説明

バンドソー

【課題】バンドソーにおいて、帯鋸の周回をガイドさせることができつつ、この帯鋸の周回をガイドさせることによる磨耗を小さくする。
【解決手段】ハウジング11には、ハウジング11に対して相対的に回転することができ、且つ帯鋸Bの帯厚方向から帯鋸Bに当たることにより帯鋸Bの帯厚方向への移動を規制する可動ガイド機構20Aが設けられている。この可動ガイド機構20Aは、ハウジング11にて固定される固定軸21を軸受けするベアリング30にて構成されている。このベアリング30の外輪35には、帯鋸Bの帯幅方向で帯鋸Bが当たりつつハウジング11に対して相対的に動くことができる帯鋸当接部351,352が設けられている。この帯鋸当接部351,352は、帯鋸Bの帯厚方向への移動を規制して帯鋸Bの周回をガイドすることができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無端帯状の帯鋸を周回させることにより切断材を切断するバンドソーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、無端帯状の帯鋸を周回させることにより切断材を切断するバンドソーが知られている。このバンドソーには、携帯用バンドソー(ポータブルバンドソー)とも称される手持ち式のバンドソーが知られている(例えば、特許文献1参照)。このような手持ち式のバンドソーは、フレームとしての機能も有するハウジングと、このハウジングにて回転可能に支持され且つ適宜間隔に配置される一対の鋸車と、この一対の鋸車を回転駆動させる駆動装置とを備える。これら一対の鋸車の両者には、輪状となる無端帯状の帯鋸が掛けられており、この掛けられた無端帯状の帯鋸は、駆動装置による鋸車の回転駆動によって周回するものとなっている。この周回する帯鋸は、これら2つの鋸車同士の間の外部に露出する部分を切断材を切断する切断部位として設定しており、この切断部位にて切断材を切断することができるようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2007−90458号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記した切断部位における帯鋸は、切断材に対する切断の深さを確保するために、この帯鋸が周回する方向に対して角度が付けられている。このため、この種のバンドソーにあっては、この帯鋸の角度を許容しつつ帯鋸を周回させることができるように、対をなす鋸車のうちの従動側の鋸車を、周回方向に対して傾斜する角度を有して回転させるものとなっている。
これにより、これら一対の鋸車の両者に掛けられた帯鋸は周回にしたがって帯鋸の帯厚方向にズレてしまうことがあり、このような帯鋸の帯厚方向へのズレを規制するために、周回する帯鋸をガイドする機構あるいは部材が必要とされていた。
従来では、上記したハウジングの内側に設けられたリブを利用して、周回する帯鋸を帯厚方向から支持していた。具体的には、ハウジングにはハウジング内側に突出するリブが設けられており、このリブを周回する帯鋸に対して帯厚方向から当て、この周回する帯鋸の帯厚方向へのズレを規制し、帯鋸の周回をガイドするものとしていた。
【0005】
しかしながら、上記したリブを利用して帯鋸の周回をガイドしようとすると、周回する帯鋸との摩擦によってリブを磨耗させてしまう。昨今においては、ハウジングの軽量化を図るために、ハウジングの材料にアルミニウムを選択する場合があり、このような磨耗の問題は顕著な問題となりつつある。なお、帯鋸の材料としては、一般的にアルミニウムより硬質な鉄が選択される。
【0006】
本発明は、このような事情に鑑みなされたものであって、本発明が解決しようとする課題は、無端帯状の帯鋸を周回させることにより切断材を切断するバンドソーにおいて、帯鋸の周回をガイドさせることができつつ、この帯鋸の周回をガイドさせることによる磨耗を小さくすることにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記した課題を解決するにあたって本発明に係るバンドソーは次の手段を採用する。
すなわち、本発明の第1の発明に係るバンドソーは、ハウジングと、該ハウジングにて回転可能に支持される一対の鋸車と、該鋸車を回転駆動させる駆動装置とを備え、該一対の鋸車に掛けた無端帯状の帯鋸を周回させることにより切断材を切断するバンドソーであって、前記ハウジングには、該ハウジングに対して相対的に動くことができ且つ前記帯鋸の帯厚方向から該帯鋸に当たることにより該帯鋸の帯厚方向への移動を規制する可動ガイド機構が設けられていることを特徴とする。
