説明

バルク凝固非晶質合金組成物を改良する方法、及びそれから作られた鋳造品

【課題】改良されたバルク凝固非晶質合金組成物、及びこのような組成物の製造方法と鋳造方法を提供する。
【解決手段】Zr−Ti基のバルク凝固非晶質合金で、付加合金化金属として、La、Y、Ca、Al及びBeからなる群から選択される酸素に対して個々に生成熱を有する複数の金属成分を含む合金であり、過加熱処理が行われ、その後高弾性限界を有する製品に鋳造される。低純度の原材料の使用を可能にして、最終製品全体の価格を効果的に減少する。さらに、従来のバルク凝固非晶質合金で可能であるよりもさらに遅い冷却速度で、新しい合金を種々の形状に鋳造する方法を提供することが可能となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、改良したバルク凝固非晶質合金組成物、このような組成物を作る方法、及びこのような組成物から作られた鋳造品に関する。
【背景技術】
【0002】
用語「バルク凝固非晶質合金」は、1.0mmまたはそれ以上の厚みを有するが、実質的に非晶質原子構造を維持する物体を作るために、溶融状態から約500K/secまたはそれ以下の速度で冷却されるかもしれない非晶質合金のグループを言う。1.0mmまたはそれ以上の厚みを有する物体を作るためのバルク凝固非晶質合金の能力は、従来の非晶質合金の実質的な改良である。従来の非晶質合金は、通常は、0.020mmの厚みを有する製品に限定され、かつ10K/secまたはそれ以上の冷却速度を必要とする。バルク凝固非晶質合金は、溶融状態から十分に速い冷却独度で適切に形成された場合、通常は、1.8%〜2.2%の範囲の高弾性限界を有する。さらに、これらの非晶質合金は、0.5mm厚みまたはそれ以上の試料における数パーセントから0.02厚みの溶融スパン箔の場合のような100%と同じ程度までの範囲にある曲げ延性を示す。
【0003】
一般的に言えば、バルク凝固非晶質合金組成物は、非常に広い共晶付近に見出された。この非常に広い共晶は、低下されたガラス転移温度Trgよって一般的に特徴づけられかつ定量化され、かつ溶融温度に対するガラス転移温度の比率によって定義される(ケルビン単位で)。ここで、溶融温度は、共晶温度に連動するとして一般的に理解される。一般的に、非晶質合金のバルク凝固を容易に得るためには、高いTrgが望まれてきた。この関係は、核生成の古典理論と、実験的な観察との双方によって一般的に支持されてきた。例えば、0.6のTrgは、500℃/secの臨界冷却速度で観察され、且つ0.65のTrgは、10℃/secまたはそれ以下の臨界冷却速度で観察される。
【0004】
米国特許第5,032,196号、米国特許第5,288,344号、米国特許第5,368,659号、米国特許第5,618,359号、及び米国特許第5,735,975号(それらの開示の各々は、その全体を引用することによって本明細書に合体される)は、このようなバルク凝固非晶質合金のグループを開示する。さらに、そのままの組成物の形態でこれらの合金からの鋳造品も開示されている。
【0005】
バルク凝固非晶質合金の発見、実質的な厚みを有する製品に鋳造することができるこれらの合金の発見は、広範囲な応用のために、バルク形状でこれらの高い弾性限界材料を組み込むことの可能性を与える。そこで、これらの合金の製品を製造するのに実用的でかつ費用効率の高い方法が、特に、複雑で精密な形状の設計を必要とする適用に対して、望まれている。高圧力ダイキャストなどの金属成形鋳造方法は、この方法が高冷却速度を与えるので、これらの材料を鋳造するために使用することができることが判明した。例えば、米国特許第5,213、148号、米国特許第5,279,349号、米国特許第5,711,363号、米国特許第6,021,840号、米国特許第6,044,893号、及び米国特許第6,258,183号(それらの開示の各々は、それ全体を引用することによって本明細書に合体される)は、非晶質合金の製品を鋳造する方法を開示する。
【0006】
