説明

バブル生成方法及び装置及びその装置を用いた処理装置

【課題】液中のバブルをより効率的に微細化することのできるバブル生成方法及び装置を提供することである。
【解決手段】バブル混合機構(14、15、17a、18a)が供給液に微細バブルを混ぜ、該バブル混合機構により生成されるバブル混在液を貯液槽11に供給し、貯液槽11に貯まった前記バブル混在液を前記供給液として前記バブル混合機構に戻すことによって、前記バブル混在液を前記バブル混合機構と貯液槽11との間を循環させ、前記バブル混在液の循環を終了させた後に、貯液槽11内のバブル混在液を加圧するように構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、マイクロナノバブルやナノバブル等と呼ばれる極めて微細なバブルを液体中に生成するバブル生成方法及び装置及びその装置を用いた洗浄装置等の処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、長時間水中に留まり得ると共に溶解度の高い超小径の超微細気泡を発生させる超微細気泡発生装置が提案されている(特許文献1)。この超微細気泡発生装置では、圧送される液体(水)中に気体を噴射することで微細気泡をその液体に含ませ、微細気泡を含んだ液体が徐々に広がる流体誘導面部を有する縮流ノズルを圧送される際に液体中の微細気泡が潰れて平面的に広がった後に表面張力によって小さく分裂して更に細かい超微細気泡となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開第2003−245533号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、近年、これらの超微細気泡(超微細バブル)を含む液体を物体表面の洗浄等の処理に利用することが考えられている。超微細バブルと液との界面の電位が洗浄効果や酸化作用を促し、また、物体表面に付着した超微細バブルが破裂するときのエネルギーが物体表面から汚れの剥離に寄与するとされている。このように超微細バブルを含む液体を物体表面の処理に用いる場合、その液中に含まれる超微細バブルの総表面積が大きいほど洗浄効果や酸化作用が大きい。
【0005】
しかし、前述した従来の超微細気泡発生装置では、微細気泡を含んだ液体が縮流ノズルを圧送される際にその液中の微細気泡が潰れて平面的に広がった後に、外部からの作用が無く自然に表面張力によって小さく分裂するようになるので、効率的な微細バブルの分割を期待することが難しい。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、液中のバブルをより効率的に微細化することのできるバブル生成方法及び装置を提供し、そのバブル生成機構いた処理装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明にかかるバブル生成方法は、バブル混合機構が供給液に微細バブルを混ぜ、該バブル混合機構により生成されるバブル混在液を貯液槽に供給し、該貯液槽に貯まった前記バブル混在液を前記供給液として前記バブル混合機構に戻すことによって、前記バブル混在液を前記バブル混合機構と貯液槽との間を循環させるバブル混在液循環ステップと、前記バブル混在液循環ステップが終了した後に、前記貯液槽内のバブル混在液を加圧する加圧ステップとを有する構成となる。
【0008】
このような構成により、微細バブルの混ざったバブル混在液が貯液槽に貯められ、該貯液槽に貯められたバブル混在液が加圧されるので、前記貯液槽内全体のバブル混在液中の多くの微細バブルがその加圧により収縮する際に液中のイオンの静電作用によって安定化して一斉に更に微細なサイズのバブルとなり得る。
【0009】
本発明に係るバブル生成方法において、前記加圧ステップは、気体を前記貯液槽に加圧供給して当該貯液槽の内圧を高めるように構成することができる。
【0010】
このような構成により、バブル混在液を加圧するために貯液槽に気体が加圧供給されると、その加圧供給された気体が当該貯液槽内のバブル混在液中に溶融し得るようになるので、気体溶存濃度の高いバブル混在液を生成することができる。このような気体溶存濃度の高いバブル混在液を圧力解放する際に極めて微細なバブルが更に発生させることができるようになる。
