説明

バルク貯槽の現地耐圧検査装置及び耐圧検査方法

【課題】バルク貯槽の定期検査に当たり、検査すべき被検査用バルク貯槽をガス消費施設に設置したままの状態で検査を行うことの出来る手段を提供すること。
【解決手段】貯水タンク3と、窒素ガスボンベ2と、油水分離機4と、プロパンガスボンベ5と、プロパンガス発電機7と、燃焼炉6と、熱風ブロア8と耐圧容器検査装置Gを含む非水槽式耐圧容器検査装置一式Aを一輌の車に搭載し、ガス消費施設に設置されたバルク貯槽を移動させずに検査を行うことを特徴とするバルク貯槽の非水槽式現地耐圧検査装置及び検査方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プロパンガスやブタンガス等の液化ガスの充填されている液化ガス貯蔵容器であるバルク貯槽の非水槽式耐圧検査装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
プロパンガスやブタンガス等の液化ガスは、通常は圧縮されて液化された状態で気密容器に充填され使用される。これらの液化ガス充填容器は、LPG輸入基地等から直接タンクローリで、家庭も含めLPG消費先のバルク貯槽に供給する「新バルク供給システム」が使用され始めており、ガスボンベ等の液化ガス充填容器による液化ガスの供給形態に代えて容量の大きな設置型のバルク貯槽を一般の家庭や工場に備えて、其処へバルクローリと言われる小型のタンクローリによって液化ガスを運んで直接充填する供給形態が普及し始めている。その結果、バルク貯槽は平成17年までに16万基が設置されガスボンベによる物流から大きく進歩してきた。
バルク貯槽は、大量の高圧液化ガスが充填されている関係で、今では20年毎に容器の耐圧検査を含む定期検査が法律で義務づけられている。
【0003】
そこで、ガス消費施設に設置されている検査対象となるバルク貯槽(以下「被検査用バルク貯槽」という)の近くまで代替容器を車で搬送し、被検査用バルク貯槽内の残留液化ガスを代替容器に移動させ、代替容器を仮設置した後、被検査バルク貯槽を取り外して車に積んで検査設備のある工場まで持って行って検査を行い、検査の終った被検査用バルク貯槽を再び車に積んでガス消費施設まで搬送し、以前の場所に再設置して仮設置されていた代替容器の液化ガスを検査済みの被検査バルク貯槽に戻してから、再び代替容器を車に積んで帰るようにしたものが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
しかしながら、バルク貯槽を検査設備のある工場まで持ち帰って検査するためには、現地に設置されている使用中のバルク貯槽の代りに代替用容器を仮設置し、それに液化ガスを充填し、検査が終ったバルク貯槽を再び現地に運んで来て、代替容器と交換し、検査済みのバルク貯槽には改めて液化ガスを充填して通常の使用状態に復帰させるため、被検査バルク貯槽の撤去作業や再設置並びに検査工場への搬送作業が必要であって、多大の時間と労力と技術を必要とする。
【特許文献1】 特開平8−313402号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、バルク貯槽の定期検査に当たり、検査すべき被検査用バルク貯槽をガス消費施設に設置したままの状態で検査を行うことの出来る手段を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の請求項1に記載された発明は、貯水タンクと、窒素ガスボンベと、油水分離装置と、プロパンガスボンベと、プロパンガス発電機と、燃焼炉と、熱風ブロアと耐圧検査装置を含む非水槽式耐圧容器検査装置一式を一輌の車に搭載し、ガス消費施設に設置された被検査用バルク貯槽を移動させずに検査を行うことを特徴とするバルク貯槽の非水槽式現地耐圧検査装置であって、請求項2に記載された発明は、前記貯水タンクの上部には、エア抜用開閉弁と主開閉弁が設けられ、前記主開閉弁はパイプラインを介して窒素ガスボンベと被検査用バルク貯槽の耐圧検査装置用の開閉弁に接続可能になっている。そして、更にこの貯水タンクの底部には切替弁を有するパイプラインが設けられ、油水分離装置と被検査用バルク貯槽に設けられている液取出弁に接続可能になっており、前記プロパンガスボンベには、プロパンガス発電機と燃焼炉が接続され、燃焼炉から熱風ブロアを通して被検査用バルク貯槽内に乾燥用熱風を吹き込むことができるようになっている。
【0007】
