説明

バリ評価装置

【課題】脱落する虞のあるバリであるか否かをより簡単に判定する。
【解決手段】自動変速機の油路内に形成されたバリの強度を評価するバリ評価装置であって、筒状の本体部10と、本体部10で軸方向に移動可能に支持されると共に、バリTに当接させる当接部21を有する一端側を本体部10の外に位置させた軸部材20と、当接部21でバリを押圧したときにバリから受ける反力に抗する所定の付勢力を軸部材20に与えるボールプランジャ30とを備え、ボールプランジャ30は、軸部材20の径方向から、所定の付勢力を軸部材20に与える向きで設けられており、軸部材20は、バリから受ける反力が所定の付勢力よりも大きくなってバリから離れる方向に移動すると、本体部10内に位置する他端側が本体部10から突出するように設けられている構成のバリ評価装置とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、バリ評価装置に関する。
【背景技術】
【0002】
自動変速機のコントロールバルブボディには複数の油穴が設けられており、これら油穴が互いに接続されて、オイルが通流する油路が形成される。
コントロールバルブボディに油穴を形成する際には、油穴と油穴との交差部にいわゆるバリが発生する。そのため、高圧洗浄やブラシ、そして特許文献1に開示されたバリ取り装置などにより、交差部に発生したバリを取り除くことが試みられるが、総てのバリを完全に取り除くことは難しかった。
【0003】
自動変速機の場合、取り除くことができずに油路内に残ったバリが脱落すると、脱落したバリがコントロールバルブなどに対する夾雑物となり、自動変速機の動作不良などの原因となる。
そのため、残ったバリが脱落する虞のあるバリであるか否かを確認し、脱落する虞のあるバリについては、再度バリ取り装置などで取り除き、脱落する虞のないバリについてはそのまま残すようにしていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平3−281163号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来では、脱落する虞のあるバリであるか否かの確認は、例えばシャープペンシルの芯でバリを押し、芯が折れた場合には、脱落する虞のないバリであると判定し、芯が折れずにバリのほうが折れた場合には、脱落する虞のあるバリと判定していた。
しかし、かかる確認方法の場合、折れたシャープペンシルの芯が夾雑物となってしまう虞があった。
【0006】
そこで、夾雑物となり得る破片などを生ずることなく、脱落する虞のあるバリであるか否かをより簡単に判定できるようにすることが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、筒状の本体部と、前記本体部で軸方向に移動可能に支持されると共に、バリに当接させる当接部を有する一端側を前記本体部の外に位置させた軸部材と、前記当接部で前記バリを押圧したときに前記バリから受ける反力に抗する所定の付勢力を前記軸部材に与える付勢手段と、を備える構成のバリ評価装置とした。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、バリを押圧したときにバリから受ける反力よりも所定の付勢力のほうが大きいときには、軸部材はそのままの位置で保持される。そして、バリから受ける反力が付勢手段の付勢力よりも大きくなると、軸部材はバリからの反力を受けて他端側に移動する。
よって、バリの強度が十分であって脱落する虞がない場合には、当接部がバリを押圧する押圧力が大きくなって、バリから受ける反力が所定の付勢力を超えた時点で、軸部材がバリから離れる方向に移動する。一方、バリの強度が高くない場合には、当接部でバリを押圧している途中でバリが折れてしまうので、軸部材がバリから離れる方向に移動しない。
これにより、軸部材が移動するか否かに基づいて、脱落する虞のあるバリであるか否かを判定できる。また、この際に、夾雑物となり得る破片などを生ずることがない。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】実施の形態にかかるバリ評価装置を説明する図である。
【図2】図1における要部を拡大して説明する図である。