この第1の発明に係るバンドソーによれば、ハウジングにはハウジングに対して相対的に動くことができ且つ帯鋸の帯厚方向から帯鋸に当たることにより帯鋸の帯厚方向への移動を規制する可動ガイド機構が設けられているので、帯鋸の帯厚方向への移動の規制をハウジングに対して相対的に動かしながら行うことができる。
これによって、帯鋸の帯厚方向への移動を規制して帯鋸の周回をガイドさせることができつつ、帯鋸の周回に対応させてハウジングに対して相対的に動かすことにより帯鋸との間に生ずる摩擦を軽減し、帯鋸の周回をガイドさせることによる磨耗を小さくすることができる。
【0008】
第2の発明に係るバンドソーは、前記第1の発明に係るバンドソーにおいて、前記可動ガイド機構は、前記ハウジングにて固定される固定軸を軸受けするベアリングにて構成されており、前記ベアリングは、前記帯鋸の帯幅方向で該帯鋸が当たりつつ前記ハウジングに対して相対的に動くことができる外輪を備え、前記外輪には、前記帯鋸の帯厚方向への移動を規制して前記帯鋸の周回をガイドする帯鋸当接部が設けられていることを特徴とする。
この第2の発明に係るバンドソーによれば、可動ガイド機構は、ハウジングにて固定される固定軸を軸受けするベアリングにて構成されているので、広く利用される市販品を用いることができて安価なものとすることができる。また、帯鋸の帯幅方向で帯鋸が当たりつつハウジングに対して相対的に動くことができる外輪に設けられた帯鋸当接部により、帯鋸の帯厚方向への移動を規制して帯鋸の周回をガイドすることができる。これによって、安価に可動ガイド機構を構成することができながら、帯鋸の周回をガイドすることができる。
【0009】
第3の発明に係るバンドソーは、前記第2の発明に係るバンドソーにおいて、前記ベアリングは、滑り軸受で構成されており、前記帯鋸当接部は、前記帯鋸の周回軌道外側に向いて位置する前記外輪の端縁部分をフランジ状に張り出すことにより形成されていることを特徴とする。
この第3の発明に係るバンドソーによれば、ベアリングは、滑り軸受で構成されているので、さらに広く利用される市販品を用いることができて、さらに安価なものとすることができる。また、帯鋸当接部は、帯鋸の周回軌道外側に向いて位置する外輪の端縁部分をフランジ状に張り出すことにより形成されているので、帯鋸当接部を簡単に形成することができながら、帯鋸の周回軌道外側に向いた方向の帯鋸の帯厚方向への移動を規制することができる。
【0010】
第4の発明に係るバンドソーは、前記第3の発明に係るバンドソーにおいて、前記帯鋸の周回軌道内側に向いて位置する前記外輪の端縁部分もフランジ状に張り出させて第2の前記帯鋸当接部が形成されていることを特徴とする。
この第4の発明に係るバンドソーによれば、帯鋸の周回軌道内側に向いて位置する外輪の端縁部分もフランジ状に張り出させて第2の帯鋸当接部が形成されているので、この第2の帯鋸当接部により帯鋸の周回軌道内側に向いた方向の帯鋸の帯厚方向への移動を規制することができる。
【0011】
第5の発明に係るバンドソーは、前記第2の発明に係るバンドソーにおいて、前記外輪の外周面には、該外輪の外周面の周方向にV字形状で凹んで延びるV字形溝が設けられており、前記帯鋸当接部は、前記V字形溝を形成する傾斜面にて形成されていることを特徴とする。
この第5の発明に係るバンドソーによれば、外輪の外周面には外輪の外周面の周方向にV字形状で凹んで延びるV字形溝が設けられており、帯鋸当接部はV字形溝を形成する傾斜面にて形成されているので、帯鋸の端縁をV字形溝を形成する帯鋸当接部となる傾斜面にて案内してV字形状の中心位置に位置させ易くする。これによって、帯鋸の端縁がV字形溝から多少ズレていても、帯鋸の端縁を帯鋸当接部となる傾斜面となる帯鋸当接部により案内してV字形状の中心位置に位置させ易くする。これによって、帯鋸の端縁をV字形溝上に位置させ易いものにして、より有利に帯鋸の周回をガイドすることができる。
【発明の効果】
【0012】
第1の発明に係るバンドソーによれば、帯鋸の周回をガイドさせることができつつ、帯鋸との間に生ずる摩擦を軽減し、帯鋸の周回をガイドさせることによる磨耗を小さくすることができる。
第2の発明に係るバンドソーによれば、安価に可動ガイド機構を構成することができながら、帯鋸の周回をガイドすることができる。
第3の発明に係るバンドソーによれば、帯鋸当接部を簡単に形成することができながら、帯鋸の周回軌道外側に向いた方向の帯鋸の帯厚方向への移動を規制することができる。
第4の発明に係るバンドソーによれば、第2の帯鋸当接部により帯鋸の周回軌道内側に向いた方向の帯鋸の帯厚方向への移動を規制することができる。