しかしながら、酸素などの付随的な不純物の存在(それらがある濃度以上でこの合金中に存在するとき)は、バルク凝固非晶質合金の過冷却溶液から結晶質の核生成速度を有害なほどに増加させ、それにより、実質的にこれらの材料の臨界冷却速度を増加させることが発見された。例えば、米国特許第5,797,443号は、不純物の存在の結果として、これらの合金は所望の圧形材に鋳造することができないことを開示し、さらに、バルク凝固非晶質合金を鋳造するときに、酸素不純物レベルを制御することの必要性を教示する。酸素などの付随的不純物を制御するための一つの提案される方法は、高純度原材料を使用しかつ処理条件を厳しく制御することである。しかしながら、これらの工程は、バルク凝固非晶質合金から作られる製品の価格を実質的に高くする。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許第5,032,196号
【特許文献2】米国特許第5,288,344号
【特許文献3】米国特許第5,368,659号
【特許文献4】米国特許第5,618,359号
【特許文献5】米国特許第5,735,975号
【特許文献6】米国特許第5,213、148号
【特許文献7】米国特許第5,279,349号
【特許文献8】米国特許第5,711,363号
【特許文献9】米国特許第6,021,840号
【特許文献10】米国特許第6,044,893号
【特許文献11】米国特許第6,258,183号
【特許文献12】米国特許第5,797,443号
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
したがって、新しいバルク凝固非晶質合金組成物と、原材料及び処理環境の双方から生じる付随的な不純物とによってもたらされる心配なしに、これらの合金を安価な製品に鋳造するための新しい方法に対する必要性が存在する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
<発明の要約>
本発明は、付加合金化金属を非晶質合金混合物に含んでいる改良されたバルク凝固非晶質合金組成物に向けられる。
【0010】
一つの実施例では、低純度の原材料が用いられ、それにより効果的に最終製品の総原価を下げる。
【0011】
別の実施例では、本発明は、改良されたバルク凝固非晶質合金組成物合金組成物を過加熱し、その後、過加熱された組成物を高弾性限界を備える製品に鋳造する工程を含む、改良されたバルク凝固非晶質合金組成物などを鋳造する改良された方法に向けられる。
【0012】
そのような実施例では、本発明は、新しい合金組成物を低い冷却速度で種々の形状に鋳造することを含む。
【0013】
さらに別の実施例では、本発明は、改良されたバルク凝固非晶質合金からの鋳造品に向けられる。本発明のこれらのおよび他の特徴及び効果は、明細書、特許請求の範囲及び図面を参照することにより、よりよく理解されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明のバルク凝固非晶質合金から成形した製品を形成する方法を示す図である。
【図2】本発明のバルク凝固非晶質合金の物理的性質を示す図である。
【図3】本発明により成形した製品の弾性限界を決定する方法を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
<発明の詳細な説明>
本発明は、非晶質合金混合物中に付加合金化金属を含む改良されたバルク凝固非晶質合金組成物と、このような組成物を形成する改良された方法に向けられる。
【0016】
図1に示すように、実施例の工程1では、溶融温度に対するガラス転移温度の比、或いは低減された(reduced)ガラス転移温度Trgが約0.5以上、好ましくは約0.55以上、最も好ましくは0.6以上を有する金属成分M1、M2、M3などを有するバルク凝固非晶質合金「C」が準備される。ここで、バルク凝固非晶質合金の組成物は、M1、M2、M3などで与えられ、添え字a、b、cなどは、それぞれの金属成分M1、M2、M3などの原子パーセントを表わす。
【0017】
