説明

バルーンカテーテル

【課題】
本発明は、アウターシャフトの軸方向及び円周方向の何れの方向に対しても剛性の所望の剛性が確保でき、耐キンク性の高いバルーンカテーテルを提供することを目的とする。
【解決手段】
バルーンカテーテル10は、バルーン20の少なくとも一部が取り付けられ、バルーン20を拡張するための流体を供給する拡張ルーメンを構成する管状のアウターシャフト30と、少なくとも一部がアウターシャフト30の内部に配置された、ガイドワイヤを挿通させるための管状のインナーシャフト50と、アウターシャフト30内で軸方向に延びると共に、所定の間隔をもって配置された線状の部材からなり、少なくとも1本が他のものと異なる第1、第2、第3コアワイヤ81,82,83とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、血管等の体腔内の狭窄部等を拡張するために使用されるバルーンカテーテルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、血管等の体腔内の狭窄部等を拡張するためにバルーンカテーテルが用いられている。バルーンカテーテルは、主に、拡張体であるバルーンと、アウターシャフトと、この内部に配置されたインナーシャフトからなる。インナーシャフトは、ガイドワイヤを挿通させるためのものであり、アウターシャフトは、インナーシャフトとの間に設けられた拡張ルーメンを通してバルーンを拡張するための造影剤や生理食塩水等の液体を流通させるためのものである。
【0003】
このようなバルーンカテーテルは、先端に向かって柔軟となるように剛性を調整する必要がある。また、外力等が作用した際にアウターシャフトがつぶれたり、捻れたりし難い性質である耐キンク性を向上させるために、アウターシャフトの円周方向の剛性が必要である。
【0004】
従来、バルーンカテーテルの剛性を軸方向に変化させるために、アウターシャフト内にコアワイヤを有するものがある(例えば、下記特許文献1〜5参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2002−291899号公報
【特許文献2】特表2002−505166号公報
【特許文献3】特表2003−517901号公報
【特許文献4】特表平8−500505号公報
【特許文献5】特表平9−503411号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記したコアワイヤを備えたバルーンカテーテルでは、アウターシャフトの軸方向の剛性の調整には一定の効果があるものの、アウターシャフトの円周方向の剛性を向上させるには十分では無いため、耐キンク性を更に向上させたいという要求がある。
【0007】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたものであり、アウターシャフトの軸方向及び円周方向の何れの方向に対しても剛性の所望の剛性が確保でき、耐キンク性の高いバルーンカテーテルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願発明では、上記の課題は以下に列挙される手段により解決がなされる。
【0009】
<1>バルーンと、前記バルーンの少なくとも一部が取り付けられ、前記バルーンを拡張するための流体を供給する拡張ルーメンを構成する管状のアウターシャフトと、少なくとも一部が前記アウターシャフトの内部に配置された、ガイドワイヤを挿通させるための管状のインナーシャフトと、前記アウターシャフト内で軸方向に延びると共に、所定の間隔をもって配置された線状の部材からなり、少なくとも1本が他のものと異なる複数のコアワイヤとを備えることを特徴とするバルーンカテーテル。
【0010】
<2>前記複数のコアワイヤは少なくとも3本であり、隣接する前記コアワイヤの間隔が互いに異なることを特徴とする態様1に記載のバルーンカテーテル。
【0011】
<3>前記アウターシャフトの側方には、前記インナーシャフトの後端が接続されることによって形成されたガイドワイヤポートを有し、前記複数のコアワイヤの内、少なくとも1本は、前記アウターシャフトの中心軸に対して前記ガイドワイヤポートと反対側に配置されると共に、先端部が前記アウターシャフトの後端側から前記ガイドワイヤポートを越えて先端側へ延びていることを特徴とする態様1又は2に記載のバルーンカテーテル。
【0012】