第5の発明に係るバンドソーによれば、帯鋸の端縁をV字形溝上に位置させ易いものにして、より有利に帯鋸の周回をガイドすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】可動ガイド機構(第3の実施の形態)を具備するバンドソーの裏面側を示すバンドソーの裏面図である。
【図2】図1の裏面側から視た可動ガイド機構(第3の実施の形態)を拡大して示す裏面図である。
【図3】第1の実施の形態の可動ガイド機構について拡大して示す断面図である。
【図4】図3の可動ガイド機構をさらに拡大して示す断面図である。
【図5】第2の実施の形態の可動ガイド機構について拡大して示す断面図である。
【図6】図5の可動ガイド機構をさらに拡大して示す断面図である。
【図7】第3の実施の形態の可動ガイド機構について拡大して示す断面図である。
【図8】図7の可動ガイド機構をさらに拡大して示す断面図である。
【図9】第4の実施の形態の可動ガイド機構について拡大して示す断面図である。
【図10】図9の可動ガイド機構をさらに拡大して示す断面図である。
【図11】第5の実施の形態の可動ガイド機構について拡大して示す断面図である。
【図12】図11の可動ガイド機構をさらに拡大して示す断面図である。
【図13】ベアリング以外の可動ガイド機構の変形例を拡大して示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
[第1の実施の形態]
以下、本発明に係るバンドソーを実施するための実施の形態について図面を参照しながら説明する。
図1は、図1に示すバンドソー10は、無端帯状の帯鋸Bを周回させることにより切断材を切断するものである。図2は、図1の裏面側から視た可動ガイド機構20を拡大して示す裏面図である。なお、図1および図2にて示す可動ガイド機構20は、後に説明する第3の実施の形態の可動ガイド機構20Cである。
図1に示すバンドソー10は、広く利用されているポータブルバンドソー(携帯用バンドソー)とも称される手持ち式のバンドソーである。このため、このバンドソー10の全体図としては図1の裏面図のみとなっているが、このバンドソー10は広く利用される手持ち式のバンドソーと同様に構成される。すなわち、バンドソー10は、図1に示すように、概略、ハウジング11と、一対の鋸車12,13と、これら鋸車12,13を回転駆動させるための駆動装置14とを備える。
ハウジング11は、次に説明する一対の鋸車12,13の外周を覆うように配設されるものであり、このバンドソー10のフレームとしての機能も有するものである。
一対の鋸車12,13は、このハウジング11内にて適宜間隔に配置される。この2つの鋸車12,13は、ハウジング11に対して回転可能に軸支持されるものとなっている。この2つの一方(図示左側)が、駆動装置14からの駆動力を受けて回転駆動する駆動鋸車12である。これに対して、他方(図示右側)が、この駆動鋸車12の回転駆動を受けて従属的に回転する従動鋸車13である。このため、この従動鋸車13は、自力で回転する駆動鋸車12とは異なり、ハウジング11に対して単に回転可能に軸支持されているだけとなっている。つまり、従動鋸車13は、これらの鋸車12,13に掛けられ、駆動鋸車12の回転駆動による帯鋸Bの周回運動を受けて回転駆動するものとなっている。
駆動装置14は、内部構造については図示していないが、上記した駆動鋸車12を回転駆動させるものである。すなわち駆動装置14は、回転駆動力を発生するブラシモータ(不図示)と、このブラシモータによって発生した回転駆動力を減速させて駆動鋸車12に伝達するギア機構(不図示)とを備える。なお、この駆動装置14のブラシモータは、回転駆動力を発生するにあたり、コード部15を介して外部電力が供給されるようになっている。なお、図1に示す符号18および符号19は、このバンドソー10を手握りする際のグリップ部である。
【0015】
ところで、上記したの一対の鋸車12,13の両者には図示するような帯鋸Bが掛けられる。この帯鋸Bは、図示するように輪状となる無端帯状に形成されるものである。このため、このように一対の鋸車12,13の両者に掛けられた無端帯状の帯鋸Bは、駆動装置14による駆動鋸車12の回転駆動を受けて、これら一対の鋸車12,13の間において周回することができるものとなっている。このように周回する帯鋸Bは、これら2つの鋸車12,13同士の間の外部に露出する部分を切断材を切断する切断部位Dとして設定しており、この切断部位Dにて切断材を切断することができるようになっている。
