説明

バルコニー

【課題】軒先が高く、軒元にゆくに従って低い床面を有するバルコニーであって、バルコニーの上に降った雨水を下方に流れ落とし易くしたり、雨水が跳ねて開口部かさ屋内側の部屋に浸入し難いバルコニーを提供すること。
【解決手段】バルコニー3に、軒先が高く軒元に行くに従って次第に低い上面を有するバルコニー床4と、建物本体1に沿った軒元近傍の第1這い樋6と、この第1這い樋に略直角な軒元から軒先近傍までの第2這い樋7と、竪樋8とを設ける。そして、第1這い樋6がバルコニー床4の上を流れる水を受け、第2這い樋7を第1這樋6に接続し、竪樋8を第2這い樋7に接続したバルコニー3である。

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】
この発明は、バルコニーに関する。
【0002】
【従来の技術】
最も多い従来のバルコニーは、特許文献1に記載されているように、建物本体の開口部の屋外側に設けられ、バルコニー床は、軒元が高く、軒先に行くに従って次第に低くなっていて、このバルコニー床の軒先近傍に、軒先に沿った這い樋と、この這い樋に接続されている竪樋とが設けられている。
このバルコニー床は、バルコニー床下地材であるバルコニー葺材とこのバルコニー葺材の上に設けられた防水シートと、この防水シートの上に設けられたバルコニー床材とからなる。
【0003】
このバルコニーでは、バルコニーの上に降った雨水が防水シートの上を軒先方向に流れて這い樋に入り、この這い樋から竪樋を通って下方に流れ落ちるようになっている。そして、このバルコニー床の防水シートは、バルコニー葺材と共に軒元では立ち上げられ、この立ち上げられた防水シートが建物本体の壁に取り付けられて、建物本体とバルコニー床との間から水が浸入しないようになっている。
【0004】
しかし、道路を自動車が通過したり、バルコニー床の上や建物本体の床の上を人が移動するとき等では、建物本体やバルコニーが振動するが、このように建物本体やバルコニーが振動すると、建物本体とバルコニーとの振動特性が異なるために、この防水シートに剪断力が生じ、防水シートに亀裂が生じたり、防水シートが建物本体の壁から剥がれ、その結果、この亀裂や剥がれた場所から浸入した水が建物本体の構造材等を腐食させる危険性がある。
【0005】
また、防水シートは、通常、ゴム又は柔軟な合成樹脂をシート状にしたものであって、この上を人が歩くと防水シートが痛むので、固い材質である木材又は硬質の合成樹脂製のバルコニー床材を防水シートの上に設けて、防水シートを保護している。
そして、建物本体からバルコニーに出入し易くするために、通常、バルコニー床の軒元の上面と開口部の屋内側の部屋の床面とを略同じ高さにしたり、バルコニーに出入し易く、しかも、屋内側の部屋に雨水が入らなくするために若干低くしているが、このように、バルコニー床の軒元の床面を開口部の屋内側の部屋の床面と略同じ高さ又は若干低くしていると、バルコニーの床の上に降った雨水が固い材質であるバルコニー床材に衝突し跳ねて開口部を通って屋内側の部屋に浸入することがある。
【0006】
また、バルコニーの下方に部屋を設けることが多いが、このように下方に部屋を設けたバルコニーでは、バルコニー床の軒元の上面を開口部の屋内側の部屋の床面と略同じ高さ又は若干低くすると、軒先が軒元より低くなる。その結果、下方に設ける部屋の天井が低くなり、バルコニーの下方の部屋の居住性が悪くなる。
【0007】
この問題を解決するために、バルコニーの下方に設ける部屋の天井をその他の部屋と略同じにすると、バルコニーの床の軒元の高さが開口部の屋内側の部屋の床面より高くなり、出入し難くなるし、雨水のバルコニーから部屋へ浸入を防ぐ防水構造にする納まりが複雑になり、施工し難い。
特に、工場で建物ユニットを製造し、この建物ユニットの複数個を施工現場に運搬し、施工現場で組み立てるユニット建物の場合には、トラック等で運搬するために、ユニット建物を余り高くすることができなず、天井の高さに余裕がない。
【0008】
従って、上記問題、即ち、軒元の床の上面高さを開口部の屋内側の部屋の床面と略同じ高さ又は若干低くにすると、軒先が低くなり、その結果、バルコニーの下方に設ける部屋の天井が低くなり、この部屋の居住性が悪くなるし、バルコニーの床の上面を建物本体の開口部の屋内側の部屋の床面より高くすると、開口部からバルコニーへの出入し難くなったり、バルコニーを建物本体に取り付ける防水構造にする納まりが複雑になり、施工し難いという問題が顕著に顕れる。
