説明

バドミントンのシャトルコック

【課題】 人工素材製のシャトルコックであって、適度に柔軟性を有しながらもコシがあり、かつ耐久性も併せ持つシャトルコックを提供する。
【解決手段】 独立した多数の羽根と、前記多数の羽根が植設固定された打撃用頭部とからなるシャトルコックであり、羽根を構成する羽根弁が熱可塑性長繊維不織布製であり、羽根弁の外縁において端面が熱融着しているバドミントンのシャトルコック。また、羽根の外縁は、熱溶断されることによって、端面が熱融着している。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バトミントンに用いられるシャトルコックに関する。
【背景技術】
【0002】
バトミントンは、遊戯用から競技用まで、幅広く知られているスポーツである。競技用バトミントンのシャトルコックの羽根にはガチョウの羽根が用いられているのが一般的であり、それは、羽根軸が強かったことと、家畜であるが故に、個体差が少なく、比較的均一な品質のものが入手可能であったからといわれている。しかしながら、比較的均一な品質が入手可能といいながらも天然であるが故に若干の品質のばらつきはあり、また、限られた部位の羽根しか使用できないことから非常に高価であることが問題点として挙げられる。
【0003】
上のような状況下、安定した品質が得られ、かつ、安価に入手できる人工素材を用いたシャトルコックが提案されている。
【0004】
人工素材製のシャトルコックとして広く知られているものは、羽根全体が環状に一体成形されたもので、遊戯用として多く用いられている。しかしながら、この一体成形したシャトルコックは、所謂スカートが一体的に繋がったものであり、独立した多数の羽根からなるシャトルコックのように、その打撃時に各羽根が独立して自由に頭部の軸線側につぼまるように変形し、再び速やかに復元するという動作がとれないため、羽根が受ける空気抵抗の変化が重要な因子である競技用には全く不向きなものであった。
【0005】
一方、競技用として使用でき得る人工素材製のシャトルコックとして、例えば、特許文献1や特許文献2が提案されている。
【0006】
特許文献1には、合成繊維からなる不織布または織布を打ち抜き、独立した羽根枝部を形成させ、さらには羽根幹部には強度をアップさせるようにプラスチックアロイを射出させたものが提案されている。特許文献2には、羽根弁の構成物として、繊維分散樹脂の薄板詳しくは、ポリエステル繊維、ポリアミド繊維、ビニロン繊維などからなる薄手の目付の粗い織布または不織布にエポキシ樹脂、不飽和ポリエステル樹脂、ジアリルフタレート樹脂などの熱硬化性樹脂の未硬化液状物を含浸し、硬化成型をしたものが提案されている。
【0007】
バトミントンでは、激しく打撃が繰り返されることから、特許文献1記載のように合成繊維からなる布を打ち抜いて得た羽根弁を用いたシャトルコックでは、その端部から繊維のほつれが発生するという問題がある。一方、特許文献2は、羽根弁を構成する布に熱硬化型樹脂を含浸させて硬化成形したものを用いているが、これでは羽根弁が樹脂板のように硬くなり、天然の鳥の羽が有するような柔軟性を有しない。
【特許文献1】特開昭57−37464号
【特許文献2】特開昭59−69086号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、人工素材製のシャトルコックであって、適度に柔軟性を有しながらもコシがあり、かつ耐久性も併せ持つシャトルコックを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、独立した多数の羽根と、前記多数の羽根が植設固定された打撃用頭部とからなるシャトルコックであり、羽根を構成する羽根弁が熱可塑性長繊維不織布製であり、羽根弁の外縁において端面が熱融着していることを特徴とするバドミントンのシャトルコックを要旨とするものである。
【0010】
図1に、シャトルコックを構成する羽根の概略平面図を示す。図1に示すようにシャトルコックを構成する羽根(1)は、羽根弁(2)によって構成され、羽根弁(2)の中央部に位置する羽根軸(3)を有する。本発明では、羽根弁の外縁(4)において端面が熱融着している。
【0011】
図2に、シャトルコックの概略斜視図を示す。シャトルコック(5)において、複数の羽根(1)は、羽根弁の中央部に位置する羽根軸(3)の根元部が打撃用頭部(6)に植設され、締結糸(7)により羽根軸(3)どうしが締結固定されている。
【0012】
本発明において、羽根を構成する羽根弁は、熱可塑性長繊維不織布で構成される。不織布が熱可塑性の合成重合体により構成されるため、羽根弁の外縁における端面を熱融着させることができる。また、不織布が短繊維ではなく長繊維によって構成されることにより、使用によって羽根表面に毛羽が生じにくく、耐久性が良好となる。
【0013】
不織布を構成する熱可塑性の合成重合体としては、ポリエステル、ポリアミド、ポリオレフィン等が挙げられる。汎用性の点からポリエステルが好ましく用いられる。
【0014】
長繊維不織布は、多数の長繊維が堆積してなるものであるが、不織布は、熱カレンダー加工や熱エンボス加工により、堆積してなる多数の長繊維同士を熱融着して一体化したものを好ましく用いることができる。より好ましくは、熱エンボス加工により、部分的に熱圧着部を有することにより、長繊維同士が一体化した長繊維不織布を用いることがよい。
