説明

バラスト軌道用レール転倒防止装置

【課題】 レール締結装置のボルトを用いてレール転倒防止装置を締結する連続配置構造とし、レールより脱線した車輪がレール締結装置へ衝突する時の衝撃を低減させてレールの転倒を防止するバラスト軌道用レール転倒防止装置を提供する。
【解決手段】 バラスト軌道用レール転倒防止装置において、レール3の一方側に近接して配置される軌間外側用レール転倒防止金具6と、前記レール3の他方側に近接して配置される軌間内側用レール転倒防止金具7とを備え、レール締結装置を前記軌間外側用レール転倒防止金具6と前記軌間内側用レール転倒防止金具7とでカバーして防護するようにした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バラスト軌道用レール転倒防止装置に係り、特に、従来のレール締結装置の板ばね及びボルトを破壊しないようにすることにより、レールの転倒を防止し、車輪をレールで誘導して車両の大幅な横方向への逸脱を防止するようにしたものである。
【背景技術】
【0002】
従来、レールは、板ばねおよび締結ボルトを用いたレールの締結装置により、まくらぎに締結されて構成されている(下記特許文献1,2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭54−146307号公報
【特許文献2】特開平07−238501号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のレール締結装置によれば、レールより脱線した車輪の衝撃力により板ばね及び締結ボルトが破壊する恐れがあり、復旧に時間を要するといった問題があった。
本発明は、上記状況に鑑みて、レール締結装置のボルトを用いてレール転倒防止装置を締結する連続配置構造とし、レールより脱線した車輪がレール締結装置へ衝突時の衝撃を低減させてレールの転倒を防止するバラスト軌道用レール転倒防止装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、上記目的を達成するために、
〔1〕バラスト軌道用レール転倒防止装置において、レールの一方側に近接して配置される軌間外側用レール転倒防止金具と、前記レールの他方側に近接して配置される軌間内側用レール転倒防止金具とを備え、レール締結装置を前記軌間外側用レール転倒防止金具と前記軌間内側用レール転倒防止金具とでカバーして防護するようにしたことを特徴とする。
【0006】
〔2〕上記〔1〕記載のバラスト軌道用レール転倒防止装置において、車両側にL型ガイドを備え、車両のレールからの脱線時に、前記レールによって前記L型ガイドを誘導可能にしたことを特徴とする。
〔3〕上記〔1〕記載のバラスト軌道用レール転倒防止装置において、前記レール締結装置が既設のレール締結装置であることを特徴とする。
【0007】
〔4〕上記〔1〕記載のバラスト軌道用レール転倒防止装置において、前記レール締結装置が新設のレール締結装置であることを特徴とする。
〔5〕上記〔1〕、〔2〕、〔3〕又は〔4〕記載のバラスト軌道用レール転倒防止装置において、前記レール締結装置の締結用ボルトは、この締結用ボルトのヘッドが前記軌間外側用レール転倒防止金具と前記軌間内側用レール転倒防止金具の窪み部内に収まるように締結することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、レール締結装置のボルトを用いてレール転倒防止装置を締結する、レール締結装置とレール転倒防止装置との連続配置構造とし、レールより脱線した車輪がレール締結装置へ衝突する時の衝撃を低減してレールの転倒を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施例を示すバラスト軌道用レール転倒防止装置の構成図(その1)である。
【図2】本発明の実施例を示すバラスト軌道用レール転倒防止装置の構成図(その2)である。
【図3】本発明の実施例を示すバラスト軌道用レール転倒防止装置の要部平面図である。
【図4】本発明の実施例を示すバラスト軌道用レール転倒防止装置の要部断面図である。
【図5】本発明の実施例を示すバラスト軌道用レール転倒防止装置の軌間外側用レール転倒防止金具の構造を示す図である。
【図6】本発明の実施例を示すバラスト軌道用レール転倒防止装置の軌間内側用レール転倒防止金具の構造を示す図である。