【図3】図1における要部を拡大して説明する図である。
【図4】図3における要部断面図である。
【図5】実施の形態にかかるバリ評価装置の動作を説明する図である。
【図6】第2の実施形態にかかるバリ評価装置を説明する図である。
【図7】第2の実施の形態にかかるバリ評価装置の動作を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
図1の(a)は、バリ評価装置1の断面図であり、(b)は、正面図であり、(c)は右側面図である。
【0011】
図1に示すように、バリ評価装置1は、筒状の本体部10と、本体部10で軸方向に移動可能に支持された軸部材20と、軸部材20に所定の付勢力を与えるボールプランジャ30とを備える。
【0012】
本体部10は、先端側の縮径部11と、縮径部11に隣接する把持部12と、把持部12に隣接するプランジャ取付部13とを備える筒状の部材である。
本体部10の内側には、本体部10を軸方向に貫通する貫通穴14が、本体部10の中心を通る軸線X(中心軸X)に沿って形成されている。
【0013】
図2の(a)は、図1における領域Aの拡大図であり、(b)は、図1における領域Bの拡大図であり、(c)は、(b)におけるA−A断面図である。
【0014】
図2の(a)に示すように、縮径部11の先端側のブッシュ取付部11aでは、貫通穴14の内径D1が把持部12側の内径D2よりも小さくなっている。ブッシュ取付部11aは、中心軸Xの軸方向に沿って所定幅Wで設けられており、このブッシュ取付部11aの内周面には、その長手方向の全長に亘って、ナイロン製のブッシュ15が設けられている。
【0015】
実施の形態では、後記する軸部材20が、このブッシュ15を介して縮径部11で支持されており、この状態において軸部材20は、中心軸Xの軸方向に移動可能とされている。
ここで、ブッシュ取付部11aの所定幅Wは、軸部材20の先端側(当接部21側)がぶれる(振動する)ことなく中心軸Xに沿って移動できるようになる幅とされている。
なお、この所定幅Wは軸部材20の長さに応じて適宜変更される。
【0016】
また、本体部10と軸部材20とがステンレスで構成されているので、ナイロン製のブッシュ15を介在させることで、軸部材20が軸方向に移動する際の摺動抵抗を低減させている。ナイロン製のブッシュ15が設けられていない場合には、同種金属である軸部材20と本体部10(縮径部11)とが互いに摺動することで、摺動抵抗が大きくなってしまうからである。
【0017】
図1の(b)に示すように、把持部12の縮径部11側の外周面には、中心軸Xの軸方向に沿って所定間隔で複数の溝18が設けられている。各溝18は、縮径部11の外周面において、中心軸X回りの周方向で、全周に亘って設けられている。
把持部12における溝18が設けられた範囲は、バリ評価装置を使用するユーザにより把持部12が把持された際に、滑り止めとなるようにされている。
図1および図2の(a)に示すように、把持部12は縮径部11よりも厚肉で形成されており、その外径D3は、長手方向の全長に亘って同じである。
【0018】
図3の(a)は、図1における領域Cの拡大図であり、(c)は、ボールプランジャを説明する図である。
【0019】
図3の(a)に示すように、把持部12のプランジャ取付部13側では、貫通穴14の内径が、隣接するプランジャ取付部13の部分における貫通穴14と同じ内径D4となっており、この内径D4の部分に、後記する軸部材20のプランジャ受部23が収容されている。
【0020】
図3の(a)および(b)に示すように、プランジャ取付部13の把持部12寄りの位置には、取付孔13aが形成されている。取付孔13aは、プランジャ取付部13を、中心軸Xに直交する軸Y方向に貫通している。
プランジャ取付部13の外周における取付孔13aに対応する位置には、ナット17が取り付けられている。ナット17は、中央のネジ穴17aが取付孔13aと整合するように設けられている。
【0021】
ナット17には、外周にネジ山が設けられたボールプランジャ30が螺入されており、ボールプランジャ30は、スプリング30aで付勢された先端のボール30bを、軸部材20のプランジャ受部23の凹溝232に当接させている。