上記の説明では、Tgは、図2に示すように標準DSC(示差走査熱量計)により20℃/分の走査でもって決定される。Tgは、ガラス転移の開始温度として定義される。
【0018】
その後、工程2において、各金属成分のH(M)(金属成分Mのうちで最も安定な金属酸化物に対して酸素1原子あたりの「生成熱」の絶対値)が特定され、ここで「最も安定な金属酸化物」は、金属成分Mの競合する酸化物状態の中で一つの酸素原子あたりの生成熱の最も大きな絶対値を有する金属酸化物(Mxy)である。このような実施例において、H(M)を特定することにおいて重要な温度は、合金組成物Cの液相線温度である。
【0019】
単一金属酸化物だけが上記で検討されているが、金属酸化物の基本ユニット(Mxy)は、1個以上の酸素原子を含んでいてもよい。したがって、酸素1原子あたりの生成熱H(M)を求めるために、基本ユニットの生成熱をこの基本ユニットの酸素原子数で割る。この工程において、H(C)maxを特定することも可能であり、ここでH(C)maxは非晶質合金C(M1a、M2b、M3cなど)の中の最大H(M)maxである。金属酸化物の生成熱は「Handbook of Physics and chemistry」を含む種々の情報源から容易に求められる。
【0020】
工程3において、図1に示すように、M1、M2、M3の基本的な金属成分と異なる「合金化金属」Qは、次の不等式を用いて特定される。すなわち、
H(Q)>H(C)max (1)
【0021】
次に、金属Qが、バルク凝固非晶質合金組成物Cに添加され、新しく改良されたバルク凝固非晶質合金((M1a、M2b、M3c)100-XX)が生成され、(M1a、M2b、M3c)100-XXは、次の式で支配される。
x=k×C(O) (2)
【0022】
ここでkは定数であり約0.5〜10の範囲、約0.5〜1の好ましい範囲、約3〜5の別の好ましい範囲、約5〜10のさらに別の好ましい範囲、約1〜3のさらに好ましい範囲を有し、xは新しい合金中の「合金化金属」Qの原子パーセントを定義し、C(O)は、バルク凝固非晶質合金「C」の鋳造したままの製品中における酸素の予想される原子パーセントを定義する。理論によって境界をつけることはないとはいえ、酸素は、付随的不純物として存在することが予想される。酸素の供給源は原材料及び溶融坩堝を含む処理環境であり得る。
【0023】
本発明の条件を満たすいずれのバルク凝固非晶質合金組成物も使用されるかもしれないが、バルク凝固非晶質合金の好ましいグループはZr−Ti基合金である。このような合金組成物は、米国特許第5,032,196号、米国特許第5,288,344号、米国特許第5,368,659号、米国特許第5,618,359号、及び米国特許第5,735,975号に開示され、これらの開示は引用により本明細書に合体される。本発明の目的のために、用語「Zr−Ti基」は、これらのバルク凝固非晶質合金組成物を組み込むものとして理解され、ZrとTiとの合計が、目的とする合金組成物中で金属成分の最も高い原子パーセントを含む。なお、H(Zr)がH(C)maxの5%以内であるZr及びTi基合金組成物は、さらに好ましい。別の好ましいバルク凝固非晶質合金のグループは、H(Zr)が目的の合金組成物の「主要な成分」中で最も大きなH(M)であり、かつ主要成分が5%以上の原子パーセントを含むZr及びTi基合金組成物として理解される。
【0024】
さらに、本発明では、適切な特性を有する合金金属を利用することができるが、元素La、Y、Ca、Al及びBeは、Qとしての好ましい「合金化金属」であり、さらに好ましくは、Y(イットリウム)である。単一成分の合金化金属のみが上述されたが、本発明の別の実施例では、一つまたはそれ以上の合金化金属Qが合金化金属Qとして組み合わせて用いられる。
【0025】
ここでは、上記工程は、実際の「物理的」合金製造過程を必ずしも記載するものでなくて、むしろ新しい改良された合金組成物を特定することが理解される。この組成物が特定されると、この「物理的」合金は、種々の方法で準備することができる。通常の合金製造過程では、投入原材料の全ては、混合され、その後、溶融温度まで加熱されることができる。別の方法では、合金化は、いくつかの工程で実施され、各工程では、二つまたはそれ以上の元素(すべての元素ではない)を混合し、全ての元素が溶融するほぼ最後の工程までに一緒に溶融される。
