説明

バナナ熟成装置

【課題】 本発明は、設備コストが比較的安価であり、バナナコンテナの入室数に応じて、熟成室の容積を簡単に調整できるバナナ熟成装置を提供する。
【解決手段】 本発明のバナナ熟成装置1は、床面21、前面隔壁22、後面隔壁23、両側面隔壁24及び天井隔壁25によって区画された差圧式の熟成室2と、熟成室2内に設置されるバナナコンテナ9と、熟成室2内に空気の流れを生じさせる送風機3と、を有し、前面隔壁22がシート材で形成されており、前面隔壁2を後面隔壁23方向へ移動させるための移動機構が設けられている。前記前面隔壁22を形成するシート材は、バナナコンテナ9の列間に存する通路に対応する領域が前記バナナコンテナ9の前面部に対応する領域よりも剛性が大きいことが好ましい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、未熟なバナナを熟成するバナナ熟成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
バナナは、緑色の未熟な状態で収穫された後、熟成させて市場に提供される。バナナの熟成加工は、未熟なバナナを差圧式の熟成室に収容し、温度制御を行いつつ、ここに所定濃度のエチレンガスを循環させることによって行われる。
従来、バナナの箱の上部及び最前面部をシートでシールドする構造の差圧式の熟成室(以下、従来の第1熟成室という)が開示されている(特許文献1の[0002]及び図8等)。
また、室内の両側面から離れた位置に、下部にパッキンを装着した上下スライド可能なシャッターを多数設け、シャッターのガイドレールにシェルター用パッキンを設け、室の側面とガイドレールの間にシェルター用仕切板を設けた、差圧式の熟成室(以下、従来の第2熟成室という)が開示されている(特許文献1の[請求項1]及び図1等)。
【特許文献1】特開2003−9835号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記従来の第1熟成室は、バナナの箱を搬入後、バナナの箱の上部から最前面部にかけてシートを装着しなければならず、加工作業が繁雑である。また、前記シートの装着が上手に出来ないと、送風機を作動させたときに、シートが捲れたり、或いは、充分な差圧を確保できない。
【0004】
一方、上記従来の第2熟成室は、シャッターを床面に密着するまで下げ、該シャッターとシェルター用仕切板によって囲われたシェルターを閉じることにより、(バナナの箱が熟成室に満杯でなく)バナナの箱が少量であっても熟成加工が行えるという利点がある。
しかしながら、上記従来の第2熟成室は、熟成室に多数のシャッター及びシェルター用仕切板並びにこれらに附属する部材を設置しなければならず、設備コストが多大であるという問題がある。
また、上記従来の第2熟成室は、熟成室の内部は仕切板で仕切られていないので、シャッターを床面まで下げてシェルターを閉じても熟成室内の容積は変わらない。このため、バナナの箱が少量の場合でも、バナナの箱が入っていない熟成室の空間にも空気が流れるので、送風機やエチレンガスなどのランニングコストが余計に掛かるという問題もある。
【0005】
本発明の第1の目的は、設備コストが比較的安価であり、バナナコンテナの入室数に応じて、熟成室の容積を簡単に調整できるバナナ熟成装置を提供することである。
さらに、本発明の第2の目的は、熟成室内を確実に差圧状態とすることができるバナナ熟成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のバナナ熟成装置は、床面、前面隔壁、後面隔壁、両側面隔壁及び天井隔壁によって区画された差圧式の熟成室と、前記熟成室内に設置されるバナナコンテナと、前記熟成室内に空気の流れを生じさせる送風機と、を有し、前記前面隔壁がシート材で形成されており、前記前面隔壁を後面隔壁方向へ移動させるため、前記前面隔壁に移動機構が設けられていることを特徴とする。
