説明

バルブ組立用治具

【課題】増締めや分解時に部品に傷を付けず、組み付け寸法等のばらつきを低減し、且つ作業の迅速化に寄与する治具の実現。
【解決手段】
容器の注入口に当接して飲料を注入するバルブユニット10のバルブ開口部16,17において、中空の弁軸部18に対して当該弁軸部の中空部分を開閉する弁機構29の組付又は分解を行うためのバルブ組立用治具であって、前記バルブ開口部が上方に向いた状態でバルブ本体11を治具本体に位置決めして固定するクランプ部44と、締め付け具に係合する形状部62と、前記弁機構の一部に係合し前記締め付け具により前記弁機構にトルクを付加するための係合部64とを有するアダプタ60と、を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ライン上を連続的に搬送される複数の空缶にビールや発泡性飲料等を充填していくフィラーに搭載されるバルブユニットの構成部品を組み付けるためのバルブ組立用治具に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1には、ボールバルブの弁箱のステム孔にステムを自動装着するバルブ組立装置が記載されている。また、特許文献2には、ライン配管が加圧状態のままバルブの分解、修理を行う治具が記載されている。また、特許文献3には、工具を用いずに、弁体がケース本体に対して着脱自在なバタフライバルブ装置が記載されている。
【特許文献1】特開平05−057536号公報
【特許文献2】特開2003−097761号公報
【特許文献3】特開2000−257726号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
従来のバルブユニットに対する構成部品の組み付けは、専用工具を用いて熟練者が行っているが、現状では2人の熟練者が手作業で行うため締め付けトルクや組み付け寸法等にばらつきが生じてしまう。また、不安定な状態で増締めを行うため部品に傷等が付いてしまう。このような締め付けトルクのばらつきや傷はバルブ開度が変動する要因となり、例えば、缶に注入されるビールの入味量のばらつきを招く。
【0004】
本発明は、上記課題に鑑みてなされ、その目的は、増締めや分解時に部品に傷を付けず、組み付け寸法等のばらつきを低減し、且つ作業の迅速化に寄与する治具を実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上述の課題を解決し、目的を達成するため、本発明に係るバルブ組立用治具は、容器の注入口に当接して飲料を注入するバルブユニット10のバルブ開口部16,17において、中空の弁軸部18に対して当該弁軸部の中空部分を開閉する弁機構29の組付又は分解を行うためのバルブ組立用治具であって、前記バルブ開口部が上方に向いた状態でバルブ本体11を治具本体に位置決めして固定するクランプ部44と、締め付け具Lに係合する形状部62と、前記弁機構の一部に係合し前記締め付け具により前記弁機構にトルクを付加するための係合部64とを有するアダプタ60と、を有する。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、増締めや分解時に部品に傷を付けず、組み付け寸法等のばらつきを低減し、且つ作業の迅速化に寄与する治具を実現できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
以下に、本発明の実施の形態について、添付図面を参照して詳細に説明する。
尚、以下に説明する実施の形態は、本発明の実現手段としての一例であり、本発明は、その趣旨を逸脱しない範囲で下記実施形態を修正又は変形したものに適用可能である。
【0008】
[バルブユニットの構成]
図1は、本実施形態のバルブ組立用治具により組み付けられるバルブユニットの全体構成を示す側断面図である。
【0009】
本実施形態のバルブユニット10は、例えば、ライン上を連続的に搬送される複数の空缶にビールや発泡性飲料等を充填していくフィラーと呼ばれるビール充填装置(不図示)に搭載される。
【0010】
図1に示すように、11は中空円筒状の外形を有するバルブ本体である。バルブ本体11の外周面には、バルブ本体11をフィラーに取り付けるための矩形平板状の支持板12が固定されている。この支持板12には、ノズル13により連通又は遮断が切り替えられる流路12aが形成されている。
【0011】
バルブ本体11の下端部の外周面には、缶等の容器の注入口に当接する円筒状の缶口部材14が固定されている。また、缶口部材14の環状の先端フランジ面には全周に亘って溝14aが形成されており、この溝14aに樹脂製のシール材15が圧入され、容器の注入口に当接し密閉する。缶口部材14の側面には、バルブ本体11を上下方向に作動させる駆動軸(図3参照)が接続されるアーム部14bが形成されている。
【0012】
一方、バルブ本体11の下端部の内周面には、バルブ開口部を形成するバルブシート16が固定されている。更に、バルブシート16のバルブ開口部には、リキッドコーンと呼ばれる円錐状の弁部材17が設けられている。弁部材17は、バルブ本体11内を貫通して鉛直上方に延びる中空円筒状のハウジング20の下端部に螺合されて固定されている。19は不使用時に保護や衛生上の目的で缶口部材14の先端面を覆う着脱可能なカバー部材である。
【0013】
ハウジング20の内部には中空状の弁軸部材18が収容されており、この弁軸部材18の上端部の外周面に設けられたスプリング21,22及びスペーサ23により中立位置に付勢されている。また、ハウジング20は、バルブ本体11の上端部の内周面に対して所定距離だけスライド可能であり、ハウジング20の外周面に設けられたスプリング24により付勢されている。また、弁軸部材18は、上部ストッパ25及び下部ストッパ26により上方への移動が規制され、下部ストッパ26により下方への移動が規制される。弁部材17は、ハウジング20がバルブ本体11の内周面に対して相対的に鉛直軸方向に往復動作することにより弁部材17を駆動してバルブシート16のバルブ開口部を開閉する。