この状態で、軸部材20のプランジャ受部23には、ボールプランジャ30のボール30bを介して付勢力が作用しており、軸部材20の軸方向への移動が規制されている。
【0022】
実施の形態では、ボールプランジャ30をナット17に螺入することにより、ボールプランジャ30の取り付けと、軸Y方向におけるボールプランジャ30の位置が調整できるようになっている。そのため、ボールプランジャ30をナット17に螺入する長さhを変えることで、ボールプランジャ30からプランジャ受部23側に作用する付勢力が調整できるようになっている。
【0023】
実施の形態では、プランジャ受部23が、ボールプランジャ30から500gfの付勢力を受けるように設定されており、軸部材20(プランジャ受部23)を軸方向に移動させようとする力が500gfを超えない限り、軸部材20がボール30bを押し上げて軸方向に移動できないようになっている。
【0024】
図4の(a)は、図3の(a)におけるA−A断面図であって、プランジャ取付部13の切欠き13bを説明する図である。
【0025】
図4の(a)に示すように、プランジャ取付部13のストッパ24側の端部には、中心軸Xの軸方向から見て径方向外側に開口する切欠き13bが設けられている。
切欠き13bは、中心軸Xを挟んで対象となる位置で互いに平行な仮想線Im1、Im2に沿って設けられている。切欠き13bの幅W2は、後記する回り止めピン25を挿入可能な幅で形成されている。
さらに、切欠き13bの外周面13cからの深さDsは、回り止めピン25が切欠き13bに挿入された状態において、軸部材20(当接部21、軸部22、プランジャ受部23、ストッパ24、ボルトB)が、中心軸X上に配置される深さに設定されている(図1の(a)参照)。
【0026】
図1の(a)に示すように、軸部材20は、先端に当接部21を有する軸部22と、プランジャ受部23と、ストッパ24と、回り止めピン25とを備える。
図2の(b)に示すように、軸部22の先端には、中心軸Xに直交する平坦面22aが設けられている。平坦面22aの直径D5は、軸部22の外径D6よりも小さくなっており、軸部22の先端側は、平坦面22aに向かうにつれて縮径している。
【0027】
平坦面22aの中央部には、円柱形状の当接部21がロウ付けにより固定されている。当接部21は、中心軸Xに沿って設けられており、所定長さL1(例えば3mm)を有している。
当接部21は、長手方向の全長に亘って同一径(例えば0.5φ)を有しており、その先端面21aは、前記した平坦面22aと同様に、中心軸Xに対して直交する平坦面となっている。
実施の形態では、この先端面21aが、バリの強度を評価する際に、バリに直接当接する当接面となっている。
【0028】
ここで、実施の形態のバリ評価装置1では、当接部21でバリを押すようになっており、少なくとも当接部21は、押圧時に折れ曲がることのない所定の硬度を有している必要がある。当接部21を軸部22の切削加工などにより形成する場合には、当接部21に硬度を持たせるために、焼き入れが必要となるので、作成コストが上昇してしまう。当接部21を軸部22とは別体にすると、少なくとも当接部21が所定の硬度を有していれば、軸部22の総てを高い硬度に構成する必要がない。
さらに、この当接部21をロウ付けにより、軸部22の先端に取り付けるようにすると、上記のような焼き入れが不要になる。よって、制作コストの上昇を好適に防止できる。
【0029】
軸部22は、長手方向のほぼ全長に亘って同じ径で形成されている(図1の(a)参照)。図3の(a)に示すように、軸部22の基端部22b側の外周面には、雄ねじ22cが設けられている。
【0030】
プランジャ受部23の軸部22側の一端には、プランジャ受部23よりも小径のボス部231が設けられており、このボス部231の中央には、内周に雌ねじ23aが形成されたネジ穴が、ボス部231を貫通してプランジャ受部23の途中位置まで及んで形成されている。
【0031】
よって、軸部22の基端部22b側は、雌ねじ23aに雄ねじ22cを螺入させた状態で、プランジャ受部23に連結されている。
【0032】
プランジャ受部23は円柱形状を有しており、図4の(a)に示すように、その外径D7は、プランジャ取付部13における貫通穴14の内径D4よりも小さくなっている。