<4>前記複数のコアワイヤの内、少なくとも1本の先端部は、前記アウターシャフト及び前記インナーシャフトの少なくとも一方に固定されていることを特徴とする態様1から3の何れか1項に記載のバルーンカテーテル。
【0013】
<5>前記複数のコアワイヤの内、少なくとも1本は、複数の素線を撚り合わせてなる撚り線であることを特徴とする態様1から4の何れか1項に記載のバルーンカテーテル。
【発明の効果】
【0014】
<1>本発明のバルーンカテーテルは、アウターシャフト内に所定の間隔をもって配置された複数のコアワイヤを設けたために、軸方向だけで無く、周方向の剛性も確保される。このためバルーンカテーテルの耐キンク性が向上する。また、各コアワイヤは線状の部材からなるため、複数配置したとしても柔軟性が劣化することを防止できる。
【0015】
また、本発明のバルーンカテーテルは、複数のコアワイヤの内、少なくとも1本は他のものと異なるものとしている。即ち、少なくとも1本のコアワイヤは、他のコアワイヤと、例えば長さ、太さ、形状、及び材質等の少なくとも1つの要素は異なっている。このためアウターシャフト内のインナーシャフトとコアワイヤの位置関係等を考慮して、アウターシャフトの円周方向の剛性を高めつつ、バルーンカテーテルのバランスを良好にすることができる。また、バルーンカテーテルを所望の方向に屈曲し易いように剛性を調整することができる。
更に、複数のコアワイヤを設けたために、医師等の手技者が、バルーンカテーテルを後端側から先端側に向かって押す、押し込み力の伝達性を高めることができる。
【0016】
<2>本発明の態様2では、複数のコアワイヤの内の少なくとも1本のコアワイヤを他のコアワイヤと異なるものするだけでなく、コアワイヤの数を少なくとも3本とし、隣接するコアワイヤの間隔が互いに異なるものとしている。このため、更に詳細に、アウターシャフト内のインナーシャフト等の他の部材との釣り合いを考慮して、軸方向と円周方向の両方向に対して、所望の剛性を有するバルーンカテーテルを作成することができる。よって、バルーンカテーテルの操作性が一層向上する。また、バルーンカテーテルを所望の方向に屈曲し易いように剛性を調整することができる。
【0017】
<3>本発明の態様3では、複数のコアワイヤの内、少なくとも1本は、アウターシャフトの中心軸に対してガイドワイヤポートと反対側に配置されると共に、先端部がアウターシャフトの後端側からガイドワイヤポートを越えて先端側へ延びている。このため、インナーシャフトにガイドワイヤが挿入された状態でバルーンカテーテルが操作される際に、インナーシャフトがガイドワイヤによって、ガイドワイヤポート側に偏倚しても、インナーシャフトとコアワイヤとが釣り合い、操作性が向上する。
【0018】
<4>本発明の態様4では、複数のコアワイヤの内、少なくとも1本の先端部は、アウターシャフト及びインナーシャフトの少なくとも一方に固定されている。このため、アウターシャフトの円周方向の剛性を高めることができるだけでなく、手技者がバルーンカテーテルを近位側から軸方向に押した際の押し込み力の伝達性を一層高めることができる。
【0019】
<5>本発明の態様5では、複数のコアワイヤの内、少なくとも1本は、複数の素線を撚り合わせてなる撚り線からなっている。このため、コアワイヤの柔軟性を高めることができるため、バルーンカテーテルの柔軟性を維持しつつ、耐キンク性を向上させることができる。即ち、1本の線材からなる複数のコアワイヤを有する場合よりも柔軟性が向上すると共に、バルーンカテーテルの使用時に外力がアウターシャフトに作用してもアウターシャフトがつぶれることや、折れ曲がることを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1は、本実施の形態のバルーンカテーテルの全体図である。
【図2】図2は、図1のII−II方向から見た図である。
【図3】図3は、図2のIII−III方向から見た図である。
【図4】図4は、他の実施の形態を示した図である。
【図5】図5は、複数のコアワイヤの組み合わせに関する他の実施の形態を示した図である。
【図6】図6は、複数のコアワイヤの組み合わせに関する更に他の実施の形態を示した図である。
【図7】図7は、コアワイヤの他の実施の形態を示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本実施の形態のバルーンカテーテルを図1〜図3を参照しつつ説明する。図1及び図3において、図示左側が体内に挿入される先端側(遠位側)、右側が医師等の手技者によって操作される後端側(近位側、基端側)である。