【図7】本発明のバラスト軌道用レール転倒防止装置を施工したレールを示す図面代用写真である。
【図8】既存のレール締結装置へ施工した本発明のバラスト軌道用レール転倒防止装置を示す図面代用写真である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明のバラスト軌道用レール転倒防止装置は、レールの一方側に近接して配置される軌間外側用レール転倒防止金具と、前記レールの他方側に近接して配置される軌間内側用レール転倒防止金具とを備え、レール締結装置を前記軌間外側用レール転倒防止金具と前記軌間内側用レール転倒防止金具とでカバーして防護するようにした。
【実施例】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。
図1は本発明の実施例を示すバラスト軌道用レール転倒防止装置の構成図(その1)であり、レールがL型ガイドを誘導した状態を示している。図2は本発明の実施例を示すバラスト軌道用レール転倒防止装置の構成図(その2)であり、レールが車輪内面を誘導した状態を示している。
【0012】
これらの図において、1はバラスト軌道、2はそのバラスト軌道1上に敷設されるPCまくらぎ、3はレール、3Aはレール3のベース部、4はレール締結用板ばね、5はレール及びレール転倒防止金具の締結用ボルト、5Aは締結用ボルトのヘッド、6はレールの一方側に近接して配置されるレール転倒防止装置の軌間外側用レール転倒防止金具、7はレールの他方側に近接して配置されるレール転倒防止装置の軌間内側用レール転倒防止金具、11は車軸、12は車軸11に固定された車輪、13は車軸11に取付けられる軸箱、14は軸箱13に設けられるL型ガイドである。ここで、レール締結装置の締結用ボルト5は、この締結用ボルト5のヘッド5Aが軌間外側用レール転倒防止金具6と軌間内側用レール転倒防止金具7の窪み部6A,7A内に収まるように締結している。
【0013】
このように構成することにより、レール3から車両が脱線した場合でも、車輪12はレール転倒防止装置の軌間外側用レール転倒防止金具6と軌間内側用レール転倒防止金具7上で受け止められる。よって、レール締結用板ばね4とレール及びレール転倒防止用金具の締結ボルト5が車輪12の衝突時の衝撃により破壊されることはなく、レール3の転倒を防止することができ、このレール3によって車輪12又はL型ガイド14を誘導することで、車両の横方向の大幅な逸脱を抑制することができる。
【0014】
以下、本発明のバラスト軌道用レール転倒防止装置についてより具体的に説明する。
図3は本発明の実施例を示すバラスト軌道用レール転倒防止装置の要部平面図、図4はそのバラスト軌道用レール転倒防止装置の要部断面図、図5はそのバラスト軌道用レール転倒防止装置の軌間外側用レール転倒防止金具の構造を示す図、図6はバラスト軌道用レール転倒防止装置の軌間内側用レール転倒防止金具の構造を示す図である。
【0015】
これらの図に示すように、PCまくらぎ2上にはレール3が敷設され、そのレール3の一方の側に近接した軌間外側にはバラスト軌道用レール転倒防止装置の軌間外側用レール転倒防止金具6が、レール3の他方の側に近接した軌間内側にはバラスト軌道用レール転倒防止装置の軌間内側用レール転倒防止金具7が配置される。図5に示すように軌間外側用レール転倒防止金具6には、レール及びレール転倒防止金具の締結用ボルト5が配置される円筒形状の窪み部6A、レール3の締結部6B、下部に接着されるゴムパッキン6C,6D、締結用ボルト5が貫通するボルト穴6E、レール締結装置のカバー部6Fが形成されている。また、図6に示すように、軌間内側用レール転倒防止金具7には、レール及びレール転倒防止金具の締結用ボルト5が配置される円筒形状の窪み部7A、軌間内側方向に延びる傾斜部7B、下部に接着されるゴムパッキン7C,7D、締結用ボルト5が貫通するボルト穴7E、レール締結装置のカバー部7Fが形成されている。
【0016】
本発明のバラスト軌道用レール転倒防止装置は、既設のレール締結装置の締結用ボルト5を利用してレール転倒防止金具6,7を締結しており、レール締結装置とレール転倒防止装置の連続配置構造になっている。よって、既設のバラスト軌道のレール締結装置に対して本発明のレール転倒防止装置を容易に施工することができる。
