説明

バラスト水中のオゾン低減装置

【課題】バラスト水中に残留するオゾンを必要十分な滞留時間を確保しつつバラストタンクへの漲水に支障が生じない程度にまで低減が可能であり、コンパクトで簡易な構造のバラスト水中のオゾン低減装置の提供。
【解決手段】取水されたバラスト水をバラストポンプによってバラストタンクに向けて移送するバラスト水経路中に設けられ、オゾン注入された後のバラスト水中に残留するオゾンを密閉状のタンクを用いて低減するオゾン低減装置であって、タンク下部にバラスト水流入口と上部側面にバラスト水排水口とを有し、流入口から流入したバラスト水を排水口に向けて上昇させる過程でバラスト水中から分離した排ガスをタンク内の上部に溜めタンクの上部に排ガスを排出するためのガス抜き弁を有する構成であり、タンクはバラストポンプの駆動によって流入口から流入したバラスト水を20秒以上60秒以下滞留させることができる容量を有していることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はバラスト水中のオゾン低減装置に関し、詳しくは、バラスト水中に残留するオゾンを、必要十分な滞留時間を確保しつつ、バラストタンクへの漲水に支障が生じない程度にまで低減することが可能であり、コンパクトで簡易な構造のバラスト水中のオゾン低減装置に関する。
【背景技術】
【0002】
水生生物を含むバラスト水を処理する方法として、バラスト水に対してオゾンガスを注入することにより、殺菌あるいは除菌する技術が知られている(特許文献1)。
【0003】
このようにバラスト水処理のためにオゾンを使用する場合、注入したオゾンは海水中の臭素イオンや有機物等と反応して急速に減少するが、それでもオゾン注入後に直ちにバラストタンクに漲水すると、未反応のオゾンがバラストタンク内に溜まり、バラストタンクを腐食するのみならず、船舶内の船員へ与える悪影響も懸念される。バラストタンク内でのオゾン濃度は0.1ppm未満とされることが望まれ、このため、オゾン注入後のバラスト水中のオゾン濃度が0.1ppm未満となるまで低減するための設備が必要となる。
【0004】
従来、密閉型の気液分離室の下部に、上向きに傾斜する上昇管を接続してオゾン水を流入させると共に、反対側の下部に下向きに傾斜する下降管を接続してオゾン分離後の水を排水する構成の気液分離装置が提案されている(特許文献2)。この気液分離室は水系統の口径よりも極めて大きな流れ方向の断面積を有し、流入したオゾン水は減速してオゾンガスを含む気泡が分離上昇し、排ガスが上部空間に溜まるようになっている。上部に溜まった排ガスは、調整弁の開閉操作によって外部に排出され、気泡分離後の水は気液分離室の下部の下降管から排出される。
【0005】
従って、バラスト水中に残留するオゾンを低減するため、特許文献2に開示のように気液分離室を有する気液分離手段をバラストタンクの手前のバラスト水経路中に介設することが考えられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2004−160437号公報
【特許文献2】特開2004−188246号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献2記載の技術は、水中に気泡状態で混入するオゾンガスを気液分離室によって分離除去するものである。気泡は気液分離室内を上昇して水中から除去されるため、流入口と排水口とを共に気液分離室の下部に配置しているが、この方法では、オゾンガスを含む気泡を上昇させて分離できる程度の滞留時間が必要となる。気泡は水中を緩慢に上昇するため、このような気泡を分離できる程度の滞留時間を確保するためには、かなり大型の気液分離室を構築しなくてはならない。
【0008】
しかしながら、船舶内の限られたスペース内に、気泡を分離できる程度の滞留時間を確保可能な大型の気液分離室を構築することは設計上極めて困難である。
【0009】
また、滞留時間を長くとることは、それだけバラストタンクへのバラスト水の漲水時間が遅れてしまい、船舶の運航スケジュールにも支障をきたす問題がある。
【0010】
そこで、本発明は、バラスト水中に残留するオゾンを、必要十分な滞留時間を確保しつつ、バラストタンクへの漲水に支障が生じない程度にまで低減することが可能であり、コンパクトで簡易な構造のバラスト水中のオゾン低減装置を提供することを課題とする。
【0011】
本発明の他の課題は、以下の記載により明らかとなる。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記課題は以下の各発明によって解決される。