【0022】
バルーンカテーテル10は、例えば、心臓の血管の閉塞部や狭窄部等の治療に用いられるものであり、全長が約1500mm程度のものである。
バルーンカテーテル10は、主にバルーン20、アウターシャフト30、インナーシャフト50、コネクタ60、及び第1、第2、第3コアワイヤ81,82,83からなる。
【0023】
バルーン20は、樹脂製の部材であり、軸線方向中央にバルーン20が拡張するための拡張部21と、先端側に先端取付部22、後端側に後端取付部23を有している。
【0024】
先端取付部22は、インナーシャフト50の先端部分(チップ59を含む)に固着されている。
後端取付部23は、アウターシャフト30の先端部分の外周面に固着されている。
【0025】
アウターシャフト30は、バルーン20を拡張するための流体を供給するための拡張ルーメン36を構成する管状の部材である。アウターシャフト30は、先端側に位置する先端アウターシャフト部31と後端側に位置する後端アウターシャフト部37とからなる。先端アウターシャフト部31は樹脂製のチューブである。先端アウターシャフト部31を構成する樹脂には、例えば、ポリアミド、ポリアミドエラストマー、ポリオレフィン、ポリエステル、ポリエステルエラストマー等が用いられる。
【0026】
先端アウターシャフト部31の遠位端の外周には、バルーン20の後端取付部23が固着されている。本実施の形態の場合、後端取付部23は、先端アウターシャフト部31の先端の外周面に固着されているが、先端アウターシャフト部31の先端の内周面に固着しても良い。
【0027】
先端アウターシャフト部31は、インナーシャフト50を収納する。インナーシャフト50の後端は、先端アウターシャフト部31の側面に取り付けられており、この取付部分に後端側ガイドワイヤポート54が形成されている。先端アウターシャフト部31とインナーシャフト50の間の空間は、拡張ルーメン36の先端部分を構成する先端拡張ルーメン36aとなっている。
【0028】
拡張ルーメン36a内には、後述する第1、第2、第3コアワイヤ81,82,83が挿入されている。
【0029】
先端アウターシャフト部31の外径は、本実施の形態の場合、約0.80mm〜約0.95mmに設定され、約0.84mmである。先端アウターシャフト部31の内径は、本実施の形態の場合、約0.70mm〜約0.85mmに設定され、約0.73mmである。
【0030】
後端アウターシャフト部37は、所謂ハイポチューブと呼ばれる金属製の管状部材である。後端アウターシャフト部37の先端部は、先端アウターシャフト部31の後端部に挿入されて固着されている。後端アウターシャフト部37の内部に形成された後端拡張ルーメン36bは、上記した先端拡張ルーメン36aと共に拡張ルーメン36を構成している。
【0031】
後端アウターシャフト部37の後端には、コネクタ60が取り付けられている。コネクタ60に取り付けられた図示しないインデフレータからバルーン20を拡張するための造影剤や生理食塩水等の液体が供給されると、液体は、拡張ルーメン36を通ってバルーン20を拡張するようになっている。
【0032】
本実施の形態の場合、後端アウターシャフト部37の外径は、約0.60mm〜約0.70mmの範囲に設定されており、約0.69mmである。内径は、約0.45mm〜約0.50mmの範囲に設定されており、約0.48mmである。後端アウターシャフト部37の材料は特に限定されるものではないが、本実施の形態の場合、ステンレス鋼が用いられている。これ以外の材料として、Ni−Ti合金のような超弾性合金等が用いられる。
【0033】
インナーシャフト50は、先端アウターシャフト部31内に収納されている。インナーシャフト50は、先端アウターシャフト部31と同様の樹脂で形成された管状の部材であり、内部にガイドワイヤを挿通させるためのガイドワイヤルーメン51を有している。
【0034】
本実施の形態の場合、インナーシャフト50の外径は、約0.50mm〜約0.60mmの範囲に設定されており、約0.53mmである。内径は、約0.36mm〜約0.45mmの範囲に設定されており、約0.41mmである。
【0035】
インナーシャフト50の後端は、先端アウターシャフト部31の側面に溶着されることによって、後端側ガイドワイヤポート54が形成されている。
【0036】