【0026】
本発明は、改良されたバルク凝固非晶質合金組成物の原材料を作る方法にも向けられる。したがって、工程4において、新しく改良されたバルク凝固非晶質合金組成物がQを添加して調製された後で、好ましくは、加熱処理される。
【0027】
合金化金属Qの最大の効果のために好ましい適切な加熱処理の一つの実施例は、合金組成物を次の式にしたがう温度まで加熱することである。
heat=Tm(C)+200℃ (3)
ここでTheatは過加熱温度であり、Tmは合金組成物の溶融温度である。したがって、このような実施例では、金属Qが添加された後で、新しい合金(M1a、M2b、M3c)100-XXが合金Cの溶融温度以上に過加熱される。ここで、溶融温度は、℃で示す液体温度として理解される。過加熱は、約100℃〜300℃または溶融温度以上、好ましくは200℃周辺、或いは代わりに好ましくは300℃またはそれ以上の範囲である。
【0028】
過加熱の間の継続期間は約1分から60分の範囲であり、好ましい継続期間は約5分から10分であり、別の好ましい継続期間は約1分から5分であり、さらに、別の好ましい継続期間は約10から30分である。継続期間は、使用した過加熱期間について一般的に特定される。過加熱は高くなればなるほど、継続期間を少なくする必要がある。この加熱処理の目的は、合金化金属の原子種を抽出するために、酸素原子(液体または酸化物)に十分な時間と熱的混合とを与えることである。したがって、原材料からなどの基本金属のいずれの酸化物も、合金化金属の高い生成熱によって破壊することができる。さらに、継続時間は、静的溶融よりもむしろ高周波溶融または電磁気的攪拌の場合のような攪拌作用を利用することによって短くすることができる。
【0029】
本発明は、本発明の改良された合金組成物を鋳造する方法にも向けられる。このような実施例では、工程5に示すような加熱処理に続いて、新しい合金組成物は所望の形状に鋳造される。好ましい鋳造方法は、高圧力ダイキャスト法などの金属成形鋳造である。選ばれた鋳造方法にかかわらず、この鋳造は、好ましくは、不活性雰囲気または真空中で実施される。
【0030】
上記説明したように、酸素含有量の増加に伴う臨界冷却速度の増加が、バルク凝固非晶質合金があるレベル以上の酸素を含有するバルク(1.0mmまたはそれ以上の厚み)に処理することができない程度までバルク凝固非晶質合金の処理の可能性を制限することが先行技術(米国特許第5,797,443号)で知られている。例えば、Beを含まないZr基合金は、1000ppmを越える酸素含有量ではバルク形状に容易に処理することはできない。数mmまたはそれ以上の断面厚みでは、酸素含有量は、これらのBeを含まないZr基合金では、一般的に500ppmまたはそれ以下に制限する必要がる。同様の関係がBeを含有するZr−Ti基合金でも観察されたが、許容酸素含有量は、Beを含まないZr合金よりも大きくなることが判明した。また、同様な傾向が鉄基(Fe、Ni、CO、Cu)バルク凝固非晶質合金などの他の合金グループでもまた予想され、ここでその許容酸素含有量は、上記の場合におけるものよりもかなり低くなる。
【0031】
したがって、本発明の意図は、種々の形状に適用することができる。一つの形状では、比較的多くの不純物を含む原材料を利用することができる。例えば、Zr及びTi基合金の原材料として使用される通常のZr及びTiの基本「スポンジ」は、500ppmまたはそれ以上の酸素含有量を含む。これに対して、通常のZr及びTiの基本的な結晶棒、より高価な種類の投入原材料は、200ppmまたはそれ以下の酸素含有量を含む。合金化、再溶解、及び鋳造などの処理の間に付随的に入り込む付加的な不純物を考慮すると、基本「スポンジ」材料が投入原材料として使用される場合は、酸素含有量は容易に1000ppmを越える。このような汚染レベルでは、通常のBeを含まないZr基合金は「バルク凝固」非晶質合金としてもはや機能することはできない。バルク凝固非晶質合金を形成する能力を保持するために、より高価な基本「結晶質棒」または高価な処理環境の制御のいずれかが通常は使用される。本発明の材料を用いることによって、例えば、より高価な原材料または高価な処理環境の制御の使用を回避できることが発見された。