ここで、この切断部位Dにおける帯鋸Bは、切断材に対する切断の深さを確保するために、この帯鋸Bが周回する方向に対して角度が付けられている。具体的には、切断部位Dを挟む両側に位置する部分には、周回する帯鋸Bに角度を付けるために、ガイドローラ16,16がハウジング11に支持されるようにして配設されている。これによって、切断部位Dにおける帯鋸Bは、帯鋸Bが周回する方向に対して角度が付けられるものとなっており、切断材に対する切断の深さを確保することができるものとなっている。なお、図1に示す符号17は、切断材を切断するにあたって切断材をガイドするガイドプレートである。
上記したように、切断部位Dにおける帯鋸Bは、この帯鋸Bが周回する方向に対して角度が付けられている。このため、一対の鋸車12,13のうち従動鋸車13は、この帯鋸Bに付けられた角度を許容した状態で、帯鋸Bを周回させることができるように配設されている。すなわち従動鋸車13は、帯鋸Bの周回方向に対して傾斜する角度を有してハウジング11に回転可能に軸支持されている。具体的には、従動鋸車13は、図示においては分かり難いが、従動鋸車13のうち帯鋸Bの接触する部分(図示外側に位置する部分)が、従動鋸車13のうち帯鋸Bの接触しない部分(図示内側に位置する部分)に比して、ハウジング11奥側に向かうように(バンドソー10を手持ちした場合には上側に向かうように)傾斜する角度を有してハウジング11に回転可能に軸支持されている。これにより、この従動鋸車13に掛けられる帯鋸Bは、この従動鋸車13の回転にしたがい、ハウジング11奥側に向かって入るように移動し易くなる。このため、このハウジング11には、周回する帯鋸Bの従動鋸車13に対する掛かりをガイドする可動ガイド機構20が設けられている。
【0016】
可動ガイド機構20について説明する。
この可動ガイド機構20は、ハウジング11に対して相対的に動くことができるようにハウジング11に対して配設されるものであり、周回する帯鋸Bの従動鋸車13に対する掛かりをガイドするものである。このため図1に示すように、可動ガイド機構20は、駆動鋸車12から従動鋸車13に送られる帯鋸Bをガイドするようにハウジング11に配設されている。具体的には、駆動鋸車12から送られてきた帯鋸Bが従動鋸車13に掛かる手前で、この可動ガイド機構20により帯鋸Bをガイドすることができるようにハウジング11に配設されている。このように配設される可動ガイド機構20は、周回する帯鋸Bの帯厚方向(帯の厚み方向)および帯幅方向(帯の幅方向)から、この周回する帯鋸Bを支持することができる機能を有する。言い換えれば図2に示すように、可動ガイド機構20は、帯鋸Bの帯厚方向(帯の厚み方向)および帯幅方向(帯の幅方向)から帯鋸Bに当たることにより、この周回する帯鋸Bの帯厚方向および帯幅方向への移動を規制する作用を有する。これによって、可動ガイド機構20は、周回する帯鋸Bの従動鋸車13に対する掛かりをガイドすることができるものとなっている。
以下、このように配設される可動ガイド機構20を構成する各種の態様(第1〜第5の実施の形態)について説明する。なお、この可動ガイド機構20の各種の構成となる第1〜第5の実施の形態の可動ガイド機構20A〜20Eは、ハウジング11にて固定される固定軸21と、この固定軸21を軸受けするベアリング30〜70とを備えて構成される。このため、以下に説明する可動ガイド機構20A〜20Eの説明は、これらの可動ガイド機構20A〜20Eにおいて相違するベアリング30〜70の構成についてのみを重点的に説明するものとし、その他の同一に構成される部分については同一符号を付して説明を省略するものとする。また、以下において説明する図3,図5,図7,図9,図11は、図2におけるIII−III断面矢視の可動ガイド機構20(20A〜20E)の拡大断面図である。なお、図3〜図12における図示上下方向は帯鋸Bの帯厚方向(帯の厚み方向)と一致するものとなっており、図3〜図12における図示左右方向は帯鋸Bの帯幅方向(帯の幅方向)と一致するものとなっている。
【0017】
第1の実施の形態となる可動ガイド機構20A(20)について説明する。
図3は、第1の実施の形態の可動ガイド機構20Aについて拡大して示す断面図である。図4は、図3の可動ガイド機構20Aをさらに拡大して示す断面図である。
図3および図4に示す第1の実施の形態の可動ガイド機構20Aは、上記したようにハウジング11にて固定される円柱状の固定軸21と、この固定軸21を軸受けするベアリング30にて構成される。この固定軸21は、ハウジング11に適宜リブ状構造にて形成される軸孔22,23に嵌め挿しされることにより、ハウジング11に対して固定支持されている。このようにハウジング11に固定支持される固定軸21の外周部分には、この固定軸21を軸受けするようにベアリング30が配設されている。このベアリング30は、図3および図4に示すように、広く利用される『滑り軸受』にて構成されている。具体的には、ベアリング30は、固定軸21を嵌挿させる内輪31と、この内輪31の外周面に摺接可能に内輪31を嵌挿させる外輪35とを備える。ここで、固定軸21と内輪31とは、互いにガタつきなく嵌め挿しされるようになっている。また、内輪31と外輪35とは、これら互いの間で滑らかに摺動するようになっている。このため、外輪35は、固定軸21に対して相対的に回転するように、ハウジング11に対して相対的に動くことができるものとなっている。