インナーシャフト50の先端は、先端アウターシャフト部31の先端から延出した延出部52を有している。延出部52は、先端にチップ59を有している。
チップ59は、先端に向かって外径が漸進的に減少するテーパ状の外形を有する部材であり、柔軟な樹脂で形成されている。チップ59は、ガイドワイヤルーメン51の先端部分を構成する筒状の部材であり、先端に先端側ガイドワイヤポート53を有する。
【0037】
インナーシャフト50の延出部52の先端部(チップ59を含む)には、バルーン20の先端取付部22が固着されている。
【0038】
インナーシャフト50の延出部52におけるバルーン20の拡張部21の内部に位置する部分には、所定距離離間した一対の放射線不透過性のマーカ70が取り付けられている。
【0039】
先端アウターシャフト部31の内部には、第1、第2、第3コアワイヤ81,82,83が挿入されている。第1、第2、第3コアワイヤ81,82,83は、断面形状が円形であり、先端に向かって細径化された線状の部材である。各コアワイヤ81,82,83の先端は、自由端となっており、後端は、後端アウターシャフト部37の先端部に固着されている。第1コアワイヤ81と第2、3コアワイヤ82,83とは異なるものであり、第2コアワイヤ82と第3コアワイヤ83とは実質的に同じものである。具体的には、第1、第2、第3コアワイヤ81,82,83の材質は同じであるが、第1コアワイヤ81は、第2、3コアワイヤ82,83と比べ、長さと太さが異なっている。
尚、コアワイヤ81,82,83の数は3本に限定されるものでは無く、複数であれば足りる。
【0040】
第1、第2、第3コアワイヤ81,82,83の材質は、特に限定されるものでは無いが、本実施の形態の場合、金属製の線材である。金属の種類も特に限定されるものではないが、本実施の形態の場合、ステンレス鋼(SUS304)が用いられている。これ以外の材料としてNi−Ti合金のような超弾性合金やピアノ線等が用いられる。また、金属以外にも樹脂製の線材を用いることができる。また、本実施の形態では、第1、第2、第3コアワイヤ81,82,83は同じ材質であるが、コアワイヤ毎に異なる材質を用いることもできる。
【0041】
図2に示すように、第1、第2、第3コアワイヤ81,82,83は、アウターシャフト30の中心軸Aを中心として等しい角度θ1(=120°)間隔で配置されている。
【0042】
第1コアワイヤ81は、アウターシャフト30の中心軸Aに対して後端側ガイドワイヤポート54と対向する位置で、且つ、第2、第3コアワイヤ82、83の間に配置されている。第1コアワイヤ81は、第2、第3コアワイヤ82、83よりも長く、太いコアワイヤである。第1コアワイヤ81の長さは、後端側ガイドワイヤポート54を越えて先端側へ延びるように設定されており、本実施の形態の場合、190mmとなっている。また、第1コアワイヤ81の直径D1は、本実施の形態の場合、先端方向に向けて約0.20mmから約0.10mmに減少している。
【0043】
第2、3コアワイヤ82,83は、同じ長さと太さを有している。第2、3コアワイヤ82,83の長さは、後端側ガイドワイヤポート54を越えない範囲で、可及的に長く設定されており、本実施の形態の場合、115mmとなっている。また、第2、3コアワイヤ82,83の直径D2,D3は、本実施の形態の場合、何れも先端方向に向けて約0.15mmから約0.08mmに減少している。
【0044】
以上のように、第1、第2、第3コアワイヤ81,82,83を配置することによって、ガイドワイヤが挿入された際に剛性が高まり、後端側ガイドワイヤポート54側に偏倚する傾向にあるインナーシャフト50と、これと対向する位置に配置された第1コアワイヤ81が先端アウターシャフト部31内で均衡を保つようになっている。また、インナーシャフト50が存在しない、先端アウターシャフト部31の後端側ガイドワイヤポート54より後方では、第2、3コアワイヤ82,83が存在することによって、先端アウターシャフト部31の円周方向の剛性を高めるようになっている。このように、第1、第2、第3コアワイヤ81,82,83がインナーシャフト50との位置関係を考慮しつつ、円周方向に均等に配置されるため、バルーンカテーテル10の重心が安定し、操作性が向上すると共に、先端アウターシャフト部31の耐キンク性を高めることができるようになっている。
【0045】