かかる問題を解決するバルコニーとして、特許文献2や特許文献3に記載されているように、バルコニーの床を軒先が高く、軒元に行くに従って次第に低くしたバルコニーが知られている。
【0009】
即ち、特許文献2に記載されているバルコニーでは、バルコニー床を軒先を高く軒元に行くに従って次第に低くし、軒元近傍には、建物本体に沿った這い樋を設けていて、バルコニー床の上に降った雨水が這い樋に流れ落ちるようにしている。即ち、バルコニー床の上の防水シートを這い樋まで設け、這い樋と建物本体との間を防水構造にして、建物本体と防水シートとが直接連結しないようにして、振動による防水シートの亀裂を防止している。
【0010】
また、特許文献3に記載されているバルコニーでは、軒元近傍に建物本体に沿った這い樋を設けて、バルコニーの床から建物本体の開口部までの距離を略這い樋の幅だけ大きくして、バルコニー床材の上で跳ねた雨水を建物本体の開口部を通って屋内側の部屋に入り難くしている。
【0011】
【特許文献1】
特開平5−65738号公報
【特許文献2】
第2680212号公報
【特許文献3】
実開平5−7802号公報
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
しかし、上記特許文献2や特許文献3に記載されているバルコニーでは、バルコニーの下方に部屋を設けることについての説明がない。
通常、這い樋を竪樋に接続するためには、バルコニーと下方の部屋との間にドレンを設ける必要があり、このドレン等を設けるには、ある程度の高さが必要となる。そして、この特許文献2や特許文献3に記載されているバルコニーの下方に部屋を設けると、這い樋がバルコニーの下方に設けられた部屋の略中央になり、ここにドレンを設けるための高さを設ける必要がある。その結果、下方に設ける部屋の天井が著しく低くなり、極めて居住性の悪い部屋となる。
【0013】
また、特許文献2では、この這い樋の幅だけバルコニーの床が遠く離れていてバルコニー床材の上で跳ねた雨水が開口部を通って屋内側の部屋に浸入し難くなっているが、この這い樋の幅だけでは不十分で、バルコニーの上に降った雨水の浸入を完全に防ぐことができない。
【0014】
そこで、この発明の目的は、開口部からバルコニーに出入し易く、且つ、バルコニーの下方に部屋を設けても天井が低くならないように、軒先が高く、軒元にゆくに従って次第に低い床面を有するバルコニーであって、バルコニーの上に降った雨水を下方に流れ落し易くしたり、雨水が開口部の屋内側の部屋に入り難いバルコニーを提供することである。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明は、上記課題を解決するためになされたものであって、請求項1に記載の発明は、建物本体の開口部の屋外側に設けられたバルコーであって、前記バルコニーには、軒先が高く軒元に行くに従って次第に低い上面を有するバルコニー床と、建物本体に沿った軒元近傍の第1這い樋と、この第1這い樋に略直角な軒元近傍から軒先近傍までの第2這い樋と、竪樋とが設けられ、第1這い樋がバルコニー床の上を流れる水を受け、第2這い樋が第1這い樋に接続され、竪樋が第2這い樋に接続されているものである。
【0016】
請求項1記載の発明においては、竪樋が第2這い樋に接続されているが、この竪樋を第2這い樋に接続する位置は、竪樋を設け易い位置であればどこでもよい。例えば、軒元の近くであってもよいし、軒先の近くであってもよいし、中央部分であってもよい。
しかし、バルコニーの下方に部屋を設けた場合では、竪樋を第2這い樋のバルコニーの軒元近傍で接続しようとする、この第1這い樋が部屋の上方になり竪樋を接続し難くなるので、軒先近傍が好ましい。又、バルコニーの下方に部屋がない場合には、竪樋を第2這い樋の軒元近傍に接続すると竪樋を取り付け易くなり好ましい。
【0017】
請求項2記載の発明は、前記バルコニー床の軒元の上面が開口部の屋内側の部屋の床面と略同じ高さ又は若干低く、この屋内側の部屋の壁の下部又は開口部に取り付けられた窓の下部には、掃出口が設けられているものである。
【0018】
この請求項2記載の発明において、バルコニー床の上面が防水シートの場合では、この防水シートを保護するために床板を設けるとよい。この際の床板は固い材質であってもよいが、請求項4記載のように柔らかい保水性床板が好ましい。
このように床板を設ける場合には、この床板の軒元の上面を開口部の屋内側の部屋の床面と略同じ高さ又は若干低くすることが望ましい。