【0015】
不織布の目付は、30g/m2〜70g/m2がよい。目付を30g/m2以上とすることにより使用に適したコシを有するものとなり、70g/m2以下とすることにより、天然素材であるガチョウの羽根と同様の軽量感を保持できる。なお、シャトルコックは、暑い時期や高地などのように空気抵抗が少なくなると飛びやすいという性質があり、使用環境に応じて目付を適宜選択すればよい。
【0016】
また、不織布には、少量のバインダー樹脂を付与してもよい。バインダー樹脂を付与することによって、羽根弁にコシを付与することができる。不織布に付与されるバインダー樹脂の素材は特に限定されず、汎用のアクリル系バインダー樹脂等を用いればよい。また、付与する樹脂の量(固形分量)は、不織布100質量部に対して、5〜20質量部程度がよい。5質量部未満では、バインダー樹脂を付与する効果を奏し難く、一方20質量部を超えると、羽根弁が硬化してしまい柔軟性が保持されず、打撃時に羽根が頭部に軸線側につぼまるように変形し再び速やかに復元するという動作を行い難くなる。
【0017】
本発明の羽根弁の外縁において端面は熱融着している。端面に存在する繊維が熱融着していることにより、使用において繊維がほつれてくることはなく、シャトルコックの耐久性が向上する。端面の熱融着は、不織布原反から羽根弁を製造する際に、超音波溶断機あるいは熱溶断機を用いて所定の羽根弁の形状に熱溶断することによって、形成することができる。
【0018】
羽根弁の中央部には羽根軸が設けられている。羽根軸は、公知の熱可塑性樹脂あるいは熱硬化性樹脂によって形成される。羽根弁に羽根軸を設ける方法としては、所定の形状の羽軸を射出成形等により作成すればよい。射出成形により得られた羽根軸を接着剤により羽根弁の中央部に接着固定すればよい。また、羽根弁中央部の所定の箇所に羽根軸を直接射出成形することにより、羽根弁と羽根軸とを熱融着によって固定してもよい。
【0019】
得られた多数の羽根は、打撃用頭部に予め設けられている穿設孔に羽根軸の根元部をそれぞれ植設し、接着剤でその植設部を固定すると共に、締結糸により各羽根軸どうしを締結固定することにより、シャトルコックを得ることができる。多数の羽根を用いてシャトルコックを得る方法は、従来より行われている天然の水鳥羽根を用いてシャトルコックを得る方法と同様にして行えばよい。
【発明の効果】
【0020】
本発明のシャトルコックは、羽根弁が熱可塑性長繊維不織布製であり、羽根弁の外縁において端面が熱融着しているため、バトミントンの試合中等において、激しく打撃を繰り返されても、羽根弁より毛羽やほつれた糸が発生することを防止することができ、適度に柔軟でコシを有しながら、耐久性をも併せ持つシャトルコックを得ることができる。
【実施例】
【0021】
以下、実施例により本発明を具体的に説明する。
【0022】
まず、羽根弁を構成する熱可塑性長繊維不織布を用意した。この長繊維不織布は、ポリエチレンテレフタレート(融点256℃)からなる多数の長繊維が堆積したもので、熱エンボス加工(ロール表面温度210℃)により部分的に熱圧着部が形成されて、長繊維同士が一体化しており、熱圧着率は36%、個々の熱圧着部の面積は0.4mm2である。また、この長繊維不織布には、アクリル系バインダーが付与(固形分で14質量部)されている。長繊維不織布(バインダー付)の目付は50g/m2である。
【0023】
この長繊維不織布を、超音波溶断装置にて、所定の羽根弁の形に熱溶断により打ち抜いた。得られた羽根弁の外縁において端面は熱融着していた。
【0024】
一方、羽根弁を構成するポリエチレンテレフタレートと同様のポリエチレンテレフタレートを射出成形して、内部が中空構造となっている羽根軸を用意した。
【0025】
羽根弁の中央部に羽根軸が配置されるようにして接着剤で接着固定し、羽根を得た。得られた複数の羽根を打撃用頭部に植設し、それぞれの羽根を締結糸により締結することにより、本発明のシャトルコックを得た。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】シャトルコックを構成する羽根の概略平面図である。
【図2】シャトルコックの概略斜視図である。
【符号の説明】
【0027】
1:羽根
2:羽根弁
3:羽根軸
4:羽根弁の外縁
5:シャトルコック
6:打撃用頭部
7:締結糸


【特許請求の範囲】
【請求項1】
独立した多数の羽根と、前記多数の羽根が植設固定された打撃用頭部とからなるシャトルコックであり、羽根を構成する羽根弁が熱可塑性長繊維不織布製であり、羽根弁の外縁において端面が熱融着していることを特徴とするバドミントンのシャトルコック。
【請求項2】
羽根の外縁は、熱溶断されることによって、端面が熱融着していることを特徴とする請求項1記載のバドミントンのシャトルコック。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate


【公開番号】特開2008−279179(P2008−279179A)
【公開日】平成20年11月20日(2008.11.20)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−127945(P2007−127945)
【出願日】平成19年5月14日(2007.5.14)
【出願人】(000004503)ユニチカ株式会社 (1,214)
【Fターム(参考)】