【0007】
上記本発明のバナナ熟成装置は、送風機を作動させると、シート材で形成された前面隔壁が吸引されてバナナコンテナの前面部に密着し、熟成室内に差圧が生じる。
上記前面隔壁には移動機構が設けられているので、前面隔壁を後面隔壁方向へと移動させることができる。従って、バナナコンテナの入室数が少ない場合、前面隔壁を後面隔壁方向へ移動させることにより、バナナコンテナの数に合わせて、差圧式の熟成室の容積を簡単に調整できる。熟成室の容積が小さくなると、それに応じて送風機の作動数やエチレンガスなどの供給量などを少なくできるので、バナナ熟成加工に伴うランニングコストを削減できる。
また、本発明のバナナ熟成装置は、従来のように複数のシャッターを設ける熟成装置に比して、設備コストが安価となる。
【0008】
本発明の好ましいバナナ熟成装置は、前記熟成室内に、前面隔壁の幅方向に少なくとも2列のバナナコンテナを設置でき、前記バナナコンテナの列間に通路が設けられており、前記前面隔壁が、前記通路に対応するシート領域が前記バナナコンテナの前面部に対応するシート領域よりも剛性が大きい。
【0009】
熟成室内に通路が設けられている場合、シート材で形成された前面隔壁のうちで、熟成室の通路に向かい合ったシート領域は、通路方向へと大きく吸引されて膨らむ。このように前面隔壁の一領域が膨らむと、バナナコンテナの前面部に対応するシート領域が引き寄せられて、バナナコンテナの前面部の一部において前面隔壁が密着しない虞がある。
上記好ましいバナナ熟成装置の前面隔壁は、通路に対応するシート領域がバナナコンテナの前面部に対応するシート領域よりも剛性が大きいので、送風機を作動させた際、通路に向かい合ったシート領域が大きく膨らむことを防止できる。このため、前面隔壁のうちで、バナナコンテナの前面部に対応するシート領域が引き寄せられ難くなり、前面隔壁がバナナコンテナの前面部に確実に密着する。よって、熟成室内を確実に差圧状態とすることができ、熟成室内に円滑な空気の流れを生じさせてバナナコンテナ内に空気を通過させることができる。
【0010】
本発明の他の好ましいバナナ熟成装置は、前記熟成室内の空気を取り込む取込み口が、前記後面隔壁に開口され、前記側面隔壁側に対面して開口された吹出し口を有するエアーチャンバーが、前記天井隔壁の上側に設けられ、前記吹出し口には、下向き円弧状の整流板が設けられており、前記吹出し口から出た空気が、前記バナナコンテナの外側面部からコンテナ内部を通過して前記通路に至った後、前記取込み口へと流れる。
【0011】
上記他の好ましいバナナ熟成装置は、バナナコンテナの外側面からその内部を通過して通路へと至る空気の円滑な流れを生じさせることができる。
【0012】
本発明の他の好ましいバナナ熟成装置は、前記熟成室内の空気が所定濃度のエチレンガスを含み、前記熟成室内の空気を外部へ排出する換気口と、前記換気口を通じて外部へ排出されたエチレンガス相当量を前記熟成室内に補充するエチレンガス補充装置と、を更に有する。
【0013】
上記他の好ましいバナナ熟成装置は、熟成に伴ってバナナから生じる二酸化炭素ガスを換気によって装置外部へと排出でき、他方、該二酸化炭素ガスと共に排出されるエチレンガスを補充することができるので、熟成室内のエチレンガス濃度を所定濃度に保つことができる。
【発明の効果】
【0014】
本発明のバナナ熟成装置は、バナナコンテナの入庫数が少ない場合には、熟成室の容積を簡単に小さくすることができるので、熟成加工に伴うランニングコストの低減化を図ることができる。
さらに、本発明のバナナ熟成装置は、その好ましい態様により、熟成室を確実に差圧状態として円滑な空気の流れを生じさせることでき、又、エチレンガス濃度を所定濃度に保つことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、本発明について、図面を参照しつつ具体的に説明する。