【0019】
請求項3記載の発明は、請求項1記載の発明に係り、前記第1這い樋は、上面が開口している溝形体であり、この開口には、孔付き蓋が設けられているものである。
【0020】
請求項4記載の発明は、請求項1記載の発明に係り、前記バルコニー床の軒元の上面が開口部の屋内側の部屋の床面より若干低く、このバルコニー床に保水性床板が設けられ、この保水性床板の軒元の上面と開口部の屋内側の部屋の床面とが略同じ高さになされているものである。
この請求項4記載の発明に使用される保水性床板とは、水を吸収して多量の水を保持する能力を有するものであって、連続気孔率が50〜95%のセラミックの発泡体、発泡コンクリート、人工芝、ポリウレタンシート等がある。この保水性床板は、通常、水を跳ねることが少ない物質である。
(作用)
請求項1記載の発明では、建物本体の開口部の屋外側に設けられたバルコーであって、前記バルコニーには、バルコニー床と、第1這い樋と、第2這い樋と、竪樋とが設けられ、第1這い樋がバルコニー床の上を流れる水を受け、第2這い樋が第1這い樋に接続され、竪樋が第2這い樋に接続されているので、バルコニー床の上に降った雨水は、第1這い樋に流れ込み、この第1這い樋から第2這い樋を経て竪樋に流れ、この竪樋で下方に流れ落ちるようになっている。
【0021】
そして、バルコニー床は、軒先が高く軒元に行くに従って次第に低い上面を有するので、バルコニーの床は軒元が最も低く、この最も低い軒元を開口部の屋内側の部屋の床と略同じ又は若干低くなっていて、バルコニーの下方に設ける部屋の天井を低くする必要がなくなる。従って、バルコニーの下方に設けた部屋の居住性が悪くならない。
【0022】
また、第1這い樋は、建物本体に沿った軒元近傍にあるので、バルコニー床の防水シートを第1這い樋まで設けても、バルコニー床の防水シートを建物本体に取り付ける必要がない。従って、バルコニーや建物本体が振動しても、防水シートが破損しないし、防水シートが建物本体から剥がれない。又、バルコニーの上で雨水が跳ねても、バルコニー床は第1這い樋の幅以上に離れていて雨水が開口部を通って屋内側の部屋に入り難い。
【0023】
また、第2這い樋は、軒元近傍から軒先近傍までに設けられているので、軒先から軒元までの第2這い樋の適宜場所に竪樋を接続し、バルコニー床の上に降った雨水を下方に流し落とすことができる。
例えば、バルコニーの下方に部屋がある場合には、竪樋を第2這い樋の軒先近傍で接続することにより、バルコニーの上に降った雨水をバルコニーの下方の部屋を通すことなく、従って、ドレンを取り付けるためのバルコニーの下方の部屋天井を低くせずに、下方に流し落とすことができ、バルコニーの下方の部屋の居住性が悪くならない。又、バルコニーの下方の部屋の壁に沿って竪樋を取り付けることができ、竪樋を設置し易い。
【0024】
又、バルコニーの下方に部屋がない場合には、バルコニーの軒元近傍で第2這い樋を竪樋と接続すると、この竪樋を建物本体の壁に沿って設けることができ、竪樋を設置し易い。
このように、バルコニーの下方に部屋があってもなくても、同じ構造のバルコニーを使用することができる。従って、バルコニーを大量生産することができ、バルコニーを低コストで製造することができる。
【0025】
請求項2記載の発明では、請求項1記載の発明に係り、前記バルコニー床の軒元の上面が開口部の屋内側の部屋の床面と略同じ高さ又は若干低いので、第1這い樋から屋内側の壁に防水シート等を取り付けるだけで、防水することができ、防水構造にする納まりが簡単になり施工し易い。
【0026】
しかも、この請求項2記載の発明では、この屋内側の部屋の壁の下部又は開口部に取り付けられた窓の下部には、掃出口が設けられているので、屋内側の部屋を掃除する際に、この壁下部又は開口部に取り付けられた窓の下部に設けられている掃出口からバルコニー床の上や第1這い樋の中に、ゴミを掃き出すことができ、掃除し易い。
【0027】
請求項3記載の発明では、請求項1記載の発明に係り、前記第1這い樋は、上面が開口している溝形体であり、この開口には、孔付き蓋が設けられているので、バルコニーの上に降った雨水が孔付き蓋の孔を通って第1這い樋の中に落下し、この第1這い樋の溝形状の中を支障なく流れて行く。
この際、大きなゴミは、孔付き蓋の孔に引っ掛かって、孔付き蓋から下方の第1這い樋の中に入らない。従って、大きなゴミが第1這い樋やこの第1這い樋に接続されている第2這い樋の中に入らなく、雨水が流れ易い。