【0011】
また、本発明に係るバブル生成方法では、前記バブル混在液循環ステップにおいて、前記バブル混合機構は、気体供給源からの気体を前記供給液に噴出して微細バブルを前記供給液に混ぜ、前記加圧ステップは、前記気体供給源からの気体を前記貯液槽に加圧供給するように構成することができる。
【0012】
このような構成により、バブル混在液を生成するための気体の供給源と、バブル混在液を貯液槽にて加圧するための気体の供給源とを共通化することができる。
【0013】
更に、本発明に係るバブル生成方法において、前記貯液槽内のバブル混在液中の溶存気体の量が所定量になるまで、少なくとも前記加圧ステップを行うように構成することができる。
【0014】
このような構成により、圧力解放時に極めて微細なバブルの発生に寄与する気体溶存濃度をより高くすることができる。圧力解放時の微細バブルの発生量を多くすることができるという観点から、前記貯液槽内の前記溶存気体が過飽和の状態になるまで、少なくとも前記加圧ステップを行うことが好ましい。
【0015】
本発明に係るバブル生成装置は、供給液に微細バブルを混ぜるバブル混合機構と、該バブル混合機構によって生成されるバブル混在液を貯める貯液槽と、該貯液槽から前記バブル混在液を前記供給液として前記バブル混合機構に戻す戻し機構と、前記貯液槽内のバブル混在液を加圧する加圧機構と、前記バブル混在液を前記貯液槽、戻し機構及びバブル混合機構を循環させるバブル混在液循環モードと、前記加圧機構により前記貯液槽内の前記バブルを加圧する加圧モードとを切り換える切り換え機構とを有する構成となる。
【0016】
このような構成により、バブル混在液循環モードに切り換えられると、微細バブルの混ざったバブル混在液がその混在バブルの量を増大させつつ貯液槽に貯められ、加圧モードに切り換えられると、前記貯液槽内全体のバブル混在液中に混在する多くの微細バブルが加圧により収縮する際に液中のイオンの静電作用によって安定化して一斉に更に微細なサイズのバブルとなり得る。
【0017】
本発明に係るバブル生成装置において、前記加圧機構は、前記貯液槽内に気体を加圧供給する気体供給機構を有する構成とすることができる。
【0018】
このような構成により、バブル混在液を加圧するために貯液槽に気体が加圧供給されると、その加圧供給された気体が当該貯液槽内のバブル混在液中に溶融し得るようになるので、気体溶存濃度の高いバブル混在液を生成することができる。
【0019】
また、本発明に係るバブル生成装置において、前記バブル混合機構は、気体供給源と、該気体供給源からの気体を前記供給液に噴出させる気体噴出機構とを有し、前記加圧機構における気体供給機構は、前記気体供給源からの気体を前記貯液槽に加圧供給し、前記切り換え機構は、前記気体供給源からの気体を、前記バブル混合機構における前記気体噴出機構と、前記加圧機構における前記気体供給機構とのいずれかに切り換える気体切り換え機構を有する構成とすることができる。
【0020】
このような構成により、バブル混合機構としての気体供給源と、加圧機構における気体供給機構としての気体供給源とを共通化することができる。
【0021】
本発明に係る処理装置は、前述したいずれかのバブル生成装置と、処理液を噴出する処理ヘッドユニットと、前記微細バブル生成装置における前記貯液槽から前記バブル混在液を前記処理ヘッドに前記処理液として加圧供給する処理液供給機構とを有する構成となる。
【0022】
このような構成により、バブル生成装置からの微細バブルを含むバブル混在液が処理液として処理ヘッドから噴出するようになるので、前記処理ヘッドユニットから噴出する微細バブルを含むバブル混在液により被処理物を処理することができるようになる。
【0023】
本発明に係る処理装置において、前記バブル生成装置の前記貯液槽に貯められたバブル混在液の溶存気体の量を検出する手段を有する構成とすることができる。
【0024】
このような構成により、圧力を解放して処理に利用し得るバブル混在液中の溶存気体の量を知ることができるようになるので、圧力を解放してバブル混在液を処理に利用する際により多くの微細バブルが発生するように、前もってバブル生成装置での気体の取扱を決めることができる。例えば、バブル発生装置における貯液槽に貯められたバブル混在液を気体で加圧する際の加圧時間等を決めることができる。