図1〜図3において、1は、本発明のバナナ熟成装置を示す。該バナナ熟成装置1は、熟成室2と、該熟成室2内に空気の流れ(気流)を生じさせる送風機3と、熟成室2内の温度を調節する空調機4と、熟成室2内の空気を外部へ排出する換気口5と、熟成室2内にエチレンガスを補充するエチレンガス補充装置と、を有する。
前記熟成室2内には、幅方向に2列以上のバナナコンテナ9を設置するためのコンテナ設置部71が設けられている。また、熟成室2内には、前記コンテナ設置部71の列間に、通路72が設けられている。
なお、各図において、バナナコンテナ9は、二点鎖線で表している。また、図1において、前面隔壁の図示を省略している(他の部分が見難くなるため)。
【0016】
具体的には、熟成室2は、建物10の中に設けられている。
建物10は、床101、前面102、後面103、両側面104,104、及び天面105を有する直方体状の構造体からなる。
前面102、後面103、両側面104,104及び天面105は、例えば、断熱性を有する建材などで形成されている。
【0017】
建物10の前面102には、バナナコンテナ9を出し入れするための搬入口106が開口されている。該搬入口106は、開閉扉などの扉部材107によって、開閉自在とされている。
また、建物10の後面103には、換気口5が開口されている。前記建物10の後面103の外部には、前記換気口5に連通するダクト(図示せず)が接続され、ダクトに吸引ファンが具備されている。熟成室2の空気は、前記吸引ファンの作動により、換気口5を通じて建物10外へと排出される。
【0018】
熟成室2は、例えば、床面21、前面隔壁22、後面隔壁23、両側面隔壁24,24及び天井隔壁25を有する直方体状の構造体からなる。
なお、本実施形態では、熟成室2の床面21及び両側面隔壁24,24は、建物10の床101及び両側面104,104と兼用である。
【0019】
本実施形態では、熟成室2内にバナナコンテナ9を幅方向に2列設置できるように、2列のコンテナ設置部71が前面壁の幅方向に所定間隔を開けて設けられている。この2列のコンテナ設置部71の間が、通路72である。通路72の幅は、通路72上を人が歩行できるように、人の肩幅程度である。なお、本明細書において、幅とは、幅方向長さを意味する。
通路72は、熟成室2の奥行き方向に延設されている。
なお、本明細書において、「奥行き方向」とは、幅方向に直交する方向(前面隔壁22の面に対して鉛直な方向)をいう。
2列のコンテナ設置部71は、それぞれ側面隔壁24から少しの間隔を有した状態で、奥行き方向に設けられている。1列のコンテナ設置部71には、多数のバナナコンテナ9を奥行き方向に多数並設できるようになっている。図示例では、1列のコンテナ設置部71に、バナナコンテナ9を奥行き方向に6個並べて設置できる。
【0020】
ここで、バナナコンテナ9は、バナナが収容された箱(通常、穴あき段ボール箱)が複数段積み上げられたバナナ収容箱の集合体である。バナナ収容箱は、通常、パレット上に載っている。従って、バナナコンテナ9は、パレットを介して運搬される。また、前記バナナ収容箱の少なくとも4つの面部(前面部、後面部及び両側面部)には、箱内に空気を入れるための通気穴が穿設されている。
【0021】
熟成室2の後面隔壁23は、建物10の後面103の近傍に且つ該後面103に対して略平行に立設されている。該後面隔壁23は、断熱性を有するボードなどで形成できる。熟成室2の後面隔壁23の周縁部は、熟成室2の床面21、両側面隔壁24,24及び天井隔壁25に連設されている。従って、熟成室2の後面隔壁23と建物10の後面103の間には、気密性のある室が形成されている。この室は、空気が流れるエアーチャンバーである(以下、このエアーチャンバーを第1エアーチャンバー61という)。
【0022】
