされた少なくとも1つのアパーチャを有する前記非冷却バッフルを構成するステップをさらに備える、請求項27に記載の方法。
【請求項1】
オイル拡散ポンプであって、
複数のノズルを備える噴射アセンブリと、
加熱素子と、
オイルを受けるように構成され、かつ、前記加熱素子および前記噴射アセンブリに結合されたチャンバと、
前記チャンバに流体結合され、かつ、複数のアパーチャを備える非冷却バッフルとを備え、前記複数のアパーチャのうちの少なくとも1つは、先細り部と末広がり部とを備える、オイル拡散ポンプ。
【請求項2】
前記非冷却バッフルは、前記バッフルの中心軸のまわりに対称ないくつかのアパーチャを伴って構築および配置される、請求項1に記載のオイル拡散ポンプ。
【請求項3】
前記非冷却バッフルは、前記バッフルの中心軸のまわりに非対称ないくつかのアパーチャを伴って構築および配置される、請求項1に記載のオイル拡散ポンプ。
【請求項4】
前記拡散ポンプに流体結合された追加のポンプをさらに備える、請求項1に記載のオイル拡散ポンプ。
【請求項5】
前記非冷却バッフルは、周方向線状突起をさらに備える、請求項1に記載のオイル拡散ポンプ。
【請求項6】
前記バッフルは少なくとも2つの同心の円錐を含み、アパーチャは前記少なくとも2つの同心の円錐の間に位置決めされる、請求項1に記載のオイル拡散ポンプ。
【請求項7】
前記バッフルは、前記同心の円錐を接続する少なくとも1つのリブをさらに備える、請求項6に記載のオイル拡散ポンプ。
【請求項8】
オイル拡散ポンプであって、
複数のノズルを備える噴射アセンブリと、
加熱素子と、
オイルを受けるように構成され、かつ、前記加熱素子および前記噴射アセンブリに結合されたチャンバと、
前記チャンバに流体結合され、かつ、少なくとも2つの同心の円錐を備える非冷却バッフルとを備える、オイル拡散ポンプ。
【請求項9】
前記非冷却バッフルは、2個〜5個の同心の円錐を備える、請求項8に記載のオイル拡散ポンプ。
【請求項10】
前記拡散ポンプに流体結合された追加のポンプをさらに備える、請求項8に記載のオイル拡散ポンプ。
【請求項11】
前記非冷却バッフルは、周方向線状突起をさらに備える、請求項8に記載のオイル拡散ポンプ。
【請求項12】
前記非冷却バッフルは、前記少なくとも2つの同心の円錐の間に位置決めされたアパーチャを含む、請求項8に記載のオイル拡散ポンプ。
【請求項13】
質量分析計であって、
質量分析器と、
前記質量分析器に流体結合された検出器と、
前記質量分析器および前記検出器に流体結合されたオイル拡散ポンプとを備え、前記オイル拡散ポンプは、
複数のノズルを備える噴射アセンブリと、
加熱素子と、
オイルを受けるように構成され、かつ、前記加熱素子および前記噴射アセンブリに結合されたチャンバと、
前記チャンバに流体結合され、かつ、複数のアパーチャを備える非冷却バッフルとを備え、前記複数のアパーチャのうちの少なくとも1つは、先細り部と末広がり部とを備える、質量分析計。
【請求項14】
前記非冷却バッフルは少なくとも2つの同心の円錐を含み、アパーチャは前記少なくとも2つの同心の円錐の間に位置決めされる、請求項1に記載の質量分析計。
【請求項15】
前記非冷却バッフルは、前記同心の円錐を接続する少なくとも1つのリブをさらに備える、請求項14に記載の質量分析計。
【請求項16】
前記質量分析器に流体結合された試料導入装置をさらに備える、請求項13に記載の質量分析計。
【請求項17】
前記試料導入装置に流体結合されたガスクロマトグラフィシステムをさらに備える、請求項16に記載の質量分析計。
【請求項18】
前記オイル拡散ポンプは、前記試料導入装置に近接して取付けられる、請求項16に記載の質量分析計。
【請求項19】
質量分析計であって、
質量分析器と、
前記質量分析器に流体結合された検出器と、
前記質量分析器および前記検出器に流体結合されたオイル拡散ポンプとを備え、前記オイル拡散ポンプは、
複数のノズルを備える噴射アセンブリと、
加熱素子と、
オイルを受けるように構成され、かつ、前記加熱素子および前記噴射アセンブリに結合されたチャンバと、
前記チャンバに流体結合され、かつ、少なくとも2つの同心の円錐を備える非冷却バッフルとを備える、質量分析計。
【請求項20】
前記非冷却バッフルは、前記少なくとも2つの同心の円錐の間に位置決めされたアパーチャを含む、請求項19に記載の質量分析計。
【請求項21】
前記非冷却バッフルは、前記同心の円錐を接続する少なくとも1つのリブをさらに備える、請求項20に記載の質量分析計。
【請求項22】
前記質量分析器に流体結合された試料導入装置をさらに備える、請求項19に記載の質量分析計。
【請求項23】
前記試料導入装置に流体結合されたガスクロマトグラフィシステムをさらに備える、請求項22に記載の質量分析計。
【請求項24】
前記オイル拡散ポンプは、前記試料導入装置に近接して取付けられる、請求項19に記載の質量分析計。
【請求項25】
質量分析計を構成する方法であって、
試料導入装置に近接してオイル拡散ポンプを取付けるステップと、
先細り部と末広がり部とを備える少なくとも1つのアパーチャを含む非冷却バッフルを有する前記オイル拡散ポンプを構成するステップとを備え、前記バッフルは、前記オイル拡散ポンプからオイル蒸気が失われるのを抑制するように構築および配置される、方法。
【請求項26】
複数のアパーチャを有する前記非冷却バッフルを構成するステップをさらに備え、各アパーチャは、先細り部と末広がり部とを備える、請求項25に記載の方法。
【請求項27】
質量分析計を構成する方法であって、
試料導入装置に近接してオイル拡散ポンプを取付けるステップと、
少なくとも2つの同心の円錐を備える非冷却バッフルを有する前記オイル拡散ポンプを構成するステップとを備え、前記バッフルは、前記オイル拡散ポンプからオイル蒸気が失われるのを抑制するように構築および配置される、方法。
【請求項28】
前記同心の円錐の間に位置決めされた少なくとも1つのアパーチャを有する前記非冷却バッフルを構成するステップをさらに備える、請求項27に記載の方法。
【図1】
【図2A】
【図2B】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図4D】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図2A】
【図2B】
【図3】
【図4A】
【図4B】
【図4C】
【図4D】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【公表番号】特表2010−501780(P2010−501780A)
【公表日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−525791(P2009−525791)
【出願日】平成19年8月24日(2007.8.24)
【国際出願番号】PCT/US2007/076742
【国際公開番号】WO2008/024964
【国際公開日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【出願人】(505359506)パーキンエルマー・ヘルス・サイエンシズ・インコーポレーテッド (28)
【氏名又は名称原語表記】PERKINELMER HEALTH SCIENCES, INC.
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年1月21日(2010.1.21)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年8月24日(2007.8.24)
【国際出願番号】PCT/US2007/076742
【国際公開番号】WO2008/024964
【国際公開日】平成20年2月28日(2008.2.28)
【出願人】(505359506)パーキンエルマー・ヘルス・サイエンシズ・インコーポレーテッド (28)
【氏名又は名称原語表記】PERKINELMER HEALTH SCIENCES, INC.
【Fターム(参考)】
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