しかも、この第1這い樋の溝形状の開口には孔付き蓋が設けられていて、バルコニー床の上を歩行する人の足が第1這い樋の中に入ることがなく、安心してバルコニーに出入することができる。
【0028】
請求項4記載の発明では、請求項1記載の発明に係り、前記バルコニー床の軒元の上面が開口部の屋内側の部屋の床面より若干低く、このバルコニー床に第1這い樋の屋外側の上面に保水性床板が設けられているので、この保水性床板がバルコニー床の上に降った雨水を多量に含み、この雨水が蒸発する際に多量の熱を奪って、開口部の屋内側の部屋や下方の部屋が涼しくなる。そして、保水性床板の水がなくなっても、この保水性床板が直射日光を遮り、バルコニーの床の温度上昇を押さえる。従って、このバルコニーの下方に部屋を設けたときに、この部屋の温度が上昇し難く、涼しい居住性のよい部屋となる。
【0029】
なお、保水性床板が乾燥した後でも、水の蒸発によって開口部の屋内側の部屋や下方の部屋を涼しくしたいときには、この保水性床板の上に散水すれば、保水性床板が水を大量に含み、長時間、開口部の屋内側の部屋や下方の部屋を涼しくすることができる。
また、この保水性床板の上面と建物本体の開口部の屋内側の床面とが略同じ高さになされているので、開口部の敷居や第1這い樋を跨いで、開口部の屋内側からバルコニーに出入し易いし、保水性床板は、水をよく吸収するので、この上に降った雨水が跳ね上がり難く、従って、この雨水が開口部を通って内側の部屋の中に浸入し難い。
【0030】
また、バルコニー床の上面が防水シートである場合には、この防水シートの上の保水性床板の上を歩くことになり、防水シートが痛まない。
【0031】
【発明の実施の形態】
以下、本発明の実施の形態を実施例で説明する。
図1〜図7は本発明の一実施例を示すもので、図1は建物を示す斜視図、図2はバルコニーの平面図、図3は図2のA−A線における断面図、図4は図2のB−B線における断面図、図5は図2のC−C線における断面図、図6(イ)は竪樋と第2這い樋との接続位置を示す正面図、(ロ)は竪樋と第2這い樋との接続位置の別の例を示す正面図、(ハ)は竪樋と第2這い樋の接続部近傍を示す断面図、図7(イ)は第1這い樋を示す断面図、(ロ)は孔付き蓋の断面図である。
【0032】
図1〜図7において、Hは建物であり、図1及び図2に示すように、この建物Hは、建物本体1とバルコニー3とからなる。即ち、建物本体1の2階には、開口部11が設けられ、開口部11の屋内側には、部屋2が設けられ、開口部11の外側には、バルコニー3が設けられている。このバルコニー3の下方にも別の部屋12が設けられている。そして、この開口部11には、アルミニウム製のスライド窓13が設けられていて、このスライド窓13を開けて、2階の部屋2からバルコニー3に出入できるようになっている。
【0033】
部屋2は、図3に一部示されているように、H形鋼材の梁21が設けられ、この梁21の上に鉄筋の入ったALC製の厚み100mmの床下地材22が架け渡され、この床下地材22の上に束23が立設され、この束23の上にパーチクルボードの床板24が設けられ、この床板24の上にフローリングの床仕上げ材25が設けられている。
また、この床下地材22の上には断面コ字形の鋼製長尺体である窓台15が設けられ、この窓台15の上にスライド窓13が設けられている。
そして、このスライド窓13の下側の窓枠には、図3に示すように、掃出口19が設けられている。
【0034】
バルコニー3は、バルコニー床4と、このバルコニー床4の周囲に設けられた手摺り5とからなる。
バルコニー床4は、図3〜図5に示すように、周囲に設けられたH形鋼材のバルコニー梁41と、このバルコニー梁41の上に鉄筋の入ったALC製の厚み100mmのバルコニー床下地材42が架け渡され、このバルコニー床下地材42の上にポリスチレン樹脂発泡体の勾配断熱材43が設けられ、この勾配断熱材43の上にガラス繊維強化不燃材であるバルコニー床材44が設けられ、この上に塩化ビニル樹脂シートの防水シート45が設けられている。そして、この防水シート4の上に人造芝生である保水性床材46が設けられている。
【0035】
そして、この勾配断熱材43は軒先の厚みが軒元より大きく、従って、この勾配断熱材43の上に設けられているバルコニー床材44と防水シート45と保水性床材46とは、図2R>2に示すように、軒先が高く、軒元に行くに従って低くなっている。