これにより、プランジャ取付部13は、貫通穴14内で中心軸Xの軸方向に移動可能とされている。
図3の(a)に示すように、プランジャ受部23では、長手方向の中央部における外周面に、ボールプランジャ30のボール30bが嵌合する凹溝232が形成されており、この凹溝232は、中心軸X周りの周方向で全周に亘って形成されている。
【0033】
プランジャ受部23のボス部231とは反対側の他端には、雌ねじ23bを有するネジ穴が、中心軸Xに沿って設けられている。
このネジ穴には、ボルトBが螺入されており、プランジャ受部23の他端には、ボルトBを介してストッパ24が固定されている。
【0034】
図4の(b)は、図3の(a)におけるB−B断面図であり、(c)は、(b)におけるストッパ24の部分のみを示した図であって、それぞれストッパ24を説明する図である。
【0035】
ストッパ24は、中心軸Xの軸方向から見て円形形状を有している。
図3および図4の(c)に示すように、ストッパ24の外径D8は、プランジャ取付部13のストッパ24側の外径と同じであり、プランジャ取付部13に中心軸Xの軸方向から当接して、貫通穴14の開口を塞いでいる。
【0036】
ストッパ24の中央部には、ボルトBを挿通させるボルト穴24aが、ストッパ24を厚み方向に貫通して設けられている。
【0037】
ストッパ24のプランジャ受部23側の面には、プランジャ受部23の外径と整合する内径D7の凹部24b(図4の(b)、(c)参照)が、ボルト穴24aを囲むように設けられている。さらに、ストッパ24のプランジャ受部23とは反対側の面には、ボルトBの頭部を収容可能な内径の凹部24c(図3の(a)参照)が、ボルト穴24aを囲むように設けられている。この凹部24cは、ボルトBの頭部B1を収容可能な深さで形成されている。
【0038】
ストッパ24において、ボルト穴24aの径方向外側の位置には、回り止めピン25を挿入するためのピン挿入穴24dが、プランジャ受部23側に開口して設けられている。さらに、このピン挿入穴24dに整合する位置には、ピン挿入穴24dよりも小径の貫通穴24eが、プランジャ受部23とは反対側に開口して設けられている。
【0039】
ピン挿入穴24dの深さh2は、回り止めピン25の軸方向長さL2よりも短い長さで形成されている。そのため、ピン挿入穴24dに回り止めピン25が挿入されると、回り止めピン25の一端側が、ストッパ24のプランジャ取付部13側の面よりも突出するようになっている。
【0040】
実施の形態では、軸部材20をプランジャ取付部13側から本体部10に挿入して、ボールプランジャ30のボール30bがプランジャ受部23の凹溝232に嵌合する位置(図3の(a)参照)にセットすると、回り止めピン25が、プランジャ取付部13の切欠き13bに挿入されるようになっている。
この状態において、軸部材20のストッパ24から突出する回り止めピン25が、本体部10の切り欠き13bに挿入されているので、軸部材20が本体部10に対して回り止めされた状態でセットされる。
【0041】
さらに、切欠き13bに挿入された回り止めピン25により、軸部材20(当接部21、軸部22、プランジャ受部23、ストッパ24、ボルトB)は、中心軸X上に配置されるようになっている。そのため、軸部材20の貫通穴14内に位置する範囲では、軸部材20には、ブッシュ15とボールプランジャ30のボール30bのみが接触している。
よって、軸部材20は、ボールプランジャ30からの付勢力により、軸方向への移動が規制されると共に、軸部材20にボールプランジャ30からの付勢力よりも大きい力が作用して軸方向に移動する場合には、ブッシュ15との摺動抵抗が主として作用するようになっている。
【0042】
バリ評価装置1の動作を説明する。
図5は、油穴Aと油穴Bとの交差部にあるバリTの評価を説明する図であり、(a)は、バリの評価の前の状態を、(b)は、バリの評価により、軸部材20が軸方向に移動した場合を、(c)は、バリの評価により、バリTが折れた場合を説明する図である。
【0043】
始めに、図5の(a)に示すように、バリTに交差する方向から、軸部材20の当接部21をバリTに近づけて、図中仮想線で示すように、当接部21をバリTに当接させる。
この状態から、当接部21でバリTを押す方向に、バリ評価装置1を移動させると、