外輪35は、内輪31の外周に摺接可能に外嵌される鉄スリーブにて形成されている。また、この外輪35は、図3および図4に示すように、帯鋸Bの帯幅方向の端縁B1を当てることができる位置に設定されている。
つまり、外輪35は、帯鋸Bを適切に周回させることができるように、周回する帯鋸Bの帯幅方向への移動を適切に規制する位置に設定して配設されている。なお、外輪35が当たる帯鋸Bの端縁B1は、鋸刃が設けられる端縁B2とは反対側の端縁となる鋸刃の設けられない端縁B1である。
このように配設される外輪35には、帯鋸Bの帯厚方向への移動を規制して帯鋸Bの周回をガイドする外フランジ状の第1帯鋸当接部351および第2帯鋸当接部352が設けられている。第1帯鋸当接部351は、帯鋸Bの周回軌道外側(図示上側)に向いて位置する外輪35の端縁部分を、外フランジ状に張り出すことにより形成されている。これに対して、第2帯鋸当接部352は、帯鋸Bの周回軌道内側(図示下側)に向いて位置する外輪35の端縁部分を、外フランジ状に張り出すことにより形成されている。このため、帯鋸Bの端縁B1は、外輪35における第1帯鋸当接部351と第2帯鋸当接部352との間の周面353に当接することとなっている。
【0018】
この第1の実施の形態となる可動ガイド機構20A(20)を具備してバンドソー10を構成した場合には、次のような作用効果を奏することができる。
すなわち、上記した第1の実施の形態の構成によれば、ハウジング11にはハウジング11に対して相対的に動くことができ且つ帯鋸Bの帯厚方向から帯鋸Bに当たることにより帯鋸Bの帯厚方向への移動を規制する可動ガイド機構20が設けられているので、帯鋸Bの帯厚方向への移動の規制をハウジング11に対して相対的に動かしながら行うことができる。これによって、帯鋸Bの帯厚方向への移動を規制して帯鋸Bの周回をガイドさせることができつつ、帯鋸Bの周回に対応させてハウジング11に対して相対的に動かすことにより帯鋸Bとの間に生ずる摩擦を軽減し、帯鋸Bの周回をガイドさせることによる磨耗を小さくすることができる。
また、上記した第1の実施の形態の構成によれば、可動ガイド機構20は、ハウジング11にて固定される固定軸21を軸受けするベアリング30にて構成されているので、広く利用される市販品を用いることができて安価なものとすることができる。また、帯鋸Bの帯幅方向で帯鋸Bが当たりつつハウジング11に対して相対的に動くことができる外輪35に設けられた帯鋸当接部351,352により、帯鋸Bの帯厚方向への移動を規制して帯鋸Bの周回をガイドすることができる。これによって、安価に可動ガイド機構20を構成することができながら、帯鋸Bの周回をガイドすることができる。
また、上記した第1の実施の形態の構成によれば、ベアリング30は、滑り軸受で構成されているので、さらに広く利用される市販品を用いることができて、さらに安価なものとすることができる。また、第1帯鋸当接部351は、帯鋸Bの周回軌道外側(図示上側)に向いて位置する外輪の端縁部分をフランジ状に張り出すことにより形成されているので、第1帯鋸当接部351を簡単に形成することができながら、帯鋸Bの周回軌道外側に向いた方向の帯鋸Bの帯厚方向への移動を規制することができる。
また、上記した第1の実施の形態の構成によれば、帯鋸Bの周回軌道内側(図示下側)に向いて位置する外輪の端縁部分もフランジ状に張り出させて第2帯鋸当接部352が形成されているので、この第2帯鋸当接部352により帯鋸Bの周回軌道内側に向いた方向の帯鋸Bの帯厚方向への移動を規制することができる。
上記をもって、帯鋸Bの周回をガイドさせることができつつ、この帯鋸Bの周回をガイドすることによる磨耗を小さくすることができる。
【0019】
[第2の実施の形態]
次に、第2の実施の形態となる可動ガイド機構20B(20)について説明する。
図5は、第2の実施の形態の可動ガイド機構20Bについて拡大して示す断面図である。図6は、図5の可動ガイド機構20Bをさらに拡大して示す断面図である。なお、この第2の実施の形態となる可動ガイド機構20Bは、上記した第1の実施の形態となる可動ガイド機構20Aと比較して、ベアリング40の外輪45に関する構成のみが相違するものとなっている。このため、この外輪45に関する構成について重点的に説明するものとし、この外輪45以外の構成については上記と同一符号を付して説明を簡略化する。