そして、軒元では、防水シート45の上面が屋内側に設けられている部屋2の床面より若干低くなっていて、この防水シート45の上に設けられた保水性床材46が開口部11の内部の部屋の床仕上げ材25と略同じ高さになっている。
なお、バルコニー床4の一方の側縁には、図4に示すように、後述の第2這い樋7を取り付けるための補助梁48が設けられている。
【0036】
手摺り5は、図5や図6に示すように、バルコニー床4の軒先と両側のコ字形の縁部に沿って設けられている。
この手摺り5は、バルコニー梁41や補助梁48の上に設けられた四角筒状の鋼製の手摺りスタッド51と、この手摺りスタッド51の屋外側に設けられた通気材52を介して取り付けられた外壁サイデイング53と、手摺りスタッド51の屋内側に設けられた通気材54を介して取り付けられた内壁サイデング55と、手摺りスタッド51の上端に設けられた防水シート笠木受け材56と、この防水シート笠木受け材56の上に設けられた防水シート57と、この防水シート57の上に設けられた笠木58とからなる。
【0037】
そして、このバルコニー床4の軒元では、建物本体1に沿って第1這い樋6が設けられ、軒元から軒先に設けられた一方の側の手摺り5の下端部とバルコニー床4との間にあるバルコニー梁41と補助梁48の上には、側縁に沿った軒先近傍から軒元近傍までに第2這い樋7が設けられ、この第1這い樋6と第2這い樋7とは、両者の交差点で接続されている。
【0038】
第1這い樋6は、図7(イ)に示すように、ポリ塩化ビニルシート被覆鋼製の上面が開口している断面コ字形の樋本体61と、この樋本体61の内側面に設けられた軟質ポリ塩化ビニルシート62とからなり、軟質ポリ塩化ビニルシート62の軒先側がバルコニー床材4の防水シート45の下側に敷かれ、軒元側が樋本体61と共に建物本体1の外壁材15の内側に差し込まれている。
【0039】
そして、この第1這い樋6の開口には孔付き蓋9が取り付けられている。
この孔付き蓋9は、図7(ロ)に示すように、直径5mmの丸孔911が多数個設けられているステンレス板91と、このステンレス板91の両側に設けられた脚92とからなるものであり、この孔付き蓋9は、両側の脚92を第1這い樋6の断面コ字形の中に挿入した状態にして取り付けられている。
【0040】
第2這い樋7は、図6(ハ)に示すように、ポリ塩化ビニルシート被覆鋼製の上面が開口している断面コ字形の樋本体71と、この樋本体71の内側面に設けられた軟質ポリ塩化ビニルシート72とからなり、第2這い樋7の内側の軟質ポリ塩化ビニルシート72がバルコニー床4の防水シート45の下側に差し込まれ、外側のポリ塩化ビニルシート72が手摺り5の内壁サイデング55の内側に差し込まれている。
【0041】
そして、この第2這い樋7の開口には蓋95が取り付けられている。
この蓋95は、図7(ロ)に示すように、ステンレス板96と、このステンレス板96の両側に設けられた脚97とからなるものであり、この蓋95は、両側の脚97を第2這い樋7の断面コ字形の中に挿入した状態にして取り付けられている。
【0042】
8は竪樋であり、この竪樋8は、図6(イ)に示すように、第2這い樋7の軒先近傍で接続され、下方の部屋12の壁に沿って取り付けられている。
この竪樋8の接続構造を示すと、図6(ハ)に示すように、第2這い樋7の底面に通孔が設けられ、この通孔にドレン85が取り付けられ、このドレン85が竪樋8が取り付けられ、この竪樋8は下方の部屋12の壁に沿って取り付けられている。
なお、バルコニーの下方に部屋がない場合には、図6(ロ)に示すように、第2這い樋7の軒元に竪樋8を接続し、この竪樋8を建物本体1の1階の部屋17の壁に沿って設けると、竪樋8を設置し易い。
【0043】
このように、第2這い樋7は、第1這い樋6に略直角に軒元近傍から軒先近傍まで設けられているので、上記のように、バルコニー3の下方に部屋12がある場合には、軒先近傍に竪樋8を接続することにより、バルコニー3の上に降った雨水をバルコニー3の下方の部屋12を通すことなく、下方に流し落とすことができるし、部屋12の壁に沿って竪樋8を設けることにより、竪樋8を設置し易いし、又、バルコニーの下方に部屋がない場合には、この竪樋8を第2這い樋7の軒元近傍にで接続し建物本体1の部屋の壁に沿って設けることにより、竪樋8を設置し易い。
【0044】
このように、バルコニー3の下方に部屋があってもなくても、同じ構造のバルコニー3を使用することができるので、バルコニー3を大量生産することができ、バルコニー3を低コストで製造することができる。
次に、このバルコニー2の施工方法及び作用について説明する。