この第1エアーチャンバー61内には、熟成室2内にエチレンガスを補充するエチレンガス補充装置(図示せず)が設置されている。また、バナナ熟成装置1は、送風機3、空調機4、エチレンガス補充装置及び換気装置などを制御する制御盤を有するが、該制御盤は第1エアーチャンバー61内に設置してもよいし、或いは、制御盤は室外に設置してもよい。
エチレンガス補充装置は、バナナの熟成加工開始時に、熟成室2内にエチレンガスを入れる他、換気口5からの換気によって熟成室2内のエチレンガス濃度が低下したときに、随時、エチレンガスを補充して熟成室2内のエチレンガス濃度を所定濃度に保つ。
【0023】
後面隔壁23には、熟成室2内の空気を第1エアーチャンバー61へ取り込むための取込み口26(例えば、網目状の開口部)が開口されている。該取込み口26は、後面隔壁23の幅方向中央部(本実施形態では、熟成室2の通路72に対応した位置)に設けられている。取込み口26の幅や高さは、特に限定されず、適宜設計される。例えば、取込み口26は、通路72の幅と略同じ幅で、且つ、床面21近傍からバナナコンテナ9の上端近傍までの高さに形成される。
【0024】
熟成室2の天井隔壁25は、建物10の天面105の近傍に且つ該天面105に対して略平行に設けられている。該天井隔壁25は、断熱性を有するボードなどで形成できる。
建物10の天面105には、補助隔壁27が垂下されている。該補助隔壁27は、熟成室2の両側面隔壁24,24の近傍に且つ該側面隔壁24に対して略平行に設けられている。この補助隔壁27は、建物10の前面102から熟成室2の後面隔壁23にまで延設されている。
【0025】
熟成室2の天井隔壁25の前縁部は、建物10の前面102に連設され、天井隔壁25の後縁部は、熟成室2の後面隔壁23に連設されており、天井隔壁25の両側縁部は、上記補助隔壁27の下縁部に連設されている。従って、熟成室2の天井隔壁25及び補助隔壁27と建物10の天面105の間(天井隔壁25の上側)には、気密性のある室が形成されている(以下、この室を、第2エアーチャンバー62という)。
【0026】
上記空調機4は、第2エアーチャンバー62内に設けられている。空調機4は、冷房及び暖房機能を少なくとも有する。さらに、送風機3は、第2エアーチャンバー62に設けられている。送風機3は、第2エアーチャンバー62内の空気を熟成室2へと送り出す。
本実施形態では、送風機3は、第2エアーチャンバー62の補助隔壁27に開口された吹出し口28の枠に取り付けられている。該送風機3は、第2エアーチャンバー62内の空気を吹出し口28から強制排出するように、羽根の向きが設定されている。
また、補助隔壁27は側面隔壁24に略平行に設けられているので、前記吹出し口28は、側面隔壁24に対面して開口されている。前記吹出し口28の開口数や開口箇所は、特に限定されず、熟成室2の容積や送風機3の大きさなどに応じて適宜設定できる。もっとも、吹出し口28は、奥行き方向に略一定間隔を開けて設けられていることが好ましい。
【0027】
なお、送風機3は、吹出し口28に取り付けられていなくもよい。送風機3は、第2エアーチャンバー62内の空気を吹出し口28から排出できるように設けられていればよいので、例えば、送風機3を吹出し口28から離して設置することも可能である。要は、第2エアーチャンバー62内が陽圧となり且つ吹出し口28から空気が排出できるように送風機3が設けられていればよい。
【0028】
さらに、吹出し口28の外部には、整流板8が設けられている。該整流板8は、図4にも示すように、下向き円弧状であり、側面隔壁24と建物10の天面105との間に存する角部24aを隠蔽するように設けられている。
具体的には、整流板8は、緩やかな円弧状に形成された板状体からなる。整流板8の上縁部は、補助隔壁27の上縁部に固定され、整流板8の下縁部は、側面隔壁24の上縁部から少し下がった部分に密着しており、整流板8の面は、外側へ膨らんだ円弧状を成している。該整流板8は、建物10の前面102から熟成室2の後面隔壁23にまで延設されている。もっとも、整流板8は、個々の吹出し口28に対応するように、吹出し口28毎に設けられていてもよい。