軸部材20には、バリTからの反力が作用して、図中矢印F2で示す方向に軸部材を移動させようとする力が作用する。
ボールプランジャ30は、スプリング30aによる付勢力でボール30bをプランジャ受部23の凹溝232に当接させているので、プランジャ受部23(軸部材20)には、図中矢印F1で示す方向に付勢力が作用しており、軸部材20の軸方向の移動が規制されている。
【0044】
図5の(b)に示すように、バリTが脱落の虞がない十分な強度を有している場合、バリTは当接部21で押されても折れ曲がらない。そうすると、軸部材20には、当接部21からバリTに作用する押圧力に応じた反力F2が作用しているので、この反力F2が、ボールプランジャ30から軸部材20に入力されている付勢力F1よりも大きくなった時点で、ボール30bがプランジャ受部23から離れる方向に押し上げられて凹溝232から外れることになる。
これにより、軸部材20の全体が、バリTから離れる方向に移動して、ストッパ24の回り止めピン25が、プランジャ取付部13の切欠き13bから外れ、プランジャ受部23が貫通穴14の下側の面に当接した状態になる。
【0045】
すなわち、バリTが脱落の虞がない十分な強度を有している場合には、軸部材20が軸方向に移動して、ストッパ24が、本体部10のプランジャ取付部から脱落する。この軸部材20の移動により、バリTが脱落の虞がないバリであることを把握できることになる。
【0046】
一方、バリTが十分な強度を有していない場合、図5の(c)に示すように、バリTは、当接部21で押されると折れ曲がることになる。
かかる場合、バリTが折れ曲がった時点で、当接部21がバリTから受ける反力F2がなくなる。さらに、バリTからの反力F2がボールプランジャ30からの付勢力F1よりも大きくならないので、軸部材20は、図5の(c)に示す初期位置のままで保持されることになる。
よって、バリTが折れ曲がったことにより、当接部21がバリTから受ける反力F2が失われたことと、軸部材20が移動しないことをもって、バリTが脱落する虞のあるバリであると判定できることになる。
【0047】
このように、軸部材20がバリTからの反力F2を受けて、軸部材20が軸方向に移動して、軸部材20のストッパ24が本体部10のプランジャ取付部13から脱落したか否かに基づいて、残しておいても良いバリであるか否かを簡単に区別することができる。
【0048】
以上の通り、本実施形態では、自動変速機の油路内に形成されたバリの強度を評価するバリ評価装置であって、筒状の本体部10と、本体部10で軸方向に移動可能に支持されると共に、バリに当接させる当接部21を有する一端側を本体部10の外に位置させた軸部材20と、当接部21でバリを押圧したときにバリから受ける反力に抗する所定の付勢力(500gf)を軸部材20に与えるボールプランジャ30とを備え、ボールプランジャ30は、軸部材20の径方向から、所定の付勢力を軸部材20に与える向きで本体部10を貫通して設けられており、軸部材20は、バリから受ける反力が所定の付勢力よりも大きくなってバリから離れる方向(軸方向)に移動すると、本体部10内に位置する他端側が本体部10から突出するように設けられている構成とした。
【0049】
このように構成すると、バリを押圧したときにバリから受ける反力よりも所定の付勢力のほうが大きいときには、軸部材20はそのままの位置で保持される。そして、バリから受ける反力が所定の付勢力よりも大きくなると、軸部材20はバリからの反力を受けて他端側(バリから離れる方向)に移動する。
よって、バリの強度が十分であって脱落する虞がない場合には、当接部21がバリを押圧する押圧力が大きくなって、バリから受ける反力が所定の付勢力を超えた時点で、軸部材20がバリから離れる方向に移動する。一方、バリの強度が高くない場合には、当接部21でバリを押圧している途中でバリが折れてしまうので、軸部材20がバリから離れる方向に移動しない。これにより、軸部材20が軸方向に移動するか否かに基づいて、脱落する虞のあるバリであるか否かを判定できる。また、この際に、夾雑物となり得る破片などを生ずることがない。
【0050】
さらに、本体部10内に位置する軸部材20のプランジャ受部23の外周には、ボールプランジャ30のボール30bが嵌合する凹溝232が設けられている構成とした。