【0032】
別の実施例では、本発明は、従来のバルク凝固非晶質合金の基本組成物で可能であるよりも大きな横断面を有する製品を処理するために利用することができる。例えば、厳格な処理環境と結晶質棒のような最高品位の原材料を使用することによって、通常のBeを含まないZr基非晶質合金を5mmの横断面を有するバルク形状に鋳造することができる。さらに、本発明の材料を使用することによって、このバルク凝固非晶質合金は7mmまたはそれ以上の横断面を有するバルク形状に鋳造できることが発見された。
【0033】
上記の説明では、高純度原材料を使用する必要性を低減するために、あるいは大きな断面寸法の製品を製造するために、本発明の材料を使用することについてのみ焦点が当てられているが、上記説明した実施例の組み合わせを使用できることを理解すべきである。例えば、一つの実施例では、投入原材料の適切なセット及び処理環境は、選択されたバルク凝固非晶質合金を特別な断面のバルク形状に処理することが可能であるように選択することができる。さらに、別の実施例では、本発明のおかげで回収されたスクラップを使用することができる。
【0034】
最後に、本発明の合金組成物の改良された特性の結果として、これらの材料は、初期のバルク凝固非晶質合金C(M1a,M2b,M3c・・・)で可能であるよりも遅い冷却速度で鋳造することができる。
【0035】
上記実施例のいずれにおいても、新しく改良されたバルク凝固非晶質合金の鋳造品は、好ましくは、少なくとも1.2%の弾性限界、より好ましくは1.8%の弾性限界、最も好ましくは少なくとも少なくとも1%の曲げ延性に加えて、少なくとも1.8%の弾性限界を有する。
【0036】
材料の弾性限界は、永久変形または破壊が始まる歪の最大レベルとして定義される。この弾性限界は、一軸引っ張り試験のような種々の機械的試験によって測定される。しかしながらこの試験はあまり実用的ではない。代わりの実用的な試験は図3で示すような曲げ試験であり、0.5mmの厚みを有するような非晶質合金の切断された帯板が種々の直径のマンドレルの周りで曲げられる。曲げが完了しかつ試料が破壊されることなく解放された後に、永久歪が目視観察されなければ、この試料は弾性的であるといえる。永久歪が目視観察されるならば、この試料は弾性限界歪を越えているといえる。マンドレルの直径と比較して薄い帯板に対しては、この曲げ試験における歪は、帯板の厚み(t)とマンドレルの直径(D)との比e=t/Dによって与えられるものに非常に近い。
【0037】
本発明の幾つかの形状が図示され且つ記載されているが、種々の変形及び改良が本発明の意図及び範囲から離脱することなくできることが、当業者には明らかである。したがって、本発明は添付する特許請求の範囲を除いて限定されることを意図するものではない。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
酸素に対して個々に生成熱を有する複数の金属成分を含むバルク凝固非晶質の基本合金、及び
酸素に対する合金化金属生成熱が、前記金属成分の中で酸素に対する最も大きな生成熱より大きい付加合金化金属、
を含むバルク凝固非晶質合金。
【請求項2】
前記バルク凝固非晶質の基本合金が、Zr−Ti基である請求項1記載のバルク凝固非晶質合金。
【請求項3】
前記付加合金化金属が、La、Y、Ca、Al及びBeからなるグループから選択される請求項1記載のバルク凝固非晶質合金。
【請求項4】
請求項2のバルク凝固非晶質合金の鋳造品であって、
前記バルク凝固非晶質合金が、次の分子式で定義され、
(M1aM2b・・・Mnc)100-XX
かつ鋳造されたときは次の式に支配され、
x=k×C(O)