工場で、略四角形に組み立てられたバルコニー梁41の上にバルコニー下地材42を架け渡して取り付け、このバルコニー下地材42の上に勾配断熱材43を設け、この上にバルコニー床材44を設け、この上に防水シート45を設け、一方の側縁に補助梁48を取り付けて、バルコニー床4を製造する。そして、この防水シート45の上に保水性床材46を取り付ける。
【0045】
次に、このバルコニー4の軒先のバルコニー梁41やと両側のバルコニー梁41と補助梁48の上に手摺りスタッド51を立設し、この手摺りスタッド51の屋外側に防虫通気材52を介して外壁サイデイング53を取り付け、屋内側に防虫通気材54を介して内壁サイデイング55を取り付け、手摺りスタッド51の上端に防水シート笠木受け材56を取り付け、この防水シート笠木受け材56に防水シート57を取り付け、この防水シート57の上に笠木58を取り付けて、バルコニー床4に手摺り5を設ける。
このようにして、バルコニー床4と手摺り5からなるバルコニーユニットを製造する。
【0046】
このようにして製造したバルコニーユニットを施工現場に運搬する。
施工現場では、建物本体1を施工し、この建物本体1の開口部11の下方にある梁21に、バルコニーユニットの軒元のバルコニー梁41を取り付ける。
そして、この梁21とバルコニー梁41の上に第1這い樋6を取り付け、一方の側に設けられている梁41と補助梁48の上に第2這い樋7を取り付け、この第1這い樋6と第2這い樋7とを接続する。又、第2這い樋7の軒元近傍に竪樋8を取り付ける。
【0047】
この際、この第1這い樋6内側面に設けられている軟質ポリ塩化ビニルシート62の軒先側を防水シート45の下側に差し込み、軒元側を建物本体1の外壁材15の内側に差し込む。又、第2這い樋7の内側の軟質ポリ塩化ビニルシート72をバルコニー床材4の防水シート45の下側に差し込み、外側のポリ塩化ビニルシート72を手摺り5の内壁サイデング55の内側に差し込む。
また、第1這い樋6の開口に孔付き蓋9を取り付けたり、第2這い樋7の開口に蓋95を取り付けたり、その他種々な仕上げを行うと、バルコニー2の取付施工が完成する。
【0048】
このようにして完成した建物Hでは、バルコニー床4の上に降った雨水が、バルコニー床4の上の防水シート45の上を流れ、第1這い樋6に流れ込み、この第1這い樋6に接続されている第2這い樋7を経て竪樋8を伝って下方に流れ落ちる。
バルコニー床4は、軒先が高く軒元に行くに従って次第に低いので、バルコニー3の下方に設ける部屋12の天井を低くする必要がなく、バルコニーの下方に設けた部屋12の居住性が悪くならない。
【0049】
また、第1這い樋6は、建物本体1に沿った軒元近傍にあるので、バルコニー床4の防水シート45を第1這い樋6までに設ければよく、バルコニー床4の防水シート45を建物本体1に取り付ける必要がない。従って、バルコニー3や建物本体1が振動しても、防水シート45が破損したり、防水シート45が建物本体1から剥がれることがない。
【0050】
また、バルコニー床4と屋内側の部屋2との間には第1這い樋6があって離れているし、バルコニー床4の上に設けられている保水性床板46は、柔らかく雨水が跳ね上がり難いので、バルコニー床4の上に降った雨水が開口部11を通って内側の部屋2の中に浸入し難い。
また、バルコニー床4の軒元に沿って第1這い樋6があるので、この第1這い樋6の軟質ポリ塩化ビニルシート62を建物本体1の屋内側の壁に取り付けるだけで、防水することができ、防水構造の納まりが簡単になり施工し易い。
【0051】
また、この開口部11に取り付けられたスライド窓13の下部には、掃出口19が設けられているので、屋内側の部屋を掃除する際に、この掃出口19から第1這い樋やバルコニー床の上に、ゴミを掃き出すことができ、掃除し易い。
第1這い樋6は、上面が開口している溝形体であり、この開口には、孔付き蓋9が設けられているので、バルコニー3の上に降った雨水が孔付き蓋9の孔911を通って第1這い樋6の中に落下する。
【0052】
この際、大きなゴミは、孔付き蓋9の孔911に引っ掛かって、孔付き蓋9から下方の第1這い樋6の中に流れなくなっていて、第1這い樋6やこの第1這い樋6に接続されている第2這い樋7の中に入らなく、雨水が流れ易い。
また、この保水性床板46の上面と建物本体1の開口部11の屋内側の部屋2の床面とが略同じ高さになされているので、開口部11の敷居や第1這い樋6を跨いで、開口部11の内側からバルコニー3に出入し易い。