整流板8は、容易に変形しない材料から形成されていることが好ましい。例えば、整流板8は、硬質合成樹脂板、木質板、金属板などで形成できる。
【0029】
該整流板8は、吹出し口28から出る空気を下方に導く効果がある。すなわち、前記整流板8が設けられていない場合には、吹出し口28から出た空気は、側面隔壁24と建物10の天面105との角部24aにおいて乱流を生じるので、該空気が側面隔壁24に沿って円滑に下方へ流れない場合がある。
上記整流板8が設けられていると、送風機3を通じて吹出し口28から出た空気は、整流板8の下向き円弧に導かれ、側面隔壁24に沿って円滑に下方へ流れていく。よって、バナナコンテナ9の外側面部92からその内部へと、円滑に空気が通過する。
【0030】
なお、天井隔壁25の両側縁部(補助隔壁27の下縁部)には、垂れ隔壁29が垂下されている。この垂れ隔壁29は、バナナコンテナ9の上端部と天井隔壁25の間に生じる隙間を密封する働きがある。すなわち、送風機を作動させると、垂れ隔壁29が熟成室2内へと吸引される。吸引された垂れ隔壁29の下方部が、バナナコンテナ9の上端部の外側面部92に密着するので、熟成室2を差圧状態とすることができる。
上記垂れ隔壁29の高さ(垂下長さ)は、熟成室2に入れられるバナナコンテナ9の上端部と天井隔壁25との間の長さよりも長く設定される。
該垂れ隔壁29は、柔軟なシート材から形成されていることが好ましい。垂れ隔壁29で用いられるシート材としては、前面隔壁22で使用されるシート材として例示した後述のものから適宜選択して使用できる。
【0031】
次に、熟成室2の前面隔壁22は、建物10の前面102の近傍に且つ該前面102に対して略平行に設けられている。
前面隔壁22は、後面隔壁23方向へ移動させるため、移動機構を具備している。
前面隔壁22は、天井隔壁25に吊下げられ、平行移動できるようになっている。
具体的には、図5に示すように、天井隔壁25には、奥行き方向にレール251が設けられている。該レール251は、図示のように、天井隔壁25に埋め込まれていることが好ましい。このようにレール251が天井隔壁25内に埋め込まれていれば、前面隔壁22の上縁部と天井隔壁25の間の隙間が可及的に小さくなるので、空調機3を作動させたときに、前面隔壁22と天井隔壁25の間から熟成室2内に空気が入り込むことを防止できる。もっとも、レール251は、天井隔壁25の下面から突出するように取り付けられていてもよい。
また、レール251は、建物10の前面102から熟成室2の後面隔壁23にまで延設されていることが好ましい。
【0032】
レール251の本数は、特に限定されず、前面隔壁22の幅や重量などを考慮して適宜設定される。例えば、レール251は、幅方向に所定間隔を開けて、2本〜6本程度設けられる(図示例では、2本)。
このレール251は、例えば、断面視略C字状であり、該レール251内には、レール251の長手方向に移動自在なランナー252が係入されている。
天井隔壁25の上縁部は、フックなどの連結具を介して、前記ランナー252に連結されている。
従って、前面隔壁22は、レール251の長手方向(熟成室2の奥行き方向)に平行移動させることができる。
なお、前面隔壁22の移動機構は、上記のようなレール251とランナー252に限られず、様々な態様に変更できる。
【0033】
上記前面隔壁22の上縁部は、天井隔壁25に接し又は近接しており、前面隔壁22の下縁部は、床面21に接している。また、前面隔壁22の両側縁部は、両側面隔壁24,24から離れているが、前面隔壁22の幅は、熟成室2内に入れたバナナコンテナ9の最大幅(本実施形態では、2列並べたバナナコンテナ9の外側面部92間の長さ)よりも長く形成されている。
【0034】
前面隔壁22は、柔軟なシート材から形成されている。
シート材は、適度な柔軟性を有していればその材質は特に限定されない。該シート材としては、例えば、合成樹脂製シート、合成樹脂製シートと紙の積層シートなどが挙げられる。