【発明の効果】
【0025】
本発明に係るバブル発生方法及び装置によれば、貯液槽内全体のバブル混在液中の多くの微細バブルが加圧により収縮する際に液中のイオンの静電作用によって安定化して一斉に更に微細なサイズのバブルとなり得るので、液中のバブルをより効率的に微細化することができるようになる。
【0026】
また、本発明に係る処理装置によれば、微細なバブルを含むバブル混在液によって非処理物を処理することができるようになる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の一実施形態に係るバブル生成装置を含む処理装置としての基板洗浄装置を示す図である。
【図2】図1に示す基板洗浄装置におけるバブル発生装置に用いられるバブル混合機構の主要部を構成するアスピレータを示す断面図である。
【図3】液中の微細なバブルが加圧によって破壊するメカニズムの原理を示す図である。
【図4】液中の微細なバブルが加圧によって更に微細なバブルに変わるメカニズムの原理を示す図である。
【図5】図1に示す基板洗浄装置におけるバブル発生装置に用いられるバブル混合機構の主要部として使用し得る二流体ノズルユニットを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。
【0029】
本発明の実施の一形態に係るバブル生成装置を含む基板洗浄装置は、図1に示すように構成される。
【0030】
図1において、この基板洗浄装置10は、洗浄液W(例えば、純水にて構成される)を貯留する貯液槽11を有し、貯液槽11の底部に近い所定部位から延びる送通管12aがポンプ13の入力口に接続されている。ポンプ13の出力口から延びる送通管12bは、後述するようにバブル混合機構の主要部であるアスピレータ14の液体導入部141(図2参照)に接続される。アスピレータ14の気液排出部142(図2参照)から延びる送通管12cは、貯液装置11の天面の所定部位に接続される。これにより、貯液槽11からアスピレータ14(バブル混合機構)を通って貯液槽11に戻る洗浄液Wの循環系が形成される。
【0031】
窒素ガス供給部15からは、2つに分岐する送通管16a、16bが延びている。一方の送通管16aは、アスピレータ14の気体導入部143(図2参照)に接続されている。送通管16aには窒素ガス供給部15からアスピレータ14に供給される窒素ガスの圧力を調整するレギュレータ17aと開閉弁18aとが設けられている。窒素ガス供給部15から延びる他方の送通管16bは、貯液槽11の天面の所定部位に接続されている。送通管16bには窒素ガス供給15から貯液槽11に供給される窒素ガスの圧力を調整するレギュレータ17bと開閉弁18bとが設けられている。
【0032】
窒素ガス供給部15、アスピレータ14、それらをつなぐ送通管16a、送通管16aに設けられたレギュレータ17a及び開閉弁18aにてバブル混合機構が構成される。このバブル混合機構の主要部となるアスピレータ14は、図2に示すように構成される。
【0033】
図2において、アスピレータ14は、液体導入部141、気液排出部142及び気体導入部143がT字型となるように結合されている。前述したようにポンプ13から延びる送通管12bが接続される液体導入部141は、絞り部144を介して、貯液槽11に至る送通管12cが接続される気液排出部142に連通している。窒素ガス供給部15から延びる送通管16aに接続される気体導入部143は、絞り部144の直後に位置する気液混合部145を介して、気体導入部141から気液排出部142に続く通路に結合している。気液排出部142は気液混合部145側の端部から徐々に断面が広がるような形状となっている。
【0034】
このような構造のアスピレータ14を主要素とするバブル混合機構では、貯液槽11からポンプ13によって送通管12bを通してアスピレータ14に圧送される洗浄液Wが、当該バブル混合機構に対する供給液として、アスピレータ14の液体導入部141から絞り部144を通して高速になって気液排出部142に抜けていく。その際に、窒素ガス供給部15から送通管16aを通して供給される窒素ガスが気体導入部143に引き込まれ、気液混合部145においてその窒素ガスが液体導入部141から気液排出部142に高速に抜けていく洗浄液W中に微細な気泡(バブル)となって混ざっていく。その結果、アスピレータ14の気液排出部143から微細バブルの混ざった洗浄液W(以下、適宜、バブル混在洗浄液Wという)が排出される。