ここで、M1、M2及びM3は、前記基本合金の金属成分であり、nは、前記基本合金の金属成分の番号であり、a、b及びcは、前記基本合金の金属成分の原子百分率を定義し、Qは、前記付加合金化金属であり、xは、前記バルク凝固非晶質合金中の前記付加合金化金属の原子百分率を定義し、kは、約0.5〜10の範囲にある定数であり、C(O)は、前記バルク凝固非晶質合金を鋳造したままの鋳造品中の酸素原子の百分率であるバルク凝固非晶質合金の鋳造品。
【請求項5】
kが約0.5〜1の範囲にある請求項4記載の鋳造品。
【請求項6】
kが約3〜5の範囲にある請求項4記載の鋳造品。
【請求項7】
kが約5〜10の範囲にある請求項4記載の鋳造品。
【請求項8】
kが約1〜3の範囲にある請求項4記載の鋳造品。
【請求項9】
酸素の含有量が200ppm以上である請求項4に記載のバルク凝固非晶質合金。
【請求項10】
酸素の含有量が500ppm以上である請求項4に記載のバルク凝固非晶質合金。
【請求項11】
酸素の含有量が1000ppm以上である請求項4に記載のバルク凝固非晶質合金。
【請求項12】
Zr及びTiの合計が、前記基本合金中で最も大きな金属成分の原子百分率を含んで成る請求項2に記載のバルク凝固非晶質合金。
【請求項13】
Zrの酸素に対する生成熱が、酸素に対する最も大きな金属成分の生成熱の5%以内である請求項2に記載のバルク凝固非晶質合金。
【請求項14】
酸素に対するZrの生成熱が、5原子%以上の前記基本合金を含んで成る前記基本合金の金属成分のグループから選択された酸素に対する前記金属成分の生成熱の中で最大である請求項2に記載のバルク凝固非晶質合金。
【請求項15】
前記基本合金が、約0.5以上の、溶融温度に対するガラス転移温度の比Trgを有する請求項1に記載のバルク凝固非晶質合金。
【請求項16】
前記基本合金が、約0.55以上の、溶融温度に対するガラス転移温度の比Trgを有する請求項1に記載のバルク凝固非晶質合金。
【請求項17】
前記基本合金が、約0.6以上の、溶融温度に対するガラス転移温度の比Trgを有する請求項1に記載のバルク凝固非晶質合金。
【請求項18】
酸素に対して個々に生成熱を有する複数の金属成分を含むバルク凝固非晶質の基本合金を準備する工程、
酸素に対する合金化金属生成熱が、前記金属成分の中で酸素に対する最も大きな生成熱より大きい付加合金化金属を準備する工程、及び、
前記基本合金に前記付加合金化金属を添加して、新しい前記バルク凝固非晶質合金を作る添加工程、
を含んで成るバルク凝固非晶質合金を作る方法。
【請求項19】
前記基本合金がZr−Ti基である請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記付加合金化金属が、La、Y、Ca、Al及びBeからなるグループから選択される請求項18に記載の方法。
【請求項21】
前記バルク凝固非晶質合金が、次の分子式で定義され、
(M1aM2b・・・Mnc)100-XX
前記添加工程が次の式にしたがって前記付加合金金属の量を添加する工程を含み、
x=k×C(O)
M1、M2及びM3は、前記基本合金の金属成分であり、nは、前記基本合金の金属成分の番号であり、a、b及びcは、前記基本合金の金属成分の原子百分率を定義し、Qは、前記付加合金化金属であり、xは、前記バルク凝固非晶質合金中の付加合金化金属の原子百分率を定義し、kは、約0.5〜10の範囲にある定数であり、C(O)は、前記バルク凝固非晶質合金を鋳造したままの鋳造品中の酸素原子の百分率である請求項18に記載の方法。
【請求項22】
kが約0.5〜1の範囲にある請求項18に記載の方法。
【請求項23】
kが約3〜5の範囲にある請求項18に記載の方法。
【請求項24】
kが約5〜10の範囲にある請求項18に記載の方法。
【請求項25】
kが約1〜3の範囲にある請求項18に記載の方法。
【請求項26】
Zr及びTiの合計が、前記バルク凝固非晶質合金の金属成分の最も大きな原子百分率より成る請求項19に記載の方法。
【請求項27】
Zrの生成熱が、酸素に対する最も大きな金属成分の生成熱の5%以内である請求項19に記載の方法。