シート材の厚みは、通常、0.1mm〜1mm程度、好ましくは0.1mm〜0.7mm程度である。
前記合成樹脂製シートの材質は、特に限定されず、ポリ塩化ビニル系、ポリプロピレンなどのポリオレフィン系、ポリエステル系、ポリスチレン系、ポリカーボネート系、ポリアミド系などを例示できる。合成樹脂製シートとしては、例えば、シーアイ化成株式会社製の「アミストロンDX」(商品名)などを用いることができる。
【0035】
前面隔壁22は、好ましくは剛性の異なる領域を有するシート材で形成されている。例えば、前面隔壁22は、その中央領域が両側領域よりも剛性が大きい。この剛性が大きいシート領域(以下、高剛性シート領域22aという)が通路72に対応し、これに比して剛性の小さいシート領域(以下、低剛性シート領域22bという)がバナナコンテナ9の前面部91に対応している。なお、図5において、便宜上、高剛性シート領域22aを、網掛けで示している。
高剛性シート領域22aの幅は、通路72の幅と略同じ又は通路72の幅よりも少し長いことが好ましい。例えば、高剛性シート領域22aの幅は、送風機3の作動によって前面隔壁22が後面隔壁23方向へと吸引されたときに、高剛性シート領域22aの両側部がバナナコンテナ9の角部9aに当たるような長さに形成されていることが好ましい。このような高剛性シート領域22aは、例えば、その幅が、通路72の幅よりも10cm〜30cm程度長く形成すればよい。
【0036】
通路72に対応したシート領域がバナナコンテナ9の前面部91に対応するシート領域よりも剛性の大きい前面隔壁22は、例えば、図6に示すように、2枚の合成樹脂製シートを部分的に重ね合わせた部分積層シート材を用いて形成できる。
2枚の合成樹脂製シートを重ね合わせた領域が、高剛性シート領域22aとなり、1枚の合成樹脂製シートが、低剛性シート領域22bとなる。
【0037】
さらに、前面隔壁22の下端部には、図5に示すように、錘221が具備されている。錘221は、例えば、前面隔壁22の下縁部に沿って設けられている。該錘221としては、例えば、鉄製鎖などが用いられる。
なお、特に図示しないが、前面隔壁22は、幅方向に開閉できる。具体的には、シートで形成された前面隔壁22は、幅方向にスライド移動させて、(カーテンのように)一方の側面隔壁24側へ寄せて束ねることができる。前面隔壁22を一方の側面隔壁24側へ寄せることによって、容易にバナナコンテナ9の搬入出することができる。
【0038】
上記バナナ熟成装置1は、熟成室2内のコンテナ設置部71にバナナコンテナ9を入れ、エチレンガス補充装置によってエチレンガスを入れて熟成室2内のエチレンガスを所定濃度(例えば、500ppm)に設定する。次に、送風機3及び空調機4を作動させる。空調機4は、熟成室2内の温度を一定に保つために使用される。
送風機3を作動させると、図7及び図8の矢印で示すように、熟成室2内の空気が、第2エアーチャンバー62の吹出し口28から側面隔壁24側へ送り出される。吹出し口28から出た空気は、整流板8に当たるため、乱流を生じることなく、側面隔壁24に沿って下方(床面21方向)へと流れる。下方に流れた空気は、バナナコンテナ9の外側面部92からバナナコンテナ9の内部を通過し、通路72へと出た後、奥行き方向に流れて後面隔壁23の取込み口26へと流れる。取込み口26に流れた空気は、第1エアーチャンバー61を通じて第2エアーチャンバー62へと戻る。
【0039】
上記空気の循環によって、バナナが熟成する。バナナの熟成に伴いバナナから二酸化炭素ガスが生じるが、換気口5を通じて、二酸化炭素ガスを含む空気は装置外部へと排出される。該空気の排出によって、熟成室2内のエチレンガスも排出されるが、エチレンガス補充装置が、前記排出されたエチレンガス相当量を熟成室2内に補充する。この排出されたエチレンガス相当量は、排出される空気量を元に算出でき、例えば、換気によって1mの空気が排出された場合、それに含まれるエチレンガス量(例えば、エチレンガス濃度500ppmの場合、空気1m当たり500ccのエチレンガス)を補充すればよい。