【0035】
図1に戻って、貯液槽11の底部の所定部位から延びる送通管22aがポンプ24の入力口に接続され、ポンプ24の出力口から延びる送通管22bが複数のノズルを有するノズルヘッド30(処理ヘッドユニット)に接続されている。ノズルヘッド30(複数のノズル)に対向するように被洗浄物(被処理物)となるガラス基板100が配置される。なお、ガラス基板100は、ノズルヘッド30に対向するように設置されたターンテーブル上に載置されるものであっても、搬送機構によってノズルヘッド30の下方を搬送されるものであってもよい。貯液槽11からポンプ24に延びる送通管22aには開閉弁23が設けられている。
【0036】
また、貯液槽11の天面の所定部位には大気に開放する排気管20が接続されている。この排気管20には開閉弁21が設けられている。更に、貯液槽11の底部の近傍に洗浄液W中に溶解した窒素ガスの濃度を検出する溶存ガスセンサ19が設けられている。溶存ガスセンサ19にて検出される洗浄液W中の溶存窒素ガスの濃度を図示外の処理装置においてモニタすることができるようになっている。
【0037】
基板洗浄装置10の動作について説明する。
【0038】
まず、窒素ガス供給部15から貯液槽11に延びる送通管16bに設けられた開閉弁18bが閉鎖され、窒素ガス供給部15からアスピレータ14に延びる送通管16aに設けられた開閉弁18aが解放される。また、貯液槽11からポンプ24に延びる送通管22aに設けられた開閉弁23が閉鎖されるとともに、排気管20に設けられた開閉弁21が閉鎖される。
【0039】
この状態で、ポンプ13を起動させると、貯液槽11内の洗浄液Wが送通管12a、12bを通ってアスピレータ14の液体導入部141(図2参照)に供給されるとともに、窒素ガス供給部15からの窒素ガスがレギュレータ17aによって所定圧力に調整されつつ送通管16aを通ってアスピレータ14の気体導入部143(図2参照)に供給される。アスピレータ14(図2参照)では、液体導入部141から絞り部144を介して気液排出部142に高速に抜けていく洗浄液W中に気体導入部143からの窒素ガスが微細なバブル(例えば、マイクロバブルと呼ばれる直径が10〜100μm程度の微細なバブル)となって混ざり、気液排出部142からバブル混在洗浄液W(バブル混在液)が排出される。そして、アスピレータ14からのバブル混在洗浄液Wは、送通管12cを通って貯液槽11に戻される。
【0040】
ポンプ13が稼働している間、前記バブル混在洗浄液Wが送通管12a、12b、12cを通って貯液槽11とアスピレータ14との間を循環する。バブル混在洗浄液Wが循環する間に、アスピレータ14において、常に窒素ガスがそのバブル混在洗浄液W中に微細なバブルとなって混ざっていき、そのバブル混在洗浄液W中の微細なバブルの数が増えていく。
【0041】
そして、例えば、貯液槽11内のバブル混在洗浄液W中のバブルの密度が比較的高い所定のレベルに達したと見込まれるタイミングにおいて、ポンプ13が停止させられる。これで貯液槽11から送通管12a、12b、12c及びスピレータ14を通って貯液槽1に戻るバブル混在洗浄液Wの循環が終了し、その後、窒素ガス供給部15からアスピレータ14に延びる送通管16aに設けられた開閉弁18aが閉鎖される一方、窒素ガス供給部15から貯液槽11に延びる送通管16bに設けられた開閉弁18bが解放される。なお、貯液槽11内のバブル混在洗浄液W中のバブルの密度(個数)を例えばパーティクルカウンタや粒子粒度分布計等を用いて測定し、その測定値と予め定めた基準値とを比較してポンプ13の動作をフィードバック制御することができる。この場合、測定値が前記基準値に達したときにポンプ13が停止させられる。
【0042】