【請求項28】
酸素に対するZrの生成熱が、5原子%以上の前記基本合金を含んで成る前記基本合金の金属成分のグループから選択された酸素に対する前記金属成分の生成熱の中で最大である請求項19に記載の方法。
【請求項29】
前記基本合金は、約0.5以上の、溶融温度に対するガラス転移温度の比Trgを有する請求項18に記載の方法。
【請求項30】
前記基本合金は、約0.55以上の、溶融温度に対するガラス転移温度の比Trgを有する請求項18に記載の方法。
【請求項31】
前記基本合金は、約0.6以上の、溶融温度に対するガラス転移温度の比Trgを有する請求項18に記載の方法。
【請求項32】
前記付加合金化金属を準備する工程が、前記付加合金化金属を前記基本合金の原料に添加することを含む請求項18に記載の方法。
【請求項33】
前記バルク凝固非晶質合金を過加熱する工程をさらに含み、前記バルク凝固非晶質合金を過加熱温度まで加熱する請求項18に記載の方法。
【請求項34】
前記過加熱する工程が、式:Theat=Tm(C)+200℃にしたがう過加熱温度で行われ、Theatは過加熱温度であり、Tmは前記バルク凝固非晶質合金の溶融温度である請求項33に記載の方法。
【請求項35】
前記過加熱する工程が、約100℃〜300℃の範囲または前記バルク凝固非晶質合金の溶融温度以上で行われる請求項33に記載の方法。
【請求項36】
前記過加熱する工程が、約300℃からまたは前記バルク凝固非晶質合金の溶融温度以上の範囲で行われる請求項33に記載の方法。
【請求項37】
前記過加熱する工程が、さらに、約1分〜60分の範囲の特定した継続期間を過加熱温度に維持されることを含む請求項33に記載の方法。
【請求項38】
前記過加熱する工程が、さらに、約5分〜10分の範囲の特定した継続期間を過加熱温度に維持することを含む請求項33に記載の方法。
【請求項39】
前記過加熱する工程が、さらに、約1分〜5分の範囲の特定した継続期間を過加熱温度に維持することを含む請求項33に記載の方法。
【請求項40】
前記過加熱する工程が、さらに、約1分〜60分の範囲の特定した継続期間を過加熱温度に維持することを含む請求項33に記載の方法。
【請求項41】
前記過加熱する工程が、さらに、約10分〜30分の範囲の特定した継続期間を過加熱温度に維持することを含む請求項33に記載の方法。
【請求項42】
酸素に対して個々に生成熱を有する複数の金属成分を含む基本合金を準備する工程、
酸素に対する合金化金属生成熱が、前記金属成分の中の酸素に対する最も大きな生成熱より大きい付加合金化金属を準備する工程、
前記基本合金に前記付加合金化金属を添加して、前記バルク凝固非晶質合金を作る添加工程、及び
前記バルク凝固非晶質合金を過加熱温度まで加熱する工程を含む前記バルク凝固非晶質合金を過加熱する工程、
を含んで成るバルク凝固非晶質合金の原料を作る方法。
【請求項43】
前記付加合金化金属を準備する工程が、前記付加合金化金属を前記基本合金の原料に添加することを含む請求項42に記載の方法。
【請求項44】
酸素に対して個々に生成熱を有する複数の金属成分を含む基本合金を準備する工程、
酸素に対する合金化金属生成熱が、前記金属成分の中の酸素に対する最も大きな生成熱より大きい付加合金化金属を準備する工程、
前記基本合金に前記付加合金化金属を添加して、前記バルク凝固非晶質合金を作る添加工程、及び
前記バルク凝固非晶質合金を過加熱して、前記バルク凝固非晶質合金を過加熱温度まで加熱する工程、及び
前記バルク凝固非晶質合金を最終製品に、前記最終製品が実施的に非晶質を残留する冷却速度で鋳造する工程、
を含んで成る非晶質製品を鋳造する方法。
【請求項45】
前記付加合金化金属を準備する工程が、前記付加合金化金属を前記基本合金の原料に添加することを含む請求項44に記載の方法。
【請求項46】
前記鋳造する工程が、前記基本合金に要求される冷却速度未満の冷却速度で行われ、前記基本合金が実質的に非晶質を残留することを確実にする請求項44に記載の方法。
【請求項47】