そして、請求項3に記載された発明は、本発明の非水槽式耐圧検査装置を使用してバルク貯槽の現地耐圧検査を行うために、車に搭載されている窒素ガス圧力容器からのガス圧力で貯水タンクの水を押し出して被検査用バルク貯槽に水を充満する工程と、被検査用バルク貯槽を検査ラインに接続して非水槽式検査手段による容器の耐圧検査を行う工程と、前記窒素ガス圧力容器からのガス圧力で被検査用バルク貯槽内の水を油水分離装置を通して貯水タンクに戻す工程と、前記プロパンガスボンベのガスを燃料とする燃焼炉にて発生した高温の空気をプロパンガス発電機により駆動される熱風ブロアにて被検査用バルク貯槽内を乾燥させる工程を有することを特徴とするものである
【発明の効果】
【0008】
本発明のバルク貯槽の現地耐圧検査装置を利用すれば、バルク貯槽の定期検査に当たり、検査すべき被検査バルク貯槽をガス消費施設に設置したままの状態で検査を行うことが出来るので、被検査バルク貯槽の撤去作業や再設置並びに検査工場への搬送作業が省略され、経済的で且つ、効率的なバルク貯槽の耐圧検査作業を行うことが出来る効果が期待できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
以下、本発明の最良の実施形態を図面に基づき説明する。
なお、以下の説明において同一の機能を有する部材や部位、構成部分については同一の符号や文字を付けて説明を省略する場合がある。
【0010】
図1は、本発明のバルク貯槽の非水槽式現地耐圧検査装置の説明用配置図である。破線Aは、車両搭載用機器の領域を示しており、1はガス消費施設に設置されているバルク貯槽を示してる。ここでは、以下、このバルク貯槽を定期検査対象のバルク貯槽を示す意味で「被検査用バルク貯槽」と呼ぶ。2は窒素ガスボンベで、高圧の窒素ガスが充填されており、圧力調整器Vaが設けられている。3は水を充満した貯水タンクで、その上部にはエア抜用開閉弁V9と主開閉弁V1が設けられ、主開閉弁V1は、パイプラインLnを介して窒素ガスボンベ2の圧力調整器Va及び被検査用バルク貯槽1に接続可能となっており、その底部に設けられたパイプラインLsは被検査用バルク貯槽1に設けられた液取出弁V5に接続可能となっている。
【0011】
破線4は油水分離装置で、油水分離装置4の入口側に設けられた開閉弁V4及び出口側に設けられた開閉弁V3により、切替弁V2を跨いでパイプラインLsに接続されている。5はプロパンガスボンベで、プロパンガス発電機7と燃焼炉6の燃料用のガスを供給するためそれぞれの装置に接続されている。
【0012】
プロパンガス発電機7は電機系ラインLeによって、熱風ブロア8と耐圧検査装置Gに接続され、それぞれに必要な電力を供給するようになっている。
耐圧検査装置Gは、測定器Sと油圧シリンダP1及び加圧シリンダP2を有する周知の耐圧容器検査装置であって、被検査用バルク貯槽1に設けられた液取入弁V11に接続して耐圧を検査することが出来るようになっており、V10は耐圧検査装置用の開閉弁である。
また熱風ブロア8は、熱風制御弁V8を介して被検査用バルク貯槽1内に熱風を送風して検査終了後のバルク貯槽内部を乾燥するものである。なお、乾燥の際は被検査用バルク貯槽1に設けられたガス取出弁V7を開放し、エア抜きを行う。
【0013】
以下、図1に基づき本発明の非水槽式現地耐圧検査装置の操作方法について説明する。まず、車両に搭載した破線Aで囲まれた車両搭載用機器をガス消費設備に設置されている被検査用バルク貯槽に図1のように接続する。
次に、被検査用バルク貯槽1の液取出弁V5と貯水タンク3と被検査用バルク貯槽1とに接続されたパイプラインLsの切替弁V2を開き、その他の弁を全て閉じた状態から貯水タンク3の主開閉弁V1を開いて窒素ガスボンベ2から圧力調整器Vaを通して窒素ガスの圧力で貯水タンク3の中の水を押し出し貯水タンク3から被検査用バルク貯槽1に水を満充水させた後、全ての開閉弁を閉じて耐圧検査装置Gの開閉弁V10だけを開き耐圧検査装置Gにより油圧シリンダP1と加圧シリンダP2によって被検査用バルク貯槽の内部に圧力をかけて周知の非水槽式容器検査方法による被検査用バルク貯槽1の耐圧検査を行う。
【0014】
耐圧検査が終了すると、被検査用バルク貯槽の液取出弁V5と油水分離装置の開閉弁V3とV4及び貯水タンク3のエア抜用開閉弁V9を開き、その他の弁を全て閉じてからパイプラインLnの開閉弁V6を開けて窒素ガスボンベ2から圧力調整器Vaを通して窒素ガスの圧力で被検査用バルク貯槽1の中に満充水してあった水を油水分離装置4を介して貯水タンク3に戻すことにより、被検査用バルク貯槽1に長い年月を経て蓄積していたLPGに含まれるタール分や、LPGを高圧化する時のポンプの潤滑油のようなドレーン分が不純物と水分とに分離されて水だけが貯水タンク3に戻される。したがって、検査を行うと同時に従来排出困難とされていた積年のドレーン分をも除去することが出来る。