この状態で、窒素ガス供給部15からの窒素ガスがレギュレータ17bによって比較的高い所定圧力(例えば、バブル生成時の圧力より高い圧力)に調整されつつ送通管16bを通って貯液槽11に供給される。この高圧の窒素ガスが貯液槽11に供給され続けることにより、貯液槽11内の気圧(窒素ガス圧)が上昇する。この貯液槽11内の窒素ガス圧の上昇によってバブル混在洗浄液Wが加圧され、その圧力によりバブル混在洗浄液W中の多数の微細なバブルが一斉に収縮して更に微細なバブルに変わる。具体的は、次のようにしてバブル混在洗浄液W中の微細なバブルが更に微細なバブルに変わる。
【0043】
例えば、図3(a)に示すように、バブル混在洗浄液W中のバブルBの気液界面に水のイオンH+、OH-が集まるが、通常のpH条件ではOH-が多くなるためバブルBはマイナスに帯電している。そして、マイナスに帯電されたバブルBに洗浄液W中の電解質イオンEが引きつけられる(静電作用)。この状態で、図3(b)に示すように、加圧によってバブルB内の窒素ガスN2が洗浄液W中に溶解しつつ当該バブルBが収縮していく。バブルBの収縮によってその界面の表面積が小さくなるにつれて界面の電荷が濃縮されていく。そして、一部のバブルBは、図3(c)に示すように、電荷として蓄えられたエネルギーがもとで急激に消滅し(ラジカルの発生)、窒素ガスN2が洗浄液W中に溶け出す。
【0044】
一方、例えば、図3(a)と同様に図4(a)に示すように、バブルBの界面に洗浄液W中の電解質イオンEが引きつけられた状態で当該バブルBが収縮していく過程で、付着した電解質イオンEが、H+、OH-イオンと電気的にバランスして(静電作用によって)電気二重層が形成されると、図4(b)に示すような状態でバブルBの収縮が停止する。その結果、洗浄液W中に当初含まれていた微細なバブルBが、安定した更に微細なバブルB(例えば、マイクロナノバブルやナノバブルと呼ばれる直径が10μm以下の極めて微細なバブル)に変わる。
【0045】
バブル混在洗浄液W全体が加圧されるので、そのバブル混在洗浄液W中では、多くのバブルBについて前述した消滅(図3参照)及び微細化(図4参照:マイクロナノバブル化やナノバブル化)が一斉になされ、時間経過とともにバブル混在洗浄液W中における微細化されたバブルB(ナノバブルやマイクロナノバブル)の数が増大する。
【0046】
窒素ガス供給部15から貯液槽11に供給される窒素ガスによってバブル混在洗浄液Wが加圧されている間、当該バブル混在洗浄液W中では、前述したようにバブルBの微細化及び消滅、更にそれに伴う窒素ガスの溶解が発生しているが、更に、貯液槽11内のバブル混在洗浄液Wの表面に接する窒素ガスもそのバブル混在洗浄液中に溶解していく。そして、溶存ガスセンサ19にて検出される洗浄液W中の溶存窒素ガスの濃度(溶存窒素ガスの量)が所定濃度(所定量)、好ましくは、過飽和の状態になると、開閉弁18bが閉鎖されて窒素ガス供給部15から貯液槽11への窒素ガスの供給が停止される。なお、洗浄液W中の溶存窒素ガスの濃度が所定濃度、好ましくは、過飽和状態になったと見込まれるタイミング(例えば、加圧開始から所定時間経過後のタイミング)にて前記窒素ガスの供給を停止する(加圧を停止する)こともできる。
【0047】
この状態で、排気管20に設けられた開閉弁21が解放される。すると、貯液槽11内の圧力が高圧状態から大気圧に向けて急激に低下し、その急激な圧力低下によって、バブル混在洗浄液W中に所定濃度(過飽和の状態)で溶存している窒素ガスが極めて微細なバブルとなって顕在化する。これにより、バブル混在洗浄液中の極めて微細なバブル(ナノバブルやマイクロナノバブル)の数が更に増大する。
【0048】
このようにして貯液槽11内のバブル混在洗浄液W中に含まれる極めて微細なバブルの数が増大した状態になると、開閉弁23が解放される。この状態で、ポンプ24を起動させると、貯液槽11内のバブル混在洗浄液Wが送通管22a、22bを通ってノズルヘッド30に圧送される。そして、ノズルヘッド30の複数のノズルから吐出するバブル混在洗浄液Wがガラス基板100の表面に吹きかけられ、それによってガラス基板100の表面が洗浄(処理)される。ガラス基板100に吹きかけられるバブル混在洗浄液Wには、多くの極めて微細なバブル(ナノバブルやマイクロナノバブル)が含まれており、その極めて微細なバブルの洗浄効果や酸化作用によってガラス基板100の表面を良好に洗浄することができるようになる。