【0051】
このように構成すると、ボールプランジャ30のボール30bにより、軸部材20の軸方向の移動を確実に規制できる。
【0052】
軸部材20は、本体部10の一端側の縮径部11において軸方向に移動可能に支持されており、軸部材20の他端には、本体部10の他端に軸方向から当接して、本体部10の他端側開口を塞ぐストッパ24が、本体部10と同じ外径D8で設けられており、軸部材20は、ストッパ24から本体部10側に突出する回り止めピン25(突起)を、本体部10の切欠き13bに係合させて、本体部10で回り止めされた状態で支持されている構成とした。
【0053】
このように構成すると、当接部21でバリを押圧する際に軸部材20が回転することを防止できるので、バリに作用する押圧力を均一にできる。
さらに、軸部材20がバリから離れる方向に移動する際に、ストッパ24が本体部10から外れるので、軸部材20移動を確実に把握できる。
【0054】
さらに、軸部材20は、本体部10の一端側の縮径部11において、ナイロン製のブッシュ15を介して、軸方向に移動可能に支持されている構成とした。
【0055】
実施の形態では、本体部10と軸部材20がステンレスで構成されているので、ブッシュ15が設けられていないと、軸部材20が軸方向に移動する際に、同種金属同士の摺動による摺動抵抗が大きくなる。そうすると、バリから受ける反力を、ボールプランジャ30が当接するプランジャ受部23側に適切に伝えることができなって、バリ評価精度が低下する。ナイロン製のブッシュ15を設けると、軸部材20が軸方向に移動する際に受ける抵抗が小さくなるので、バリ評価精度が向上する。
【0056】
当接部21は、長手方向の全長Lに亘って同一径の円柱形状を有しており、軸部材20の先端側には、軸部材の軸方向に直交する平坦面22aが設けられており、当接部は、平坦面22aの中央にロウ付けにより固定されている構成とした。
当接部21を別部材とすることで、当接部21が損傷した場合は、当接部を交換するだけで良い。また、切削加工などにより、軸部材20の先端に当接部を形成する場合には、当接部21の強度を確保するために焼き入れなどの処理が必要となる。これに対して、当接部21を別部材としてロウ付けにより固定すると、作製コストが安価になる。
【0057】
次に、第2の実施形態にかかるバリ評価装置1Aを説明する。
第2の実施形態にかかるバリ評価装置1Aでは、第1の実施形態におけるボールプランジャ30の代わりにスプリングSを用いて、軸部材20の軸方向の移動を規制している。
【0058】
そのため、軸部材20は、前記したプランジャ受部23の代わりに、円柱形状のスプリング当接部23Aを、軸部22の基端部22bに備えている。
このスプリング当接部23Aは、本体部10の貫通穴14よりも小さい径で形成されており、貫通穴14内を軸方向に移動可能とされている。
そして、スプリング当接部23Aにおける軸部22とは反対側の面に、スプリングSの一端が当接している。
【0059】
本体部10の縮径部11とは反対側の端部10aには、付勢力調整機構50が貫通穴14に螺入して取り付けられている。
付勢力調整機構50は、外周に雄ネジ51aが形成された軸部51と、軸部51の基端から径方向外側に延びるフランジ部52と、調整ネジ53とを備える。
【0060】
軸部51は貫通穴14の内径に整合する外径を有しており、外周の雄ネジ51aを本体部10の雌ネジ10bに螺入させて、本体部10に固定されている。
軸部51において、軸部材20側の先端には、軸部51よりも小径のスプリング取付部511が設けられている。スプリング取付部511は円柱形状を有しており、その外周には、スプリングSの他端が外嵌して取り付けられている。
軸部51において、本体部10の外部に位置する基端の外周面には、径方向外側に延びるフランジ部52が全周に亘って設けられている。
【0061】
調整ネジ53は、平面視においてリング形状を有しており、その中央部に、軸部51を挿通させる開口53aが設けられている。開口53aの内周面には雌ネジ(図示せず)が設けられている。そのため、調整ネジ53は軸部51の外周に螺入されて取り付けられており、この状態において、調整ネジ53は、中心軸Xの軸方向に移動可能とされている。