このように本発明のバナナ熟成装置1によれば、熟成加工中、換気によって二酸化炭素濃度を減らしつつ、エチレンガス濃度を一定に保つことができるので、バナナを良好に熟成させることができる。
【0040】
また、送風機3を作動させると、熟成室2内が負圧になるので、前面隔壁22が後面隔壁23方向へ吸引され、前面隔壁22の低剛性シート領域22bがバナナコンテナ9の前面部91に密着する。このように前面隔壁22が、バナナコンテナ9の前面部91に密着することによって、熟成室2内が確実に差圧状態となる。
【0041】
ところで、柔軟なシート材で形成された前面隔壁22は、通路72に対面する領域において、通路72側へと吸引され、後面隔壁23方向へと大きく膨らむ。この膨らみによって前面隔壁22の幅方向両側領域が引き寄せられ、前面隔壁22の両側領域の一部が、バナナコンテナ9の前面部91に密着しなくなることがある。このような事態を生じると、熟成室2の差圧が不十分となり、上記空気の流れが阻害される虞がある。
【0042】
この点、本発明の前面隔壁22は、通路72に対応した領域が高剛性シート領域22aで形成されているので、送風機3の作動時に、前面隔壁22は、通路72に対面する領域が後面隔壁23方向へ膨らみ難くなっている。他方、本発明の前面隔壁22は、バナナコンテナ9の前面部91に対応するシート領域の低剛性シート領域22bで形成されているので(すなわち、軟らかいシート材)、送風機3の作動時、前面隔壁22の低剛性シート領域22bが、容易に変形してバナナコンテナ9の前面部91に確実に密着する。このため、熟成室2を確実に差圧状態とすることができる。
【0043】
また、前面隔壁22の高剛性シート領域22aの幅は、通路72の幅よりも長いので、送風機3の作動時、高剛性シート領域22aがバナナコンテナ9の角部9aに密着する。かかる角部9aに高剛性シート領域22aが当たるようにすることにより、前面隔壁22が、破損し難くなる。
さらに、前面隔壁22の下縁部には、錘221が設けられているので、送風機3の作動時に、前面隔壁22の下方が捲れ上がることも防止できる。
よって、バナナコンテナ9の前面部91と前面隔壁22の間に隙間を生じることなく、バナナコンテナ9の前面部91に前面隔壁22を密着させて熟成室2を確実に差圧状態に保持できる。
【0044】
また、本発明のバナナ熟成装置1は、前面隔壁22に移動機構が設けられているので、前面隔壁22を後面隔壁23方向へ容易に移動させることができる。
例えば、熟成室2内に入れるバナナコンテナ9の入室数が少ない場合には、前面隔壁22を後面隔壁23方向へ移動させることにより、熟成室2の容積を簡単に小さくできる(図9参照)。
事後、上記と同様にして、送風機3を作動させることにより、図9に示すように、前面隔壁22がバナナコンテナ9の前面部91に密着し、熟成室2を確実に差圧状態にして、熟成室2内に円滑な空気の流れを生じさせることができる。
なお、熟成室2の容積を小さくすると、全ての送風機3を作動させる必要性がなく、移動させた前面隔壁22と後面隔壁23の間に存する送風機3(図示した例では、後面隔壁23に近い側に設けられた左右一対の送風機3,3)のみを作動させればよい。このため、送風機3の電気代を削減できる。
【0045】
次に、本発明のバナナ熟成装置1の他の実施形態を説明する。
上記実施形態では、前面隔壁22は、2枚の剛性樹脂製シートの一部分を重ね合わせることにより、高剛性シート領域と低剛性シート領域を形成しているが、これに限られず、例えば、同じ材質の剛性樹脂製シートであって厚みの異なるシート材を準備し、肉厚のシート材を高剛性シート領域22aとし且つ薄肉のシート材を低剛性シート領域22bとして前面隔壁22を形成してもよい。
【0046】