【0049】
前述したような基板洗浄装置10においては、貯液槽11内全体のバブル混在洗浄液W中の多くの微細バブルが加圧により収縮する際に洗浄液W中のイオンの静電作用によって安定化して一斉に更に微細なサイズのバブルとなるので、洗浄液中のバブルをより効率的に微細化することのできるようになる。そして、その極めて微細なサイズのバブルを含む洗浄液Wをガラス基板100に吹きつけるようにしているので、洗浄液W中の極めて微細なバブルの効果によってガラス基板100の表面を良好に洗浄することができる。
【0050】
バブル混合機構の主要部としてのアスピレータ14に代えて図5に示すような二流体ノズルユニット40を用いることができる。この二流体ノズルユニット40は、洗浄液(バブル混在洗浄液)Wを貯める洗浄液貯留部41と高圧窒素ガスを貯めるガスタンク部42とを有している。二流体ノズルヘッド40には、洗浄液貯留部41から下方に向けて延びる複数のノズル35が形成されている。また、図示されてはいないが、ガスタンク部42から洗浄液貯留部41の外周を通って複数のノズル35の先端から外方に開放するように気体通路が形成されている。二流体ノズルヘッド40の外壁部には、ポンプ13から延びる送通管12bが接続され、洗浄液貯留部41に連通する洗浄液導入口43が形成されるとともに、窒素ガス供給部15から延びる送通管16aが接続され、ガスタンク部42に連通する気体導入口44が形成されている。
【0051】
このような二流体ノズルヘッド40では、送通管12bを通って圧送される洗浄液Wが洗浄液導入口43を通して洗浄液貯留部41に導入されるとともに、送通管16aを通って供給される高圧の窒素ガスが気体導入口44を通してガスタンク部42に導入される。そして、洗浄液貯留部41に貯められた洗浄液Wが各ノズル45から吐出する際に、ガスタンク部42から高圧の窒素ガスが気体通路を通って各ノズル45の先端部に噴出する。それにより、各ノズル45から吐出する洗浄液が霧状(ミスト状)に微粒子化されるとともに窒素ガスが微細なバブルとなって各ミスト粒内に混ざる。各ノズル45から噴出する洗浄液Wのミスト粒の直径は数10μm程度であり、それに含まれる窒素ガスのバブルの直径は、そのミスト粒の直径より小さいものとなる。
【0052】
前述した構造の二流体ノズルヘッド40の各ノズル45から噴出するミスト状のバブル混在洗浄液Wは集められて送通管12cを通して貯液槽11に戻される。これにより、バブル混在洗浄液Wが貯留槽11とバブル混合機構の主要部としての二流体ヘッドノズル40との間を循環することになる。そして、このバブル混在洗浄液Wの循環により、貯液槽11内のバブル混在洗浄液中の微細バブルの数がアスピレータ14の場合と同様に増大していく。
【0053】
なお、前述した基板洗浄装置10では、比較的高い所定圧力(例えば、バブル生成時の圧力より高い圧力)に保持された窒素ガスによって貯液槽11内のバブル混在洗浄液Wを加圧するようにしたが、窒素ガスのような気体ではなく、ピストン機構等のような機械的な機構によって貯液槽11内のバブル混在洗浄液Wを加圧することができる。ただし、窒素ガスのような気体でバブル混在洗浄液Wを加圧する場合、バブル混在洗浄液表面からその気体が溶融することが期待できるので、そのバブル混在洗浄液W中の溶存気体の濃度を高めることができるという観点から、前記窒素ガスのような気体にてバブル混在洗浄液Wを加圧することが好ましい。
【0054】
また、前述した基板洗浄装置10では、窒素ガス供給部15からの窒素ガスを洗浄液Wに混在させるため(アスピレータ14に供給)と、貯液槽11に貯められたバブル混在洗浄液Wを加圧するためとに利用しているが、それぞれ別々の供給源から気体(例えば、窒素ガス)を供給することもできる。
【0055】
なお、前述した実施の形態では、バブル混在液を洗浄液Wとして被洗浄物であるガラス基板100に吹きつけるものであったが、バブル混在液を、洗浄以外の処理(例えば、有機物の分解処理)に用いることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0056】