このように構成されるので、レール3から車両が脱線した場合でも、レール締結用板ばね4や締結用ボルト5はレール転倒防止装置の軌間外側用レール転倒防止金具6と軌間内側用レール転倒防止金具7で防護されることになり、車輪の衝突によって破壊されることはなく、レールの転倒を防止することができる。
【0017】
また、図1又は図2に示すように、レール3によってL型ガイド14又は車輪12を誘導することで、車両の横方向の大幅な逸脱を防止することができる。
なお、バラスト軌道において、車両の逸脱防止対策として取付けられるL型ガイド14と本発明のレール転倒防止装置の設置位置に関し、レールのかかり量について検討した。
PCまくらぎ2上に車両が脱線した場合のレール3、車輪12およびL型ガイド14の位置関係は図1に示す通りである。L型ガイド14が作用した状態での位置関係は、L型ガイド14先端のかかり量は約30mm程度であり、レール3によるL型ガイド14の誘導は期待できるものであった。
【0018】
図7は本発明のバラスト軌道用レール転倒防止装置を施工したレールを示す図面代用写真、図8は既存のレール締結装置へ施工した本発明のバラスト軌道用レール転倒防止装置を示す図面代用写真である。
これらの図に示すように、本発明によれば、バラスト軌道用レール転倒防止装置を全てのPCまくらぎに容易に施工することができる。
【0019】
また、上記実施例では、主に既設のレール締結装置への適用について述べたが、これに限定されるものではなく、新規に構築されるバラスト軌道用レール転倒防止装置としても適用できることは言うまでもない。
なお、本発明は上記実施例に限定されるものではなく、本発明の趣旨に基づき種々の変形が可能であり、これらを本発明の範囲から排除するものではない。
【産業上の利用可能性】
【0020】
本発明のバラスト軌道用レール転倒防止装置は、レールから車両が脱線した場合に、レールの転倒を防止し、車両の横方向への大幅な逸脱を防止することができるレール転倒防止装置として利用可能である。
【符号の説明】
【0021】
1 バラスト軌道
2 PCまくらぎ
3 レール
3A レールのベース部
4 レール締結用板ばね
5 レール及びレール転倒防止金具の締結用ボルト
6 軌間外側用レール転倒防止金具
6A,7A 円筒形状の窪み部
6B レールの締結部
6C,6D,7C,7D ゴムパッキン
6E,7E ボルト穴
6F,7F レール締結装置のカバー部
7 軌間内側用レール転倒防止金具
7B 傾斜部
11 車軸
12 車輪
13 軸箱
14 L型ガイド

【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)レールの一方側に近接して配置される軌間外側用レール転倒防止金具と、
(b)前記レールの他方側に近接して配置される軌間内側用レール転倒防止金具とを備え、
(c)レール締結装置を前記軌間外側用レール転倒防止金具と前記軌間内側用レール転倒防止金具とでカバーして防護するようにしたことを特徴とするバラスト軌道用レール転倒防止装置。
【請求項2】
請求項1記載のバラスト軌道用レール転倒防止装置において、車両側にL型ガイドを備え、車両のレールからの脱線時に、前記レールによって前記L型ガイドを誘導可能にしたことを特徴とするバラスト軌道用レール転倒防止装置。
【請求項3】
請求項1記載のバラスト軌道用レール転倒防止装置において、前記レール締結装置が既設のレール締結装置であることを特徴とするバラスト軌道用レール転倒防止装置。
【請求項4】
請求項1記載のバラスト軌道用レール転倒防止装置において、前記レール締結装置が新設のレール締結装置であることを特徴とするバラスト軌道用レール転倒防止装置。
【請求項5】
請求項1、2、3又は4記載のバラスト軌道用レール転倒防止装置において、前記レール締結装置の締結用ボルトは、該締結用ボルトのヘッドが前記軌間外側用レール転倒防止金具と前記軌間内側用レール転倒防止金具の窪み部内に収まるように締結することを特徴とするバラスト軌道用レール転倒防止装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2012−57317(P2012−57317A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−199445(P2010−199445)
【出願日】平成22年9月7日(2010.9.7)
【出願人】(000173784)公益財団法人鉄道総合技術研究所 (1,666)
【出願人】(000196587)西日本旅客鉄道株式会社 (202)