前記基本合金は、約0.55以上の、溶融温度に対するガラス転移温度の比Trgを有する請求項44に記載の方法。
【請求項48】
前記基本合金は、約0.6以上の、溶融温度に対するガラス転移温度の比Trgを有する請求項44に記載の方法。
【請求項49】
前記バルク凝固非晶質合金が、次の分子式で定義され、
(M1aM2b・・・Mnc)100-XX
前記添加工程が次の式にしたがって前記付加合金金属の量を添加する工程を含み、
x=k×C(O)
ここで、M1、M2及びM3は、前記基本合金の金属成分であり、nは、前記基本合金の金属成分の番号であり、a、b及びcは、前記基本合金の金属成分の原子百分率を定義し、Qは、前記付加合金化金属であり、xは、前記バルク凝固非晶質合金中の付加合金化金属の原子百分率を定義し、kは、約0.5〜10の範囲にある定数であり、C(O)は、前記バルク凝固非晶質合金を鋳造したままの鋳造品中の酸素原子の百分率である請求項44に記載の方法。
【請求項50】
前記バルク凝固非晶質の基本合金が、Zr−Ti基である請求項44記載の非晶質合金の方法。
【請求項51】
前記付加合金化金属が、La、Y、Ca、Al及びBeからなるグループから選択される請求項44記載の非晶質合金の方法。
【請求項52】
前記鋳造する工程が、高圧力ダイキャスト法を使用する請求項44に記載の方法。
【請求項53】
前記鋳造する工程が不活性雰囲気または真空中で実施される請求項44に記載の方法。
【請求項54】
前記最終製品が少なくとも1.2%の弾性限界を有する請求項44に記載の方法。
【請求項55】
前記最終製品が少なくとも1.8%の弾性限界を有する請求項44に記載の方法。
【請求項56】
前記最終製品が少なくとも1.8%の弾性限界及び少なくとも1.0%の曲げ延性を有する請求項44に記載の方法。
【請求項57】
さらに前記最終製品の弾性限界を試験する工程を含む請求項44に記載の方法。
【請求項58】
前記試験する工程が前記最終製品を曲げ試験することを含む請求項57に記載の方法。
【請求項59】
請求項1の前記バルク凝固非晶質合金から作られた少なくとも一つの鋳造部品を含む鋳造品。
【請求項60】
前記鋳造品が少なくとも1.2%の弾性限界を有する請求項59に記載の鋳造製品。
【請求項61】
前記鋳造品が少なくとも1.8%の弾性限界を有する請求項59に記載の鋳造製品。
【請求項62】
前記鋳造品が少なくとも1.8%の弾性限界及び少なくとも1.0%の曲げ延性を有する請求項59に記載の鋳造品。
【請求項63】
前記バルク凝固非晶質合金が、Zr−Ti基である請求項59に記載の鋳造品。
【請求項64】
前記鋳造品は、酸素の含有量が200ppm以上である請求項59に記載の鋳造品。
【請求項65】
前記鋳造品は、酸素の含有量が500ppm以上である請求項59に記載の鋳造品。
【請求項66】
前記鋳造品は、酸素の含有量が1000ppm以上である請求項59に記載の鋳造品。
【請求項67】
請求項1の前記バルク凝固非晶質合金なら作られた少なくとも一つの部片を含む原料素材。
【請求項68】
前記バルク凝固非晶質の基本合金がZr−Ti基である請求項67記載の原料素材。
【請求項69】
前記原料素材は、酸素の含有量が200ppm以上である請求項68に記載の原料素材。
【請求項70】
前記原料素材は、酸素の含有量が500ppm以上である請求項68に記載の原料素材。
【請求項71】
前記原料素材は、酸素の含有量が1000ppm以上である請求項68に記載の原料素材。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−45931(P2011−45931A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2010−232378(P2010−232378)
【出願日】平成22年10月15日(2010.10.15)
【分割の表示】特願2003−532717(P2003−532717)の分割
【原出願日】平成14年10月2日(2002.10.2)
【出願人】(503326823)リキッドメタル テクノロジーズ,インコーポレイティド (7)