【0053】
この際、この第1這い樋6の溝形状の開口には孔付き蓋9が設けられていて、バルコニー床4の上を歩行する人の足が第1這い樋6の中に入ることがなく、安心してバルコニー3に出入することができる。
また、バルコニー床4には、保水性床板46が設けられているので、雨が降ったときに、この保水性床板46に多量の水が含まれ、この水が蒸発する際に多量の熱を奪って、開口部11の屋内側の部屋2や下方の部屋12が涼しくなる。そして、保水性床板46の水がなくなっても、この保水性床板46が直射日光を遮り、バルコニー床4の温度上昇を押さえる。従って、このバルコニー3の下方の部屋12の温度が上昇し難く、涼しい居住性のよい部屋となる。
【0054】
なお、保水性床板46が乾燥した後でも、水の蒸発によって開口部11の屋内側の部屋2や下方の部屋12を涼しくしたいときには、この保水性床板46の上に散水すれば、保水性床板46が水を大量に含み、長時間、開口部11の屋内側の部屋2や下方の部屋12を涼しくすることができる。
また、防水シート45の上に保水性床板46があるので、この保水性床板46の上を人が歩いても、防水シート45が痛まない。
【0055】
以上、この発明の実施の形態を実施例及び図面により詳述したが、具体的な構成は実施例に限られるものでなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の変更等があっても、この発明に含まれる。
例えば、窓の下部の掃出口は、通常の掃出レールと掃出窓サッシの組み合わせでもよい。
また、バルコニーの下方に、バルコニーの巣へい面と略同じ高さの部屋が設けられているが、この部屋の大きさは適宜でよい。例えば、バルコニーの水平面より大きな部屋であってもよいし、半分程度の大きさであってもよい。又この部屋はなくてもよい。
また、バルコニーには手摺りが設けられているが、この手摺りはなくてもよい。
また、建物本体は特に限定しない。例えば、木質系でもよいし、鉄筋コンクリート系でもよい。又、現地で施工する従来型の建物であってもよいし、組立建物でもよいし、ユニット建物でもよい。
【0056】
【発明の効果】
以上説明してきたように、請求項1に記載の発明は、建物本体の開口部の屋外側に設けられたバルコーであって、前記バルコニーには、軒先が高く軒元に行くに従って次第に低い上面を有するバルコニー床と、建物本体に沿った軒元近傍の第1這い樋と、この第1這い樋に略直角な軒元近傍から軒先近傍までの第2這い樋と、竪樋とが設けられ、第1這い樋がバルコニー床の上を流れる水を受け、第2這い樋が第1這い樋に接続され、竪樋が第2這い樋に接続されているから、バルコニー床の上に降った雨水は、第1這い樋に流れ込み、この第1這い樋から第2這い樋を経て竪樋に流れ、この竪樋を伝って下方に流れ落ちるし、バルコニーの下方に設ける部屋の天井を低くする必要がなく、従って、バルコニーの下方の部屋の居住性が悪くならない。
【0057】
また、バルコニー床の防水シートを建物本体に取り付ける必要がなく、バルコニーが振動しても、防水シートが破損したり防水シートが建物本体の壁から剥がれないし、バルコニー床の上に降っ雨水がバルコニー床の上で跳ねても、略第1這い樋だけ離れている開口部を通って内側の部屋の中に浸入し難い。
また、軒先から軒元までに到る第2這い樋の適宜場所に竪樋を設けることができ、その結果、バルコニーの下方に部屋があってもなくしも、略同じ構造のバルコニーを使用することができる。従って、バルコニーを大量生産することができ、バルコニーを低コストで製造することができる。
【0058】
請求項2記載の発明は、請求項1記載の発明に係り、前記バルコニー床の軒元の上面が開口部の屋内側の部屋の床面と略同じ又は若干低く、この屋内側の部屋の壁の下部又は開口部に取り付けられた窓の下部には、掃出口が設けられているから、バルコニーの床が低くなっているだけバルコニー床の上に降った雨水が跳ねても屋内側の部屋に浸入し難いし、屋内側の壁に別の防水シート等を取り付けるだけで、防水することができ、防水構造にする納まりが簡単になり施工し易いし、屋内側の部屋を掃除した際に、この壁又は開口部に取り付けられた窓の掃出口から第2這い樋やバルコニー床の上に、ゴミを掃き出すことができ、掃除し易い。
【0059】
請求項3記載の発明は、請求項1記載の発明に係り、前記第1這い樋は、上面が開口している溝形体であり、この開口には、孔付き蓋が設けられているから、バルコニーの上に降った雨水が孔付き蓋の孔を通って第1這い樋の中に落下する際に、大きなゴミは、孔付き蓋の孔に引っ掛かって、孔付き蓋から下方の第1這い樋の中に入らず、雨水が流れ易い。