以上、説明したように、本発明に係るバブル生成方法及び装置は、液中のバブルをより効率的に微細化することのできるという効果を有し、マイクロナノバブルやナノバブル等と呼ばれる極めて微細なバブルを液体中に生成するバブル生成方法及び装置として有用である。
【符号の説明】
【0057】
10 基板洗浄装置
11 貯液槽
12a、12b、12c 送通管
13 ポンプ
14 アスピレータ
16a、16b 送通管
17a 17b レギュレータ
18a、 18b 開閉弁
19 溶存ガスセンサ
20 排気管
21 開閉弁
22a、22b 送通管
23 開閉弁
24 ポンプ
30 ノズルヘッド(処理ヘッドユニット)
40 二流体ノズルヘッド
41 洗浄液貯留部
42 エアタンク部
43 洗浄液導入口
44 エア導入口
45 ノズル
100 ガラス基板(被洗浄物)
141 液体導入部
142 気液排出部
143 気体導入部
144 絞り部
145 気液混合部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バブル混合機構が供給液に微細バブルを混ぜ、該バブル混合機構により生成されるバブル混在液を貯液槽に供給し、該貯液槽に貯まった前記バブル混在液を前記供給液として前記バブル混合機構に戻すことによって、前記バブル混在液を前記バブル混合機構と貯液槽との間を循環させるバブル混在液循環ステップと、
前記バブル混在液循環ステップが終了した後に、前記貯液槽内のバブル混在液を加圧する加圧ステップとを有するバブル生成方法。
【請求項2】
前記加圧ステップは、気体を前記貯液槽に加圧供給して当該貯液槽の内圧を高める請求項1記載のバブル生成方法。
【請求項3】
前記バブル混在液循環ステップにおいて、前記バブル混合機構は、気体供給源からの気体を前記供給液に噴出して微細バブルを前記供給液に混ぜ、
前記加圧ステップは、前記気体供給源からの気体を前記貯液槽に加圧供給する請求項2記載のバブル生成方法。
【請求項4】
前記貯液槽内のバブル混在液中の溶存気体の量が所定量になるまで、少なくとも前記加圧ステップを行う請求項2または3に記載のバブル生成方法。
【請求項5】
前記貯液槽内の前記溶存気体が過飽和の状態になるまで、少なくとも前記加圧ステップを行う請求項4記載のバブル生成方法。
【請求項6】
供給液に微細バブルを混ぜるバブル混合機構と、
該バブル混合機構によって生成されるバブル混在液を貯める貯液槽と、
該貯液槽から前記バブル混在液を前記供給液として前記バブル混合機構に戻す戻し機構と、
前記貯液槽内のバブル混在液を加圧する加圧機構と、
前記バブル混在液を前記貯液槽、戻し機構及びバブル混合機構を循環させるバブル混在液循環モードと、前記加圧機構により前記貯液槽内の前記バブルを加圧する加圧モードとを切り換える切り換え機構とを有するバブル生成装置。
【請求項7】
前記加圧機構は、前記貯液槽内に気体を加圧供給する気体供給機構を有する請求項6記載のバブル生成装置。
【請求項8】
前記バブル混合機構は、気体供給源と、該気体供給源からの気体を前記供給液に噴出させる気体噴出機構とを有し、
前記加圧機構における気体供給機構は、前記気体供給源からの気体を前記貯液槽に加圧供給し、
前記切り換え機構は、前記気体供給源からの気体を、前記バブル混合機構における前記気体噴出機構と、前記加圧機構における前記気体供給機構とのいずれかに切り換える気体切り換え機構を有する請求項7記載のバブル生成装置。
【請求項9】
請求項6乃至8のいずれかに記載のバブル生成装置と、
処理液を噴出する処理ヘッドユニットと、
前記バブル生成装置における前記貯液槽から前記バブル混在液を前記処理ヘッドに前記処理液として加圧供給する処理液供給機構とを有する処理装置。
【請求項10】
前記バブル生成装置の前記貯液槽に貯められたバブル混在液の溶存気体の量を検出する手段を有する請求項9記載の処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−72903(P2011−72903A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−226551(P2009−226551)
【出願日】平成21年9月30日(2009.9.30)
【出願人】(000002428)芝浦メカトロニクス株式会社 (907)
【Fターム(参考)】