【0014】
ハウジング20の上端部に取り付けられたプレッシャキャップ30から上方に延びる弁軸部材18の上端部には、吸盤状のリッドシール27がナット28により固定されている。また、弁軸部材18の下端部には、上下方向に所定距離だけ浮動可能な球体29aを有する弁機構29が取り付けられ、容器内に注入された液体の液面が缶口部材14に近づくにつれて球体29aが上昇し、液面が所定位置になったときに弁軸部材18の下端開口部を閉塞することで弁軸部材18の中空孔18aの連通が遮断される。弁機構29の端部には棒状の保持部29bが装着され、球体29aを弁機構29の端部から脱落しないように保持する。
【0015】
[治具の構成]
図2は、本発明に係る実施形態のバルブ組立用治具の正面図である。
【0016】
図2に示すように、本実施形態のバルブ組立用治具は、基板41と、基板41から上方に延びる4本の脚部42と、脚部42の上端部で上下反転された状態のバルブユニット10の支持板12を位置決めする固定台43と、バルブユニット10の支持板12を固定台43に固定するクランプ部44と、固定台43下方の脚部42に設けられ、上下反転された状態のバルブ本体11の上端部(使用状態)に位置するハウジング20aに当接して保持する保持部45と、脚部42から固定台43の上方に延びて上端部が水平方向に折曲げられたアーム部46と、アーム部46に対して上下方向に移動可能に支持された押圧部47と、を備える。
【0017】
基板41、脚部42、固定台43、及びアーム部46は金属製であり、固定台43の上面及び保持部45は夫々支持板12及びバルブ本体11との滑りを良くするためにナイロン樹脂等で構成される。クランプ部44は固定台43に固定されており、作業者が操作可能なレバー48を有する。
【0018】
固定台43には、バルブユニット10の支持板12と略同じ寸法(幅、長さ及び厚さ)の凹状の収容部が形成されている。この収容部は、バルブユニット10の支持板12と略同じ長さ及び厚さの対向する側壁部43aと略同じ幅及び厚さの後壁部43bとで囲まれたスペースとして形成されている。更に、各側壁部43aには、バルブユニット10の支持板12の浮きを抑える浮き止め板43cが形成されている。
【0019】
図3は、組付用アダプタの構成を示す上面図(a)及び側面図(b)である。
【0020】
図3に示すように、組付用アダプタ60は、弁機構29を弁軸部材18に螺合する際に使用される部品であり、円柱状のアダプタ本体61の一端部には、アダプタ60をレンチ等で回転させるための矩形状の穴部62が形成されている。また、アダプタ本体61の他端部は、弁機構29の内径部分に挿通可能な小径の軸部63が延設されている。また、軸部63の端部には弁機構29の球体29aを保持する保持部29bに係合する溝部64が形成されている。
【0021】
[組付・分解手順]
次に、図2を参照して、本実施形態のバルブ組立用治具を用いてバルブユニット10に対する弁機構29の組付及び分解を行う手順について説明する。
【0022】
図2に示すように、弁部材17がバルブシート16に接触しない状態でバルブユニット10の支持板12をクランプ部44で固定台43に固定する。この状態で、保持部45がバルブ本体11を上方に押圧し、弁部材17がバルブシート16に接触しない開成状態となる。
【0023】
次に、弁機構29を弁軸部材18に手作業等で仮に螺合させた状態で、アダプタ60を弁機構29の保持部29bに係合させ、トルクレンチL等で回転させることで弁機構29を所定のトルクで締め付け或いは緩めることができる。
【0024】
これにより、増締めや分解時に部品に傷を付けず、組み付け寸法等のばらつきを低減し、且つ作業を迅速化することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本実施形態のバルブ組立用治具により組み付けられるバルブユニットの全体構成を示す側断面図である。
【図2】本発明に係る実施形態のバルブ組立用治具の側面図である。
【図3】組付用アダプタの構成を示す上面図(a)及び側面図(b)である。
【符号の説明】
【0026】
10 バルブユニット
11 バルブ本体
12 支持板
13 ノズル
14 缶口部材
15 シール材
16 バルブシート
17 弁部材
18 弁軸部材
19 カバー部材
20 ハウジング
21,22,24 スプリング
23 スペーサ
25,26 ストッパ
27 リッドシール
28 ナット
29 弁機構
30 プレッシャキャップ
42 脚部
43 固定台
44 クランプ部
45 保持部
48 レバー
60 組付用アダプタ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器の注入口に当接して飲料を注入するバルブユニットのバルブ開口部において、中空の弁軸部に対して当該弁軸部の中空部分を開閉する弁機構の組付又は分解を行うためのバルブ組立用治具であって、
前記バルブ開口部が上方に向いた状態でバルブ本体を治具本体に位置決めして固定するクランプ部と、
締め付け具に係合する形状部と、前記弁機構の一部に係合し前記締め付け具により前記弁機構にトルクを付加するための係合部とを有するアダプタと、を有することを特徴とする治具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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