第1、第2、第3コアワイヤ81,82,83の後端は、後端アウターシャフト部37の先端部にロー付け、又は、レーザによる溶接等により固着されている。図3に示すように、第1、第2、第3コアワイヤ81,82,83を取り付ける後端アウターシャフト部37の先端部には、長方形の切り欠き部90が形成されている。切り欠き部90に第1、第2、第3コアワイヤ81,82,83の後端が嵌め込まれた状態で、ロー付け、又はレーザによる溶接等が行われるようになっている。これによって、第1、第2、第3コアワイヤ81,82,83と後端アウターシャフト部37との接合が容易となるだけでなく、第1、第2、第3コアワイヤ81,82,83の後端部分によって、後端アウターシャフト部37の開口面積が小さくなることを防止するようになっている。
【0046】
尚、後端アウターシャフト部37の開口面積を確保する方法としては、上述した様に、後端アウターシャフト部37に長方形の切り欠き部90を形成する代わりに、第1、第2、第3コアワイヤ81,82,83の各後端部分を研磨する等して薄肉として後端アウターシャフト部37と接合しても良い。
また、複数のコアワイヤを接合しても後端アウターシャフト部37の開口面積が確保できるならば、コアワイヤの後端や後端アウターシャフト部37の先端部に加工を施すことなく直接、コアワイヤの後端を後端アウターシャフト部37の先端部に接合しても良い。
【0047】
以上の構成に基づいて、本実施の形態のバルーンカテーテル10を心臓の冠状動脈にある狭窄部を拡張する手技に用いる場合について説明する。
【0048】
心臓へのバルーンカテーテル10の手技が開始される際には、手首部や大腿部等のバルーンカテーテル10を挿入する箇所には、予め図示しないシースイントロデューサと呼ばれるカテーテル等の医療機器を体内へ案内するための器具が設置されている。また、シースイントロデューサを介して、図示しないガイドワイヤが体内に挿入され、ガイドワイヤの先端は、治療の目標である狭窄部がある心臓の冠状動脈まで達している。バルーンカテーテル10は、このガイドワイヤに沿って体内に挿入される。ガイドワイヤの後端は、バルーンカテーテル10のチップ59の先端側ガイドワイヤポート53から挿入され、インナーシャフト50内のガイドワイヤルーメン51を通過して、後端側ガイドワイヤポート54から延出される。
【0049】
バルーンカテーテル10をガイドワイヤに沿って体内に押し込む際、先端アウターシャフト部31がシースイントロデューサの入り口近傍で撓む場合がある。このような場合でも、先端アウターシャフト部31の周方向に第1、2、3コアワイヤ81,82,83が配設されていることにより、先端アウターシャフト部31の周方向の剛性が高められているため、先端アウターシャフト部31が折れ曲がることや、つぶれることを防止できる。即ち、耐キンク性を向上させることができる。
【0050】
また、バルーンカテーテル10が血管内を進行していく際、後端アウターシャフト部37の近位側から手技者よって与えられる軸方向の力、即ち、押し込み力は、後端アウターシャフト部37から先端アウターシャフト部31へと伝達される。
【0051】
同時に、押し込み力は、後端アウターシャフト部37から後端アウターシャフト部37に取り付けられた第1、第2、第3コアワイヤ81,82,83へ伝達される。これらの複数のコアワイヤ81,82,83により、押し込み力の伝達性を高めることができる。
【0052】
この際、屈曲する血管等をバルーンカテーテル10が通過する場合等、外力がバルーンカテーテル10に作用したとしても第1、第2、第3コアワイヤ81,82,83が先端アウターシャフト部31内のインナーシャフト50との位置関係等を考慮して配置されているため、バルーンカテーテル10のバランスが良好となっている。このため、バルーンカテーテル10の操作性が良く、バルーンカテーテル10を屈曲する血管等に良好に通過させることができる。
【0053】
また、先端アウターシャフト部31の周方向に複数のコアワイヤ81,82,83が存在しているため、先端アウターシャフト部31の周方向の剛性が高くなり、先端アウターシャフト部31が屈曲する血管等を通過する際等に受ける外力によって、つぶれることや、折れ曲がることを防止できる。即ち、耐キンク性を向上させることができる。
【0054】
手技者が放射線透視下において、マーカ70を用いてバルーン20を目的部位である狭窄部に位置決めした後、コネクタ60に接続された図示しないインデフレータから造影剤や生理食塩水等の拡張用の液体が供給される。この時、拡張用の液体は、アウターシャフト30の拡張ルーメン36に流入する。そして、拡張用の液体は、アウターシャフト30の先端アウターシャフト部31の先端から流出し、バルーン20を拡張させる。