【0062】
実施の形態では、調整ネジ53とフランジ部52との距離Lxを調整することで、本体部10内に位置する軸部51の長さLyを調整できるようになっており、この軸部51の長さLyを変更することで、スプリングSの軸方向の長さLzが変更されて、スプリングSから軸部材20に作用する付勢力が調整できるようになっている。
【0063】
実施の形態では、第1の実施形態の場合と同様に、500gfの付勢力で軸部材20が図中左側(当接部21が本体部10から離れる方向)に付勢されるように、各長さLx、Ly、Lzが調整されている。
【0064】
本体部10の外部に位置する軸部22の外周では、縮径部11内に隠れて見えなくなる直前の位置に、三角形状のマークMkが設けられている。
このマークMkは、バリTからの反力を受けて軸部材20が軸方向に移動したことを、目視により確認できるようにするために設けられている。
【0065】
バリ評価装置1Aの動作を説明する。
図7は、油穴Aと油穴Bとの交差部にあるバリTの評価を説明する図であり、(a)は、バリの評価により、軸部材20が軸方向に移動した場合を、(b)は、バリの評価により、バリTが折れた場合を、それぞれ説明する図である。
【0066】
図7の(a)に示すように、軸部材20の当接部21を、バリTに交差する方向からバリTに近づけて、当接部21をバリTに当接させる。
この状態から、当接部21でバリTを押す方向に、バリ評価装置1Aを移動させると、軸部材20には、バリTからの反力が作用して、図中矢印F2で示す方向に軸部材を移動させようとする力が作用する。
スプリングSは、軸部材20のスプリング当接部23Aに当接しており、軸部材20を図中矢印F1で示す方向に付勢しており、軸部材20の軸方向の移動を規制している。
【0067】
バリTが脱落の虞がない十分な強度を有している場合、バリTは当接部21で押されても折れ曲がらない。そうすると、軸部材20には、当接部21からバリTに作用する押圧力に応じた反力F2が作用するので、この反力F2が、スプリングSから軸部材20に入力されている付勢力F1よりも大きくなった時点で、スプリングSが圧縮される(図7の場合には、LzからLz’まで圧縮される)。
これにより、軸部22が図中右方向に移動して、軸部22の外周のマークMkが、本体部10の縮径部11内に隠れて見えなくなる。
【0068】
すなわち、バリTが脱落の虞がない十分な強度を有している場合には、軸部材20が軸方向に移動して、マークMkが本体部10の縮径部11内に隠れて見えなくなるので、マークMkが見えなくなったことをもって、バリTが脱落の虞がないバリであることを把握できることになる。
【0069】
一方、バリTが十分な強度を有していない場合、図7の(b)に示すように、バリTは、当接部21で押されると折れ曲がることになる。
かかる場合、スプリングSからの付勢力F1が、当接部21がバリTから受ける反力F2よりも大きいままなので、軸部材20は軸方向に移動しない。よって、軸部22の外周のマークMkが、本体部10の縮径部11内に隠れて見えなくなることがない。
さらに、バリTが折れ曲がった時点で、当接部21がバリTから受ける反力F2がなくなるので、その反力が失われたことによっても、バリTが脱落する虞のあるバリであると把握できることになる。
【0070】
このように、第2の実施形態にかかるバリ評価装置1Aでは、軸部材20がバリTからの反力F2を受けて軸方向に移動して、軸部22に付されたマークMkが見えなくなったか否かに基づいて、残しておいても良いバリであるか否かを簡単に区別することができる。
【0071】
以上の通り、第2の実施形態では、自動変速機の油路内に形成されたバリの強度を評価するバリ評価装置であって、筒状の本体部10と、本体部10で軸方向に移動可能に支持されると共に、バリに当接させる当接部21を有する一端側を本体部10の外に位置させた軸部材20と、当接部21でバリを押圧したときにバリから受ける反力に抗する所定の付勢力(500gf)を軸部材20に与えるスプリングSとを備え、スプリングSは、軸部材20の軸方向から、所定の付勢力を軸部材20に与える向きで本体部10内に設けられており、本体部10の外に位置する軸部材20の外周では、バリから受ける反力が所定の付勢力よりも大きくなって軸部材20が軸方向に移動(バリから離れる方向に移動)した際に、本体部10の縮径部11内に隠れて見えなくなる位置にマークMkが設けられている構成のバリ評価装置。