また、上記実施形態では、熟成室2内には、幅方向に2列のコンテナ設置部71が設けられ(即ち、幅方向に2列のバナナコンテナ9が設置可能で)、且つ中央部に通路72が設けられているが、これに限られず、幅方向に3列以上のコンテナ設置部71が設けられていてもよい。このように3列以上のコンテナ設置部71が設けられる場合、各コンテナ設置部71の列間にそれぞれ通路72が設けられていることが好ましいが、一部のコンテナ設置部71の列間に、通路72が設けられていなくてもよい。
【0047】
さらに、上記実施形態では、後面隔壁23の幅方向中央部(通路72に対応する位置)に取込み口26が開口されているが、これに限られず、後面隔壁23の取込み口26は、バナナコンテナ9の後面部に対面するように開口されていてもよい。
【0048】
なお、本発明のバナナ熟成装置1は、バナナ以外の青果の熟成にも適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
【図1】一実施形態に係るバナナ熟成装置を前面側から見た正面図。
【図2】図1のII−II線断面図。
【図3】図2のIII−III線断面図。
【図4】図1の上方部分を拡大した正面図。
【図5】前面隔壁の部分を拡大した正面図。
【図6】図5のVI−VI線断面図。
【図7】バナナ熟成装置を作動させた状態を前面側から見た正面図。
【図8】図7のVIII−VIII線断面図。
【図9】前面隔壁を後面隔壁方向に移動させてバナナ熟成装置の断面図(バナナ熟成装置を幅方向中央部で奥行き方向に切断し、側面側から見た断面図)。
【符号の説明】
【0050】
1…バナナ熟成装置
2…熟成室
21…熟成室の床面
22…熟成室の前面隔壁
23…熟成室の後面隔壁
24…熟成室の側面隔壁
25…熟成室の天井隔壁
26…取込み口
28…吹出し口
3…送風機
4…空調機
5…換気口
61…第1エアーチャンバー
62…第2エアーチャンバー
71…熟成室内のコンテナ設置部
72…熟成室内の通路
8…整流板
9…バナナコンテナ
91…バナナコンテナの前面部
92…バナナコンテナの外側面部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
床面、前面隔壁、後面隔壁、両側面隔壁及び天井隔壁によって区画された差圧式の熟成室と、前記熟成室内に設置されるバナナコンテナと、前記熟成室内に空気の流れを生じさせる送風機と、を有し、
前記前面隔壁がシート材で形成されており、
前記前面隔壁を後面隔壁方向へ移動させるため、前記前面隔壁に移動機構が設けられていることを特徴とするバナナ熟成装置。
【請求項2】
前記熟成室内には、前記前面隔壁の幅方向に少なくとも2列のバナナコンテナを設置でき、前記バナナコンテナの列間に通路が設けられており、
前記前面隔壁が、前記通路に対応するシート領域が前記バナナコンテナの前面部に対応するシート領域よりも剛性が大きい請求項1に記載のバナナ熟成装置。
【請求項3】
前記熟成室内の空気を取り込む取込み口が、前記後面隔壁に開口され、
前記側面隔壁側に対面して開口された吹出し口を有するエアーチャンバーが、前記天井隔壁の上側に設けられ、
前記吹出し口には、下向き円弧状の整流板が設けられており、
前記吹出し口から出た空気が、前記バナナコンテナの外側面部からバナナコンテナの内部を通過して前記通路に至った後、前記取込み口へと流れる請求項2に記載のバナナ熟成装置。
【請求項4】
前記熟成室内の空気が所定濃度のエチレンガスを含み、
前記熟成室内の空気を外部へ排出する換気口と、前記換気口を通じて外部へ排出されたエチレンガス相当量を前記熟成室内に補充するエチレンガス補充装置と、を更に有する請求項1〜3のいずれかに記載のバナナ熟成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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