図5および図6に示す第2の実施の形態のベアリング40は、上記した第1の実施の形態と同様な、広く利用される『滑り軸受』にて構成され、固定軸21を嵌挿させる内輪41と、この内輪41の外周面に摺接可能に内輪41を嵌挿させる外輪45とを備える。
ここで、第2の実施の形態の外輪45は、第1の実施の形態の外輪35と比較して、外周の形状のみが第1の実施の形態の外輪35と相違する構成となっており、その他の構成の構成についは第1の実施の形態の外輪35と同一の構成となっている。このため、この第1の実施の形態の外輪35と相違する外周の形状についてのみ説明する。
この外輪45の外周面46には、V字形溝453が設けられている。このV字形溝453は、図6に示すように、外周面46に対して外周面46のうち回転方向となる周方向に断面視V字形状で凹んで延びるように形成されている。言い換えれば、この外周面46は、帯鋸Bの周回軌道の内外側(図示上下側)に向いて位置する外輪35の両端縁部分から、この外周面46の中間部分に向けて凹むように傾斜する傾斜面形状によりV字形溝453が形成されている。より具体的に言えば、帯鋸Bの周回軌道の外側に向いて位置する外輪35の端縁部分から中間部分に向けて凹むように傾斜する外周面46の傾斜面形状により第1帯鋸当接部451が形成されている。これに対して、帯鋸Bの周回軌道の内側に向いて位置する外輪35の端縁部分から中間部分に向けて凹むように傾斜する外周面46の傾斜面形状により第2帯鋸当接部452が形成されている。そして、この第1帯鋸当接部451と第2帯鋸当接部452との間に形成される部分がV字形溝453を形成するものとなっている。このように形成された外輪45のV字形溝453には、帯鋸Bの帯幅方向の端縁B1を当てることができる位置に設定されている。なお、このようにV字形溝453を形成するように外輪45の外周面46に形成された第1帯鋸当接部451と第2帯鋸当接部452とは、上記した第1の実施の形態における第1帯鋸当接部351と第2帯鋸当接部352と比較して同様の機能を有するものとなっており、段階的な段差形状(第1の実施の形態)が勾配的な傾斜形状(第2の実施の形態)に置き換えられてものともいえる。
この第2の実施の形態となる可動ガイド機構20B(20)を具備してバンドソー10を構成した場合には、次のような作用効果を奏することができる。
上記した第2の実施の形態の構成によれば、外輪45の外周面46にはV字形溝453が設けられており、帯鋸当接部451,452はV字形溝453を形成する傾斜面にて形成されているので、帯鋸Bの端縁B1をV字形溝453を形成する帯鋸当接部451,452となる傾斜面にて案内してV字形状の中心位置に位置させ易くする。これによって、帯鋸Bの端縁B1がV字形溝453から多少ズレていても、この帯鋸Bの端縁B1を帯鋸当接部451,452となる傾斜面により案内してV字形状の中心位置に位置させ易くする。これによって、帯鋸Bの端縁B1をV字形溝上に位置させ易いものにして、より有利に帯鋸Bの周回をガイドすることができる。
【0020】
[第3の実施の形態]
次に、第3の実施の形態となる可動ガイド機構20C(20)について説明する。
図7は、第3の実施の形態の可動ガイド機構20Cについて拡大して示す断面図である。図8は、図7の可動ガイド機構20Cをさらに拡大して示す断面図である。なお、この第3の実施の形態となる可動ガイド機構20Cは、上記した第1および第2の実施の形態となる可動ガイド機構20A,20Bと比較して、ベアリング50に関する構成のみが相違するものとなっている。このため、このベアリング50に関する構成について重点的に説明するものとし、このベアリング50以外の構成については上記と同一符号を付して説明を簡略化する。
図7および図8に示す第3の実施の形態のベアリング50は、上記した第1および第2の実施の形態と相違し、広く利用される『転がり軸受(ボールベアリング)』にて構成される。すなわちベアリング50は、一般的なボールベアリングと同様、固定軸21を嵌挿させる内輪51と、この内輪51に転がり球53を介して外嵌される外輪55とを備える。ここで、外輪55は、内輪51と外輪55の間で転がり球53を転がすことによって、内輪51に対して相対的に周回することができる。
ここで、第3の実施の形態の外輪55には、上記した第1の実施の形態の外輪35において設けられていた第1帯鋸当接部351と同様の、外フランジ状の第1帯鋸当接部551が設けられている。この第1帯鋸当接部551は、帯鋸Bの周回軌道外側(図示上側)に向いて位置する外輪55の端縁部分を、外フランジ状に張り出すことにより形成されている。なお、この第1帯鋸当接部551に対して、帯鋸Bの周回軌道内側(図示下側)に位置する外輪55の外周面56は、帯鋸Bの帯幅方向の端縁B1を当てることができる位置に設定されている。