【0013】
(請求項1)
取水されたバラスト水をバラストポンプによってバラストタンクに向けて移送するバラスト水経路中に設けられ、オゾン注入された後のバラスト水中に残留するオゾンを密閉状のタンクを用いて低減するオゾン低減装置であって、
前記タンクの下部にバラスト水の流入口と上部側面にバラスト水の排水口とを有し、前記流入口から流入したバラスト水を前記排水口に向けて上昇させる過程でバラスト水中から分離した排ガスを前記タンク内の上部に溜め、該タンクの上部に排ガスを排出するためのガス抜き弁を有する構成であり、
前記タンクは、前記バラストポンプの駆動によって前記流入口から流入したバラスト水を20秒以上60秒以下滞留させることができる容量を有していることを特徴とするバラスト水中のオゾン低減装置。
【0014】
(請求項2)
前記流入口の周りを取り囲むように、流入したバラスト水をタンク内に分散させ、タンク内の上昇流を一様にする手段が設けられていることを特徴とする請求項1記載のバラスト水中のオゾン低減装置。
【0015】
(請求項3)
前記流入口は、前記タンクの下部側面から該タンク内の底面に向けて屈曲する屈曲管の先端に開口しており、前記分散化手段は、前記流入口の周りを取り囲むように設けられた多数の通水孔を有する籠状体によって構成されることを特徴とする請求項2記載のバラスト水中のオゾン低減装置。
【0016】
(請求項4)
前記タンクは、前記バラストポンプの駆動によって前記流入口から流入したバラスト水を20秒以上60秒以下滞留させることができる容量を有していることを特徴とする請求項1、2又は3記載のバラスト水中のオゾン低減装置。
【0017】
(請求項5)
前記排水口に接続された排水管に、前記排水口から排水される流量を規制する流量規制弁を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のバラスト水中のオゾン低減装置。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、バラスト水中に残留するオゾンを、必要十分な滞留時間を確保しつつ、バラストタンクへの漲水に支障が生じない程度にまで低減することが可能であり、コンパクトで簡易な構造のバラスト水中のオゾン低減装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明に係るバラスト水のオゾン低減装置を組み込んだバラスト水処理装置の一例を示す概略構成図
【図2】スリット板を示す断面図
【図3】図2のIII−III線断面図
【図4】本発明に係るバラスト水のオゾン低減装置の詳細図
【図5】気泡化手段の斜視図
【図6】試験装置のフロー図
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施の形態について図面を用いて説明する。
【0021】
図1は、本発明に係るバラスト水のオゾン低減装置を組み込んだバラスト水処理装置(システム)の一例を示す概略構成図である。
【0022】
図中、1は船体、2は船体1内に設けられたバラストタンク、3はバラスト水を取水するシーチェスト、4はシーチェスト3から取水されたバラスト水をバラストタンク2に向けて移送する主配管、5はバラスト水を取水及び移送するバラストポンプである。ここではバラストタンク2は1つだけ示されているが、通常、バラストタンク2は船体1内に複数設けられ、各バラストタンク2内にそれぞれ主配管4によってバラスト水が移送される。
【0023】
シーチェスト3とバラストポンプ5との間の主配管4には、シーチェスト3側から順に、ストレーナ6、オゾン混合装置7が介設されている。また、バラストポンプ5とバラストタンク2との間の主配管4には、バラストポンプ5側から順に、スリット板8、オゾン低減装置9が介設されている。
【0024】
10はオゾンを生成するオゾン発生装置、11はオゾン供給ライン、12はオゾン低減装置9から排出された排オゾンガスを活性炭等によって分解するための排オゾン分解塔、13は排オゾンラインである。
【0025】
なお、本発明では、バラストタンク2内に貯留された水のみならず、バラストタンク2に貯留するためにシーチェスト3から船体1内に取り込まれた水を含めて「バラスト水」と定義する。本発明においてバラスト水には一般には海水又は汽水が使用される。かかるバラスト水は、一般に、動物プランクトン、植物プランクトン、微生物等の水生生物や大腸菌等の細菌類を含んでいる。
【0026】