【0055】
バルーン20によって狭窄部を拡張する手技が終了すると、手技者は、インデフレータによって、拡張用の液体をバルーン20から排出する。即ち、拡張用の液体は、バルーン20内から流出し、先端アウターシャフト部31の先端拡張ルーメン36aと後端アウターシャフト部37の後端拡張ルーメン36bからインデフレータへ排出される。
この後、バルーンカテーテル10は体外へ引き出されて、手技が終了する。
【0056】
以上述べたように、本実施の形態のバルーンカテーテル10は、アウターシャフト30の周方向に第1、第2、第3コアワイヤ81,82,83を設けたために、軸方向だけで無く、円周方向の剛性も確保される。また、各コアワイヤ81,82,83は線材からなるため、複数配置したとしても柔軟性が劣化することを防止できる。
【0057】
更に、複数のコアワイヤ81,82,83を設けたために、押し込み力の伝達性を高めることができる。また、第1、第2、第3コアワイヤ81,82,83は、先端アウターシャフト部31内のインナーシャフト50との位置関係等を考慮して、長さ、太さ、材質及び形状等を決定し、配置されている。即ち、第1コアワイヤ81はガイドワイヤが挿入されるインナーシャフト50とアウターシャフト30の中心軸Aに対して反対側に配置されている。また、第2、第3コアワイヤ82,83は、インナーシャフト50が存在しない、後端側ガイドワイヤポート54より後方側で、インナーシャフト50と中心軸Aに対して同じ側に配置されている。このような構成により、手技時のバルーンカテーテル10のバランスが良好となり、操作性が向上する。
【0058】
以上述べた実施の形態では、第1、第2、第3コアワイヤ81,82,83は、何れも先端が自由端となっている。しかし、図4に示すように、少なくとも1本のコアワイヤの先端部をアウターシャフト30とインナーシャフト50の少なくとも一方に固定しても良い。図4の例では、第1コアワイヤ81の先端部を先端アウターシャフト部31とインナーシャフト50の両方に接合部100で溶着し、固定した場合を示している。このような構成とすることによって、アウターシャフト30の円周方向の剛性を高めることができるだけでなく、手技者がバルーンカテーテル10を近位側から軸方向に押した際の押し込み力の伝達性を一層高めることができる。特に、この場合では、第1コアワイヤ81はインナーシャフト50に固着されているため、押し込み力をインナーシャフト50の先端であるチップ59まで伝達することができる。
【0059】
以上述べた実施の形態では、第1、第2、第3コアワイヤ81,82,83は、後端アウターシャフト部37の周囲を均等に分割するように円周方向に等しい間隔で配置されている。即ち、第1、第2、第3コアワイヤ81,82,83は120°間隔で配置されている。このような配置は、先端アウターシャフト部31内に第1、第2、第3コアワイヤ81,82,83がバランス良く配置されるため、バルーンカテーテル10の操作性を安定させる上で有効である。特に、上述した実施の形態の場合、最も長い第1コアワイヤ81が後端側ガイドワイヤポート54と対向する位置に配置されているため、インナーシャフト50と第1コアワイヤ81とが先端アウターシャフト部31内で釣り合いを保つため、バルーンカテーテル10の操作性が良好となる。
【0060】
しかし、複数のコアワイヤの配置はこのようなものに限られるものでは無く、各種の態様が採り得る。例えば、図5の実施の形態では、2本のコアワイヤ181、182をアウターシャフト30の中心軸Aに対して後端側ガイドワイヤポート54の反対側に配置すると共に、後端側ガイドワイヤポート54と2本のコアワイヤ181、182が成す角度θ2を等しく120°としている。また、コアワイヤ181の直径をコアワイヤ182の直径よりも大きくしている。このような場合には、先端アウターシャフト部31を一定の方向に屈曲する傾向を持たせることができる。
【0061】
また、図6に示す様に、3本のコアワイヤ281,282,283を太さの異なるものとすると共に、コアワイヤ281,282,283がアウターシャフト30の中心軸Aに対して異なる角度θ3、θ4、θ5を成すように配置しても良い。このように複数のコアワイヤを後端アウターシャフト部37の円周方向に異なる距離で配置することによって、バルーンカテーテル10の円周方向の剛性を変化させることができるため、所望の剛性を有するバルーンカテーテル10を製造することができる。例えば、上記した様に、1本のコアワイヤの先端部を溶着し、接合部100を形成した場合等、先端アウターシャフト部31内に重心の偏倚が生じる場合等は、このように複数のコアワイヤを中心軸Aに対して異なる角度で配置することが有効である。