この第3の実施の形態となる可動ガイド機構20C(20)を具備してバンドソー10を構成した場合には、上記した第1の実施の形態となる可動ガイド機構20A(20)を具備してバンドソー10を構成した場合において第2帯鋸当接部352が設けられていない状態の場合と同様の作用効果を奏することができる。
【0021】
[第4の実施の形態]
次に、第4の実施の形態となる可動ガイド機構20D(20)について説明する。
図9は、第4の実施の形態の可動ガイド機構20Dについて拡大して示す断面図である。図10は、図9の可動ガイド機構20Dをさらに拡大して示す断面図である。なお、この第4の実施の形態となる可動ガイド機構20Dは、上記した第3の実施の形態となる可動ガイド機構20Cと比較して、ベアリング60の外輪65に関する構成のみが相違するものとなっている。このため、このベアリング60の外輪65に関する構成について重点的に説明するものとし、このベアリング60の外輪65以外の構成については上記と同一符号を付して説明を簡略化する。
図9および図10に示す第4の実施の形態のベアリング60は、上記した第3の実施の形態のベアリング50と同様、固定軸21を嵌挿させる内輪61と、この内輪61に転がり球63を介して外嵌される外輪65とを備える。
ここで、第4の実施の形態のベアリング60の外輪65には、凹溝651が設けられている。この凹溝651は、図10に示すように、外輪65の外周面66に対して外周面66のうち回転方向となる周方向に断面視凹溝形状で凹んで延びるように形成されている。より具体的に言えば、この外周面66のうち、帯鋸Bの周回軌道の外側(図示上側)に向いて位置する外輪65の端縁部分に近接する部分に、周方向に延びて凹状をなす凹溝651が形成されている。なお、この凹溝651の溝幅および溝深さは、図10に示すように、帯鋸Bの端縁B1が嵌り込むことができる程度の大きさを有して形成されている。このため、嵌り込んだ帯鋸Bの端縁B1は、この凹溝651への嵌り込みにより、帯鋸Bの帯厚方向への移動をを規制して帯鋸の周回をガイドするものとなっている。つまり、この凹み形状をなす凹溝651の凹状内側面は本発明に係る帯鋸当接部として機能するものとなっており、帯鋸Bの帯厚方向への移動を規制して帯鋸Bの周回をガイドするものとなっている。
この第4の実施の形態となる可動ガイド機構20D(20)を具備してバンドソー10を構成した場合には、上記した第2の実施の形態となる可動ガイド機構20B(20)を具備してバンドソー10を構成した場合と同様の作用効果を奏することができる。
【0022】
[第5の実施の形態]
次に、第5の実施の形態となる可動ガイド機構20E(20)について説明する。
図11は、第5の実施の形態の可動ガイド機構20Eについて拡大して示す断面図である。図12は、図11の可動ガイド機構20Eをさらに拡大して示す断面図である。なお、この第5の実施の形態となる可動ガイド機構20Eは、上記した第4の実施の形態となる可動ガイド機構20Dと比較して、ベアリング70の外輪75に関する構成のみが相違するものとなっている。このため、このベアリング70の外輪75に関する構成について重点的に説明するものとし、このベアリング70の外輪75以外の構成については上記と同一符号を付して説明を簡略化する。
図11および図12に示す第5の実施の形態のベアリング70は、上記した第4の実施の形態のベアリング60の外輪65の凹溝651に対して、止め輪77が掛けられるように配設した形態である。すなわち、第5の実施の形態のベアリング70は、上記した第4の実施の形態のベアリング60と同様、固定軸21を嵌挿させる内輪71と、この内輪71に転がり球73を介して外嵌される外輪75とを備える。また、外輪75には、凹溝751が設けられている。
ここで、この凹溝751には、図12に示すように、止め輪77が掛けられている。この止め輪77は、弾性変形可能であって一部切り欠かれた円形状にて形成される。このように凹溝751に掛けられた止め輪77は、この凹溝751が形成される外輪75の外周面76よりも回転径方向外側(図示左右側)に突き出すようになっている。なお、この止め輪77の突出し量としては、帯鋸Bの帯厚方向への移動を規制して帯鋸Bの周回をガイドすることができるように、帯鋸Bの端縁B1を当てることができる程度の突出し量に設定されている。つまり、このように突き出す止め輪77は、本発明に係る帯鋸当接部として機能するものとなっており、帯鋸Bの帯厚方向への移動を規制して帯鋸Bの周回をガイドするものとなっている。