バラストポンプ5によってシーチェスト3から取水されたバラスト水は、ストレーナ6によって比較的大きな夾雑物が取り除かれた後、オゾン混合装置7によってオゾンが注入される。
【0027】
オゾン発生装置10は、コンプレッサー10a、酸素発生器10b及びオゾン発生器10cを有しており、酸素発生器10b及びオゾン発生器10cを経て生成されたオゾンが、コンプレッサー10aによってオゾン供給ライン11を介してオゾン混合装置7に供給される。
【0028】
オゾン混合装置7は、主配管4を移送中のバラスト水とオゾンもしくはオゾンと酸素の混合気体とを気液混合する気液混合装置(オゾンインジェクター)を好ましく用いることができるが、バラスト水中に所定濃度のオゾンを混入させることができるものであれば特に限定されず、例えばスタティックミキサー、ラインミキサーなどの静的混合機や散気管等を使用することもできる。
【0029】
このオゾン混合装置7においてバラスト水中に注入されるオゾンの濃度は、1.0〜4.0ppmとすることが好ましい。
【0030】
スリット板8は、オゾン混合装置7によってオゾンが混入されたバラスト水を高圧で通過させることにより、バラスト水中の水生生物を剪断力によって破壊して殺滅する。
【0031】
このスリット板8の一例を図2、図3に示す。
【0032】
図2は、主配管4内のスリット板8を示す断面図、図3は、図2のIII−III線断面図であり、これらに示すように、スリット板8は主配管4の内部に、該主配管4の流路全体を塞ぐようにして配設されている。スリット板8には複数のスリット状の開口8aが形成されている。開口8aの開口幅は、バラスト水中の水生生物や細菌類を剪断力によって破壊する効果が充分に発揮され得る幅に設定されるが、好ましくは200μm〜500μmとされる。
【0033】
主配管4内を移送されるバラスト水は、バラストポンプ5によってこのスリット板8に向かって高圧で圧送される。圧送されたバラスト水は乱流状態のままスリット板8のスリット状の開口8aを通過しようとし、この開口8aを通過する際に剪断現象が生じることで、バラスト水中の水生生物を破壊して殺滅する。
【0034】
かかる剪断力による破壊、殺滅効果をより発揮させるために、スリット板8はバラスト水の流れ方向に対して直交する方向に取り付けることが好ましい。
【0035】
また、スリット板8は、主配管4内に密接して取り付けられるが、図示しないが、容易に取り外し可能として洗浄することができるように、フランジ等によって主配管4に介設することが好ましい。
【0036】
スリット板8に形成される複数のスリット状の開口8aの形状は、図3に例示するように細長い長方形状からなるものが好ましい態様として挙げられる。開口8aの本数は特に限定されず、バラスト水の圧力損失、剪断現象の発生状況に応じて適宜設定される。
【0037】
なお、各開口8aは全て同じ長さに形成してもよいが、主配管4の断面形状に合わせて、中央部の開口8aを長く、端部に行くほど短く形成してもよい。また、各開口8aの形状は直線状に限らず、円弧状等の曲線状に形成してもよい。
【0038】
更に、主配管4内に配設されるスリット板8の枚数は1枚に限らず、複数枚を間隔をおいて配設してもよい。複数枚のスリット板8を配設する場合は、各スリット板8のそれぞれの開口8aの幅、大きさ、本数、形状を異ならせたり、開口8aの向きを互いに直交する方向に配置したりすることが好ましい。これにより、剪断現象をより一層効果的に発揮させることができ、バラスト水中の水生生物の破壊、殺滅効果をより向上させることができる。
【0039】
このようにして、主配管4内を移送されるバラスト水中の水生生物は、バラスト水中へのオゾン混入とスリット板8による剪断力とによって除去あるいは殺滅される。
【0040】
スリット板8を通過した後のバラスト水中には未反応のオゾンが残留しており、本発明に係るオゾン低減装置9に送られ、ここでオゾンが低減される。
【0041】
図4は本発明に係るオゾン低減装置9の詳細図である。
【0042】
オゾン低減装置9は、竪型円筒形状をした密閉状のタンク100を有しており、その下部側面において主水管4(流入側主配管4A)と接続され、上部側面に形成された排水口101において排水管(排水側主配管4B)と接続されている。
【0043】
流入側主配管4Aと接続されたタンク100内の下部には、流入側主配管4Aと連通してタンク100内を横方向に延びると共に先端がタンク100内の底面100aの中央部に向けて屈曲した屈曲管102が設けられ、この屈曲管102の先端にバラスト水の流入口103が下向きに開口し、タンク100内の底面100aの中央部と対面している。