しかも、この第1這い樋の溝形状の開口には孔付き蓋が設けられていて、バルコニー床の上を歩行する人の足が這い樋の中に入ることがなく、安心してバルコニーに出入することができる。
【0060】
請求項4記載の発明は、請求項1記載の発明に係り、前記バルコニー床の軒元の上面が開口部の屋内側の部屋の床面より若干低く、このバルコニー床に保水性床板が設けられ、この保水性床板の軒元の上面と開口部の屋内側の部屋の床面とが略同じ高さになされているから、保水性床板の上に降った雨水が跳ねないし、この保水性床板が多量の水を含んでいて、この水が蒸発する際に多量の熱を奪って、開口部の屋内側の部屋や下方の部屋が涼しくなる。そして、保水性床板の水がなくなっても、この保水性床板が直射日光を遮り、このバルコニーの下方に部屋の温度が上昇し難く、涼しい居住性のよい部屋となる。
【0061】
なお、保水性床板が乾燥した後でも、水の蒸発によって開口部の屋内側の部屋や下方の部屋を涼しくしたいときには、この保水性床板の上に散水すれば、保水性床板が水を大量に含み、長時間、開口部の屋内側の部屋や下方の部屋を涼しくすることができる。
また、この保水性床板の上面と建物本体の開口部の屋内側の床面とが略同じ高さになされているので、開口部の敷居や第1這い樋を跨いで、開口部の内側からバルコニーに出入し易い。
また、バルコニー床の上面が防水シートである場合には、この防水シートの上の保水性床板の上を歩くことになり、防水シートが痛まない。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例を示すもので、建物を示す斜視図である。
【図2】バルコニーの平面図である。
【図3】図2のA−A線における断面図である。
【図4】図2のB−B線における断面図である。
【図5】図2のC−C線における断面図である。
【図6】(イ)は竪樋と第2這い樋との接続位置を示す正面図、(ロ)は竪樋と第2這い樋との接続位置の別の例を示す正面図、(ハ)は竪樋と第2這い樋の接続部近傍を示す断面図である。
【図7】(イ)は第1這い樋を示す断面図、(ロ)は孔付き蓋の断面図である。
【符号の説明】
H 建物
1 建物本体
11 開口部
12 バルコニーの下方の部屋
13 スライド窓
19 掃出口
2 開口部の屋内側の部屋
3 バルコニー
4 バルコニー床
45 防水シート
46 保水性床材
5 手摺り
6 第1這い樋
7 第2這い樋
8 竪樋
9 孔付き蓋

【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物本体の開口部の屋外側に設けられたバルコーであって、前記バルコニーには、軒先が高く軒元に行くに従って次第に低い上面を有するバルコニー床と、建物本体に沿った軒元近傍の第1這い樋と、この第1這い樋に略直角な軒元近傍から軒先近傍までの第2這い樋と、竪樋とが設けられ、第1這い樋がバルコニー床の上を流れる水を受け、第2這い樋が第1這い樋に接続され、竪樋が第2這い樋に接続されていることを特徴とするバルコニー。
【請求項2】
前記バルコニー床の軒元の上面が開口部の屋内側の部屋の床面と略同じ高さ又は若干低く、この屋内側の部屋の壁の下部又は開口部に取り付けられた窓の下部には、掃出口が設けられていることを特徴とする請求項1記載のバルコニー。
【請求項3】
前記第1這い樋は、上面が開口している溝形体であり、この開口には、孔付き蓋が設けられていることを特徴とする請求項1記載のバルコニー。
【請求項4】
前記バルコニー床の軒元の上面が開口部の屋内側の部屋の床面より若干低く、このバルコニー床に保水性床板が設けられ、この保水性床板の軒元の上面と開口部の屋内側の部屋の床面とが略同じ高さになされていることを特徴とする請求項1記載のバルコニー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2004−293145(P2004−293145A)
【公開日】平成16年10月21日(2004.10.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2003−86437(P2003−86437)
【出願日】平成15年3月26日(2003.3.26)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)