【0062】
尚、図4〜図6の変形例において、図1〜図3で示した実施の形態と実質的に同じ構成は同じ符号で示している。
【0063】
以上述べたように、複数のコアワイヤの内、少なくとも1本のコアワイヤを他のコアワイヤと異なるものとする方法としては、コアワイヤの長さ、太さ、及び材質を変化させる方法があるが、これ以外にも、コアワイヤの形状を他のコアワイヤの形状と異なるものとしても良い。例えば、上記した第1、第2、第3コアワイヤ81,82,83は何れも、先端に向かって細径化された形状となっているが、1本のコアワイヤを直径が一定の線材から構成しても良い。
【0064】
また、コアワイヤの断面形状も上記したように丸形のみならず、長方形、正方形、及び長円形等の各種の態様が採りうる。
【0065】
更に、上述した実施の形態では、第1、第2、第3コアワイヤ81,82,83は、それぞれ1本の線材から構成されている。しかし、図7に示すように、複数の素線を拠り合せた撚り線から構成しても良い。図7の例では、図7(a)で示される1本のコアワイヤ380が、図7(b)の断面図に示すように、3本の素線380aから構成されている。このようにコアワイヤを撚り線から構成することによって、柔軟性を維持しつつ、耐キンク性を向上させることができる。即ち、1本の線材からなる複数のコアワイヤを有する場合よりも柔軟性が向上する共に、バルーンカテーテル10の使用時に外力が先端アウターシャフト部31に作用しても先端アウターシャフト部31がつぶれることや、折れ曲がることを防止できる。
【0066】
以上述べた実施の形態は、バルーンカテーテル10を心臓の血管の治療に用いるものであるが、下肢の血管や透析のためのシャントを拡張する手技等、各種の手技に用いることができる。
【符号の説明】
【0067】
10 バルーンカテーテル
20 バルーン
30 アウターシャフト
31 先端アウターシャフト部
36 拡張ルーメン
37 後端アウターシャフト部
50 インナーシャフト
51 ガイドワイヤルーメン
54 後端側ガイドワイヤポート
81 第1コアワイヤ
82 第2コアワイヤ
83 第3コアワイヤ
380 コアワイヤ
380a 素線

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バルーンと、
前記バルーンの少なくとも一部が取り付けられ、前記バルーンを拡張するための流体を供給する拡張ルーメンを構成する管状のアウターシャフトと、
少なくとも一部が前記アウターシャフトの内部に配置された、ガイドワイヤを挿通させるための管状のインナーシャフトと、
前記アウターシャフト内で軸方向に延びると共に、所定の間隔をもって配置された線状の部材からなり、少なくとも1本が他のものと異なる複数のコアワイヤと
を備えることを特徴とするバルーンカテーテル。
【請求項2】
前記複数のコアワイヤは少なくとも3本であり、
隣接する前記コアワイヤの間隔が互いに異なることを特徴とする請求項1に記載のバルーンカテーテル。
【請求項3】
前記アウターシャフトの側方には、前記インナーシャフトの後端が接続されることによって形成されたガイドワイヤポートを有し、
前記複数のコアワイヤの内、少なくとも1本は、前記アウターシャフトの中心軸に対して前記ガイドワイヤポートと反対側に配置されると共に、先端部が前記アウターシャフトの後端側から前記ガイドワイヤポートを越えて先端側へ延びていることを特徴とする請求項1又は2に記載のバルーンカテーテル。
【請求項4】
前記複数のコアワイヤの内、少なくとも1本の先端部は、前記アウターシャフト及び前記インナーシャフトの少なくとも一方に固定されていることを特徴とする請求項1から3の何れか1項に記載のバルーンカテーテル。
【請求項5】
前記複数のコアワイヤの内、少なくとも1本は、複数の素線を撚り合わせてなる撚り線であることを特徴とする請求項1から4の何れか1項に記載のバルーンカテーテル。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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