【0044】
屈曲管102の先端には、流入口103の周りを取り囲むように分散化手段104が設けられている。この分散化手段104は、流入口103から流入したバラスト水を乱流状態とし、タンク内の上昇流を一様に分散させて、オゾン低減化を促進する。
【0045】
分散化手段104は、詳細には図5に示すように、流入口103の外周を取り囲む円筒形の側周壁104aと円形の上面壁104bとからなる籠状体であり、側周壁104aと上面壁104bには、5〜10mm径の多数の通水孔104cが開設されている。屈曲管102の先端は、かかる分散化手段104の上面壁104bを貫通しており、その流入口103は上面壁104bよりも僅かに下位となる位置に配置されている。
【0046】
本実施形態では、分散化手段104を構成する籠状体は、有底状の籠状体であり、底面壁にも通水孔104cが形成されている。この分散化手段104の下面はタンク100の底面100aとの間に僅かな間隙100bを形成するように近接している。流入口103から流入したバラスト水をタンク100の底面100aに衝突させた後、間隙100bを通過したバラスト水にも微細気泡を発生させることができる。
【0047】
この分散化手段104は、流入口103の周囲を取り囲んでいるだけであるため、タンク100の内部構造を格別複雑化するものではない。また、分散化手段104は、流入口103から流入するバラスト水を乱流状態とし、タンク内の上昇流を一様にすることができるものであればよく、このような多数の通水孔104cを有する籠状体によって構成する他にも、流入口103の周囲を覆う多孔質体等によって構成することもできる。
【0048】
排水口101は、タンク100の頂部よりもやや下方の側面に開口している。タンク100内に流入したバラスト水中から分離したオゾンガスを含むガス成分は、タンク100内の上部に溜まり、徐々にガス溜まり105が形成されるが、このガス溜まり105とバラスト水との境界面である液面WLは、最低位置でもこの排水口101の上部までとされる。
【0049】
排水口101は排水側主配管4Bと接続されており、タンク100内のバラスト水は、バラストポンプ5の駆動によって、この排水側主配管4Bを通ってバラストタンク2に送られる。排水側主配管4Bには開閉弁41が介設されており、制御部200によってその開閉動作が制御されるようになっている。
【0050】
106は液面計であり、タンク100内の液面WLの位置を検出してその検出信号(計測値)を制御部200に送信するようになっている。107はタンク100の天井面に形成されたガス抜き穴であり、排オゾンライン13と接続されている。排オゾンライン13にはガス抜き弁131が介設され、制御部200によってその開閉動作が制御されるようになっている。
【0051】
また、108は手動で操作される空気抜き弁、109はタンク100内の点検等のためのマンホール、110はタンク100内の圧力を検出する圧力計、111はタンク100の外側面に取り付けられたガラス管式の液面計である。この液面計111は、液面計106に不具合等が発生した場合の予備として、目視によってタンク100内の液面WLの位置を確認することができるようになっている。
【0052】
排水口101と流入口103とは主配管4と同一口径とされているが、排水口101に接続された排水側主配管4Bに介設されている開閉弁41は、バラスト水の処理時、制御部200によって開度を絞るように制御され、排水流路に抵抗を形成する流路規制弁として機能させている。従って、タンク100内に流入したバラスト水は、開閉弁41が抵抗となって排水量が規制されるため、タンク100内に一定水位で、少なくとも排水口101の上位の位置に規制することができる。
【0053】
ここで、このタンク100は、バラスト水中の残留オゾンを単に気泡状態として気液分離するものとは異なり、未反応のオゾンをバラスト水中の有機物等と反応させることにより低減させるいわゆる反応タンクとして機能するものである。本発明では、この反応タンクとして機能させるためのタンク100の容量を規定していることに特徴を有している。すなわち、タンク100は、流入口103から流入したバラスト水を20秒以上60秒以下滞留させることができる容量を有している。つまり、バラストポンプ5の定格駆動によって流入口103からタンク100内に流入したバラスト水が、排水口101からタンク100の外部に排水されるまでに20秒以上60秒以下かかるだけの容量を有している。
【0054】
例えば、バラストポンプ5の能力が300m3/hrである場合、滞留時間を20秒とすると、タンク100の容量は約1.66m3、30秒とする場合では約2.5m3あればよいことになる。