この第5の実施の形態となる可動ガイド機構20E(20)を具備してバンドソー10を構成した場合には、上記した第3の実施の形態となる可動ガイド機構20C(20)を具備してバンドソー10を構成した場合と同様の作用効果を奏することができる。
【0023】
なお、本発明に係るバンドソーにあっては、上記した実施の形態に限定されるものではなく、次のように適宜個所を変更して構成するようにしてもよい。
例えば、上記した実施の形態にあっては、本発明に係る可動ガイド機構としてベアリング30,40,50,60,70を挙げて説明した。しかしながら、本発明に係る可動ガイド機構としては、ハウジングに対して相対的に動くことができ且つ帯鋸の帯厚方向から帯鋸に当たることにより帯鋸の帯厚方向への移動を規制するように構成されるものであれば、適宜の構成を採用することができる。図13は、ベアリング以外の可動ガイド機構の変形例を拡大して示す斜視図である。図13に示す可動ガイド機構80は、概略、帯幅支持ローラ81および帯厚支持ローラ82を備える。これら帯幅支持ローラ81および帯厚支持ローラ82は、回転ローラとして機能する。ここで、帯幅支持ローラ81は、周回する帯鋸Bを帯幅方向で支持することにより帯鋸Bの周回をガイドするものである。また、帯厚支持ローラ82は、周回する帯鋸Bを帯厚方向で支持することにより帯鋸Bの周回をガイドするものである。そして、帯厚支持ローラ82は、回転ローラにて構成されているため、ハウジングに対して相対的に動くことができ且つ帯鋸Bの帯厚方向から帯鋸Bに当たることにより帯鋸Bの帯厚方向への移動を規制する構成を有し、もって帯鋸Bとの間に生ずる摩擦を軽減し、帯鋸Bの周回をガイドさせることによる磨耗を小さくすることができる。つまり、本発明に係る可動ガイド機構には、このような帯厚支持ローラ82が含まれるものとなっている。
【符号の説明】
【0024】
10 バンドソー
11 ハウジング
12 駆動鋸車
13 従動鋸車
14 駆動装置
15 コード部
16 ガイドローラ
17 ガイドプレート
18,19 グリップ部
20(20A,20B,20C,20D,20E) 可動ガイド機構
21 固定軸
22,23 軸孔
30,40,50,60,70 ベアリング
31,41,51,61,71 内輪
35,45,55,65,75 外輪
46,56,66,76 外周面
53,63,73 転がり球
77 止め輪
351,451 第1帯鋸当接部
352,452 第2帯鋸当接部
353 周面
453 V字形溝
551 帯鋸当接部
651,751 凹溝
B 帯鋸
B1 端縁
B2 端縁
D 切断部位

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングと、該ハウジングにて回転可能に支持される一対の鋸車と、該鋸車を回転駆動させる駆動装置とを備え、該一対の鋸車に掛けた無端帯状の帯鋸を周回させることにより切断材を切断するバンドソーであって、
前記ハウジングには、該ハウジングに対して相対的に動くことができ且つ前記帯鋸の帯厚方向から該帯鋸に当たることにより該帯鋸の帯厚方向への移動を規制する可動ガイド機構が設けられていることを特徴とするバンドソー。
【請求項2】
請求項1に記載のバンドソーにおいて、
前記可動ガイド機構は、前記ハウジングにて固定される固定軸を軸受けするベアリングにて構成されており、
前記ベアリングは、前記帯鋸の帯幅方向で該帯鋸が当たりつつ前記ハウジングに対して相対的に動くことができる外輪を備え、
前記外輪には、前記帯鋸の帯厚方向への移動を規制して前記帯鋸の周回をガイドする帯鋸当接部が設けられていることを特徴とするバンドソー。
【請求項3】
請求項2に記載のバンドソーにおいて、
前記ベアリングは、滑り軸受で構成されており、
前記帯鋸当接部は、前記帯鋸の周回軌道外側に向いて位置する前記外輪の端縁部分をフランジ状に張り出すことにより形成されていることを特徴とするバンドソー。
【請求項4】
請求項3に記載のバンドソーにおいて、
前記帯鋸の周回軌道内側に向いて位置する前記外輪の端縁部分もフランジ状に張り出させて第2の前記帯鋸当接部が形成されていることを特徴とするバンドソー。
【請求項5】
請求項2に記載のバンドソーにおいて、
前記外輪の外周面には、該外輪の外周面の周方向にV字形状で凹んで延びるV字形溝が設けられており、
前記帯鋸当接部は、前記V字形溝を形成する傾斜面にて形成されていることを特徴とするバンドソー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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