【0072】
このように構成すると、バリを押圧したときにバリから受ける反力よりも所定の付勢力のほうが大きいときには、軸部材20はそのままの位置で保持される。そして、バリから受ける反力が所定の付勢力よりも大きくなると、軸部材20はバリからの反力を受けて他端側(バリから離れる方向)に移動して、軸部材20のマークMkが見えなくなる。
よって、バリの強度が十分であって脱落する虞がない場合には、当接部21がバリを押圧する押圧力が大きくなって、バリから受ける反力が所定の付勢力を超えた時点で、軸部材20がバリから離れる方向に移動してマークMkが見えなくなる。一方、バリの強度が高くない場合には、当接部21でバリを押圧している途中でバリが折れてしまうので、軸部材20がバリから離れる方向に移動しない。よって、マークMkは依然として視認可能である。これにより、軸部材20のマークが見えなくなったか否かに基づいて、脱落する虞のあるバリであるか否かを判定できる。また、この際に、夾雑物となり得る破片などを生ずることがない。
【符号の説明】
【0073】
1、1A バリ評価装置
10 本体部
11 縮径部
11a ブッシュ取付部
12 把持部
13 プランジャ取付部
13a 取付孔
13b 切り欠き
14 貫通穴
15 ブッシュ
17 ナット
18 溝
20 軸部材
21 当接部
22 軸部
23 プランジャ受部
23A スプリング当接部
24 ストッパ(カバー)
25 回り止めピン
30 ボールプランジャ
30a スプリング
30b ボール(球体)
50 付勢力調整機構
51 軸部
52 フランジ部
53 調整ネジ
232 凹溝
511 スプリング取付部
B ボルト
Mk マーク
S スプリング
T バリ
X 中心軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状の本体部と、
前記本体部で軸方向に移動可能に支持されると共に、バリに当接させる当接部を有する一端側を前記本体部の外に位置させた軸部材と、
前記当接部で前記バリを押圧したときに前記バリから受ける反力に抗する所定の付勢力を前記軸部材に与える付勢手段と、を備えることを特徴とするバリ評価装置。
【請求項2】
前記付勢手段は、前記軸部材の径方向から、前記所定の付勢力を前記軸部材に与える向きで設けられており、
前記軸部材は、前記バリから受ける反力が前記所定の付勢力よりも大きくなって前記軸方向に移動すると、前記本体部内に位置する他端側が前記本体部から突出するように設けられていることを特徴とする請求項1に記載のバリ評価装置。
【請求項3】
前記付勢手段は、スプリングで付勢された球体を備えるボールプランジャであり、
前記本体部内に位置する前記軸部材の外周には、前記球体が嵌合する凹溝が設けられていることを特徴とする請求項2に記載のバリ評価装置。
【請求項4】
前記軸部材は、前記本体部の一端側で支持されており、
前記軸部材の他端には、前記本体部の他端に前記軸方向から当接して、前記本体部の他端側開口を塞ぐカバーが設けられており、
前記軸部材は、前記カバーから前記本体部側に突出する突起を、前記本体部に係合させて、前記本体部で回り止めされた状態で支持されていることを特徴とする請求項2または請求項3に記載のバリ評価装置。
【請求項5】
前記付勢手段は、前記軸部材の軸方向から、前記所定の付勢力を前記軸部材に与える向きで設けられており、
前記本体部の外に位置する前記軸部材の外周では、前記軸部材が軸方向に移動した際に前記本体部内に進入する位置にマークが設けられていることを特徴とする請求項1に記載のバリ評価装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−200796(P2012−200796A)
【公開日】平成24年10月22日(2012.10.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−64904(P2011−64904)
【出願日】平成23年3月23日(2011.3.23)
【出願人】(000231350)ジヤトコ株式会社 (899)
【Fターム(参考)】