【0055】
20秒未満ではバラスト水中に残留する未反応オゾンをバラスト水と反応させてバラストタンク2へ漲水するのに支障がない程度にまで低減させることが難しく、60秒を越える場合では、それ以上のオゾンの低減効果の向上が見込めず、タンク100が無駄に大型化して狭い船舶内において設置スペースを確保することが困難となる。好ましくは下限を30秒以上、上限を40秒以下とすることである。
【0056】
次に、かかるオゾン低減装置9の作用について説明する。
【0057】
まず、開閉弁41を閉じた状態でタンク100内にバラスト水を流入させる。このときガス抜き弁131を開放しておくことで、タンク100内の空気はガス抜き穴107から排ガスライン13へ排出され、液面WLが上昇していく。液面WLが排水口101の上部の所定位置まで到達したら、開閉弁131を閉じ、排水側主配管4Bの開閉弁41を開放して処理稼働状態とする。
【0058】
この後、オゾンが注入されてスリット板8を通過した後のバラスト水は、バラストポンプ5の駆動によって流入側主配管4Aから屈曲管102を通り、流入口103からタンク100内に流入する。流入口103の周囲には分散化手段104が設けられているため、バラスト水は流入口103から下向きに流れ出て、籠状体からなる分散化手段104内に滞留する。分散化手段104内に滞留したバラスト水は乱流状態となって、分散化手段104の下面と底面100aとの間の僅かな間隙100bと多数の通水孔104cとから、100μm程度の微細気泡を伴って周囲に拡散し、徐々に上向流となり、タンク100内を20秒以上、好ましくは30秒以上かけて排水口101の位置まで上昇していく。
【0059】
ここで、排水口101は流入口103よりも上方に位置しているため、流入口103から流入したバラスト水が排水口101に向けて直ちに排水されてしまうことはなく、分散化手段104による乱流の発生と相俟ってタンク100内で効率良く滞留させることができる。この滞留時間中に、バラスト水中に残留する未反応のオゾンとバラスト水との反応が促進され、バラスト水中のオゾン濃度はバラストタンク2に漲水するのに支障がない程度にまで低減される。従って、タンク100の容量は、オゾンを低減するのに必要な最低限の容量で済み、余計に大型化する必要もなくコンパクトに構築できる。
【0060】
排オゾンライン13のガス抜き弁131は通常時は閉じられているため、バラスト水中の残留オゾンのうち、一部は気泡状態となって他のガス成分と一緒に排オゾンガスとしてバラスト水中から脱気されるが、その排オゾンガスは徐々に上部に溜まっていき、ガス溜まり105を形成する。それに伴って液面WLは排オゾンガスの圧力によって徐々に低下する。液面WLは排水口101の上部が最低位とされるため、制御部200は、液面計106の計測値によって液面WLを監視しており、液面WLが低くなって計測値が所定値を下回った場合に、液面WLが所定位置となるまで排オゾンライン13のガス抜き弁131を開放し、液面WLを排水口101よりも上位となるように維持すると共に、排オゾンガスをガス抜き穴107から排オゾンライン13によって排オゾン分解塔12に移送する。
【0061】
かかるオゾン低減装置9によると、バラスト水中に残留する未反応のオゾンを、バラスト水と反応させるのに必要十分な滞留時間を確保しつつ、容易に低減することが可能であり、しかも、タンク100の内部に複雑な構築物を設ける必要なく、効率良く反応させることができるため、コンパクトで簡易な構造とすることができる。
【0062】
また、オゾン低減装置9のタンク100によって、オゾン注入後のバラスト水とオゾンとの反応に必要十分な滞留時間を確保でき、オゾンの低減化を図ることができるため、オゾン混合装置7からオゾン低減装置9までの距離を短くすることができ、バラスト水処理装置を設置するためのスペースも省スペース化できる。従って、新造船舶のみならず、既造船舶の場合にも効率の良いバラスト水のオゾン処理が可能なバラスト水処理装置を構築することができる。
【実施例】
【0063】
以下、本発明の効果を実施例によって例証する。
(実施例1)
図6に示す試験装置を用意し、原水として海水(24.3℃)を使用して3.0ppmあるいは3.5ppmのオゾン濃度となるようにオゾンガスを注入し、密閉状のタンク(本発明におけるオゾン低減装置9のタンク100に相当)によって脱気を行った。
【0064】