【0015】
こうして、被検査バルク貯槽内を完全に空にした後は、被検査用バルク貯槽のガス取出弁V7と熱風制御弁V8を開き、その他の弁を全て閉じてからプロパンガスを燃料にして燃焼炉6で発生した高温の空気を熱風ブロア8にて被検査用バルク貯槽1に吹き込み、被検査用バルク貯槽内を乾燥させる。貯槽内の乾燥が終り、圧力検査結果に異常が無ければ被検査バルク貯槽から車両搭載用機器Aを全て取り外し、別途用意したLPG給配車によってLPGを供給することにより、今まで通りのバルク貯槽として次の定期検査まで使用することが出来る。
【0016】
したがって、本発明のバルク貯槽の現地耐圧検査装置を利用すれば、バルク貯槽の定期検査に際し、検査すべき被検査用バルク貯槽をガス消費施設に設置したままの状態で検査を行うことが出来るので、被検査バルク貯槽の撤去作業や再設置並びに検査工場への搬送作業が省略され、経済的で且つ、効率的なバルク貯槽の耐圧検査作業を行うことが出来る効果が期待できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の現地耐圧検査装置の説明用配置図である。
【符号の説明】
【0018】
1・・・・被検査用バルク貯槽
2・・・・窒素ガスボンベ
3・・・・貯水タンク
4・・・・油水分離装置
5・・・・プロパンガスボンベ
6・・・・燃焼炉
7・・・・プロパンガス発電機
8・・・・熱風ブロア
A・・・・非水槽式耐圧容器検査装置一式
G・・・・耐圧検査装置
S・・・・測定器
V1・・・・主開閉弁
V2・・・・切替弁
V3・・・・開閉弁
V4・・・・開閉弁
V5・・・・液取出弁
V6・・・・開閉弁
V7・・・・ガス取出弁
V8・・・・熱風制御弁
V9・・・・エア抜弁
V10・・・・耐圧検査装置用開閉弁
V11・・・・液取入弁
Ln・・・・パイプライン
Ls・・・・パイプライン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
貯水タンクと、窒素ガスボンベと、油水分離装置と、プロパンガスボンベと、プロパンガス発電機と、燃焼炉と、熱風ブロアと耐圧検査装置を含む非水槽式耐圧容器検査装置一式を一輌の車に搭載し、ガス消費施設に設置された被検査用バルク貯槽を移動させずに検査を行うことを特徴とするバルク貯槽の非水槽式現地耐圧検査装置。
【請求項2】
前記貯水タンクの上部には、エア抜用開閉弁と主開閉弁が設けられ、前記主開閉弁はパイプラインを介して窒素ガスボンベと被検査用バルク貯槽の耐圧検査装置用開閉弁を介して被検査用バルク貯槽の液取入弁に接続可能になっており、更にこの貯水タンクの底部には切替弁を有するパイプラインが設けられ、油水分離装置と被検査用バルク貯槽に設けられている液取出弁に接続可能になっており、前記プロパンガスボンベには、プロパンガス発電機と燃焼炉が接続され、燃焼炉から熱風ブロアを通して被検査用バルク貯槽内に乾燥用熱風を吹き込むことができるようになっていることを特徴とする請求項1記載のバルク貯槽の非水槽式現地耐圧検査装置。
【請求項3】
一輌の車に搭載された請求項1記載の非水槽式耐圧容器検査装置の窒素ガスボンベからのガス圧力で貯水タンクの水を押し出して被検査用バルク貯槽に水を充満する工程と、前記被検査用バルク貯槽を非水槽式検査装置に接続して非水槽式検査手段による容器の耐圧検査を行う工程と、前記窒素ガスボンベからのガス圧力で被検査用バルク貯槽内の水を油水分離装置を通して貯水タンクに戻す工程と、前記プロパンガスボンベのガスを燃料とする燃焼炉にて発生した高温の空気をプロパンガス発電機により駆動される熱風ブロアにて被検査用バルク貯槽内を乾燥させる工程を有することを特徴とするバルク貯槽の非水槽式現地耐圧検査方法。

【図1】
image rotate


【公開番号】特開2010−19819(P2010−19819A)
【公開日】平成22年1月28日(2010.1.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−201231(P2008−201231)
【出願日】平成20年7月8日(2008.7.8)
【出願人】(000142698)株式会社桂精機製作所 (14)
【出願人】(508235586)
【Fターム(参考)】