図中、300は主配管、301はオゾン発生装置、302は散気管(オゾン混合装置)、303はポンプ、304はスリット板、305はタンク、306は排水管、307はバラストタンクに見立てたストレージタンクである。タンク305の構造は図4と同様の構造である。
【0065】
この試験装置において、オゾン濃度3.0ppm、3.5ppm(検知管法による測定)の各々について、ポンプ303の流量を調整することによってタンク305内の海水の滞留時間を表1のように変化させ、バラストタンクに漲水しても支障がない程度のオゾン濃度とするのに必要なタンクの容量を確認した。
【0066】
【表1】

【0067】
以上の各条件においてオゾン処理を行い、所定時間経過後にタンク305内の上部空間部に溜まった排オゾンガスの濃度と、ストレージタンク(バラストタンクに相当)内の排オゾンガスの濃度とを測定してその最大濃度を調べると共に、発生ガス量を計測した。発生ガス量は海水流量300m3/hrに換算した値である。
【0068】
その結果を表2に示す。
【0069】
【表2】

【0070】
バラストタンク内でのオゾンの濃度は0.1ppm未満とされる。以上の結果から、オゾン注入濃度が3.0ppm、3.5ppmのいずれの場合においても、20秒の滞留時間でストレージタンク内の最大O3濃度が0.1ppm未満となることがわかる。従って、タンクは、オゾン注入後のバラスト水を20秒以上滞留させることができる程度の容量を有していればよいことがわかる。
【符号の説明】
【0071】
1:船体
2:バラストタンク
3:シーチェスト
4:主配管
4A:流入側主配管
4B:排水側主配管
41:開閉弁
5:バラストポンプ
6:ストレーナ
7:オゾン混合装置
8:スリット板
9:オゾン低減装置
10:オゾン発生装置
11:オゾン供給ライン
12:排オゾン分解塔
13:排オゾンライン
131:開閉弁
100:タンク
100a:底面中央部
101:排水口
102:屈曲管
103:流入口
104:分散化手段
104a:側周壁
104b:上面壁
104c:通水孔
105:空間部
106:液面計
107:ガス抜き穴
108:安全弁
109:マンホール
110:圧力計
111:液面計
200:制御部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
取水されたバラスト水をバラストポンプによってバラストタンクに向けて移送するバラスト水経路中に設けられ、オゾン注入された後のバラスト水中に残留するオゾンを密閉状のタンクを用いて低減するオゾン低減装置であって、
前記タンクの下部にバラスト水の流入口と上部側面にバラスト水の排水口とを有し、前記流入口から流入したバラスト水を前記排水口に向けて上昇させる過程でバラスト水中から分離した排ガスを前記タンク内の上部に溜め、該タンクの上部に排ガスを排出するためのガス抜き弁を有する構成であり、
前記タンクは、前記バラストポンプの駆動によって前記流入口から流入したバラスト水を20秒以上60秒以下滞留させることができる容量を有していることを特徴とするバラスト水中のオゾン低減装置。
【請求項2】
前記流入口の周りを取り囲むように、流入したバラスト水をタンク内に分散させ、タンク内の上昇流を一様にする手段が設けられていることを特徴とする請求項1記載のバラスト水中のオゾン低減装置。
【請求項3】
前記流入口は、前記タンクの下部側面から該タンク内の底面に向けて屈曲する屈曲管の先端に開口しており、前記分散化手段は、前記流入口の周りを取り囲むように設けられた多数の通水孔を有する籠状体によって構成されることを特徴とする請求項2記載のバラスト水中のオゾン低減装置。
【請求項4】
前記タンクは、前記バラストポンプの駆動によって前記流入口から流入したバラスト水を20秒以上60秒以下滞留させることができる容量を有していることを特徴とする請求項1、2又は3記載のバラスト水中のオゾン低減装置。
【請求項5】
前記排水口に接続された排水管に、前記排水口から排水される流量を規制する流量規制弁を有することを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のバラスト水中のオゾン低減装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−115737(P2011−115737A)
【公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−276858(P2009−276858)
【出願日】平成21年12月4日(2009.12.4)
【出願人】(000005902)三井造船株式会社 (1,723)
【Fターム(参考)】